特許第6987912号(P6987912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987912マスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987912
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】マスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/38 20120101AFI20211220BHJP
   G03F 1/29 20120101ALI20211220BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20211220BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   G03F1/38
   G03F1/29
   G03F1/80
   C23C14/06 P
【請求項の数】18
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2020-45367(P2020-45367)
(22)【出願日】2020年3月16日
(65)【公開番号】特開2021-148825(P2021-148825A)
(43)【公開日】2021年9月27日
【審査請求日】2021年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】諸沢 成浩
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2019/003486(WO,A1)
【文献】 特開2019−90911(JP,A)
【文献】 特開2014−174552(JP,A)
【文献】 特開2017−90938(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2017−0112163(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相シフトマスクとなる層を有するマスクブランクスであって、
透明基板に積層された位相シフト層と、
前記位相シフト層よりも前記透明基板から離間する位置に設けられたエッチングストップ層と、
前記エッチングストップ層よりも前記透明基板から離間する位置に設けられた遮光層と、
を有し、
前記位相シフト層がクロムを含有し、
前記遮光層がクロムと酸素とを含有し、
前記エッチングストップ層がモリブデンシリサイドと窒素とを含有し、膜厚方向で前記遮光層に近接する位置に、窒素濃度がピークとなるピーク領域を有する
ことを特徴とするマスクブランクス。
【請求項2】
前記エッチングストップ層が、膜厚方向で前記遮光層に近接する上表面に、前記ピーク領域を有する
ことを特徴とする請求項1記載のマスクブランクス。
【請求項3】
前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域における抵抗率が、
1.0×10−3Ωcm以上に設定される
ことを特徴とする請求項1または2記載のマスクブランクス。
【請求項4】
前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域における窒素濃度が、
30atm%以上
に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項5】
前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域におけるシリコン濃度が、
35atm%以下
に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項6】
前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域におけるモリブデン濃度が、
30atm%以下
に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項7】
前記エッチングストップ層の膜厚に対して、前記ピーク領域の膜厚が、
1/3以下の範囲
に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項8】
前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外における抵抗率が、
1.0×10−3Ωcm以下に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項9】
前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外における窒素濃度が、
25atm%以下
に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項10】
前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外におけるモリブデンとシリコンとの組成比が、
1 ≦ Si/Mo
に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項11】
前記エッチングストップ層は、膜厚が、
10nm〜100nmの範囲
に設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマスクブランクス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか記載のマスクブランクスの製造方法であって、
前記透明基板にクロムを含有する前記位相シフト層を積層する位相シフト層形成工程と、
前記位相シフト層よりも前記透明基板から離間する位置にモリブデンシリサイドと窒素とを含有する前記エッチングストップ層を積層するエッチングストップ層形成工程と、
前記エッチングストップ層よりも前記透明基板から離間する位置にクロムと酸素とを含有する前記遮光層を積層する遮光層形成工程と、
を有し、
前記エッチングストップ層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、窒素含有ガスの分圧を設定することにより前記ピーク領域における窒素濃度を膜厚方向に制御して形成する
ことを特徴とするマスクブランクスの製造方法。
【請求項13】
前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスの分圧を設定することにより、窒素含有率の増加にともなって前記エッチングストップ層におけるシート抵抗を増大する
ことを特徴とする請求項12記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項14】
前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスの分圧比を30%以上の範囲に設定して、前記ピーク領域を形成する
ことを特徴とする請求項13記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項15】
前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスがNとされる
ことを特徴とする請求項14記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項16】
前記エッチングストップ層形成工程において、モリブデンとシリコンとの組成比が、
2.3 ≦ Si/Mo ≦3.0
に設定されたターゲットを用いる
ことを特徴とする請求項12から15のいずれか記載のマスクブランクスの製造方法。
【請求項17】
請求項1から11のいずれか記載のマスクブランクスから製造される
ことを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項18】
請求項17記載の位相シフトマスクの製造方法であって、
前記位相シフト層にパターンを形成する位相シフトパターン形成工程と、
前記エッチングストップ層にパターンを形成するエッチングストップパターン形成工程と、
前記遮光層にパターンを形成する遮光パターン形成工程と、
を有し、
前記位相シフトパターン形成工程および前記遮光パターン形成工程におけるエッチング液と、前記エッチングストップパターン形成工程におけるエッチング液と、が異なる
ことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのFPD(flat panel display,フラットパネルディスプレイ)では、パネルの高精細化が大きく進行しており、それに伴いフォトマスクの微細化も進展している。そのため、従来から用いられている遮光膜を用いたマスクだけでなく、エッヂ強調型の位相シフトマスクの必要性が高まっている。
【0003】
FPD等では、ラインアンドスペースおよびコンタクトホールのパターンともに微細化が求められており、位相シフトマスクを用いてこれらの微細パターンを形成することが必要になってきている。
【0004】
たとえば、コンタクトホールパターンにおいては、露光の際に大きなコントラストを求められるので、石英基板にクロム化合物で位相シフト層を形成し、その上部にモリブデンシリサイド化合物でエッチングストップ層を形成し、更にその上部にクロム膜の様な金属膜で遮光層を形成されたリム型の位相シフトマスクが用いられることがある。
【0005】
FPD等に用いられる大型マスクは、パターニングにWETエッチングを用いることが一般的である。このようなWETエッチングで用いるエッチングストップ膜としては、モリブデンシリサイド膜のようなシリサイド膜によって形成することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/190786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モリブデンシリサイド膜のようなシリサイド膜によってエッチングストップ膜を形成する場合には、モリブデンシリサイド膜のエッチング液にフッ酸を含有しているため、モリブデンシリサイド膜のWETエッチングの際に石英基板がエッチングされてしまい、位相シフトマスクの光学特性が変化してしまうという問題が生じる。
【0008】
さらに、適切なエッチングストップ膜を用いないと、パターニングの際にエッチングストップ膜と遮光膜との界面において、エッチングが過剰に進行してしまうために、エッチング後にエッチングストップ膜が消失してしまい、断面形状が異常になってしまうという問題を有することも判明した。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.エッチングストップ層よりも上側の層に対するエッチングにおいて、良好なエッチングストップ性を有すること。
2.エッチングストップ層のエッチングにおいて、他の部分への影響を抑制すること。
3.静電破壊を抑制すること。
4.パターニングにおける形状の正確性を向上すること。
5.マスク製造における高精細化を可能とすること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のマスクブランクスは、位相シフトマスクとなる層を有するマスクブランクスであって、
透明基板に積層された位相シフト層と、
前記位相シフト層よりも前記透明基板から離間する位置に設けられたエッチングストップ層と、
前記エッチングストップ層よりも前記透明基板から離間する位置に設けられた遮光層と、
を有し、
前記位相シフト層がクロムを含有し、
前記遮光層がクロムと酸素とを含有し、
前記エッチングストップ層がモリブデンシリサイドと窒素とを含有し、膜厚方向で前記遮光層に近接する位置に、窒素濃度がピークとなるピーク領域を有する
ことにより上記課題を解決した。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層が、膜厚方向で前記遮光層に近接する上表面に、前記ピーク領域を有する
ことができる。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域における抵抗率が、
1.0×10−3Ωcm以上に設定される
ことが可能である。
本発明において、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域における窒素濃度が、
30atm%以上
に設定される
ことが好ましい。
また、本発明のマスクブランクスにおいて、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域におけるシリコン濃度が、
35atm%以下
に設定される
手段を採用することもできる。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域におけるモリブデン濃度が、
30atm%以下
に設定される
ことができる。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層の膜厚に対して、前記ピーク領域の膜厚が、
1/3以下の範囲
に設定される
ことができる。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外における抵抗率が、
1.0×10−3Ωcm以下に設定される
ことができる。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外における窒素濃度が、
25atm%以下
に設定される
ことができる。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外におけるモリブデンとシリコンとの組成比が、
1 ≦ Si/Mo
に設定される
ことができる。
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、膜厚が、
10nm〜100nmの範囲
に設定される
ことができる。
本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記のいずれか記載のマスクブランクスの製造方法であって、
前記透明基板にクロムを含有する前記位相シフト層を積層する位相シフト層形成工程と、
前記位相シフト層よりも前記透明基板から離間する位置にモリブデンシリサイドと窒素とを含有する前記エッチングストップ層を積層するエッチングストップ層形成工程と、
前記エッチングストップ層よりも前記透明基板から離間する位置にクロムと酸素とを含有する前記遮光層を積層する遮光層形成工程と、
を有し、
前記エッチングストップ層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、窒素含有ガスの分圧を設定することにより前記ピーク領域における窒素濃度を膜厚方向に制御して形成する
ことができる。
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスの分圧を設定することにより、窒素含有率の増加にともなって前記エッチングストップ層におけるシート抵抗を増大する
ことができる。
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスの分圧比を30%以上の範囲に設定して、前記ピーク領域を形成する
ことができる。
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスがNとされる
ことができる。
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、モリブデンとシリコンとの組成比が、
2.3 ≦ Si/Mo ≦ 3.0
に設定されたターゲットを用いる
ことができる。
本発明の位相シフトマスクは、上記のいずれか記載のマスクブランクスから製造されることができる。
本発明の位相シフトマスクブランクスの製造方法は、上記の位相シフトマスクの製造方法であって、
前記位相シフト層にパターンを形成する位相シフトパターン形成工程と、
前記エッチングストップ層にパターンを形成するエッチングストップパターン形成工程と、
前記遮光層にパターンを形成する遮光パターン形成工程と、
を有し、
前記位相シフトパターン形成工程および前記遮光パターン形成工程におけるエッチング液と、前記エッチングストップパターン形成工程におけるエッチング液と、が異なる
ことができる。
【0011】
本発明のマスクブランクスは、位相シフトマスクとなる層を有するマスクブランクスであって、
透明基板に積層された位相シフト層と、
前記位相シフト層よりも前記透明基板から離間する位置に設けられたエッチングストップ層と、
前記エッチングストップ層よりも前記透明基板から離間する位置に設けられた遮光層と、
を有し、
前記位相シフト層がクロムを含有し、
前記遮光層がクロムと酸素とを含有し、
前記エッチングストップ層がモリブデンシリサイドと窒素とを含有し、膜厚方向で前記遮光層に近接する位置に、窒素濃度がピークとなるピーク領域を有する。
これにより、遮光層のエッチングにおいて、エッチングストップ層の表面での耐薬性を向上することができる。したがって、遮光層とエッチングストップ層との密着性を向上し、かつ、遮光層のエッチングにおける断面形状の正確性を向上して、マスクパターンの形状正確性を向上することができる。
また、エッチングストップ層のエッチングにおいて、エッチングストップ層でのエッチングレート(E.R.)を向上することができる。したがって、エッチングストップ層におけるエッチング時間を短縮して、ガラス基板とされる透明基板に対するエッチングの影響を低減することができる。これは、エッチングストップ層に対するエッチング時には、ガラス基板が露出している場合があり、この露出部分に対してモリブデンシリコンを含有するエッチングストップ層に対するエッチャントが作用する場合があるためである。同時に、エッチングストップ層をエッチングにより確実に除去することが可能となる。
【0012】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層が、膜厚方向で前記遮光層に近接する上表面に、前記ピーク領域を有する。
これにより、遮光層のエッチングにおいて、エッチングストップ層の表面での耐薬性を向上することができる。したがって、遮光層とエッチングストップ層との密着性を向上し、かつ、遮光層のエッチングにおける断面形状の正確性を向上して、マスクパターンの形状正確性を向上することができる。
さらに、エッチングストップ層のエッチングにおいて、このピーク領域を除去した後、エッチングストップ層でのエッチングレート(E.R.)を向上することができる。したがって、エッチングストップ層におけるエッチング時間を短縮して、ガラス基板とされる透明基板に対するエッチングの影響を低減することができる。
【0013】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域における抵抗率が、
1.0×10−3Ωcm以上に設定される。
これにより、遮光層のエッチングにおいて、エッチングストップ層の表面での耐薬性を向上することができる。したがって、良好な断面形状のマスクを形成可能となる。
さらに、エッチングストップ層の表面に付着するパーティクルを低減することができる。これにより、ピンホールの発生を抑制することができる。
【0014】
本発明において、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域における窒素濃度が、
30atm%以上
に設定される。
これにより、ピーク領域におけるシート抵抗を上記の範囲に設定して遮光層のエッチングにおいて、エッチングストップ層の表面での耐薬性を向上することができる。したがって、良好な断面形状のマスクを形成可能となる。
さらに、エッチングストップ層の表面に付着するパーティクルを低減することができる。これにより、ピンホールの発生を抑制することができる。
【0015】
また、本発明のマスクブランクスにおいて、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域におけるシリコン濃度が、
35atm%以下
に設定される。
これにより、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能なマスクブランクスを提供することが可能となる。
【0016】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域におけるモリブデン濃度が、
30atm%以下
に設定される。
これにより、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能なマスクブランクスを提供することが可能となる。
【0017】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層の膜厚に対して、前記ピーク領域の膜厚が、
1/3以下の範囲
に設定される。
これにより、エッチングストップ層における充分なエッチストップ性と、エッチングストップ層における大きなエッチングレート(E.R.)を両立することができる。したがって、遮光層のエッチングにおいて、エッチングストップ層の表面での耐薬性を向上することができるとともに、エッチングストップ層のエッチングにおいて、このピーク領域を除去した後に、エッチングストップ層でのエッチングレート(E.R.)を向上することができる。
【0018】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外における抵抗率が、
1.0×10−3Ωcm以下に設定される。
これにより、エッチングストップ層のエッチングにおいて、このピーク領域を除去した後、エッチングストップ層でのエッチングレート(E.R.)を向上することができる。したがって、エッチングストップ層におけるエッチング時間を短縮して、ガラス基板とされる透明基板に対するエッチングの影響を低減することができる。
さらに、抵抗率が低いモリブデンシリサイド膜をエッチングストップ層として用いることで、静電破壊を抑制することができる。
【0019】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外における窒素濃度が、
25atm%以下
に設定される。
これにより、ピーク領域よりも位相シフト層に近接するエッチングストップ層において、エッチングレート(E.R.)を向上することができる。したがって、エッチングストップ層におけるエッチング時間を短縮して、ガラス基板とされる透明基板に対するエッチングの影響を低減することができる。
さらに、抵抗率が低いモリブデンシリサイド膜をエッチングストップ層として用いることで、静電破壊を抑制することができる。
【0020】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、前記ピーク領域以外におけるモリブデンとシリコンとの組成比が、
1 ≦ Si/Mo
に設定される。
これにより、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能なマスクブランクスを提供することが可能となる。
【0021】
本発明のマスクブランクスは、前記エッチングストップ層は、膜厚が、
10nm〜100nmの範囲
に設定される。
これにより、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能なマスクブランクスを提供することが可能となる。
【0022】
本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記のいずれか記載のマスクブランクスの製造方法であって、
前記透明基板にクロムを含有する前記位相シフト層を積層する位相シフト層形成工程と、
前記位相シフト層よりも前記透明基板から離間する位置にモリブデンシリサイドと窒素とを含有する前記エッチングストップ層を積層するエッチングストップ層形成工程と、
前記エッチングストップ層よりも前記透明基板から離間する位置にクロムと酸素とを含有する前記遮光層を積層する遮光層形成工程と、
を有し、
前記エッチングストップ層形成工程において、
スパッタリングにおける供給ガスとして、窒素含有ガスの分圧を設定することにより前記ピーク領域における窒素濃度を膜厚方向に制御して形成する
ことができる。
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスの分圧を設定することにより、窒素含有率の増加にともなって前記エッチングストップ層におけるシート抵抗を増大する。
これにより、膜厚方向において、位相シフトに近接する位置に比べて遮光層に近接する位置における窒素濃度が大きくなるようなエッチングストップ層を有するマスクブランクスを製造することが可能となる。
さらに、遮光層との界面付近となるエッチングストップ層に窒素濃度のピークとなるピーク領域を形成することができる。さらに、エッチングストップ層において、位相シフトに近接する位置における窒素濃度をピーク領域よりも低減することができる。しかもこのような構成を有するエッチングストップ層を、スパッタリングによりエッチングストップ層を形成する間に、雰囲気ガスにおける窒素含有ガスの分圧を制御することで可能とすることができる。
したがって、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能なマスクブランクスを製造することが可能となる。
【0023】
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスの分圧比を30%以上の範囲に設定して、前記ピーク領域を形成する。
これにより、エッチングストップ層におけるピーク領域を所定の窒素濃度として、上記のシート抵抗となるように形成することができる。
【0024】
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、
前記窒素含有ガスがNとされる。
これにより、エッチングストップ層におけるピーク領域を所定の窒素濃度として、上記の抵抗率となるように形成することができる。
【0025】
本発明のマスクブランクスの製造方法は、前記エッチングストップ層形成工程において、モリブデンとシリコンとの組成比が、
2.3 ≦ Si/Mo ≦ 3.0
に設定されたターゲットを用いる。
これにより、エッチングストップ層におけるピーク領域を所定の窒素濃度として、上記のシート抵抗となるように形成して、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能なマスクブランクスを製造することが可能となる。
【0026】
本発明の位相シフトマスクは、上記のいずれか記載のマスクブランクスから製造される。 これにより、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを提供可能とすることが可能となる。
【0027】
本発明の位相シフトマスクブランクスの製造方法は、上記の位相シフトマスクの製造方法であって、
前記位相シフト層にパターンを形成する位相シフトパターン形成工程と、
前記エッチングストップ層にパターンを形成するエッチングストップパターン形成工程と、
前記遮光層にパターンを形成する遮光パターン形成工程と、
を有し、
前記位相シフトパターン形成工程および前記遮光パターン形成工程におけるエッチング液と、前記エッチングストップパターン形成工程におけるエッチング液と、が異なる。
これにより、充分なエッチストップ能を有して、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ガラス基板表面への影響を低減し、良好な断面形状の位相シフトマスクを形成可能なマスクブランクスを提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係るマスクブランクスの第1実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係るマスクブランクスの製造方法の第1実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図4】本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図5】本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図6】本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図7】本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図8】本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図9】本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
図10】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態を示す断面図である。
図11】本発明に係るマスクブランクスの製造方法の第1実施形態における成膜装置を示す模式図である。
図12】本発明に係るマスクブランクス、位相シフトマスクの製造方法の第1実施形態におけるエッチングストップ層におけるエッチングレート(E.R.)と窒素濃度との関係を示すグラフである。
図13】本発明に係るマスクブランクス、位相シフトマスクの第1実施形態におけるエッチングストップ層における膜厚方向における組成比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るマスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるマスクブランクスを示す断面図であり、図2は、本実施形態におけるマスクブランクスを示す断面図であり、図において、符号10Bは、マスクブランクスである。
【0031】
本実施形態に係るマスクブランクス10Bは、露光光の波長が365nm〜436nm程度の範囲で使用される位相シフトマスク(フォトマスク)に供されるものとされる。
本実施形態に係るマスクブランクス10Bは、図1に示すように、ガラス基板(透明基板)11と、このガラス基板11上に形成された位相シフト層12と、位相シフト層12上に形成されたエッチングストップ層13と、エッチングストップ層13上に形成された遮光層14と、で構成される。
【0032】
つまり、エッチングストップ層13は、位相シフト層12よりもガラス基板11から離間する位置に設けられる。また、遮光層14は、エッチングストップ層13よりもガラス基板11から離間する位置に設けられる。
これら位相シフト層12と遮光層14とは、フォトマスクとして必要な光学特性を有した積層膜としてマスク層を構成している。
【0033】
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10Bは、図1に示すように、位相シフト層12とエッチングストップ層13と遮光層14との積層されたマスク層に対して、図2に示すように、あらかじめフォトレジスト層15が成膜された構成とすることもできる。
【0034】
なお、本実施形態に係るマスクブランクス10Bは、位相シフト層12とエッチングストップ層13と遮光層14以外に、反射防止層、耐薬層、保護層、密着層、等を積層した構成とされてもよい。さらに、これらの積層膜の上に、図2に示すように、フォトレジスト層15が形成されていてもよい。
【0035】
ガラス基板(透明基板)11としては、透明性及び光学的等方性に優れた材料が用いられ、例えば、石英ガラス基板を用いることができる。ガラス基板11の大きさは特に制限されず、当該マスクを用いて露光する基板(例えばLCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPD用基板等)に応じて適宜選定される。
【0036】
本実施形態では、ガラス基板(透明基板)11として、一辺100mm程度から、一辺2000mm以上の矩形基板を適用可能であり、さらに、厚み1mm以下の基板、厚み数mmの基板や、厚み10mm以上の基板も用いることができる。
【0037】
また、ガラス基板11の表面を研磨することで、ガラス基板11のフラットネスを低減するようにしてもよい。ガラス基板11のフラットネスは、例えば、20μm以下とすることができる。これにより、マスクの焦点深度が深くなり、微細かつ高精度なパターン形成に大きく貢献することが可能となる。さらにフラットネスは10μm以下と、小さい方が良好である。
【0038】
位相シフト層12としては、Cr(クロム)を主成分とするものであり、さらに、C(炭素)、O(酸素)およびN(窒素)を含むものとされる。
さらに、位相シフト層12が厚み方向に異なる組成を有することもでき、この場合、位相シフト層12として、Cr単体、並びにCrの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物および酸化炭化窒化物から選択される1つ、または、2種以上を積層して構成することもできる。
位相シフト層12は、後述するように、所定の光学特性および抵抗率が得られるようにその厚み、および、Cr,N,C,O等の組成比(atm%)が設定される。
【0039】
位相シフト層12の膜厚は、位相シフト層12に要求される光学特性によって設定され、Cr,N,C,O等の組成比によって変化する。位相シフト層12の膜厚は、50nm〜150nmとすることができる。
【0040】
例えば、位相シフト層12における組成比は、炭素含有率(炭素濃度)が2.3atm%〜10.3atm%、酸素含有率(酸素濃度)が8.4atm%〜72.8atm%、窒素含有率(窒素濃度)が1.8atm%〜42.3atm%、クロム含有率(クロム濃度)が20.3atm%〜42.4atm%であるように設定されることができる。
【0041】
これにより、位相シフト層12は、波長365nm〜436nm程度の範囲において、屈折率が2.4〜3.1程度、消衰係数0.3〜2.1を有した場合、膜厚90nm程度に設定されることができる。
なお、位相シフト層12における組成比・膜厚は、製造する位相シフトマスク10に要求される光学特性によって設定されるものであり、上記の値に限定されるものではない。
【0042】
エッチングストップ層13としては、位相シフト層12とは異なる材料として、金属シリサイド膜、例えば、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Zr(ジルコニウム)などの金属や、これらの金属どうしの合金とシリコンとを含む膜とすることができる。特に、金属シリサイドの中でもモリブデンシリサイドを用いることが好ましく、MoSi(X≧2)膜(例えばMoSi膜、MoSi膜やMoSi膜など)が挙げられる。
【0043】
エッチングストップ層13としては、O(酸素)、N(窒素)、C(炭素)を含有するモリブデンシリサイド膜とすることが好ましい。
さらに、エッチングストップ層13は、C(炭素)含有していてもよい。
エッチングストップ層13において、酸素含有率(酸素濃度)を2.6atm%〜10.9atm%の範囲に設定し、窒素含有率(窒素濃度)を1.5atm%〜40.9atm%の範囲に設定し、炭素含有率(炭素濃度)が2.4atm%〜4.3atm%の範囲に設定することができる。
エッチングストップ層13は、膜厚が、10nm〜100nmの範囲に設定されることができる。
【0044】
エッチングストップ層13は、膜厚方向で遮光層14に近接する位置に、窒素濃度がピークとなるピーク領域13Aを有する。
エッチングストップ層13は、膜厚方向で位相シフト層12に近接する位置では、ピーク領域13Aに対して低い窒素濃度を有する。
ピーク領域13Aは、エッチングストップ層13において膜厚方向で遮光層14に近接する上表面に露出する状態として形成することができる。つまり、ピーク領域13Aは、エッチングストップ層13と遮光層14との界面に形成される。
エッチングストップ層13は、ピーク領域13Aにおける抵抗率が、1.0×10−3Ωcm以上に設定される。
【0045】
エッチングストップ層13は、ピーク領域13Aにおける窒素濃度が、30atm%以上に設定される。
エッチングストップ層13は、ピーク領域13Aにおけるシリコン濃度が、20atm%〜70atm%の範囲に設定される。
エッチングストップ層13は、ピーク領域13Aにおけるモリブデン濃度が、20atm%〜40atm%の範囲に設定される。
エッチングストップ層13の膜厚に対して、ピーク領域13Aの膜厚が、1/3以下の範囲に設定される。
【0046】
エッチングストップ層13は、ピーク領域13A以外、つまり、ピーク領域13Aよりも位相シフト層12に近接する位置における抵抗率が、1.0×10−3Ωcm以下に設定される。
エッチングストップ層13は、ピーク領域13A以外、つまり、ピーク領域13Aよりも位相シフト層12に近接する位置における窒素濃度が、25atm%以下に設定される。
エッチングストップ層13は、ピーク領域13A以外、つまり、ピーク領域13Aよりも位相シフト層12に近接する位置におけるモリブデンとシリコンとの組成比が、
1 ≦ Si/Mo
に設定される。
【0047】
なお、エッチングストップ層13は、ピーク領域13A以外、つまり、ピーク領域13Aよりも位相シフト層12に近接する位置における窒素濃度は、ピーク領域13Aよりも低ければ、均一な一定値であっても、傾斜していても、膜厚方向に所定の変化を有していてもよい。
【0048】
なお、エッチングストップ層13は、ピーク領域13Aとして窒素濃度が高い部分を有していれば、それ以外の部分では、なるべく窒素濃度を低くしてエッチングレート(E.R.)が大きい方が好ましい。さらに、エッチングストップ層13は、ピーク領域13Aとして窒素濃度が高い部分を有していれば、それ以外の部分では、なるべく窒素濃度を低くして抵抗率が低い方が好ましい。
【0049】
遮光層14は、Cr(クロム)、O(酸素)を主成分とするものであり、さらに、C(炭素)およびN(窒素)を含むものとされる。
この場合、遮光層14として、Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物および酸化炭化窒化物から選択される1つ、または、2種以上を積層して構成することもできる。さらに、遮光層14が厚み方向に異なる組成を有することもできる。
遮光層14は、後述するように、所定の密着性(疎水性)、所定の光学特性が得られるようにその厚み、および、Cr,N,C,O,Si等の組成比(atm%)が設定される。
【0050】
遮光層14の膜厚は、遮光層14に要求される条件、つまり、後述するフォトレジスト層15との密着性(疎水性)および光学特性等といった膜特性によって設定される。これらの遮光層14における膜特性は、Cr,N,C,O等の組成比によって変化する。遮光層14の膜厚は、特に、位相シフトマスク10として必要な光学特性によって設定することができる。
遮光層14の膜厚・組成を上記のように設定することにより、フォトリソグラフィ法におけるパターニング形成時に、たとえば、クロム系に用いられるフォトレジスト層15との密着性を向上して、フォトレジスト層15との界面でエッチング液の浸込みが発生しないため、良好なパターン形状が得られて、所望のパターンを形成することができる。
【0051】
なお、遮光層14が上記の条件のように設定されていない場合、フォトレジスト層15との密着性が所定の状態とならずにフォトレジスト層15が剥離して、界面にエッチング液が侵入してしまい、パターン形成をおこなうことができなくなるため好ましくない。また、遮光層14の膜厚が上記の条件のように設定されていない場合には、フォトマスクとしての光学特性を所望の条件に設定することが難しくなる、あるいは、マスクパターンの断面形状が所望の状態にならない可能性があるため、好ましくない。
【0052】
遮光層14は、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を高くすることで親水性を低減して、疎水性を向上し、密着性をあげることが可能である。
同時に、遮光層14は、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を高くすることで屈折率と消衰係数の値を低くする、あるいは、クロム化合物中の酸素濃度と窒素濃度を低くすることで屈折率と消衰係数の値を高くすることが可能である。
【0053】
本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法は、ガラス基板(透明基板)11に位相シフト層12を成膜した後に、エッチングストップ層13を成膜し、その後、遮光層14を成膜するものとされる。
【0054】
マスクブランクスの製造方法は、位相シフト層12とエッチングストップ層13と遮光層14以外に、保護層、遮光層、耐薬層、反射防止層、等を積層する場合には、これらの積層工程を有することができる。
一例として、例えば、クロムを含む密着層を挙げることができる。
【0055】
図3は、本実施形態におけるマスクブランクス、位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。図4は、本実施形態におけるマスクブランクス、位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。図5は、本実施形態におけるマスクブランクス、位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。図6は、本実施形態におけるマスクブランクス、位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。図7は、本実施形態におけるマスクブランクス、位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。図8は、本実施形態におけるマスクブランクス、位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。図9は、本実施形態におけるマスクブランクス、位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。図10は、本実施形態における位相シフトマスクを示す断面図である。
本実施形態における位相シフトマスク(フォトマスク)10は、図9に示すように、マスクブランクス10Bとして積層された位相シフト層12とエッチングストップ層13と遮光層14に、パターンを形成したものとされる。
【0056】
以下、本実施形態のマスクブランクス10Bから位相シフトマスク10を製造する製造方法について説明する。
【0057】
レジストパターン形成工程として、図2に示すように、マスクブランクス10Bの最外面上にフォトレジスト層15を形成する。または、あらかじめフォトレジスト層15が最外面上に形成されたマスクブランクス10Bを準備してもよい。フォトレジスト層15は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。フォトレジスト層15としては、いわゆるクロム系材料へのエッチングおよびモリブデンシリサイド系材料へのエッチングに対応可能なものとされる。フォトレジスト層15としては、液状レジストが用いられる。
【0058】
続いて、フォトレジスト層15を露光及び現像することで、遮光層14よりも外側にレジストパターン15P1が形成される。レジストパターン15P1は、位相シフト層12とエッチングストップ層13と遮光層14とのエッチングマスクとして機能する。
【0059】
レジストパターン15P1は、位相シフト層12とエッチングストップ層13と遮光層14とのエッチングパターンに応じて適宜形状が定められる。一例として、形成する透光領域10L(図6図10参照)の開口幅寸法に対応した開口幅を有する形状に設定される。
【0060】
次いで、遮光パターン形成工程として、このレジストパターン15P1越しにエッチング液を用いて遮光層14をウエットエッチングして、図3に示すように、遮光パターン14P1を形成する。
【0061】
遮光パターン形成工程におけるエッチング液としては、クロム系材料のエッチング液として、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いることができ、例えば、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いることが好ましい。
遮光パターン形成工程においては、モリブデンシリサイドからなるエッチングストップ層13が、上記のクロム系のエッチング液にはほとんどエッチングされない。
【0062】
この際、エッチングストップ層13には、ピーク領域13Aが設けられているため、クロム系エッチング液に対する耐エッチング性を向上することができる。同時に、エッチングストップ層13には、ピーク領域13Aが設けられているため、遮光層14との密着性を高め、エッチングされた形状が崩れてしまうことを防止できる。
【0063】
次いで、エッチングストップパターン形成工程として、この遮光パターン14P1越しにエッチング液を用いてエッチングストップ層13をウエットエッチングして、図4に示すように、エッチングストップパターン13P1を形成する。
【0064】
エッチングストップパターン形成工程におけるエッチング液としては、モリブデンシリサイドからなるエッチングストップ層13をエッチング可能なものとして、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、フッ化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化水素、硝酸、硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤とを含むものを用いることが好ましい。
【0065】
この際、エッチングストップ層13には、ピーク領域13Aが設けられているため、モリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が高くなるが、ピーク領域13Aの膜厚が小さく設定されているため、エッチング時間がそれほど長くなることを防止できる。さらに、エッチングストップ層13では、ピーク領域13Aよりも下側、つまり、位相シフト層12に近接する位置における窒素濃度が低く設定されているため、モリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が小さくなり、エッチング時間を短縮することができる。
これにより、エッチング時間を短くして、上記のエッチング液により影響を受けるガラス基板11に対する影響を抑制することが可能となる。
【0066】
次いで、位相シフトパターン形成工程として、パターン形成されたエッチングストップパターン13P1と遮光パターン14P1とレジストパターン15P1越しに、位相シフト層12をウエットエッチングして、図5に示すように、位相シフトパターン12P1を形成する。
これにより、ガラス基板11の表面が露出した透光領域10Lを形成することができる。
【0067】
位相シフトパターン形成工程におけるエッチング液としては、遮光パターン形成工程と同様に、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いることができ、例えば、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いることが好ましい。
【0068】
エッチングストップ層13を構成するモリブデンシリサイド化合物は、例えばフッ化水素アンモニウムと過酸化水素の混合液によりエッチングすることが可能である。これに対し、遮光層14および位相シフト層12を形成するクロム化合物は、例えば硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸の混合液によりエッチングすることが可能である。
【0069】
したがって、それぞれのウエットエッチングの際における選択比が非常に大きくなる。このため、エッチングによる遮光パターン14P1と、エッチングストップパターン13Pと、位相シフトパターン12P1との形成後においては、位相シフトマスク10の断面形状として、垂直に近い良好な断面形状を得ることが可能である。
【0070】
また、位相シフトパターン形成工程においては、遮光層14の酸素濃度を位相シフト層12の酸素濃度に比べて高く設定することで、エッチングレートが低くなる。したがって、位相シフト層12のエッチングに比べて、遮光パターン14P1のエッチングの進行を遅延させる。
【0071】
これらにより、遮光パターン14P1とエッチングストップパターン13P1と位相シフトパターン12P1とのエッチングで形成された壁面が、ガラス基板11表面と為す角(テーパ角)θは直角に近くなり、例えば、90°程度にすることができる。
【0072】
しかも、エッチングストップパターン13P1には、遮光パターン14P1に接してピーク領域13Aが形成されていることで、遮光パターン14Pとエッチングストップパターン13P1との密着性が向上している。これにより、位相シフトパターン形成工程においては、遮光パターン14Pとエッチングストップパターン13P1との界面にエッチング液が浸入することがない。したがって、確実なパターン形成をおこなうことができる。
【0073】
さらに、本実施形態においては、レジストパターン形成工程として、図6に示すように、フォトレジスト層15を露光及び現像することで、遮光パターン14P1よりも外側にレジストパターン15P2が形成される。レジストパターン15P2は、エッチングストップパターン13P1と遮光パターン14P1とのエッチングマスクとして機能する。
【0074】
レジストパターン15P2は、エッチングストップパターン13P1と遮光パターン14P1とのエッチングパターンに応じて適宜形状が定められる。一例として、形成する位相シフト領域10P2および露光領域10P1(図8図10参照)の開口幅寸法に対応した開口幅を有する形状に設定される。
【0075】
次いで、遮光パターン用パターン形成工程として、このレジストパターン15P2越しにエッチング液を用いて遮光パターン14P1をウエットエッチングして、図7に示すように、遮光パターン14P2を形成する。
【0076】
遮光パターン用パターン形成工程におけるエッチング液としては、同様に、クロム系材料のエッチング液として、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いることができ、例えば、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いることが好ましい。
遮光パターン用パターン形成工程においては、モリブデンシリサイドからなるエッチングストップパターン13P1が、上記のクロム系のエッチング液にはほとんどエッチングされない。
【0077】
この際、エッチングストップパターン13P1には、ピーク領域13Aが設けられているため、クロム系エッチング液に対する耐エッチング性を向上することができる。同時に、エッチングストップパターン13P1には、ピーク領域13Aが設けられているため、遮光パターン14P2との密着性を高め、エッチングされた形状が崩れてしまうことを防止できる。
【0078】
次いで、エッチングストップパターン形成工程として、この遮光パターン14P2越しにエッチング液を用いてエッチングストップパターン13P1をウエットエッチングする。すると、図8に示すように、エッチングストップパターン13P2を形成する。
これにより、露光領域10P1に対応して位相シフトパターン12P1の表面が露出したエッチングストップパターン13P2を形成することができる。
【0079】
エッチングストップパターン形成工程におけるエッチング液としては、同様に、モリブデンシリサイドからなるエッチングストップパターン13P1をエッチング可能なものとして、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、フッ化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化水素、硝酸、硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤とを含むものを用いることが好ましい。
【0080】
この際、エッチングストップパターン13P1には、ピーク領域13Aが設けられているため、モリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が高くなるが、ピーク領域13Aの膜厚が小さく設定されているため、エッチングストップパターン13P2を形成するためのエッチング時間がそれほど長くなることを防止できる。さらに、エッチングストップパターン13P1では、ピーク領域13Aよりも下側、つまり、位相シフトパターン12P1に近接する位置における窒素濃度が低く設定されているため、モリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が小さくなり、エッチングストップパターン13P2を形成するためのエッチング時間を短縮することができる。
これにより、エッチング時間を短くして、透光領域10Lやその他の領域において露出しているガラス基板11に対して、上記のエッチング液による影響を抑制することが可能となる。
【0081】
次いで、位相シフトパターン形成工程として、このレジストパターン15P2と遮光パターン13P2とエッチングストップパターン13P2越しにエッチング液を用いて位相シフトパターン12P1をウエットエッチングして、図9に示すように、位相シフトパターン12P2を形成する。
【0082】
位相シフトパターン形成工程におけるエッチング液としては、遮光パターン用パターン形成工程と同様に、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いることができ、例えば、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いることが好ましい。
【0083】
このとき、位相シフトパターン12P1のウエットエッチング同時に、遮光パターン14P2の露出面がウエットエッチングされる。遮光パターン14P2において、その露出面のウエットエッチングは、図の横方向に進行し、図9に示すように、位相シフトパターン12P2よりも開口幅寸法の大きな遮光パターン14P3を形成する。
【0084】
エッチングストップ層13を構成するモリブデンシリサイド化合物と、遮光層14および位相シフト層12を形成するクロム化合物とにおいて、それぞれウエットエッチングの際における選択比が非常に大きくなる。このため、エッチングストップ層13に覆われた位相シフトパターン12P1のエッチングはおこなわれない。これに対して、パターン断面に露出した遮光パターン14P2と、エッチングストップ層13の除去された領域における位相シフトパターン12P1と、においてはエッチングが進行する。
ここで、遮光パターン14P2においては、ガラス基板11の表面にそった方向においてエッチングが進行し、また、エッチングストップ層13の除去された領域における位相シフトパターン12P1では、厚さ方向にエッチングが進行する。
これにより、位相シフトマスク10の断面形状として必要な、光パターン14P3よりも相シフトパターン12P2が露光領域10P1に向かって突出し、位相シフト領域10P2を有するパターン形成が可能となる。
この際、位相シフトマスク10の断面形状として、垂直に近い良好な断面形状を得ることが可能である。
【0085】
また、位相シフトパターン形成工程においては、遮光層14の酸素濃度を位相シフト層12の酸素濃度に比べて高く設定することで、エッチングレートが低くなる。したがって、位相シフトパターン12P1のエッチングに対して、遮光パターン14P2のエッチングの進行を所定の状態に設定して位相シフト領域10P2の幅寸法を設定する。
【0086】
これらにより、遮光パターン14P3とエッチングストップパターン13P2と位相シフトパターン12P2とにおいて、それぞれのエッチングで形成された壁面が、ガラス基板11表面と為す角(テーパ角)θは直角に近くなり、例えば、90°程度にすることができる。
【0087】
しかも、エッチングストップパターン13P1には、遮光パターン14P2に接してピーク領域13Aが形成されていることで、遮光パターン14P2とエッチングストップパターン13P2との密着性が向上している。これにより、位相シフトパターン形成工程においては、遮光パターン14P2とエッチングストップパターン13P1との界面にエッチング液が浸入することがない。したがって、確実なパターン形成をおこなうことができる。
【0088】
次いで、レジスト除去工程として、レジストパターン15P2を除去して、図10に示すように、位相シフトマスク10を製造する。
【0089】
以下、本実施形態におけるマスクブランクスの製造方法について、図面に基づいて説明する。
【0090】
図11は、本実施形態におけるマスクブランクスの製造装置を示す模式図である。
本実施形態におけるマスクブランクス10Bは、図11に示す製造装置により製造される。
【0091】
図11に示す製造装置S10は、インターバック式のスパッタリング装置とされ、ロード室S11、アンロード室S16と、ロード室S11に密閉機構S187を介して接続されるとともに、アンロード室S16に密閉機構S18を介して接続された成膜室(真空処理室)S12とを有するものとされる。
【0092】
ロード室S11には、外部から搬入されたガラス基板11を成膜室S12へと搬送する搬送機構S11aと、この室内を粗真空引きするロータリーポンプ等の排気機構S11fが設けられる。
【0093】
アンロード室S16には、成膜室S12から成膜の完了したガラス基板11を外部へと搬送する搬送機構S16aと、この室内を粗真空引きするロータリーポンプ等の排気機構S16fが設けられる。
【0094】
成膜室S12には、基板保持機構S12aと、3つの成膜処理に対応した機構として三段の成膜機構S13,S14,S15が設けられている。
【0095】
基板保持機構S12aは、搬送機構S11aによって搬送されてきたガラス基板11を、成膜中にターゲットS13b,S14b,S15bと対向するようにガラス基板11を保持するとともに、ガラス基板11をロード室S11からの搬入およびアンロード室S16へ搬出可能とされている。
【0096】
成膜室S12のロード室S11側位置には、三段の成膜機構S13,S14,S15のうち一段目の成膜材料を供給する成膜機構S13が設けられている。
成膜機構S13は、ターゲットS13bを有するカソード電極(バッキングプレート)S13cと、バッキングプレートS13cに負電位のスパッタ電圧を印加する電源S13dと、を有する。
【0097】
成膜機構S13は、成膜室S12内でカソード電極(バッキングプレート)S13c付近に重点的にガスを導入するガス導入機構S13eと、成膜室S12内でカソード電極(バッキングプレート)S13c付近を重点的に高真空引きするターボ分子ポンプ等の高真空排気機構S13fと、を有する。
【0098】
さらに、成膜室S12におけるロード室S11とアンロード室S16との中間位置には、三段の成膜機構S13,S14,S15のうち二段目の成膜材料を供給する成膜機構S14が設けられている。
成膜機構S14は、ターゲットS14bを有するカソード電極(バッキングプレート)S14cと、バッキングプレートS14cに負電位のスパッタ電圧を印加する電源S14dと、を有する。
【0099】
成膜機構S14は、成膜室S12内でカソード電極(バッキングプレート)S14c付近に重点的にガスを導入するガス導入機構S14eと、成膜室S12内でカソード電極(バッキングプレート)S14c付近を重点的に高真空引きするターボ分子ポンプ等の高真空排気機構S14fと、を有する。
【0100】
さらに、成膜室S12のアンロード室S16側位置には、三段の成膜機構S13,S14,S15のうち三段目の成膜材料を供給する成膜機構S15が設けられている。
成膜機構S15は、ターゲットS15bを有するカソード電極(バッキングプレート)S15cと、バッキングプレートS15cに負電位のスパッタ電圧を印加する電源S15dと、を有する。
【0101】
成膜機構S15は、成膜室S12内でカソード電極(バッキングプレート)S15c付近に重点的にガスを導入するガス導入機構S15eと、成膜室S12内でカソード電極(バッキングプレート)S15c付近を重点的に高真空引きするターボ分子ポンプ等の高真空排気機構S15fと、を有する。
【0102】
成膜室S12には、カソード電極(バッキングプレート)S13c,S14c,S15cの付近において、それぞれガス導入機構S13e,S14e,S15eから供給されたガスが、隣接する成膜機構S13,S14,S15に混入しないように、ガス流れを抑制するガス防壁S12gが設けられる。これらガス防壁S12gは、基板保持機構S12aがそれぞれ隣接する成膜機構S13,S14,S15間を移動可能なように構成されている。
【0103】
成膜室S12において、それぞれの三段の成膜機構S13,S14,S15は、ガラス基板11に順に成膜するために必要な組成・条件を有するものとされる。
本実施形態において、成膜機構S13は位相シフト層12の成膜に対応しており、成膜機構S14はエッチングストップ層13の成膜に対応しており、成膜機構S15は遮光層14の成膜に対応している。
【0104】
具体的には、成膜機構S13においては、ターゲットS13bが、ガラス基板11に位相シフト層12を成膜するために必要な組成として、クロムを有する材料からなるものとされる。
【0105】
同時に、成膜機構S13においては、ガス導入機構S13eから供給されるガスとして、位相シフト層12の成膜に対応して、プロセスガスが炭素、窒素、酸素などを含有し、アルゴン、窒素ガス等のスパッタガスとともに、所定のガス分圧として条件設定される。
【0106】
また、成膜条件にあわせて高真空排気機構S13fからの排気がおこなわれる。
また、成膜機構S13においては、電源S13dからバッキングプレートS13cに印加されるスパッタ電圧が、位相シフト層12の成膜に対応して設定される。
【0107】
また、成膜機構S14においては、ターゲットS14bが、位相シフト層12上にエッチングストップ層13を成膜するために必要な組成として、モリブデンシリサイドを有する材料からなるものとされる。
【0108】
同時に、成膜機構S14においては、ガス導入機構S14eから供給されるガスとして、エッチングストップ層13の成膜に対応して、プロセスガスが炭素、窒素、酸素などを含有し、アルゴン、不活性ガス等のスパッタガスとともに、所定のガス分圧として設定される。
また、ガス導入機構S14eにおいて供給するガスでは、窒素含有ガス等のガス分圧を、成膜されるエッチングストップ層13の膜厚に従って所定の変化量となるようにそれぞれ調整することが可能な構成とされている。
【0109】
また、成膜条件にあわせて高真空排気機構S14fからの排気がおこなわれる。
また、成膜機構S14においては、電源S14dからバッキングプレートS14cに印加されるスパッタ電圧が、エッチングストップ層13の成膜に対応して設定される。
【0110】
また、成膜機構S15においては、ターゲットS15bが、エッチングストップ層13上に遮光層14を成膜するために必要な組成として、クロムを有する材料からなるものとされる。
【0111】
同時に、成膜機構S15においては、ガス導入機構S15eから供給されるガスとして、遮光層14の成膜に対応して、プロセスガスが炭素、窒素、酸素などを含有し、不活性ガスとしてアルゴン、窒素ガス等のスパッタガスとともに、所定のガス分圧として条件設定される。
【0112】
また、成膜条件にあわせて高真空排気機構S15fからの排気がおこなわれる。
また、成膜機構S15においては、電源S15dからバッキングプレートS15cに印加されるスパッタ電圧が、遮光層14の成膜に対応して設定される。
【0113】
図11に示す製造装置S10においては、ロード室S11から搬送機構S11aによって搬入したガラス基板11に対して、成膜室(真空処理室)S12において基板保持機構S12aによって搬送しながら三段のスパッタリング成膜をおこなった後、アンロード室S16から成膜の終了したガラス基板11を搬送機構S16aによって外部に搬出する。
【0114】
位相シフト層形成工程においては、成膜機構S13において、ガス導入機構S13eから成膜室S12のバッキングプレートS13c付近に供給ガスとしてスパッタガスと反応ガスとを供給する。この状態で、外部の電源からバッキングプレート(カソード電極)S13cにスパッタ電圧を印加する。また、マグネトロン磁気回路によりターゲットS13b上に所定の磁場を形成してもよい。
【0115】
成膜室S12内のバッキングプレートS13c付近でプラズマにより励起されたスパッタガスのイオンが、カソード電極S13cのターゲットS13bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、飛び出した粒子と反応ガスとが結合した後、ガラス基板11に付着することにより、ガラス基板11の表面に所定の組成で位相シフト層12が形成される。
【0116】
同様に、エッチングストップ層形成工程においては、成膜機構S14において、ガス導入機構S14eから成膜室S12のバッキングプレートS14c付近に供給ガスとしてスパッタガスと反応ガスとを供給する。この状態で、外部の電源からバッキングプレート(カソード電極)S14cにスパッタ電圧を印加する。また、マグネトロン磁気回路によりターゲットS14b上に所定の磁場を形成してもよい。
【0117】
成膜室S12内のバッキングプレートS14c付近でプラズマにより励起されたスパッタガスのイオンが、カソード電極S14cのターゲットS14bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、飛び出した粒子と反応ガスとが結合した後、ガラス基板11に付着することにより、ガラス基板11の表面に所定の組成でエッチングストップ層13が位相シフト層12に積層して形成される。
【0118】
同様に、遮光層形成工程においては、成膜機構S15において、ガス導入機構S15eから成膜室S12のバッキングプレートS15c付近に供給ガスとしてスパッタガスと反応ガスとを供給する。この状態で、外部の電源からバッキングプレート(カソード電極)S15cにスパッタ電圧を印加する。また、マグネトロン磁気回路によりターゲットS15b上に所定の磁場を形成してもよい。
【0119】
成膜室S12内のバッキングプレートS15c付近でプラズマにより励起されたスパッタガスのイオンが、カソード電極S15cのターゲットS14bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、飛び出した粒子と反応ガスとが結合した後、ガラス基板11に付着することにより、ガラス基板11の表面に所定の組成で遮光層14がエッチングストップ層13に積層して形成される。
【0120】
この際、位相シフト層12の成膜では、ガス導入機構S13eから所定の分圧となるスパッタガス、酸素含有ガス等を供給してその分圧を制御するように切り替えて、その組成を設定した範囲内にする。同時に、膜厚方向に組成を変化させて位相シフト層12を形成する場合には、成膜された膜厚に応じて雰囲気ガスにおける個々のガス分圧を変動させることもできる。
【0121】
また、エッチングストップ層13の成膜では、ガス導入機構S14eから所定の分圧となるスパッタガス、窒素含有ガス等を供給するとともに、窒素含有ガスの分圧を制御するように切り替えて、エッチングストップ層13の組成をあらかじめ設定した濃度比、あるいは、変動する濃度にする。
特に、上述したように、膜厚方向に窒素濃度の高いピーク領域13Aと、ピーク領域13Aよりも窒素濃度の低いそれ以外の領域を形成するように、窒素含有ガスの分圧比を制御する。
【0122】
具体的には、モリブデンシリサイド化合物膜の成膜時に、膜厚の増加にともなって、エッチングストップ層13の膜厚に対して2/3となる膜厚、等とされる所定の膜厚まで成膜された時から、窒素ガスの分圧を増大させることで、ピーク領域13Aを形成することができる。
同時に、エッチングストップ層13におけるエッチングストップ能を所定の状態に設定するために、ターゲットS14bにおけるモリブデンとシリコンとの組成比、さらに、モリブデンとシリコン以外の含有物の組成比を、所定の状態に設定することができる。また、異なる組成比を有するターゲットS14bを適切に選択することが好ましい。
【0123】
また、遮光層14の成膜では、ガス導入機構S15eから所定の分圧となる窒素ガス、酸素含有ガス等を供給してその分圧を制御するように切り替えて、その組成を設定した範囲内にする。
【0124】
ここで、酸素含有ガスとしては、CO(二酸化炭素)、O(酸素)、NO(一酸化二窒素)、NO(一酸化窒素)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。
また、炭素含有ガスとしては、CO(二酸化炭素)、CH4(メタン)、C(エタン)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。
さらに、窒素含有ガスとしては、N(窒素ガス)、NO(一酸化二窒素)、NO(一酸化窒素)、NO(一酸化二窒素)、NH(アンモニア)等を挙げることができる。
なお、位相シフト層12、エッチングストップ層13、遮光層14の成膜で、必要であればターゲットS13b,S14b,S15bを交換することもできる。
【0125】
さらに、これら位相シフト層12、エッチングストップ層13、遮光層14の成膜に加え、他の膜を積層する場合には、対応するターゲット、ガス等のスパッタ条件としてスパッタリングにより成膜するか、他の成膜方法によって該当膜を積層して、本実施形態のマスクブランクス10Bとする。
【0126】
以下、本実施形態における位相シフト層12、エッチングストップ層13、遮光層14の膜特性、特に、エッチングストップ層の膜特性について説明する。
【0127】
マスクを形成するためのガラス基板11上に、位相シフト層12をクロム化合物膜をスパッタリング法等を用いて形成する。ここで形成するクロム化合物はクロム、酸素、窒素、炭素等を含有する膜であることが望ましい。この際に膜中に含有するクロム、酸素、窒素、炭素の組成と膜厚を制御することで所望の透過率と位相を有する位相シフト層12を形成することが可能である。
【0128】
引き続き、エッチングストップ層13となるモリブデンシリサイド化合物をスパッタリング法等を用いて形成する。ここで形成するモリブデンシリサイド化合物はモリブデン、シリコン、酸素、窒素、炭素等を含有する膜であることが望ましい。
その後、遮光層14となるクロム化合物をスパッタリング法等を用いて形成する。ここで形成するクロム化合物はクロム、酸素、窒素、炭素を含有する膜であることが望ましい。
このような膜構造のマスクブランクス10Bを形成することにより、位相シフト層12と遮光層14とがクロム化合物で形成された位相シフトマスク10を形成することが可能になる。
【0129】
モリブデンシリサイド膜を用いて位相シフト層12を形成する場合には、フッ酸を含有するエッチング液でエッチングすることが必要である。このため、ガラス基板11に対するエッチングの影響を低減する必要がある。そのため、モリブデンシリサイド膜におけるエッチングレート(E.R.)をできるかぎり速くして用いることが望ましい。
図12に、ターゲット組成の異なるモリブデンシリサイドターゲットを用いて、モリブデンシリサイド膜を形成した場合の膜中の窒素濃度とエッチングレートの関係を示す。図12より、ターゲット組成においてシリコン組成の少ないモリブデンシリサイドターゲットを用いることで、エッチングレートの速いモリブデンシリサイド膜を形成することができることがわかる。
【0130】
さらに、モリブデンシリサイドのターゲットについては、モリブデンシリコンの結晶であるMoSiとSiの材料を混合することで、所望の組成比のターゲットを形成することが可能となる。
ここで、一定以上のシリコンがMoSiよりも過剰に存在しないと、組成の安定したターゲットを形成することは困難である。
【0131】
これに対して、本発明者らは、モリブデンとシリコンの組成比を1:2.3までシリコン組成を増加すると、相対密度が高いターゲットを安定して形成可能であることを見出した。このため、モリブデンシリサイドの組成比が1:2.3のターゲットを用いることで、ガラス基板11のエッチングが抑制された状態で、高密度のターゲットを用いることを可能としたものである。
これにより、欠陥の影響を低減した位相シフトマスク10の生産に適したマスクブランクス10Bを製品として製造することを可能とした。
【0132】
エッチングストップ層13におけるこれらの製造条件、膜特性ついて検証した。
【0133】
まず、モリブデンとシリコンの組成比が1:2.3のターゲットを用いて、エッチングストップ層13としてモリブデンシリサイド膜を形成し、成膜時のアルゴン、窒素流量を変化させて、モリブデンシリサイド膜を成膜した。
【0134】
位相シフトマスク10の製造プロセスにおいては、通常、酸やアルカリ等の薬液が用いられるが、プロセス中において透過率変化を抑制することが必要である。
本発明者らは、モリブデンシリサイド膜の窒素濃度を上げることで、酸やアルカリに対する薬液耐性が向上することを見出した。
【0135】
このことから、マスクブランクス10Bとして、遮光層14とエッチングストップ層13との界面に、窒素濃度の高いモリブデンシリサイド膜からなるピーク領域13Aを形成した。さらに、マスクブランクス10Bとして、エッチングストップ層13のピーク領域13Aよりも下側となる部分(ガラス基板11に近接する部分)に、窒素濃度の低いモリブデンシリサイド膜を用いる。
これにより、エッチングストップ膜のエッチング時間を短時間化して、ガラス基板11のエッチング液との接触で生じる影響を低減した上で、薬液耐性の高いエッチングストップ膜を形成することが可能となる。
【0136】
さらに、本発明者らは、窒素濃度の高いモリブデンシリサイド膜を表面に形成したエッチングストップ層13は、クロム膜である遮光層14をエッチングする際に、エッチング液の染み込み等の少ない高いエッチングストップ機能を有することを見出した。
そのため、できるだけ窒素濃度の高いモリブデンシリサイド膜をエッチングストップ層13に用いることが望ましい。
このために、エッチングストップ層13の上層に窒素濃度の高いモリブデンシリサイド膜であるピーク領域13Aを形成することは、遮光層14をエッチングする際に、遮光層14とエッチングストップ層13との界面付近に、エッチング液の染み込みを抑制する効果も有する。
【0137】
さらに、本発明者らは、モリブデンシリサイド膜のエッチングレートとシート抵抗の関係を調査したところ、シート抵抗が低くなるとモリブデンシリサイド膜のエッチングレートが早くなることを見出した。
抵抗率が1.0x10−3Ωcm以下のモリブデンシリサイド膜をエッチングストップ層として用いることで、エッチングレートの早いエッチングストップ層を形成可能になることがわかった。更に抵抗率が低いモリブデンシリサイド膜を用いることで、静電破壊を抑制できることも判明した。
【0138】
モリブデンシリサイド膜をエッチングストップ層13として用いる場合には、モリブデンとシリコンの比率が1:3以下のターゲットを用いて、スパッタリングにおける雰囲気ガスとして窒素含有ガスを用い、この窒素含有ガスのガス分圧を制御することで、遮光層14とエッチングストップ層13との界面に、窒素濃度を30%以上にしたピーク領域13Aを形成するとともに、ピーク領域13Aよりもガラス基板11側となる下部の窒素濃度を25%以下にする。
【0139】
さらに、モリブデンシリサイド膜であるエッチングストップ層13の膜厚を10nm以上100nm以下とし、かつ、ピーク領域13Aよりもガラス基板11側となる下部の抵抗率を1.0x10−3Ωcm以下にする。このようなモリブデンシリサイド膜をエッチングストップ層13として用いることで、ガラス基板11に対するエッチングの影響が少なく、断面形状の良好な位相シフトマスク10を形成することが可能になる。
【実施例】
【0140】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0141】
なお、本発明におけるエッチングストップ層13の具体例として、確認試験について説明する。
【0142】
<実験例>
実験例1として、ガラス基板上に、エッチングストップ層として、スパッタリング法等を用いてモリブデンシリサイド化合物の膜を形成する。ここで形成するモリブデンシリサイド化合物膜は、モリブデン、シリコン、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。この膜に対してオージェ電子分光法を用いて組成評価を行った。
その結果を図13に示す。
図13に示すように、図の左側に窒素濃度の高いピーク領域が形成されていることが確認できた。
【0143】
次に、モリブデンシリサイド化合物の膜を形成するスパッタリングにおいて、モリブデンとシリコンとの比率が1:2.3であるターゲットを用いて、窒素ガス分圧を0〜100%で変化させて成膜した。
スパッタリングにおける雰囲気ガスとしては、窒素ガスに加えて、二酸化炭素、アルゴンとした。
これを実験例1〜4として、それぞれの組成比と、モリブデンシリコンのエッチングレートと、このエッチングレートとガラスのエッチングレートとの比を測定した。
この結果を表1に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
同様にして、モリブデンシリサイド化合物の膜を形成するスパッタリングにおいて、モリブデンとシリコンとの比率が1:3.7であるターゲットを用いて、窒素ガス分圧を0〜100%で変化させて成膜した。
スパッタリングにおける雰囲気ガスとしては、窒素ガスに加えて、二酸化炭素、アルゴンとした。
これを実験例5〜8として、それぞれの組成比と、モリブデンシリコンのエッチングレートと、このエッチングレートとガラスのエッチングレートとの比を測定した。
この結果を表1に示す。
【0146】
さらに、実験例1〜8において、モリブデンシリサイド膜のエッチングレートとシート抵抗の関係を、それぞれ検出した。
【0147】
これらの結果から、モリブデンシリサイド膜中の窒素濃度を成膜時の窒素ガス分圧で制御できることがわかる。また、組成比がSi/Mo=2.3であるMoSi2.3ターゲットを用いたスパッタリングにより、さらに抵抗率の低いモリブデンシリサイド膜を形成することが可能であることがわかる。これにより、静電破壊の影響を低減できることがわかる。
さらに、窒素濃度の高いモリブデンシリサイド膜と窒素濃度の低いモリブデンシリサイド膜の積層構造を用いることで、断面形状が良好で、かつ、エッチング時間を短縮可能であり、位相シフトマスクに用いて好適なモリブデンシリサイド膜を形成かのうであることが判明した。
【0148】
さらに、モリブデンシリサイド膜の窒素濃度を上げることで、酸やアルカリに対する薬液耐性が向上することがわかった。窒素濃度の高いモリブデンシリサイド膜をエッチングストップ膜は、クロム膜のエッチングの際にエッチング液の染み込み等の少ない高いエッチングストップ機能を有することがわかった。モリブデンシリサイド膜のエッチングレートとシート抵抗の関係を調査したところ、シート抵抗が低くなるとモリブデンシリサイド膜のエッチングレートが早くなることがわかった。更に抵抗率が低いモリブデンシリサイド膜を用いることで、静電破壊を抑制できることも判明した。
【0149】
本願発明者らは、これらにより、本発明を完成した。これにより、ガラス基板のエッチングの影響の少なく、断面形状の良好なマスクを形成することが可能になる。
【符号の説明】
【0150】
10…位相シフトマスク
10B…マスクブランクス
10L…透光領域
10P1…露光領域
10P2…位相シフト領域
11…ガラス基板(透明基板)
12…位相シフト層
12P1…位相シフトパターン
13…エッチングストップ層
13P1,13P2…エッチングストップパターン
14…遮光層
14P1,14P2…遮光パターン
15…フォトレジスト層
15P1,15P2…レジストパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13