特許第6987930号(P6987930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許69879301−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン及びその誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987930
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン及びその誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/46 20060101AFI20211220BHJP
   C07C 49/80 20060101ALI20211220BHJP
   B01J 27/10 20060101ALI20211220BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211220BHJP
【FI】
   C07C45/46
   C07C49/80
   B01J27/10 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-114073(P2020-114073)
(22)【出願日】2020年7月1日
(62)【分割の表示】特願2017-519682(P2017-519682)の分割
【原出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2020-183395(P2020-183395A)
(43)【公開日】2020年11月12日
【審査請求日】2020年7月30日
(31)【優先権主張番号】14188744.8
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300091441
【氏名又は名称】シンジェンタ パーティシペーションズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】グリブコフ デニス
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 SIMCHEN, G. et al.,Eine einfache Methode zur Darstellung von Aryl-trifluormethylketonen,SYNTHESIS,1996年,Vol.9,pp.1093-1094
【文献】 LIVSHITS, B. R. et al.,Reactions of polyfluoro ketones with aromatic compounds,BULLETIN OF THE ACADEMY OF SCIENCES OF THE USSR,1967年,Vol.16, No.3,pp.591-595,DOI:10.1055/s-1996-4444
【文献】 社団法人日本化学会編,新実験化学講座13 有機構造I,丸善株式会社,p.40
【文献】 SIMONS, J. H. et al.,Fluorocarbon Aromatic Ketones,Journal of the American Chemical Society,1953年,Vol.75, No.22,pp.5621-5622
【文献】 OHNO, A. et al.,NAD(P)+-NSD(P)H MODEL. 46. KINETIC STUDY ON THE REDUCTION WITH A SULFER-CONTAINING NAD(P)H MODEL,Tetrahedron Letters,1983年,Vol.24, No.46,pp.5123-5126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II
【化1】
(式中、R1は、フルオロである)の化合物を調製する方法であって、フルオロベンゼンを、塩化アルミニウムの存在下で、塩化トリフルオロアセチルと反応させることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロ置換1−アリール−2,2,2−トリフルオロ−エタノン(化合物Ia、IbおよびIc):
【化1】
の調製およびそのプロセスに有用な中間体に関する。前記化合物は、例えば、欧州特許出願公開第1932836号明細書に開示されている1−(3,5−ジクロロ−4−フルオロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン(Ic)として、有害生物の防除に活性なイソキサゾリン置換ベンズアミドを調製するための重要な中間体である。
【背景技術】
【0002】
典型的には、式Ia、IbおよびIcの前記化合物は、式VIa、VIbおよびVIc
【化2】
のハロ置換5−ブロモ−ベンゼンから誘導された対応する有機金属試薬とトリフルオロ酢酸の誘導体(例えばトリフルオロ酢酸エチル)との反応により調製される。例えば、2,2,2−トリフルオロ−1−(3,4,5−トリクロロフェニル)エタノン(Ib)の調製が国際公開第2012/120135号に記載されている。
【0003】
式VIa、VIbおよびVIcの対応するブロモ誘導体の入手は容易ではなく、多段法で調製される。例えば、5−ブロモ−1,2,3−トリクロロ−ベンゼン(VIb)は、Sott,R.;Hawner,C.;Johansen,J.E.Tetrahedron 2008,64,4135に記載されているように調製することができる。5−ブロモ−1,3−ジクロロ−2−フルオロ−ベンゼン(VIc)は、とりわけ、既述の合成がMiller,M.W.;Mylari,B.L.;Howes,H.L.;Figdor,S.K.;Lynch,M.J.;Lynch,J.E.;Koch,R.C.J.Med.Chem.1980,23,1083、また、中国特許第101177379号明細書、中国特許第101337862号明細書および中国特許第103664511号明細書(スキーム1)における非効率的な多段式アプローチであるため、特に大規模での調製が困難である。
【0004】
スキーム1
【化3】
【0005】
これらの公知のプロセスは、反応ステップが多い(4〜6)ために全収率が低く、結果的に製造費が高くなるという顕著な欠点を有する。また、この合成では廃棄物が大量に生成され、原子効率が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、反応ステップ数が少なく、高収率であり、実質的に製造費が低いハロ置換1−アリール−2,2,2−トリフルオロ−エタノンを調製するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明によれば、式I
【化4】
(式中、R1は水素、フルオロまたはクロロである)の化合物を調製するプロセスであって、
a)式II
【化5】
(式中、R1は水素、フルオロまたはクロロである)の化合物とニトロ化剤とを反応させて、式III
【化6】
(式中、R1は水素、フルオロまたはクロロである)の化合物を得るステップ;
b)式IIIの化合物とトリクロロイソシアヌル酸とを硫酸または発煙硫酸の存在下で反応させて、式IV
【化7】
(式中、R1は水素、フルオロまたはクロロである)の化合物を得るステップ;および
c)式IVの化合物と塩素ガスとを180℃〜250℃の温度で反応させて、式Iの化合物を得るステップ
を含むプロセスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
反応ステップa):
式IIの化合物は市販されており、かつ文献においていくつかの調製方法が報告されている。例えば、式II(式中、R1は水素またはクロロである)の化合物は、ルイス酸触媒(塩化アルミニウム)の存在下における、ベンゼンおよびクロロベンゼンのそれぞれ塩化トリフルオロアセチルまたはトリフルオロ酢酸無水物によるフリーデルクラフツアシル化により、高い収率で容易に合成できる。しかしながら、フリーデルクラフツ法による式II(式中、R1はフルオロである)の化合物の調製は、高価な1−(トリフルオロアセチル)−4−(ジメチルアミノ)ピリジニウムトリフルオロ酢酸塩をアシル化剤として用いるものが単一の刊行物に報告されているのみである。
【0009】
驚くべきことに、式II(式中、R1はフルオロである)の化合物は、塩化アルミニウムの存在下で塩化トリフルオロアセチルを用いる式II(式中、R1はクロロである)の化合物の合成と同様に、良好な収率で合成できることが見出された。従って、本発明は、式II
【化8】
(式中、R1はフルオロである)の化合物を調製するプロセスにおいて、フルオロベンゼンが塩化アルミニウムの存在下で塩化トリフルオロアセチルと反応させられることを特徴とする、プロセスにも関する。
【0010】
式III(式中、R1は水素である)の化合物は公知であり(CAS1960−27−6)、Canadian Journal of Chemistry,1964,vol.42,p.439−446;およびCanadian Journal of Chemistry,vol.38,no.3,pages 399−406,ISSN:0008−4042に従うニトロ化を介して調製することができる。
【0011】
式III(式中、R1は水素である)の化合物(CAS657−15−8)は市販されており、かつ例えば国際公開第2013/100632号に従うニトロ化により調製することができる。式III(式中、R1はフルオロである)の化合物(CAS1297553−45−7)は、例えば米国特許出願公開第2011/130445号明細書に記載されている。式III(式中、R1はクロロである)の化合物は新規のものであり、式Iの化合物の調製のために特定的に開発された。従って、前記化合物も本発明の主題の一部を形成する。
【0012】
式IIの化合物のニトロ化は、溶媒を伴うことなく、20℃〜100℃の温度で濃硫酸(4〜6当量、濃硫酸または発煙硫酸)と濃硝酸または発煙硝酸(1.02〜1.1当量65%)との混合物のようなニトロ化剤を用いることにより行うことができる。硝酸の代わりに、そのナトリウムまたはカリウム塩(硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム)も使用することができる。硫酸の廃棄を最小限にし、かつ以下のステップをワンポットで行うことができるように、発煙硫酸(20、30または66%の溶解したSO3)と発煙硝酸(90〜100%)との組み合わせを有利に用いることができる。例えば、SO3含有量が30%である発煙硫酸を99%発煙硝酸と組み合わせることで、酸の使用割合を50%(2〜3当量)削減することが可能になる。
【0013】
反応ステップb):
式IVの化合物への式IIIの化合物のクロロ化は、求電子置換に対する化合物IIIの固有反応性が低いため、非常に強力な求電子性塩素化試薬を必要とする。この不活性度は、3個の強電子求引性基(式III(式中、R1はフルオロである)の化合物中のF、NO2およびトリフルオロカルボニル基)が存在することに起因する。驚くべきことに、式IIIの化合物は、市販されている安価なトリクロロイソシアヌル酸を濃硫酸または発煙硫酸と組み合わせて、高温(80〜160℃)で用いることにより塩素化できることが見出された。トリクロロイソシアヌル酸は、硫酸と組み合わされた場合に強力な塩素化試薬であることが知られており、しかしながら、このような不活性な基質のクロロ化の例は報告されていなかった。98%硫酸中における130℃でのトリクロロイソシアヌル酸による1,3−ジニトロベンゼンのクロロ化が報告されているのみであり、対応する生成物に係る収率もわずかに50%であった(Mendoca,G.F.;Senra,M.R.,Esteves,P.M.;de Mattos,M.C.S.Applied Catalysis A:General,2011,vol.401,p.176−181)。従って、この変換の成功は驚くべきことであった。
【0014】
有利には、式IIIの化合物の式IVの化合物への変換は、反応媒体(H2SO4)が両方の反応ステップについて同じであるため、式IIIの中間体を単離することなくワンポット法で行うこともできる。塩素化試薬は、ニトロ化が完了した際に、単に粗反応混合物に数回に分けて添加される。
【0015】
式IV
【化9】
(式中、R1は水素、フルオロまたはクロロである)の化合物は新規のものであり、式(I)の化合物の調製のために特定的に開発された。従って、これらも本発明の主題の一部を形成する。
【0016】
反応ステップc):
塩素ガスを高温(200℃)で用いる塩素原子による芳香族ニトロ基の置換は、周知の変換である。しかしながら、この変換は、このような過激な条件に耐える得る特別な種類の基質にのみ適用可能である。置換基としてトリフルオロアセチル基を芳香族環上に有する基質に係るこの変換に関して、従来技術における記載例は存在していない。
【0017】
この反応は、180〜250℃、好ましくは200〜220℃の温度で無希釈の式IVの化合物(溶媒なし)に塩素ガスを通すことにより行われる。生成物は、反応中に蒸留によって有利に取り出すことができる。これにより、残留している出発材料の転換も加速される。蒸留を促進させるためにわずかに減圧することができる。反応の途中において生成物の取り出しを蒸留により効率的に行うことができない場合、式IVの未反応の出発材料は、後に分留によって生成物から分離して、次の実施において再度使用することができる。この反応混合物は腐食性が高い。
【0018】
欧州特許出願公開第0163230号明細書によれば、腐食は、例えば無水塩化カルシウムまたは二酸化ケイ素などの少量のHF/水結合剤を添加することにより、許容可能なレベルに実質的に低減させることができる。本発明の好ましい実施形態では、ガラス表面の腐食を低減させるため、少量の無水塩化カルシウム(1〜5mol%)が反応混合物に添加される。
【実施例】
【0019】
調製例:
実施例P1:式IIIbの化合物:1−(4−クロロ−3−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノンの調製
【化10】
磁気スターラ、温度計および滴下漏斗を備えた50mLの3首丸底フラスコ中に発煙硫酸(12.0g、20〜30%SO3)を入れた。フラスコの内容物を5℃に冷却し、式IIbの化合物(1−(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン、9.48g、45.0mmol)を一度に添加した。発煙硝酸(3.09g、48.6mmol)をこの混合物に5分間かけて添加した。温度を60℃に昇温させた。添加が完了した後、冷却浴を外し、この反応混合物を周囲温度で40分間撹拌した。(この時点で、HPLC分析は、出発材料の式IIIbの化合物への完全な転換を示していた)。反応混合物を氷浴に入れ、水(1.4g)を混合物に添加した。溶液をジクロロメタン(10mLおよび5mL)で2回抽出した。溶媒を減圧下で除去して、表題の式IIIbの化合物(1−(4−クロロ−3−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン、11.40g)を得た。定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)によれば、材料は97%の純度を有していた。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.82(d,J=8.5Hz,1H),8.21(dm,J=8.6Hz,1H),8.55(d,J=1.8Hz,1H)
13C NMR(101MHz,CDCl3)δppm 116.1(q,1JC-F=290.5Hz),126.9(d,J=2.2Hz),129.1,133.1,133.5(q,J=2.20Hz),134.6,148.4,177.9(q,2JC-F=36.6Hz)。
19F NMR(376MHz,CDCl3)δppm−71.92。
【0020】
実施例P2:式IVbの化合物:1−(3,4−ジクロロ−5−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノンの調製
【化11】
磁気スターラを備えた50mLの1首丸底フラスコに式IIIbの化合物(1−(4−クロロ−3−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン、6.535g、25.0mmol、97%純度)および発煙硫酸(10.0g、20〜30%SO3)を仕込んだ。このフラスコを油浴に入れ、105℃(外部温度)に加熱した。トリクロロイソシアヌル酸(1.96g、8.4mmol)を一度に添加した。反応混合物を1時間15分撹拌し、続いて、第2の分量のトリクロロイソシアヌル酸(0.47g、2.0mmol)を添加した。2時間15分攪拌した後、出発材料の転換率は96%であった(HPLC分析、220nmでの面積%)。第3の分量のトリクロロイソシアヌル酸(0.2g、0.9mmol)を添加し、反応を一晩撹拌した。翌日の朝(最後の分量のトリクロロイソシアヌル酸を添加してから14時間後)、転換率は100%であり、少量のポリ塩素化副生成物が観察された(<10面積%)。反応混合物を周囲温度に冷却し、水浴中で冷却しながら水(1.6g)を添加した。溶液をジクロロメタン(10mLおよび5mL)で2回抽出した。溶媒を減圧下で除去して、表題の式IVbの化合物(1−(3,4−ジクロロ−5−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン)を薄い黄色の液体(7.39g)として得た。定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)によれば、材料は88.5%の純度を有していた。
【0021】
粗材料を0.07mbarで10cmビクリューカラムを用いて分留により精製して、6.01gの式IVbの化合物を93%の化学純度(定量1H NMR分析、内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)で得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 8.34(d,J=0.8Hz,2H)
13C NMR(101MHz,CDCl3)δppm 115.9(q,1JC-F=290.5Hz),124.0(m),129.0,133.3,133.8(d,J=2.20Hz),137.3,150.1,177.2(q,2JC-F=37.3Hz)。
19F NMR(376MHz,CDCl3)δppm−71.85。
【0022】
実施例P3:式Ibの化合物:2,2,2−トリフルオロ−1−(3,4,5−トリクロロフェニル)エタノンの調製
【化12】
磁気スターラ、ガス導入用のガラス管および還流凝縮器を備えた10mLの2首丸底フラスコに式IVbの化合物(1−(3,4−ジクロロ−5−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン、5.82g、18.8mmol、93%純度)を入れた。このフラスコを油浴に入れ、220℃(外部温度)に加熱した。低速の塩素ガス流を9.5時間かけて液体の表面下に導入した。反応オフガスは、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。この時点の後、出発材料の転換率は99.5%(GC面積%、FID)であった。反応混合物を窒素でパージしてこの系から塩素ガスを除去し、同時に約60℃に冷却した。ジクロロメタン(5mL)を還流凝縮器を通して導入し、得られた溶液を排出した。このフラスコを少量のジクロロメタン(5mL)ですすいだ。溶媒を減圧下で除去して、式Ibの化合物(2,2,2−トリフルオロ−1−(3,4,5−トリクロロフェニル)エタノン)を白色の結晶性材料(5.37g)として得た。式Icの表題の化合物は、定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)で93%の化学純度を有していた。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 8.05(d,J=0.8Hz,2H)
13C NMR(101MHz,CDCl3)δppm 116.1(q,1JC-F=290.5Hz),129.0,129.5(m),135.8,139.5,177.9(q,2JC-F=36.6Hz)。
19F NMR(376MHz,CDCl3)δppm−71.68。
【0023】
実施例P4:式IIcの化合物:2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノンの調製
【化13】
冷却用サーキュレータ、機械式スターラおよびガス導入用のガラス管を備えた2Lのガラス反応器中にフルオロベンゼン(865g、9.00mol)を入れた。反応器の内容物を−5℃に冷却し、細かく粉末化した無水塩化アルミニウム(444g、3.30mol)を一度に添加した。塩化トリフルオロアセチルガス流(400g、3.02mol)を3時間かけて−5℃で液体の表面下に導入した(2.2g/分)。反応オフガスは、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。反応混合物を0℃でさらに3時間撹拌し、次いで、30℃未満の温度を維持しながら(強力な冷却が必要)、この混合物を氷冷水(1200g)にゆっくりと添加した。水性の下方の層を分離し、有機層を水(300mL)で洗浄した。生成物を、50cmのビクリューカラムを用い、以下のとおり分留して単離した:バッド温度(bad temperature)を100℃から140℃に昇温させながら、フルオロベンゼンの大部分を常圧で蒸留した。次いで、バッド温度(bad temperature)を80℃に下げ、装置を200mbarに排気した。残りのフルオロベンゼンを蒸留した後、生成物を100〜101℃のヘッド温度(200mbar)で収集した。収率437g。定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)によれば、材料は99%の純度を有していた。回収したフルオロベンゼン(546g)を次の実施で用いた。
【0024】
Alsスペクトルデータは市販されている材料のものと一致していた。
【0025】
実施例P5:式IIIcの化合物:2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロ−3−ニトロ−フェニル)エタノンの調製
【化14】
磁気スターラ、温度計および滴下漏斗を備えた100mLの3首丸底フラスコ中に式IIcの化合物(2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノン、19.8g、102.0mmol)および濃硫酸(50.0g、95〜98%、492mmol)を入れた。濃硝酸(10.5g、65%、107.1mmol)を15分間かけて添加した。添加時間中、反応混合物は55℃に達し、次いで、水浴を用いて冷却することによりこの温度に維持した。添加が完了した後、水浴を外し、反応混合物を周囲温度で一晩(15時間)撹拌した。水(13.0g)を反応混合物に添加した。薄い黄色の有機層を分離したところ、主に式IIIcの化合物を含有していた。定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)によれば、材料は95.6%の純度を有していた。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.55(dd,J=9.8,8.8Hz,1H),8.38(dm,J=8.9Hz,1H),8.79(dd,J=7.0,2.0Hz,1H)
13C NMR(101MHz,CDCl3)δppm 116.1(q,1JC-F=290.5Hz),120.0(d,J=21.7Hz),126.6(d,J=4.1Hz),128.6,136.8(dm,J=10.5Hz),137.9,159.3(d,1JC-F=276.6Hz),177.6(q,2JC-F=36.8Hz)
19F NMR(376MHz,CDCl3)δppm−104.95(s,1F),−71.78(s,3F)。
【0026】
実施例P6:式IIIcの化合物:2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロ−3−ニトロ−フェニル)エタノン(発煙硝酸を使用)の調製
【化15】
磁気スターラ、温度計および滴下漏斗を備えた100mLの3首丸底フラスコ中に式IIcの化合物(2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノン、38.8g、200mmol)および濃硫酸(40.0g、95〜98%、400mmol)を入れた。発煙硝酸(13.9g、99%、215mmol)を1時間30分かけて添加した。添加時間中、反応混合物は60℃に達した。添加が完了した後、反応混合物を60℃で1時間撹拌した。薄い黄色の有機層を分離して46.0gの表題の化合物を得た。定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)によれば、材料は97.5%の純度を有していた。
【0027】
実施例P7:式IVbの化合物:1−(3−クロロ−4−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノンの調製(化合物IIc、2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノンからのワンポット反応)
【化16】
磁気スターラ、温度計および滴下漏斗を備えた50mLの3首丸底フラスコ中に発煙硫酸(20.4g、20〜30%SO3)を入れた。フラスコの内容物を氷浴中において5℃に冷却し、式IIcの化合物(2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノン、10.0g、51.5mmol)を一度に添加した。発煙硝酸(3.42g、54mmol)を、25℃未満の温度を維持しながら15分間かけてこの混合物に添加した。冷却浴を外し、この反応混合物を周囲温度で1時間撹拌した。この時点で、HPLC分析は、式IIcの出発材料から式IIIcの中間体への99.4%の転換率を示していた。このフラスコを油浴に入れ、120℃(外部温度)に加熱した。トリクロロイソシアヌル酸(4.00g、17.2mmol)を一度に添加した。反応混合物を1時間20分撹拌し、続いて、第2の分量のトリクロロイソシアヌル酸(1.05g、4.5mmol)を添加した。14時間攪拌した後、出発材料の転換率は75%(HPLC)であった。第3の分量のトリクロロイソシアヌル酸(0.97g、4.2mmol)を添加し、温度を140℃に昇温した。140℃でさらに6時間攪拌した後、転換率は94%に達した。反応混合物を周囲温度に冷却し、水浴中で冷却しながらゆっくりと水(4.2g)を添加した。生成物をジクロロメタン(10mLおよび5mL)で2回抽出した。溶媒を減圧下で除去して、表題の式IVbの化合物を黄色の油状の液体(13.2g)として得た。定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)によれば、材料は88.0%の純度を有していた。
【0028】
異なる実験からの式IVbの粗材料(47.6g)を0.07mbarで25cmビクリューカラムを用いて分留により精製して、式IVbの化合物(44.62g、b.p.58〜61℃)を92%の化学純度(定量1H NMR分析、内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)で得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 8.41(dm,J=5.8Hz,1H),8.65(dm,J=6.0Hz,1H)。
19F NMR(376MHz,CDCl3)δppm−105.95(s,1F),−71.67(s,3F)。
【0029】
実施例P8:式IVbの化合物:1−(3−クロロ−4−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノンの調製(化合物IIc、2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノンからのワンポット反応、生成物は蒸留により単離した)
【化17】
冷却用サーキュレータ、機械式スターラおよび2つの滴下漏斗を備えた0.5Lのガラス反応器中に式IIcの化合物(2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノン、194g、1.00mol)および濃硫酸(70.0g、95〜98%、0.70mmol)を入れた。発煙硫酸(66%SO3、127g、1.05mol SO3)および発煙硝酸(99%、66.8g、1.05mol)を、50℃未満の温度に維持しながら2時間かけて同時に添加した。反応混合物を25℃で5時間撹拌し、次いで、1時間で50℃撹拌した。
【0030】
発煙硫酸(66%SO3、150g、1.24mol SO3)を反応混合物に1時間かけて添加した。反応混合物を100℃に加熱し、続いて、トリクロロイソシアヌル酸(81g、0.33mol)を100〜105℃で2時間以内に数回に分けて添加した。反応混合物を3時間30分撹拌し、続いて、トリクロロイソシアヌル酸(15.2g、0.062mol)を一度に添加した。100〜105℃で3時間攪拌した後、次の分量のトリクロロイソシアヌル酸(7.7g、0.031mol)を添加し、温度を120℃に昇温した。最後に、120℃で4時間攪拌した後、最後の分量のトリクロロイソシアヌル酸(7.7g、0.031mol)を添加し、撹拌を2時間続けた。この時点で、転換率は99%に達した。
【0031】
反応混合物を周囲温度に冷却し、水(25g)をゆっくりと添加した。反応混合物から直接、20cmのビクリューカラムによる減圧下での蒸留で生成物を単離した(b.p.97〜100℃、4mbar)。収率269g。定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)によれば、材料は91.5%の純度を有していた。
【0032】
実施例P9:式Icの化合物、1−(3,5−ジクロロ−4−フルオロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノンの調製
【化18】
磁気スターラ、温度計、ガス導入用のガラス管および還流凝縮器を備えた100mLの2首丸底フラスコ中に式IVcの化合物(1−(3−クロロ−4−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン、10.0g、33.9mmol、92%純度)を入れた。このフラスコを油浴に入れ、230℃(外部温度)に加熱した。低速の塩素ガス流を18時間30分かけて液体の表面下に導入した。反応オフガスは、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。この時点で、出発材料の転換率は、1H NMR分析で71%であった。反応混合物を周囲温度に冷却し、排出した。粗反応混合物を、10cmのビクリューカラムを用いて減圧下(18mbar)で分留して、式Icの表題の化合物(b.p.88〜90℃、6.25g)を出発材料IVc(3.25g、蒸留残渣)から分離した。式Icの表題の化合物は、定量1H NMR分析(内標準として1,1,2,2−テトラクロロエタン)で88%の純度を有していた。蒸留残渣は、81.5%の式IVcの化合物および7.3%の式Icの化合物を含んでいた。
式Icの化合物の単離収率 62.2%。
回収した出発材料IVcの収率 26.4%。
式Icの化合物:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 8.05(dd,J=6.1Hz,0.8Hz,2H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δppm−116.2(q,1JC-F=290.54Hz),124.1(d,J=18.6Hz),126.8(d,J=4.7Hz),131.0,158.7(d,1JC-F=262.7Hz),177.6(q,2JC-F=37.08Hz)。
19F NMR(376MHz,CDCl3)δppm−102.51(s,1F),−71.56(s,3F)。
【0033】
実施例P10:式Icの化合物、1−(3,5−ジクロロ−4−フルオロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノンの調製(大規模実験;塩化カルシウムの存在下での反応)
【化19】
磁気スターラ、温度計、ガス導入用のガラス管および還流凝縮器を備えた250mLの3首丸底フラスコ中に式IVcの化合物(1−(3−クロロ−4−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン、204.0g、0.687mol、91.5%純度)および無水塩化カルシウム(3.9g)を入れた。フラスコを砂浴に入れ、210℃(内部温度)に加熱した。低速の塩素ガス流(約1.5g/h)を33時間かけて液体の表面下に導入した。この時間中、反応温度は210℃から183℃にゆっくりと低下した。反応オフガスは、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。この時点で、出発材料の転換率は1H NMR分析で96%であった。反応混合物を周囲温度に冷却し、排出した。粗反応混合物を30cmの蒸留カラム(排気し、銀コーティングによる断熱ジャケット有し、ガラス床を充填したもの)を用いて減圧下(93mbar)で分留して、式Icの表題の化合物(b.p.100〜102℃、142g)を得た。式Icの表題の化合物は、定量GC分析で95%の純度を有していた。

本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕式I
【化20】
(式中、R1は、水素、フルオロまたはクロロである)の化合物を調製する方法であって、
a)式II
【化21】
(式中、R1は、水素、フルオロまたはクロロである)の化合物とニトロ化剤とを反応させて、式III
【化22】
(式中、R1は、水素、フルオロまたはクロロである)の化合物とする工程;
b)前記式IIIの化合物とトリクロロイソシアヌル酸とを、硫酸または発煙硫酸の存在下で反応させて、式IV
【化23】
(式中、R1は、水素、フルオロまたはクロロである)の化合物とする工程;および
c)前記式IIIの化合物と塩素ガスとを180℃〜250℃の温度で反応させて、前記式Iの化合物とする工程、
を含むことを特徴とする方法。
〔2〕前記ニトロ化剤が、硫酸、硝酸およびそれらの塩から選択されることで特徴付けられる、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記方法が、式IIIの中間体を単離することなく行われることで特徴付けられる、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕式III
【化24】
(式中、R1は、クロロである)の化合物。
〔5〕式IV
【化25】
(式中、R1は、水素、フルオロまたはクロロである)の化合物。
〔6〕式II
【化26】
(式中、R1は、フルオロである)の化合物を調製する方法であって、フルオロベンゼンを、塩化アルミニウムの存在下で、塩化トリフルオロアセチルと反応させることを特徴とする、方法。