特許第6987959号(P6987959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6987959
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20211220BHJP
   G05B 19/4097 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   G05B19/4093 Z
   G05B19/4097 C
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-215738(P2020-215738)
(22)【出願日】2020年12月24日
【審査請求日】2021年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】津久井 陽司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 路彦
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−365538(JP,A)
【文献】 特開昭62−254209(JP,A)
【文献】 特開平10−320027(JP,A)
【文献】 特開2005−149194(JP,A)
【文献】 特開2006−293744(JP,A)
【文献】 特開2009−53736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械における加工を制御するための数値制御装置で用いられる加工プログラムを生成する情報処理装置であって、
コンピュータ支援製造システムにおいて生成された加工プログラムに含まれる複数のコードをそれぞれ解釈する加工プログラム解釈部と、
前記加工プログラム解釈部での解釈結果に基づき、前記加工プログラムを逆変換してAPT(automatically programmed tools)で記述されたAPTプログラムを生成する逆変換部と、
前記数値制御装置の種類に応じて前記APTプログラムに所定のスクリプトを実行して最適化した後に、新たな最適化加工プログラムへ再度変換する最適化処理部と、
を備えた情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、CAM(Computer Aided Manufacturing)で生成されたCL(Cutter Location)データの位置決め経路を自動的に最適化するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6438023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術は、工具の移動時間が最短になるようにCLデータだけに基づいて、最適化したNCプログラムを生成している。そのため、CLデータを公開していないCAMには対応できず、最適化できないCAMがあった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
工作機械における加工を制御するための数値制御装置で用いられる加工プログラムを生成する情報処理装置であって、
コンピュータ支援製造システムにおいて生成された加工プログラムに含まれる複数のコードをそれぞれ解釈する加工プログラム解釈部と、
前記加工プログラム解釈部での解釈結果に基づき、前記加工プログラムを逆変換してAPT(automatically programmed tools)で記述されたAPTプログラムを生成する逆変換部と、
前記数値制御装置の種類に応じて前記APTプログラムに所定のスクリプトを実行して最適化した後に、新たな最適化加工プログラムへ再度変換する最適化処理部と、
を備えた情報処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々なCAM装置から出力された加工プログラムに基づいて、各種の数値制御装置のパフォーマンスをより高いレベルで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】第2実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】第2実施形態に係る情報処理装置の処理の流れを説明する図である。
図4】第2実施形態に係る情報処理装置の処理の概要を示す図である。
図5】第2実施形態に係る情報処理装置の処理の一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る情報処理装置の処理の他の例を示す図である。
図7】第3実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図8】第3実施形態に係る情報処理装置の表示画面の例を示す図である。
図9】第3実施形態に係る情報処理装置の表示画面の例を示す図である。
図10】第3実施形態に係る情報処理装置の処理の具体例を示す図である。
図11】第3実施形態に係る情報処理装置の処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての情報処理装置100について、図1を用いて説明する。情報処理装置100は、工作機械110における加工を制御するための数値制御装置120で用いられる加工プログラム130を生成するための装置である。
【0012】
図1に示すように、情報処理装置100は、加工プログラム解釈部101と、最適化処理部102と、プログラム記憶部103とを含む。
【0013】
加工プログラム解釈部101は、コンピュータ支援製造システムとしてのCAM装置140において生成された加工プログラム150を解釈する。加工プログラム150としては、例えばNC(Numerical Control)プログラムなどが挙げられる。加工プログラム解釈部101は、加工プログラム150の属性に応じたロジックで加工プログラム150に含まれる複数のコードをそれぞれ解釈する。加工プログラム150を解釈した結果は、如何なる形式で表されてもよい。例えば、APT(automatically programmed tools)で記述された工具経路データとしてのCLデータ、もしくは情報処理装置100の内部データといった形式でもよい。APTとは、工作機械の数値制御用に開発されたプログラミング言語であり、製作する機械部品の形状に基づいて工具経路や加工手順を自動的に決定することができる。APTの工具経路決定機能をより精密に改良したEXAPT(extended subset of APT)を用いてもよい。また、加工プログラム解釈部101は、加工プログラム150に含まれている非標準化コードを標準化コードに置き換えた加工プログラムを解釈結果として出力してもよい。
【0014】
最適化処理部102は、加工プログラム解釈部101における解釈の結果に最適化処理を実行する。具体的には、工作機械110や数値制御装置120の仕様に応じて加工プログラム150に含まれるコードを更新して最適化加工プログラム130を生成する。最適化処理を施された最適化加工プログラム130は、数値制御装置120に送信される。
【0015】
プログラム記憶部103にはデータ処理プログラム131が保存されている。不図示のプロセッサが、データ処理プログラム131を実行することにより、加工プログラム解釈部101や最適化処理部102の機能を実現する。
【0016】
以上の構成によれば、様々なCAM装置から出力される加工プログラムを解釈して最適化機能を付与した新たな加工プログラムを工作機械の数値制御装置に出力できる。結果としてCAM装置の種別に依存することなく、工作機械や数値制御装置に固有の最適化機能を自動的に加工プログラムに付与することができ、工作機械や数値制御装置の機能を最大限に生かすことができる。例えば、加工時間の短縮、面品位の向上、電力やクーラントの節約、切子の効率的な除去、工程管理の可視化による効率化などを実現することができる。なお、情報処理装置100が有する機能を工作機械内部に実装させてもよい。
【0017】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態としての情報処理装置200について、図2を用いて説明する。情報処理装置200は、数値制御装置220で用いられる加工プログラムとしてのNCプログラム230を生成するための装置である。数値制御装置220は、工作機械210における加工を数値制御する装置であり、NCプログラム230を解釈するNCインタプリタ221と工作機械210を制御指令を出力する指令出力部222とを含む。
【0018】
工作機械210としては、例えば、ワークに付加加工(Additive Manufacturing)を加える機械、ワークに除去加工(Subtractive Manufacturing)を加える機械、レーザなどの光を照射して加工する機械などが挙げられる。具体的には、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤、多軸加工機、レーザ加工機、積層加工機等のように、NCプログラムに基づいて数値制御され、金属、木材、石材、樹脂等のワークに対して、旋削、切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ、成形、微細加工、積層加工等の各種の加工を施す。さらに、工作機械には計測機能を有するものがあり、タッチプローブやカメラ等の計測器を用いてワークの寸法等を計測可能に構成されている。
【0019】
工作機械210は、例えば3軸加工機であり、機械要素として、主軸モータ211および送り軸モータ212を含む。主軸モータ211は、工具を回転させ、送り軸モータ212は、ボールねじ等を介してテーブルをX,Y軸方向に直線移動させたり、工具またはテーブルをZ軸方向に直線移動させたりする。工作機械210はもちろん5軸加工機でもよい。
【0020】
主軸モータサーボコントローラ213は、指令出力部222からの制御指令に基づいて主軸モータ211を制御する。送り軸モータサーボコントローラ214は指令出力部222からの制御指令に基づいて送り軸モータ212を制御する。
【0021】
情報処理装置200は、NCプログラム取得部201と、NCインタプリタ202と、APT変換部203と、最適化処理部204と、プログラム送信部205と、各種情報記憶部206を含む。
【0022】
NCプログラム取得部201は、CAM装置240において生成されたNCプログラム250を取得する。CAM装置240は、メインプロセッサ部241とポストプロセッサ部242とを有する。メインプロセッサ部241は、CAD(Computer-Aided Design)装置260から取得した形状データに基づいてCLデータ243を生成する。ポストプロセッサ部242は、CLデータ243からNCプログラム250を生成する。
【0023】
情報処理装置200において、NCインタプリタ202は、NCプログラム250に含まれる複数のコードをそれぞれ解釈する。NCインタプリタ202は、数値制御装置220が備えているNCインタプリタ221と同等の機能を実現する。NCインタプリタ202は、具体的には、NCプログラム250に含まれているISO4343:2000の標準コード以外のコードを、標準コードに置き換える。APT変換部203は、解釈したNCプログラムからAPTで記述されたCLデータへの逆変換を行う。通常は、ポストプロセッサ部242でAPT→NCの変換が一般的に行われるが、APT変換部203では、NC→APTという逆変換を行う。ISO4343:2000で規定されている標準コードは、軸位置や送り速度等のNC制御や、ワークの把持、クーラントのオン/オフ等のPLC(Programmable Logic Controller)制御などのためのコードである。これらはどんな数値制御装置でも解釈可能な基本的な制御指令である。
数値制御装置220で実行されるNCプログラム処理前のNCプログラムの(i)数値制御装置220で実行できるように規定されていないコードまたは(ii)工作機械の第2数値制御装置で実行する指令と工作機械の第1数値制御装置で実行する指令とが異なるコードのうちのあらかじめ設定された設定コードを検出し、検出された設定コードと対応するAPTコードをもとに、第1数値制御装置で実行することができる変換コードに設定コードから変換する処理後のNCプログラムに処理する。
【0024】
最適化処理部204は、APTで記述されたCLデータに対して所定のスクリプトを実行し、最適化処理を施した後、NCプログラム230を生成する。最適化処理部204は、工作機械210または数値制御装置220に不要な不要コードの削除、および、工作機械210または数値制御装置220に固有の機能を実現する機能コードの追加、の少なくともいずれか一方を加工プログラム250に実行する。プログラム送信部205は、最適化されたNCプログラム230を数値制御装置220に送信する。
【0025】
ここで最適化処理とは、加工時間の短縮、加工精度の向上、電力やクーラントの節約、切屑の効率的な除去、工程管理の可視化による効率化、計測処理等のように、機械加工にメリットをもたらす全ての処理を含む概念である。具体的には、最適化処理として、以下に示す(1)〜(4)のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
(1)サーボ特性の最適化
カスタムマクロによって下記(a)〜(d)のような加工モードが実装されている場合、所望の加工モードを指定することにより、加工精度や加工時間を最適化することができる。
(a)時間優先モード:加工時間の短縮を最優先するモード。荒加工など要求精度が低い場合に使用する。
(b)中間モード:時間優先モードと精度優先モードとの中間にあたるモード。高精度と短時間が要求される中仕上げ加工等に使用する。
(c)精度優先モード:加工精度の向上を優先するモード。加工精度や仕上げ面を要求される場合に使用する。
(d)精度最優先モード:精度優先モードよりも加工精度をさらに優先するモード。
【0027】
(2)サーボ特性の自動最適化
PLCによってサーボを自動調整する機能が実装されている場合、ワークや治具の質量や慣性モーメントを計測し、そのフィードバック値に基づいて最適な加減速を設定する。具体的には、ワークや治具の質量が重く、慣性モーメントが大きい場合、加減速を抑制し、安定した位置決めを実現する。一方、ワークや治具の質量が軽く、慣性モーメントが小さい場合、加減速を最大限に引き上げ、加工時間の短縮を実現する。
【0028】
(3)チップコンベアのオン/オフ制御の最適化
PLCによって切屑を排出するチップコンベヤのオン/オフ機能が実装されている場合、加工シミュレーションによって時間経過に伴う切屑の体積を算出し、その切屑の量に応じてチップコンベアのオン/オフ制御を最適化する。具体的には、非切削時や切屑の量が少ない時間帯にはチップコンベヤをオフにすることで、チップコンベヤの駆動電力が節約されるとともに、切削油の使用効率が向上する。
【0029】
(4)工程管理の最適化
CAM装置、情報処理装置、工作機械のHMIのNCビューワー間で同一加工に対して、共通の加工工程IDでタグ付けする機能が実装されている場合、以下のような機能を実現でき、工程管理が最適化される。
・後工程で変更点を表示または更新する機能
・工作機械を運転する際は変更点をハイライト表示する機能
・直前の位置決め指令で停止する機能
・送り速度や主軸回転数等の数値のみ変更されている場合は、前工程に変更点をアップデートする機能
【0030】
各種情報記憶部206は、NCプログラム取得部201、NCインタプリタ202、APT変換部203、最適化処理部204、およびプログラム送信部205を実現するプログラムモジュールを記憶している。また、各種情報記憶部206は、上述の最適化処理情報の他、コマンドテーブルおよび工作機械情報を記憶している。ここでコマンドテーブルは、標準化フォーマットのコマンドおよび引数と、NCプログラムのコマンド(NCコード)との対応関係を示すテーブルである。
【0031】
また、工作機械情報は、工作機械メーカや機種が異なる様々な工作機械に関する情報であり、機械原点、機種ストローク長、機械固有指令のGコード、Mコード(Mxx,Mxy)等であり、その他、以下の情報を含む場合がある。
(1)工作機械の型番
(2)オプション情報(タレット数、主軸径、サーボ、チップコンベヤの種類や有無、計測装置の種類や有無)
(3)使用可能工具種(例:ドリル、エンドミル)
(4)マガジンのポット数やポット番号
【0032】
図3は、CAM装置240から工作機械210への処理の流れを概念的に説明する図である。
CAM装置240において、ステップS301でモデル入力を行い、ステップS302で加工形状を提示した後、ステップS303で工程設計(切削条件設定)を行う。さらに、ステップS304では、工程設計に基づいてCLデータを生成する。ステップS305においてCLシミュレーションを行い、工具の経路において干渉が発生しないか確認すると、S306において、CLデータからNCプログラムを生成する。
【0033】
次に、情報処理装置200は、ステップS307において、受け取ったNCプログラムを解釈し、ステップS308において、NCプログラムを最適化する。具体的には、切削に関して切削力の標準化や工具送り、AM(Additive Manufacturing)に関して、積層条件、ステージ送り、レーザ出力、パウダー供給量など、あるいは計測機能などを最適化して、CAM装置240からのNCプログラムにコードを追加する。その後、工作機械210では、ステップS310において実加工を行う。
【0034】
図4は、異なるベンダのCAM装置240a〜240cがそれぞれのポストプロセッサ部242a〜242cで生成した異なる種類のNCプログラム250a〜250cを、情報処理装置200が解釈して、それぞれ最適化することを説明する概念図である。図4に示すように、CAM装置の種別に依存することなく、工作機械や数値制御装置に固有の最適化機能をNCプログラムに自動的に付与することができる。これにより、工作機械や数値制御装置の機能を最大限に生かすことができる。例えば、加工時間の短縮、面品位の向上、電力やクーラントの節約、切子の効率的な除去、工程管理の可視化による効率化などを実現することができる。
【0035】
図5図6は、NCプログラムの最適化の具体例を示す図である。図5において、CAM装置240aのポストプロセッサ部242aから出力されたNCプログラムの一例250aに対して、NCインタプリタ202によって、解釈結果501が付与される。この例はあくまでも概念的に示したもので、このように日本語でデータが付加されることを意味しない。
【0036】
最適化処理部204は、解釈結果501を分析して、切削開始のコードG01の直前にG332という切削モード設定のコード502を挿入することによって、切削開始前に加工を最適化する。G332は数値制御装置220のベンダに依存するコードであり、数値制御装置220に合わせた最適化を実現させる。具体的には、NCインタプリタ202でNCプログラム250aを逆変換して生成されたAPT形式のCLデータに対して所定のスクリプトを実行して最適化した後に、再度、NCプログラムへの変換を行うと、G01の前にG332が挿入される。その他のやり方として、NCプログラム250aのまま、G01を検索して、G01の直前にG332を挿入する最適化マクロを実行してもよい。この場合、挿入すべきコード(例えばG332)とその位置(例えばG01直前)とが対応付けられたテーブルを備えていることが好ましい。
【0037】
結果として、加工条件を付与したNCプログラム230aが数値制御装置220に出力される。
【0038】
図6においては、CAM装置240bのポストプロセッサ部242bから出力されたNCプログラムの一例250bに対して、NCインタプリタ202によって、解釈結果601が付与される。
【0039】
最適化処理部204は、解釈結果601を分析して、切削開始のコードG01の直前にCYCLE832という切削モード設定のコード602を挿入することによって、切削開始前に加工を最適化する。CYCLE832は、やはり数値制御装置220のベンダに依存するコードであり、数値制御装置220に合わせた最適化を実現させている。
【0040】
具体的には、NCインタプリタ202でNCプログラム250aを逆変換して生成されたAPT形式のCLデータに対して所定のスクリプトを実行して最適化した後に、再度、NCプログラムへの変換を行うと、G01の前にCYCLE832が挿入される。その他のやり方として、NCプログラム250a中でG01を検索して、G01の直前にCYCLE832を挿入する最適化マクロを実行してもよい。この場合、挿入すべきコード(例えばCYCLE832)とその位置(例えばG01直前)とが対応付けられたテーブルを備えていることが好ましい。
【0041】
結果として、加工条件を付与したNCプログラム230bが数値制御装置220に出力される。
【0042】
図5図6に示すように、出力位置や出力コードが異なる様々なNCプログラムに同様に対応することができ、ISO準拠のNCコードを解釈することができる。加工条件を付与したNCプログラムを生成、出力することができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る情報処理装置700について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態に係る情報処理装置700の構成を説明するための図である。本実施形態に係る情報処理装置700は、上記第2実施形態と比べると、標準化CLデータ取得部701を有する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0044】
APTを公開しているCAM装置740に対しては、メインプロセッサ部741から出力されたCLデータ743に標準化情報を追加した標準化CLデータ745を生成するCLデータ標準化部744を組み込むことができる。CLデータ標準化部744は、CLデータに含まれる固有制御情報を特定し、固有制御情報に対応する標準化フォーマットでラベル付けした標準化CLデータ745を生成する。
【0045】
情報処理装置700の標準化CLデータ取得部701は、標準化CLデータ745を取得し、標準化情報に対応するNCコードとCLデータとに基づいてNCプログラム730を生成する。このようにして生成されたNCプログラム730には、ISO4343:2000に準拠する標準化コード731以外に、CLデータ標準化部744と連携した加工工程情報732やNCマクロ733を追加することができる。
【0046】
CLデータに含まれる制御情報以外に、以下の固有制御情報を含む固有の制御指令についてもNCプログラム730に組み込むことができる。
(a)工作機械の数値制御装置メーカによって独自に実装されている「数値制御装置の固有制御情報」
(b)工作機械メーカによって独自に実装されている「工作機械の固有制御情報」
(c)工作機械のユーザによって独自に実装されている「工作機械のユーザの固有制御情報」
【0047】
ここで、(a)数値制御装置の固有制御情報としては、以下のものが挙げられる。
(1)数値制御装置の型番(例:RPFK)
(2)数値制御装置メーカのカスタムマクロ 例:タッピングサイクル(TAP)、G84XYZRPFK(メーカA)、G84XYZPF,R00,I,J,L(メーカB)
【0048】
また、(b)工作機械の固有制御情報としては、以下のものが挙げられる。
(1)工作機械の型番(例:DMGMORI(登録商標))
(2)工作機械メーカのカスタムマクロ 例:工作機械の型番に対応するドリルに関するマクロ(G432等)
【0049】
一方、(c)工作機械のユーザが設定できる固有制御情報としては、以下のものが挙げられる。
(1)穴あけサイクルパターン(例:CYCLE)
(2)工作機械ユーザのカスタムマクロ 例:穴あけサイクルパターン(CYCLE)と対応関係があるマクロ(G65P1000等)
【0050】
そして、それぞれの固有制御情報について、その仕様を標準化するための標準化フォーマットなどのように、CAM装置と数値制御装置との間で規定された規則に基づいた標準化情報を用いて標準化CLデータが生成される。すなわち、本実施形態において、固有制御情報とは、ISO4343:2000で規定されている情報以外のカスタムマクロや加工工程情報等のような情報である。
【0051】
なお、固有制御情報の一つであるNCマクロ733は、GコードやMコードを拡張するためのプログラムである。NCマクロ733により、工作機械の数値制御装置メーカ、工作機械メーカ、工作機械のユーザのそれぞれが独自に固有の機能(Gxx,Gxy,Mxx,Mxy等)を実装することが可能である。
【0052】
また、固有制御情報の一つである加工工程情報732は、HMI710による工程管理や各種加工情報を把握し、作業の効率化やトレーサビリティを目的とする機能を実現するための付加情報である。HMI710は、工作機械210を操作するためのアプリケーションプログラムや、工作機械210の状態をモニターするためのアプリケーションプログラムであり、タブレットやスマートフォン等にも搭載可能となっている。このため、HMI710における各種データを可視化することで、工作機械210の操作性が向上する。
【0053】
なお、(a)数値制御装置の固有制御情報、(b)工作機械の固有制御情報および(c)工作機械のユーザの固有制御情報は、必ずしも全て必要なわけではない。ワークの種類や加工方法によっては、少なくともいずれか一つまたは二つの固有制御情報だけを考慮してNCプログラムを生成すればよい場合もある。
【0054】
標準化情報の一つである標準化フォーマットは、コマンド名と、当該コマンドにて指定可能な引数名とを含んでおり情報処理装置700においてあらかじめ記憶されている。例えば、計測機能を示すコマンド「PROCMOD」に対して、仕上げ加工を示す引数「FIN」と、荒加工を示す引数「ROUGH」とが定義されている。
【0055】
これにより、工作機械メーカ固有の制御であるNCマクロ733で、NCとPLC(programmable logic controller)720の両方を制御することができる。NCマクロ733は工作機械メーカにより固有に作成される(GコードとMコードの組み合わせで実現される機能)。また、PLC720はIOを制御する。つまり、工作機械メーカの固有制御はNCマクロによるNC制御と、PLCによるIO制御の2種類がある。
【0056】
また、加工工程情報732についてAPT仕様を標準化することにより、工作機械210やHMI(Human Machine Interface)710の各種最適化機能を利用できる。
【0057】
情報処理装置700は、表示装置に図8に示すような機能選択ダイヤログ800を表示し、ユーザが最適化処理を選択できる構成としてもよい。最適化処理部204は、ユーザによって選択された最適化処理を施したNCプログラム730を出力する。標準化対応表示部分801で選択された最適化処理が施されたNCプログラム730に変換される。
【0058】
標準化CLデータには、オペレーションとオペレーションとを繋ぐ動き(オペレーションリンク)に関するデータが含まれているが、CAMの機種によっては、出力されるCLデータに、そのようなデータが含まれていない場合がある。例えば図9に示すような機能選択ダイヤログ800のオペレーションリンク選択部901において、ユーザが選択したパスを含むNCプログラムを生成することも可能である。この構成により、ユーザはCAMの機種に依存することなく、最適なパス生成機能を利用できる。
【0059】
図10図11は、NCプログラムを最適化する例を示す図である。図10において、A社、B社、C社の各CAM装置740a〜740cにCLデータ標準化機能を持たせてCADデータを取り込ませると、仕上げ加工を指定する標準化フォーマット(PROCMOD/FIN)でラベル付けされたCLデータ745が出力される。
【0060】
情報処理装置700は、コマンドテーブル1001から、標準化フォーマット(PROCMOD/FIN)に対応するNCコード(G915H42)を読出し、NCプログラムに反映させて最適化されたNCプログラム730として出力する。最適化されたNCプログラム730を用いて工作機械を制御すると、仕上げ加工でのみ計測機能が自動的にオンとなり、荒加工では計測機能が自動的にオフになる。
【0061】
このように様々なCAM装置から出力されたCLデータを、簡単かつ正確にNCプログラムに変換することができ、CAM装置に依存することなく、固有制御情報によって特定される様々な最適化機能を利用することができる。また、情報処理装置700が様々なCLデータを一元的に変換するため、最適化機能を情報処理装置700に集約でき、システム全体の開発を効率化することができる。さらに、工作機械の特性を十分に考慮し、工作機械の様々なオプション機能を漏れなく活用したNCプログラムを生成でき、工作機械のパフォーマンスを向上させる。工作機械の機種ごとにポストプロセッサを用意する必要がなく、情報処理装置700で複数の工作機械用のNCプログラムを生成できるため、ポストプロセッサの開発費用や開発に係る時間を削減することができる。
【0062】
図11においては、ユーザによる拡張機能に対応するようにNCプログラムを最適化する。具体的には、拡張しようとする標準機能として、Gコードの固定サイクルのうち、高速深穴あけサイクル(G73)を選択する。このような穴あけ加工では、標準機能による通常の穴あけではなく、ユーザが自ら作成した穴あけ用のカスタムマクロを使用したいという要求がある。
【0063】
そこで、図11に示すように、ユーザによる拡張機能を指示する「DRILL1」や「DRILL2」等の標準化フォーマットをあらかじめコマンドテーブルに定義しておき、対応するNCコードは空欄(予約状態)とする。そして、呼び出したいカスタムマクロ(G65P1000)を「DRILL1」に対応する空欄に追加で実装する。
【0064】
その後、図10で示した例と同様、CLデータ生成機能を持たせたCAM装置740a〜740cにCADデータを取り込ませると、拡張機能を指定する標準化フォーマット「CYCLE/DRILL1」でラベル付けされたCLデータ745が出力される。
【0065】
つぎに、CLデータ745を受け取った情報処理装置700は、コマンドテーブル1101から、標準化フォーマットに対応するNCコード(G65P1000)を読出し、NCプログラムに反映させ、最適化NCプログラム730として出力する。
【0066】
最適化NCプログラム730を用いて工作機械を制御すると、ユーザによって作成されたカスタムマクロを呼び出して穴あけ加工を実行する。
【0067】
このように、情報処理装置700でカスタムマクロに対応するNCコードを標準化フォーマットに対応付けることによって、ユーザによる拡張機能に対応するようにNCプログラムを最適化できる。
【0068】
以上のように、本実施形態では、最適化機能を入れ込むポストプロセッサを生成するためのフレームワークを構築した。標準化されたAPTを構築し、生成された標準化CLコードに基づいて多くの最適化機能を実現することができる。情報処理装置700がCAM装置にも数値制御装置にも依存しない共通のポストプロセッサとして機能して、最適化機能を実現できる。従来機械個別に実装する必要があった最適化機能をPOST標準機能として利用でき、工作機械のユーザの負担を減らすことができる。
【0069】
NCプログラムの一部のコードについては既にISOで標準化されているが、それ以外の機械メーカ固有の制御についても標準化し最適化することができる。
【0070】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0071】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
具体的には、工作機械における加工を制御する数値制御装置で用いられる加工プログラムを生成する情報処理方法であって、
コンピュータ支援製造システムにおいて生成された加工プログラムに含まれる複数のコードをそれぞれ解釈する加工プログラム解釈ステップと、
前記数値制御装置の種類に応じて前記加工プログラムに含まれるコードを最適化して新たな最適化加工プログラムを生成する最適化処理ステップと、
を含む情報処理方法や、
工作機械における加工を制御する数値制御装置で用いられる加工プログラムを生成する情報処理プログラムであって、
工作機械における加工を制御する数値制御装置で用いられる加工プログラムを生成する情報処理方法であって、
コンピュータ支援製造システムにおいて生成された加工プログラムに含まれる複数のコードをそれぞれ解釈する加工プログラム解釈ステップと、
前記数値制御装置の種類に応じて前記加工プログラムに含まれるコードを最適化して新たな最適化加工プログラムを生成する最適化処理ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラムも、本願発明の技術範囲に含まれる。
【要約】
【課題】様々なCAM装置から出力された加工プログラムに基づいて、各種の数値制御装置のパフォーマンスをより高いレベルで実現すること。
【解決手段】工作機械における加工を制御するための数値制御装置で用いられる加工プログラムを生成する情報処理装置であって、
コンピュータ支援製造システムにおいて生成された加工プログラムに含まれる複数のコードをそれぞれ解釈する加工プログラム解釈部と、
数値制御装置の種類に応じて加工プログラムに含まれるコードを最適化して新たな最適化加工プログラムを生成する最適化処理部と、
を備えた情報処理装置。
【選択図】 図1
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図10
図11