(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体内に人工器官(12)を移植するための送達装置(600)であって、前記人工器官(12)が、半径方向に圧縮された状態から半径方向に拡張された状態に半径方向に拡張可能とされる、前記送達装置(600)において、
前記送達装置(600)が、
膨張可能バルーン(612)と、
近位ストップ部材(614)及び遠位ストップ部材(618)であって、前記人工器官(12)が、前記半径方向に圧縮された状態において、前記近位ストップ部材(614)と前記遠位ストップ部材(618)との間に且つ前記膨張可能バルーン(612)を覆うように取り付けられている際に、前記近位ストップ部材(614)と前記遠位ストップ部材(618)とが、前記膨張可能バルーン(612)に対する前記人工器官(12)の長手方向移動を制限するように構成されており、前記人工器官(12)が、近位端と遠位端とを有している、前記近位ストップ部材(614)及び前記遠位ストップ部材(618)と、
を備えており、
前記近位ストップ部材(614)と前記遠位ストップ部材(618)とがそれぞれ、前記膨張可能バルーン(612)の内部に位置決めされている端部分(628,630)を備えており、前記端部分(628,630)が、前記人工器官(12)が前記近位ストップ部材(614)と前記遠位ストップ部材(618)との間において半径方向に圧縮されている場合に、前記人工器官(12)の前記近位端及び前記遠位端それぞれに隣り合って位置決めされるように構成されており、前記端部分(628,630)それぞれが、少なくとも1つの長手方向に延在しているスロット(632)を備えており、前記スロット(632)が、前記近位ストップ部材(614)及び前記遠位ストップ部材(618)それぞれの前記端部分(628,630)を半径方向に圧縮させることができ、
前記近位ストップ部材(614)が、前記人工器官(12)の前記近位端に当接するように構成されており、前記遠位ストップ部材(618)が、前記人工器官(12)の前記遠位端に当接するように構成されていることを特徴とする送達装置(600)。
前記端部分(628,630)それぞれの少なくとも1つの長手方向に延在している前記スロット(632)が、バルーン膨張流体を前記近位ストップ部材(614)及び前記遠位ストップ部材(618)それぞれを通じて半径方向に流すように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の送達装置(600)。
前記人工器官(12)が前記半径方向に圧縮された状態で前記送達装置(600)に取り付けられている場合に、前記近位ストップ部材(614)と前記遠位ストップ部材(618)とが、前記近位ストップ部材(614)の少なくとも1つの前記スロット(632)を通じて、前記人工器官(12)の内部に位置決めされた前記膨張可能バルーン(612)の中間部分を通じて、及び前記遠位ストップ部材(618)の少なくとも1つの前記スロット(632)を通じて、前記膨張可能バルーン(612)の近位部分から前記膨張可能バルーン(612)の遠位部分に、バルーン膨張流体を流すように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の送達装置(600)。
前記送達装置(600)が、管腔を有している外側シャフト(608)と、前記外側シャフト(608)の前記管腔を通じて延在している内側シャフト(610)とを備えており、
前記近位ストップ部材(614)が、前記外側シャフト(608)の遠位端に取り付けられており、及び/又は、前記内側シャフト(610)の外面に取り付けられており、
前記遠位ストップ部材(618)が、前記内側シャフト(610)の外面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の送達装置(600)。
前記近位ストップ部材(614)及び前記遠位ストップ部材(618)それぞれの前記端部分(628,630)の直径が、前記人工器官(12)から離隔する方向において減少していることを特徴とする請求項1に記載の送達装置(600)。
前記送達装置(600)が、前記遠位ストップ部材(618)の遠位端に取り付けられているノーズコーン(616)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の送達装置(600)。
前記送達装置(600)が、前記近位ストップ部材(614)と前記遠位ストップ部材(618)との間において前記膨張可能バルーンに圧着されている人工心臓弁と組み合わせて利用されることを特徴とする請求項1に記載の送達装置(600)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
送達デバイスを身体に導入するとき、典型的には、まずイントロデューサ外筒が挿入され、次いで送達デバイスがイントロデューサ外筒を通じて体内に挿入される。人工弁がバルーンカテーテルに取り付けられている場合、人工弁は、イントロデューサ外筒の内面に接触する可能性があり、圧着式弁のサイズによってはバルーンカテーテル上のその好ましい位置から移動させられてしまう場合がある。したがって、送達デバイスがイントロデューサ外筒を通じて前進させられるときに、圧着式弁をバルーンカテーテル上のその所望の位置により良く保持できる送達デバイスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
人工心臓弁などの人工器官を内部に植え込むために身体を通じて心臓の中に送達するシステムおよび方法が、本明細書に記載されている。本明細書に開示した送達システムを用いて送達される人工器官は、例えば、送達システムに取り付けられた半径方向に圧縮された状態から送達システムの膨張可能バルーン(または均等な拡張デバイス)を用いて植え込みのために半径方向に拡張した状態へ半径方向に拡張可能である。例示的な身体を通じて心臓の中に入る送達ルートは、数ある中でも、経大腿ルート、経心尖ルート、および経大動脈ルートが挙げられる。本明細書に開示したデバイスおよび方法は、人工心臓弁(例えば、人工大動脈弁または人工僧帽弁)を植え込むのに特に適しているが、開示したデバイスおよび方法は、他のタイプの人工弁(例えば、人工静脈弁)、または様々な身体の管腔に植え込まれるようになされている他のタイプの拡張可能な人工器官を体内に植え込むようになされてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、患者の血管系を介して人工経カテーテル心臓弁を植え込む送達装置は、圧着式人工弁に対してバルーンの位置を調整する(および/またはその逆)調整デバイスを備える。バルーンカテーテルは、ガイド(またはフレックス)カテーテルと同軸に延在でき、バルーンカテーテルの遠位端にあるバルーン部材は、圧着式人工弁に対して近位または遠位に配置することができる。バルーン部材および圧着式人工弁は、イントロデューサ外筒を通じて患者の血管系に入ることができ、バルーン部材および圧着式人工弁が体内の適切な位置に到達すると、人工弁およびバルーン部材の相対位置は、バルーン部材が人工弁のフレーム内に配置されるように調整することができ、最終的に人工弁は、治療部位で拡張できるようになっている。圧着式人工弁がバルーン上に配置されると、人工弁は、展開位置(すなわち、本来の大動脈弁)の近傍に前進させられ、調整デバイスは、所望の展開位置に対しての人工弁の位置を正確に調整または「微調整」するためにさらに使用することができる。
【0010】
半径方向に圧縮可能および拡張可能な人工器官(例えば、人工心臓弁)を心臓に植え込む典型的な方法は、(a)送達デバイスを患者の身体に導入する段階であって、送達デバイスが、ハンドル部分と、このハンドル部分から延びる細長いシャフトとを備え、このシャフトが、膨張可能バルーンおよび人工心臓弁を半径方向に圧縮された状態で取り付ける遠位端部分を有する、導入する段階と、(b)送達デバイスの遠位端部を人工弁が本来の心臓弁の輪の内またはそれに隣接するまで本来の心臓弁に向かって前進させる段階と、(c)ハンドル部分およびシャフトに結合された調整デバイスを回転させてシャフトおよび人工弁を人工心臓弁が所望の植え込み位置に位置するまでハンドル部分に対して遠位方向および/または近位方向に移動させることによって本来の輪内で所望の植え込み位置に人工心臓弁を配置する段階と、および(d)人工心臓弁が所望の植え込み位置に移動した後に、バルーンを膨張させて人工心臓弁を半径方向に拡張させ、本来の心臓弁の輪に係合する段階とを含む。
【0011】
人工器官(例えば、人工心臓弁)を心臓に植え込む例示的な送達装置は、近位端部分および遠位端部分を含む細長いシャフトと、膨張可能バルーンと、弁取付部材とを備える。このバルーンは、シャフトの遠位端部分に取り付けられる。弁取付部材は、バルーン内のシャフトの遠位端部分に設けられており、人工心臓弁が、バルーンに半径方向に圧縮された状態で取り付けられると共に取付部材を囲むとき、人工心臓弁とバルーンの間の摩擦係合を助けるように構成される。取付部材は、バルーン中の膨張流体が流れることができる長手方向に延びる少なくとも1つの流体通路を備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの流体通路は、人工心臓弁の第1の端部および第2の端部にそれぞれ隣接した第1の開口部および第2の開口部を有する。人工弁がバルーン上に圧着状態で取り付けられるとき、バルーン中の膨張流体は、人工弁の第1の端部に対して近位のバルーンの第1の領域から、第1の開口部を通じて内側に向かい、流体通路を通じ、第2の開口部を通じて外側に向かい、人工弁の第2の端部に対して遠位のバルーンの第2の領域の中に流れることができる。
【0013】
人工器官(例えば、人工心臓弁)を心臓に植え込む別の例示的な送達装置は、ハンドル部分と、ハンドル部分から延びる細長いシャフトとを備える。シャフトは、ハンドル部分に結合された近位端部分および半径方向に圧縮された状態で人工心臓弁を取り付けるように構成される遠位端部分を備える。装置は、シャフトの近位端部分に設けられた摺動部材も備える。ハンドル部分が回転部材を備え、この回転部材が、回転部材の回転に基づいて摺動部材の平行運動を引き起こさせるように摺動部材に動作可能に結合されている。シャフト係合部材が、シャフトに設けられ、シャフトを摺動部材に結合する。シャフト係合部材は、第1の状態と第2の状態の間で操作されるように構成されている。第1の状態では、シャフトは、摺動部材および回転部材に対して長手方向に自由に移動できる。第2の状態では、シャフト係合部材はシャフトに摩擦係合すると共に、摺動部材に対してシャフトの回転移動および長手方向移動を防ぎ、回転部材の回転によって摺動部材およびシャフトの対応する長手方向の移動を引き起こすようになっている。人工器官がシャフトの遠位端に設けられると共に、シャフト係合部材がシャフトに係合するように操作されるとき、回転部材を使用して心臓内で人工器官の所望の植え込み位置に対しての人工器官の位置を調整することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、シャフト係合部材は、シャフトに設けられたコレットを備える。このコレットは、シャフトに摩擦係合し、摺動部材に対してシャフトを保持するようにさせることができる可撓性フィンガを有することができ、それによって回転部材を使用してシャフトの遠位端部分に設けられた人工器官の位置を調整することができる。
【0015】
経心尖ルートまたは経大動脈ルートなどを介して人工器官(例えば、人工心臓弁)を心臓内に植え込む別の例示的な送達デバイスは、膨張可能バルーンと、近位止め部と、遠位止め部とを備える。この止め部は、バルーンに対して人工器官の長手方向の移動を制限するように構成され、一方、人工器官は、近位止め部と遠位止め部の間に半径方向に圧縮された状態でバルーン上に設けられる。近位止め部および遠位止め部はそれぞれ、バルーン内に位置すると共に、人工器官が近位止め部と遠位止め部の間で半径方向に圧縮されるとき人工器官に隣接して位置するように構成される端部分を備える。止め部端部分の各々は、それぞれの止め部端部分がより小さい直径へ半径方向に圧縮されることを可能にする少なくとも1つの長手方向に延びるスロットを備える。止め部端部分ごとに少なくとも1つの長手方向に延びるスロットは、バルーン膨張流体が、それぞれの止め部を通じて、人工弁を通じて延びるバルーンの領域の中に半径方向に流れることを可能にするように構成することもできる。
【0016】
いくつかの実施形態では、人工器官が半径方向に圧縮された状態で送達デバイスに設けられるとき、近位止め部および遠位止め部は、バルーン膨張流体が、バルーンの近位部分から、近位止め部内の少なくとも1つのスロットを通じ、人工器官内に配置されるバルーンの中間部分を通じ、遠位止め部内の少なくとも1つのスロットを通じ、バルーンの遠位部分の中に流れることを可能にするように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、バルーンの近位端は近位止め部に取り付けられ、バルーンの遠位端は遠位止め部に取り付けられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、送達デバイスは、外側シャフトをさらに備え、この外側シャフトは、管腔と、外側シャフトの管腔を通じて延びる内側シャフトとを有しており、近位止め部は、外側シャフトの遠位端に取り付けられると共に内側シャフトの周りに配置され、遠位止め部は、内側シャフトの外面に取り付けられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、近位止め部は、外側シャフトの遠位端およびバルーンの近位端に取り付けられる近位部分と、近位部分と端部分の間に延びる中間部分とをさらに備え、この中間部分は、近位部分の外径より小さいと共に、端部分の直径より小さい外径を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、近位止め部は、外側シャフトの遠位端に取り付けられ、膨張流体が少なくとも1つの通路を通じてバルーンの中に流れることを可能にする少なくとも1つの流体通路をさらに備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、遠位止め部が、バルーンの遠位端に取り付けられる遠位部分と、遠位部分と端部分の間に延びる中間部分とをさらに備え、中間部分は、遠位部分の外径より小さいと共に、端部分の直径より小さい外径を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、各止め部の端部分は、人工器官から離れて延びる方向に直径が減少する。
【0023】
いくつかの実施形態では、送達デバイスが、遠位止め部の遠位端に取り付けられたノーズコーンをさらに備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、止め部端部分の少なくとも1つは、人工器官が送達デバイスへ圧着されるときに止め部端部分がより小さい直径へ半径方向に圧縮されることを可能にする少なくとも3つの長手方向スロットを備える。
【0025】
心臓内に人工心臓弁を植え込む例示的な方法は、(a)送達デバイスの遠位端部分を心臓の本来の大動脈弁の中に導入する段階であって、送達デバイスの遠位端部分が、膨張可能バルーンと、バルーン内に少なくとも一部配置される近位止め部および遠位止め部と、バルーンの上で近位止め部と遠位止め部の間に半径方向に圧縮された状態で設けられる半径方向に拡張可能な人工心臓弁と備える、導入する段階と、(b)本来の大動脈弁内で人工心臓弁を半径方向に拡張させるようにバルーンを膨張させる段階であって、バルーンが近位止め部および遠位止め部を通じて半径方向に流れる膨張流体で膨張させられる、段階と、(c)バルーンをしぼませる段階と、および(d)送達デバイスを心臓から撤収する段階とを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、近位止め部は、人工心臓弁の近位端に隣接して位置し、遠位止め部は、人工心臓弁の遠位端に隣接して位置し、人工心臓弁をイントロデューサ外筒を通じて体内に導入している間、人工器官が、近位止め部と遠位止め部の間に長手方向に収容されるようになっている。
【0027】
いくつかの実施形態では、バルーンを膨張させる段階は、膨張流体を、(i)近位止め部内の第1の通路を通じてバルーンの近位部分の中に、(ii)バルーンの近位部分から、近位止め部内の第2の通路を通じて、人工器官内のバルーンの中間部分の中に、および(iii)バルーンの中間部分から、遠位止め部内の通路を通じて、バルーンの遠位部分に中に流させることを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、送達デバイスを心臓の中に導入する前に、人工心臓弁は、送達デバイス上へ半径方向に圧縮された状態へ圧着され、一方、近位止め部および遠位止め部は、同時に半径方向に圧縮される。人工心臓弁は、半径方向に圧縮された状態で第1の外径を有することができ、近位止め部および遠位止め部は、圧着中に第2の外径からおよそ第1の外径まで圧縮させられ得る。圧着の後に圧縮圧力がゆるめられるとき、近位止め部および遠位止め部は、およそ第1の外径からおよそ第2の外径まで弾性的に拡張するように構成することができる。
【0029】
人工器官を患者の中に送達する例示的なシステムは、患者の中に一部挿入されるように構成されるイントロデューサ外筒と、このイントロデューサ外筒の近位端に挿入されるように構成されるローダと、ローダおよびイントロデューサ外筒を通じて患者内に植え込まれる人工器官を身につけている患者の中に送られるように構成される送達デバイスとを備える。ローダは、ローダの中に流体を選択的に導入するフラッシュポートと、ローダ内から流体を選択的に放流する放出ポートとを備え、フラッシュポートと放出ポートの両方は、同じ弾性的な可撓性環状封止部材で封止される。この封止部材は、放出ポートを通じて半径方向に延びる押しタブを備えることができ、放出ポートは、押しタブを半径方向内向きの方向に押し下げることによって選択的に開かれるように構成される。
【0030】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになろう。
[付記項1]
半径方向に圧縮可能および拡張可能な人工心臓弁を心臓の本来の心臓弁に植え込む送達装置であって、
近位端部分および遠位端部分を含む細長いシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端部分に取り付けられる膨張可能バルーンと、
前記バルーン内の前記シャフトの前記遠位端部分に設けられる弁取付部材であって、前記人工心臓弁が、前記バルーン上に半径方向に圧縮された状態で取り付けられると共に前記取付部材を包囲するときに、前記人工心臓弁と前記バルーンの間の摩擦係合を容易にするように構成される弁取付部材と
を備え、前記取付部材が、長手方向に延びる少なくとも1つの流体通路を備え、前記バルーン中の膨張流体は前記流体通路を通って流れることができる送達装置。
[付記項2]
前記取付部材が、前記シャフトに固定されたコイル状ワイヤを備え、前記少なくとも1つの流体通路が、前記コイル状ワイヤの管腔から構成される、付記項1に記載の送達装置。
[付記項3]
前記コイル状ワイヤが、第1のセクションと、第2のセクションと、前記第1のセクションおよび第2のセクションの中間の第3のセクションとを備え、前記第1のセクションおよび第2のセクションのコイルが、前記第3のセクションのコイルのピッチより大きいピッチを有する、付記項2に記載の送達装置。
[付記項4]
前記取付部材が、前記シャフトに取り付けられた内壁と、前記内壁から半径方向に間隔をおいて配置された外壁とを備え、前記少なくとも1つの流体通路が、前記内壁と前記外壁の間に画定された少なくとも1つの管腔を備える、付記項1に記載の送達装置。
[付記項5]
前記取付部材を包囲する圧着状態の前記バルーン上に取り付けられた人工心臓弁と組み合される送達装置であって、
前記少なくとも1つの流体通路が、前記人工心臓弁の第1の端部および第2の端部にそれぞれ隣接した第1の開口部および第2の開口部を有し、前記バルーン中の膨張流体が、前記人工弁の前記第1の端部に対して近位の前記バルーンの第1の領域から、前記第1の開口部を通じて内側に向かって、前記流体通路を通り、前記第2の開口部を通じて外側に向かって、前記人工弁の前記第2の端部に対して遠位の前記バルーンの第2の領域の中に流れることを可能にする、付記項1に記載の送達装置。
[付記項6]
半径方向に圧縮可能および拡張可能な人工心臓弁を心臓の本来の心臓弁に植え込む送達装置であって、
ハンドル部分と、
前記ハンドル部分から延び、前記ハンドル部分に結合された近位端部分および半径方向に圧縮された状態で人工心臓弁を取り付けるように構成される遠位端部分を備える細長いシャフトと、
前記シャフトの前記近位端部分に設けられた摺動部材と
を備え、
前記ハンドル部分が、回転部材を備え、この回転部材が、前記回転部材の回転に基づいて前記摺動部材の平行運動を引き起こさせるように前記摺動部材に動作可能に結合されており、
前記シャフトに設けられると共に、前記シャフトを前記摺動部材に結合するシャフト係合部材をさらに備え、
前記シャフト係合部材が、前記シャフトが前記摺動部材および前記回転部材に対して長手方向に自由に移動できる第1の状態と、前記シャフト係合部材が前記シャフトに摩擦係合すると共に、前記摺動部材に対して前記シャフトの回転移動および長手方向移動を防ぐ第2の状態との間で操作されるように構成されており、前記回転部材の回転によって前記摺動部材および前記シャフトの対応する長手方向の移動を引き起こすようになっている送達装置。
[付記項7]
前記シャフト係合部材がコレットを含む、付記項6に記載の送達装置。
[付記項8]
前記回転部材が、使用者によって係合可能な回転ノブを含む、付記項6に記載の送達装置。
[付記項9]
前記摺動部材に結合された回転ノブをさらに備え、前記ノブが第1の位置と第2の位置との間で回転可能であり、前記ノブが前記第1の位置にあるとき、前記シャフト係合部材が、前記シャフトを前記第1の状態に摩擦保持するようにさせられ、前記ノブが前記第2の位置にあるとき、前記シャフト係合部材が、前記シャフトを解放する、付記項6に記載の送達装置。
[付記項10]
前記ノブと前記シャフト係合部材の間で前記シャフトに設けられた付勢部材をさらに備え、前記ノブが前記第1の位置にあるとき、前記付勢部材が、前記シャフト係合部材に前記シャフトを前記第1の状態に摩擦保持させる付勢力を与え、前記ノブが前記第2の位置にあるとき、前記シャフト係合部材に対しての前記付勢力が減少させられ、前記シャフト係合部材が前記シャフトを解除する、付記項9に記載の送達装置。
【発明を実施するための形態】
【0032】
特定の実施形態では、患者の血管系を介して人工経カテーテル心臓弁を植え込む送達装置は、圧着式人工弁に対してのバルーンの位置および/またはバルーンに対しての圧着式人工弁の位置を調整する調整デバイスを含む。バルーンカテーテルは、ガイド(またはフレックス)カテーテルと同軸に延在することができ、バルーンカテーテルの遠位端におけるバルーン部材は、圧着式人工弁に対して近位または遠位に配置することができる。以下により詳細に説明されるように、バルーン部材および圧着式人工弁は、イントロデューサ外筒を通じて患者の血管系に入ることができ、バルーン部材および圧着式人工弁が体内の適切な位置に到達すると、人工弁とバルーン部材の相対位置は、バルーン部材が人工弁のフレーム内に配置されるように調整され、最終的に人工弁は、治療部位で拡張することができるようになっている。圧着式人工弁がバルーン上に配置されると、人工弁は、展開位置(すなわち、本来の大動脈弁)の近傍に前進させられ、調整デバイスは、所望の展開位置に対しての人工弁の位置を正確に調整または「微調整」するためにさらに使用することができる。
【0033】
図1は、一実施形態による(
図9〜
図11に概略的に示される)人工心臓弁12(例えば、人工大動脈弁)を心臓に送達するための送達装置10を示す。装置10は、一般に、操作可能ガイドカテーテル14(
図3)と、このガイドカテーテル14を通じて延びるバルーンカテーテル16とを含む。ガイドカテーテルは、フレックスカテーテルまたは主カテーテルとも呼ばれ得る。ただし、主カテーテルなる用語の使用は、患者の血管系を通じた屈曲能力またはガイド能力を有さないフレックスカテーテルまたはガイドカテーテルならびに他のカテーテルを含むことを理解されたい。
【0034】
例示の実施形態におけるガイドカテーテル14およびバルーンカテーテル16は、以下に詳細に説明されるように、患者の身体内の植え込み箇所に人工弁12を送達および位置決めするのを助けるように互いに対して長手方向に摺動するようになされている。
【0035】
ガイドカテーテル14は、ハンドル部分20と、ハンドル部分20から延びる細長いガイドチューブまたはシャフト22とを含む(
図3)。
図1は、説明のためにガイドカテーテルシャフト22のない送達装置を示す。
図3は、バルーンカテーテルにわたってハンドル部分20から延びるガイドカテーテルシャフト22を示す。バルーンカテーテル16は、ハンドル部分20に隣接した近位部分24(
図1)と、この近位部分24からハンドル部分20およびガイドチューブ22を通じて延びる細長いシャフト26とを備える。ハンドル部分20は、ハンドル部分20によって画定された管腔と流体連通する内部通路を有するサイドアーム27を備えることができる。
【0036】
膨張可能バルーン28は、バルーンカテーテル16の遠位端に取り付けられる。
図4に示されるように、送達装置10は、送達装置および人工弁を患者の血管系に挿入するためのバルーン28に対して近位に圧着状態で人工弁12を取り付けるように構成されており、このことは、米国特許出願公開第2009/0281619号(2008年10月8日に出願した米国特許出願第12/247,846号)に詳細に説明されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。人工弁12は、バルーン28の位置とは異なる位置に圧着されるので(例えば、この場合、人工弁12は、バルーン28に対して近位に圧着されることが望ましい)、人工弁12は、人工弁12がバルーン28の上部に圧着される場合に可能であるものよりも低い外形に圧着することができる。この低い外形は、外科医が、送達装置(圧着式弁12を含む)を患者の血管系を通じて治療位置までより容易に操縦することを可能にする。圧着式人工弁の低い外形は、腸骨動脈などの特に狭い患者の血管系の部分を通じて操縦するときに特に役立つ。より高さの小さい外形は、安全性を向上させてより幅広い患者集団の治療を可能にもする。
【0037】
ノーズ部品32(
図4)は、送達装置10の遠位端に取り付けることができ、それによって送達装置10が患者の血管系を通じて植え込み箇所へ前進するのを助ける。いくつかの例では、ノーズ部品32が送達装置10の他の要素とは独立して移動できるように別個の細長いシャフトに接続されたノーズ部品32を有することが役立ち得る。ノーズ部品32は、いろいろなプラスチック材料を含む様々な材料から形成することができる。
【0038】
図5に見られるように、例示の構成におけるバルーンカテーテル16は、近位部分24から外側バルーンカテーテルシャフト26およびバルーン28を通じて同軸に延びる内側シャフト34(
図2A)をさらに備える。バルーン28は、外側シャフト26から外側に延びる内側シャフト34の遠位端部分で支持することができ、バルーンの近位端部分36は、外側シャフト26の遠位端に(例えば、適切な接着剤で)固定される(
図5)。内側シャフト34の外径は、環状空間が外側シャフトの全長に沿って内側シャフトと外側シャフトの間に画定されているような大きさに作製される。バルーンカテーテルの近位部分24は、バルーンを膨張させるための流体源(例えば、生理食塩水)に流体的に接続可能である流体通路(図示せず)を形成することができる。この流体通路は、内側シャフト34と外側シャフト26の間の環状空間と流体連通しており、流体源からの流体は、流体通路を通じ、シャフト間の空間を通じ、バルーン28の中に流れることができ、バルーン28を膨張させ人工弁12を展開するようになっている。
【0039】
近位部分24は、内側シャフト34およびノーズコーン32を通じて同軸に延在できるガイドワイヤ(図示せず)を受け入れる大きさに形成される内側シャフト34の管腔38と流体連通する内腔を画定もする。
【0040】
バルーンカテーテルの内側シャフト34および外側シャフト26は、ナイロン、編組ステンレス鋼ワイヤ、または(Pebax(登録商標)として市販の)ポリエーテルブロックアミドなどの様々な適切な材料のいずれかから形成することができる。シャフト26、34は、シャフトの柔軟性をその長さに沿って変えるために異なる材料から形成される長手方向セクションを有することができる。内側シャフト34は、Teflon(登録商標)から形成された内側ライナまたは内側層を有することができ、ガイドワイヤとの滑り摩擦を最小にする。
【0041】
ガイドカテーテルシャフト22の遠位端部分は、操作可能セクション68(
図3)を備え、その湾曲は、操作者によって調整することができ、それによって患者の血管系、特に大動脈弓を通じて装置をガイドするのを援助する。例示の実施形態におけるハンドル20は、遠位ハンドル部分46および近位ハンドル部分48を備える。遠位ハンドル部分46は、ガイドカテーテルシャフト22の遠位端部分の湾曲を調整する機構として、および使用者がガイドカテーテルシャフト22の遠位端の曲がりの相対的な量を計測することを可能にする曲がり指示装置として機能する。加えて、曲がり指示装置は、ハンドルにおける視覚および触覚の応答を装置に与え、この装置は、外科医に、カテーテルの遠位端の曲がりの量を決定するための即時的かつ直接的な方法を提供する。
【0042】
遠位ハンドル部分46は、操作可能セクション68に動作可能に接続することができ、操作者がハンドル部分の手動調整によって操作可能セクションの湾曲を調整することを可能にする調整機構として機能する。さらに説明すると、ハンドル部分46は、曲がり活性化部材50と、インジケータピン52と、円筒形本体またはハウジング54とを備える。
図2Aおよび
図2Bに示されるように、曲がり活性化部材50は、調整ノブ56と、このノブからハウジング54の中に近位方向に延びるシャフト58とを備える。ガイドカテーテルシャフト22の近位端部分は、ハウジング54の中央管腔の中に延びると共にその中で固定される。内側スリーブ70は、ハウジング54の内部のガイドカテーテルシャフト22の一部を囲む。ねじ付き摺動ナット72は、スリーブ70上に設けられ、スリーブ70に対して摺動可能である。摺動ナット72は、シャフト58の雌ねじ60と噛み合う雄ねじが形成されている。
【0043】
摺動ナット72は、ナットの内面に形成されると共にその長さだけ延びる2つのスロットが形成されている。スリーブ70は、摺動ナットがスリーブに配置されるときに摺動ナット72のスロットと一直線になる長手方向に延びるスロットを形成することができる。細長いロッドまたはピン76の形態であり得るそれぞれの細長いナットガイドが、スロットごとに設けられる。ナットガイド76は、摺動ナット72内のそれぞれのスロットの中に半径方向に延びて、スリーブ70に対しての摺動ナット72の回転を防ぐ。この構成により、調整ノブ56を(時計回りまたは反時計回りに)回転させることによって、摺動ナット72を両矢印74によって示される方向にスリーブ70に対して長手方向に移動させる。
【0044】
1つまたは複数の引張りワイヤ78(
図2A)は、調整ノブ56を操作可能セクション68に結合し、調整ノブの回転に基づいて操作可能セクションの湾曲を調整する。例えば、引張りワイヤ78の近位端部分は、保持ピンの中に延びることができ、引張りワイヤの近位端の周りにピンを圧着することなどによって保持ピンに固定することができ、このピンは、摺動ナット72内のスロットに設けられている。引張りワイヤは、このピンから摺動ナット内のスロット、スリーブ70内のスロットを通じ、シャフト22内の引張りワイヤ管腔の中に入り、この引張りワイヤ管腔を通じて延びる。引張りワイヤの遠位端部分は、操作可能セクション68の遠位端部分に固定される。
【0045】
このピンは、引張りワイヤの近位端78を保持しており、摺動ナット72内のスロット内で捕らえられる。したがって、調整ノブ56を回転して摺動ナット72を近位方向に移動させるとき、引張りワイヤも近位方向に移動する。引張りワイヤは、操作可能セクション68の遠位端をハンドル部分に向かって引っ張り戻し、それによって操作可能セクションを曲げ、湾曲の半径を減少させる。調整ノブ56と摺動ナット72との間の摩擦は、引張りワイヤをぴんと張った状態に保つのに十分であり、したがって操作者が調整ノブ56を解放する場合に操作可能セクションの屈曲形状を保持する。調整ノブ56を反対方向に回転して摺動ナット72を遠位方向に移動させるとき、引張りワイヤの張力は解放される。操作可能セクション68の復元性によって、引張りワイヤの張力が減少するときに操作可能なものはその通常の反っていない形状に戻される。引張りワイヤは摺動ナット72にしっかり固定されない(このピンはナット中のスロット内で移動できる)ので、遠位方向の摺動ナットの移動は、引張りワイヤの端を押さず、それをゆがませる。代わりに、ピンは、ノブ56が引張りワイヤの張力を減少させるように調整されるときに摺動ナット72のスロット内で浮くことが可能にされ、引張りワイヤのバックリングを防ぐ。
【0046】
特定の実施形態では、反っていない形状における操作可能セクション68は、わずかに曲がっており、その完全に曲がった位置において、操作可能セクションは、大動脈弓の形状に概して一致する。他の実施形態では、操作可能セクションは、その反っていない位置において実質的に直線であり得る。
【0047】
遠位ハンドル部分46は、操作可能セクション68の湾曲を調整するようになされている他の構成を有してもよい。そのような代替的ハンドル構成の一つは、同時係属中の米国特許出願第11/152,288号(米国特許出願公開第2007/0005131号によって発行)に示されており、これは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。上述の操作可能セクションおよびハンドルの構成に関する追加の詳細は、米国特許出願第11/852977号(米国特許出願第2008/0065011号として発行)に見出すことができ、これは、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
シャフト58は、雄ねじ付き表面部分62も備える。
図2Bに示されるように、インジケータピン52のベース部64は、シャフト58の雄ねじ付き表面部分62と噛み合う。シャフト58は、本体54の中に延び、インジケータピン52は雄ねじ付き表面部分62と本体54の間に閉じ込められ、インジケータピン52の一部がハンドルの長手方向スロット66の中に延びている。ノブ56を回転してガイドカテーテルシャフト22の遠位端の湾曲を増大させるとき、インジケータピン52は、曲がり活性化部材の雄ねじ付き部分62を辿り、スロット66の内部で近位方向に移動する。ノブ56の回転量が大きくなるほど、インジケータピン52は、近位ハンドル部分46の近位端に向かってさらに移動する。逆に、ノブ56を反対方向に回転させることによって、ガイドカテーテルシャフト22の遠位端の湾曲を減少させ(すなわち、ガイドカテーテルシャフトを真っ直ぐにし)、遠位ハンドル部分46の遠位端に向かってのインジケータピン52の対応する移動が引き起こされる。
【0049】
遠位ハンドル部分46の本体54の外面は、視覚的なしるしに対してのインジケータピン52の位置に基づいてガイドカテーテルシャフト22の遠位端の曲がりの量を指し示すスロット66に隣接した視覚的なしるしを含むことができる。そのようなしるしは、様々なやり方のいずれかで曲がりの量を特定することができる。例えば、本体54の外面は、数字スケールに対してのインジケータピン52の位置に基づいてガイドカテーテルシャフト22の湾曲量を示すスロットに隣接した一連の数字(例えば、0〜10)を含むことができる。
【0050】
上記の通り、送達装置が患者の血管系に導入されるとき、圧着式人工弁12は、バルーン28に対して近位に配置される(
図4)。治療部位でバルーン28を拡張すると共に人工弁12を展開する前に、人工弁12は、バルーンに対して移動させられて(またはその逆)、人工弁を展開(拡張)するためのバルーン上に圧着式人工弁を配置する。以下に述べられるように、近位ハンドル部分48は、人工弁12のフレーム内の位置に近位方向にバルーン28を移動させ、およびさらに、バルーンおよび人工弁を所望の展開位置に正確に配置するために使用できる調整デバイスとして働く。
【0051】
図2Aおよび
図2Bに示されるように、近位ハンドル部分48は、外側ハウジング80および調整機構82を備える。調整機構82は、ガイドカテーテルシャフト22に対してのバルーンカテーテルシャフト26の軸方向位置を調整するように構成されており、調整ノブ84、およびハウジング80の中に遠位方向に延びるシャフト86を備える。内側支持体88が、ハウジング80内でバルーンカテーテルシャフト26に取り付けられ、この内側支持体88は、(スライダまたは摺動機構とも呼ばれる)(
図22にも示される)内側シャフト90を取り付ける。内側シャフト90は、調整機構82の内面に沿って延びる雌ねじ94と噛み合う遠位端部分92が形成されている雄ねじを有する。内側シャフト90は、保証機構98を取り付ける近位端部分96をさらに備え、これは、さらに以下に述べられるように調整機構82の使用のために近位ハンドル部分48に対してのバルーンカテーテルシャフト26の位置を保持するように構成される。内側シャフト90は、シャフト86の回転によって内側シャフト90をハンドル内で軸方向に移動させるように内側支持体88に結合することができる。例えば、内側支持体88は、軸方向に延びるロッドまたはレールを有することができ、このロッドまたはレールは、内側シャフト90の内面に形成されたスロットの中に延びる。このロッドまたはレールは、内側シャフト90の回転を防ぐが、シャフト86の回転に基づいてそれを軸方向に移動させることを可能にする。
【0052】
保証機構98は、内側シャフトの近位端部分96の雄ねじと噛み合う雌ねじを含む。コレット102の形態のプッシャ要素100およびシャフト係合部材は、バルーンカテーテルシャフト26上に近位端部分96内で取り付けられる。コレット102は、さらに以下に述べられるように、コレットによってバルーンカテーテルシャフトが長手方向および回転方向に自由に移動することが可能である第1の状態と、このコレットがバルーンカテーテルシャフトに摩擦係合し、内側シャフト90に対してのバルーンカテーテルシャフトの回転移動および長手方向移動を防ぐ第2の状態との間で保証機構によって操作されるように構成されている。
【0053】
図6および
図7に最もよく示されるように、コレット102は、遠位端部分104と、拡大近位端部分106と、バルーンカテーテルシャフト26を受け入れる管腔108とを備える。複数の軸方向に延びる周方向に間隔をおいて配置されるスロット110は、コレットの近位端から遠位端部分104上の位置まで延び、それによって複数の可撓性フィンガ112を形成する。近位端部分は、プッシャ要素100の対応するテーパ状端面に係合するテーパ状端面114を形成することができる(
図2A)。
【0054】
上述のように、保証機構98は、近位ハンドル部分48に対しての(軸方向および回転方向の)バルーンカテーテルシャフト26の移動を保持するように動作可能である。さらに説明すると、保証機構98は、(
図2Aおよび
図2Bに示された)近位位置とノブ84の隣接端により近い遠位位置の間で移動可能である。近位位置では、コレット102は、もしあれば、コレット102、ハンドル20全体、およびガイドカテーテルシャフト22に対して自由に摺動できるバルーンカテーテルシャフト26に対して力をほとんど加えない。保証機構98が、ノブ84により近いその遠位位置へ移動するように回転させられるとき、保証機構は、プッシャ要素100をコレット102の近位端に対して強制する。プッシャ要素のテーパ状表面は、コレットの対応するテーパ状表面114を押し、フィンガ112をバルーンカテーテルシャフト26の外面に対して半径方向内向きに押しやる。バルーンカテーテルシャフトに対してのコレット102の保持力は、内側シャフト90に対してバルーンカテーテルシャフトをロックする。ロックされた位置において、調整ノブ84の回転によって、内側シャフト90およびバルーンカテーテルシャフト26は、(ノブ84が回転する方向に応じて近位方向または遠位方向に)ガイドカテーテルシャフト22に対して軸方向に移動させられる。
【0055】
調整ノブ84は、バルーン28上に人工弁12を配置するのに利用することができ、および/または人工弁12がバルーン上にあると、人工弁およびバルーンを本来の弁輪内の所望の展開箇所に配置するのに利用することができる。人工弁12を本来の大動脈弁に植え込む特定の一方法は、以下の通りである。人工弁12は、バルーンの近位端28すぐ隣接してまたはバルーンの近位端にわずかに重なり合ってバルーンカテーテルシャフト26の取付領域120(
図4および
図5)にまず圧着することができる。人工弁の近位端は、ガイドカテーテルシャフト22の遠位端122当接することができ(
図4)、これは、送達装置および人工弁がイントロデューサ外筒を通じて挿入されるときにバルーンカテーテルシャフト上で所定の位置に人工弁を維持する。人工弁12は、大腿切断の処置において、まず、イントロデューサ外筒を大腿動脈の中に挿入し、イントロデューサ外筒を通じて患者の血管系の中に送達装置を押すことによって送達することができる。
【0056】
人工弁12が患者の血管系の最も狭い部分(例えば、腸骨動脈)を通じて前進させられた後、人工弁12は、バルーン28上へ移動できる。例えば、人工弁をバルーンへ移動させるのに好都合な位置は、下行大動脈である。人工弁は、例えば、(ガイドカテーテルシャフト22を所定の位置に保持する)ハンドル部分46を安定して保持し、バルーンカテーテルシャフト26をガイドカテーテルシャフト22に対して近位方向に移動させることによってバルーン上へ移動することができる。バルーンカテーテルシャフトが近位方向に移動するとき、
図9に示されるように、ガイドカテーテルシャフトの遠位端122は、人工弁を押し、バルーン28が人工弁を通じて近位方向に移動することを可能にし、それによってバルーン上で人工弁を中心に置く。バルーンカテーテルシャフトは、使用者がバルーン上の所望の位置に人工弁を配置するのを助けるために1つまたは複数のX線不透過性マーカーを備えてもよい。シャフト26を保持するために保証機構98が係合されていない場合、バルーンカテーテルシャフト26は、バルーンカテーテルシャフトを近位方向に単に摺動する/引っ張ることによって近位方向に移動することができる。シャフト26のより正確な制御のために、保証機構98は、シャフト26を保持するように係合することができ、その場合、調整ノブ84は、シャフト26およびバルーン28の移動を行うように回転させられる。
【0057】
図5に示されるように、送達装置は、バルーン28内でシャフト34の外面に固定される取付部材124をさらに備えることができる。この取付部材は、人工弁とバルーンの外面の間の摩擦係合を促進することによってバルーン上で所定の位置に人工弁を保持するのに役立つ。取付部材124は、特に、典型的には石灰化しており、人工弁の移動に対して抵抗をもたらす本来の弁膜(leaflet)を横切るときに、展開位置に人工弁を最終的に配置するために所定の位置に人工弁を保持するのに役立つ。ノーズコーン32は、バルーンの内部の近位部分126を含むことができ、それによって人工弁を配置するのを援助する。望ましくは、近位部分126は、人工弁の遠位端に隣接したテーパ状部材の近位端で最大直径を有し(
図9)、ノーズコーン32に遠位端に向かう方向に先細りしているテーパ状部材を含む。テーパ状部材126は、人工弁が人工弁の遠位端が本来の弁膜に接触することから守ることによって石灰化した本来の弁膜を通じて押されるときにノーズコーンと人工弁の間の移行セクションとして働く。
図9は、その近位端でテーパ状部材126の直径よりわずかに大きい圧着された直径を有する人工弁を示すが、テーパ状部材126は、圧着式人工弁の直径と同じもしくはその直径よりわずかに大きい、または圧着式人工弁の金属フレームの直径と少なくとも同じもしくはその直径よりわずかに大きい直径をその近位端で有してもよい。
【0058】
図9に示されるように、望ましくは、人工弁は、人工弁の遠位端がノーズコーン部分126からわずかに間隔をおいて配置されるように展開のためにバルーン上に配置される。
図9に示されるように人工弁が配置されるとき、ガイドカテーテルシャフト22は、バルーンカテーテルシャフト26に対して近位に移動することができ、それによってガイドカテーテルシャフトは、バルーン28の膨張可能部分を覆っておらず、したがってバルーンの膨張に干渉しない。
【0059】
人工弁12が大動脈弓を通じて上行大動脈の中に案内されるとき、操作可能セクション68の湾曲を、(詳細に上述したように)調整することができ、それによって血管系のその部分を通じて人工弁をガイドまたは操作するのを助ける。人工弁が大動脈弁輪内の展開位置に向かってより近くに移動させられるとき、送達装置の曲がったセクションのため、ハンドル部分20を押したり引いたりすることによって人工弁の正確な位置を制御することが次第により難しくなる。ハンドル部分20を押したり引いたりするとき、押す力/引く力が送達装置の遠位端へ伝達される前に、たるみは、送達装置の曲がったセクションから取り除かれる。したがって、人工弁は、「ジャンプする」すなわち急に移動する傾向があり、人工弁の正確な位置決めを難しくさせる。
【0060】
大動脈弁輪内で人工弁をより精確に位置決めするために、人工弁12は、ハンドル20を押す/引くことによって(例えば、人工弁の流入端部が左心室にあると共に、人工弁の流出端部が大動脈にあるように大動脈弁輪内で)その最終的な展開位置にできるだけ近く置かれ、調整ノブ84を用いて人工弁の最終的な位置決めが達成される。調整ノブ84を使用するために、保証機構98は、上記のようにそのロックされた位置に置かれる。次いで、ハンドル20は、安定して保持され(それによってガイドカテーテルシャフト22を所定の位置に保持し)、一方で、調整ノブ84を回転させてバルーンカテーテルシャフト26、およびしたがって人工弁を遠位方向または近位方向に移動させる。例えば、ノブを第1の方向(例えば、時計回り)に回転させることによって人工弁を大動脈の中に近位方向に移動させ、一方、ノブを第2の、反対方向(例えば、反時計回り)に回転することによって人工弁を左心室に向かって遠位方向に前進させる。有利には、調整ノブ84の操作は、最終的な位置決めのために送達装置を押したり引いたりときに起こり得る突然の急な移動がない正確で制御されたやり方で人工弁を移動させるのに効果的である。
【0061】
人工弁が展開位置にあるとき、バルーン28が膨張させられて(
図11に示されるように)人工弁12を拡張し、それによって本来の輪に接触させる。拡張された人工弁は、周囲組織に対して弁のフレームの半径方向外向きの力によって本来の大動脈弁輪内に固着される。
【0062】
バルーン内の取付部材124は、膨張流体(例えば、生理食塩水)がバルーンの近位端からバルーンの遠位端へ妨げられず流れることを可能にするように構成される。
図8に最もよく示されるように、例えば、取付部材124は、第1のセクション124a、第2のセクション124b、第3のセクション124c、第4のセクション124d、および第5のセクション124eを有する巻き針(例えば、金属コイル)を含む。人工弁12が展開のためにバルーンに配置されるとき、第2のセクション124bは人工弁の近位端にすぐ隣接しており、第4のセクション124dは人工弁の遠位端にすぐ隣接している。取付部材の近位端および遠位端にそれぞれある第1のセクション124aおよび第5のセクション124eは、バルーンカテーテルシャフトに固定される。第2、第3および第4のセクション124b、124cおよび124dは、それぞれ第1および第5のセクションより直径が比較的大きく、バルーンカテーテルシャフトの外面から半径方向に間隔をおいて配置される。見られるように、第2のセクション124bおよび第4のセクション124dは、隣接するコイル間に空間が形成されている。第3のセクションは、隣接するコイル間により小さい空間が形成されていてもよく(または空間がなくてもよく)、人工弁を展開位置に最終的に位置決めする間にバルーン上で人工弁を保持するのに利用可能な表面積を最大化するようになっている。
【0063】
図10を参照すると、第2のセクション124bおよび第4のセクション124dのコイル間の間隔によって、膨張流体が、第2のセクション124bのコイルを通じて半径方向内向きに流れ、第3のセクション124cの管腔を通じて軸方向に流れ、第4のセクション124dのコイルを通じて半径方向外向きに流れ、矢印128の方向にバルーンの遠位セクションに入ることを可能にする。ノーズコーン部分126は、1つまたは複数のスロット130がやはり形成されていてもよく、この1つまたは複数のスロット130は、膨張流体が近位ノーズコーン部分126を通り越してバルーンの遠位セクションの中により容易に流れることを可能にする。例示の実施形態では、近位ノーズコーン部分126は、周方向に間隔をおいて配置された3つのスロット130を有する。膨張流体は、バルーンの近位セクションおよび遠位セクションをほぼ同じ割合で加圧しおよび膨張させることができるので、バルーンは、人工弁の制御された均一な拡張のためにより均一に膨張できる。
【0064】
図12〜
図14は、別の実施形態による取付部材140を示す。取付部材140は、円筒形内壁142と、円筒形外壁144と、内壁および外壁を分ける角度的に間隔をおいて配置された複数のリブ146とを備える。内壁142は、バルーン内のシャフト34の外面に固定される。特定の実施形態では、取付部材140は、人工弁がバルーン上へ移動させられるときに半径方向に圧縮しない比較的硬質の材料(例えば、ポリウレタンまたは別の適切なプラスチック)で作製することができる。
図16に示されるように、バルーンの膨張中、バルーンの近位セクションにおける膨張流体は、矢印128の方向に、取付部材の内壁と外壁の間の空間148を通じて近位ノーズコーン部分126内の1つまたは複数のスロット130を通ってバルーンの遠位セクションの中に流れることができる。
【0065】
調整機構82および内側シャフト90のねじ付き部分の位置が逆になり得ることに留意されたい。すなわち、調整機構82は、内側シャフト90の雌ねじ付き部分に係合する雄ねじ付き部分を有することができる。加えて、バルーン28が最初に人工弁12に対して近位に配置される実施形態については、調整機構82は、展開のために人工弁をバルーン上で中心に置くために圧着式人工弁に対して遠位にバルーンを移動させるために使用することができる。
【0066】
図56および
図57は、別の実施形態による人工心臓弁700を示す。心臓弁700は、フレーム702またはステント702と、フレームによって支持された弁膜構造704とを備える。特定の実施形態では、心臓弁700は、本来の大動脈弁に植え込まれるようになされ、例えば、上記の送達装置10を用いて体内に植え込むことができる。人工弁700は、本明細書に記載の他の送達装置のいずれかを用いて体内に植え込むこともできる。したがって、典型的には、フレーム702は、典型的にはステンレス鋼、ニッケル基合金(例えば、ニッケルコバルトクロム合金)、ポリマー、またはそれらの組み合せなどの塑性的に拡張可能な材料から構成される。他の実施形態では、人工弁12、700は、ニチノールなどの自己拡張性材料から作製されたフレームを有する自己拡張型人工弁であり得る。人工弁が自己拡張弁であるとき、送達装置のバルーンは、身体を通じて送達するために半径方向に圧縮された状態で人工弁を保持する外筒または同様の保持デバイスと置き換えることができる。人工弁が植え込み位置にあるときに、人工弁は外筒から解放でき、したがって人工弁の機能的サイズに拡張することができる。本明細書に開示した送達装置のいずれかが自己拡張弁と共に使用するのに適合し得ることに留意されたい。
【0067】
図18は、10’で示される送達デバイスの代替的実施形態の遠位端セクションの分解斜視図である。送達デバイス10’は、送達デバイス10と多くの類似点を共有しており、したがって、送達デバイス10の構成要素と同じである送達デバイス10’の構成要素は、同じ参照符号が与えられており、さらには説明しない。送達デバイス10と送達デバイス10’との間の違いの1つは、後者が、調整ノブ84に対してバルーンカテーテルシャフト26をロック/固定するために異なる機構を含むことである。
【0068】
図18および
図19を参照すると、バルーンカテーテルシャフト用のロック機構は、インナナット152、ワッシャ154、およびインナナット152の内部に設けられたリング156、コイルばね158の形態の付勢部材、プッシャ要素160、およびコレット102の形態のシャフト係合部材を収容する調整ノブ150を備える。
図20および
図21に最もよく示されるように、インナナット152は、内側シャフト90の遠位端部分96の雄ねじ(
図22)に係合する雌ねじ162(
図24)を備える。プッシャ要素160は、近位シャフト164と、コレット102の近位端部分106を支える拡大した遠位端部分166とを備える。ばね158は、プッシャ要素160のシャフト164に設けられ、リング156を支える近位端およびプッシャ要素160の遠位端部分166を支える遠位端を有する。
【0069】
図25〜
図27を参照すると、調整ノブ150は、長手方向に延び周方向に間隔をおいて配置される複数の突出部168がノブの内面に形成されている。ノブ150の遠位部分は、使用者が握持するための1つまたは複数の半径方向に延びる突出部170を備え、ノブの近位部分は、半環状部分172を備える。ノブ150は、インナナット152を覆って同軸に延在し、突出部168はナット152の外面上のそれぞれの溝174と噛み合い、ノブの回転によって対応するナット152の回転を引き起こすようになっている。
【0070】
送達デバイス10’は、植え込み箇所の近傍に人工弁を送達する送達デバイス10と共に上述したやり方で使用されてもよい。人工弁の精密な位置決めのためにバルーンカテーテルシャフト26の移動を保持するべく、ノブ150は回転させられ、これによってインナナット152の回転が引き起こされる。インナナット152は、シャフト90の遠位端部分96にある雄ねじに沿って遠位方向に平行移動するようになされている。ナット152が遠位方向に移動するとき、ナット152はリング156を押し、このリング156は次にばね158を押す。ばね158は、プッシャ要素160の遠位端部分166を押し付け、コレット102に対してプッシャ要素を強制する。コレットに対してのプッシャ要素160の押す力によって、コレットのコレットフィンガ112をバルーンカテーテルシャフト26に摩擦係合させ、それによって内側シャフト90に対してバルーンカテーテルシャフトを保持する。ロックされた位置において、調整ノブ84の回転によって、内側シャフト90およびバルーンカテーテルシャフト26をガイドカテーテルシャフト22に対して軸方向に(ノブ84が回転する方向に応じて近位方向または遠位方向に)移動させる。
【0071】
望ましくは、ばね158の付勢力は、360度未満のノブの回転などのノブ150の比較的小さい回転度でバルーンカテーテルシャフトにコレットをロックするのに十分である。例示の実施形態では、ノブ150は、(コレットがバルーンカテーテルシャフトを保持しない)非ロック位置から(コレットがバルーンカテーテルシャフトに摩擦係合し、バルーンカテーテルシャフトを保持する)ロックされた位置まで180度未満だけ回転させられる。逆に、同じ回転度によってロックされた位置から非ロック位置まで反対方向にノブ150を回転させることによってばね158にプッシャ要素およびコレットに対する付勢力をゆるめることを可能にし、それによってコレットに対してのバルーンカテーテルシャフトの軸方向移動を可能にする。
【0072】
図21に最もよく示されるように、インジケータリング176は、ノブ84の近位端に隣接してシャフト90上に設けられている。インジケータリング176は、ノブ150の半環壁172内に着座し、半環状壁172の両端180の間の環状空間(
図27)の中に延在するインジケータタブ178を備える。
図25に最もよく示されるように、ノブ150の外面は、バルーンカテーテルシャフト26が調整ノブ84に対してロック状態にあるのかを示す視覚的なしるしを含むことができる。例示の実施では、例えば、第1のしるし182aは半環状壁172の一端180に隣接して位置し、第2のしるし182bは半環状壁172の他端180に隣接して位置する。第1のしるし182aは、(バルーンカテーテルシャフトがロック状態であることを示す)ロックが閉じられていることの図を用いた表示であり、第2のしるし182bは、(バルーンカテーテルシャフトがロックされていない状態であることを示す)ロックが開いていることの図を用いた表示である。しかし、しるしは、ロックされた状態およびロックされていない状態を示す様々な他の形態(文章および/またはグラフィック)をとることができることを理解されたい。
【0073】
インジケータリング176は、ノブ150に対して回転固定されるので、インジケータタブ178は、半環状壁172の両端180の間の環状空間によって定められる円弧長によってノブ150の回転を制限する(例示の実施形態では約170度)。ノブ150が第1の方向(示した例では反時計回り)に回転するとき、インジケータタブ178は、しるし182bに隣接した壁端180に接触し、ノブ150のさらなる回転を妨げる。この位置において、コレット102は、バルーンカテーテルシャフト26に摩擦係合せず、バルーンカテーテルシャフト26は、近位ハンドル部分48に対して自由に移動することができる。ノブ150が第2の方向(示した例では時計回り)に回転するとき、インジケータタブ178は、しるし182aに隣接した壁端180に接触し、ノブ150のさらなる回転を妨げる。この位置において、コレット102は、上記のやり方でバルーンカテーテルシャフトに摩擦係合するようにされて、近位ハンドル部分48に対してのバルーンカテーテルシャフトの軸方向移動および回転移動を保持する。
【0074】
図29〜
図31は、ステントまたはステント留置式人工弁などの腔内インプラントを植え込むために使用できる別の実施形態によるバルーンカテーテル200の遠位端部分を示す。バルーンカテーテル200の特徴は、本明細書に開示した送達装置(例えば、
図1の装置10)において実施できる。図では、人工弁が概略的に示されており、参照符号202によって特定されている。バルーンカテーテル200は、バルーンカテーテルシャフト204を含む。シャフト204の近位端は、ハンドル(図示せず)に取り付けられ、シャフトの遠位端は、バルーン組立体206を取り付ける。
【0075】
バルーン組立体206は、外側バルーン210の内部に設けられた内側バルーン208を備える。内側バルーン208は、人工弁202の拡張を制御するように成形されており、一方、外側バルーンは、人工弁の最終的な拡張形状を定めるように成形されている。例えば、
図30に示されるように、内側バルーン208は、膨張時に「犬の骨」形状を有することができ、内側に先細って小径のほぼ円筒形の中央部分を形成する球状の端部分を有する。内側バルーン208の形状は、人工弁の軸方向の移動を規制するより大きい端部分により人工弁が拡張されるときにバルーンに対して人工弁の位置を維持するのを助ける。シャフト204の遠位端部分は、膨張流体がシャフト204の管腔から内側バルーン208の中に流れることを可能にする開口部を有することができる。
【0076】
内側バルーン208は、小さい細孔または開口部を形成することができ、この小さい細孔または開口部は、内側バルーンの適切な膨張を可能にし、矢印212によって示されるように、膨張流体が2つのバルーンの間の空間の中に外向きに流れて外側バルーンを膨張させることを可能にするサイズに作製されている。内側バルーンが膨張させられ、これにより人工弁202を部分的に拡張させた(
図30)後、膨張流体は、外側バルーン210の膨張を開始する(
図31)。外側バルーンの膨張は、人工弁202を周囲組織に対してその最終的な所望の形状(例えば、
図31に示されるように円筒形)にさらに拡張させる。そのような2段階の人工弁202の拡張では、シャフト204に対しての人工弁の位置は、その初期拡張中に人工弁の軸方向移動を制限する内側バルーンにより制御することができる。
【0077】
代替的実施形態では、内側バルーン中の細孔または孔の代わりまたはそれに加えて、内側バルーンは、内側バルーンが所望のサイズまで膨張させられた後に所定の圧力(例えば、1〜5バール)で破裂するように構成されてもよい。内側バルーンの破壊後、膨張流体は、外側バルーンを膨張させ始めることができる。
【0078】
図32は、拡張型人工弁を植え込むのに使用できる別の実施形態による送達システム300を開示する。具体的には、送達システム300は、経心尖処置において心臓の中に人工弁を導入するのに使用されるようになされており、これは、2010年7月13日に出願した同時係属出願の米国特許出願第12/835,555号(米国特許出願公開第2011/0015729号)に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。経心尖処置では、人工弁が、心臓の尖部において外科的開口部を通じて左心室に導入される。送達システム300は、経大動脈処置における心臓の中に人工弁を導入するのに同様に使用することができる。経大動脈処置では、人工弁は、上行大動脈における外科的切開を通じて、例えば、部分J胸骨切開(partial J-sternotomy)または右胸骨傍小開胸(right parasternal mini-thoracotomy)を通じて大動脈の中に導入され、次いで上行大動脈を通じて心臓に向かって前進させられる。
【0079】
送達システムは、バルーンカテーテル302と、イントロデューサ304と、ローダ306とを備える。バルーンカテーテル302は、ハンドル308と、このハンドルから延びる外側フラッシュシャフト310と、ハンドル308から外側シャフト310を通じて同軸に延びる関節式メインシャフト312と、ハンドルから関節式シャフト312を通じて同軸に延びる内側シャフト313と、シャフト312に設けられた膨張可能バルーン314と、バルーンに対して遠位で内側シャフト313に設けられたノーズコーン316とを備える。
【0080】
図33に最もよく示されるように、プッシャ要素318、またはストップ部材318は、バルーンの近位部分内でシャフト312に取り付けられ、ノーズコーンは、バルーンの遠位部分の中に延びるストップ部材320が形成されている。プッシャ要素318の遠位端とストップ部材320の近位端の間の間隔は、バルーン上に圧着される人工弁を一部受け入れるサイズに作製された環状空間を画定する。使用時、人工弁は、プッシャ要素318とストップ部材320の間でバルーンの上へ圧着され、人工弁の近位端がプッシャ要素に当接できると共に、人工弁の遠位端がストップ部材に当接できるようになっている(
図47Aに示された実施形態に示されている)。このように、これらの2つの要素は、人工弁がイントロデューサ304を通じて挿入されるときにバルーン上で人工弁の位置を保持するのを援助する。
【0081】
図32に示されるように、イントロデューサ304は、イントロデューサハウジング322と、このハウジング322から延びる遠位外筒324とを備える。イントロデューサ304は、バルーンカテーテル302を患者の身体に導入または挿入するために使用される。
図34に示されるように、イントロデューサハウジング322は、1つまたは複数の弁326を収容し、ローダを取り付けるための近位キャップ328を備える。ローダ306は、バルーンカテーテルとイントロデューサの間の結合をもたらす。ローダ306は、イントロデューサの近位キャップ328に係合する2つの保持アーム330を含む。バルーンカテーテルおよび人工弁をイントロデューサに挿入するのを援助するためにローダを用いるやり方は、
図51〜
図53に示された実施形態を参照して以下に説明される。
【0082】
図36〜
図39には、ハンドル308の構成が示されている。ハンドル308は、ハウジング332含み、このハウジング332は、バルーンカテーテルシャフト312の効果的に制御された反りまたは関節をもたらす機構を収容する。例示の実施形態における機構は、それぞれ、シャフト334と、摺動機構336と、ばね338と、近位ラック歯車340および遠位ラック歯車342とを備える。シャフト334の近位端部分は、ハンドル内部の2つのねじ付きナット364a、364bの雌ねじに係合する雄ねじが形成されている。シャフト334は、ハンドル内で回転できるが、ハンドル内の平行運動は規制される。望ましくは、ナット364は、反対のねじを有し、対応する雄ねじを有するシャフト334のそれぞれの部分に配置される。例えば、近位ナット364aは、左ねじを有することができ、シャフトの左ねじに対して配置され、一方、遠位ナット364bは、右ねじを有することができ、シャフトの右ねじに対して配置される。これによりそれが回転するとナット364をシャフト334のねじ山に沿って反対方向に平行移動させる。
図39に最もよく示されるように、各ナット364は、ナットの全く反対側に一対の半径方向に延びるフランジ380を有する。ハウジングの内部は、ハウジングの対向した内部面に一対の細長いスロット382が形成されている(そのうちの1つが
図39に示されている)。各ナット364の対向したフランジ380は、それぞれのスロット382の中に延びることができ、これによってシャフト334の回転に基づくナットの回転を防ぐ。このように、ナット364は、それが回転するとシャフト334の縦方向に移動するようにさせられる。
【0083】
シャフト334の遠位端部分は、近位平歯車344と、遠位平歯車346と、近位クラッチ348と、遠位クラッチ350とを支持する。シャフト334は、クラッチ348、350の中央穴にある対応する平坦部に係合する平坦部366を有し、このクラッチ348、350は、クラッチの1つが、以下に説明されるようにそれぞれの平歯車によって係合および回転されるときにシャフトの回転をもたらす。摺動機構336は、使用者によって係合可能なアクチュエータ352と、アクチュエータ352から延びる細長いアーム354と、アーム354の遠位端部分にそれぞれ取り付けられた近位リング356および遠位リング358とを備える。コイルばね360が、シャフト334に取り付けられ、リング間に保持されている。
【0084】
2本の引張りワイヤ(図示せず)は、ハンドルからバルーンカテーテルシャフト312を通じてこのバルーンカテーテルシャフトの全く反対側においてその遠位端部分まで延びる。第1の引張りワイヤは、ハンドルの内部の近位ナット364aに固定された近位端と、バルーンカテーテルシャフト312の遠位端部分に固定された遠位端とを有する。第2の引張りワイヤは、ハンドルの内部の遠位ナット364bに固定された近位端と、第1の引張りワイヤの固定位置とは全く反対側のバルーンカテーテルシャフト312の遠位端部分に固定された遠位端とを有する。
【0085】
ハウジング332は、ハンドルが使用者の手によって握持されるときに、ハンドルの内部の反り(関節)機構を作動させるように構成される。例えば、ハウジング332は、下側ハウジングセクション368と、上側ハウジングセクション370とを備えることができ、上側ハウジングセクション370は、組立てを容易にするために2つの別個のハウジングセクション370a、370bから構成することができる。
図36を参照すると、下側ハウジングセクション368は、矢印374によって示されるように、使用者の手によって握持されるときに、2つのセクションが限られた距離だけ互いに向かっておよび互いから離れるように移動することを可能にするやり方で上側ハウジングセクション370に取り付けられている。ねじりばね338は、上側ハウジング部分370の内面に当接する一方のアーム376aと、下側ハウジング部分368の内面に当接する別のアーム376bとを有し、弾性的に2つのハウジング部分を互いから離れるようにさせる。したがって、ハンドルの握持によって上側ハウジング部分および下側ハウジング部分を共に移動させ、手の圧力を解放すると、ばね力による限られた量だけハウジング部分が互いから離れるように移動することができる。代替的実施形態では、ハウジングの一部は、反り機構を作動させるために使用者の手によって握持されるときに変形できる可撓性または変形可能な材料で作製することができる。
【0086】
反り機構は、以下のように作動する。ハンドル332を握持すると、ラック歯車340、342は、(上側ハウジングセクションおよび下側ハウジングセクションの移動により)シャフト334に垂直に反対方向に移動し、これによって対応する平歯車344、346の回転を反対方向に回転させる。摺動機構336は、近位位置、ニュートラル(中間)位置、および遠位位置の間で手動で移動することができる。摺動機構がニュートラル位置にあるとき(
図36)、クラッチは、それらのそれぞれの平歯車から係合解除され、平歯車の回転によってシャフト334を回転させないようになる。なお、摺動機構336を遠位方向に遠位位置まで摺動することによって、コイルばね360を遠位クラッチ350に押し付けて遠位平歯車346に係合する。摺動機構が遠位位置に保持される間、ハンドルは握持され、結果として生じる遠位平歯車346の回転は、シャフト334に伝達されて、同じ方向に回転し、これによってナット364をシャフト334に沿って反対方向に(例えば、互いに向かって)移動させる。反対方向のナット364の平行移動は、第1の引張りワイヤに張力を加え、第2の引張りワイヤにたるみをもたらし、バルーンカテーテルシャフト312を第1の方向に曲げさせるかまたは反らせる。平歯車346に係合するクラッチ350の面には、歯362が形成されており、この歯362は、歯車の対応する特徴と協働して、ハンドルが握持されるときにクラッチおよびシャフト334を回転させ、ハンドルから手の圧力が除かれるときに歯車をクラッチに対してスピンまたは回転させることができる。このようにして、バルーンカテーテルシャフトは、ハンドルの各握持に対応する所定の量だけ曲がる。バルーンカテーテルシャフトの反りは、所望の反りの程度が実現されるまでハンドルを繰り返し握持することによって制御することができる。
【0087】
バルーンカテーテルシャフト312は、摺動機構336を近位方向に摺動させ、それによってコイルばね360を近位クラッチ348に押し付けて近位平歯車344に係合することによって第1の方向とは反対の第2の方向に反ることができる。摺動機構を近位位置に保持し、ハンドルを握持する間、近位平歯車344は、近位クラッチ348を同じ方向に回転させる。近位クラッチの回転は、シャフト334に伝達されて同じ方向に回転し、反対方向のナット364の平行移動となる(例えば、摺動機構が遠位位置にあるときにナットが互いに向かって移動する場合、ナットは、摺動機構が近位位置にあるときに互いから離れて移動する)。近位クラッチ348には、同様に歯362が形成されており、この歯362は、ハンドルが握持されるときにだけ近位平歯車344に係合し、近位クラッチおよびシャフト334を回転させるが、手の圧力がハンドルから除かれたときにはそうならない。とにかく、ねじ付きナット364の移動によって張力が第2の引張りワイヤに加わり、第1の引張りワイヤにたるみが生じ、バルーンカテーテルシャフト312を反対方向に曲げさせる。
【0088】
図40〜
図42は、(ハンドル308の代わりに)バルーンカテーテル302に組み込むことができる400で示されるハンドルの代替的実施形態を示す。ハンドル400は、ハウジング402を備え、このハウジング402は、組立てを容易にするために2つの半体402a、402bから形成できる。2つのホイールまたは回転ノブ404a、404bが、ハンドルの反対側に配置されている。ノブは、歯車の歯408を有するシャフト406の反対端に取り付けられる。回転可能な中空のシリンダ410は、シャフト406とは垂直な方向にハンドルの内部で縦方向に延びる。シリンダ410は、シャフト406の歯車の歯408に係合する雄の歯車の歯412を備える。シリンダ410の内面は、雌ねじ414が形成されており、雌ねじ414は、右ねじおよび左ねじを含むことができる。近位ねじ付きナット416aおよび遠位ねじ付きナット416bは、シリンダ410の内部に設けられ、シリンダと同軸に通じて延びるレール418に摺動移動のために取り付けられる。ナット416a、416bは、反対方向にねじ山のある雄ねじを有し、シリンダ410の内面のある対応する右ねじおよび左ねじに係合する。レール418は、ナット416a、416b内部管腔にある対応する平坦部に係合する平坦部420を有し、これによってナットが回転せずにレールの長さに沿って平行移動することを可能にする。
【0089】
第1の引張りワイヤおよび第2の引張りワイヤ(図示せず)が設けられ、前述の通り、それぞれのナット416a、416bおよびバルーンカテーテルシャフト312の遠位端に固定される。第1の反対方向および第2の反対方向のバルーンカテーテルシャフト312の反りは、(共に回転する)ノブ404a、404bを時計回りおよび反時計回りに回転させることによって達成することができる。例えば、ノブの時計回りの回転は、歯車の歯412に係合する歯車の歯408を介してシリンダ410の回転をもたらす。シリンダ410の回転は、(例えば、互いに向かう)レール418に沿った反対方向にナット416a、416bを移動させる。反対方向のナットの平行移動は、第1の引張りワイヤに張力を加え、第2の引張りワイヤにたるみをもたらし、バルーンカテーテルシャフト312を第1の方向に曲げさせるまたは反らせる。ノブの反時計回りの回転は、上述の当初の回転とは反対の方向のシリンダ410の回転をもたらす。シリンダ410の回転は、ナット416a、416bをレール418に沿って反対方向に(例えば、互いから離れるように)移動させる。反対方向のナットの平行移動は、第2の引張りワイヤに張力を加え、第1の引張りワイヤにたるみをもたらし、バルーンカテーテルシャフト312を第1の方向とは反対の第2の方向に曲げさせるまたは反らせる。
【0090】
ハンドル400は、バルーンカテーテルの遠位端に隣接したプッシャデバイスを移動させるように構成されるプッシャ作動機構422を適宜含むことができる。プッシャデバイスは、バルーンにわたって部分的に延び、人工弁およびバルーンカテーテルがイントロデューサを通じて挿入されるときに、バルーン上の所定の位置に人工弁を保持する。プッシャデバイスは、同時係属出願の米国特許出願第12/835,555号に開示されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。作動機構422は、連結アーム424に枢動可能に接続され、これはプッシャデバイス(図示せず)の近位ホルダ426に枢動可能に接続される。プッシャデバイスは、近位ホルダ426からバルーン314まで延びることができる。作動機構422を遠位位置へ移動することによってプッシャデバイスをバルーン314上で部分的に延長する位置に移動させ、イントロデューサ304を通じて挿入するためにバルーン上の所定の位置に人工弁を保持する。作動機構422を近位位置へ移動することによって、バルーンから離れるように近位方向にプッシャデバイスを移動させ、人工弁が心臓の内部になると、バルーンは人工弁の展開のために膨張できる。(例示のバルーンカテーテル302にあるように)移動可能なプッシャデバイスが使用されない場合、プッシャ作動機構422は必要とされない。例えば、そのようなプッシャデバイスの代わりにまたはそのようなプッシャデバイスに加えて、バルーンの内部のストップ部材318、320を使用してバルーン上で人工弁の位置を保持することができる(
図33および
図47A)。
【0091】
図43〜
図45は、500で示されるハンドルの別の実施形態を示しており、このハンドルは、(ハンドル308の代わりに)バルーンカテーテル302に組み込まれてもよい。ハンドル500は、ハウジング502を備え、このハウジング502は、それぞれ、第1の遠位ハウジング部分504および第2の遠位ハウジング部分506を含む複数のハウジングセクションから形成することができ、これは遠位ハウジング空間、ならびに近位ハウジング空間を形成する第1の近位ハウジング部分508および第2の近位ハウジング部分510をそれぞれ形成する。ハウジングは、近位シリンダ512および遠位シリンダ514を収容し、これらはそれぞれ近位ナット516および遠位ナット518を収容する。ナットは、シリンダ512、514を通じて同軸に延びるレール520に配置される。シリンダ512、514は、対向する雌ねじを有し、例えば、近位シリンダは、右ねじを有することができ、遠位シリンダは、左ねじを有することができる。シリンダ512、514は、(例えば、近位シリンダの遠位端と遠位シリンダの近位端の間の摩擦ばめで)端部と端部で互いに固定され、それによって両者は共に回転する。他の実施形態では、シリンダ512、514は、上記のハンドル400に使用される左ねじおよび右ねじを有する単一のシリンダとして形成することができる。
【0092】
使用者によって係合可能な回転ノブ522は、ハウジング502の外側に取り付けられ、(例えば、ハウジング内の環状間隙を通じて)近位シリンダ512に係合し、ノブ522の回転によって、シリンダ512、514の対応する回転を引き起こすようになっている。本実施形態の反り機構は、ナット516、518にそれぞれ固定される第1の引張りワイヤおよび第2の引張りワイヤ(図示せず)に選択的に張力を加えかつたるみをもたらすように、
図40〜
図42に示されたものと類似したやり方で働く。例えば、ノブ522を第1の方向に回転させることにより、ナットをレール520に沿って反対方向に(例えば互いに向かって)平行移動させ、これは、第1の引張りワイヤに張力を加え、第2の引張りワイヤにたるみをもたらし、バルーンカテーテルシャフト312を第1の方向に曲げさせるかまたは反らせるのに効果的である。ノブ522を第2の方向に回転させることにより、ナットを反対方向に(例えば、互いから離れるように)平行移動させ、これは、第2の引張りワイヤに張力を加え、第1の引張りワイヤにたるみをもたらし、バルーンカテーテルシャフト312を第1の曲げ方向に反対の第2の方向に曲げさせるかまたは反らせるのに有効である。
【0093】
図46は、拡張可能な人工心臓弁を植え込むために使用できる別の実施形態による送達装置600を開示する。具体的には、送達装置600は、経心尖または経大動脈処置において人工弁を心臓の中に導入するのに使用するように適合されている。人工心臓弁を植え込む送達システムは、送達装置600と、イントロデューサ602(
図49〜
図50)と、ローダ604(
図51〜
図52)とを備えることができる。
【0094】
図46〜
図47を参照すると、例示の形態の送達装置600は、ハンドル606と、ハンドル606から延びる操作可能シャフト608と、操作可能シャフト608を通じてハンドル606から同軸に延びる内側シャフト610と、操作可能シャフト608の遠位端から延びる膨張可能バルーン612と、操作可能シャフト608の遠位端からバルーンの近位端領域中に延びる近位肩部またはストップ部材614と、内側シャフト610の遠位端に取り付けられたノーズコーン616と、バルーンの遠位端領域内の内側シャフト610に取り付けられた遠位肩部またはストップ部材618とを備えるバルーンカテーテルである。図示されるように、遠位ストップ部材618は、ノーズコーン616の一体的な延長部分であってもよい。近位ストップ部材614は、操作可能シャフト608の遠位端部分の外表面に固定される近位端部分620を有することができる。バルーン612は、近位端部分622および遠位端部分624を有することができ、この近位端部分622は、シャフト608の外面および/または近位止め部614の端部分620に固定され、遠位端部分624は、遠位ストップ部材618の遠位端部分626の外面に固定される。
【0095】
図47に最もよく示されるように、近位ストップ部材614の近位端部分620は、内側シャフト610の外面と外側シャフト608の内面の間の環状壁に形成された膨張流体用の1つまたは複数の開口部646を備える。開口部646は、膨張流体が、内側シャフト610と外側シャフト608の間の空間からバルーンの中に遠位方向に外向きに流れることを可能にする。
【0096】
近位ストップ部材614は、ほぼ円錐形部材の形態の遠位端部分628を有し、遠位ストップ部材618は、同じ形状の近位端部分630を有する。円錐形部材628、630の間の間隔は、バルーン上に圧着される人工弁を少なくとも一部受け入れるサイズに作製された環状空間を画定する。使用時、
図47Aに示されるように、人工弁12は、円錐形部材628、630の間でバルーンの上へ圧着され、人工弁がイントロデューサを通じて前進させられるときに人工弁は、円錐形部材の間のバルーン上に保持されているようになっている。望ましくは、円錐形部材628、630の間の間隔は、円錐形部材同士の間で人工弁がわずかにくい込まれ、非膨張のバルーンが人工弁の近位端と近位部材628の間および人工弁の遠位端と遠位部材630の間に延びるように選択される。加えて、人工弁の両端に隣接した端における部材628、630の最大直径は、バルーンへ圧着されるときに人工弁12のフレームの外径とほぼ同じまたはわずかに大きいことが望ましい。
【0097】
図47にさらに示されるように、円錐形部材628、630の各々は、1つまたは複数のスロット632が形成されていることが望ましい。例示の実施形態では、円錐形部材628、630の各々は、円周方向に角度的に等しく間隔をおいて配置される3つのそのようなスロット632を有する。スロット632は、円錐形部材628、630の半径方向の圧縮を助け、送達デバイスの製造中および人工弁の圧着中に有利である。特に、バルーンの近位端622および遠位端624は、円錐形部材628、630の最大直径より比較的小さいものであり得る。したがって、組立工程中に円錐形部材628、630をバルーンの中に挿入するのを助けるために、円錐形部材628、630は、バルーンに挿入するためにより小さい直径まで半径方向に圧縮することができ、次いでバルーンの内部に入ると拡張することができる。人工弁バルーン上へ圧着されるとき、圧着デバイスの内部面(圧着顎部(crimping jaw)の表面など)は、円錐形部材628、630に接触することができ、したがって人工弁と共に円錐形部材を半径方向に圧縮させる。典型的には、人工弁は、圧着デバイスから取り除かれると少量の後戻り(recoil)(半径方向拡張)を受ける。圧縮性の円錐形部材628、630により、人工弁は、人工弁の金属フレームが円錐形部材の最大直径以下の外径を有する圧着状態まで十分に圧縮できる(人工弁の後戻りの原因となる)。
【0098】
円錐形部材628、630におけるスロット632は、バルーンの拡張を助けるために、膨張流体が円錐形部材を半径方向内向きに通じ、圧着式人工弁を通じて延びるバルーンの領域を通じて流れることも可能にする。したがって、膨張流体は、バルーンの近位領域から、近位ストップ部材628中のスロット632を内向きに通じ、人工弁を通じて延びるバルーンの領域を通じ、遠位止め部630中のスロット632を外向きに通じ、バルーンの遠位領域の中に流れることができる。遠位ストップ部材618の別の利点は、遠位ストップ部材618がノーズコーンと人工弁の間の移行領域として働くことである。したがって、人工弁が本来の弁の弁膜を通じて前進させられるとき、遠位ストップ部材618は、人工弁の遠位端が周囲組織に接触することから守り、さもなければ、展開前に人工弁の正確な位置決めを除外または阻害する可能性がある。
【0099】
ハンドル606の構成は、
図48に示されている。ハンドル606は、ハウジング634を含み、ハウジング634は、複数のハウジングセクションから形成され得る。ハウジング634は、シャフト608の関節/反りの効果的な制御を行う機構を収容する。例示の実施形態における機構は、ねじ付きシャフト636と、このシャフトに設けられるねじ付きナット638とを含む。シャフト636の近位端部分は、ねじ付きナット638の雌ねじに係合する雄ねじが形成されている。シャフト636は、ハンドル内で回転できるが、ハンドル内の平行運動は規制される。ナット638は、対向するフランジ640を有し(
図48にはその一方が示されている)、フランジ640は、ハウジングの内部面に形成されたそれぞれのスロットの中に延びてナットの回転を防ぐ。このようにして、ナット638は、シャフトの回転に基づいてシャフト636のねじに沿って平行移動する。
【0100】
シャフト636の遠位端部分は、使用者によって係合可能な回転ノブ642を支持する。シャフト636はノブ12に接続され、ノブの回転によってシャフト636の対応する回転が引き起こされるようになっている。引張りワイヤ644は、ハンドルから、バルーンカテーテルシャフトの片側のバルーンカテーテルシャフト608を通じて、その遠位端部分まで延在する。引張りワイヤ644は、ハンドルの内部のねじ付きナット638に固定された近位端と、バルーンカテーテルシャフト608の遠位端部分に固定された遠位端とを有する。本実施形態の関節機構は、ノブ642を一方向に回転させることによって作動し、それによってねじ付きナット638をシャフト636に沿って平行移動させ、これは、引張りワイヤに張力を加えて、バルーンカテーテルシャフト608を所定の方向に曲げさせるかまたは関節を動かすのに有効である。ノブ642を反対方向に回転させることによって、ナット638を反対方向に平行移動させ、それによって引張りワイヤの張力をゆるめ、それによってシャフト608がそれ自体の復元性によって反対方向に反ることを可能にする。代替的実施形態では、別のねじ付きナットおよびそれぞれの引張りワイヤは、ハウジング内に設けることができ、
図36〜
図45の実施形態と共に上記のようにシャフト608の双方向操作を可能にする。
【0101】
図49は、イントロデューサハウジング組立体650と、このハウジング組立体650から延びる外筒652とを備えるイントロデューサ602の斜視図である。イントロデューサ602は、送達装置600を患者の体内に導入または挿入するために使用される。経心尖処置では、例えば、外筒652は、胸部および心臓の尖部における外科的切開を通じて挿入されて、左心室内に外筒の遠位端を配置する(本来の大動脈弁の交換時など)。イントロデューサ602は、最小の失血で送達装置を体内に挿入するためのポートまたは入口点として働く。
図50に示されるように、イントロデューサハウジング650は、1つまたは複数の弁654を収容し、外筒652をハウジング650に固定する遠位キャップ656と、ローダ604を取り付ける近位キャップ658とを備える。
【0102】
図51〜
図52は、イントロデューサ602に挿入中に圧着された人工器官を保護するために使用されるローダ604の斜視図および断面図である。例示の構成におけるローダ604は、遠位ローダ組立体660、および近位ローダ組立体662を含む。遠位ローダ組立体660および近位ローダ組立体662は、それぞれ雌ねじ680および雄ねじ682を噛み合わせることによって互いに固定することができる。遠位ローダ組立体660は、ローダチューブ664、およびローダ遠位キャップ666を含む。近位ローダ組立体662は、ローダハウジング668と、ボタン弁670と、ワッシャ672と、2つの円板弁674と、近位ローダキャップ676とを備える。遠位ローダキャップ666は、
図53に示されるようにイントロデューサ602の近位キャップ658に係合するように構成されている唇部684を形成することができる。
【0103】
使用時、(遠位ローダ組立体660とは別に)近位ローダ組立体662は、人工弁をバルーンに置き、人工弁を圧着する前にバルーンカテーテルシャフト608に置くことができ、圧着式人工弁がハウジング668の内部の封止部材674を通過するのを避ける。人工弁がバルーンへ圧着された後、遠位ローダ組立体660は、圧着式人工弁を摺動させ、(ねじ682をねじ680に螺合することによって)近位ローダ組立体662に固定される。
図53に示されるように、ローダチューブ664は(圧着式人工弁を覆いつつ)、次いでイントロデューサハウジング650の中にそれを通じて挿入することができ、内部封止部材654を通じて延びるようになっている(
図50)。したがって、ローダチューブ664は、イントロデューサの封止部材654と圧着式人工弁の直接接触を防ぐ。ローダ604は、ローダの環状唇部684をイントロデューサの近位キャップ658に押し込むことによってイントロデューサ602に固定することができる。ローダチューブをイントロデューサの中に挿入した後、人工弁は、ローダチューブから、外筒652を通じて、患者の身体(例えば、左心室)に関する領域中に前進することができる。
【0104】
図53に最もよく示されるように、イントロデューサの近位キャップ658は、全く反対の第1および第2のリブ部694と、リブ部のそれぞれの端の間に延びる全く反対の第1および第2の反り可能な係合部分696とを備える。ローダ604がイントロデューサ602に挿入されるとき、ローダの唇部684は、係合部分696の遠位部位の所定の位置に嵌められ、係合部分696は、イントロデューサに対して所定の位置にローダを保持する。反っていない状態では、リブ部694は、ローダのキャップ666の隣接面からわずかに間隔をおいて配置される。ローダをイントロデューサから取り除くために、リブ部694は、半径方向内向きに押され、これによって唇部684を越えて係合部分696を外向きに反らせ、ローダおよびイントロデューサが互いから分離することを可能にする。
【0105】
流体(例えば、生理食塩水)は、ルアーポート(lured port)678を通じてローダ604に挿入することができ、このルアーポート678は、流体によって加圧されるとき、流体がローダハウジングの中に単一方向に流れることを可能にする。代替として、流体(例えば、血液、空気および/または生理食塩水)は、ボタン弁670の交差部を押し下げ、弁670とローダハウジングの間に開口部を作り出すことによってローダ604から取り除くことができる。
図52および
図54に最もよく示されるように、例示の実施形態におけるボタン670は、エラストマーの環状リング686と、ローダハウジング668中の開口部690を通じて外向きに延びる使用者によって係合可能な突出部688とを備える。リング686は、開口部690と、ポート678と連通するローダハウジング中の別の開口部692とを封止する。加圧流体がポート678に導入されるとき、流体の圧力は、開口部692を封止するその位置から離れさせるようにリング686の隣接部分を内向きに反らせ、流体がローダの中に流れることを可能にする。代替的には、流体をローダから取り除くために、使用者は突出部688を押し下げることができ、それによって開口部690を封止するその位置から離れさせるようにリング686の隣接部分を内向きに反らせ、ローダ内の流体が開口部690を通じて外向きに流れることを可能にする。
【0106】
一般事項
本説明のために、本開示の本実施形態のいくらかの態様、利点、および新規な特徴が、本明細書に記載されている。開示した方法、装置、およびシステムは、形はどうであれ限定として解釈されるべきではない。そうではなく、本開示は、単独ならびに互いの様々な組み合せおよびサブコンビネーションで、様々な開示した実施形態の全ての新規かつ自明でない特徴および態様に向けられている。この方法、装置、およびシステムは、任意の特定の態様または特徴あるいはその組み合せに限定されず、開示した実施形態は、何らかの1つまたは複数の特定の利点が存在し、または課題が解決されることを必要ともしない。
【0107】
開示した方法のいくつかの動作が、便宜的な呈示のために特定の順序で記載されているが、この説明のやり方は、特定の順序付けが特定の言語によって必要とされるのでない限り、再構成を包含することを理解されたい。例えば、順次的に説明される動作は、場合によっては、同時に再構成または実行されてもよい。また、簡単にするために、添付の図面は様々なやり方を示しているのではない可能性があり、開示した方法は他の方法と共に使用されてもよい。本明細書に使用されるとき、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「少なくとも1つの」は、特定の要素のうちの1つまたは複数を包含する。すなわち、特定の要素が2つ存在する場合、これらの要素の一方がやはり存在し、したがって「1つの(an)」要素が存在する。用語「複数の(a plurality of)」および「複数の(plural)」は、2つ以上の特定の要素を意味する。
【0108】
本明細書に使用されるとき、要素のリストの中の最後の2つの要素の間に使用される用語「および/または」は、列挙された要素のうちの任意の1つまたは複数を意味する。例えば、表現「A、B、および/またはC」は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」、または「A、BおよびC」を意味する。
【0109】
本明細書に使用されるとき、用語「結合される(coupled)」は、物理的に結合または連結されることを一般に意味し、特定の正反対の用語がないときには、結合されたもの同士の間に中間要素が存在することを除外しない。
【0110】
開示した発明の原理が適用できる多くの可能な実施形態を考えると、例示の実施形態は、本発明の好適な例にすぎず、本発明の範囲の限定としてとらえられるべきでないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。したがって、出願人は、上記特許請求の範囲の範囲および精神の範囲内にある全ての者を我々の発明として主張する。