(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、図面は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の物とは異なる個所もあるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0026】
<原盤1>
原盤1は、マイクロ流路を作製するための原盤であり、ロールツーロール(roll−to−roll)方式等も含むインプリント転写に用いられる。すなわち、原盤1の表面に設けられた凹凸形状を転写することで、転写物5を製造する。なお、原盤1を用いてインプリント転写により転写物5を得た場合には、転写物5の表面には、原盤1の表面に設けられた凹凸形状を反転させた形状の凹凸が形成されることとなる。転写物5の表面に形成された凹部がマイクロ流路となる。
【0027】
なお、原盤1は、マイクロ流体チップのような製品としての転写物5を製造する際に用いられるだけでなく、レプリカ原盤をインプリント転写法により作製する際に用いられてもよい。レプリカ原盤は、原盤1の表面に設けられた凹凸形状を反転させた形状の凹凸を持ち、さらにレプリカ原盤を用いてインプリント転写を行うことにより、製品としての転写物5を製造することができる。
【0028】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る原盤1について説明する。
図1は、本実施形態に係る原盤1を厚み方向に切断した際の断面を模式的に示した図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る原盤1は、平板状の基材10と、基材10に積層された表面層16と、表面層16の表面に設けられ、且つ、基材10の面方向に延びる複数の主凹凸部11と、複数の主凹凸部11の表面を覆う被覆層15と、複数の主凹凸部11の表面の被覆層15に設けられ、主凹凸部11と比べてピッチ(周期)が狭い複数の微細凹凸部14とを有する。なお、原盤1は、表面層16を含まなくてもよく、この場合には、主凹凸部11は基材10の表面に直接設けられることとなる。また、原盤1は、被覆層15を含まなくてもよく、この場合には、微細凹凸部14は表面層16の表面に直接設けられることとなる。
【0030】
基材10は、
図1に示されるような平板状であることに限定されるものではなく、円筒形状もしくは円柱形状であってもよい。この場合には、表面層16及び主凹凸部11は、基材10の外周面に設けられることとなる。なお、このような円筒形状もしくは円柱形状の原盤1は、ロールツーロール方式のインプリント転写法で用いることができる。
【0031】
基材10の材料は、特に限定されるものではなく、ステンレス鋼、Cu、Al、Niなどの金属、溶融石英ガラスまたは合成石英ガラスなどの石英ガラス(SiO
2)、半導体材料、あるいは、樹脂などを用いることができる。もしくは、これらの材料が積層した積層材料を用いてもよい。
【0032】
表面層16の材料は、特に限定されるものではなく、NiP、Ni、Cu、Alといった金属、もしくは、これらの積層材料を用いることができる。また、表面層16の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば50μm〜300μmであってもよい。
【0033】
被覆層15の材料は、特に限定されるものではなく、Cu、Cr、Ni、NiP、Alといった金属、またはダイヤモンドライクカーボン(diamond−like carbon:DLC)といった炭素材料を用いることができる。また、被覆層15の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば0.1μm〜300μmであってもよい。
【0034】
主凹凸部11は、表面層16の表面、もしくは基材10の表面に設けられ、基材10の面方向に延び、且つ、凸部12及び凹部13を有する。詳細には、1つの主凹凸部11は、1つの凸部12と1つの凹部13を有する。この凸部12の断面形状は、
図1に示されるような形状に限定されるものではなく、以下に説明するように様々な形状とすることができる。なお、凸部12の断面形状とは、基材10の断面における凸部12の表面の輪郭形状のことをいう。さらに、
図2を用いて、凸部12の他の断面形状について説明する。
図2は、本実施形態に係る原盤1を厚み方向に切断した際の凸部12の断面を模式的に示した図である。なお、
図2においては、わかりやすくするために、凸部12の表面に設けられた微細凹凸部14、被覆層15及び基材10を図示していない。
図2(a)は、矩形状の凸部12の例である。
図2(b)は、上底が下底よりも短い台形状の凸部12の例である。
図2(c)は、上側に頂点が位置する三角形状の凸部12の例である。
図2(d)は、上側に弧が位置する半円状の凸部12の例である。さらに、
図2(e)は、断面形状が近似的には矩形であり、その角の部分が曲線状になっている断面形状を持つ凸部12の例である。すなわち、本実施形態に係る凸部12の断面形状は、三角形又は四角形などの多角形であってもよく、多角形の角の部分が曲線状になっていてもよく、円又は楕円などの曲線を含む図形であってもよい。さらに、近似的にこれらの形状とみなすことができるような形状であってもよく、非対称形状であってもよい。また、凸部12の対をなす凹部13の断面形状についても、凸部12の断面形状と同様に、
図1に示されるような形状に限定されるものではなく、様々な形状とすることができる。
【0035】
主凹凸部11の平面形状は、特に限定されるものではなく、様々な形状とすることができる。ここで、主凹凸部11の平面形状とは、基材10の表面の上方から基材10の表面を見た場合の、主凹凸部11の形状、いわゆる平面視での形状のことをいう。
図3を用いて、主凹凸部11の平面形状について説明する。
図3は、本実施形態に係る主凹凸部11の平面形状を模式的に示した図である。
図3(a)は、基材10の面方向に延びる直線状の主凹凸部11の例である。
図3(b)は、曲線状の主凹凸部11の例である。また、
図3(c)は、基材10の面方向において鈍角を形成するように折れ曲がった形状を持つ主凹凸部11の例である。すなわち、本実施形態に係る主凹凸部11の平面形状は、特に限定されるものではなく、直線状、曲線状であってもよく、折れ曲がった形状や分岐した形状であってもよい。
【0036】
主凹凸部11の幅及び深さは特に制限されるものではなく、例えば1μm〜2000μmであってもよい。ここで、主凹凸部11の幅及び深さは、凸部12及び凹部13の幅及び深さ(高さ)である。さらに、凸部12の幅とは、主凹凸部11の長手方向に対して垂直の方向に原盤1を切断した際の断面における凸部12の底部の幅を指し、凹部13の幅とは、同様の断面における凹部13の底面の幅を指す。凸部の深さ(高さ)とは、同様の断面における底部から上端部(上端面)までの長さを指し、凹部の深さとは、同様の断面における底部から上端部(開口面)までの長さを指す。凸部12又は凹部13は、1つの凸部12又は凹部13において均一な幅を有していてもよく、1つの凸部12又は凹部13における位置ごとに異なる幅を有していてもよい。
【0037】
図1に示す微細凹凸部14は、主凹凸部11の表面の被覆層15に設けられ、微細凸部17及び微細凹部18を有し、主凹凸部11と比べてピッチ(周期)が狭い。詳細には、1つの微細凹凸部14は、1つの微細凸部17と1つの微細凹部18を有する。
図1に示されるように、微細凹凸部14は、凸部12の上面及び凹部13の底面に設けられている。なお、微細凹凸部14は、凸部12の上面及び凹部13の底面の両方に設けられることに限られず、いずれか一方に設けられてもよい。好ましくは、微細凹凸部14は、凸部12の上面に設けられる。
【0038】
微細凹凸部14の幅及び深さは、特に制限されるものではないが、例えば30nm〜1000nmであってもよい。ここで、微細凹凸部14の幅及び深さは、微細凸部17及び微細凹部18の幅及び深さ(高さ)である。ここで、微細凸部17の幅及び深さと、微細凹部18の幅及び深さの定義は、上述した凸部12及び凹部13の定義と同様である。原盤1が複数の微細凹凸部14を有する場合には、微細凹凸部14の幅及び深さは、微細凹凸部14が形成される位置ごとに異なる値となってもよい。
【0039】
微細凹凸部14が設けられた主凹凸部11の表面は、10nm〜150nmの算術平均粗さ(Ra)を有する。ここで、算術平均粗さとは、以下のように求めることができる。主凹凸部11の表面の3μm四方の領域中の形状を原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により計測し、JISB0601−2001に準拠して算術平均粗さRaを算出する。
【0040】
また、微細凹凸部14が設けられた主凹凸部11の表面は、1.1〜3.0の比表面積率を有する。ここで、比表面積率とは、以下のように求めることができる。主凹凸部11の表面の3μm四方の領域中をAFMにより観察し、表面の実測表面積Saを測定し、Saと表面が理想的な平坦面(鏡面)であった場合の表面積Smに対する実測表面積Saの比を算出することにより求めることができる。
【0041】
微細凹凸部14の形成方向は、特に限定されるものではなく、以下に説明するように様々な方向とすることができる。ここで、微細凹凸部14の形成方向とは、基材10の表面の上方から基材10の表面を見た場合の微細凹凸部14の長手方向のことをいう。例えば、
図3(a)に示される微細凹凸部14は、直線状の主凹凸部11の長手方向に沿って直線状に延びるように設けられている。この場合、微細凹凸部14の形成方向は、主凹凸部11の長手方向に沿った方向となっている。また、
図3(b)や
図3(c)に示される微細凹凸部14は、曲線状や折れ曲がった形状の主凹凸部11の長手方向に沿って延びるように設けられており、これらの場合も、
図3(a)と同様に、微細凹凸部14の形成方向は主凹凸部11の長手方向に沿った方向となっている。さらに、
図4を用いて、微細凹凸部14の他の態様について説明する。
図4は、本実施形態に係る主凹凸部11の他の平面形状を模式的に示した図である。
図4(a)は、
図3(a)と同様に、直線状の主凹凸部11の長手方向に沿った形成方向を有する微細凹凸部14の例である。
図4(b)は、微細凹凸部14の形成方向が直線状の主凹凸部11の長手方向に対して直交する場合の微細凹凸部14の例である。
図4(c)は、微細凹凸部14の形成方向が直線状の主凹凸部11の長手方向に対して傾斜した場合の微細凹凸部14の例である。
【0042】
さらに、微細凹凸部14の平面形状は、これまで説明した例のように線状に限定されるものではなく、様々な形状とすることができる。例えば、
図4(d)に示されるように、微細凹凸部14はドット状や網目状としてもよい。また、
図4(e)に示されるように、微細凹凸部14は、主凹凸部11内の位置ごとに異なる形成方向や形状を持つようにしてもよい。
【0043】
<転写物5>
以下に、本実施形態に係る原盤1を用いてインプリント転写を行って製造した転写物5を説明する。まず、
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る転写物5について説明する。
図5は、本実施形態に係る転写物5を厚み方向に切断した際の断面を模式的に示した図である。
【0044】
図5に示すように、本実施形態に係る転写物5は、本実施形態に係る原盤1の表面形状が転写された樹脂層55を含む。詳細には、転写物5は、平板状の基材50と、基材50の表面に設けられた樹脂層55と、樹脂層55の表面に設けられ、樹脂層55の面方向に延びる主凹凸部51と、主凹凸部51の表面に設けられ、主凹凸部51と比べてピッチが狭い微細凹凸部54と、を有する。
【0045】
基材50の材料は、特に限定されるものではなく、樹脂、あるいは溶融石英ガラスまたは合成石英ガラスなどの石英ガラス、半導体材料、あるいは、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。もしくは、これらの材料が積層した積層材料を用いてもよい。なお、基材50の材料としては、後で説明する樹脂層55との密着性が高い材料が好ましい。
【0046】
基材50の大きさは、特に限定されるものではなく、マイクロ流路を有する転写物5の基材が一般的に有する大きさであればよい。
【0047】
樹脂層55の組成物である硬化型親水性樹脂56は、親水性であって、光硬化型、熱硬化型のいずれかの硬化型を有する樹脂である。さらに、樹脂層55は、所定の波長の光が照射されることにより流動性が低下し、硬化する樹脂である、光硬化型親水性樹脂56であることが好ましい。なお、光硬化型親水性樹脂56は、例えば、アクリル樹脂アクリレートなどの紫外線硬化樹脂である。また、硬化型親水性樹脂56は、必要に応じて、開始剤、フィラー、機能性添加剤、溶剤、無機材料、顔料、帯電防止剤、または増感色素などを含んでもよい。樹脂層55の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば0.1μm〜300μmであってもよい。
【0048】
主凹凸部51は、樹脂層55の表面に設けられ、樹脂層55の面方向に延び、且つ、凸部52及び凹部53を有する。詳細には、1つの主凹凸部51は、1つの凸部52と1つの凹部53を有する。主凹凸部51を構成する凹部53の断面形状は、
図5に示されるような形状に限定されるものではなく、原盤1の凸部12の断面形状が反転した形状を有するため、原盤1の凸部12の断面形状に従って様々な形状とすることができる。なお、凹部53の断面形状とは、転写物5の断面における凹部53内の空間の輪郭形状のことをいう。また、凹部53の対をなす凸部52の断面形状についても、原盤1の凹部13の断面形状に従って様々な形状とすることができる。
【0049】
主凹凸部51の平面形状や形成方向は、特に限定されるものではなく、原盤1の主凹凸部11の平面形状が転写した形状を有することとなるため、原盤1の主凹凸部11の平面形状に従って様々な形状、形成方向とすることができる。
【0050】
主凹凸部51は、原盤1の主凹凸部11の反転形状となる。したがって、主凹凸部51の幅及び深さ(高さ)は原盤1の主凹凸部11の幅及び深さ(高さ)と同様の値となる。また、主凹凸部51の幅及び深さの定義も主凹凸部11の幅及び高さの定義と同様である。具体的には、凸部52及び凹部53の幅及び深さは、原盤1の主凹凸部11に従い、例えば、1μm〜2000μmであってもよい。また、複数の主凹凸部51は、原盤1の主凹凸部11と同様に、互いに同じ幅を有することが好ましく、基材50の面方向に沿って同一のピッチ(周期)で基材50に形成されることが好ましい。なお、ピッチの大きさも、原盤1の主凹凸部11に従い、例えば、1μm〜2000μmであってもよい。
【0051】
微細凹凸部54は、主凹凸部51の表面に設けられ、微細凸部57及び微細凹部58を有し、主凹凸部51と比べてピッチ(周期)が狭い。詳細には、1つの微細凹凸部54は、1つの微細凸部57と1つの微細凹部58を有する。また、微細凹凸部54は、原盤1の微細凹凸部14の形状が転写されることで形成されるため、原盤1の微細凹凸部14の断面形状が反転した形状の断面形状を有し、原盤1の微細凹凸部14の平面形状が転写した形状の平面形状を有する。さらに、
図5に示されるように、微細凹凸部54は、凸部52の上面及び凹部53の底面に設けられている。なお、微細凹凸部54は、凸部52の上面及び凹部53の底面の両方に設けられることに限られず、いずれか一方に設けられてもよい。好ましくは、微細凹凸部54は、凹部53の底面に設けられる。
【0052】
微細凹凸部54は、原盤1の微細凹凸部14の反転形状となる。したがって、微細凹凸部54の幅及び深さ(高さ)は原盤1の微細凹凸部14の幅及び深さ(高さ)と同様の値となる。また、微細凹凸部54の幅及び深さの定義も微細凹凸部14の幅及び高さの定義と同様である。具体的には、微細凸部57及び微細凹部58の幅及び深さは、30nm〜1000nmであってもよい。さらに、転写物5が複数の微細凹凸部54を有する場合には、微細凹凸部54の幅及び深さは、微細凹凸部54が形成される位置ごとに異なる値となることができる。
【0053】
微細凹凸部54が設けられた主凹凸部51の表面は、10nm〜150nmの算術平均粗さを有する。ここで、算術平均粗さとは、原盤1の主凹凸部11の表面の算術平均粗さと同様に求めることができる。さらに、微細凹凸部54が設けられた主凹凸部51の表面は、1.1〜3.0の比表面積率を有する。ここで、比表面積率とは、原盤1の主凹凸部11の表面の比表面積率と同様に求めることができる。
【0054】
微細凹凸部54の形成方向は、特に限定されるものではなく、微細凹凸部54は、原盤1の微細凹凸部14の平面形状が転写した平面形状を有するため、原盤1の微細凹凸部14の平面形状に従って様々な方向とすることができる。ここで、微細凹凸部54の形成方向は、原盤1の微細凹凸部14と同様に定義される。例えば、微細凹凸部54は、直線状の主凹凸部51の長手方向に沿って直線状に延びるように設けられることができる。この場合、微細凹凸部54の形成方向は、直線状の主凹凸部51の長手方向に沿った方向である。また、主凹凸部51の形状が曲線や折れ曲がったものであっても、微細凹凸部54は、基材50の面内において主凹凸部51が延びる方向に沿って設けられることができ、この場合の微細凹凸部54の形成方向も、主凹凸部51の長手方向に沿った方向である。さらに、微細凹凸部54の形成方向が、原盤1の微細凹凸部14と同様に、直線状の主凹凸部51の長手方向に対して直交する方向であってもよく、直線状の主凹凸部51の長手方向に対して傾斜した方向であってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。また、微細凹凸部54の平面形状は、これまで説明した例のように線状に限定されるものではなく、ドット状や網目状であってもよい。
【0055】
なお、先に説明したように、本実施形態に係る転写物5は、原盤1の主凹凸部11及び微細凹凸部14が転写されて形成された主凹凸部51及び微細凹凸部54を有する。転写物5の主凹凸部51の表面に微細凹凸部54が設けられることにより、主凹凸部51の表面の表面積がより大きくなり、主凹凸部51の表面の親水性を高めることができる。また、微細凹凸部54に流体が流れこむと、流体と微細凹凸部54との界面での作用により、主凹凸部51における流体の流動性が変化する。したがって、微細凹凸部54の形状を変えることにより、主凹凸部51に流れる流体の流れやすさ(流速)を制御することができる。さらに、位置ごとに異なる形状を持つ微細凹凸部54を主凹凸部51に設けた場合には、微細凹凸部54の形状に応じて、流体の流速が変化することとなる。
【0056】
すなわち、本実施形態に係る転写物5においては、主凹凸部51の表面に微細凹凸部54が設けられることにより主凹凸部51の表面の親水性を高めることができる。さらに、微細凹凸部54の形状を変えることにより、主凹凸部51に流れる流体の流れやすさを容易に制御することができる。
【0057】
<マイクロ流体チップ>
本実施形態に係る転写物5を含む、マイクロリアクター等といったマイクロ流体チップを作製することができる。例えば、上記の転写物5を含むマイクロ流体チップにおいては、転写物5の凹部53が、流体を流すためのマイクロ流路となることができ、もしくは、流体を溜めるためのウェルとなることができる。この場合には、転写物5の凹部53の底面に微細凹凸部54が設けられることにより、凹部53の底面の表面積がより大きくなり、凹部53の底面の親水性を高めることができる。また、凹部53の底面の微細凹凸部54に流体が流れこむと、流体と微細凹凸部54との界面での作用により、流体の流動性が変化する。したがって、微細凹凸部54の形状を変えることにより、凹部53に流れる流体の流れやすさを制御することができる。したがって、凹部53に流れる流体の性質に応じて微細凹凸部54の形状を選択することが可能である。
【0058】
また、転写物5の凹部53を覆うように基板を張り、キャピラリとして使用することができるマイクロ流体チップを作製することもできる。
【0059】
<原盤1の製造方法>
図6を参照して、本実施形態に係る原盤1の製造方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る原盤1の製造方法のフローとともに、各工程における原盤1を厚み方向に切断した際の断面を模式的に示した図を示す。
【0060】
まず、ステップS101において、電解メッキもしくは無電解メッキといったメッキ等の方法を用いて、基材10の表面に表面層16を形成する。なお、この表面層16を形成するステップS101は省略してもよい。
【0061】
次に、ステップS102において、表面層16の表面に対して、超精密切削加工機によりダイヤモンドバイト等を用いて鏡面切削加工を行い、表面層16の表面もしくは基材10の表面を平坦化する。なお、この工程では、ダイヤモンドバイトを用いた鏡面切削加工に限定されるものではなく、固定砥粒を用いた鏡面研削、遊離砥粒を用いた研磨加工を用いてもよい。
【0062】
さらに、ステップS103において、超精密切削加工機によりダイヤモンドバイト等を用いて、表面層16の表面もしくは基材10の表面に、基材10の面方向に延びる主凹凸部11を形成する。なお、この工程では、ダイヤモンドバイトを用いた超精密切削加工に限定されるものではなく、フォトリソ加工、レーザ加工を用いてもよい。また、主凹凸11に対応する凹凸構造が形成された型から電鋳により転写したものを基材10として用いてもよい。
【0063】
次に、ステップS104において、電解メッキもしくは無電解メッキといったメッキ、スパッタ、蒸着、イオンプレーティング、CVD、スピンコーティング、塗布、スリットコーティング、ディップコーティング、またはスプレーコーティングなどの方法を用いて、主凹凸部11の表面を覆う被覆層15を形成する。なお、この被覆層15を形成するステップS104は省略してもよい。
【0064】
そして、ステップS105において、レーザ加工装置8を用いて、主凹凸部11の表面に10ピコ秒以下のパルス幅を有する超短パルスレーザを照射して、主凹凸部11の表面に主凹凸部11と比べてピッチが狭い微細凹凸部14を形成し、原盤1を製造する。なお、レーザ加工装置8の詳細については後で説明する。レーザ波長、繰り返し周波数、パルス幅、フルエンス、パルス数、ビームサイズ、走査速度、走査方向、ビーム走査ピッチ、偏光方向などのレーザの照射条件により微細凹凸部14の形状等が変化するため、所望の微細凹凸部14となるように、上記照射条件を選択する。さらに、転写物5の親水性を向上させるためには、原盤1を作製する際の超短パルスレーザの1ショットあたりのフルエンスを0.16J/cm
2より大きくすることが好ましい。なお、主凹凸部11の構造により、照射されたレーザ光が干渉、回折を起こし、主凹凸部11の表面上におけるレーザ強度がその位置に応じて周期的に変化する。このようなレーザ強度の周期的な変化により、位置に応じて幅及び深さの異なる微細凹凸部14を主凹凸部11の表面に形成することができる。このレーザ強度の周期的変化は、主凹凸部11の形状やレーザの波長に基づき計算により求めることができる。したがって、上記照射条件を最適に選択することが可能となり、所望の微細凹凸部14を原盤1に形成することができる。さらに、所望の微細凹凸部14を有する原盤1を用いて転写物5を製造することにより、転写部5において使用される流体の性質に応じて最適化された微細凹凸部54を転写物5の表面に形成することができる。
【0065】
レーザのスポット幅は、レンズ等を用いることにより制御することができる。以下にレーザのスポット幅について、
図7を用いて説明する。
図7は、原盤1の製造工程における超短パルスレーザのスポット幅及び照射方法を示す図である。
図7(a)は、レーザのスポット幅を小さくして、原盤1の凹部13の底面にのみレーザを照射する場合である。この場合には、原盤1の凹部13の底面にのみ微細凹凸部14が形成される。
図7(b)は、
図7(a)と同様にレーザのスポット幅を小さくして、凸部12の上面にのみレーザを照射する場合である。この場合には、凸部12の上面にのみ微細凹凸部14が形成される。また、
図7(c)のように、レーザスポット幅を小さくすることなく、主凹凸部11の表面全体にレーザを照射してもよい。この場合には、凹部13の底面及び凸部12の上面の両方に微細凹凸部14が形成される。
【0066】
レーザの走査方向は、特に限定されるものではなく、所望の微細凹凸部14が形成されるように走査方向を制御することができる。以下にレーザの走査方向について、
図8を用いて説明する。
図8は、原盤1の製造工程における超短パルスレーザの照射方向の例を示す図である。なお、
図8においては、レーザ光の偏光方向についても併せて図示している。
図8(a)は、基材10の面方向に延びる主凹凸部11に沿って走査した場合のレーザの走査方向の例を示す。
図8(b)は、基材10の表面において曲線状に曲がった平面形状を持つ主凹凸部11に沿って走査した場合のレーザの走査方向の例を示す。
図8(c)は、基材10の表面において鈍角を形成するように折れ曲がった平面形状を持つ主凹凸部11に沿って走査した場合のレーザの走査方向の例を示す。なお、
図8(a)から
図8(c)の例では、レーザ光は、直線偏光であって、偏光方向は主凹凸部11の長手方向と直交している。
【0067】
レーザ光は、直線偏向であっても楕円偏光であっても円偏光であってもよい。さらに、偏光方向や走査方向を変えることにより、微細凹凸部14の形成方向や形状等を変えることができる。以下に、レーザの偏光方向及び走査方向と微細凹凸部14の形状とを
図9を用いて説明する。
図9は、原盤1の製造工程における超短パルスレーザの偏光方向及び走査方向と微細凹凸部14の平面形状を示す図である。
図9(a)は、直線偏光の例であり、偏光方向を主凹凸部11の長手方向と直交するようにし、レーザを主凹凸部11の長手方向に沿って走査した場合である。この場合には、主凹凸部11の長手方向に沿って延びる各微細凹凸部14が形成される。
図9(b)は、直線偏光の例であり、偏光方向を主凹凸部11の長手方向と同じにし、レーザを主凹凸部11の長手方向に沿って走査した場合である。この場合には、主凹凸部11の長手方向に対して直交する方向に延びる微細凹凸部14が形成される。
図9(c)は、直線偏光の例であり、偏光方向を主凹凸部11の長手方向に対して傾斜した方向とし、レーザを主凹凸部11の長手方向に沿って走査した場合である。この場合には、偏光方向と直交し、且つ、主凹凸部11の長手方向に対して傾斜した方向を持つ微細凹凸部14が形成される。さらに、
図9(d)は、円偏光を用いて、レーザを主凹凸部11の長手方向に沿って走査した場合である。この場合には、異方性のないドット状もしくは網目状の微細凹凸部14が形成される。また、
図9(e)は、偏光方向を位置ごとに変化させつつ、レーザを主凹凸部11の長手方向に沿って走査した場合である。この場合には、位置ごとに異なる形状の微細凹凸部14が形成される。
【0068】
すなわち、本実施形態に係る原盤1の製造方法においては、レーザのスポット幅、走査方向、及び偏光方向等を変えることによって、所望の微細凹凸部14を形成することができる。レーザのスポット幅、走査方向、及び偏光方向等は、自由に制御することが可能であるため、容易に所望の微細凹凸部14を形成することができる。
【0069】
(レーザ加工装置8の構成例)
さらに、
図10を参照して、本実施形態に係る原盤1の製造方法にて使用されるレーザ加工装置8の構成例について説明する。
【0070】
図10は、板状の原盤1を作製するためのレーザ加工装置8の構成の一例を示す概略図である。レーザ本体340は、例えば、サイバーレーザー株式会社製のIFRIT(商品名)である。レーザ加工に用いるレーザの波長は、例えば、800nmである。ただし、レーザ加工に用いるレーザの波長は、400nmや266nmなどでもかまわない。繰り返し周波数は、加工時間と、形成される凹部13又は凸部12の狭ピッチ化とを考慮すると、大きいほうが好ましく、1,000Hz以上であることが好ましい。レーザのパルス幅は短い方が好ましく、200フェムト秒(10
−15秒)〜10ピコ秒(10
−12秒)程度であることが好ましい。
【0071】
レーザ本体340は、垂直方向に直線偏光したレーザ光を射出するようになっている。そのため、本実施形態に係るレーザ加工装置8では、波長板341(例えば、λ/2波長板)を用いて、偏光方向を回転等させることで、所望の方向の直線偏光又は円偏光を得るようにしている。また、レーザ加工装置8では、レーザ光の強度分布がガウス分布となっている。また、直交させた2枚のシリンドリカルレンズ343を用いて、レーザ光を絞ることにより、所望のビームサイズになるようにしている。なお、球面レンズによってレーザ光を絞ってもよい。
【0072】
板状の原盤1を加工する際には、リニアステージ344を等速で移動させる。また、ビームスポットのサイズより大きな面に対して加工を行いたい場合は、ビームを走査することで加工を行いたい面全体に凸凹形状を付与する。
【0073】
所望の微細凹凸部14を得るために変化させることが可能なパラメーターとしてフルエンスがある。本実施形態におけるフルエンスは、1ショット(1パルス)あたりのエネルギー密度のピーク値とした。すなわち、ビームプロファイラ(オフィール社製SP620U、及びソフトウェアBeamStar)を用いてビームプロファイルを測定し、断面プロファイルに対してガウシアンのフィッティングをかけて、そのパワー密度(W/cm
2)のピーク値を、レーザの繰り繰り返し周波数(Hz)で割ることで、パルスあたりのエネルギー密度(J/cm
2)に変換して得られる値を、フルエンスとして用いた。また、トップハット型ビームの場合のフルエンスは、トップハット型のフィッティングをかけ、そのパワー密度のトップの値から同様にエネルギー密度を求めることにより得られる。
【0074】
すなわち、上記のレーザ加工装置8において、レーザ波長、繰り返し周波数、パルス幅、フルエンス、パルス数、ビームサイズ、走査速度、走査方向、ビーム走査ピッチ、偏光方向などのレーザの照射条件を調整することで、所望の微細凹凸部14を被覆層15に形成することができる。
【0075】
<転写物5の製造方法>
本実施形態においては、本実施形態に係る原盤1を用いて、インプリント転写法により転写物5を製造する。このように、インプリント転写法を用いることにより、親水性の高い領域を有する転写物5を容易に大量生産することができる。
図11を参照して、本実施形態に係る転写物5の製造方法について説明する。
図11は、本実施形態に係る原盤1を用いた転写物5の製造方法のフローとともに、各工程における転写物5を厚み方向に切断した際の断面を模式的に示した図を示す。
【0076】
まず、ステップS201において、原盤1に対して洗浄を行う。さらに、原盤1の主凹凸部11の表面に対して、硬化型親水樹脂56の付着を防ぐための離型処理を行う。
【0077】
次に、ステップS202において、硬化型親水性樹脂56を、塗布装置を用いて、原盤1の主凹凸部11が設けられた表面に塗布し、樹脂層55を形成する。なお、塗布装置は、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、またはダイコーターなどの塗布手段を備える。
【0078】
さらに、ステップS203において、基材50を樹脂層55に押し当てる。この際、原盤1の主凹凸部11に樹脂層55の組成物である硬化型親水性樹脂56が充填される。さらに、主凹凸部11の表面に設けられた微細凹凸部14にも、硬化型親水性樹脂56が充填される。
【0079】
次に、硬化型親水性樹脂56を硬化させる。硬化型親水性樹脂56が熱硬化型であれば樹脂層55に熱を加え、硬化型親水性樹脂56が光硬化型であれば樹脂層55に光を照射して、硬化型親水性樹脂56を硬化させる。以下の説明では、硬化型親水性樹脂56は、紫外線硬化型親水性樹脂であるとして説明を行う。紫外線硬化型親水性樹脂とは、紫外線領域の波長を有する光を照射することにより、硬化する樹脂である。樹脂層55に紫外線を照射して、紫外線硬化型親水性樹脂56を硬化させる。紫外線の照射は、例えば、紫外線ランプを用いることにより行うことができる。
【0080】
そして、ステップS204において、樹脂層55の組成物である紫外線硬化型親水性樹脂56が硬化した後に、樹脂層55を原盤1から離型する。この際、樹脂層55が基材50に付着している場合には、基材50とともに樹脂層55を原盤1から離型する。このようにして、原盤1の主凹凸部11の形状が転写された樹脂層55を有する転写物5を製造することができる。転写物5の樹脂層55に形成された主凹凸部51は、原盤1の主凹凸部11が転写された形状を有する。さらに、主凹凸部51の表面には微細凹凸部54が形成され、微細凹凸部54は、原盤1の微細凹凸部14が転写された形状を有する。
【0081】
さらに、以上のように製造した転写物5をレプリカ原盤として用いて、さらに転写を行うことにより、さらなる転写物5を作製してもよい。
【0082】
すなわち、本実施形態に係る転写物5の製造方法においては、原盤1を用いてインプリント転写を行うことにより、転写物5を容易に大量生産することができる。また、転写物5の主凹凸部51の表面に微細凹凸部54が設けることが可能であるため、製造された転写物5の主凹凸部51の表面の親水性を高めることができる。
【0083】
また、円筒形の原盤1を用いることにより、ロールツーロール(roll−to−roll)方式でのインプリントを行うことができ、より量産性を高めることができる。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、原盤1を用いてインプリント転写を行うことにより、転写物5を容易に大量生産することができる。さらに、この転写物5の主凹凸部51の表面に微細凹凸部54が設けることが可能であるため、主凹凸部51の表面の親水性が高められた転写物5を容易に大量生産することが可能である。また、本実施形態においては、原盤1を製造する際に用いられるレーザの照射条件等を変えることで、原盤1に形成される微細凹凸部14の形状等を容易に変えることができる。したがって、本実施形態によれば、原盤1に所望の微細凹凸部14を形成することができ、原盤1を用いて転写することにより、転写物5にも所望の微細凹凸部54を形成することができる。さらに、転写物5の微細凹凸部54の形状を変えることも可能であるため、微細凹凸部54の形状を変えることにより、主凹凸部51に流れる流体の流れやすさ(流速)を制御することもできる。
【実施例】
【0085】
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明の実施形態に係る原盤1及び転写物5について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の実施形態に係る原盤1及び転写物5のあくまでも一例であって、本発明の実施形態に係る原盤1及び転写物5が下記の例に限定されるものではない。
【0086】
<原盤1の製造>
以下の方法により、実施例1〜6及び比較例に係る原盤1を製造した。
【0087】
(実施例1)
10mm厚、25mm四方のSUS420(マルテンサイト系ステンレス鋼)の基材10の表面に、厚さ150μmのNiPメッキ処理を施し、NiPからなる表面層16を形成した。
【0088】
次に、NiPの表面層16が設けられた基材10の表面に、超精密切削加工機を用いてダイヤモンドバイトにより基材10の面内に直線状に延びる複数の凹部13を形成することにより、複数の主凹凸部11を形成した。具体的には、凹部13の底面の幅は40μm、凹部13の基材10の表面からの深さは120μm、主凹凸部11のピッチ(周期)は200μmとした。
【0089】
さらに、主凹凸部11の表面に、DLCコーティングを行い、厚み1μmのDLCからなる被覆層15を形成した。
【0090】
続いて、超短パルスレーザを主凹凸部11の表面に照射した。レーザの照射は、波長780nm、パルス幅200fs、繰り返し周波数1kHz、最大出力1W、直線偏光の超短パルスレーザ加工装置8を用いた。レンズを介してビームを成形し、主凹凸部11の表面においてΦ400μm程度の大きさのガウシアンビームとした。超短パルスレーザの1ショットあたりのフルエンスを0.31J/cm
2とし、レーザの偏光方向が主凹凸部11の長手方向と直交するように、光路上の波長板の角度を設定した。さらに、80μmのピッチでオーバーラップさせながら、レーザを主凹凸部11の長手方向に20mm/sの走査速度で走査させることにより、主凹凸部11の表面全体にレーザを照射した。以上工程により、実施例1に係る原盤1を製造した。
【0091】
(実施例2)
レーザの照射フルエンスを0.28J/cm
2とした以外は、実施例1と同様に原盤を作製した。
【0092】
(実施例3)
レーザの照射フルエンスを0.25J/cm
2とした以外は、実施例1と同様に原盤を作製した。
【0093】
(実施例4)
レーザの照射フルエンスを0.22J/cm
2とした以外は、実施例1と同様に原盤を作製した。
【0094】
(実施例5)
レーザの照射フルエンスを0.19J/cm
2とした以外は、実施例1と同様に原盤を作製した。
【0095】
(実施例6)
基材10をSUS304(ステンレス鋼)とし、その表面に、波長515nm、パルス幅3ps、繰り返し周波数50kHz、最大出力7.7W、ビームサイズ約100μm×100μm(トップハット型のビームプロファイル)、走査ピッチ100μm、走査速度31mm/s、レーザの照射フルエンス0.08J/cm
2の条件で加工し、原盤1を作成した。
【0096】
(比較例)
超短パルスレーザ照射を行わなかった点以外は、実施例1と同様に原盤を作製した。
【0097】
<原盤1の評価>
上記の工程により製造した原盤1の評価を行った。具体的には、上記の工程により製造した実施例4に係る原盤1の微細凹凸部14を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて観察した。
図12を用いて、実施例4に係る原盤1のSEMの観察結果を説明する。
図12は、実施例4に係る原盤1の主凹凸部11の表面を観察したSEM画像である。詳細には、
図12(a)は、原盤1の凸部12の上面を観察したSEM画像であり、
図12(b)は、原盤1の凹部13の底面を観察したSEM画像である。これらのSEM画像からわかるように、微細凹凸部14は、凸部12の上面及び凹部13の底面に形成されている。さらに、微細凹凸部14は、主凹凸部11の長手方向に沿って延びるように形成されている。
【0098】
なお、主凹凸部11の形状によるレーザ光の干渉、回折の発生や、レーザのフォーカス位置からのズレ量の違いにより、レーザ強度分布に変化が生じるため、凸部12の上面に形成された微細凹凸部14と、凹部13の底面に形成された微細凹凸部14とでは、微細凹凸部14の幅や微細凹部18の深さに違いが生じる。さらに、凹部13の底面内でも、微細凹凸部14の幅や微細凹部18の深さが、その位置ごとに異なる値となっている。
【0099】
<転写物5の作製>
上記の工程により製造した実施例1〜6及び比較例に係る原盤1を用いて、下記に説明する工程により転写物5を作製した。
【0100】
原盤1に対して洗浄及び離型処理を行う。次に、アクリル樹脂アクリレートからなる紫外線硬化型親水性樹脂56を原盤1の主凹凸部11が設けられた表面に塗布し、樹脂層55を形成する。次に、樹脂基材50を樹脂層55に押し当てる。そして、樹脂層55に、紫外線ランプを用いて中心波長365nmの紫外線を照射して、紫外線硬化型親水性樹脂56を硬化させる。さらに、樹脂層55を原盤1から離型することにより、実施例1〜6及び比較例に係る転写物5を作製した。
【0101】
<転写物5の評価>
実施例1〜6に係る原盤1を用いて形成した転写物5の凹部53の底面に形成された微細凹凸部54をAFMにより観察した。
図13を用いて、実施例1〜5に係る転写物5の微細凹凸部54のAFMの観察結果を説明する。
図13(a)〜(e)は、実施例1〜5に係る原盤1を用いて形成された転写物5の凹部53の底面に形成された微細凹凸部54のAFMデータである。さらに、これらのAFMデータに基づいて、各転写物5の凹部53の底面の算術平均粗さ(Ra)及び比表面積率を算出した。
【0102】
さらに、実施例1〜6及び比較例に係る転写物5の凹部53の底面における純水接触角を測定した。純水接触角は、親水性の指標として用いることができ、その値が小さいほど、親水性が高いと判断することができる。純粋接触角の測定は、自動接触角計CA−V(協和界面科学社製)を用い、純水をシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて、25℃の条件のもと、滴下量1μLを凹部53の底面に滴下して測定を行う。
【0103】
実施例1〜6及び比較例に係る転写物5の凹部53の底面の算術平均粗さ、比表面積率、及び純粋接触角を、原盤1の作製時の加工条件(レーザ照射のフルエンスの値)、原盤1のレーザ照射部の材質とともに、以下の表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1〜5に係る転写物5の凹部53の底面には、
図13の各AFMのデータからわかるように、微細な凹凸構造、すなわち微細凹凸部54が形成されている。これは、原盤1の凸部12の表面に形成された微細凹凸部14の形状が転写物5に転写されたことによるものである。
【0106】
実施例1〜6に係る転写物5の凹部53の底面は、比較例と比べて、液体の流速が早くなり、親水性が向上した。さらに、実施例1〜6に係る転写物5の凹部53の底面は、比較例と比べて、純水接触角が小さいことからも、親水性が向上していることがわかる。これは、転写物5の凹部53の底面に微細凹凸部54が設けられたことによるものと考えられる。
【0107】
表1の結果から、転写物5の凹部53の底面に微細凹凸部54を形成し、転写物5の凹部53の底面が、10nm〜150nmの算術平均粗さと1.1〜3.0の比表面積率とを有する場合に、比較例に係る微細凹凸部54のない転写物5に比べて親水性が向上することがわかった。
【0108】
また、実施例6のレーザ照射部の材質がSUS304(ステンレス鋼)の場合、レーザの1ショットあたりのフルエンスが0.08J/cm
2であっても、実施例1〜5の原盤1のレーザ照射部の材質がDLCの場合と同等の算術平均粗さRaと比表面積率とを有する転写物5の微細凹凸部54が形成され、親水性が向上していることがわかった。このことから、レーザ照射部の材質によって好適なフルエンスの範囲は異なることがわかる。なお、材質がCuやNiの場合もSUS304と同様の結果が得られている。
【0109】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。