(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特異性領域は、前記電気伝導性チャネルに結合したテザー上のアクセプター領域と相互作用し、かつ前記特異性領域はアフィニティータグを含む、請求項3に記載の標識ヌクレオチド。
前記標識ヌクレオチドの前記会合している1つから、前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを切断するステップであって、それにより、前記会合している標識ヌクレオチドの前記ヌクレオチドが、前記鋳型核酸に相補的な新生鎖に取り込まれるステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
前記第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および前記第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグのうち2つは、変更された電荷状態で、正に帯電していて;かつ前記第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および前記第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグのうち他の2つは、前記変更された電荷状態で、負に帯電している、請求項17に記載の方法。
前記レドックス活性電荷タグは、フェロセン、亜鉛テトラベンゾポルフィリン、コバルトフタロシアニン、トリス−(2,2’−ビピリミジン)ルテニウム、4−フェロセニルベンジルアルコール、5−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−10,15,20−トリメシチルポルフィナト亜鉛(II)、およびレドックス活性カリックスアレーンからなる群から選択される、請求項21に記載のキット。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示される第1の態様は、標識ヌクレオチドである。番号1〜6は、この第1の態様に関する。
【0004】
1.一例では、前記標識ヌクレオチドは、ヌクレオチド;前記ヌクレオチドのリン酸基に付着した連結分子;および前記連結分子に付着したレドックス活性電荷タグを含み、前記レドックス活性電荷タグは、電気伝導性チャネルの感知ゾーンの近くに維持されるとき、前記電気伝導性チャネルによって酸化または還元される。
【0005】
2.前記標識ヌクレオチドの例(1)では、前記レドックス活性電荷タグは、レドックス反応を受ける配位金属原子を含む。
【0006】
3.前記標識ヌクレオチドの例(1)または(2)では、前記連結分子は、前記レドックス活性電荷タグに付着した特異性領域を含む。
【0007】
4.例(3)では、前記特異性領域は、前記電気伝導性チャネルに結合したテザー上のアクセプター領域と相互作用し、かつ前記特異性領域はアフィニティータグを含む。
【0008】
5.例(4)では、前記特異性領域は、前記電気伝導性チャネルに結合した前記テザー上の前記アクセプター領域にハイブリダイズし、かつ前記アフィニティータグは約1ヌクレオチド〜約10ヌクレオチドを含有するヌクレオチド配列、または約1ペプチド核酸〜約10ペプチド核酸を含有するペプチド核酸配列を含む。
【0009】
6.前記標識ヌクレオチドの例(1)〜(5)の何れかでは、前記レドックス活性電荷タグは、非酸化状態または非還元状態で、10以下の電荷を含み;かつ前記レドックス活性電荷タグは、酸化状態または還元状態で、約1〜約100の電荷を含む。
【0010】
例(1)〜(6)を含む、本明細書に開示される標識ヌクレオチドの任意の特徴は、任意の所望の方法および/または構成で組み合わされ得るを理解されたい。
【0011】
本明細書で開示される第2の態様は、方法である。番号7〜18は、この第2の態様に関する。
【0012】
7.一例では、前記方法は、以下のステップを含む:ポリメラーゼがつながった電気伝導性チャネルに鋳型核酸を導入するステップ;前記電気伝導性チャネルに標識ヌクレオチドを導入するステップであって、前記標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ヌクレオチドおよびそれに付着したヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含み、それにより、前記標識ヌクレオチドの1つが前記ポリメラーゼと会合する(associates with the polymerase)ステップ;前記標識ヌクレオチドの前記1つが会合している間に、前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグの電荷状態を変更するために、前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグと前記電気伝導性チャネルとの間のレドックス反応を開始するステップ;および前記レドックス反応に応じて、前記電気伝導性チャネルの応答を検出するステップ。
【0013】
8.前記方法の例(7)では、前記レドックス反応を開始するステップは、前記電気伝導性チャネルに充電電圧を印加することを含み;かつ前記応答を検出するステップは、前記電気伝導性チャネルに読み取り電圧を印加することを含む。
【0014】
9.前記方法(7)または(8)の例は、以下のステップを更に含む:前記電気伝導性チャネルの前記応答を、前記標識ヌクレオチドの前記会合している1つの前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグに関連付ける(associating)ステップ;および前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグに基づいて、前記会合している標識ヌクレオチドの前記ヌクレオチドを識別するステップ。
【0015】
10.例(9)は、前記標識ヌクレオチドの前記会合している1つから、前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを切断するステップであって、それにより、前記会合している標識ヌクレオチドの前記ヌクレオチドが、前記鋳型核酸に相補的な新生鎖に取り込まれるステップを更に含む。
【0016】
11.例(10)では、前記標識ヌクレオチドの前記1つが会合するステップ、前記レドックス反応を開始するステップ、前記検出するステップ、前記関連付けるステップ、および前記識別するステップは合わせて、シークエンシングサイクルであり、前記方法は、以下によって、次のシークエンシングサイクルを行うステップを更に含む:前記標識ヌクレオチドの次の1つを前記ポリメラーゼと会合させること;前記標識ヌクレオチドの前記次の1つが会合している間に、他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグの電荷状態を変更するために、前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグと前記電気伝導性チャネルとの間の他のレドックス反応を開始すること;前記他のレドックス反応に応じて、前記電気伝導性チャネルの他の応答を検出すること;前記電気伝導性チャネルの前記他の応答を、前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグに関連付ける(associating)こと;および前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグに基づいて、前記標識ヌクレオチドの前記次の1つの前記ヌクレオチドを識別すること。
【0017】
12.例(11)は、以下のステップを更に含む:前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを切断するステップであって、それにより、前記標識ヌクレオチドの前記次の1つの前記ヌクレオチドが、前記鋳型核酸に相補的な前記新生鎖に取り込まれるステップ;および前記シークエンシングサイクルを繰り返すステップ。
【0018】
13.前記方法の例(7)〜(12)の何れかでは、前記レドックス活性電荷タグは、レドックス反応を受ける配位金属原子を含む。
【0019】
14.前記方法の例(7)〜(13)の何れかでは、前記レドックス活性電荷タグは、非酸化状態または非還元状態で、10以下の電荷を含み;かつ前記レドックス活性電荷タグは、変更された電荷状態で、約1〜約100の電荷を含む。
【0020】
15.前記方法の例(7)〜(14)の何れかでは、前記標識ヌクレオチドは以下を含む:前記ヌクレオチドとしてのデオキシアデノシンポリホスフェートおよび第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第1標識ヌクレオチド;前記ヌクレオチドとしてのデオキシグアノシンポリホスフェートおよび第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第2標識ヌクレオチド;前記ヌクレオチドとしてのデオキシシチジンポリホスフェートおよび第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第3標識ヌクレオチド;ならびに前記ヌクレオチドとしてのデオキシチミジンポリホスフェートおよび第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第4標識ヌクレオチド;ここで、前記第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および前記第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグは互いに異なる。
【0021】
16.例(15)では、前記第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および前記第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグのうち2つは、変更された電荷状態で、正に帯電していて;かつ前記第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、前記第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および前記第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグのうち他の2つは、前記変更された電荷状態で、負に帯電している。
【0022】
17.前記方法の例(7)〜(16)の何れかでは、前記標識ヌクレオチドは、低塩緩衝液中に存在する。
【0023】
18.前記方法の例(7)〜(17)の何れかでは、前記電気伝導性チャネルは、電界効果トランジスタのチャネルである。
【0024】
例(7)〜(17)を含む、前記方法の任意の特徴は、任意の所望の方法で組み合わされ得ることを理解されたい。更に、この方法および/または前記標識ヌクレオチドの特徴の任意の組み合わせが一緒に使用され得、かつ/または本明細書に開示される例の何れかと組み合わされ得ることを理解されたい。
【0025】
本明細書で開示される第3の態様は、キットである。番号19〜22は、この第3の態様に関する。
【0026】
19.一例では、前記キットは、以下を備える:電気伝導性チャネルであって、それに付着したテザーを有する電気伝導性チャネルと、前記テザーを介して、前記電気伝導性チャネルに付着したポリメラーゼと、を含むフローセル;前記フローセルに導入される鋳型核酸;前記フローセルに導入される試薬であって、前記試薬は標識ヌクレオチドを含み、前記標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ヌクレオチドと、前記ヌクレオチドのリン酸基に付着した連結分子と、電気伝導性チャネルの感知ゾーンの近くに維持されるとき、前記電気伝導性チャネルによって酸化または還元される、前記連結分子に付着したレドックス活性電荷タグと、を含む、試薬;およびレドックス反応が前記レドックス活性電荷タグと前記電気伝導性チャネルとの間で起こるとき、前記電気伝導性チャネルからの応答を検出する検出器。
【0027】
20.前記キットの例(19)では、前記レドックス活性電荷タグは、フェロセン(ferrocene)、亜鉛テトラベンゾポルフィリン(zinc tetrabenzoporphyrin)、コバルトフタロシアニン(cobalt phthalocyanine)、トリス−(2,2’−ビピリミジン)ルテニウム(tris−(2,2’−bipyrimidine)ruthenium)、4−フェロセニルベンジルアルコール(4−ferrocenylbenzyl alcohol)、5−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−10,15,20−トリメシチルポルフィナト亜鉛(II)(5−(4−hydroxymethylphenyl)−10,15,20−trimesitylporphinatozinc(II))、およびレドックス活性カリックスアレーン(redox−active calixarene)からなる群から選択される。
【0028】
21.前記キットの例(19)または(20)では、前記レドックス活性電荷タグは、非酸化状態または非還元状態で、10以下の電荷を含み;かつ前記レドックス活性電荷タグは、酸化状態または還元状態で、約1〜約100の電荷を含む。
【0029】
22.前記キットの例(19)〜(21)の何れかでは、前記電気伝導性チャネルは、電界効果トランジスタのチャネルである。
【0030】
例(19)〜(22)を含む、前記キットの任意の特徴は、任意の所望の方法で組み合わされ得るを理解されたい。更に、このキットおよび/または前記方法および/または前記標識ヌクレオチドの特徴の任意の組み合わせが一緒に使用され得、かつ/または本明細書に開示される例の何れかと組み合わされ得ることを理解されたい。
【0031】
更に、前記標識ヌクレオチドの何れかおよび/または前記方法の何れかおよび/または前記キットの任意の特徴が、任意の所望の方法で組み合わされ得、かつ/または本明細書に開示される例の何れかと組み合わされ得ることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
核酸シークエンシング手順における単一分子検出のために使用され得る標識ヌクレオチドが、本明細書に開示される。単一分子検出において使用されるセンサーは、1つのポリメラーゼが付着した1つの電気伝導性チャネルを有し得る。これにより、個々の各センサーで一度に1つの取り込みイベント(即ち、ポリメラーゼによる新生鎖への塩基の取り込み)を検出することが可能になる。標識ヌクレオチドは、核酸シークエンシング用ならびに核酸および一般的な他の分析物の検出用に使用することができる独自の検出様式を提供する。
【0034】
標識ヌクレオチド10の一例が、
図1に概略的に示されている。示されているように、標識ヌクレオチド10は、ヌクレオチド12、ヌクレオチド12のリン酸基16に付着した連結分子14または14’、および連結分子14または14’に付着したレドックス活性電荷タグ18を含み、レドックス活性電荷タグ18は、電気伝導性チャネル32の感知ゾーン(参照番号31、
図3)の近くに維持されるとき、電気伝導性チャネル(参照番号32、
図2)によって酸化または還元される。標識ヌクレオチド10は、天然ヌクレオチドとは構造的または化学的に異なるため、非天然ヌクレオチドまたは合成ヌクレオチドとみなすことができる。
【0035】
標識ヌクレオチド10のヌクレオチド12は、天然ヌクレオチドであり得る。天然ヌクレオチドは、窒素含有複素環塩基20、糖22、および1つ以上のリン酸基16を含む。天然のヌクレオチドの例は、例えば、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む。リボヌクレオチドでは、糖22はリボースであり、デオキシリボヌクレオチドでは、糖22はデオキシリボース、即ちリボースの2’位に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。一例では、ヌクレオチド12は、いくつかのリン酸基16(例えば、3リン酸(即ち、γリン酸)、4リン酸、5リン酸、6リン酸など)を含むため、ポリリン酸形態である。複素環塩基20(即ち、核酸塩基)は、プリン塩基またはピリミジン塩基であることができる。プリン塩基は、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体を含む。ピリミジン塩基は、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体を含む。デオキシリボースのC−1原子は、ピリミジンのN−1またはプリンのN−9に結合している。核酸類似体では、リン酸骨格、糖、および核酸塩基のいずれかが変化し得る。核酸類似体の例は、例えば、ユニバーサル塩基またはペプチド核酸(PNA)などのリン酸−糖骨格類似体を含む。
【0036】
標識ヌクレオチド10はまた、連結分子14または14’を含む。いくつかの例では、連結分子(
図1において14として表示)は特異性領域24を含まない。他の例では、連結分子(
図1において14’として表示)は特異性領域24を含む。
図1に概略的に示されるように、特異性領域24が連結分子14’の一部である場合、該領域24は、レドックス活性電荷タグ18に化学的に結合する端部に位置し得る。特異性領域24については、以下で更に説明する。
【0037】
標識ヌクレオチド10の連結分子14または14’は、一端でヌクレオチド12のリン酸基16に化学的に結合でき、他端でレドックス活性電荷タグ18に化学的に結合できる任意の長鎖分子であり得る。連結分子14または14’はまた、本明細書に開示されるシステム30(
図2を参照)で使用されるポリメラーゼ26と相互作用しないように選択され得る。連結分子14または14’は、レドックス活性電荷タグ18が電気伝導性チャネル32(
図2)の感知ゾーン31(
図3)内に存在することを可能にするほど十分に長いように選択される。例として、連結分子14または14’は、アルキル鎖、ポリ(エチレングリコール)鎖、アミド基、リン酸基、トリアゾールなどの複素環、ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含み得る。アルキル鎖の例は、少なくとも6個の炭素原子を含み得、ポリ(エチレングリコール)鎖の例は、少なくとも3個のエチレングリコール単位を含み得る。
【0038】
以下の例は、連結分子14、14’がアルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、およびトリアゾールを含む、標識ヌクレオチド10の一例を示す:
【化1】
【0039】
以下の例は、連結分子14、14’がアルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、トリアゾール、およびリン酸基を含む、標識ヌクレオチド10の別の例を示す:
【化2】
【0040】
以下の例は、連結分子14、14’がアルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、トリアゾール、およびリン酸基を含む、標識ヌクレオチド10の更に別の例を示す:
【化3】
【0041】
以下の例は、連結分子14、14’がアルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、トリアゾール、リン酸基、およびポリヌクレオチド鎖を含む、標識ヌクレオチド10の更なる例を示す:
【化4】
【0042】
いくつかの例示的な連結分子14、14’を説明したが、他の連結分子14、14’を使用しもよいことを理解されたい。
【0043】
図1および前の例に示されるように、標識ヌクレオチド10のいくつかは、連結分子14’の一部として特異性領域24も含み得る。特異性領域24は、電気伝導性チャネル32に結合したテザー28(
図2)上のアクセプター領域と相互作用することができる。特異性領域24は、テザー28のアクセプター領域に一時的に付着することができるアフィニティータグを含み得る。アフィニティータグの結合親和性は、標識ヌクレオチド10がポリメラーゼ26によって保持されているときに、テザー28上のアクセプター領域に特異性領域24を結合させるほど十分に強いかもしれないが、取り込みイベント後に(即ち、ポリメラーゼ26が、αリン酸および連結分子14、14’の間、またはαリン酸およびβリン酸の間の結合を自然に切断するときに)アクセプター領域から特異性領域24をリリースするほど十分に弱いかもしれない。換言すれば、アクセプター領域への特異性領域24(例えば、アフィニティータグ)のオン速度、およびアクセプター領域からの特異性領域24(例えば、アフィニティータグ)のオフ速度は、全体的な単一分子感知を改善するために選択され得る。アフィニティータグ/アクセプター領域の相互作用のオン速度は、ヌクレオチド取り込みの前、例えば、特異性領域24、したがってアフィニティータグの効果的な高濃度のために高くなり得る。この高いオン速度は、アフィニティータグがアクセプター領域に結合している時間の割合を増加させる。切断後、次の標識ヌクレオチド10がポリメラーゼ26の活性部位に入るときに、(以前に取り込まれたヌクレオチドのアフィニティータグとアクセプター領域の間の)結合状態が存在する可能性が低いように十分に速く、(アフィニティータグとアクセプター領域の間の)複合体が解離するように、相互作用のオフ速度は十分に高く選択され得る。
【0044】
特定の例では、特異性領域24はテザー28上のアクセプター領域にハイブリダイズするため、アフィニティータグは、テザー28上のアクセプター領域に一時的に付着することができるヌクレオチド配列またはペプチド核酸配列を含み得る(
図2)。一例では、アフィニティータグは、約1ヌクレオチド〜約10ヌクレオチド、または約1ペプチド核酸〜約10ペプチド核酸を含有するヌクレオチド配列を含む。他の例では、アフィニティータグは、最大6個のヌクレオチドまたはペプチド核酸を含む。更に別の例では(
図5Bで更に表示および説明されるように)、特異性領域24は、ヌクレオチド配列の両側に隣接するイノシンを更に含み得る。更に他の例では、アフィニティータグは、互いに対する親和性または疎水性ポリマーに対する親和性を有するペプチドなどの非核酸部分であり得る。具体的なタンパク質の例はコイルドコイルを含み、当該コイルドコイルは2〜7個のα−ヘリックスがロープの鎖のように一緒にコイル状になっているタンパク質中の構造モチーフである。換言すると、コイルドコイルは、互いに巻き付いてスーパーコイルを形成する2つ以上のα−ヘリックスによって構築される。コイルドコイルの例は、c−Fosやc−junなどの腫瘍性タンパク質(oncoprotein)を含む。
【0045】
レドックス活性電荷タグ18は、例えば、電気伝導性チャネル32の感知ゾーン31の近くに維持されたときに、電気伝導性チャネル32によって酸化(電子を失う)または還元(電子を獲得)されると、その電荷を増加させることができる任意の電荷タグであり得る。電荷タグ18は、レドックス反応が起こる前に、正味中性(net neutral)(ゼロ電荷)、またはこの状態に近い(10電荷以下)場合がある。換言すれば、非酸化状態または非還元状態において、レドックス活性電荷タグ18は10以下の電荷を運ぶ。レドックス活性電荷タグ18によって運ばれる電荷は、標識ヌクレオチド10のリン酸16または連結分子14、14’のいずれの電荷も含まない。レドックス反応が起こった後、レドックス活性電荷タグ18の正味の全体電荷(net overall charge)が変化する(即ち、レドックス活性電荷タグ18は、より多くの正電荷またはより多くの負電荷(more positive charges or more negative charges)を運ぶ)。一例では、レドックス活性電荷タグ18は、非酸化状態または非還元状態で、10以下の電荷を含み、レドックス活性電荷タグ18は、酸化状態または還元状態で、約1〜約100の電荷を含む。非酸化状態または非還元状態におけるレドックス活性電荷タグ18の電荷数は、酸化状態または還元状態におけるレドックス活性電荷タグ18の電荷数よりも低いことを理解されたい。別の例では、レドックス活性電荷タグ18は、非酸化状態または非還元状態で、10以下の電荷を含み、レドックス活性電荷タグ18は、酸化状態または還元状態で、約20〜約50の電荷を含む。
【0046】
レドックス活性電荷タグ18は、レドックス反応を受けることができる任意の配位(すなわち、所定の位置に保持された)金属原子を含み得る。金属原子の例は、鉄、コバルト、ルテニウム、亜鉛、銅、リチウム、銀などを含む。いくつかの具体的な例として、レドックス活性電荷タグ18は、フェロセン(ferrocene)、亜鉛テトラベンゾポルフィリン(zinc tetrabenzoporphyrin)、コバルトフタロシアニン(cobalt phthalocyanine)、トリス−(2,2’−ビピリミジン)ルテニウム(tris−(2,2’−bipyrimidine)ruthenium)、4−フェロセニルベンジルアルコール(4−ferrocenylbenzyl alcohol)、5−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−10,15,20−トリメシチルポルフィナト亜鉛(II)(5−(4−hydroxymethylphenyl)−10,15,20−trimesitylporphinatozinc(II))、およびレドックス活性カリックスアレーンからなる群から選択される。
【0047】
フェロセンは、式Fe(C
5H
5)
2を含む任意の有機金属化合物であり得る。具体例は、フェロセンデンドリマーである:
【化5】
式中、Fe
2+は酸化によりFe
3+になることができ、したがって各「Fe」に正電荷が導入される。
【0048】
亜鉛テトラベンゾポルフィリン(zinc tetrabenzoporphyrin)は、以下の構造を有する:
【化6】
式中、Rは、C
2H
5、C
6H
13、またはC
12H
25である。Zn
1+は酸化によりZn
2+になることができ、したがって正電荷が導入される。
【0049】
コバルトフタロシアニン(cobalt phthalocyanine)の例は、以下を含む:
【化7】
および
【化8】
上記のいずれも溶液中において正味中性(net neutral)の分子である。酸化されると、Co
2+はCo
3+になり、各「Co」に正電荷が導入される(例えば、最初の構造には1つの正電荷、2番目の構造には5つの正電荷)。−3〜+5の範囲の酸化状態を有する他のコバルト含有化合物が知られており、負に帯電可能なレドックス活性電荷タグ18または正に帯電可能なレドックス活性電荷タグ18として使用され得る。
【0050】
トリス−(2,2’−ビピリミジン)ルテニウム(Tris−(2,2’−bipyrimidine)ruthenium)は、以下の構造を有する:
【化9】
式中、Ru
2+は酸化によりRu
3+になることができ、したがって正電荷が導入される。
【0051】
4−フェロセニルベンジルアルコール(4−ferrocenylbenzyl alcohol)は、以下の構造を有する:
【化10】
式中、Fe
2+は酸化によりFe
3+になることができ、したがって正電荷が導入される。
【0052】
5−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−10,15,20−トリメシチルポルフィナト亜鉛(II)(5−(4−hydroxymethylphenyl)−10,15,20−trimesitylporphinatozinc(II))は、以下の構造を有する:
【化11】
式中、Zn
2+は還元によりZn
1+になることができ、したがって負電荷が導入される。
【0053】
レドックス活性カリックスアレーンのいくつかの例は、以下を含む:
【化12】
【0054】
前述の各レドックス反応は可逆的であり、したがって該化合物は、それらのより高い酸化状態において使用されて、電気伝導性チャネルの感知ゾーン31内にあるときに還元され得るか、あるいはそれらのより低い酸化状態において使用されて、電気伝導性チャネルの感知ゾーン31内にあるときに酸化され得る
【0055】
上述のように、本明細書に開示されるレドックス活性電荷タグ18は、溶液中で中性または中性付近(near−neutral)であり得、レドックス反応を受けるまでより大きな電荷を運ばない。かくして、溶液中の標識ヌクレオチド10は高度に帯電した分子(highly charged molecules)とはみなされず、(反対に帯電した中性付近のレドックス活性電荷タグ18を含む)反対に帯電した標識ヌクレオチド10間の凝集は起こりにくい。
【0056】
標識ヌクレオチド10は、キットおよび/またはシステム30(後者の一例は
図2に示されている)において使用され得る。キットまたはシステム30は、電気伝導性チャネル32を含み得る。電気伝導性チャネル32は、ウェル、チューブ、チャネル、キュベット、ペトリ皿、ボトルなどの容器内にあってもよく、またはそれら容器の一部であってもよい。適切な容器の別の例は、フローセル34である。本明細書に記載の実装に適した任意のフローセル構成が使用され得る。いくつかの例示的なフローセルは、イルミナ社(カリフォルニア州サンディエゴ)から市販されているものである。フローセル34は、反応成分(例えば、鋳型核酸、標識ヌクレオチド10など)のそれぞれの電気伝導性チャネル32への付着中に、またはそれぞれの電気伝導性チャネル32上の反応成分を用いて行われる後続の反応中に、個々にアドレス可能な電気伝導性チャネル32のアレイにバルク試薬を送達するのに便利である。核酸シークエンシング反応などのサイクリックプロセス(cyclic processes)は、フローセル34に特に適している。別の特に有用な容器は、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレート中のウェルである。
【0057】
図2に示される例では、フローセル34は電気伝導性チャネル32を含む。本明細書で使用する場合、「電気伝導性チャネル(electrically conductive channel)」という用語は、その表面またはその周囲の電場における摂動を電気信号に変換する検出デバイスの一部を意味することを意図している。例えば、電気伝導性チャネル32は、反応成分(例えば、標識ヌクレオチド10)の到着または離脱を電気信号に変換することができる。本明細書に開示される例では、電気伝導性チャネル32は、標識ヌクレオチド10のレドックス活性電荷タグ18との相互作用によって、2つの反応成分(鋳型核酸と標識ヌクレオチド10のヌクレオチド20)の間の相互作用を検出可能な信号に変換することもできる。
【0058】
電気伝導性チャネル32は、電荷センサー35のチャネルであり得る。電荷センサー35は、ソース端部Sおよびドレイン端部D、ならびに端部S、Dを接続するチャネル32を含み得る。チャネル32は、例えば、チューブ、ワイヤ、プレートなどの任意の適切な形状を有し得る。
【0059】
端部S、Dは、任意の適切な伝導性材料であり得る。適切なソースおよびドレインの材料の例は、コバルト、ケイ化コバルト、ニッケル、ケイ化ニッケル、アルミニウム、タングステン、銅、チタン、モリブデン、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛、金、プラチナ、カーボンなどを含む。
【0060】
電気伝導性チャネル32は、レドックス活性電荷タグ18を酸化または還元することができる任意の伝導性(conductive)材料または半伝導性(semi−conductive)材料を含み得る。当該材料は、有機材料、無機材料、またはその両方を含み得る。適切なチャネル材料のいくつかの例は、シリコン、カーボン(例えば、グラッシーカーボン、グラフェンなど)、伝導性ポリマーなどのポリマー(例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(4−スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)など)、金属などを含む。
【0061】
いくつかの例では、電気伝導性チャネル26はまた、少なくとも1つの寸法(dimension)をナノスケール(1nm〜1μm未満の範囲)で有するナノ構造であり得る。一例では、この寸法(dimension)は最大寸法を指す。例として、電気伝導性チャネル26は、半伝導性ナノ構造、グラフェンナノ構造、金属ナノ構造、および伝導性ポリマーナノ構造であり得る。ナノ構造は、多層または単層ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノリボンなどであり得る。
【0062】
例示的な電荷センサー35は、カーボンナノチューブ(CNT)ベースのFET、単層カーボンナノチューブ(SWNT)ベースのFET、シリコンナノワイヤ(SiNW)FET、ポリマーナノワイヤFET、グラフェンナノリボンFET(およびMoS
2、シリセンなどの2D材料から製造された関連ナノリボンFET)、トンネルFET(TFET)、および急峻サブスレッショルドスロープデバイス(steep subthreshold slope devices)などの電界効果トランジスタ(FET)である。
【0063】
図2に示される例示的な電荷センサー35は、ソースS、ドレインD、およびソースSとドレインDとの間の電気伝導性チャネル32を含むナノ構造FETである。電気伝導性チャネル32は、カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤ、ポリマーナノワイヤなどであり得る。電気伝導性チャネル32はゲート端部として機能するため、
図2では「G」としても示されている。本明細書に開示される例では、ゲートG/電気伝導性チャネル32は、標識ヌクレオチド10のレドックス活性電荷タグ18のための(電子を供給または受容する)酸化還元電極として機能し得る。より具体的には、レドックス活性電荷タグ18に電子を移動させるか、またはレドックス活性電荷タグ18から電子を移動させるために、ゲートG/電気伝導性チャネル32を使用することができる。電子移動は、ゲートG/電気伝導性チャネル32の少なくとも一部の表面上のゲート酸化物(gate oxide)(図示せず)を通るトンネリングを介して起こり得る。いくつかの例では、ゲート酸化物の厚さは、レドックス活性電荷タグ18が十分に活性化される前に最小量の接触時間が経過するように、電流移動効率を調整するために使用され得る。接触時間は、電子移動が高い可能性で発生するように、レドックス活性電荷タグ18がゲートG/電気伝導性チャネル32の十分な近傍内に保持される時間を指し得る。この時間は、レドックス活性電荷タグ18の種類、ゲート酸化物の厚さ、およびゲートG/電気伝導性チャネル32からの電荷タグ18の距離を含む多くの要因に依存する。ゲートG/電気伝導性チャネル32に一時的に接触するが、ゲートG/電気伝導性チャネル32に付着したポリメラーゼ26と実際には会合していない拡散性の標識ヌクレオチド10を電荷センサー35が十分に区別することを保証するために、このことは使用され得る。ポリメラーゼ26の活性部位と会合しているヌクレオチド10は、一過性の相互作用が発生する時間よりも有意に長い期間、会合状態にとどまると予想される。例えば、標識ヌクレオチド10は、数百マイクロ秒から数百ミリ秒の間、ポリメラーゼ活性部位(例えば、ポリメラーゼ26)と会合したままであり得る。一過性の相互作用は、桁違いに速い拡散タイムスケールで発生する。
【0064】
この例では、ポリメラーゼ26は、テザー28によって、電荷センサー32のゲートG/電気伝導性チャネル32上に固定される。テザー28は、ポリメラーゼ26のアンカーとして用いられる。テザー28は、電子輸送能を示し得る。適切なテザー28の例は、(例えば、5〜25のヌクレオチドを有する)核酸鎖、ペプチド、単一炭素鎖、非伝導性または低伝導性のオリゴマーまたはポリマーなどを含む。
【0065】
いくつかの例では、テザー28は、電荷センサー35のゲートG/電気伝導性チャネル32から少なくとも10nm離れてポリメラーゼ26を保持する。例えば、ポリメラーゼ26の電荷および/またはポリメラーゼ26によって保持された鋳型核酸36の負電荷を感知することが望ましくない場合に、これは望ましいかもしれない。しかしながら、ポリメラーゼ26および/または鋳型核酸36の電荷を感知することが望ましい場合、テザー28は、電荷センサー32のゲートGから約10nm未満、約9nm未満、約8nm未満、約7nm未満、約6nm未満、約5nm未満、約4nm未満、約3nm未満、約2nm未満、または約1nm未満にポリメラーゼ26を保持してもよい。
【0066】
FETベースの電荷センサー35の使用は、以下を可能にし得る:(1)適切に設計されたFETを用いて、単一分子の感度を達成することができる;および(2)検出された電荷の変化はゲートG/電気伝導性チャネル32の近傍に局在するため、高度な並列化(「多重化可能性(multiplexability)」とも呼ばれる)が容易になり、(例えば、アレイ中の)隣接する個別にアドレス可能なFETサイト間のクロストークが回避される。更に、シリコンナノ構造FETは、半導体製造施設と適合する(compatible with)プロセスを使用して製造することができる。
【0067】
キットおよび/またはシステム30の例は、フローセル34に導入される鋳型核酸36、およびフローセル34に導入される試薬(
図2には図示せず)も含み得る。
【0068】
鋳型核酸36は、配列決定される任意のサンプルであり得、DNA、RNA、またはそれらの類似体から構成され得る。鋳型(または標的)核酸36の供給源は、ゲノムDNA、メッセンジャーRNA、または天然源由来の他の核酸であり得る。いくつかの場合、そのような供給源に由来する鋳型核酸36は、本明細書の方法またはシステム30で使用する前に増幅することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多置換増幅(MDA)、またはランダムプライマー増幅(RPA)を含むがこれらに限定されない様々な既知の増幅技術のいずれかを使用することができる。本明細書に記載の方法またはシステム30における使用前の標的核酸26の増幅は任意であることを理解されたい。そのため、いくつかの例では、鋳型核酸36は使用前に増幅されないであろう。鋳型/標的核酸は、任意で、合成ライブラリーに由来することができる。合成核酸は、天然のDNAまたはRNA組成物を有し得るか、またはその類似体であり得る。
【0069】
鋳型核酸36が由来し得る生物学的試料には、例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、有蹄動物、馬、羊、豚、ヤギ、牛、猫、犬、霊長類、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物;シロイヌナズナ、トウモロコシ、モロコシ(sorghum)、エンバク、小麦、米、キャノーラ、または大豆などの植物;コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)などの藻類;カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)などの線虫;キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、蚊、ショウジョウバエ、ミツバチ、クモなどの昆虫;ゼブラフィッシュなどの魚;爬虫類;カエルやアフリカツメガエル(Xenopus laevis)などの両生類;キイロタマホコリカビ(dictyostelium discoideum);ニューモシスチス・カリニ(pneumocystis carinii)、トラフグ(Takifugu rubripes)、酵母、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)または分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)などの菌類;または熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)に由来するものが含まれる。鋳型核酸36は、細菌、大腸菌(Escherichia coli)、ブドウ球菌(staphylococci)または肺炎マイコプラズマ(mycoplasma pneumoniae)などの原核生物;古細菌;C型肝炎ウイルス、エボラウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスなどのウイルス;またはウイロイド(viroid)に由来することもできる。鋳型核酸36は、上記の生物の均質な培養物または集団、または代替的に、例えばコミュニティまたは生態系における、いくつかの異なる生物のコレクションに由来し得る。
【0070】
更に、鋳型/標的核酸36は天然源に由来しない場合があるが、既知の技術を使用して合成することができる。本明細書に記載の例で、例えば、遺伝子発現プローブまたは遺伝子型決定プローブ(genotyping probes)を合成および使用することができる。
【0071】
いくつかの例では、鋳型/標的核酸36は、1つ以上のより大きな核酸の断片として得ることができる。断片化は、例えば、噴霧化、超音波処理、化学的切断、酵素的切断、または物理的せん断を含む、当技術分野で知られている様々な技術のいずれかを使用して実行することができる。断片化はまた、より大きな核酸の一部のみをコピーすることによりアンプリコンを生成する特定の増幅技術の使用から生じる場合がある。例えば、PCR増幅は、増幅中に隣接プライマーがハイブリダイズする位置の間にある元の鋳型上のヌクレオチド配列の長さによって規定されるサイズを有する断片を生成する。
【0072】
鋳型/標的核酸36の集団、またはそのアンプリコンは、本明細書に記載の方法、キット、またはシステム30の特定のアプリケーションのために望ましいまたは適切な平均鎖長を有することができる。例えば、平均鎖長は、約100,000ヌクレオチド未満、約50,000ヌクレオチド未満、約10,000ヌクレオチド未満、約5,000ヌクレオチド未満、約1,000ヌクレオチド未満、約500ヌクレオチド未満、約100ヌクレオチド未満、または約50ヌクレオチド未満であり得る。代替的または追加的に、平均鎖長は、約10ヌクレオチド超、約50ヌクレオチド超、約100ヌクレオチド超、約500ヌクレオチド超、約1,000ヌクレオチド超、約5,000ヌクレオチド超、約10,000ヌクレオチド超、約50,000ヌクレオチド超、または約100,000ヌクレオチド超であり得る。標的核酸の集団またはそのアンプリコンの平均鎖長は、上記の最大値と最小値の間の範囲内であり得る。
【0073】
いくつかの場合、鋳型/標的核酸36の集団は、そのメンバーの最大長を有する条件下で生成され得るか、そうでなければそのメンバーの最大長を有するように構成され得る。例えば、メンバーの最大長は、約100,000ヌクレオチド未満、約50,000ヌクレオチド未満、約10,000ヌクレオチド未満、約5,000ヌクレオチド未満、約1,000ヌクレオチド未満、約500ヌクレオチド未満、約100ヌクレオチド未満または約50ヌクレオチド未満であり得る。代替的または追加的に、鋳型核酸36の集団、またはそのアンプリコンは、そのメンバーの最小長を有する条件下で生成され得るか、そうでなければそのメンバーの最小長を有するように構成され得る。例えば、メンバーの最小長は、約10ヌクレオチド超、約50ヌクレオチド超、約100ヌクレオチド超、約500ヌクレオチド超、約1,000ヌクレオチド超、約5,000ヌクレオチド超、約10,000ヌクレオチド超、約50,000ヌクレオチド超、または約100,000ヌクレオチド超であり得る。集団中の鋳型核酸36の最大鎖長および最小鎖長は、上記の最大値と最小値の間の範囲内であり得る。
【0074】
図2に示されるように、シークエンシングされる鋳型核酸36(例えば、一本鎖DNA鎖)は、前述の標識ヌクレオチド10(
図2には表示せず)などの試薬とともに、または該試薬とは別に流体中に導入された後、ポリメラーゼ26に結合する。
【0075】
鋳型核酸36および/または試薬(例えば、標識ヌクレオチド10)は、流体中に存在し、フローセル34に導入されてもよい。該流体は低塩緩衝液を含み得る。例として、低塩緩衝液は、0mM超〜約50mMの塩を含み得る。一例として、低塩緩衝液は、Trisバッファー(pH8.0)中に、最高で5mMのMg
2+を含む。低塩緩衝液の使用は、感知ゾーン31(すなわち、デバイ長)が悪影響を受けない、即ち、電荷タグ18の感知を妨げるほど長すぎないので望ましい場合がある。流体は、反応を促進する酵素などの触媒、その他の添加剤、および溶媒(例えば、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ベタイン、ホルムアミドなど)も含み得る。
【0076】
いくつかの例では、電荷センサー35に導入される流体において、いくつかの異なる標識ヌクレオチド10が一緒に使用される場合がある。これらの例では、連結分子14、14’が、すべての標識ヌクレオチドの種類で同一であっても、異なっていてもよいことを理解されたい。連結分子14、14’の特性、例えば長さおよび剛性は、レドックス反応の速度に影響を与えるように変更することができる。そのような特性は、標識ヌクレオチド10およびその関連レドックス活性電荷タグ18(its associated redox−active charge tag 18)に対して個別に調整され得る。連結分子14’の特異性領域24の特性も、レドックス反応の速度に影響を与えるように変更することができる。連結分子14、14’は、レドックス活性電荷タグ18が電気伝導性チャネル32の近傍にある時間を増減するように変更することができる。そのような変更を使用して、電子移動の速度に影響を与えることができる。そうすることで、拡散性の標識ヌクレオチド10による、電荷タグ18と電気伝導性チャネル32との間の一過性の相互作用が、電子移動を引き起こす可能性を低くすることができる。あるいは、レドックス活性電荷タグ18を電気伝導性チャネル32の近傍に、より長い期間、保持することは、電子移動のより高い可能性をもたらし得る。
【0077】
一例では、電荷センサー35に導入される流体において、4つの異なる標識ヌクレオチド10が使用され、4つの異なる標識ヌクレオチド10のそれぞれは、異なるヌクレオチド12(特に、異なる塩基20)および異なるヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ18を含む。この一例を
図3に示す。この例では、標識ヌクレオチド10は、以下を含む:ヌクレオチドとしてのデオキシアデノシンポリホスフェートおよび第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第1標識ヌクレオチド10A(
図3では、4つの正電荷で示されている);ヌクレオチドとしてのデオキシグアノシンポリホスフェートおよび第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第2標識ヌクレオチド10G(
図3では、4つの負電荷で示されている);ヌクレオチドとしてのデオキシチジンポリホスフェートおよび第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第3標識ヌクレオチド10C(
図3では、2つの負電荷で示されている);およびヌクレオチドとしてのデオキシチミジンポリホスフェートおよび第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含む、第4標識ヌクレオチド10T(
図3では、1つの正電荷で示されている)。この例では、第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグは互いに異なる。
【0078】
図3に示す例では、第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグのうち2つ(例えば、dATPおよびdTTP)は、変更された電荷状態で(例えば、レドックス反応が起こった後で)正に帯電していて、第1ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、第2ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、第3ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ、および第4ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグのうち他の2つ(例えば、dGTPおよびdCTP)は、変更された電荷状態で(例えば、レドックス反応が起こった後で)負に帯電している
【0079】
図3に示す例では、ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグのうち2つの上の電荷が同じ(正または負)であっても、該電荷が(例えば、レドックス活性化後に)異なる強度を有するため、ヌクレオチドの異なる種類を区別するためにタグ18を依然として使用することができる。
図3に示す例示的な構成は、単一のテザーハイブリダイゼーション位置および4つの異なるレドックス活性電荷タグ18に基づく4状態の識別を提供する。具体的には、dGTPおよびdCTPはともに、それらをdATPおよびdTTPと区別する負に帯電したレドックス活性電荷タグ18を含む;dGTPは、dCTPの電荷よりも明らかに高い(distinguishably higher)電荷のため、dCTPと区別することができる。同様に、dATPおよびdTTPは、dTTP部分と比較してdATP部分の正電荷が高いため、互いに区別することができる。
【0080】
いくつかの例では、負のタグを充電するために必要な電圧が正のタグを放電する可能性があり、その逆もまた然りであるため、同じ流体中で正および負の大きさの両方のレドックス活性電荷タグ18を使用することは実現不可能かもしれない。そのため、他の例では、一方の極性のレドックス活性電荷タグ18を含む本明細書に開示される標識ヌクレオチド10の例を利用すること、および永久帯電した(即ち、レドックスではない)タグを含む他の標識ヌクレオチドを使用することが望ましいかもしれない。永久帯電したタグの例は、例えばリン酸基、DMTおよび/またはFMOCなどの負に帯電したタグ;または第一級アミンなどの正に帯電したタグを含む。一例として、1〜3の異なる標識ヌクレオチド10(レドックス活性電荷タグ18を含む)を使用することができ、標識ヌクレオチドの残りは、レドックス活性電荷タグ18ではなく永久帯電したタグを含む。これは、還元条件または酸化条件(両方ではない)が使用される場合に特に有用である。溶液中に比較的高濃度の両方の電荷タイプの大きな部分が同時に存在しないため、これらの場合には凝集が起こらないはずであることを理解されたい。
【0081】
図3はまた、感知ゾーン31(ゲートG/電気伝導性チャネル32の周りの影付き領域)を示す。電荷センサー35は、生物学的に関連性のある塩条件(biologically relevant salt conditions)、例えば約1mM〜約100mMの範囲で操作され得る。そのような塩溶液のデバイスクリーニング長は、約0.3nm〜約10nmの範囲内であり得、感知ゾーン31をゲートGの表面の外側の数nmに制限し、しばしば信号レベルを検出限界(limit of detectability)にまで低下させ得る。
【0082】
図3では、電気伝導性チャネル32上にいくつかのつながれたポリメラーゼ28が示されているが、特定の電荷センサー35では、1つのポリメラーゼ28が1つの電気伝導性チャネル32につながれることを理解されたい。したがって、
図3に示す例は、4つの異なるヌクレオチド取り込みイベント中のポリメラーゼ28、およびそれぞれの取り込みイベント中の異なるレドックス活性電荷タグ18に対する影響を示している。
【0083】
ここで
図4を参照すると、方法の一例が示されている。方法100は、ポリメラーゼ26がつながった電気伝導性チャネル32に鋳型核酸36を導入するステップ(参照番号102);前記電気伝導性チャネルに標識ヌクレオチドを導入するステップであって、前記標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ヌクレオチドおよびそれに付着したヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグを含み、それにより、前記標識ヌクレオチドの1つが前記ポリメラーゼと会合する(associates with the polymerase)ステップ(参照番号104);前記標識ヌクレオチドの前記1つが会合している間に、前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグの電荷状態を変更するために、前記ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグと前記電気伝導性チャネルとの間のレドックス反応を開始するステップ(参照番号106);および前記レドックス反応に応じて、前記電気伝導性チャネルの応答を検出するステップ(参照番号108)を含む。方法100の議論を通して、
図5Aおよび5Bも参照される。
【0084】
図5Aに示すように、電荷センサー32に導入された鋳型核酸36は、電荷センサー32につながれたポリメラーゼ26によって所定の位置に保持され得る。
図5Aに示される鋳型核酸36は、DNAの鋳型鎖であり得る。
【0085】
また、
図5Aに示されるように、標識ヌクレオチド10は、鋳型核酸36の標的核酸に相補的な塩基20を含み得る。標識ヌクレオチド10は、部分的に(in part)、鋳型核酸36にも結合したポリメラーゼ26によって所定の位置に保持される。存在する場合、標識ヌクレオチド10の連結分子14’の特異性領域24は、テザー28と相互作用し得る。
【0086】
テザー28と会合した(associated with the tether 28)標識ヌクレオチド10の一例を
図5Bに示す。この例では、標識ヌクレオチド10の連結分子14’は、テザー28の一部(たとえば、A、B、C)に対して親和性を有する特異性領域24(例えば、A’、B’、C’)を含む。この特定の例では、特異性領域24(例えば、A’、B’、C’)は、テザー28の当該部分(例えば、A、B、C)のヌクレオチドまたはペプチド核酸に相補的なヌクレオチドまたはペプチド核酸を含む。別の例では、特異性領域24およびテザー28の受容領域は、互いに親和性を有する非核酸部分であってもよい。更に別の例では、特異性領域24は、疎水性ポリマー(テザー28の一例)に対して親和性を有する非核酸部分であってもよい。これらの領域間の特異的結合は、標準的なワトソン−クリックの塩基対合から生じ得る。この例では、特異性領域24は、A’、B’、C’ヌクレオチド配列に隣接するイノシン(I)も含むことができる。イノシンはユニバーサル塩基であるため、DNAの4つの天然ヌクレオチドのすべてと対合することができる。かくして、追加の結合相互作用が、テザー28上の天然ヌクレオチドとユニバーサル塩基(例えば、イノシンI)との相互作用から生じ得る。したがって、取り込み中に標識ヌクレオチド10がポリメラーゼ26に結合すると、標識ヌクレオチド10の特異性領域24とテザー28との間に相乗的な結合が起こり、標識ヌクレオチド10とテザー28の間の相互作用の安定性が大幅に向上する。
【0087】
標識ヌクレオチド10の連結分子14が特異性領域24を含まない場合、標識ヌクレオチド10はポリメラーゼ26との相互作用により所定の位置に保持されるであろうことを理解されたい。連結分子14の長さは、レドックス活性電荷タグ18がゲートG/電気伝導性チャネル32の感知ゾーン31内に保持されることを確実にするのを助けることができる。
【0088】
標識ヌクレオチド10とポリメラーゼ26との間、または標識ヌクレオチド10とポリメラーゼ26およびテザー28との間の相互作用は、レドックス活性電荷タグ18が電気伝導性チャネル32の感知ゾーン31内に入ることをもたらす。当該相互作用はまた、効率的かつ完全な電荷移動に十分な時間の間、感知ゾーン31内にレドックス活性電荷タグ18を維持することを助ける。当該時間は最長で数十ミリ秒であり得る。この比較的長い相互作用は、拡散して電気伝導性チャネル32に短時間だけ接触し得る、溶液中に存在する他の標識ヌクレオチド10とは異なる。短時間の相互作用は、十分な電荷移動が起こるほど十分に長くないため、これらの例では、レドックス活性電荷タグ18は帯電されず、電荷センサー32によって応答は検出されない。
【0089】
図5Aに示される例では、標識ヌクレオチドの銅フタロシアニンレドックス活性電荷タグ18が、電気伝導性チャネル32から約1nm〜約2nm以内の場(field)(例えば、感知ゾーン31)に入る。標識ヌクレオチド10は所定の位置に保持されているため、レドックス活性電荷タグ18は、ゲートG/電気伝導性チャネル32によって帯電される位置にある。
【0090】
ゲートG/電気伝導性チャネル32(例えば、シリコンナノワイヤ、カーボンナノチューブなど)とレドックス活性電荷タグ18との間のレドックス反応を開始するために、ゲートG/電気伝導性チャネル32に印加される電圧は、レドックス活性電荷タグ18の酸化電圧または還元電圧に調整され得る。酸化されると、レドックス活性電荷タグ18は電子を失い、したがってゲートG/電気伝導性チャネル32はレドックス活性電荷タグ18に正味の正電荷を生成する。還元されると、レドックス活性電荷タグ18は電子を獲得し、したがってゲートG/電気伝導性チャネル32はレドックス活性電荷タグ18に正味の負電荷を注入する。レドックス反応の結果として、レドックス活性電荷タグ18の電荷状態は変更される。この変更されたより高い荷電状態(例えば、荷電される前のレドックス活性電荷タグ18の状態(非酸化または非還元状態)と比較して)は、電気伝導性チャネル32の周りの場(field)を乱し、検出可能な信号を生成する。
【0091】
レドックス反応中および検出中に電気伝導性チャネル32に印加される電圧は、使用されるレドックス活性電荷タグ18に依存し得る。例えば、充電電圧(charging voltage)は読み取り電圧(reading voltage)と異なっていてもよく、したがって、電気伝導性チャネル32は充電電圧と読み取り電圧との間を循環(cycle)する場合がある。一例では、レドックス反応を開始するステップは、電気伝導性チャネル32に充電電圧を印加することを含み、電気伝導性チャネル32の応答を検出するステップは、電気伝導性チャネル32に読み取り電圧を印加することを含む。
【0092】
レドックス反応後の電気伝導性チャネル32の応答は、レドックス活性電荷タグ18の変更された電荷状態を示している。レドックス活性電荷タグ18はヌクレオチド特異的である(即ち、特定のタグ18が特定の塩基20に対して選択される)ため、レドックス反応後の電気伝導性チャネル32の応答は、標識ヌクレオチド10の塩基20も示し得る。したがって、方法100は、電気伝導性チャネル32の応答を、標識ヌクレオチド10のの前記会合している1つ(即ち、ポリメラーゼ26と会合している標識ヌクレオチド10)のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ18に関連付けるステップ、およびヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ18に基づいて、前記会合しているヌクレオチド10(即ち、ポリメラーゼ26と会合している標識ヌクレオチド10)のヌクレオチド(例えば、塩基20)を識別するステップも含み得る。
【0093】
前記会合している標識ヌクレオチド10の塩基20は、鋳型核酸36にハイブリダイズされる新生鎖38取り込まれる。このことは、標識ヌクレオチド10のリン酸基16と新たに取り込まれたヌクレオチド塩基20との間の結合を自然に(naturally)切断する。例えば、新生鎖38へのヌクレオチド塩基20の取り込み後、αリン酸と連結分子16の間の結合、またはαリン酸とβリン酸の間の結合が自然に切断される。その結果、標識ヌクレオチド10の残部(例えば、成分14または14’と18)は、ヌクレオチド塩基20から自由に解離し、電気伝導性チャネル32から自由に離れて拡散し、それにより、電気伝導性チャネル32の周りの場(field)を標識ヌクレオチド10のポリメラーゼ26との結合前の状態に戻す。電気伝導性チャネル32の周囲の場(field)がそれぞれ摂動されるとき、および非摂動状態に戻るときの信号の出現および消失は、鋳型核酸36の新生鎖38へのヌクレオチド塩基20の取り込みと相関させることができる。したがって、方法100の例は、標識ヌクレオチド10の前記会合している1つ(the associated one of the labeled nucleotides 10)から、ヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ18および連結分子14、14’を(例えば、リン酸基16で)切断するステップであって、それにより、前記会合している標識ヌクレオチド10のヌクレオチド塩基20が、鋳型核酸36に相補的な新生鎖38に取り込まれるも含む。切断するステップは、自然な切断が起こるのを待つことを含み得る。連続した標識ヌクレオチド塩基20の取り込みの間に信号はベースライン状態に戻るため、鋳型鎖36に沿った新生鎖38内のホモポリマーセグメント(homopolymeric segments)の検出が可能である。
【0094】
本明細書に開示されるいくつかの例は、電気伝導性チャネル32の感知ゾーン31の近くにレドックス活性電荷タグ18を持ってきてかつ保持するために、単独でまたはテザー28と組み合わせて、標識ヌクレオチド10のポリメラーゼ26への相乗的な結合(synergistic binding)を利用する。テザー28と特異性領域24の間で形成された複合体の安定性は比較的低いため、(特異性領域24とテザー28との間の)複合体は、ポリメラーゼ26にも結合しない標識ヌクレオチド10では形成されない(即ち、溶液中でフリーの標識ヌクレオチド10は、テザー28に実質的に結合しない場合がある)。換言すれば、該複合体のオフ速度(off rate)は十分に高く、寿命が短くなり得る。しかしながら、標識ヌクレオチド10とポリメラーゼ26の間に安定した会合(association)が形成されると、連結分子14、14’の局所濃度がテザー28の周りで増加し、したがってテザー28に対する特異性領域24のオン速度(on rate)が高くなる。このようにして、標識ヌクレオチド10のポリメラーゼ会合状態(polymerase−associated state)では、浮動性(free−floating)標識ヌクレオチド10の非会合状態と比較して、全体的な会合時間(association time)が大幅に増加する。ポリメラーゼ30に対する標識ヌクレオチド10の親和性の相乗効果は、単独でまたはテザー28と組み合わせて、全体的にかなりの(substantial)結合親和性を可能にする。ヌクレオチド塩基20の取り込み後のポリメラーゼ26による自然切断後、該相乗効果が失われ、電荷タグ18も電気伝導性チャネル32から解離するであろう。
【0095】
例示的な方法100では、標識ヌクレオチド10の1つがポリメラーゼ28と会合するステップ、前記レドックス反応を開始するステップ、前記検出するステップ、前記応答を関連付けるステップ、および前記取り込まれたヌクレオチド塩基20を識別するステップは合わせて、シークエンシングサイクルである。方法100は、ポリメラーゼ26と会合している別の標識ヌクレオチド10で、別のシークエンシングサイクルを行うステップを更に含んでもよい。次のシークエンシングサイクルを行うステップは、標識ヌクレオチド10の次の1つをポリメラーゼ26と会合させること;標識ヌクレオチド10の前記次の1つが会合している間に、他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ18の電荷状態を変更するために、前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ18と電荷センサー32との間の他のレドックス反応を開始すること;前記他のレドックス反応に応じて、電荷センサー32の他の応答を検出すること;電荷センサー32の前記他の応答を、前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグに関連付ける(associating)こと;および前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグ18に基づいて、標識ヌクレオチド10の前記次の1つ(即ち、ポリメラーゼ26に結合している)のヌクレオチド(塩基20)を識別すること、を含み得る。前記他のヌクレオチド特異的レドックス活性電荷タグは切断され得、標識ヌクレオチド10の前記次の1つのヌクレオチド(塩基20)は、鋳型核酸36に相補的な新生鎖38に取り込まれる。シークエンシングサイクルは繰り返され得る。
【0096】
本明細書で開示される例では、波形も利用され得る。波形は、いつそれが異なる酸化還元電位を有するレドックス活性電荷タグ18の酸化還元電位についての1つ以上の閾値電圧に達するかを決定するために、モニターされ得る。これらの例では、ゲートG/電気伝導性チャネル32を流れる結果として生じる電流の変化は、特定の閾値電圧に関連するレドックス活性電荷タグ18を含む標識ヌクレオチド10の塩基20を識別する情報として使用され得る。
【0097】
本明細書に開示される例では、レドックス活性電荷タグ18に移動されるまたはレドックス活性電荷タグ18から移動される電子の数もモニターされ得る。移動された電子の数を使用して、ポリメラーゼ26と会合したヌクレオチド塩基20、およびポリメラーゼ26が新生鎖38に取り込むヌクレオチド塩基20を同定することができる。
【0098】
本明細書に開示される標識ヌクレオチド10およびシステム10は、様々なアプリケーションのいずれかに使用することができる。
図4、
図5Aおよび
図5Bを参照して説明したように、特に有用なアプリケーションは、単一分子の合成によるシークエンシング(SBS)などの核酸シークエンシングである。単一分子のSBSでは、鋳型核酸36(例えば、標的核酸またはそのアンプリコン)に沿った核酸プライマーの伸長がモニターされ、鋳型36内のヌクレオチド配列が決定される。基礎となる化学プロセスは、(例えば、本明細書に記載のポリメラーゼ酵素26により触媒されるような)重合であり得る。特定のポリメラーゼベースの単一分子のSBSの例では、プライマーに付加されたヌクレオチドの順番および種類の検出を使用して鋳型配列を決定できるように、ヌクレオチド(例えば、塩基20)が鋳型に依存する方法でプライマーに付加される(それにより、プライマーを伸長し、新生鎖38を形成する)。異なる鋳型36について発生するイベントが電気伝導性チャネル32の各々に動作可能に接続された個々の検出器によって区別され得る条件下で、アレイの異なる電気伝導性チャネル32における複数の異なる鋳型36を、単一分子SBS技術にかけることができる。各電気伝導性チャネル32(ならびにそのソースおよびドレイン端部S、D)は、フローセルの窪みまたはウェル内に配置することができ、このことは、アレイ内において隣接するチャネル32から1つのチャネル32を物理的に分離することを助ける。
【0099】
本明細書に開示される標識ヌクレオチド10、キット、およびシステム30の他の適切なアプリケーションは、ライゲーションによるシークエンシング(sequencing−by−ligation)およびハイブリダイゼーションによるシークエンシング(sequencing−by−hybridization)を含む。本明細書に開示される標識ヌクレオチド10およびシステム30の別の有用なアプリケーションは、遺伝子発現解析である。遺伝子発現は、RNAシークエンシング技術、例えばデジタルRNAシークエンシングと呼ばれるものを使用して検出または定量化することができる。RNAシークエンシング技術は、光学標識ヌクレオチドの蛍光検出が本明細書に記載の電荷ベースの検出方法で置換され得ることを除いて、上記のような当技術分野で公知のシークエンシング方法論を使用して実施することができる。遺伝子発現はまた、アレイへの直接ハイブリダイゼーションによって実行されるハイブリダイゼーション技術を使用して、またはその産物がアレイ上で検出される多重アッセイを使用して、検出または定量化することができる。これらの方法は、光学標識および蛍光検出を、電荷ベースの検出技術および本明細書に記載のレドックス活性電荷タグ18で置換することにより、容易に適合させることができる。
【0100】
前述の概念および以下でより詳細に説明される追加の概念の全ての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しない場合)は、本明細書で開示された本発明の主題の一部として企図されることを理解されたい。特に、本開示の最後に現れる特許請求の範囲に記載された主題の全ての組み合わせは、本明細書で開示された本発明の主題の一部として企図される。また、参照により援用される任意の開示にも現れ得る、本明細書で明示的に使用される用語には、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解されたい。
【0101】
本明細書全体にわたる「一例」、「別の例」、「例」などへの言及は、当該例に関連して説明される特定の要素(例えば、機能、構造、および/または特性)が本明細書に記載される少なくとも1つの例に含まれ、他の例には存在しても存在しなくてもよいことを意味する。加えて、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、任意の例について説明された要素は、様々な例において任意の適切な方法で組み合わされ得ることを理解されたい。
【0102】
特許請求の範囲を含む本開示全体で使用される「実質的に」および「約」という用語は、処理のばらつきなどによる小さな変動を記載および説明するために使用される。例えば、それらは、±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下を指すことができる。
【0103】
更に、本明細書で提供される範囲には、あたかもそのような値または部分範囲が明示的に列挙されているかのように、述べられた範囲および述べられた範囲内の任意の値または部分範囲が含まれることを理解されたい。例えば、約1電荷〜約100電荷で表される範囲は、明示的に記載された約1電荷〜100電荷の制限だけでなく、約5電荷、50電荷、75電荷などの個々の値、および約15電荷〜約85電荷などの部分範囲も含むと解釈されるべきである。
【0104】
いくつかの例を詳細に説明したが、開示された例は修正され得ることを理解されたい。したがって、前述の説明は非限定的と見なされるべきである。