(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987862
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】微量作用金属を含む抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 9/18 20060101AFI20211220BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20211220BHJP
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A01N 31/06 20060101ALI20211220BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20211220BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20211220BHJP
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C11D 7/12 20060101ALN20211220BHJP
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C11D 7/26 20060101ALN20211220BHJP
【FI】
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A01N59/16 A
A01N59/20 Z
A01P1/00
A61K8/19
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A61K8/29
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!C11D7/26
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-528141(P2019-528141)
(86)(22)【出願日】2017年11月8日
(65)【公表番号】特表2020-514248(P2020-514248A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2017078601
(87)【国際公開番号】WO2018114121
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2020年9月8日
(31)【優先権主張番号】16205207.0
(32)【優先日】2016年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボルッティ,アミット
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ,ルパク
(72)【発明者】
【氏名】ムカジー,サヤンディップ
(72)【発明者】
【氏名】サルカール,サマールピタ
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−522802(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/020168(WO,A1)
【文献】
特表2008−544953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 9/18
A01N 25/08
A01N 31/04
A01N 31/06
A01N 31/08
A01N 59/16
A01N 59/20
A01P 1/00
A61K 8/19
A61K 8/24
A61K 8/25
A61K 8/26
A61K 8/29
A61K 8/34
A61K 31/045
A61K 31/05
A61K 33/34
A61K 33/38
A61K 47/02
A61P 17/00
A61P 43/00
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C11D 7/02
C11D 7/12
C11D 7/20
C11D 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)水不溶性無機担体中に埋め込まれた微量作用金属を含む複合抗菌性粒状材料、および
(ii)チモールおよびテルピネオールを含み、
チモールが0.01〜0.05重量%で存在し、
テルピネオールが0.01〜0.05重量%で存在し、
少なくとも10重量%のC8〜C22脂肪酸の石鹸を含み、
パーソナルウォッシュ組成物である、棒状石鹸組成物。
【請求項2】
前記無機担体は、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化バリウム、ヒドロキシアパタイトカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、層状ケイ酸塩、ゼオライト、粘土またはベントナイトのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記無機担体が炭酸カルシウムである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌性粒状材料中の微量作用金属の量が前記粒状材料の0.1%〜10重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記微量作用金属が銅または銀である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記チモールの量と前記テルピネオールの量との重量比が1:0.5〜1:2である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
0.00005〜2重量%の前記微量作用金属に相当する量の前記複合抗菌粒子を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
10〜30秒の接触時間内に、生物表面または無生物表面上の少なくとも1つのグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌の細菌数を1〜5対数減少させることによって、前記表面を消毒するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、非治療的である使用。
【請求項9】
10〜30秒の接触時間内に、生物表面または無生物表面上の少なくとも1つのグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌の細菌数を1〜5対数減少させることによって、前記表面を請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物と接触させることによって、前記表面を消毒する非治療的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量作用金属を含有する抗菌組成物に関する。特に、本発明は、生物表面ならびに無生物表面を迅速に消毒するためのパーソナルウォッシュ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状石鹸、ボディウォッシュ組成物およびハンドウォッシュ組成物などのパーソナルウォッシュ製品のような抗菌クレンジング組成物に対する需要が増え続けている。銀、銅または亜鉛のような微量作用金属を含有する抗菌クレンジング組成物は、様々な細菌に対して有効である。銀が最も広く使用されている。
【0003】
国際公開第2010/046238号(Unilever)は、チモールおよびテルピネオールを含有する抗菌パーソナルケア組成物を開示している。
【0004】
国際公開第2016020168号(Unilever)は、無機多孔質材料中に固定化された抗菌性金属ナノ粒子ならびにこれらの粒子を含有するパーソナルケア組成物の調製を開示している。抗菌性粒状組成物は、0.05〜3重量%の抗菌性金属粒子を含み、残りは無機担体である。
【0005】
しかしながら、消費者は持続可能である効果的な製品をますます求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/046238号
【特許文献2】国際公開第2016020168号
【発明の概要】
【0007】
組成物、より特定的には微量作用金属とチモールまたはテルピネオールの少なくとも一方とを含むパーソナルウォッシュ組成物が有意な抗菌活性を示すことが判明した。金属は、炭酸カルシウムのような水不溶性無機担体中に当該金属が埋め込まれている複合粒状材料の形態である必要がある。
【0008】
この形態での微量作用金属の存在は、著しく少量の微量作用金属を含有する組成物の処方を可能にする。通常、そのような金属はppm(百万分の一)のオーダーの量で含まれる。しかしながら、そのような金属をできる限り少なく含む組成物を処方することが依然として望ましい。「できる限り少なく」という表現は、文脈によって意味が決まる。その理由は、人間の皮膚に適用されるパーソナルウォッシュ組成物の場合、金属含有量を文字通りできる限り少なくする必要があるが、その一方で、(実際には)より多くの金属量が許容され、かつ望ましい卓上やタイルのような無生物表面を消毒するための組成物があるので、実際の金属含有量を、効果的な消毒を行うのに十分な程高く保ちつつ、従来の製品と比較してごくわずかに減らすことが依然として望ましいとされる可能性があるからである。驚くべき効果は、微量作用金属量が減少したにもかかわらず、本発明による組成物は迅速な消毒作用を提供し、その作用は通常、細菌の対数減少について測定され、報告される。このような作用は、特にパーソナルウォッシュ組成物、特に棒状石鹸の場合に観察されている。
【0009】
第1の態様によれば、請求項1に記載の組成物が開示されている。
【0010】
本発明の一態様の任意の特徴は、本発明の任意の他の態様において利用することができる。「含む(comprising)」という用語は、「包含する(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」または「から構成される(composed of)」という意味を意図するものではない。言い換えれば、列挙された工程または選択肢は、網羅的である必要はない。操作例および比較例を除き、または他に明示的に示されている場合を除き、材料の量または反応条件、材料の物理的性質および/または使用を示す本明細書中のすべての数字は、「約」という用語で修飾されているものと理解されるべきである。「x〜y」の形式で表される数値範囲は、xおよびyを包含すると理解される。特定の特徴に関して、複数の好ましい範囲が「x〜y」の形式で記載されている場合、異なる終点を組み合わせたすべての範囲もまた想定されることが理解される。
【0011】
特に断らない限り、重量%(wt%または% by weight)という用語に対する言及はすべて、特にそれとは反対の指示がない限り、組成物の重量に対する当該成分の%を指すと解釈されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多数の抗菌性消毒組成物が市販されており、そのいくつかは文献に報告されているが、細菌耐性の出現およびより新しい毒性微生物株の出現のためにより有効な製品が必要とされている。
【0013】
銀はその微量作用で知られている。この作用は、少量のある種の金属の、細菌細胞に致命的な影響を及ぼす能力である。金属およびそれらの化合物のいくつかは、特有の方法で微生物の細胞を変化させ、死滅させる能力を有する。銀や銅などの微量作用金属は、様々な表面を殺菌および消毒するために長い間使用されてきたが、ホームケアおよびパーソナルケア組成物がリストの首位を占める。
【0014】
本明細書で使用される場合、パーソナル洗浄組成物とは、局所領域、例えば、哺乳動物、特にヒトの皮膚および/または毛髪を洗浄および殺菌するための組成物を含むことを意味する。そのような組成物は、リーブオンまたはリンスオフとして分類することができ、外観、クレンジング、臭気制御または一般的な美観も改善するために人体に適用される任意の製品を包含する。より好ましくは、リンスオフ製品である。
【0015】
「皮膚」は、本明細書で使用される場合、顔面および身体(例えば、首、胸、背中、腕、脇の下、手、足、臀部および頭皮)の皮膚を包含することを意味する。本発明の組成物はまた、皮膚以外の人体の任意の他の角質基質、例えば、製品が殺菌および洗浄という特定の目的で処方され得る髪、への適用にも関連がある。
【0016】
本発明による組成物
第1の態様によれば、
(i)水不溶性無機担体中に埋め込まれた微量作用金属を含む複合抗菌性粒状材料、および
(ii)チモールもしくはテルピネオールの少なくとも一方またはそれらの混合物
を含む組成物が開示される。
【0017】
複合抗菌性粒状材料
無機担体は、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化バリウム、ヒドロキシアパタイトカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、層状ケイ酸塩、ゼオライト、粘土またはベントナイトのうちの少なくとも1つであることが好ましい。より好ましくは、無機担体は、20〜100nm、好ましくは40〜60nmの幅を有するナノプレート様構造の凝集体から構成される。さらに好ましくは、無機担体は、ナノまたはマイクロ構造化アセンブリを有する多孔質材料である。無機担体の粒径は、1〜10μmが好ましい。
【0018】
特に好ましい無機担体は炭酸カルシウムである。他の好ましい担体は酸化チタン、水酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛である。
【0019】
好ましくは、抗菌性粒状材料中に含まれる微量作用金属の量は、粒状材料の0.1〜10重量%である。このような場合、多かれ少なかれ、残りは無機担体から構成される。抗菌性粒子が粒状材料の0.1〜10重量%の微量作用金属を含有することを確実にするために、適切なプロセス条件および化学量論量の出発材料を用いる必要がある。国際公開第2016020168号(Unilever)に開示されているプロセス工程および条件は、複合抗菌性粒状材料を調製するために使用することができ、また、そのために使用するのが好ましい。
【0020】
複合抗菌性粒状材料の調製方法は以下の工程を含む。
【0021】
粒径1〜10μmの水不溶性無機担体の水分散液を調製する。分散液は、(分散液の重量に対して)1〜5重量%の担体を含有する。
【0022】
別に、還元剤の水溶液を調製する。溶液中の還元剤の濃度は10〜30重量%である。
【0023】
分散液と溶液を混合する。その後、この混合物を70℃から90℃に加熱する。この段階で、微量作用金属の水溶性塩を加熱混合物に添加する。
【0024】
好ましくは、還元剤は酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウムまたはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムである。
【0025】
微量作用金属が銅または銀であることが特に好ましく、さらにより特定的には銀である。金も代替物であるが、価格の面であまり好ましくない。本発明による組成物は、0.001〜2重量%の微量作用金属に相当する量の複合抗菌粒子を含むことが好ましい。例えば、組成物が0.5重量%の銀(=100gの組成物中に0.5gの銀)を含有することが望ましい場合、0.5gの銀を含有する量の複合粒状材料が組成物中に包含される。この量は、粒状材料中の溶媒含有量に応じて変わり得る。
【0026】
銀が特に好ましい。イオン形態では、それは塩または任意の適用可能な酸化状態の任意の化合物として存在し得る。本発明による組成物は、0.001〜2重量%の微量作用金属に相当する量の複合抗菌粒子を含むことが好ましい。金属が酢酸銀の形態の銀のような化合物の形態で存在する場合、活性金属含有量が既に示されたような広く好ましい範囲内にあるように適切な量の化合物が包含される。
【0027】
金属、例えば、銀は化合物、例えば、銀(I)化合物の形態で存在するのが好ましいが、銀の粒子、例えば、ナノ粒子の形態であってもよい。
【0028】
銀(I)化合物は、銀イオン溶解度が少なくとも1.0×10
”4mol/L(25℃の水中)である1種以上の水溶性銀(I)化合物である。本明細書で言及される銀イオン溶解度は、25℃の水中での溶解度積(Ksp)に由来する値であり、これは多数の出典で報告されている周知のパラメータである。より具体的には、銀イオン溶解度[Ag+]、モル/Lで与えられる値は、式[Ag+]=(Ksp・x)
(1/(x+1))(式中、Kspは25℃の水中での目的化合物の溶解度積であり、xは化合物1モル当たりの銀イオンのモル数を表す)を用いて計算することができる。銀イオン溶解度が少なくとも1×10
”4mol/Lである銀(I)化合物が本明細書での使用に適していることが分かった。種々の銀化合物についての銀イオン溶解度値を表1に示す。
【表1】
【0029】
銀が化合物の形態で存在する場合、酸化銀、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、安息香酸銀、サリチル酸銀、炭酸銀、クエン酸銀またはリン酸銀から選択される化合物が好ましい。特に好ましい組成物では、銀(I)化合物は酸化銀である。
【0030】
チモール/テルピネオール
複合抗菌性粒状材料に加えて、本発明による組成物は、0.0001〜5重量%のチモールまたはテルピネオールの少なくとも一方を含む。
【0031】
本発明による組成物はチモールおよびテルピネオール、つまり両者を組み合わせて含むことが好ましい。そのような場合、チモールの量とテルピネオールの量との重量比が1:0.1〜1:10であることが好ましい。より好ましくは、この比は1:0.5〜1:2である。
【0032】
チモールが単独でまたはテルピネオールとの組み合わせで存在する場合、チモールの量は、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.01〜1重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.5重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.05重量%である。チモールはより低い投与量で有効であるので、より高い投与量は必要な場合にのみ使用され得る。
【0033】
チモールの欠点は、一部の個人にとって不快に思われる臭いであるが、そのようなより高い投与量は、知覚的側面が重要ではない組成物において、または適切な臭気マスキング剤の包含を可能にする組成物の場合に使用され得る。チモールは精製された形で使用されるのが好ましい。
【0034】
チモールの代替物として、十分な/所望の量のチモールがその中に存在することを確実にしつつ、チモールを含むタイムオイルまたはタイム抽出物を使用することができる。タイムオイルまたはタイム抽出物はタイム植物から得られる。タイム植物とは、Thymus属に属する植物をいい、次の種が含まれるがこれに限定されない:Thymus vulgaris、Thymus zygis、Thymus satureoides、Thymus mastichina、Thymus broussonetti、Thymus maroccanus、Thymus pallidus、Thymus algeriensis、Thymus serpyllum、Thymus pulegoideおよびThymus citriodorus。チモールの異性体(カルバクロール)もまた使用され得る。あるいは、あまり好ましくはないが、同様のチモール特性を有する任意のチモール誘導体もまた好ましく使用され得る。
【化1】
【0035】
チモールに加えて、またはその代わりに、本発明による組成物はテルピネオールを含む。テルピネオールが単独でまたはチモールと組み合わせて存在する場合、テルピネオールの量は、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.01〜1重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.5重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.05重量%である。テルピネオールはより低い投与量で有効であるので、より高い投与量は必要な場合にのみ使用され得る。
【0036】
チモールのようなテルピネオールの欠点は、一部の個人にとって不快に思われる臭いであるが、そのようなより高い投与量は、知覚的側面が重要ではない組成物において、または適切な臭気マスキング剤の包含を可能にする組成物の場合に使用され得る。テルピネオールは精製された形で使用されるのが好ましい。
【0037】
テルピネオールの構造を以下に示す。
【化2】
【0038】
あるいは、あまり好ましくはないが、精製テルピネオールの代わりに所望量のテルピネオールを含むパイン油を使用してもよい。
【0039】
微量作用金属、特に銀は、細菌膜の透過性に影響を及ぼし、かつ、活性酸素種を生成するその能力のために主に作用することができる。銀イオンは活性種と考えられている。したがって、十分な数のそのようなイオンが迅速かつ効率的に生成される場合、それによって汚染されている表面の生存細菌数の急速な減少をもたらすことが可能である。
【0040】
チモール(またはテルピネオールまたはその両方)と共に無機担体に埋め込まれた微量作用金属、例えば、銀は、そうでなければ必要であったであろう微量作用金属含有量の有意な減少を可能にしつつ、より迅速に作用する抗菌効果をもたらす。本発明による組成物は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の少なくとも一方に対して有効である。より好ましい組成物は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対する作用を意味する広域スペクトルの抗菌作用を付与する。
【0041】
理論に束縛されることを望むものではないが、無機担体は、有効量の微量作用金属イオンの放出を確実にすると考えられる。そのようなイオンは、チモールおよびテルピネオールの少なくとも一方と共に、好ましくは2つ一緒に、10〜30秒の接触時間に、生物表面または無生物表面の細菌数を1〜5対数減少させるために相乗的に相互作用する。
【0042】
組成物および方法の使用
第2の態様によれば、10〜30秒の接触時間内に、生物表面または無生物表面上の少なくとも1つのグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌の細菌数を1から5対数減少させることによって前記表面を消毒するための、第1の態様による組成物の使用が開示される。
【0043】
本明細書で使用される「対数減少」という用語は、生存微生物数の10倍または90パーセントの減少を意味する。「2対数」減少により、生存細菌数が9.9%減少することを意味する。「4対数」減少とは、生存細菌数が99.99%減少することを意味する。
【0044】
グラム陽性細菌は黄色ブドウ球菌(S.aureus)であることが好ましい。グラム陰性細菌は大腸菌(E.coli)であることが好ましい。一態様において、使用は本質的に非治療的である。別の態様において、使用は本質的に治療的である。その違いは当業者の知識の範囲内である。
【0045】
第3の態様によれば、10〜30秒の接触時間内に、生物表面または無生物表面上の少なくとも1つのグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌の細菌数を1〜5対数減少させることによって、前記表面を第1の態様による組成物と接触させることによって、前記表面を消毒する方法が開示される。
【0046】
グラム陽性細菌は黄色ブドウ球菌(S.aureus)であることが好ましい。グラム陰性細菌は大腸菌(E.coli)であることが好ましい。一態様において、使用は本質的に非治療的である。別の態様において、使用は本質的に治療的である。その違いは当業者の知識の範囲内である。一般に、治療は、身体の何らかの障害または機能不全の症状を治癒、緩和、除去もしくは軽減する、または、それに罹患する可能性を予防もしくは低減するように設計されたあらゆる治療を意味する。石鹸およびシャンプーなどの化粧品である組成物の場合、非治療的という用語は化粧品の使用または方法を意味する。
【0047】
生物表面という用語は、生きている動物、特に哺乳動物、より特定的には人間の表面を意味する。例としては、皮膚、頭皮、歯および髪が挙げられる。
【0048】
無生物表面という用語は、卓上、タイル、床材、木材、セラミックまたはプラスチック表面などの非生物表面を包含する。
【0049】
本発明による組成物の詳細
一態様では、本発明による組成物はホームケア組成物である。非限定的な例としては、洗濯用粉末、洗濯用液体、布地調整剤、フロアクリーナー、トイレ用洗浄組成物、食器洗い用組成物および他の硬質表面用洗浄組成物が挙げられる。
【0050】
あるいは、組成物は、パーソナルケア組成物またはパーソナルクレンジング組成物である。
【0051】
組成物の種類および意図する目的に応じて、組成物はそのような組成物中に通常存在する他の成分を含有するであろう。好ましくは、パーソナルケア組成物は化粧品組成物である。
【0052】
一態様では、化粧品組成物はリーブオンタイプである。それらは皮膚に適用され、長期間それと接触したままであることを意味する。リーブオン組成物は、好ましくは、適用後の組成物を除去するために表面を洗浄するその後の工程なしに表面(例えば皮膚)に適用される組成物を意味する。例としては、スキンクリーム、ローションおよびヘアクリームが挙げられる。
【0053】
あるいは、化粧品組成物はウォッシュオフタイプまたはリンスオフタイプのものであり、それはその名の通り、水で洗い流す必要がある組成物を意味する。例としては、ハンドウォッシュ液、棒状石鹸、シャンプーが挙げられる。
【0054】
すべての化粧品組成物は、好ましくはクリーム、ローション、ゲルまたはエマルジョンである化粧品として許容されるベースを含む。化粧品として許容されるベースは、通常、組成物の10〜99.9重量%、好ましくは50〜99重量%であり、他のパーソナルケア添加剤が存在しない場合、組成物の残りを形成することができる。
【0055】
パーソナルケア組成物(リーブオン)は、化粧品として許容される様々な乳化系または非乳化系およびビヒクルを用いて調製することができる。非常に適したベースはクリームである。バニシングクリームが特に好ましい。バニシングクリームベースは、一般に、5〜25%の脂肪酸および0.1〜10%の石鹸を含む。バニシングクリームベースは非常に高く評価されたマット感を肌に与える。C12〜C20脂肪酸は、バニシングクリームベースにおいて特に好ましく、さらにより好ましくはC14〜C18脂肪酸である。組成物中の脂肪酸は、より好ましくは、組成物の5〜20重量%の範囲の量で存在する。バニシングクリームベースの石鹸には、ナトリウム塩またはカリウム塩のような脂肪酸のアルカリ金属塩が包含され、最も好ましいのはステアリン酸カリウムである。
【0056】
特に好適な化粧品として許容されるベースは、連続相としてシリコーン油を含む油中水型エマルジョンを含むものである。油中水型エマルジョンは、架橋シリコーンエラストマーブレンドを含むことが好ましい。
【0057】
油中水型エマルジョン中にシリコーンエラストマーブレンドを包含させることは、化粧品組成物を調製するための化粧品として許容されるベースとして使用することができる。シリコーン流体を使用してもよいが、架橋シリコーンエラストマーが特に好ましい。シリコーン流体ポリマーとは対照的に、エラストマーの物理的性質は典型的には分子量よりもむしろ架橋の数に依存する。膨潤するシリコーンエラストマーの能力はそれらを油相のための理想的な増粘剤にする。エラストマーは、皮膚または髪に適用したときに非常に滑らかで柔らかな感触を有する。それらはまた、香料、ビタミンおよび化粧品組成物中の他の添加剤のための送達剤としても使用され得る。
【0058】
化粧品組成物は、好ましくは0.1〜5重量%のナイアシンアミドまたはその誘導体を含み得る。ナイアシンアミド以外に、他のよく知られている美白剤、例えば、アロエ抽出物、乳酸アンモニウム、アルブチン、アゼライン酸およびコウジ酸が包含され得る。
【0059】
さらに、組成物は日焼け止め剤を含み得る。ベースに包含され得る任意の日焼け止め剤が包含され得る。UVAおよびUVB日焼け止め剤の両方が好ましい。
【0060】
防腐剤もまた、潜在的に有害な微生物からそれらを保護するために組成物中に包含され得る。本発明の組成物に適した伝統的な防腐剤は、パラ−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルである。ごく最近使用されるようになった他の防腐剤には、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、および様々な四級アンモニウム化合物が包含される。
【0061】
様々な他の任意の材料を組成物にさらに包含させることができる。これらには以下のものが包含される:2−ヒドロキシ−4,2’、4’−トリクロロジフェニルエーテル(トリクロサン)、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシクロロベンゼン、および3,4,4’−トリクロロカルバニリドなどの抗菌剤、ポリエチレンおよびシリカまたはアルミナなどのスクラブおよび剥離粒子、メントールなどの冷却剤、アロエベラなどの皮膚鎮静剤、および着色剤。
【0062】
さらに、組成物は、エチレングリコールジステアレート、二酸化チタンまたはLytron(登録商標)621(スチレン/アクリレートコポリマー)などの乳白剤および真珠光沢剤をさらに包含してもよい。これらすべては製品の外観または特性を向上させる上で有用である。
【0063】
組成物が手用消毒剤の形態であるとき、化粧品として許容されるベースはアルコールおよび水を含み得る。最も好ましいアルコールは、エチルアルコールおよびイソプロピルアルコールである。2種以上のアルコールの混合物でさえ、手用消毒剤組成物中に好ましく使用することができる。アルコールの量は、手用消毒剤組成物の好ましくは50〜95重量%、より好ましくは60〜80重量%、最も好ましくは65〜80重量%の範囲である。
【0064】
本発明の組成物は広範囲の他の任意成分を含むことができる。CTFAパーソナルケア成分ハンドブック、第2版、1992年は、スキンケア業界で一般的に使用される多種多様の非限定的パーソナルケアおよび医薬成分を記載している。
【0065】
界面活性剤
パーソナルクレンジング組成物は、基本的なクレンジング作用のために1種以上の界面活性剤のベースを含有してもよい。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性または双性イオン性などの任意の種類のものであってよく、最終用途に従って選択することができる。アニオン性界面活性剤は、それらが良好な洗浄作用を提供し、かつ、様々なクレンジング組成物においてしばしば使用されるので最も好ましい。アニオン性界面活性剤は、長鎖脂肪酸のナトリウム/カリウム塩である石鹸ベースのものであり得る。
【0066】
好ましいクレンジング組成物は、5〜85重量%の界面活性剤、より好ましくは10〜70重量%の界面活性剤を含有する。界面活性剤の種類および全含有量は、組成物の意図する目的に依存し、例えば、組成物が棒状石鹸である場合、それは主に脂肪酸の石鹸(脂肪酸のアルカリ金属塩)を含有するであろう。マイルドなクレンジングバーの場合は、脂肪アシルイセチオネート界面活性剤を主に含有するであろう。同様に、シャンプーは大部分のアルキル硫酸ナトリウムまたはアルキルエーテル硫酸ナトリウムを含有するであろう。シャワージェルは通常、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムとベタインを含有する。
【0067】
通常、組成物は異なる種類の界面活性剤の混合物を含有するであろう。アニオン性界面活性剤は、例えば脂肪族スルホネート、例えば第一級アルカン(例えばC8−C22)スルホネート、第一級アルカン(例えばC8−C22)ジスルホネート、C8−C22アルケンスルホネート、C8−C22ヒドロキシアルカンスルホネートまたはアルキル。グリセリルエーテルスルホネート(AGS)、またはアルキルベンゼンスルホネートなどの芳香族スルホネートでもよい。アルファオレフィンスルホネートもアニオン性界面活性剤として適している。アニオン性界面活性剤はまた、アルキルサルフェート(例えば、C12−C18アルキルサルフェート)、特に第一級アルコールサルフェートまたはアルキルエーテルサルフェート(アルキルグリセリルエーテルサルフェートを含む)でもよい。アニオン性界面活性剤はまた、アルファスルホン化獣脂脂肪酸のようなスルホン化脂肪酸、アルファスルホン化獣脂メチルのようなスルホン化脂肪酸エステルまたはそれらの混合物であり得る。アニオン性界面活性剤は、アルキルスルホスクシネート(モノ−およびジアルキル、例えばC6−C22スルホスクシネートを含む)、アルキルおよびアシルタウレート、アルキルおよびアシルサルコシネート、スルホアセテート、C8−C22アルキルホスフェートおよびホスフェート、アルキルホスフェートエステルおよびアルコキシアルキルホスフェートエステル、アシルラクテートおよびラクチレート、C8−C2、モノアルキルスクシネートおよびマレエート、スルホアセテート、ならびにアシルイセチオネートでもよい。アニオン性界面活性剤の他の種類は、C8〜C20アルキルエトキシ(1〜20個のEO)カルボキシレートである。さらに別の適切なクラスのアニオン性界面活性剤は、C8−C18アシルイセチオネートである。これらのエステルは、アルカリ金属イセチオネートを、6〜18個の炭素原子および20未満のヨウ素価を有する混合脂肪族脂肪酸と反応させることにより調製される。混合脂肪酸の少なくとも75%が12〜18個の炭素原子を有し、25%以下が6〜10個の炭素原子を有する。アシルイセチオネートはアルコキシル化イセチオネートであってもよい。アルキルエーテルサルフェート、アルキルエーテルスルホスクシネート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルエーテルカルボン酸およびそれらの塩は、1分子当たり1〜20個のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド単位を含有していてもよい。
【0068】
本発明の組成物がパーソナルウォッシュ組成物であることが特に好ましい。より具体的には、棒状石鹸または液体石鹸組成物である。棒状石鹸は一般的にボディウォッシュ用を意図されているが、液体石鹸はボディウォッシュ用ならびにハンドウォッシュ用に使用できる。パーソナルウォッシュ組成物は、少なくとも10重量%のC
8〜C
22脂肪酸の石鹸を含むことが好ましい。
【0069】
これらの形態は、大部分の割合の脂肪酸石鹸をアニオン性界面活性剤として含有する。
【0070】
用語「脂肪酸石鹸」、より簡単には「石鹸」は、その一般的な意味で本明細書中において使用されている。脂肪酸石鹸は、中和形態の脂肪酸を指す。好ましくは、石鹸が由来する脂肪酸は、脂肪酸石鹸を形成する際に実質的に完全に中和されている、すなわちその脂肪酸基の少なくとも95%、さらに特に少なくとも98%が中和されている。用語「石鹸」は、本明細書では、通常天然トリグリセリドから誘導される脂肪族、アルカン、またはアルケンモノカルボン酸のアルカリ金属またはアルカノールアンモニウム塩を意味するために使用される。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアンモニウムカチオン、またはそれらの組み合わせが最も適している。通常、脂肪酸のブレンドが使用され、それから脂肪酸石鹸のブレンドが調製される。「石鹸」という用語は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアンモニウムカチオンまたはそれらの組み合わせを指す。一般に、ナトリウム石鹸が本発明の組成物に使用されるが、石鹸含有量の15%までが、カリウム、マグネシウムまたはトリエタノールアミン石鹸のような他の石鹸形態であり得る。
【0071】
使用され得る石鹸および他の界面活性剤の詳細な説明は、Schwartz、PerryおよびBerchによる「界面活性剤および洗剤」(第1巻および第2巻)に見出すことができる。
【0072】
棒状石鹸の製造
棒状石鹸/錠剤は、棒状石鹸の製造に関して文献に記載されそして当該技術分野において知られている製造技術を用いて調製することができる。利用可能な製造方法の種類の例は、1990年代の著書「Soap TechnologyFor the 1990’s(アメリカ石油化学者協会(イリノイ州、シャンペーン)のLuis Spitzによって編集;1990年)」に記載されている。これらは、溶融成形、押出し/スタンピング、および押出し、焼き戻し、および切断を広く含む。
【0073】
以下の非限定的な実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0074】
[実施例]
[実施例1]
いくつかの棒状石鹸は、標準的なすき刃混合経路によって調製された。組成物はそれらの処方に基づいてそれらを区別するようにコード化された。
【0075】
石鹸組成物AおよびB(表3参照)は本発明の範囲外であった。石鹸組成物1は本発明によるものであった。1つの組成物のみが抗菌性粒状材料を含有していた。処方物は、他のすべての成分およびそれらの重量%に関する限り、互いに異ならなかった。
【0076】
複合抗菌性粒状材料は以下のように調製した。
【0077】
10℃で5時間絶えず撹拌しながら、147gの塩化カルシウムと106gの炭酸ナトリウムとを混合することによって100gの多孔質炭酸カルシウム(固定化剤)を調製した。スラリーを5時間熟成し、濾過し、脱イオン水で洗浄しそして風乾した。
【0078】
このようにして調製した400mgの多孔質炭酸カルシウムを10mlの水中に分散させ、4mlの1重量%クエン酸三ナトリウム水溶液と混合した。混合物を80℃に加熱し、続いて新たに調製した0.25mlの2%硝酸銀を添加した。この混合物を300rpmで20分間撹拌した。混合物を濾過して粒子を分離し、これを風乾した。このプロセスにより、炭酸カルシウムと銀を金属形態で(ナノ粒子として)含有する複合抗菌性粒状材料が得られ、ここで銀は担体として作用する炭酸カルシウム中に埋め込まれた。銀ナノ粒子のサイズは、5〜50nmであった。
【0079】
これらの粒子は石鹸組成物1に含まれていた。比較分析のために、銀−DTPAを含有する棒状石鹸を調製した。これらの組成物は、組成物1中に存在していた抗菌粒子を含有していなかった。すべての棒状石鹸の組成(本発明の範囲内に入るものと本発明の範囲外にあるもの)を表2に示す。
【表2】
【0080】
手順:
各組成物の作業試験溶液(水溶液)を使用直前に調製した。手続き的/人的ミスを最小限にするために、試験は二重に行われた。
【0081】
棒状石鹸をその長さに亘って細かくすりおろし、約24gのすりおろした削りくずが得られた。無菌水を使用して、すりおろした削りくずから試料試験溶液(8w/v水溶液)を調製した。すりおろした削りくずは、溶解を促進するために溶液を温めることによって水中に完全に溶解させた。
【0082】
その後、作業試験溶液の10mlアリコートを別々の滅菌した〜50mlバイアルに分配し、各バイアルを40℃に維持した水浴中に5分間保った。
【0083】
トリプチケースソイブロスを含む滅菌チューブに、大腸菌および黄色ブドウ球菌を含有する凍結乾燥バイアルから接種した。培養物を35±2℃で23±1時間インキュベートした。ブロス培養物をペトリ皿に入ったトリプチケースソイ寒天培地の表面に接種し、35±2℃で23±1時間インキュベートした。これは固体培地の表面に各細菌の芝生をもたらし、それらからの増殖を用いてチャレンジ懸濁液を調製した。各ブロス培養物の純度は、トリプチケースソイ寒天培地上に単離ストリークを調製し、35±2℃でインキュベートすることによって確認した。
【0084】
20mlバイアルに、各バイアルが10mlの生成物試験溶液を含有するようにし、試験に使用した。
【0085】
各バイアルの内容物を40±1℃に維持した水浴中で撹拌した。チャレンジ懸濁液の0.1mlアリコートを試験溶液(100倍希釈)を含有する各バイアルに移し、そしてそれと混合した。チャレンジ懸濁液を40±1℃で生成物試験溶液に暴露した(30秒、較正された分/秒タイマーを使用して計時した)。較正された分/秒タイマーは、チャレンジ懸濁液の添加後±1秒以内に開始された。暴露時間が経過したら、生成物試験溶液/チャレンジ懸濁液を含有するバイアルから、中和剤(10
−1希釈)と共に9.0mlのD/EまたはButterfieldを含有する試験管に1.0mlアリコートを移し、ボルテックスミキサーで混合した。追加の10倍希釈液(例えば、10
−2、10
−3、および10
−4)を、適切なミキサーを用いて徹底的に混合しながら、中和剤と共にD/EまたはButterfield中で調製した。TSAを用いて中和剤と共に1.0mlおよび/または0.1mlのアリコートを二重に混釈し、例えば10
−1、10
−2、10
−3、10
−4、および10
−5の最終的な平板希釈物を得た。プレートを35±2℃で約24時間、または十分な増殖が観察されるまでインキュベートした。上記に記載した手順の3つの複製物を、独立して調製したチャレンジ懸濁液および製品試験溶液を各々使用して実施した。
【0086】
インキュベーション後、プレート上のコロニーを数えた。データの計算には、30〜300CFUの範囲の数が優先的に使用された。この範囲の数が観察されなかった場合、この範囲に最も近いコロニー数を有するプレートを使用した。
【0088】
表3のデータは以下のことを示している。
【0089】
石鹸組成物1は、組成物AおよびBと比較して優れた性能を示す。
【0090】
10秒終了後、組成物1は、黄色ブドウ球菌ならびに大腸菌を有意にさらに減少させた(統計的に有意)。これは、組成物1が、組成物AならびにBと比較して、ちょうど5分の1の量の銀を含有していたという事実にもかかわらずである(表2参照)。
【0091】
一方、30秒では、組成物1によって提供される黄色ブドウ球菌の対数減少の程度は、複合抗菌性粒状材料を含まない組成物によって引き起こされる減少よりも有意に大きい。
【0092】
大腸菌の場合、本発明の範囲外の組成物でさえも細菌の生菌数の5対数超過の減少をもたらすことが観察され得るが、重要な違いは、組成物1が、組成物AおよびBと比較して、ちょうど1/5の量の銀を含有することである。
本発明は一態様において以下を提供する。
[項目1]
(i)水不溶性無機担体中に埋め込まれた微量作用金属を含む複合抗菌性粒状材料、および
(ii)チモールもしくはテルピネオールの少なくとも一方またはそれらの混合物 を含む組成物。
[項目2]
前記無機担体は、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化バリウム、ヒドロキシアパタイトカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、層状ケイ酸塩、ゼオライト、粘土またはベントナイトのうちの少なくとも1つである、項目1に記載の組成物。
[項目3]
前記無機担体が炭酸カルシウムである、項目2に記載の組成物。
[項目4]
前記抗菌性粒状材料中の微量作用金属の量が前記粒状材料の0.1%〜10重量%である、項目1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
[項目5]
前記微量作用金属が銅または銀である、項目1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
[項目6]
0.0001〜5重量%の前記チモールまたはテルピネオールを含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
[項目7]
チモールおよびテルピネオールを含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
[項目8]
前記チモールの量と前記テルピネオールの量との重量比が1:0.1〜1:10である、項目1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
[項目9]
前記比が1:0.5〜1:2である、項目8に記載の組成物。
[項目10]
0.00005〜2重量%の前記微量作用金属に相当する量の前記複合抗菌粒子を含む、項目1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
[項目11]
パーソナルウォッシュ組成物である、項目1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
[項目12]
前記パーソナルウォッシュ組成物が、少なくとも10重量%のC8〜C22脂肪酸の石鹸を含む、項目11に記載の組成物。
[項目13]
10〜30秒の接触時間内に、生物表面または無生物表面上の少なくとも1つのグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌の細菌数を1〜5対数減少させることによって、前記表面を消毒するための、項目1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、非治療的である使用。
[項目14]
10〜30秒の接触時間内に、生物表面または無生物表面上の少なくとも1つのグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌の細菌数を1〜5対数減少させることによって、前記表面を項目1〜12のいずれか一項に記載の組成物と接触させることによって、前記表面を消毒する非治療的方法。