(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987978
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法及び電界効果トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20211220BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20211220BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20211220BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
H01L29/78 301P
H01L29/78 301C
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L29/50 M
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-514253(P2020-514253)
(86)(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公表番号】特表2020-532879(P2020-532879A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】CN2017109532
(87)【国際公開番号】WO2019047356
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年3月24日
(31)【優先権主張番号】201710792114.8
(32)【優先日】2017年9月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520076048
【氏名又は名称】ザ サーティーンス リサーチ インスティチュート オブ チャイナ エレクトロニクス テクノロジー グループ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジュフォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンジン
(72)【発明者】
【氏名】ユー ツイ
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ チョアンジェ
(72)【発明者】
【氏名】グオ ジェンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】フォ ズァチャオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ チンビン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ シュエドン
【審査官】
岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−172023(JP,A)
【文献】
特開2006−216716(JP,A)
【文献】
特開2017−050485(JP,A)
【文献】
特開2008−091564(JP,A)
【文献】
特開平11−330460(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104992975(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第107919390(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 29/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法であって、
高抵抗層であるダイヤモンド層の上面に導電層を形成するステップと、
前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップと、
前記導電層上のソース電極領域に対応する第1領域にソース電極を製造し、前記導電層上のドレイン電極領域に対応する第2領域にドレイン電極を製造するステップと、
前記導電層上のソースゲート領域に対応する第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積し、前記導電層上のゲートドレイン領域に対応する第4領域の上面に光触媒誘電体層を堆積するステップと、
前記光触媒誘電体層に光を照射するステップと、
前記導電層上のゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極を製造するステップと、を含むことを特徴とするダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップの前に、前記導電層の上面に第1金属層を堆積するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップは、具体的には、
フォトリソグラフィプロセスによって、第1金属層上のアクティブ領域に対応する領域にフォトレジストを被覆するステップと、
エッチング液によって、パッシブ領域に対応する領域の第1金属層を除去するステップと、
エッチングプロセスによって、前記パッシブ領域に対応する領域の導電層を除去するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含むことを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記導電層上のソース電極領域に対応する第1領域にソース電極を製造し、前記導電層上のドレイン電極領域に対応する第2領域にドレイン電極を製造するステップは、具体的には、
前記ソース電極領域及び前記ドレイン電極領域に対応する領域以外の前記第1金属層上の領域にフォトレジストを被覆するステップと、
前記第1金属層上の前記ソース電極領域に対応する領域の上面に第2金属層を堆積してソース電極を形成し、前記第1金属層上の前記ドレイン電極領域に対応する領域の上面に第2金属層を堆積してドレイン電極を形成するステップと、
フォトレジストを除去するステップと、を含むことを特徴とする請求項3に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記導電層上のゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積するステップは、前記導電層上のソースゲート領域に対応する第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積するステップの前にあり、
前記導電層上のゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極を製造するステップは、具体的には、
前記ソースゲート領域、前記ゲート電極領域及び前記ゲートドレイン領域に対応する領域の第1金属層を除去するステップと、
前記導電層の第5領域の上面にゲート誘電体層を堆積するステップと、
前記ゲート誘電体層の上面に第3金属層を堆積してゲート電極を形成するステップと、を含むことを特徴とする請求項4に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記導電層上のソースゲート領域に対応する第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積し、前記導電層上のゲートドレイン領域に対応する第4領域の上面に光触媒誘電体層を堆積するステップは、具体的には、
光触媒誘電体層を堆積するステップと、
光触媒誘電体層上のソースゲート領域に対応する領域及びゲートドレイン領域に対応する領域の両方にフォトレジストを被覆するステップと、
それぞれ前記ソース電極領域、前記ドレイン電極領域、前記ゲート電極領域及び前記パッシブ領域に対応する領域の光触媒誘電体層を除去するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含むことを特徴とする請求項5に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップは、具体的には、
前記導電層上のアクティブ領域に対応する領域にフォトレジストを被覆するステップと、
パッシブ領域に対応する領域の導電層を除去して、アクティブ領域メサを形成するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記導電層上のソース電極領域に対応する第1領域にソース電極を製造し、前記導電層上のドレイン電極領域に対応する第2領域にドレイン電極を製造するステップは、具体的には、
フォトリソグラフィプロセスによって、前記第1領域及び前記第2領域以外の領域にフォトレジストを被覆するステップと、
前記第1領域の上面に第2金属層を堆積してソース電極を形成し、前記第2領域の上面に第2金属層を堆積してドレイン電極を形成するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、
アニーリングプロセスによって、前記ソース電極領域に対応する導電層と前記第2金属層とのオーミックコンタクトを形成し、及び前記ドレイン電極領域に対応する導電層と前記第2金属層とのオーミックコンタクトを形成するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記導電層上の前記ゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極を製造するステップは、具体的には、
前記導電層上の第5領域以外の領域にフォトレジストを被覆するステップと、
前記第5領域の上面にゲート誘電体層を堆積するステップと、
前記ゲート誘電体層の上面に第3金属層を堆積するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項10】
高抵抗ダイヤモンド基板、導電層、ゲート誘電体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を備えるダイヤモンドベース電界効果トランジスタであって、
前記高抵抗ダイヤモンド基板の上面に導電層が設けられ、前記高抵抗ダイヤモンド基板上にアクティブ領域メサが設けられ、
前記導電層上のソース電極領域に対応する第1領域にソース電極が設けられ、前記導電層上のドレイン電極領域に対応する第2領域にドレイン電極が設けられ、
前記導電層上の前記ゲート電極と前記導電層との間の第5領域にゲート誘電体層が設けられ、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極が設けられ、
光触媒誘電体層に光を照射するように、前記ソース電極と前記ゲート電極との間に位置する前記導電層上の第3領域の上面に光触媒誘電体層が設けられ、前記ドレイン電極と前記ゲート電極との間に位置する前記導電層上の第4領域上面に光触媒誘電体層が設けられ、前記第3領域がソースゲート領域に対応し、前記第4領域がゲートドレイン領域に対応することを特徴とするダイヤモンドベース電界効果トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0002】
本発明は半導体の技術分野に関し、特にダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法及び電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0003】
単結晶、多結晶及びナノ結晶のダイヤモンドを材料ベースとする素子はダイヤモンドベース素子と総称され、例えば、ダイヤモンド金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET:Metal Semiconductor Field Effect Transistor)、金属絶縁電界効果トランジスタ(MISFET:Metal Insulating Field Effect Transistor)及び結晶型電界効果トランジスタ(JFET:Junction Field Effect Transistor)等が挙げられる。ダイヤモンドベース素子は動作温度が高く、絶縁破壊電界強度が大きく、カットオフ周波数が高く、出力密度が大きい等の利点を有し、将来のマイクロ波高出力の分野では好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイヤモンドはワイドバンドギャップ半導体として、ドーピングが困難であり、ドーピング原子の活性化エネルギーが高くて活性化が困難であり、キャリア移動度が低い等の問題を抱えている。従来の高性能p型導電チャネルの製造方法では、通常、表面処理によってダイヤモンドの表面に、C−H結合で覆われた水素終端ダイヤモンドを形成し、C−H結合と空気中の近表面吸着層中の水分子やCO
2分子等の極性分子との相互作用を利用し、電子移動によって、近表面にp型導電チャネルを形成する。しかしながら、近表面のアクセプターを提供する吸着層が主に環境中の空気から提供されるため、この近表面システムの環境からの影響が非常に大きく、破壊しやすく、特に高温動作時、極性分子が脱着し、ダイヤモンドの近表面から脱出し、p型チャネルの性能が低下し、さらに故障が発生し、それによって電界効果トランジスタの導通抵抗が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑みて、本発明の実施例は、従来技術ではダイヤモンドベース電界効果トランジスタの導通抵抗が大きい技術的問題を解決するために、ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法及び電界効果トランジスタを提供する。
【0006】
本発明の実施例の第1態様はダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法を提供し、
高抵抗層であるダイヤモンド層の上面に導電層を形成するステップと、
前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップと、
前記導電層上のソース電極領域に対応する第1領域にソース電極を製造し、前記導電層上のドレイン電極領域に対応する第2領域にドレイン電極を製造するステップと、
前記導電層上のソースゲート領域に対応する第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積し、前記導電層上のゲートドレイン領域に対応する第4領域の上面に光触媒誘電体層を堆積するステップと、
前記光触媒誘電体層に光を照射するステップと、
前記導電層上のゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極を製造するステップと、を含む。
【0007】
第1態様の第1の可能な実施形態では、前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップ前に、前記方法は、
前記導電層の上面に第1金属層を堆積するステップをさらに含む。
【0008】
第1態様の第1の可能な実施形態において、第2の可能な実施形態では、前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップは、具体的には、
フォトリソグラフィプロセスによって、第1金属層上のアクティブ領域に対応する領域にフォトレジストを被覆するステップと、
エッチング液によって、パッシブ領域に対応する領域の第1金属層を除去するステップと、
エッチングプロセスによって、前記パッシブ領域に対応する領域の導電層を除去するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含む。
【0009】
第1態様の第2の可能な実施形態において、第3の可能な実施形態では、前記ソース電極領域及び前記ドレイン電極領域に対応する領域以外の前記第1金属層上の領域にフォトレジストを被覆し、
前記第1金属層上の前記第1領域に対応する領域の上面に第2金属層を堆積してソース電極を形成し、前記第1金属層上の前記第2領域に対応する領域の上面に第2金属層を堆積してドレイン電極を形成し、
フォトレジストを除去する。
【0010】
第1態様の第3の可能な実施形態において、第4の可能な実施形態では、前記導電層上のゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積するステップは、前記導電層上のソースゲート領域に対応する第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積するステップの前にあり、前記導電層上のゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極を製造するステップは、具体的には、
前記ソースゲート領域、前記ゲート電極領域及び前記ゲートドレイン領域に対応する領域の第1金属層を除去するステップと、
前記導電層の第5領域の上面にゲート誘電体層を堆積するステップと、
前記ゲート誘電体層の上面に第3金属層を堆積してゲート電極を形成するステップと、を含む。
【0011】
第1態様の第4の可能な実施形態において、第5の可能な実施形態では、前記導電層上のソースゲート領域に対応する第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積し、前記導電層上のゲートドレイン領域に対応する第4領域の上面に光触媒誘電体層を堆積するステップは、具体的には、
光触媒誘電体層を堆積するステップと、
光触媒誘電体層上のソースゲート領域に対応する領域及びゲートドレイン領域に対応する領域の両方にフォトレジストを被覆するステップと、
それぞれ前記ソース電極領域、前記ドレイン電極領域、前記ゲート電極領域及び前記パッシブ領域に対応する領域の光触媒誘電体層を除去するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含む。
【0012】
第1態様の第6の可能な実施形態では、前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造するステップは、具体的には、
前記導電層上のアクティブ領域に対応する領域にフォトレジストを被覆するステップと、
前記パッシブ領域に対応する領域の導電層を除去して、アクティブ領域メサを形成するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含む。
【0013】
第1態様の第7の可能な実施形態では、前記導電層上のソース電極領域に対応する第1領域にソース電極を製造し、前記導電層上のドレイン電極領域に対応する第2領域にドレイン電極を製造するステップは、具体的には、
フォトリソグラフィプロセスによって、前記第1領域及び前記第2領域以外の領域にフォトレジストを被覆するステップと、
前記第1領域の上面に第2金属層を堆積してソース電極を形成し、前記第2領域の上面に第2金属層を堆積してドレイン電極を形成するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、
アニーリングプロセスによって、前記ソース電極領域に対応する導電層と前記第2金属層とのオーミックコンタクトを形成し、及び前記ドレイン電極領域に対応する導電層と前記第2金属層とのオーミックコンタクトを形成するステップと、を含む。
【0014】
第1態様の第8の可能な実施形態では、前記導電層の第5領域にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極を製造するステップは、具体的には、
前記導電層の第5領域以外の領域にフォトレジストを被覆するステップと、
前記第5領域の上面にゲート誘電体層を堆積するステップと、
前記ゲート誘電体層の上面に第3金属層を堆積するステップと、
前記フォトレジストを除去するステップと、を含む。
【0015】
本発明の実施例の第2態様はダイヤモンドベース電界効果トランジスタを提供し、高抵抗ダイヤモンド基板、導電層、ゲート誘電体層、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を備え、前記高抵抗ダイヤモンド基板の上面に導電層が設けられ、前記導電層の上面にソース電極、ドレイン電極及びゲート電極が設けられ、前記ゲート電極と前記導電層との間にゲート誘電体層が設けられ、前記ソース電極と前記ゲート電極との間に位置する前記導電層上の領域に光触媒誘電体層が設けられ、前記ドレイン電極と前記ゲート電極との間に位置する前記導電層上の領域に光触媒誘電体層が設けられる。
【発明の効果】
【0016】
上記技術案によれば、本発明の実施例は、ソース電極とゲート電極との間の領域に光触媒誘電体層を堆積し、ドレイン電極とゲート電極との間の領域に光触媒誘電体層を堆積し、光触媒誘電体層に光を照射すると、触媒誘電体層中の価電子帯電子が遷移し、電子及び正孔を生成し、電子が光触媒誘電体層の表面に吸着されたヒドロキシル及び水と結合してヒドロキシルラジカルを形成し、且つ光触媒誘電体層の表面の溶存酸素が電子を補足してスーパーオキシドアニオンを形成し、その結果、光触媒誘電体層に過剰な正孔が発生し、過剰な正孔が水素終端ダイヤモンド中の移動電子と吸引して中和し、該プロセスによってp型導電チャネルと光触媒誘電体層との界面での電子移動を加速し、さらに水素終端ダイヤモンドに電荷を安定的かつ連続的に供給し、それによってp型導電チャネルの高性能を確保し、ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの導通抵抗を効果的に低減させることができるという有益な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係るダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例2に係るダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法の断面構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例3に係るダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法の断面構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例4に係るダイヤモンドベース電界効果トランジスタの断面構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術案及び利点をより明瞭にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本発明をさらに詳細説明する。なお、ここで説明される具体的な実施例は単に本発明を説明するものであり、本発明を限定しない。
【0019】
図2(1)及び
図3(1)に示すように、ダイヤモンド層21はアクティブ領域及びパッシブ領域に分けられ、前記アクティブ領域とはメサ領域、すなわち、アクティブ素子の製造領域であり、アクティブ領域以外の部分はパッシブ領域である。アクティブ領域はさらにソース電極領域、ゲート電極領域及びドレイン電極領域に分けられ、ソース電極領域及びドレイン電極領域がそれぞれゲート電極領域の両側に位置する。ソース電極領域とゲート電極領域との間の領域はソースゲート領域、ドレイン電極領域とゲート電極領域との間の領域はゲートドレイン領域である。
【0020】
実施例1
図1に示すように、ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法はステップS101〜S106を含む。
【0021】
ステップS101では、高抵抗層であるダイヤモンド層の上面に導電層を形成する。
【0022】
本発明の実施例では、導電層はp型導電層である。ダイヤモンド層の上面にドーピングダイヤモンドを導電層としてエピタキシャル生長し、ドーピング元素は水素元素及びホウ素元素を含むが、これらに限定されず、又はイオン注入法によってダイヤモンド層上にドーピングイオンを注入して導電層を形成する。注入されるイオンは水素イオン及びホウ素イオンを含むが、これらに限定されない。
【0023】
ステップS102では、前記ダイヤモンド層上にアクティブ領域メサを製造する。
【0024】
本発明の実施例では、アクティブ領域メサを製造し、且つメサ分離を実現し、メサ領域に素子を製造する。
【0025】
ステップS103では、前記導電層上のソース電極領域に対応する第1領域にソース電極を製造し、前記導電層上のドレイン電極領域に対応する第2領域にドレイン電極を製造する。
【0026】
本発明の実施例では、ソース電極及びドレイン電極の材料はAu、Pd、Sn、Pt、Ni、Ti、又は上記金属のうちの2種又は2種以上からなる合金を含むが、これらに限定されない。Ti、W、グラフェン、カーボンブラック、アモルファスカーボン及びカーボンナノチューブのうちの1種又は複数種の組合せであってもよく、不活性ガスの雰囲気でアニーリングしてオーミックコンタクトを形成してもよい。
【0027】
ステップS104では、前記導電層上のソースゲート領域に対応する第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積し、前記導電層上のゲートドレイン領域に対応する第4領域の上面に光触媒誘電体層を堆積する。
【0028】
本発明の実施例では、光触媒誘電体層の材料はCuO、TiO
2、ZnO、CdS、WO
3など光触媒作用を有する半導体材料の1種又は複数種の組合せを含むが、これらに限定されない。物理蒸着、化学蒸着又はゾルゲル法によって触媒誘電体層を堆積する。
【0029】
ステップS105では、前記光触媒誘電体層に光を照射する。
【0030】
本発明の実施例では、光波は波長が10nm〜400nmの紫外光であってもよく、波長が400nm〜760nmの可視光であってもよい。
【0031】
ステップS106では、前記導電層上の前記ゲート電極領域に対応する第5領域にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面にゲート電極を製造する。
【0032】
本発明の実施例では、ゲート誘電体層の材料はAl
20
3、Si
xN
y、Si
xO
y、MO
3、TiO
2、ZnO、WO
3、H
fO
2、AlN及びBNを含むが、これらに限定されない。ゲートはT型ゲート、Y型ゲート、ストレート、ゲートフィンゲートを含むが、これらに限定されない。ゲート電極材料はAl、Ni、Sn、Ti及びWのうちの1種又は複数種の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0033】
ステップS106はステップS104の前に実行されてもよく、ステップS105はステップS106の後に実行されてもよい。
【0034】
本発明の実施例は、ソース電極とゲート電極との間の領域に光触媒誘電体層を堆積し、ドレイン電極とゲート電極との間の領域に光触媒誘電体層を堆積し、光触媒誘電体層に光を照射すると、触媒誘電体層中の価電子帯電子が遷移し、電子及び正孔を生成し、電子が光触媒誘電体層の表面に吸着されたヒドロキシル及び水と結合してヒドロキシルラジカルを形成し、且つ光触媒誘電体層の表面の溶存酸素が電子を補足してスーパーオキシドアニオンを形成し、その結果、光触媒誘電体層に過剰な正孔が発生し、過剰な正孔が水素終端ダイヤモンド中の移動電子と吸引して中和し、該プロセスによってp型導電チャネルと光触媒誘電体層との界面での電子移動を加速し、さらに水素終端ダイヤモンドに電荷を安定的かつ連続的に供給し、それによってp型導電チャネルの高性能を確保し、ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの導通抵抗を効果的に低減させることができる。
【0035】
実施例2
図2に示すように、ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法はステップS201〜S207を含む。
【0036】
ステップS201では、高抵抗層であるダイヤモンド層の上面に導電層を形成する。
【0037】
本発明の実施例では、
図2(2)に示すように、ダイヤモンド層21上に導電層22を形成する。マイクロ波プラズマ化学蒸着(MPCVD:Microwave Plasma Chemical Vapor Deposition)装置によって、水素プラズマを用いて高抵抗ダイヤモンド層21上で15分間処理し、水素雰囲気中、温度が1000°Cの条件下で20分間アニーリングし、p型導電層22を形成する。
【0038】
ステップS202では、前記導電層の上面に第1金属層を堆積する。
【0039】
本発明の実施例では、
図2(3)に示すように、導電層22の上面に第1金属層23を堆積する。第1金属層23はパラジウムであり、電子ビーム蒸着プロセスによってp型導電層22の上面に厚さが30nmのパラジウムを蒸着する。
【0040】
ステップS203では、フォトリソグラフィプロセスによって、第1金属層上のアクティブ領域に対応する領域にフォトレジストを被覆し、エッチング液によって、パッシブ領域に対応する領域の第1金属層を除去し、エッチングプロセスによって、前記パッシブ領域に対応する領域の導電層を除去し、前記フォトレジストを除去する。
【0041】
本発明の実施例では、
図2(4)に示すように、パッシブ領域に対応する導電層及び第1金属層を除去する。具体的なプロセスについて、フォトレジストによって、アクティブ領域に対応する導電層及び第1金属層を保護し、アクティブ領域に対応する導電層及び第1金属層が後続のプロセスで除去されることを防止する。まず、KI/I
2エッチング液を用いて、パッシブ領域に対応するパラジウムを除去し、酸素プラズマエッチング装置によって3分間処理し、パッシブ領域に対応する導電層を除去し、最後に、フォトレジストを除去し、それによってメサ領域を形成し、メサ分離を実現する。
【0042】
ステップS204では、前記ソース電極領域及び前記ドレイン電極領域に対応する領域以外の前記第1金属層上の領域にフォトレジストを被覆し、前記第1金属層上の前記ソース電極領域に対応する領域の上面に第2金属層を堆積してソース電極を形成し、前記第1金属層上の前記ドレイン電極領域に対応する領域の上面に第2金属層を堆積してドレイン電極を形成し、フォトレジストを除去する。
【0043】
本発明の実施例では、
図2(5)に示すように、導電層上にソース電極24及びドレイン電極25を製造する。具体的なプロセスについて、フォトレジストをソースゲート領域、ゲートドレイン領域、ソース電極領域及びパッシブ領域に対応する第1金属層の上面に被覆し、ソース電極領域及びドレイン電極領域に対応する第1金属層を露出させ、さらに電子ビーム蒸着プロセスによって、それぞれ第1金属層上のソース電極領域に対応する領域及びドレイン電極領域に対応する領域に厚さが50nmのTi、厚さが50nmのPt及び厚さが100nmのAuを順に堆積し、最後に、剥離液によってフォトレジストを剥離し、ソース電極24及びドレイン電極25を形成する。ソース電極24はソース電極領域に対応する第1金属層及び第2金属層であり、ドレイン電極25はドレイン電極領域に対応する第1金属層及び第2金属層である。
【0044】
ステップS205では、前記ソースゲート領域、前記ゲート電極領域及び前記ゲートドレイン領域に対応する領域の第1金属層を除去し、前記導電層の第5領域の上面にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面に第3金属層を堆積してゲート電極を形成する。
【0045】
本発明の実施例では、
図2(6)に示すように、導電層22上のゲート電極領域に対応する領域にゲート誘電体層26を堆積し、ゲート誘電体層26の上面に第3金属層を堆積してゲート電極27を形成する。具体的なプロセスについて、フォトレジストをソース電極、ドレイン電極及びダイヤモンド層のパッシブ領域の上面に被覆し、KI/I
2エッチング液を用いて、ソースゲート領域、ゲート電極領域及びゲートドレイン領域に対応する領域の第1金属層を除去し、フォトレジストを除去する。導電層の第5領域以外の領域にフォトレジストを被覆し、第5領域を露出させ、導電層の第5領域の上面にゲート誘電体層26を堆積し、電子ビーム蒸着装置によって、厚さが50nmのTi及び厚さが100nmのAuをゲート電極として順に蒸着し、フォトレジストを剥離してゲート電極27を形成する。
【0046】
ステップS206では、光触媒誘電体層を堆積し、光触媒誘電体層上のソースゲート領域に対応する領域及びゲートドレイン領域に対応する領域の両方にフォトレジストを被覆し、それぞれ前記ソース電極領域、前記ドレイン電極領域、前記ゲート電極領域及び前記パッシブ領域に対応する領域の光触媒誘電体層を除去し、前記フォトレジストを除去する。
【0047】
本発明の実施例では、
図2(7)に示すように、導電層上のソースゲート領域及びゲートドレイン領域に対応する領域に光触媒誘電体層27を堆積する。具体的なプロセスについて、原子層堆積装置(ALD)によって、素子の表面に厚さが3nmのCuO薄膜を光触媒誘電体層として堆積し、すなわち、導電層の第3領域の上面、導電層の第4領域の上面、ソース電極の上面、ゲート電極の上面、ドレイン電極の上面及びダイヤモンド層パッシブ領域の上面にCuO薄膜を堆積し、フォトレジストによって、ソースゲート領域及びゲートドレイン領域に対応する領域のCuOを保護し、エッチング液によって、ソース電極領域、ドレイン電極領域、ゲート電極領域及びパッシブ領域に対応する領域のCuOを除去し、最後にフォトレジストを剥離する。
【0048】
ステップS207では、前記光触媒誘電体層に光を照射する。
【0049】
本発明の実施例では、波長が325nmの紫外光を10分間照射して、電子と正孔との分離を励起し、素子の製造が完了する。
【0050】
実施例3
図3に示すように、ダイヤモンドベース電界効果トランジスタの製造方法はステップS301〜S306を含む。
【0051】
ステップS301では、高抵抗層であるダイヤモンド層の上面に導電層を形成する。
【0052】
本発明の実施例では、
図3(2)に示すように、ダイヤモンド層31上に導電層32を形成する。MPCVD装置によって、水素プラズマを用いて高抵抗ダイヤモンド層31上で10分間処理し、水素雰囲気中、温度が800°Cの条件下で1時間アニーリングし、p型導電層32を形成する。
【0053】
ステップS302では、前記導電層上のアクティブ領域に対応する領域にフォトレジストを被覆し、前記パッシブ領域に対応する領域の導電層を除去して、アクティブ領域メサを形成し、前記フォトレジストを除去する。
【0054】
本発明の実施例では、
図3(3)に示すように、パッシブ領域に対応する導電層を除去する。具体的なプロセスについて、フォトレジストによって、アクティブ領域に対応する導電層を保護し、酸素プラズマエッチング装置によってエッチングを行い、パッシブ領域の導電層を除去し、最後に、フォトレジストを剥離し、アクティブ領域メサを形成し、メサ分離を実現する。
【0055】
ステップS303では、フォトリソグラフィプロセスによって、前記第1領域及び前記第2領域以外の領域にフォトレジストを被覆し、前記第1領域の上面に第2金属層を堆積してソース電極を形成し、前記第2領域の上面に第2金属層を堆積してドレイン電極を形成し、前記フォトレジストを除去し、アニーリングプロセスによって、前記ソース電極領域に対応する導電層と前記第2金属層とのオーミックコンタクトを形成し、及び前記ドレイン電極領域に対応する導電層と前記第2金属層とのオーミックコンタクトを形成する。
【0056】
本発明の実施例では、
図3(4)に示すように、まず、フォトリソグラフィプロセスによってソース電極及びドレイン電極領域を形成し、すなわち、フォトレジストによって、導電層の第1領域及び第2領域以外の領域を保護し、すなわち、フォトレジストをダイヤモンド層上のパッシブ領域、導電層の第3領域、導電層の第4領域及び導電層の第5領域に被覆し、さらに電子ビーム蒸着プロセスによって、それぞれ厚さが50nmのTi、厚さが50nmのPt及び厚さが100nmのAuを堆積し、剥離液を用いてフォトレジストを除去し、最後に、Ar雰囲気中、1000°Cで10分間アニーリングし、オーミックコンタクトを形成し、ソース電極33及びドレイン電極34を得る。
【0057】
ステップS304では、前記導電層の第3領域の上面に光触媒誘電体層を堆積し、前記導電層の第4領域の上面に光触媒誘電体層を堆積する。
【0058】
本発明の実施例では、
図3(5)に示すように、第3領域及び第4領域以外の領域にフォトレジストを被覆し、導電層の第3領域及び第4領域を露出させ、電子ビーム蒸着装置によって、厚さが2nmの金属Ti薄膜を堆積し、且つ空気中で自然に酸化してTiO
2薄膜を光触媒誘電体層として形成し、最後に、フォトレジストを剥離し、光触媒誘電体層35を得る。
【0059】
ステップS305では、前記光触媒誘電体層に光を照射する。
【0060】
本発明の実施例では、波長が266nmの紫外光を10分間照射し、電子と正孔との分離を励起する。
【0061】
ステップS306では、前記導電層上の前記ゲート電極領域に対応する第5領域以外の領域にフォトレジストを被覆し、前記第5領域の上面にゲート誘電体層を堆積し、前記ゲート誘電体層の上面に第3金属層を堆積し、前記フォトレジストを除去する。
【0062】
本発明の実施例では、
図3(6)に示すように、フォトリソグラフィプロセスによってゲート電極を形成し、第5領域以外の領域にフォトレジストを被覆し、第5領域を露出させ、ゲート誘電体層36を堆積し、電子ビーム蒸着装置によって厚さが150nmの金属Al及び厚さが1000nmのAuをゲート電極37として順に蒸着し、素子の製造が完了する。
【0063】
なお、上記実施例では、各ステップの番号は実行順序を示すものではなく、各プロセスの実行順序はその機能及び内部ロジックに応じて決められ、本発明の実施例の実施過程を限定するものではない。
【0064】
実施例4
図4に示すように、ダイヤモンドベース電界効果トランジスタは高抵抗ダイヤモンド基板41、導電層42、ゲート誘電体層43、ソース電極44、ドレイン電極45及びゲート電極46を備え、前記高抵抗ダイヤモンド基板41の上面に導電層42が設けられ、前記導電層42の上面にソース電極44、ドレイン電極45及びゲート電極46が設けられ、前記ゲート電極46と前記導電層42との間にゲート誘電体層43が設けられ、前記ソース電極44と前記ゲート電極46との間に位置する前記導電層上の領域に光触媒誘電体層47が設けられ、前記ドレイン電極45と前記ゲート電極46との間に位置する前記導電層上の領域に光触媒誘電体層47が設けられる。
【0065】
以上、本発明の好適実施例を説明したが、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原則を逸脱せずに行われる変更、同等置換や改良等はすべて本発明の保護範囲に属する。