(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
注入された前記トレーサが、放射線不透過性造影剤のボーラスである、ここにおいて、各時間放射能曲線の前記ファーストパスピークが、前記ピクセル/ボクセルに到達する前記ボーラスに対応する、請求項1に記載の方法。
プロセッサによって遂行されるとき、前記プロセッサに請求項1に記載の方法を遂行または実行させるコンピュータ実行命令を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
複数の放出断層撮影画像に基づいてヒト心臓の左心房または右心房の容積を推定するためのシステムであって、請求項1に記載の方法を実行するように配置されたプロセッサを備えるシステム。
前記複数の放出断層撮影画像は、0.5〜10秒隔てられた時間フレームと30〜60秒のスキャニング時間とを使用して、ヨウ化造影剤の静脈内注入を用いたコンピュータ断層撮影によって生成される、請求項5に記載の方法。
前記複数の放出断層撮影画像は、0.1〜10秒隔てられた時間フレームと30〜60秒のスキャニング時間とを使用して、ガドリニウム系造影剤を用いたCMRによって生成される、請求項5に記載の方法。
前記複数の放出断層撮影画像は、3〜10秒隔てられた時間フレームと30〜60秒のスキャニング時間とを使用して、前記同位元素分子リガンドが、注入後に肺を通る前記ファーストパス中に肺組織内に保持されない限り、任意の分子とリンクされたSPECT対応可能な同位元素を用いた単一光子放出断層撮影(SPECT/ガンマ線カメラ)によって生成される、請求項5に記載の方法。
前記複数の放出断層撮影画像は、1〜10秒隔てられた時間フレームと30〜60秒のスキャニング時間とを使用したPETによって生成される、請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、言及されたように、一般に、PET画像に基づいて、ヒト心臓ならびに/もしくは左心房および右心房などのその中の心室および腔、またはヒト心臓を備えるヒト中心循環をモデル化するための方法に関する。さまざまな心室と中心循環における大血管とをセグメント化することによって、セグメント化されたモデルが取得され、それから、さらなるパラメータおよび情報が取得可能である。
【0029】
ガンマ線カメラを使用する、CT、MRI、およびシンチグラフィなどの他のイメージング技術も使用可能である。
【0030】
本開示は、特に、とりわけ、左心房(LA)が、ボーラス曲線下面積および中間時間の画像を使用して自動的にセグメント化可能であるという発明者の知見に関係する。左心室(LV)腔の中間時間を参照として使用して、LAは、高いファーストパス活性とLVの中間時間よりも短い中間時間とをもつ領域としてセグメント化可能である。類似したやり方では、右心房(RA)がセグメント化可能であり、それによって、LAとRAの両方に対して、特定の心房の容積の正確な推定が取得可能である。
【0031】
この方法を使用して、いくつかの患者コホートのデータがレトロスペクティブに分析された。確認された心不全(HF)をもつ34人の患者および僧帽弁閉鎖不全(MI)をもつ14人の患者において、本発明の方法によって測定されたLA容積は、それぞれ心エコー法または心磁気共鳴映像法(CMR)から導き出されたLA容積と比較された。心筋症の疑いがある15人の患者は、再現性をアセスメントするために2回スキャンされた。最後に、技法は、進行する冠動脈疾患におけるLA容積をアセスメントするために充血心筋血流(MBF)および冠血流予備能に基づいてグループ化された、冠動脈疾患の疑いのある患者の大規模なグループに適用された。
【0032】
良好な相関が、心エコー法(r
2=0.79)およびCMR(r
2=0.67)に対して見出されたが、有意差があった(p<0.001)。方法の再現性は高かった(クラス内相関係数=0.945)。正常なMBFおよびCFRをもつ患者では、LAインデックスは、心機能障害の進行ともに増加された26.5±7.0mL・m
-2(anova p<0.001)であり、HFおよびMIをもつ患者において最も高かった(それぞれ42.4±17.5mL・m
-2および59.5±21.5mL・m
-2)
第1の好ましい実施形態では、したがって、本発明は、電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像などの複数の放出断層撮影画像に基づいて心房(左(LA)または右(RA))の容積を推定するための方法に関し、前記方法は、
a)複数のピクセルおよび/またはボクセルに対する注入されたトレーサの時間放射能曲線を抽出するステップと、
b)時間放射能曲線のファーストパスピークを、
i.最大ダウンスロープをもつ2つ以上の連続したフレームt
x〜t
x+nを検出し、ここにおいて、xおよびnは両方とも正の整数である、
ii.たとえば、限定するものではないが、指数関数あてはめ、線形あてはめ、またはガンマ関数あてはめなどのあてはめ手順を使用して、前記連続したフレーム内でC
PET(t
x)およびC
PET(t
x+n)を使用する最大ダウンスロープを外挿し、
iii.t
x+nまで元のC
PET(t)の活性としてファーストパスピークを規定し、それに続いて、最大ダウンスロープをもつフレームから始まるダウンスロープのあてはめを行うこと
によって隔離するステップと、
c)それぞれ、質量中心および総面積を使用して前記ファーストパスピークのセントロイド時間t
midと曲線下面積AUCとを抽出し、それによって、t
midとAUCの両方に対する3次元画像を与えるステップと、
d)高い心室−血液コントラストを示す画像、たとえば、限定するものではないが、基底関数方法を使用して生成されるパラメトリック画像またはトレーサ保持の後期画像を使用して心室を規定するステップと、
e)心室領域の内部にある心室腔を規定するステップと、
f)腔時間放射能曲線を取得するステップと、
g)ファーストパスピークを抽出するステップと、
h)結果として生じるセントロイドと、AUCと、心室腔の場所とをt
midとして、AUCをt
LV、t
RV、AUC
LV、およびAUC
RVとして記憶するステップと、
i)t
midとAUC画像とを使用して、AUC
LVの3分の2よりも大きいAUCをもつすべての領域としてマスクを規定するステップと、
j)前記マスクから、
・LA容積推定の場合
iv.t
LVマイナスt
LVとt
RVとの差の半分よりも小さいt
mid、または
v.t
LVプラス2つの心拍の持続時間よりも大きいt
mid、または
vi.LV腔内に位置する領域、
のいずれかをもつすべての領域を除去し、
vii.マスクの重心を規定し、
viii.この重心からの中間距離の1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、または1.9倍などの、好ましくは1.5倍である、1よりも大きい、前記マスク内のすべての領域を除去し、
ix.結果として生成されるマスクを損ない、続いて、薄いチューブ状領域すなわち肺静脈を除去するために拡張/拡大を行うステップ、
・RA容積推定の場合
x.t
LVマイナスt
LVとt
RVとの差の半分よりも大きいt
mid、または
xi.t
RVプラス2つの心拍の持続時間よりも大きいt
mid、もしくはRV腔内に位置する領域、または
xii.真上にあるスライスと比較して前記スライスに対するマスクの面積の、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、もしくは60%、好ましくは約50%などの、かなりの増加をもつ垂直方向スライスを識別することによる、垂直方向のチューブ状形状すなわち大静脈を描く領域
のいずれかをもつすべての領域を除去するステップと、
k)残りのマスクの総容積を、平均LAまたはRA容積の推定として使用するステップと
を備える。
【0033】
一実施形態では、MBF、PTF(灌流可能組織分画)、ならびに血液量補正V
AおよびV
RVのパラメトリック画像は、心
15O−水試験に対する単一組織コンパートメントモデルの基底関数実装
【0035】
を使用して推定され、ここで、V
Tは0.91ml・g
-1に固定されている。
【0036】
第1の好ましい実施形態による方法のステップa)〜k)は、好都合には、プロセッサによって遂行されるとき、前記コンピューティングデバイスに、前記ステップa)〜k)を備える方法を遂行または実行させるように構成される命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピューティングデバイスを用いることによって自動化可能である。
【0037】
本開示は、
15O−H
2O−PETが、確立された経肺希釈方法を使用して、心筋の
15O−H
2O−PETによって同時におよび量的にうっ血と前負荷とを推定可能であり、これは、パルスインデックス付き輪郭心拍出量(PICCO)によって適用されるものに類似しているという本発明者らの知見にさらに関係する。
【0038】
本発明者らは、心臓拡張末期容積(GEDV)および肺含水量(EVLW)は
15O−H
2O−PET検査によって測定可能であるという仮説を立てた。したがって、試験は、PICCOによって測定されたEVLWおよびGEDVならびに肺動脈カテーテル法(PAC)によって測定された肺毛細血管楔入圧(PCWP)を、肺うっ血のブタモデルにおけるEVLWおよびGEDVの陽電子放出断層撮影(PET)由来尺度と比較するために行われた。試験は、心拍出量(CO)、EVLW、およびGEDVのPETとPICCO測定との間の良好な相関をそれぞれ示した。
【0039】
第2の好ましい実施形態では、したがって、本発明は、陽電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像などの複数の放出断層撮影画像に基づいた肺血管外水分量(EVLW)および心臓拡張末期容積(GEDV)の定量的推定のための方法に関し、この方法は、
a)対象となる以下の領域に対して、複数のピクセルおよび/またはボクセルに対する注入されたトレーサの時間放射能曲線を取得するステップと、
(1)右心室の外側すぐの大静脈内(たとえば、右心臓の前、VC)、
(2)肺動脈の基部において(右心臓の後/肺の前、PA)、
(3)肺静脈の1つ、左心房の外側すぐ(左心臓の前、肺の後、PV)、
(4)LVOTのすぐ上の大動脈の基部において(左心臓の後、AA)、
b)各時間放射能曲線に対して、ボーラスのファーストパスピークを隔離し、対応するセントロイドを取得するステップと、
c)以下の通過時間を計算するステップと、:
・右心臓通過時間(RTT)=PA−VC
・肺通過時間(PTT)=PV−PA
・左心臓通過時間(LTT)=AA−PV
・総通過時間(TTT)=AA−VC
・心通過時間(CTT)=RTT+LTT
d)以下の各コンパートメントの容積を取得するために、上記の通過時間の各々にトレーサ(たとえば
15O−H
2O−PET)由来心拍出量(CO)を乗算するステップと、
・右の心臓拡張末期容積(RGEDV)=CO×RTT
・肺水容積(PWV)=CO×PTT
・左の心臓拡張末期容積(LGEDV)=CO×LTT
・胸腔内総容積(ITTV)=CO×TTT
e)GEDVをLGEDVとRGEDVの合計として計算するステップと、
・GEDV=LGEDV+RGEDV
f)EVLWを胸腔内総容積と胸腔内血液量との間の差として計算するステップであって、
・EVLW=ITTV−ITBV
ITBVは1.25*GEDV−28.4mLとして規定される、ステップ
を備える。
【0040】
第2の好ましい実施形態による方法のステップa)〜f)は、好都合には、プロセッサによって遂行されるとき、コンピューティングデバイスに、前記ステップa)〜f)を備える方法を遂行または実行させるように構成される命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を備える前記コンピューティングデバイスを用いることによって自動化可能である。
【0041】
ヒト心臓ならびに/または左心房および右心房などのその中の心室および腔をモデル化するための一般的な、または全体的な方法は、ヒト心臓の陽電子放出断層撮影(PET)および単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)画像などの複数の放出断層撮影画像に基づき、各画像は、特定の時間に注入されたトレーサの濃度を表す。この一般的な方法はA:複数のピクセルおよび/またはボクセルに対して注入されたトレーサの時間放射能曲線を抽出する、第1のステップを備えることがある。PETシステムは、トレーサによって間接的に放出された放射線を検出し、すなわち、トレーサが血流内に注入された後、時間放射能曲線は、経時的にピクセル/ボクセル内の放射線を観察することによって取得可能である。この方法は、B:時間放射能曲線のファーストパスピークを隔離するステップであって、各ピークは、対応するピクセル/ボクセルにおける注入されたトレーサの到達時間に対応する、隔離するステップをさらに備えることがある。「ファーストパス」は、トレーサがピクセル/ボクセルに到達する第1の時間を指すことがある。次いで、トレーサは、より低い濃度で循環する。この方法は、C:心臓の少なくとも2つの部分を備えるモデルを規定するステップであって、少なくとも2つの部分は、閾値に対するファーストパスピークの比較に基づいてピクセルおよび/またはボクセルを選択することによって隔離される、規定するステップをさらに備えることがある。
【0042】
PETは、上記で参照されたように、ヒト心臓ならびに/または左心房および右心房などのその中の心室および腔を前記モデル化するために好ましい方法であるが、トモグラフィ画像を生成するための他の方法も、本発明の好ましい実施形態による方法において使用可能である。推奨トレーサおよび/またはパラメータ設定に関するいくつかの可能な選択肢は、以下で例示的な実施形態として言及される。
・0.5〜10秒隔てられた時間フレームと10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用して、好ましくはヨウ化造影剤の静脈内注入を用いた、コンピュータ断層撮影、
・0.1〜10秒隔てられた時間フレームと、10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用する、好ましくはガドリニウム系造影剤を用いた、CMR、
・3〜10秒隔てられた時間フレームと10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用して、前記同位元素分子リガンドが、注入後に肺を通るファーストパス中に肺組織内に保持されない限り、好ましくは放射性同位元素(任意の分子とリンクされた任意のSPECT対応可能な(amenable)同位元素)を用いた、単一光子放出断層撮影(SPECT/ガンマ線カメラ)、または
・1〜10秒隔てられた時間フレームと10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用する、注入後に肺を通る前記ファーストパス中に肺組織内に前記同位元素および標識分子が保持されない限り、任意のPET対応可能な放射性同位元素を用いたPET。
【0043】
上記で説明される好ましい実施形態による方法は、対象となる部分に対する輪郭と領域とを規定するためのさまざまな技法を伴うことがある。トレーサの濃度、またはたとえばピークの大きさは、周囲組織に対して、心室および心臓の大血管内で比較的高い。いくつかのピクセルに対する曲線下面積(AUC)と質量中心(セントロイド時間)のx座標とを計算することによって、AUCの画像およびセントロイドの画像が取得される。一般的な方法は、少なくとも2つの部分内のピクセルおよび/またはボクセルのファーストパスピークの到達時間を比較することによって、互いに対して少なくとも2つの部分を配置し、それによって、ヒト心臓のセグメント化されたモデルを取得するステップDをさらに備えることがある。部分の既知の逐次的順序を利用することによって、部分は、セグメント化されたモデルを取得するために、互いに対して配置可能である。次いで、一般的な方法のステップCおよびDは、少なくとも2つの部分をサブ部分にさらに分割し(一般的な方法のステップC)、それらのファーストパスピークの到達時間を比較することによって互いに対してサブ部分を配置する(一般的な方法のステップD)ことによって反復的に繰り返され、ヒト心臓のモデルは、さらにセグメント化され得る。たとえば、大静脈と、右心房と、右心室と、肺動脈の基部と、左心房に近い肺静脈と、左心房と、左心室と、心臓の上行大動脈の基部とを備えるモデルなどの、心室と心臓の大血管とを備えるセグメント化されたモデルが、取得されることがある。
【0044】
放出断層撮影画像は、陽電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像であってよい。放射性トレーサは、放出断層撮影イメージングに使用される放射性リガンドのタイプであると言われ得る。PETにおいて使用可能であるいくつかの放射性トレーサがあり、これらの放射性トレーサは、C−11、N−13、O−15、およびF−18などの放射性同位元素を備える。PETは、心臓疾患における最も重要な予後および診断マーカの1つである、心筋自体における血流を定量化するために、ますます使用される。PETトレーサ
15O−水は、血流を取得する最も正確なやり方である。現在開示されている方法の一実施形態では、トレーサは
15O−水である。
【0045】
現在開示されている方法が実行される前に、トレーサは、血流内に、好ましくは、大静脈の直前などの、心臓の右心房に入る静脈内に、注入されていなければならない。一実施形態では、この方法は、心臓に入る静脈内にトレーサを注入するステップを備える。
部分の隔離
PETの間、注入されたトレーサは、身体内を、特に血管を通って、伝播するとき、PETスキャナによって画像化可能である。それによって、PETスキャナは、いくつかの時点においてトレーサ濃度のいくつかの逐次的画像を生成し得る。点は、たとえば30秒、1分、2分、またはより長い時間範囲中に画像を表すことがあり、たとえば毎秒、5秒、10秒の間隔(およびそれによって、画像)で分割され得る。トレーサ注入と同時にPET獲得を開始するとき、PETトレーサのボーラスは追跡可能である。本開示では、ボーラスは、少ない注入量における高濃度のPETトレーサと呼ばれることがあり、濃度面積または領域を規定する。特に、注入後の限られた時間の間、ボーラスが追跡されることがある。しばらく後、トレーサは、身体全体を通じて分布され、本開示の意味におけるボーラスはない。トレーサの伝播(およびボーラス)の一例は、
図1A〜
図1Dにおいて見られ得る。ボーラスが大静脈(VC)内に到達し(
図1A)、次いで、肺動脈上にさらに到達し(
図1B)、次いで、肺静脈、心臓の左側、および大動脈上にさらに到達し(
図1C)、次いで、下行大動脈上にさらに到達する(
図1D)ことが見られ得る。
【0046】
次いで、トレーサは、身体全体を通じて分布する。一般的には、既知のシステムおよび方法では、これらの以下の画像が、次いで、灌流などの物理的進行を計算するために使用される。本開示では、注入に続く画像の初期シーケンスは、ヒト心臓のセグメント化モデルをモデル化するために使用される。
【0047】
1つのステップでは、インジケータ希釈分析が、トレーサのピクセル/ボクセルに対する時間放射能曲線を抽出するために実行されることがある。ピクセル/ボクセルに対するPET濃度曲線の一例が、
図2に示されている。プロセスは、いくつかのピクセル/ボクセルに対して実行される。ピクセルまたはボクセルは、血液分画を備えることがある。大きな血液分画を備えるピクセルは、一般的には、
図2に示されるように、異なるピークを有する。
図2では、トレーサが注入された直後、濃度が非常に低いことが見られ得る。ボーラスが、ピクセルによって表される血液内に到達したとき、濃度およびピークの急速な増加がある。ボーラスがピクセルを通過した後、濃度は、より一定で、より低いレベルに戻る。
【0048】
好ましくは、ファーストパスピークであることがあるピークが、別のステップにおいて識別され、好ましくは隔離され、これは、指数関数的ダウンスロープあてはめによって達成可能である。トレーサの再循環のための補正の後、ピーク曲線が取得され、これも
図2に示されている。ピークから、曲線下面積が計算されてよく、セントロイド時間も計算されてよく、セントロイド時間は、
図2の図のx軸の質量中心に対応する。次いで、これらの値は、
図5A〜
図5Bに示されるように、いくつかのピクセル/ボクセルのためのマップとして表されることがある。
図5Aは、いくつかのピクセルに対するAUC値を示し、
図5Bは、ボーラスのセントロイドのマップを示す。
図5Aでは、心臓の腔および下行大動脈がマップ内に見える。肺は、何らかの活性を示し、身体の残りはピークを示さない。
【0049】
図5Bは、ボーラスのセントロイドのマップを示す。したがって、この図は、ボーラスの到達時間の表現として見られてよい。カラースケールを使用した濃いエリアに対応する、右心房に対応する最小セントロイドをもつ領域があることが見られ得る。わずかに大きい到達時間、すなわちわずかに明るい色をもつ領域は、心臓の右心室を表す。肺に対応する領域に対する到達時間(またはセントロイド)は、心臓の右側の到達時間(またはセントロイド)よりもわずかに大きい(すなわち、時間的に遅い、明るい)が、心臓の左側よりも小さい(濃い)。最後に、左心房、左心室、および下行大動脈は、各々が肺のものよりも大きい増加していくセントロイド(ますます明るい灰色)を(その順番で)示す。
【0050】
以下で説明されるように、本発明によれば、マップ内の2つのタイプの情報(ボーラスの物理的留置およびボーラスのタイミング)が、心室と中心循環における大血管とを隔離および配置し、それによって、具体的には前記ヒト心臓の左心房または右心房の容積の推定を含む、ヒト心臓のセグメント化されたモデルを取得するために、組み合わされてよい。
【0051】
モデルを規定するステップは、心臓の少なくとも2つの部分を備えることがあり、周囲組織から2つの部分を隔離するステップを備える。現在開示されている方法の一実施形態では、少なくとも2つの部分が、閾値に対するピークの面積の比較に基づいてピクセルおよび/またはボクセルを選択することによって、隔離される。これは、ボーラスが、この初期フェーズでは、血液内すなわち血管内に滞在し、したがって、画像は、循環内の血液の変位を反映すると仮定されるという仮定を利用することによる物理的領域の隔離に対応することがある。一実施形態では、少なくとも2つの部分が、閾値に対するピークの面積の比較に基づいてピクセルおよび/またはボクセルを選択することによって、隔離される。ピークのある最小レベルは、血管内にあるピクセルに対応すると考えられるが、閾値を下回るピクセルは、他の組織を表すと考えられる。
【0052】
上記で述べたように、注入されたトレーサは、放射線不透過性造影剤のボーラスであってよく、各時間放射能曲線のファーストパスピークは、ピクセル/ボクセルに到達するボーラスに対応する。一実施形態では、時間における質量中心は、ピクセル/ボクセルの時間放射能曲線の各々に対して取得される。この情報は、次いで、特にヒト心臓の左心房または右心房の容積の推定を含む、本開示による前記ヒト心臓のセグメント化モデルを取得するために組み合わされることがある。
セグメント化
本発明の1つの目的は、さまざまな心室と中心循環内の大きな血管と(心臓、肺、ならびに肺血管などの)をセグメント化することである。一実施形態では、セグメント化は、最初、前記2つの部分の第1の部分が心臓の左部分であり、前記2つの部分の第2の部分が心臓の右部分であるように実行される。部分の隔離から、たとえば
図5Aにおいて説明され示されるように、いくつかの部分が利用可能である。
図5Bに示されるように、部分に利用可能であるタイミング情報もある。次に、少なくとも2つの部分内のピクセルおよび/またはボクセルのファーストパスピークの到達時間を比較することによって、互いに対して少なくとも2つの部分を配置することで、特定の一実施形態ではヒト心臓の左心房または右心房の容積の推定を取得するために用いられ得る、前記ヒト心臓のセグメント化されたモデルが取得される。より具体的には、セントロイドおよび血液量(スケーリングされたAUC)画像が取得されているとき、それらは、何らかのランドマーク情報を使用して処理可能である。たとえば、肺が、手動でまたは自動的に識別される場合、中心循環の残りの領域は、動脈(セントロイド>肺)領域および静脈(セントロイド<肺)領域に分割可能である。
【0053】
一実施形態では、複数のピクセルおよび/またはボクセルは、ヒト心臓内の参照点に対応する。各参照点は、心臓の心室または血管に対応し得る。参照点を各部分に割り当てることによって、参照点の到達時間は、部分がどのように配置可能であるかを決定するために比較可能である。c)心臓の少なくとも2つの部分を備えるモデルを規定するステップであって、少なくとも2つの部分は、閾値に対するファーストパスピークの比較に基づいてピクセルおよび/またはボクセルを選択することによって隔離される、規定するステップと、d)その部分内のピクセルおよび/またはボクセルのファーストパスピークの到達時間を比較することによって、少なくとも2つの部分を互いに対して配置するステップとが反復的に繰り返される場合、モデルは、さらにセグメント化されてよい。少なくとも2つの部分のうちの1つまたは複数をサブ部分にさらに分割し、ファーストパスピークの到達時間を比較することによって互いに対してサブ部分を配置することによって、中心循環における心室および大血管のモデルが取得されることがある。
【0054】
一実施形態では、モデル化されることになる心室は、心臓の右心房、右心室、左心房、および左心室から選択される。より好ましくは、少なくとも2つの部分は、大静脈、右心房、右心室、肺動脈の基部、左心房に近い肺静脈、左心房、左心室、および心臓の上行大動脈の基部から選択される、心臓の心室および大血管に対応する。一実施形態では、c)心臓の少なくとも2つの部分を備えるモデルを規定するステップであって、この少なくとも2つの部分は、閾値に対するファーストパスピークの比較に基づいてピクセルおよび/またはボクセルを選択することによって隔離される、規定するステップと、d)少なくとも2つの部分内のピクセルおよび/またはボクセルのファーストパスピークの到達時間を比較することによって互いに対して少なくとも2つの部分を配置するステップとは、大静脈、右心房、右心室、肺動脈の基部、左心房に近い肺静脈、左心房、左心室、および心臓の上行大動脈の基部が取得されるまで、反復的に繰り返される。心臓の心室および大血管に対応する少なくとも2つの部分は、順次フローモデルを形成することがある。大静脈、右心房、右心室、肺動脈の基部、左心房に近い肺静脈、左心房、左心室、および心臓の上行大動脈の基部のいずれかを備えるフローモデルなどの順次フローモデルを血流がそれらを通って流れる順に使用することによって、参照点に対する到達時間は、セグメントを識別するために比較および配置可能である。
【0055】
述べられたように、部分内のピクセルおよび/またはボクセルのファーストパスピークの到達時間を比較することによって、部分は、部分の所定の順番を考慮して画像内で配置され、それによって、ヒト中心循環のセグメント化モデルを取得することができる。参照点を部分に割り当てることによって、次いで、通過時間が、部分および/またはサブ部分の任意の2つの参照点間で計算可能であり、計算される。次いで、異なる部分間の通過時間および心臓のセグメント化モデルが、スキャンからいくつかのパラメータをさらに抽出および計算するために使用され、これらのパラメータは、そうでない場合、追加の臨床検査を必要とするであろう。
【0056】
一実施形態では、通過時間が、心臓の右部分の入口境界における参照点と心臓の右部分の出口境界における参照点との間で、および/または肺の入口境界における参照点と肺の出口境界における参照点との間で、および/または心臓の左部分の入口境界における参照点と心臓の左部分の出口境界における参照点との間で、計算される。通過時間は、任意の2つ以上のサブ部分の間でも計算され得る。
適用例
セグメント化モデルは、いくつかの適用例に利用され得る。一実施形態では、方法は、セグメント化モデルに基づいて部分および/またはサブ部分の容積を計算する追加ステップをさらに備える。心拍出量も、取得されたセグメント化モデルに基づいて計算されることがある。部分間の通過時間は、各心室の有効容積を計算するために、心拍出量が乗算されることがある。したがって、他の実施形態では、部分および/またはサブ部分の容積を計算するステップは、部分またはサブ部分に対する通過時間に、同じ部分/サブ部分に対して計算された心拍出量を乗算するステップを備える。拡張した心室は、心疾患の徴候であり、拡張した特定の心室は、心疾患のタイプを示す。さらに、心臓拡張末期容積は、この方法を使用して非侵襲的に計算可能である。容積は、心前負荷条件の強力なマーカであるが、通常は、動脈カテーテル法を必要とし、したがって、重篤な患者においてのみ使用される。
【0057】
本発明の第1の好ましい実施形態は、心疾患エリアにおける例に関する。左心房(LA)容積は、心筋血流(MBF)と無関係な心血管系リスクのマーカであり、同時に両方をアセスメントすることは、リスク層別化の助けとなる。しかしながら、PETデータからLA容積を導き出すことは、労働集約的であり、観察者変動を受けやすい。
【0058】
陽電子放出断層撮影(PET)を使用した定量的心筋血流(MBF)測定は、冠動脈疾患(CAD)における虚血性負荷をアセスメントするために、または微小血管機能障害(MVD)をアセスメントするために、ますます使用されている。CADとMVDの両方は、減少された心機能および心不全につながり得る。結果として、構造情報および機能情報は、疾患重症度を完全に評価するために、MBF測定よりも必要とされる。左心室(LV)構造および機能のアセスメントは、定量的なMBF測定と同時に実行可能であり、収縮機能に関する情報を生じる。一方、左心房(LA)構造は、アセスメントするのがより複雑であり、別個の構造イメージングを必要とすることが多いが、LV充満圧力と、したがって拡張期機能の強力なマーカとを提供する。
【0059】
LA容積の予後関連性は、いくつかの研究[Tsang TSMら、J Am Coll Cardiol. 2006年、第47巻、1018〜23]、[Moller JEら、L Circulation 2003年、第107巻、2207〜12]、および[Benjamin EJら、Circulation、1995年、第92巻、835〜41]において実証されており、MBFまたは冠血流予備能(CFR)と無関係な心イベントにおけるリスク要因であることがわかった。心臓および肺を通るPETトレーサのボーラスのファーストパスの間、血液プールのみが見える。したがって、このフェーズは、以前に示されるように[Koh ASら、EurJ Nucl Med MolImaging. 2015年、第42巻、1551〜61]、左心房輪郭を手動で追跡することによって左心房の輪郭を描くために利用可能であるが、これは、労働集約的であり、観察者変動を受けやすい。
【0060】
これまで、MBFおよびCFRに加えて左心房容積を取得するための動的心PETスキャンのファーストパスフェーズの完全自動分析は利用可能でなく、したがって、動的MBF PETスキャンからLA容積を取得するための自動化された方法に関する本発明の第1の好ましい実施形態は、臨床的に非常に重要な開発である。
【0061】
以下でさらに説明される前記自動化された方法は、心エコー法または心磁気共鳴(CMR)イメージングのどちらかとの比較によって検証された。方法の再現性は、異なるトレーサを使用したテストを含む検定−再検定設定においてアセスメントされた。最後に、新しい方法が、MBFの標準的な臨床アセスメントのために参照された患者の大規模コホートに適用された。
心房容積の推定のためのPET−CT
被験者は、水と毎日の摂取が処方された医薬品を除いて、各PET試験の前に>4時間絶食するように指示された。偵察(scout)CTスキャンの後、低線量CTスキャン(120kV、30mAs、4mmスライス厚)が実行された。これに続いて、自動注入システムを使用した、末梢静脈内の5〜10mLボーラス(1mL・s
-1)としての
15O−水の400MBqのボーラス注入と同時に始まり、続いて、係属中のPCT出願WO2016/203055において説明されるのと同様に35mL生理食塩水フラッシュ(2.0mL・s
-1)が行われる、6分リストモード放出スキャンが実行された。放出データは、リストモードで獲得され、
15O−水に対して22の時間フレーム(1×10s、8×5s、4×20s、2×15s、3×20s、2×30s、2×60s)を用いた動的シリーズにおいて再構成された。
【0062】
すべての動的画像は、各スキャナの標準的な動的再構成プロトコルを使用して再構成され、ベンダによって提供された減衰、散乱、不感時間、および崩壊のためのすべてのルーチン補正を適用した。MR患者を除いて、すべての被験者は、140ug/kgの持続的な注入の後でアデノシン誘発ストレススキャンを受けた。繰り返された試験の場合、第2の
15O−水スキャンは、第1の
15O−水スキャンの終了の少なくとも10分(5半減期)後に始められた。
心エコー法
心エコー記録は、Vivid9スキャナ(バージョンBT12、GE Vingmed、Ultrasound、Horten、Norway)を使用して取得された。LA容積は、LV駆出分画に対してbiplane方法を使用して決定されたが、EchoPAC(GE Vingmed、Ultrasound、Horten、Norway)において「容積/心房」機能を使用した。手短に言えば、LAの心エコー境界線は、収縮末期では、僧帽弁の開放の直前においてトレースされ、拡張末期では、心尖部4つの心室(4CH)像および2つの心室(2CH)像の両方における僧帽弁平面の閉鎖において追跡された(
図15を参照されたい)。心耳および肺静脈は除外された。画像獲得中、4CHと2CHとの間で0.5cmよりも大きいLA長(LAL)における偏差を回避するために注意が払われた。3つの心周期の平均が測定されたが、心房細動の場合は、5サイクルが使用された。
左心房容積の計算
左心房容積は、到達時間とファーストパスボーラスの場所とを追跡することによって取得された。これは、ボーラス到達時間と曲線下面積の両方の画像の作成と、これらのパラメータの、右心室腔および左心室腔の基準値との比較とを必要とする。
ボーラスエリアおよび到達時間のパラメトリック画像
データは、以下のように分析された[Harms HJら、Automatic generation of absolute myocardial blood flow images using
15O−H
2O and a clinical PET/CT scanner、EurJNuclMedMolImaging、2011年、第38巻、930〜9と、Harms HJら、Automatic Extraction of Myocardial Mass and Volume Using Parametric Images from Dynamic Nongated PET、J Nucl Med[インターネット]、2016年、第57巻、1382〜7を参照されたい]。最初に、各ボクセルに対して、ファーストパスピークが自動的に抽出された。これに関して、最大ダウンスロープをもつ2つの連続したフレームt
1およびt
2が、最初に検出された。次いで、これらのフレーム内のC
PET(t
1)およびC
PET(t
2)が、ダウンスロープの指数関数あてはめを規定するために使用され、その後、次いで、ファーストパスピークが、最大ダウンスロープをもつフレームから始まるダウンスロープの指数関数あてはめに続く、t
2までの元のC
PET(t)の活性として規定された。このピークのセントロイド時間t
midおよび曲線下面積AUCはそれぞれ、質量中心および総面積を使用して抽出された。これは、t
mid(
図11A)およびAUC(
図11B)の両方に対する3次元画像という結果になる。高いAUCおよび1.5分未満のt
midをもつ領域が識別され、血液領域と考えられた。
左心室および右心室のセグメント化
動脈入力関数および静脈入力関数は、6つのクラスタを使用するクラスタ分析[Harms HJら、EurJNuclMedMolImaging、2011年、第38巻、930〜9]を使用して取得された。この後、MBF、PTF、ならびに血液量補正V
AおよびV
RVのパラメトリック画像が、心
15O−水試験に対する単一組織コンパートメントモデルの基底関数実装
【0064】
を使用して推定され、ここで、V
Tは0.91ml・g
-1に固定された。
【0065】
結果として生じるパラメトリック画像は、短軸画像に自動的に向きが変えられ、左心室は、以前に説明された方法[Harms HJら、J Nucl Med[インターネット]、2016年、第57巻、1382〜7]を使用してセグメント化された。短軸画像の同じセットを使用して、右心室(RV)は、V
A画像の代わりにV
RVが円周プロファイリングの開始点として使用されたことを除いて、LVと類似のやり方でセグメント化された。
【0066】
次いで、LV腔およびRV腔が、心筋領域の内部における、セグメント化された心筋領域から少なくとも1.3cm(6.5mm半値全幅の推定PET分解能の2倍)離れたすべての領域として規定された。両方の腔に対して、時間放射能曲線が取得され、ファーストパスピークが抽出され、結果として生じるt
midおよびAUCに対する値は、t
LV、t
RV、AUC
LV、およびAUC
RVとして記憶された。
左心房のセグメント化
パラメトリックt
midおよびAUC画像を使用して、マスクは、AUC
LVの2/3よりも高いAUCをもつすべての領域として規定された。次いで、t
LVマイナスt
LVとt
RVとの間の差の半分よりも小さいt
mid、t
LVプラス2つの心拍の持続時間よりも大きいt
mid、またはLV腔内に位置する領域のどちらかをもつすべての領域が、僧帽弁平面がLV壁のセグメント化中に適切に規定されたと仮定して、マスクから除去された。
【0067】
左心房から大動脈を分離するために、左心室流出路が、心筋セグメントの最も基礎的な短軸平面を使用して規定された。この平面内で、LVOTは、0の壁厚をもつ領域として規定され、2つの別個の領域が見つけられるまで、より基礎的な平面に外挿された。
【0068】
マスクから肺静脈を除去するために、マスクの第1の重心が規定された。この重心からの中間距離の1.5倍よりも大きいマスク内のすべての領域は、左心房における少なくとも中程度の球形度を仮定して、除去される。最後に、結果として生じるマスクは損なわれ、これに続いて、薄いチューブ状領域すなわち肺静脈を除去するために、拡張が行われる。残りのマスクの総容積が取得され、平均LA容積の推定として使用される。
データ分析
グループ5内の患者は、それぞれのストレスMBF値に基づいて分割された。すべてのセグメント内で2.3mL/g/分を上回るストレスMBFおよび2.5を上回る冠血流予備能をもつ患者は正常と分類され、単一の領域内で2.3mL/g/分を下回るストレスMBFをもつ患者は1Vと分類され、2.5を下回るが1.5を上回る全体のCFRをもつ患者は3Vと考えられ、1.5を下回るCFRをもつ患者はMVDとして分類された。
【0069】
PET尺度とエコー尺度との間の相関および合致は、線形回帰とブランドアルトマンプロットとを使用してアセスメントされ、クラス内相関係数(ICC)は、再現性をアセスメントするために使用された。対応のあるt検定が、系統的な差の存在をアセスメントするために使用された。再現性係数(RPC)は、差の標準偏差の2倍と規定された。患者グループ間の差は、スチューデントのt検定を使用してアセスメントされた。データは、平均±SDとして提示される。
【0070】
CMRおよび心エコー法の場合、重み付き平均LA容積は、LA
mean=(LA
ESV+2*LA
EDV)/3として計算された。
結果
左心房のセグメント化は、すべての被験者において成功した。HF患者に対するPET由来LA容積と心エコー法由来LA容積(
図7)およびMR患者に対するCMR由来LA容積(
図8および
図9)の相関は、高かった(それぞれr=0.88およびr=0.82)。方法の再現性(
図10)は優れており(ICC=0.93)、再現性係数は8.6mL/m
2であった。
議論、心房推定
本明細書で開示される本発明は、第1の好ましい実施形態では、動的
15O−水PET試験において左心房または右心房をセグメント化する自動化された方法を提示し、標準的な情報MBFに加えて心房容積情報を生じる。高い相関は、解剖学的ゴールドスタンダード尺度を用いて見出され、方法は、検定−再検定設定において高度に再現可能であった。
【0071】
この試験に含まれるMI患者は、ペアにされた
15O−水試験および
11C−アセテート試験を受け、優れた相関が、
15O−水由来LA容積と
11C−アセテート由来LA容積との間で、または
11C−アセテートとCMRとの間で、見出された。さらに、比較的急速な注入を用いた
82Rb試験のみが含まれたならば、良好なトレーサ間再現性が、ペアにされた
15O−水試験および
82Rb試験を受けた患者のコホートにおいて見出された。異なるトレーサおよび適切なゴールドスタンダードを用いたさらなる検証が必要とされるが、これらの結果は、本明細書で開示される方法が、さまざまなトレーサに適用するのに成功することができることを示す。
【0072】
本明細書において上記で開示された、第2の好ましい実施形態による方法は、以下でさらに説明される肺血管外水分量(EVLW)および心臓拡張末期容積(GEDV)の定量的な推定のための自動化された方法に関し、肺うっ血のブタモデルにおける、PICCOによって測定されたEVLWおよびGEDVならびに肺動脈カテーテル法(PAC)によって測定された肺毛細血管楔入圧(PCWP)と、EVLWおよびGEDVの陽電子放出断層撮影(PET)由来尺度の比較によって検証された。
【0073】
データは、企業内で開発されたソフトウェアを使用して分析された。対象となる4つの領域(ROI)のセットは、(1)右心室の外側すぐの大静脈内(たとえば、右心臓の前、VC)、(2)肺動脈の基部において(右心臓の後/肺の前、PA)、(3)肺静脈の1つ、左心房の外側すぐ(左心臓の前、肺の後、PV)、(4)LVOTのすぐ上の大動脈の基部(左心臓の後、AA)において描かれた。各ROIに対して、時間放射能曲線が取得され、ボーラスのファーストパスのピークが隔離され、各曲線に対する対応するセントロイドを取得した。
【0074】
その後、以下の通過時間が計算可能である。
右心臓通過時間(RTT)=PA−VC
肺通過時間(PTT)=PV−PA
左心臓通過時間(LTT)=AA−PV
総通過時間(TTT)=AA−VC
心通過時間(CTT)=RTT+LTT。
【0075】
次いで、これらの要因の各々は、各コンパートメントの容積を得るために、
15O−H2O−PET由来心拍出量(CO)が乗算された。
右の心臓拡張末期容積(RGEDV)=CO×RTT
肺水容積(PWV)=CO×PTT
左の心臓拡張末期容積(LGEDV)=CO×LTT
胸腔内総容積(ITTV)=CO×TTT
最後に、GEDVは、LGEDVとRGEDVの合計と規定される。PICCOは、肺水容積のみを除く、冷たい生理食塩水の注入部位から動脈サーミスタ(termistor)部位までの容積全体を測定するが、PET方法は心腔内容積のみを表すことを確認することが重要である。したがって、PET由来GEDVは、PICCOから取得されたGEDVよりも低いことが予想された。
【0076】
胸腔内血液量(ITBV)を計算するために、純粋に血管内薬剤と含水量全体内で薄くなる薬剤との間に、ある関係すなわち(ITBV=1.25*GEDV−28.4mL)が適用された。以下では、EVLWは、胸腔内総容積と胸腔内血液量との間の差、すなわち、EVLW=ITTV−ITBVと規定される。
【0077】
前方一回拍出量(SV)は、心拍出量を心拍数で除算することによって測定された。
結果
PICCOおよびPETによって測定された心拍出量(CO)は、相関が認められた(r
2=0.79、p<0.001)。HRの初期変化および侵襲的な血行動態にもかかわらず、COは、生理食塩水が注入されるまで影響されなかった(PICCO:p=0.80、PET:p=0.83)。しかしながら、COは、生理食塩水の3Lと10Lとの間で異ならず(PICCO:p=0.80、PET:p=0.39)、COのPICCO測定とPET測定との間に差はなかった(p=0.85、双方向anova、相互作用検定)。これらの変化は、試験全体を通じた一回拍出量(SV)の全体的な減少を実証した(PICCO:p=0.004、PET:p=0.03)。しかしながら、これは主に、ベースライン(BL)からABまでのSVの初期減少によって駆動され(PICCO:p=0.001、PET:p=0.03)、次いで、これに続いて、生理食塩水注入の開始後の増加がみられた(PICCOとPETの両方に対してp<0.001)(表1)。
【0078】
PICCOおよびPETによって測定されたEVLWは、相関が認められ(r
2=0.41、<0.001)、試験全体を通じて増加した(表1)。ハンスフィールドユニット(HU)は、試験中に徐々に増加し、PICCOまたはPETのどちらかによって測定されたEVLWとの正の相関が認められ(両方に対して、p<0.001)、うっ血が実証された(
図18)。しかしながら、HUは、PETによって測定されたEVLWと最良の相関を有した(PICCO:r
2=0.36、PET:r
2=0.45(両方に対してp<0.001))。
【0079】
EVLWと同様に、PICCOおよびPETによって測定されたGEDVは、相関が認められ(
図17、r
2=0.41(p<0.001))、一回拍出量(SV)の初期減少にもかかわらず、BLからAB−10Lまで着実に増加した(p<0.001、表1)。
【0081】
この結果は、単一動的
15O−H
2O PET検査は、EVLWとGEDVとを測定するために適用可能であり、したがって、肺うっ血および前負荷の程度を定量的にアセスメントすることを実証する。そのような知見は、第2の好ましい実施形態による方法が、現在、通常の日常的な慣習中に外来患者設定でこれらの手段を非侵襲的に実行し、それらの手段を予後および治療手法の文脈において評価するやり方を提示するので、非常に興味深く、臨床的に関連がある。
【0082】
したがって、追加の予後値は、
15O−H
2O−PET検査から導き出され得る。結果は、単一動的
15O−H
2O PET検査は、肺血管外水分量(EVLW)と心臓拡張末期容積(GEDV)とを測定するために適用可能であり、したがって、肺うっ血および前負荷の程度を定量的にアセスメントすることを実証する。重要なことに、これらのパラメータは、心筋灌流イメージング中の副産物であり、追加のPET検査を前提としない。したがって、方法は、通常の日常的な慣習中に外来患者設定でこれらの手段を非侵襲的に実行し、それらの手段を予後および治療手法の文脈において評価する便利で実践的なやり方を提供する。
【0083】
第1の好ましい実施形態および第2の好ましい実施形態により提示される方法は、完全に自動化され、心臓を通るファーストパス中のボーラスの変位を利用する。このフェーズは、大体においてトレーサとは無関係であり、本発明の他の、別個の実施形態では、本明細書で開示される方法は、任意のPETトレーサに変換可能である。
【0084】
本開示は、先行する請求項のいずれかに記載のヒト心臓をモデル化するための方法において取得されたセグメント化されたモデルのサブ部分の容積を分析することによって心疾患を識別するための方法にさらに関する。
システム
本開示は、ヒト心臓の陽電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像などの複数の放出断層撮影画像に基づいて前記ヒト心臓をモデル化するためのシステムであって、本開示において説明される方法によりヒト心臓をモデル化するための方法を実行するように配置されたシステムにさらに関する。これは、好ましくは、システムが、放出断層撮影画像を提供するように配置された放出イメージングデバイスと、ヒト心臓をモデル化するための方法を実行するように配置されたプロセッサまたは他の手段とを備えることを意味する。
【0085】
そのうえ、プロセッサによって遂行されるとき、上記で説明された、本開示によるさまざまな方法を実行する命令を記憶するための非一時的なコンピュータ可読記憶デバイス。本方法は、たとえばコンピュータプロセッサによって可読であり実行可能なソフトウェアとして実施されてよい。
図面の詳細な説明
本発明は、以下では、添付の図面を参照しながら、より詳細に説明される。図面は例示的なものであり、ヒト心臓ならびに/または左心房および右心房などのその中の心室および腔をモデル化するための現在開示されている方法およびシステムの特徴のいくつかを示すことを意図したものであり、現在開示されている発明に限定すると解釈されるべきでない。
【0086】
図1は、心臓に入る前の、血流内のトレーサの注入後の、さまざまな時点における心臓内のいくつかのPETトレーサ濃度を示す。
図1Aでは、ボーラスが大静脈内に到達したことが見られ得る。
図1Bでは、ボーラスは、心臓の右側および肺動脈内に位置する。
図1Cでは、ボーラスは、肺静脈、心臓の左側、および大動脈内に到達している。
図1Dでは、ボーラスは、下行大動脈内に位置する。このフェーズ後、トレーサは身体全体に通じて分布し、ボーラスは、明確なボーラスがないという意味で、失われる。
【0087】
図2は、1つのピクセルに対する経時的なトレーサ濃度と、ピークの対応する指数関数ダウンスロープあてはめとを示す。濃度は、最初は低く、ボーラスがピクセルを通過するとき、急速に増加する。ボーラスがピクセルを通過した後、濃度は、より一定で低いレベルに戻る。トレーサ濃度曲線は、最初に0.6分の間、ピーク曲線の後ろに隠れている(したがって、これを実質的にたどる)ことがわかる。
【0088】
図3は、さまざまな心室および中心循環における大きな血管の逐次的ブロック図を示す。シーケンスは、大静脈(VC)と、右心房(RA)と、右心室(RV)と、肺動脈(PA)と、肺(L)と、肺静脈(PV)と、左心房(LA)と、左心室(LV)と、上行大動脈(AA)とを表す。
【0089】
図4は、心臓の異なる部分内に位置するいくつかのピクセルに対するPETトレーサ濃度を示す。部分、および結果として、トレーサ濃度が経時的に示される異なる部分も、大静脈(VC)、右心房(RA)、右心室(RV)、肺動脈(PA)、肺静脈(PV)、左心房(LA)、左心室(LV)、上行大動脈(AA)である。曲線は、連続した領域の各々におけるPET放射性トレーサの注入されたボーラスの到達時間の漸進的なシフトを示す。肺動脈と肺静脈との間で時間的に小さいギャップがあることがわかり、これは、ボーラスが肺を通過する時間によって説明される。
【0090】
図5A〜
図5Bはそれぞれ、いくつかのピクセルに対する曲線下面積(AUC)のおよびセントロイドのマップである。5Aのマップは、異なる場所におけるボーラスの強度を表すと言われ得る。
図5Aは、いくつかのピクセルに対するAUC値を示し、
図5Bは、ボーラスのセントロイドのマップを示す。
図5Aでは、心臓の腔および下行大動脈がマップ内に見える。肺は、何らかの活性を示し、身体の残りはピークを示さない。
図5Bは、ボーラスの到達時間の表現を示すと言われ得る。カラースケールを使用した濃いエリアに対応する、右心房に対応する最小セントロイドをもつ領域がある。わずかに大きい到達時間、すなわちわずかに明るい色をもつ領域は、心臓の右心室を表す。肺に対応する領域に対する到達時間(またはセントロイド)は、心臓の右側の到達時間(またはセントロイド)よりもわずかに大きい(すなわち、時間的に遅い、明るい)が、心臓の左側よりも小さい(濃い)。最後に、左心房、左心室、および下行大動脈は、各々が肺のものよりも大きい増加していくセントロイド(ますます明るい色)を(その順番で)示す。
【0091】
図6A〜
図6Bは、セントロイド画像のマップを示す。肺は、参照点として使用され、肺内の血管の平均セントロイドのセントロイドは、心臓モデルを動脈部分(左)と静脈部分(右)に分割するために使用される。肺がセグメント化されており、肺の場所が既知であると考えられる場合、肺における中程度のサイズの血管の平均セントロイドは、血液領域を動脈(セントロイド>肺)領域および静脈(セントロイド<肺)領域に分割するために使用可能である。
【0092】
図7:HF患者に対するPET由来LA容積と心エコー法由来LA容積の高い(r=0.84)相関を示す。
【0093】
図8および
図9:PETに対する平均LA容積であるがMRIに対する最大LA容積を示す、2つの異なるMRI尺度をもつPETの比較。
【0094】
図10:LAVIの検定−再検定再現性の相関(A)およびブランドアルトマン(B)プロット。黒色の線および灰色の線は、識別の線と、(A)における線形あてはめと、(B)における平均差と95%信頼区間とを示す。RPC:繰り返し性係数。この図は、患者が2回スキャンされるときPETを使用して導き出されたLAの高い再現性を示す(ICC=0.93および8.6mL/m
2の再現性係数)。
【0095】
図11:肺のそれに対するボーラス到達時間t
mid(A)、およびC
LV(t)のAUCに対して正規化されたAUC(B)曲線下面積の画像の一般的な例。表示目的のために、左心室腔のボーラス到達時間の後で20秒よりも長いボーラス到達時間をもつ領域が画像から除去され、非血液領域を効果的に除去する。
【0096】
図12〜
図14:患者スキャンに対する3×2画像を示す。各患者に対して、それらに投影され、解剖学的参照のためにCTスキャン上にも投影された、LAの輪郭をもつ曲線下面積画像を示す画像が含まれる。患者スキャンは、以下の通りである。
図12:健康な対照、正常な心臓、正常な(小さい)左心房、すべてが正常である。
図13:アミロイドーシスに苦しむ患者。そのような患者は、正常に収縮するが適切に弛緩しない硬直した心臓(左心室)を有し、増加した充満圧力とLAの過負荷を引き起こし、これは、画像に見られるような腫脹されたLAにつながる。LV自体は、腫脹されない。
図14:漏出弁を有する患者−各心拍に対して、かなりの量の血液が、大動脈を通る代わりに漏出弁を通ってポンピングされ、左心室のバルーニング(十分な血液が大動脈に入ることを保証するために)と、もちろん心拍ごとにそれほど多くの血液を受け入れるように対応されない左心房のバルーニングという結果になる。
【0097】
図15:心エコー心尖部4心室(左)像および2心室(右)像。左心房は、収縮末期では、僧帽弁の開放の直前において手動でトレースされる。
【0098】
図16A〜
図16F:第1の好ましい実施形態による方法において使用されるマスクがどのように開発されるかを示す。
図16Aは、AUCに対する閾値処理の後の結果を示す(すべてのもの>AUC
LVの結果の2/3)。
図16Bは、
図16Aと同じマスクであるが、vii)LVおよびRVの平均セントロイド時間(すなわち、ステップgの後)を使用して分離され、明るい灰色を左心房に、濃い灰色を右心房に使用する。
【0099】
図16C〜
図16Fは、左心房に焦点を当てる。
図16Cは、LV+2心拍のセントロイドよりも大きいセントロイドをもつすべての領域を除去した後の、
図16Bの明るい灰色領域(そのため、>LVセントロイドおよびRVセントロイドの平均)に対応する。これは、画像から下行大動脈および上行大動脈の大部分を除去する(ステップgの後)、viii)。残りの3つの画像に対して、
図16Dは、LV腔(ステップg)を除去した後の初期推定を示し、ix)、
図16Eは、ステップh)およびi)の後のマスクを示し、最後に、
図16Fは、マスクを示し、これは、最終的なLA容積が得られる。
【0100】
図17A〜
図17B:
図17Aは、ハンスフィールドユニット(HU)と血管外含水量(EVLW)との間の相関を示す。EVLWは、PICCO(r
2=0.36)またはPET(r
2=0.45)のどちらかを用いて測定されたHUとの正の相関が認められた。相関係数は、2つの方法とHUとの間で有意に異ならなかった(p=0.32)。
図17Bは、PICCOによって測定された心臓拡張末期容積(GEDV)とPETとの間の相関を示す。PICCOによって測定されたGEDVとPETとは、正の相関が認められた(灰色の線は信頼区間を示し、黒色の線は予測区間を示す)。
【0101】
図18は、ベースライン(左)および試験の終了時(右)におけるブタの冠CTスキャンで、増加された肺密度(白いエリア)によって明らかなうっ血を示す。
方法
本明細書で開示される第1の好ましい実施形態による方法は、心エコー法(グループ1)または心磁気共鳴(CMR)イメージング(グループ2)のどちらかとの比較によって検証された。次いで、再現性は、検定−再検定設定でアセスメントされた(グループ3)。精度および再現性に対する追加データは、異なるトレーサを使用して取得された。最後に、新しい方法が、MBFの標準的な臨床アセスメントのために参照された患者の大規模コホート(グループ4)に適用された。
患者集団
第1のグループ(HF)は、確認された心不全をもつ36人の患者からなり、これは、LIVE試験のサブ試験の一部であった[Jorsal Aら、A protocol for a randomised,double−blind,placebo−controlled study of the effect of LIraglutide on left VEntricular function in chronic heart failure patients with and without type 2 diabetes(The LIVE Study)。BMJ Open[インターネット]。2014年、第4巻、e004885]。第2のグループ(MR)は、僧帽弁逆流および軽度から中程度の(NYHAクラスIまたはII)心不全をもつ34人の患者からなった。グループ3(CAD)は、冠動脈疾患の臨床評価のために参照された15人の患者からなった。これらの患者は、同じ日に、安静時に2つの
15O−水PETスキャンを受けた。最後に、グループ4は、心筋血流の標準的な臨床評価のために参照された、冠動脈疾患の中間の可能性をもつ107人の患者からなった。
【0102】
HF患者は、Aarhus University Hospital、Aarhus、Denmarkにおいてスキャンされたが、MR患者、CAD患者、および臨床患者は、Uppsala University Hospital、Uppsala、Swedenにおいてスキャンされた。
スキャニングプロトコル
すべての試験は、同一のスキャニングプロトコルを用いて、Siemens Biograph TruePoint TrueV64 PET/CTスキャナ(HF患者)、GE discovery ST(20人のMR患者、すべてのCAD患者および臨床患者)、またはGE Discovery MI(14人のMR患者)のいずれかに対して行われた。
【0103】
本明細書で開示される第2の好ましい実施形態による方法は、8匹の麻酔および換気されたブタの調査を含んだ。肺うっ血は、β遮断薬(BB)、アンギオテンシン−2アゴニスト(AT−2a)、および生理食塩水注入の組み合わせによって誘発された。侵襲的な圧力測定、PICCO、コンピュータ断層撮影(CT)、および
15O−H
2O−PETが実行された。
データ収集
動脈圧測定、スワン−ガンツカテーテルによる侵襲的な血流動態、およびPICCO検査が、ベースライン時ならびに4つのPETの直前およびその直後に実行された(1:介入前(BAL)、2:AT2およびBB投与の開始後(AB)、3:3Lの生理食塩水注入後に再度(AB−3L)、最後に、4:10L生理食塩水の注入後(AB−10L))。各検査ブロックは、1時間隔てられた。
肺カテーテル測定
スワン−ガンツカテーテルは、咽喉の前外側部上の内頸静脈内に留置されたシースを通って挿入された。シースは、十分な血管アクセスを保証するために、反対側に留置された。スワン−ガンツ肺カテーテル技法は、以下の血行動態変数、すなわち、中心静脈圧力(CVP)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、および肺動脈圧(PAP)、の測定および計算を可能にする。
PICCO測定
PICCO(Pulsion Medical System、Maquet、Germany)測定は、経肺熱希釈に基づく。PICCOカテーテルは、ブタ大腿動脈内のシースを通って挿入された。15mlの冷却された生理食塩水(4度)は、中心静脈アクセスのレベルでスワン−ガンツカテーテルを通って注がれ、動脈血内の温度の低下が測定された。次いで、心拍出量(CO)、心臓拡張末期容積(GEDV)、および肺含水量(EVLW)が推定された。侵襲的な血圧は、対側性大腿動脈内のシースを通して測定され、全身血管抵抗(SVR)が計算された。
コンピュータ断層撮影検査
CT検査は、TrueV、120kV、1.0mmスライス厚、0.5ピッチ、350mAs参照線量(Caredose)およびB31sフィルタを用いて、Siemens Biograph64 TruePoint PET/CT上で行われた。検査は、吸息終期における息こらえ(breath hold)の間に実行された。肺は、以前に説明された方法(12)として使用してセグメント化された。平均肺密度は、胸膜内のすべての実質組織と規定された対象となる容積に基づいて計算され、ハンスフィールドユニット(HU)は、−900から−350の範囲に及ぶ。CTスキャンは、各PET検査の前およびその後に行われ、肺全体に対する平均HU値は、各段階において計算された(BAL−AB−AB3−AB10)。
PET検査[
15O]−H2O
15O−水PETは、標準的な臨床プロトコルにより実行された。低線量CTスキャンを実行した後、約5mLの生理食塩水中に溶解された
15O−水の400MBqが、(係属中のPCT出願WO2016/203055に記載されたのと同様に)自動化された注入システムを使用して2mL/sのスピードで静脈内に注入され、これに続いて、35mL生理食塩水フラッシュがなされた。トレーサ注入と同時に、10分獲得プロトコルが始められた。データは、散乱、崩壊、減衰、およびスキャナ正規化に対する適切な補正を使用して、動的スキャンとして再構成された。スキャニングは、注入の前に開始され、10分間継続された。
【0104】
さらに、本発明は、以下の番号付与された対象を備える。
1.ヒト心臓の、電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像などの複数の放出断層撮影画像に基づいて前記ヒト心臓をモデル化するための方法であって、各画像は、特定の時間に注入されたトレーサの濃度を表し、この方法は、
A.複数のピクセルおよび/またはボクセルに対して注入されたトレーサの時間放射能曲線を抽出するステップと、
B.時間放射能曲線のファーストパスピークを識別するステップであって、各ピークは、対応するピクセル/ボクセルにおける注入されたトレーサの到達時間に対応する、識別するステップと、
C.心臓の少なくとも2つの部分を備えるモデルを規定するステップであって、少なくとも2つの部分は、閾値に対するファーストパスピークの比較に基づいてピクセルおよび/またはボクセルを選択することによって隔離される、規定するステップと、
D.少なくとも2つの部分内のピクセルおよび/またはボクセルのファーストパスピークの到達時間を比較することによって、少なくとも2つの部分を互いに対して配置し、それによって、ヒト心臓のセグメント化モデルを取得するステップと
を備える。
2.前記2つの部分の第1の部分は心臓の左部分であり、前記2つの部分の第2の部分は心臓の右部分である、対象1に記載の方法。
3.ヒト心臓の参照点は、複数のピクセルおよび/またはボクセルから選択される、対象1から2のいずれかに記載の方法。
4.ステップC〜Dは、少なくとも2つの部分のうちの1つまたは複数をサブ部分にさらに分割し(ステップC)、ファーストパスピークの到達時間を比較することによって互いに対してサブ部分を配置する(ステップD)ことによって反復的に繰り返され、それによって、ヒト心臓のモデルをさらにセグメント化する、対象1から3のいずれかに記載の方法。
5.各参照点は、心臓の心室または血管に対応する、対象3から4のいずれかに記載の方法。
6.心室は、心臓の右心房、右心室、左心房、および左心室から選択される、対象5に記載の方法。
7.少なくとも2つの部分は、大静脈、右心房、右心室、肺動脈の基部、左心房に近い肺静脈、左心房、左心室、および心臓の上行大動脈の基部から選択される、心臓の心室および大血管に対応する、対象1から6のいずれかに記載の方法。
8.心臓の心室および大血管に対応する少なくとも2つの部分は、順次フローモデルを形成する、対象1から7のいずれかに記載の方法。
9.ステップは逐次的である、対象1から8のいずれかに記載の方法。
10.心臓の少なくとも2つの部分を備えるモデルを規定するステップは、周囲組織から2つの部分を隔離するステップを備える、対象1から9のいずれかに記載の方法。
11.トレーサは15O−水である、対象1から10のいずれかに記載の方法。
12.トレーサは、心臓の右心房に入る静脈内に注入されている、対象1から11のいずれかに記載の方法。
13.少なくとも2つの部分は、閾値に対するピークの面積の比較に基づいてピクセルおよび/またはボクセルを選択することによって、隔離される、対象1から12のいずれかに記載の方法。
14.注入されたトレーサは、放射線不透過性造影剤のボーラスであり、ここにおいて、各時間放射能曲線のファーストパスピークは、ピクセル/ボクセルに到達するボーラスに対応する、対象1から13のいずれかに記載の方法。
15.時間における質量中心は、ピクセル/ボクセルの時間放射能曲線の各々に対して取得される、対象1から14のいずれかに記載の方法。
16.部分および/またはサブ部分の2つの参照点間の通過時間が計算される、対象1から15のいずれかに記載の方法。
17.通過時間は、心臓の右部分の入口境界における参照点と心臓の右部分の出口境界における参照点との間で、および/または肺の入口境界における参照点と肺の出口境界における参照点との間で、および/または心臓の左部分の入口境界における参照点と心臓の左部分の出口境界における参照点との間で、計算される、対象16に記載の方法。
18.通過時間は、2つ以上のサブ部分の間で計算される、対象1から17のいずれかに記載の方法。
19.部分および/またはサブ部分の容積を計算するステップをさらに備える、対象1から18のいずれかに記載の方法。
20.部分および/またはサブ部分の容積を計算するステップは、部分またはサブ部分に対する通過時間に、同じ部分/サブ部分に対して計算された心拍出量を乗算するステップを備える、対象19に記載の方法。
21.ヒト心臓のモデルは3次元モデルである、対象1から20のいずれかに記載の方法。
22.対象1から21のいずれかに記載のヒト心臓をモデル化するための方法において取得されたセグメント化されたモデルのサブ部分の容積を分析することによって心疾患を識別するための方法。
23.拡張末期容積に基づいて患者の前負荷条件を識別するための方法であって、前記拡張末期容積は、対象1から21のいずれかに記載のヒト心臓をモデル化するための方法において取得される心臓の右部分または左部分の容積である、方法。
24.対象1から21のいずれかに記載のヒト心臓をモデル化するための方法において取得されたセグメント化モデル、左心室の前方一回拍出量および前方心拍出量に基づいて心臓弁の漏出を識別するための方法。
25.プロセッサによって遂行されるとき、対象1から21のいずれかに記載のヒト心臓をモデル化するための方法を実行する命令を記憶するための非一時的なコンピュータ可読記憶デバイス。
26.ヒト心臓の、陽電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像などの複数の放出断層撮影画像に基づいて前記ヒト心臓をモデル化するためのシステムであって、対象1から21のいずれかに記載のヒト心臓をモデル化するための方法を実行するように配置されたシステム。
【0105】
27.放出断層撮影画像を提供するように配置された放出イメージングデバイスと、ヒト心臓をモデル化するための方法を実行するように配置されたプロセッサとを備える、対象26に記載のシステム。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 陽電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像などの複数の放出断層撮影画像に基づいて心房(左(LA)または右(RA))の容積を推定するための方法であって、
a)複数のピクセルおよび/またはボクセルに対する注入されたトレーサの時間放射能曲線を抽出するステップと、
b)前記時間放射能曲線のファーストパスピークを、
i.最大ダウンスロープをもつ2つ以上の連続したフレームtx〜tx+nを検出し、ここにおいて、xおよびnは両方とも正の整数であり、
ii.たとえば、限定するものではないが、指数関数あてはめ、線形あてはめ、またはガンマ関数あてはめなどのあてはめ手順を使用して、前記連続したフレーム内でCPET(tx)およびCPET(tx+n)を使用する前記最大ダウンスロープを外挿し、
iii.tx+nまで元のCPET(t)の活性として前記ファーストパスピークを規定し、それに続いて、最大ダウンスロープをもつ前記フレームから始まる前記最大ダウンスロープのあてはめを行うこと、
によって隔離するステップと、
c)それぞれ、質量中心および総面積を使用して前記ファーストパスピークのセントロイド時間tmidと曲線下面積AUCとを抽出し、それによって、tmidとAUCの両方に対する3次元画像を与えるステップと、
d)高い心室−血液コントラストを示す画像、たとえば、限定するものではないが、基底関数方法を使用して生成されるパラメトリック画像またはトレーサ保持の後期画像を使用して心室を規定するステップと、
e)心室領域の内部にある心室腔を規定するステップと、
f)腔時間放射能曲線を取得するステップと、
g)前記ファーストパスピークを抽出するステップと、
h)結果として生じる前記セントロイドと、前記AUCと、前記心室腔の場所とをtmidとして、AUCをtLV、tRV、AUCLV、およびAUCRVとして記憶するステップと、
i)tmidとAUC画像とを使用して、AUCLVの3分の2よりも大きいAUCをもつすべての領域としてマスクを規定するステップと、
j)前記マスクから、
・LA容積推定の場合
iv.tLVマイナスtLVとtRVとの差の半分よりも小さいtmid、または
v.tLVプラス2つの心拍の持続時間よりも大きいtmid、または
vi.LV腔内に位置する領域、
のいずれかをもつすべての領域を除去し、
vii.前記マスクの重心を規定し、
viii.この重心からの中間距離の1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、または1.9倍などの、好ましくは1.5倍である、1よりも大きい、前記マスク内のすべての領域を除去し、
ix.結果として生成されるマスクを損ない、続いて、薄いチューブ状領域すなわち肺静脈を除去するために拡張/拡大を行うステップ、
・RA容積推定の場合
x.tLVマイナスtLVとtRVとの差の半分よりも大きいtmid、または
xi.tRVプラス2つの心拍の持続時間よりも大きいtmid、もしくはRV腔内に位置する領域、または
xii.真上にあるスライスと比較して前記スライスに対する前記マスクの面積の、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、もしくは60%、好ましくは約50%などの、かなりの増加をもつ垂直方向スライスを識別することによる、垂直方向のチューブ状形状すなわち大静脈を描く領域
のいずれかをもつすべての領域を除去するステップと、
k)残りのマスクの総容積を、平均LAまたはRA容積の推定として使用するステップと
を備える方法。
[2] 前記容積が推定される心房が左心房(LA)である、[1]に記載の方法。
[3] 前記容積が推定される心房が右心房(RA)である、[1]に記載の方法。
[4] それぞれ、前記質量中心が、
【数3】
として計算され、前記総面積が、AUC=ΣCfirstpass(t)・フレーム持続時間として計算される、[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記複数の放出断層撮影画像が、
・0.5〜10秒隔てられた時間フレームと10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用して、好ましくはヨウ化造影剤の静脈内注入を用いた、コンピュータ断層撮影、
・0.1〜10秒隔てられた時間フレームと、10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用する、好ましくはガドリニウム系造影剤を用いた、CMR、
・3〜10秒隔てられた時間フレームと10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用して、前記同位元素分子リガンドが、注入後に肺を通る前記ファーストパス中に肺組織内に保持されない限り、好ましくは放射性同位元素(任意の分子とリンクされた任意のSPECT対応可能な同位元素)を用いた、単一光子放出断層撮影(SPECT/ガンマ線カメラ)、または
・1〜10秒隔てられた時間フレームと10〜120秒、好ましくは30〜60秒のスキャニング時間とを使用する、注入後に肺を通る前記ファーストパス中に肺組織内に前記同位元素および前記標識分子が保持されない限り、任意のPET対応可能な放射性同位元素を用いたPET
から選択される方法によって生成される、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 動的MBF PETスキャンに基づいた、[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記トレーサが、心臓の右心房に入る静脈内に注入されている、[1]から[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 注入された前記トレーサが、放射線不透過性造影剤のボーラスである、ここにおいて、各時間放射能曲線の前記ファーストパスピークが、前記ピクセル/ボクセルに到達する前記ボーラスに対応する、[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 前記トレーサが、11C−アセテートおよび15O−水から選択され、好ましくは15O−水である、[1]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] [1]から[9]のいずれか一項に記載の方法によって取得される左心房または右心房の推定容積を分析することによって心疾患を識別するための方法。
[11] プロセッサによって遂行されるとき、前記コンピューティングデバイスに[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法を遂行または実行させるように構成される命令を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
[12] ヒト心臓の陽電子放出断層撮影画像または単一光子放出コンピュータ断層撮影画像などの複数の放出断層撮影画像に基づいて前記ヒト心臓の左心房または右心房の容積を推定するためのシステムであって、[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法を実行するように配置されたシステム。
[13] 前記放出断層撮影画像を提供するように配置された放射イメージングデバイスと、[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法を実行するように配置されたプロセッサとを備える、[12]に記載のシステム。