(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子を搭載する光半導体装置において、光半導体素子は、光半導体素子の信頼性を向上させるために封止剤を用いて封止される。光半導体装置を封止する方法としては、封止フィルムを用いて封止する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも1つのLED素子を基材上に載置し、第1及び第2の表面を有し、該第1の表面が基材フィルムで支持されたバインダーと、蛍光体粒子とを含む、所定の形状のラミネーション層を前記したLED素子上に配置し、前記ラミネーション層を第1の温度まで加熱し、該ラミネーション層を軟化させ、前記ラミネーション層とLED素子の周囲の基材との間で気密シールを形成し、次いで、前記基材フィルムを取り除いた上で、減圧下でラミネーション層を第2の温度まで加熱して前記ラミネーション層と基材の間の空気を除去し、その後、大気圧下に戻すことにより前記基材に対してラミネーション層をプレスしてLED素子を覆うラミネーション層を形成する、LEDデバイスの製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、基材ウエハーの第1の面の内側部分に載置された発光ダイオードアレイ等の物品を所定形状のラミネーション層でコンフォーマルコートする前に、前記したラミネーション層の中央部分を加熱して流動可能な状態にする1回の加熱工程を含む減圧ラミネーション方法であって、前記したラミネーション層の端部と前記第1の面の外側部分とで形成された気密シールと、前記したラミネーション層と、前記した第1の面とで構成された気密された内側領域により、加熱して流動可能な状態となった前記したラミネーション層の中央部分が前記した第1の面の内側部分から離れて配置される工程を含む、減圧ラミネーション方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、光半導体素子を封止するように使用される封止層を備える封止シートであって、前記した封止層を、周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で動的粘弾性測定することにより得られる貯蔵剪断弾性率G’と温度Tとの関係を示す曲線が、極小値を有し、前記した極小値における温度Tが、60℃以上、200℃以下の範囲にあり、前記した極小値における貯蔵剪断弾性率G’が、5Pa以上、1,000Pa以下の範囲にある封止シートを用意するシート用意工程と、基材に配置される光半導体素子を用意する素子用意工程と、前記した封止シートを、60℃以上、200℃以下の温度で、前記した光半導体素子に対して熱プレスする熱プレス工程と、を備えることを特徴とする、封止光半導体素子の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、光半導体素子に直接的または間接的に貼着するように使用される貼着層を備える貼着シートであって、前記した貼着層を、周波数1Hzおよび昇温速度20℃/分の条件で動的粘弾性測定することにより得られる貯蔵剪断弾性率G’と温度Tとの関係を示す曲線が、極小値を有し、前記した極小値における温度Tが、40℃以上、200℃以下の範囲にあり、前記した極小値における貯蔵剪断弾性率G’が、1,000Pa以上、90,000Pa以下の範囲にある貼着シートを用意するシート用意工程と、基材に配置される光半導体素子を用意する素子用意工程と、前記した貼着シートを、40℃以上、200℃以下の温度で、前記した光半導体素子に対して直接的または間接的に熱プレスする熱プレス工程と、を備えることを特徴とする、貼着光半導体素子の製造方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、封止フィルムを用いて、より簡便に光半導体素子を封止することができる、封止光半導体デバイスの製造方法が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、封止フィルムを用いて簡便に且つ高い信頼性で光半導体素子を封止できる、封止光半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討し、封止フィルムを用いて光半導体素子を封止する場合に、特定の温度条件でラミネート工程を行うことにより、簡便且つ高い信頼性で基板上に搭載された光半導体素子を封止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法は、
減圧チャンバー内で光半導体素子を搭載する光半導体素子搭載基板上に封止フィルムを載置し、前記減圧チャンバー内を減圧する工程、
前記封止フィルムを加熱して、前記封止フィルムの少なくとも周辺部を前記光半導体素子搭載基板の表面に熱融着させる工程、
前記減圧チャンバー内の減圧を解除して、前記封止フィルムで前記光半導体素子搭載基板を封止する工程を含み、
前記減圧チャンバー内の減圧を解除する時点の前記光半導体素子搭載基板の温度T
2が、前記封止フィルムが0.02〜0.15MPaの引張強度及び150〜450%の破断伸度を示す温度であることを特徴にする。
【0012】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法において、封止フィルムが、熱硬化性シリコーン樹脂で構成されることが好ましい。
【0013】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法において、封止フィルムが蛍光体を含有する場合、前記の封止フィルム中に90質量%以下の蛍光体を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法において、封止フィルムが、10μm以上300μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0015】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法において、温度T
2が、70℃以上180℃以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法において、光半導体素子間の最小距離が、封止フィルムの厚さよりも長いことが好ましい。
【0017】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法において、光半導体素子の高さTと、光半導体素子間の距離Lとのアスペクト比(T/L)が、最大で3以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法は、簡便且つ高い信頼性で封止光半導体デバイスを製造できるという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
[封止光半導体デバイスの製造方法]
本発明に係る封止光半導体デバイスの製造方法は、
(1) 減圧チャンバー内で光半導体素子を搭載する光半導体素子搭載基板上に封止フィルムを載置して、前記減圧チャンバー内を減圧する工程、
(2) 前記封止フィルムを加熱して、前記封止フィルムの少なくとも周辺部を前記光半導体素子搭載基板の表面に熱融着させる工程、及び、
(3) 前記減圧チャンバー内の減圧を解除して、前記封止フィルムで前記光半導体素子搭載基板を封止する工程を含み、
前記減圧チャンバー内の減圧を解除する時点の前記光半導体素子搭載基板の温度T
2が、前記封止フィルムが0.02〜0.15MPaの引張強度及び150〜450%の破断伸度を示す温度であることに特徴がある。
【0022】
こうした本発明によれば、減圧下で封止フィルムを加熱して封止フィルムの周辺部を光半導体素子搭載基板の表面に熱融着させる工程により、封止フィルムと光半導体素子搭載基板の封止される領域の表面の間に気密空間を形成する工程と、減圧を解除して封止フィルムにより光半導体素子搭載基板を封止する工程とを一連した操作で行うことができるので、簡便に封止光半導体デバイスを製造できる。また、減圧チャンバー内の減圧を解除する時点の光半導体素子搭載基板の温度T
2が、封止フィルムが光半導体素子の形状に沿って光半導体素子を被覆する(以下、「コンフォーマルラミネーション」とも言う)ことが可能な力学的物性を示す温度に設定されているので、高い信頼性で光半導体デバイスを封止できる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0023】
(1) 減圧チャンバー内で光半導体素子を搭載する光半導体素子搭載基板上に封止フィルムを載置して、減圧チャンバー内を減圧する工程は、減圧チャンバー内に封止対象である光半導体素子を搭載する光半導体素子搭載基板上に封止フィルムを配置した後、減圧チャンバー内を減圧する工程である。封止フィルムは封止対象である光半導体素子を封止するのに適した位置で光半導体素子搭載基板上に載置される。
【0024】
減圧チャンバーは、光半導体素子搭載基板及び封止フィルムを加熱する加熱手段を内部に備える。好ましくは、減圧チャンバーは、加熱手段として、光半導体素子搭載基板及び封止フィルムを加熱するための熱板を内部に備える。こうした減圧チャンバーとしては、例えば、真空ラミネート装置が例示される。工程の安定上、減圧チャンバーは、内部の減圧が完了する前に封止フィルムの周辺部が光半導体素子搭載基板に熱融着することを防ぐために、好ましくは、内部の減圧が完了するまで光半導体素子搭載基板と加熱手段とが接触するのを防ぐための機構を備える。こうした減圧チャンバーとしては、特に限定されないが、例えば、リフトピン昇降機構を有する真空ラミネータが挙げられる。また、専用のラミネーション治具を用いることにより、ダイアフラム型真空ラミネータを用いることもできる。例えば、ラミネーション治具は、スプリング等の弾性体で光半導体素子搭載基板を支える構造を有しており、ダイアフラムゴム膜が定常位置にある場合は、光半導体素子搭載基板を加熱手段から離しておくことができ、ダイアフラムゴム膜に圧力がかかった場合、ラミネーション治具に備えられた弾性体を押圧して光半導体素子搭載基板を加熱手段に接することができるように設計される。また、ラミネーション治具は、ダイアフラムゴム膜がラミネーション治具を押圧する場合であっても、ダイアフラムゴム膜が光半導体素子搭載基板及び封止フィルムに直接接しないように、光半導体素子搭載基板及び封止フィルムを保護する構造を有する。
【0025】
光半導体素子は、特に限定されないが、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0026】
光半導体素子搭載基板は、光半導体素子を搭載又は実装している基板である。こうした基板としては、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。光半導体素子搭載する基板としては、例えば、銀、金、および銅等の導電性金属;アルミニウム、およびニッケル等の非導電性の金属;PPA、およびLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、および窒化アルミナ等のセラミックス等が挙げられる。
【0027】
封止フィルムは、封止対象である光半導体素子を封止するためのものであり、封止剤をフィルム形状に加工したものである。封止フィルムは単独で用いてもよいし、2枚以上で用いてもよい。2枚以上の封止フィルムを用いる場合、同じ種類の封止フィルムを2枚以上用いてもよいし、異なる種類の封止フィルムを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
封止フィルムを構成する封止剤は、熱可塑性材料又は熱硬化性材料で構成され得る。こうした材料としては、有機ポリマー又はシリコーンであり得る。有機ポリマーとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチルビニルアセテート(EVA)樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリレート樹脂、又はポリ(ビニルブチラール)樹脂が挙げられる。シリコーンとしては、熱可塑性シリコーン又は熱硬化性シリコーンが挙げられ、例えば、ホットメルトシリコーン又は線状シリコーン(又は「直鎖状シリコーン」)が挙げられる。シリコーンはまた、縮合反応、ヒドロシリル化反応、又はフリーラジカル反応により硬化され得る。ある実施形態によれば、封止フィルムは、熱可塑性樹脂で構成され得る。別の実施形態によれば、封止フィルムは、熱硬化性樹脂で構成され得る。さらに別の実施形態によれば、封止フィルムは、熱硬化性シリコーン樹脂で構成され得る。封止フィルムとしては、例えば、国際公開第2016/065016号により開示されているものを使用することができる。このような封止フィルムとしては、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名LF−1200やLF−1201として入手可能である。
【0029】
封止フィルムは、透明性を有する封止フィルムとして使用することもできるが、蛍光体を含有してもよい。蛍光体としては、特に限定されないが、例えば、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体が挙げられる。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色〜黄色発光蛍光体、セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体、および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色〜黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色〜緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するY
2O
2S系赤色発光蛍光体が例示される。これらの蛍光体は、1種または2種以上の混合物を用いてもよい。
【0030】
蛍光体の平均粒子径は、限定されないが、通常1μm以上、好ましくは5μm以上で、50μm以下、好ましくは20μm以下の範囲内である。平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法で体積累積平均粒子径(D
50)を測定することにより測定できる。
【0031】
蛍光体の含有量は、特に限定されないが、封止フィルム中に通常90質量%以下の量である。一方、その含有量の下限は限定されず、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは60質量%以上の量である。
【0032】
封止フィルムは、その他任意成分として、沈降シリカないし湿式シリカ、ヒュームドシリカのような補強性充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシラザン等の有機ケイ素化合物により疎水化処理したもの、アルミナ、焼成シリカ、酸化チタン、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質増量充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末、染料、顔料、難燃剤、耐熱剤等を配合することができる。
【0033】
封止フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上、好ましくは20μm以上で、300μm以下、好ましくは200μm以下である。
【0034】
光半導体素子搭載基板において、光半導体素子は1つ実装されていてもよいし、2つ以上の複数で実装されていてもよい。好ましくは、光半導体素子搭載基板は複数の光半導体素子を搭載している。光半導体素子搭載基板が複数の光半導体素子を搭載している場合、光半導体素子間の最小距離は、封止フィルムによる光半導体素子の形状に沿った被覆、すなわち、コンフォーマルラミネーションの形成を確保するために、封止フィルムの厚さよりも長いことが好ましい。そのため、光半導体素子間の最小距離は、通常10μm以上であり、好ましくは20μm以上である。また、光半導体素子間の最大距離は、特に限定されないが、通常、封止フィルムの厚さの2倍よりも短い。そのため、光半導体素子間の最大距離は、通常600μm以下であり、好ましくは400μm以下である。また、コンフォーマルラミネーションの形成を確保するために、光半導体素子の頂面から光半導体素子搭載基板の表面までの距離、すなわち、光半導体素子の高さTと、光半導体素子間の距離Lとのアスペクト比(T/L)は、好ましくは最大で3以下であり、より好ましくは最大で2.5以下、さらに好ましくは最大で2以下となるように設計される。
【0035】
減圧チャンバー内の減圧は、従来公知の減圧手段によって行うことができ、例えば、減圧チャンバーの内部と接続された真空ポンプを稼働させることにより行われる。通常、減圧チャンバー内の気圧は300Pa以下、好ましくは、200Pa以下、あるいは133Pa以下まで減圧される。
【0036】
(2) 封止フィルムを加熱して、封止フィルムの少なくとも周辺部を光半導体素子搭載基板の表面に熱融着させる工程は、封止フィルムを温度T
1以上に加熱して、封止フィルムを柔軟にして撓ませることにより封止フィルムと光半導体素子搭載基板を接触させ、封止フィルムの少なくとも周辺部を光半導体素子搭載基板の封止される領域の周辺部に熱融着させて、封止フィルムと光半導体素子搭載基板の封止される領域の表面の間に気密空間を形成する工程である。この工程により、封止フィルムにコンフォーマルラミネーションのための適した柔軟性を付与すると共に、封止フィルムと光半導体素子搭載基板の封止される領域の表面の間の空間を密閉(「シール」とも言う)して気密状態にすることができる。
【0037】
封止フィルムの加熱は、減圧チャンバーに備えられた加熱手段により行われる。例えば、加熱手段としては、減圧チャンバー内に備えられた熱板を利用できる。通常、封止フィルムは、光半導体素子搭載基板を加熱することにより加熱される。例えば、加熱手段として熱板を利用する場合、光半導体素子搭載基板と熱板を接触させることにより、光半導体素子搭載基板より封止フィルムに熱が伝わり、封止フィルムが加熱される。
【0038】
この工程において、封止フィルムは、温度T
1以上の温度であって、温度T
2以下の温度に保持される。温度T
1は、チャンバー減圧中にフィルムの熱融着が発生して、封止される領域を気密にできない(空気がトラップされて残留する)ほど高温でなければ特に限定されず、高くとも60℃である。また、封止フィルムは、通常、温度T
1以上T
2以下の温度に1分以上10分以下の間保持される。これは、10分を超えて保持されると、封止フィルムの硬化が進行し、ラミネート不良を起こしやすくなるからである。
【0039】
封止フィルムを加熱して、封止フィルムの少なくとも周辺部を光半導体素子搭載基板に熱融着させる工程は、上記(1)工程が完了した後で行われてもよいし、上記(1)工程が完了する前に、上記(1)工程の実行中に行われてもよい。すなわち、減圧チャンバー内の減圧が所定の範囲まで減圧される前に封止フィルムの温度T
1以上への加熱を開始してもよい。工程の安定性から、(2)工程は、上記(1)工程の減圧チャンバー内の減圧が完了してから行われることが好ましい。
【0040】
(3) 減圧チャンバー内の減圧を解除して、封止フィルムで光半導体素子搭載基板を封止する工程は、減圧チャンバー内の減圧を解除して、封止フィルムと光半導体素子搭載基板の封止される領域の表面の間の気密空間と、外気との気圧差により、封止フィルムを光半導体素子搭載基板に対して圧着させ、光半導体素子搭載基板をラミネートする工程である。
【0041】
「減圧チャンバー内の減圧を解除する」とは、通常、減圧チャンバーを大気に開放して減圧チャンバー内の減圧を大気圧まで戻すこと意味する。大気圧まで直ぐに戻す必要はなく、封止フィルムを光半導体素子搭載基板に対して圧着させて光半導体素子のコンフォーマルラミネーションを可能にする範囲で徐々に減圧を解除してもよい。通常、減圧チャンバー内の減圧は10kPa/秒の速度、好ましくは、50kPa/秒の速度、あるいは100kPa/秒の速度で大気圧まで戻される。これは、減圧から大気圧までの速度があまりに遅いと、気密のリークが発生し、ラミネーションが十分にできないおそれがあるからである。
【0042】
減圧チャンバー内の減圧を解除する時点での光半導体素子搭載基板の温度T
2は、封止フィルムが光半導体素子のコンフォーマルラミネーションの形成を可能にするのに適した物理的特性を有する温度に設定される。具体的には、温度T
2は、封止フィルムが0.02〜0.15MPaの引張強度及び150〜450%の破断伸度を示す温度である。好ましくは、T
2は、封止フィルムが0.03MPa以上の引張強度を示す温度である。好ましくは、T
2は、封止フィルムが0.12MPa以下の引張強度を示す温度である。また、好ましくは、T
2は、封止フィルムが200%以上の破断伸度を示す温度である。好ましくは、T
2は、封止フィルムが400%以下の破断伸度を示す温度である。封止フィルムの引張強度及び破断伸度は、本発明の実施前に予め当該技術分野の通常の方法により測定される。例えば、TAインスツルメント社製、RSA−G2動的粘弾性測定機を用いて測定することができる。封止フィルムが温度T
2で上記した物理的特性を示すことにより、高い信頼性で基板上に搭載された光半導体素子を封止できる。
【0043】
減圧チャンバー内の減圧を解除する時点での光半導体素子搭載基板の温度T
2は、上記した条件を満たせば特に限定されないが、例えば、70℃以上、好ましくは90℃以上であり、180℃以下、好ましくは150℃以下である。
【0044】
以下、図面を用いて本願発明の特定の実施形態をより詳細に説明する。
【0045】
図1は、減圧チャンバーとして、リフトピン昇降機構を有する真空ラミネータ10を用いて実施される本発明に係る製造方法の一例を示す模式的な断面図である。
【0046】
図1(a)は、当該実施形態における本発明の工程(1)を示している。この工程(1)において、光半導体素子2を搭載する光半導体素子搭載基板1上に、封止フィルム3が載置されている。また、光半導体素子搭載基板1は、リフトピン13によって昇降可能な中板12上に配置されている。真空ラミネータ10の内部は、開口14を介して減圧手段(図示せず)と接続しており、減圧手段の働きにより真空ラミネータ10の内部が減圧される。ここで、工程(1)の開始時点では、中板12はリフトピン13によって熱板11から離れて設置されており、真空ラミネータ10内部の減圧が十分に進行する前に熱板11によって封止フィルム3が温度T
1以上に加熱されるのを防ぐことができる。このため、工程の安定性が確保できる。
【0047】
図1(b)は、当該実施形態における本発明の工程(2)を示している。この工程(2)において、リフトピン13を下降させ、中板12を熱板11と接触するように移動させる。その結果、熱板11からの熱が光半導体素子搭載基板1を介して封止フィルム3に伝わり、封止フィルム3が温度T
1より高い温度まで加熱される。封止フィルム3が加熱されると、封止フィルム3は柔軟になって変形し、封止フィルム3の周辺部20が光半導体素子搭載基板1の表面と接触し、周辺部20は半導体素子搭載基板1の表面に熱融着される。この時、封止フィルム3と光半導体素子搭載基板1の封止される領域の表面の間に気密空間21が形成される。
【0048】
図1(c)は、当該実施形態における本発明の工程(3)を示している。この工程(3)において、半導体素子搭載基板1の温度がT
2となった時点で、開口14を介して真空ラミネータ10内部の減圧を解除することにより、外気と気密空間21(
図1(c)には図示されていない)との気圧差によって封止フィルム3が光半導体素子搭載基板1に対して圧着され、光半導体素子2が封止される。その結果、封止光半導体デバイス30が得られる。工程(3)において、光半導体素子搭載基板1の温度が、封止フィルムが光半導体素子のコンフォーマルラミネーションの形成を可能にするのに適した物理的特性を示す温度である、温度T
2となった時点で真空ラミネータ10の内部の減圧を解除することにより、封止フィルム3による光半導体素子2の形状に沿った被覆を高い信頼性で形成できる。
【0049】
図2は、減圧チャンバーとして、ダイアフラム型真空ラミネータ40及びラミネーション治具50を用いて実施される、本発明に係る製造方法の一例を示す模式的な断面図である。
【0050】
図2(a)は、当該実施形態における本発明の工程(1)を示している。ダイアフラム型真空ラミネータ40の内部は、ダイアフラムゴム膜41を介して上室42と下室43に分かれており、上室42と下室43の内部は、それぞれの開口15及び16を介して減圧手段(いずれも図示せず)に接続しており、減圧手段の働きにより上室42と下室43の内部が減圧される。なお、上室42の開口15は、加圧手段にも接続されていてもよい。この図では、下室43内で、光半導体素子2を搭載する光半導体素子搭載基板1上に封止フィルム3が載置されている。さらに、光半導体素子搭載基板1は、専用のラミネーション治具50の内部に配置されている。このラミネーション治具50は、スプリング51を備えており、スプリング51により、ラミネーション治具50は熱板11から離れて設置されており、下室43の減圧が十分に進行する前に熱板11によって封止フィルム3が温度T
1以上に加熱されるのを防ぐことができる。このため、工程の安定性が確保できる。
【0051】
図2(b)は、当該実施形態における本発明の工程(2)を示している。この工程(2)において、上室42の減圧を、開口15を介して解除する。これにより、上室42と下室43(
図2(b)には図示されていない)の減圧差によりダイアフラムゴム膜41が下室43を押圧するように変形し、スプリング51が押圧されて、ラミネーション治具50が熱板11と接触する。その結果、熱板11からの熱が光半導体素子搭載基板1を介して封止フィルム3に伝わり、封止フィルム3がT
1以上の温度まで加熱される。封止フィルム3が温度T
1以上に加熱されると、封止フィルム3は柔軟になって変形し、封止フィルム3の周辺部20が光半導体素子搭載基板1の表面と接触する。その結果、周辺部20は半導体素子搭載基板1の表面に熱融着され、封止フィルム3と光半導体素子搭載基板1の封止される領域の表面の間に気密空間21が形成される。この実施形態において、ラミネーション治具50の上枠52の構造により、ダイアフラムゴム膜41が下室43を押圧した場合であっても、ダイアフラムゴム膜41により封止フィルム3が半導体素子搭載基板1に対して押圧されるのを防ぐことができ、その結果、気密空間21の形成を確保できる。
【0052】
図2(c)は、当該実施形態における本発明の工程(3)を示している。この工程(3)において、半導体素子搭載基板1の温度がT
2となった時点で、開口16を介して下室43内部の減圧を解除することにより、外気と気密空間21(
図2(c)には図示されていない)との気圧差によって封止フィルム3が光半導体素子搭載基板1に対して圧着され、光半導体素子2が封止される。その結果、封止光半導体デバイス30が得られる。工程(3)において、光半導体素子搭載基板1の温度が、封止フィルム3が光半導体素子2のコンフォーマルラミネーションの形成を可能にするのに適した物理的特性を示す温度である、温度T
2となった時点で、下室43の内部の減圧を解除することにより、封止フィルム3による光半導体素子2の形状に沿った被覆を高い信頼性で形成できる。
【実施例】
【0053】
本発明の封止光半導体デバイスの製造方法を実施例および比較例により詳細に説明する。但し本発明は以下の実施例の記載に限定されない。
【0054】
[封止フィルム]
熱硬化性シリコーン組成物(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名LF−1200)に対して、75質量%、及び85質量%の量でYAG系黄色発光蛍光体粒子(Intematix社製、商品名NYAG4454−S、平均粒径8μm)を混合し、厚さ100μmの封止フィルムA(蛍光体粒子75質量%含有)、及び封止フィルムB(蛍光体粒子85質量%含有)を調製した。
【0055】
同様に、熱硬化性シリコーン組成物(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名LF−1201)に対して、75質量%、及び85質量%の量でYAG系黄色発光蛍光体粒子(Intematix社製、商品名NYAG4454−S、平均粒径8μm)を混合し、厚さ100μmの封止フィルムC(蛍光体粒子75質量%含有)、及び封止フィルムD(蛍光体粒子85質量%含有)を調製した。
【0056】
封止フィルムA〜Dの90℃、100℃、110℃、120℃、及び/又は130℃での引張強度及び破断伸度を、TAインスツルメント社製、RSA−G2動的粘弾性測定機を用いて測定した。長さ10mm、幅25mmのサイズの測定サンプルを調製し、引張速度を10mm/分として測定した。結果を以下の表1に示す。
【0057】
[光半導体素子搭載基板]
光半導体素子搭載基板として、ガラス基板上に、奥行き1mm、幅1mm、高さ0.15mmの直方体状の光半導体素子を、縦に10個、横に10個配置した光半導体素子搭載基板を用いた。光半導体素子間の距離Lは均等に0.15mmであり、光半導体素子の高さTと光半導体素子間の距離Lとのアスペクト比(T/L)は1であった。
【0058】
[実施例1〜5及び比較例1〜9]
封止フィルムA〜Dを用いて、上記半導体素子搭載基板に対して真空ラミネーションを行った。減圧チャンバーとしては、真空ポンプと接続したリフトピン昇降機構を有する真空ラミネータ(日清紡メカトロニクス社製、商品名PVL−0505Sリフトピン機構付き)を用いた。まず、真空ラミネータ内の熱板から離れた位置に配置されたリフトピン昇降機構により昇降可能な中板上に光半導体素子搭載基板を設置し、その上に封止フィルムA、B、C、又はDを載置した。次いで、真空ポンプを駆動させて真空ラミネータ内を133Paまで減圧させた。次いで、中板を下降させて100℃〜180℃に加熱された熱板に接触させた。その後、封止フィルムを3分〜7分間かけて加熱し、光半導体素子搭載基板の温度が所定の温度T
2に達した時点で10秒間かけて減圧を大気圧まで戻して、封止光半導体デバイスを得た。
【0059】
得られた封止半導体デバイスを目視により観察して、ボイド及び/又はクラックの発生の有無を確認した。結果を以下の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から、実施例1〜5の製造方法で製造された封止光半導体デバイスは、ボイド及び/又はクラックの発生を生じることがなく、封止フィルムにより、光半導体素子の形状に沿った被覆が形成されていることが確認された。