(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987988
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】冷却装置、冷却装置を備えた露光装置、冷却装置を備えた産業用機器
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20211220BHJP
F25B 5/04 20060101ALI20211220BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
F25B1/00 304Z
F25B1/00 101H
F25B5/04 A
F25B1/00 321A
F25B39/02 M
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-522105(P2020-522105)
(86)(22)【出願日】2019年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2019019811
(87)【国際公開番号】WO2019230463
(87)【国際公開日】20191205
【審査請求日】2020年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-101541(P2018-101541)
(32)【優先日】2018年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004662
【氏名又は名称】キヤノンセミコンダクターエクィップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石浜 均
(72)【発明者】
【氏名】長田 剛和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
【審査官】
関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第201355150(CN,Y)
【文献】
特開2018−004169(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203642421(CN,U)
【文献】
特開2015−158305(JP,A)
【文献】
特開2000−028208(JP,A)
【文献】
特表2008−501927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 5/04
F25B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の下流側に配置され、圧縮された冷媒を第一の流路と第二の流路に分流させる分岐点と、
前記第一の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器の下流側に配置され、凝縮された冷媒を減圧する第一の減圧器と、
前記第一の減圧器の下流側に配置され、各々が異なる被冷却対象を冷却するよう直列に接続された複数の蒸発器と、
前記第二の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を減圧する第二の減圧器と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器の上流側に位置する合流点に、前記第二の減圧器の流出口を接続するホットガス流路と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒を前記圧縮機に還流する還流路と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器において冷却された被冷却対象の温度を検知する第一の温度検知手段と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒の温度および/または圧力を検知する検知手段と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第一の温度検知手段が検知した温度に基づき、前記第二の減圧器の開閉度を制御し、前記検知手段が検知した温度および/または圧力に基づき、前記第一の減圧器の開閉度を制御する、冷却装置。
【請求項2】
前記複数の蒸発器のうち、前記合流点より上流側の蒸発器において冷却された被冷却対象の経路に、前記被冷却対象の温度を検知する第二の温度検知手段と、前記被冷却対象を加熱する加熱手段と、を備える、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知手段が検知した温度および/または圧力に基づき、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器を流出する冷媒の過熱度が所定範囲内になるよう前記第一の減圧器の開閉度を制御する、
請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の下流側に配置され、圧縮された冷媒を第一の流路と第二の流路に分流させる分岐点と、
前記第一の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器の下流側に配置され、凝縮された冷媒を減圧する第一の減圧器と、
前記第一の減圧器の下流側に配置され、各々が異なる被冷却対象を冷却するよう直列に接続された複数の蒸発器と、
前記第二の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を減圧する第二の減圧器と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器の上流側に位置する合流点に、前記第二の減圧器の流出口を接続するホットガス流路と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒を前記圧縮機に還流する還流路と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器において冷却された被冷却対象の温度を検知する第一の温度検知手段と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒の温度および/または圧力を検知する検知手段と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第一の温度検知手段が検知した温度および前記検知手段が検知した温度および/または圧力に基づき、前記第二の減圧器の開閉度を制御する、冷却装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一の温度検知手段が検知した温度をマスター制御ループ系の制御パラメータとし、前記検知手段が検知した温度および/または圧力をスレーブ制御ループ系の制御パラメータとして、前記第二の減圧器の開閉度をカスケード制御する、
請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記マスター制御ループ系および前記スレーブ制御ループ系の制御において、比例、積分、微分を含むPID演算を行う、
請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記複数の蒸発器のうち少なくとも一つは、
熱交換部と、前記熱交換部の下流に設けた絞り弁と、前記絞り弁の下流に設けた逆流防止弁と、前記熱交換部の上流側と前記絞り弁の下流側を接続するバイパス流路を備えた蒸発器である、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記凝縮器と前記第一の減圧器の間の流路に、過冷却装置を設けた、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記複数の蒸発器は、液体を被冷却対象とする蒸発器と、気体を被冷却対象とする蒸発器とを含む、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記液体を被冷却対象とする蒸発器は、前記液体を貯留する槽と、前記槽に貯留された前記液体に常に浸漬する冷媒配管を備える、
請求項9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器は、気体を被冷却対象とする蒸発器である、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記複数の蒸発器のうち、最下流の蒸発器の冷却能力が最も大きい、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記複数の蒸発器のうち最下流の蒸発器を除いた蒸発器の熱交換量の合計が、前記最下流の蒸発器の熱交換量に対して1/9以上で1/4以下である、
請求項12に記載の冷却装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の冷却装置と、発熱量が異なる複数の発熱部とを備え、前記冷却装置が前記複数の発熱部を冷却する、
露光装置。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の冷却装置と、発熱量が異なる複数の発熱部とを備え、前記冷却装置が前記複数の発熱部を冷却する、
産業用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蒸発器を備え、複数の対象を同時に冷却することが可能な冷却装置に関する。特に、発熱量が異なる複数の発熱要素を有する産業用機器において、好適に用いられる冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、露光機などの半導体製造装置、レーザ加工機、フラットパネルディスプレイ製造装置をはじめ、発熱量が異なる複数の発熱要素を有する産業用機器が増えている。例えば、半導体製造用露光機には、光源を含む光学系、モーター、制御回路、電源等の構成要素が含まれ、これらは発熱量が異なる複数の発熱源と見なす事ができる。こうした産業用機器を正常な状態で安定的に動作させるためには、複数の発熱源やその周辺部を、発熱量に応じて適切に冷却できる冷却装置が必要になる。
【0003】
特許文献1には、複数の対象を冷却可能な冷却装置が記載されている。この装置では、圧縮機と凝縮器をこの順番に直列に配置し、凝縮器の下流側で冷媒流路を2つに分岐させ、それぞれの流路に減圧器と蒸発器を直列に配置し、2つの冷凍サイクルを並列に構成している。
そして、2つの冷凍サイクルのうち一方に関しては、圧縮機の下流側と蒸発器の上流側を、電磁弁と圧力調整弁を備えたホットガスバイパスにより接続している。また、ホットガスバイパスを備えていない方の冷凍サイクルに関しては、凝縮器と蒸発器の間に、ホットガスバイパスと同様の電磁弁を配置している。被冷却対象の温度を検出する検出手段により検出された温度に応じて2つの電磁弁の開度をそれぞれ調節することで、被冷却対象の温度が一定の範囲内に収まるように蒸発器の冷凍能力を調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−144557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体製造装置やレーザ加工機をはじめとする産業用機器の冷却に用いられる冷却装置には、小型で冷却能力が安定し、コスト的に低廉でしかも操作性がよいことが求められる。
特許文献1に記載された装置は、1つの圧縮機と1つの凝縮器で2つの蒸発器を動作させるため、圧縮機、凝縮器、蒸発器を各1つ備える冷却装置を2台併設するよりは小型化できるといえる。
【0006】
しかしながら、蒸発器と同数の減圧器を必要とする構成であることから、十分に小型化されているとは言い難く、またコスト的にも十分に低廉であるとは言い難い。
また、各熱源の熱量の違いから各蒸発器の出口圧力に差異が生じる場合があるが、並列に接続された蒸発器の下流の合流部において、圧力差のため冷媒の流れが変動して冷却能力が不安定になり、温度調整の制御性が低下する可能性がある。
さらに、いずれかの蒸発器の2次側(熱源)が停止した時には、蒸発不足により液相が過多になった冷媒を圧縮機に還流させ続けることになり、多量の液相を吸入した圧縮機が故障する可能性がある。そうした場合には、熱源が停止した側の冷媒の流れをバルブを閉じて停止させる必要があり、操作上不便であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機の下流側に配置され、圧縮された冷媒を第一の流路と第二の流路に分流させる分岐点と、前記第一の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器の下流側に配置され、凝縮された冷媒を減圧する第一の減圧器と、前記第一の減圧器の下流側に配置され、各々が異なる被冷却対象を冷却するよう直列に接続された複数の蒸発器と、前記第二の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を減圧する第二の減圧器と、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器の上流側に位置する合流点に、前記第二の減圧器の流出口を接続するホットガス流路と、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒を前記圧縮機に還流する還流路と、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器において冷却された被冷却対象の温度を検知する第一の温度検知手段と、
前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒の温度および/または圧力を検知する検知手段と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第一の温度検知手段が検知した温度に基づき、前記第二の減圧器の開閉度を制御
し、前記検知手段が検知した温度および/または圧力に基づき、前記第一の減圧器の開閉度を制御する
、冷却装置である。
また、本発明の別の一態様によると、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機の下流側に配置され、圧縮された冷媒を第一の流路と第二の流路に分流させる分岐点と、前記第一の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器の下流側に配置され、凝縮された冷媒を減圧する第一の減圧器と、前記第一の減圧器の下流側に配置され、各々が異なる被冷却対象を冷却するよう直列に接続された複数の蒸発器と、前記第二の流路において前記分岐点の下流側に配置され、圧縮された冷媒を減圧する第二の減圧器と、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器の上流側に位置する合流点に、前記第二の減圧器の流出口を接続するホットガス流路と、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒を前記圧縮機に還流する還流路と、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器において冷却された被冷却対象の温度を検知する第一の温度検知手段と、前記複数の蒸発器の中の最下流の蒸発器から流出する冷媒の温度および/または圧力を検知する検知手段と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第一の温度検知手段が検知した温度および前記検知手段が検知した温度および/または圧力に基づき、前記第二の減圧器の開閉度を制御する、冷却装置である。
【発明の効果】
【0008】
小型で冷却能力が安定し、コストが低廉でしかも操作性がよい冷却装置を提供できる。例えば、露光機をはじめとする産業用機器の冷却装置として好適に用いることができる。
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。尚、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態1の制御部の構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態1の冷却装置を含む露光装置の構成を示す図。
【
図6】実施形態3の制御シーケンスを示す模式的なブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態1である冷却装置について説明する。
図1に示す実施形態1の冷却装置1は、圧縮機2、凝縮器3、減圧手段4、蒸発器5a、蒸発器5b、蒸発器5cを、冷媒配管で直列に接続した冷凍サイクルを有している。
図1では、冷媒配管における冷媒の流れる方向を、実線の矢印で示している。尚、ここでいう冷凍サイクルとは、冷却装置の機能を発揮するために、冷媒が状態変化しながら「圧縮機→凝縮器→減圧器(膨張弁)→蒸発器」を循環するサイクルを指し、必ずしも凍ることを意味するものではない。
【0011】
圧縮機2は、吸入した冷媒を圧縮して高温高圧の気体状態に変化させ、下流側へ吐出する。尚、不図示であるが、圧縮機2は吸入口の手前に気液分離器を備えていてもよい。
圧縮機2から吐出した高温高圧の気化冷媒は、圧縮機2の下流側の分岐点7において凝縮器3に向かう第一の流路と、減圧手段11に向かう第二の流路に分岐する。
【0012】
凝縮器3は、圧縮機2から吐出した高温高圧の気化冷媒を、D−D’間に冷却用の液体を流して冷却し、凝縮させる。凝縮器3で凝縮された液化状態の冷媒は、冷媒配管を通じて第一の減圧器である減圧手段4に流入する。尚、不図示であるが、凝縮器3と減圧手段4の間に受液器を配置しても良い。
【0013】
減圧手段4は、凝縮器3で凝縮された高圧の液化冷媒を減圧して気液混合状態にする減圧器である。減圧手段4の下流側には、複数の蒸発器が直列に接続されている。
図1の例では、蒸発器5a、蒸発器5b、蒸発器5cを接続しているが、直列接続する蒸発器の数は3に限るものではない。
各蒸発器においては、減圧手段4で減圧された気液混合冷媒が被冷却対象から熱を奪い、被冷却対象を冷却する。すなわち、蒸発器5aでは、流入する高温の被冷却対象Aから熱を奪い、冷却された被冷却対象A’を流出させる。同様に、蒸発器5bは流入する高温の被冷却対象Bから熱を奪い、冷却された被冷却対象B’を流出させ、蒸発器5cは流入する高温の被冷却対象Cから熱を奪い、冷却された被冷却対象C’を流出させる。この時、冷媒は、最上流の蒸発器5aに流入してから最下流の蒸発器5cを流出するまで、気液二相(混合)状態または気体状態を維持している。最下流の蒸発器5cを流出した気化冷媒は、還流路13を介して圧縮機2の吸入口に還流する。
【0014】
最下流に位置する蒸発器5cの下流側に冷媒の温度および/または圧力の検知手段である検知手段6を配置し、蒸発器5cから流出し圧縮機2に流入する冷媒の温度または圧力、あるいは温度と圧力の両方を検知する。検知手段6には、例えば感温筒や圧力センサなどを用いると良い。検知手段6で検知した冷媒の温度または圧力、あるいは温度と圧力の情報は制御部12に入力され、制御部12は、蒸発器5cから流出した冷媒の過熱度を検知する。本実施形態では、冷媒が所定範囲内の過熱度を維持するように減圧手段4の出口側の圧力を調整する。このため、制御部12は減圧手段4に制御信号を送り、流出口の開閉量を調整する。尚、制御部12は、検知手段6が検知した値と、その値の時に冷媒の過熱度を所定範囲内に収めるために減圧手段4がとるべき開閉度の関係を予めテーブル化して記憶する等により、検知した値から過熱度を検知しなくても同等の制御を行うことが可能である。
【0015】
また、本実施形態では、圧縮機2の下流側の分岐点7と、最下流の蒸発器5cの上流側の合流点8との間を接続するホットガスバイパス回路9を配置する。本実施形態では、蒸発器5bから流出した冷媒に、第二の減圧器である減圧手段11により圧力を調整されたホットガスを合流点8で合流させ、最下流の蒸発器5cに流入する冷媒の温度を変化させて蒸発器5cの冷却能力を調整する。すなわち、最下流の蒸発器5cにより冷却された被冷却対象C’の温度を、第一の温度検知手段である温度検知手段10が検知して制御部12に入力し、制御部12は蒸発器5cが被冷却対象Cを所望の温度に冷却するよう減圧手段11の開閉量を制御する。
【0016】
本実施形態では、複数の蒸発器のうち最下流の蒸発器以外については、冷却能力は略一定の状態で使用し、最下流の蒸発器は冷却能力を可変にしている。本実施形態の冷却装置は、上流側の蒸発器において比較的冷却負荷の大きさやその変動が小さい被冷却対象を扱い、最下流の蒸発器では比較的冷却負荷やその変動が大きな被冷却対象を扱うのに好適であると言える。
【0017】
尚、
図1では3台の蒸発器を配置したが、台数はこの例に限定されるわけではなく、最下流の蒸発器を流出するまで冷媒が気液二相(混合)状態または気体状態を維持することができるのであれば、3つ以上の蒸発器を直列に配置しても差し支えない。すなわち、より多くの数の被冷却対象を扱っても差し支えない。
【0018】
次に、冷却装置1の制御系について説明する。
図2は、冷却装置1の制御系を簡易的に示す制御ブロック図である。尚、図示の便宜上、
図2には制御部が制御する要素のうち、一部の要素だけを示している。
制御部12は、冷却装置1の動作を制御するためのコンピュータで、内部には、CPU、ROM、RAM、I/Oポート等を備えている。
【0019】
ROMには、冷却装置1の基本動作プログラムが記憶されている。圧縮機2の動作制御や、検知手段6で検知した冷媒の温度または圧力、あるいは温度と圧力の両方の情報をもとに減圧手段4の開閉量を制御する処理や、温度検知手段10で検知した温度情報をもとに減圧手段11の開閉量を制御する処理を実行するためのプログラムもROMに記憶されている。ただし、これらのプログラムは、ネットワークを介して外部からRAMにロードしてもよいし、あるいは、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体を介して、RAMにプログラムをロードしてもよい。
【0020】
制御部12のI/Oポートは、外部のコンピュータをはじめとする外部機器19やネットワークと接続されている。制御部12は、冷却装置1が冷却する対象の産業用機器の各部の発熱量や許容温度範囲等、冷却を制御するのに必要なデータの入出力を、I/Oポートを介して外部のコンピュータとの間で行うことができる。
【0021】
次に、冷却装置1を産業用機器に組み込んで、産業用機器の各部を冷却する態様の例を説明する。
図3は、半導体製造用の微細パターンを露光する露光装置20に、本実施形態の冷却装置1が組み込まれた例を示す模式的なブロック図である。
【0022】
露光装置20のチャンバー28の中には、制御回路系21、駆動動力系22、光学ユニット23等が配置されている。制御回路系21は、例えば電源やコンピュータを含んでおり、駆動動力系22は、例えばステージ駆動用のモーターを含んでおり、光学ユニット23は、例えば光源やレンズ駆動モーターを含んでいる。すなわち、これらの各部は発熱源となっており、精密な機械精度を要求される露光装置では、これら各部はもちろんのこと、チャンバー内の雰囲気24も含めた温度管理が重要である。
【0023】
このうち、制御回路系21と駆動動力系22は、比較的発熱量が小さく発熱の時間変動も小さいため、冷却装置1の上流側の蒸発器5aと蒸発器5bを用いて、略一定の冷却能力で冷却する。具体的には、制御回路系21と駆動動力系22は液冷とし、ポンプ25およびポンプ26を用いて冷却液を循環させる。
これに対して、光学ユニット23周辺は比較的発熱量が大きく、しかもその熱はチャンバー内の雰囲気に拡散する。光学ユニット23に温度変動が生じると、微細パターンの露光精度に影響を与えるため、光学ユニット23やチャンバー内雰囲気については冷却能力を十分に大きくし、しかも温度変動を抑制できる制御を必要とする。このため、本実施形態では、光学ユニット23とチャンバー内を空冷することとし、送風機27を用いて光学ユニット23付近の空気とチャンバー内の雰囲気を蒸発器5cに送って冷却し、循環させる。
【0024】
図3の例における冷却装置1の動作について、再び
図1を参照して説明する。
まず、圧縮機2を安定動作させるには、温度が35℃以下で圧力が0.2MPa以上、1.0MPa以下の状態の冷媒を吸入する必要があるが、後述するように蒸発器5cから還流路13を介して還流する冷媒は0.8MPaで温度が14℃程度であるので問題ない。圧縮機2に吸入された冷媒は、圧力が2.3MPaになるまで圧縮され、温度が約65℃の気体として分岐点7に送られる。
【0025】
分岐点7から凝縮器3に入った冷媒は、D−D’間を流れる冷却用の液体と熱交換して冷却され、圧力が2.3MPa、温度が36℃の液体として減圧手段4の入力側に導入される。
減圧手段4は、蒸発器5cから流出する冷媒が一定の過熱度を維持するように、制御部12により膨張弁の開閉度が制御される。減圧手段4から蒸発器5aに向けて流出する冷媒は、膨張弁の開閉度により状態が変化するが、概ね圧力が1.3MPaで温度が約19℃の、液体と気体が共存した気液二相(混合)状態となる。
【0026】
蒸発器5aは、400Wの冷却能力を発揮し、露光装置20の制御回路系21の冷却液を25℃から21℃に冷却する。蒸発器5a内においては、配管を通過する際の圧力損失が0.1MPa程度発生するため、冷媒の温度はここで約3℃低下する。減圧手段4の開閉度により変化するものの、蒸発器5a出口において、冷媒は概ね圧力が1.2MPa、温度が約16℃の気液二相(混合)状態になり、蒸発器5bに流入する。
【0027】
蒸発器5bは、600Wの冷却能力を発揮し、露光装置20の駆動動力系22の冷却液を25℃から20℃に冷却する。蒸発器5b内においては、配管を通過する際の圧力損失が0.1MPa程度発生するため、冷媒の温度はここで約3℃低下する。減圧手段4の開閉度により変化するものの、蒸発器5b出口において、冷媒は概ね圧力が1.1MPa、温度が約14℃の気液二相(混合)状態になり、合流点8に流入する。
合流点8において、ホットガス流路であるホットガスバイパス回路9から流入するホットガスと蒸発器5bから流入する冷媒は合流し、蒸発器5cに流れる。
【0028】
蒸発器5cは、最大5000Wの冷却能力を発揮し、露光装置20の光学ユニット23の空冷エアおよびチャンバー内雰囲気(エア)を25℃程度から21.5℃に冷却する。冷却前のエアの温度は露光装置20の動作状態により25℃程度を中心に変動するが、冷却された後の温度を21.5℃にするよう制御するため、蒸発器5cの冷却能力は常に一定の5000Wに固定されるわけではなく、適宜調整される。すなわち、制御部12は、蒸発器5cを通過した被冷却対象C’であるエアの温度を温度検知手段10により検知して減圧手段11の開閉量を制御し、エアの温度が21.5℃になるようにホットガスバイパス回路9から合流するホットガスの量を調整する。蒸発器5cを通過した気液二相(混合)状態または気体状態の冷媒は、ホットガス(気化冷媒)との合流による圧損と、蒸発器内の配管を通過する際の圧力損失により、概ね圧力が0.8MPaで温度が4℃の状態で蒸発器に流入して、蒸発器出口で過熱度10℃で気化させるため、冷媒温度は14℃状態となり、還流路13を経由して圧縮機2の吸入口に還流する。
【0029】
本実施形態の冷却装置によれば、圧縮機と減圧手段を各一台直列に接続した下流に、3台の蒸発器を直列に配置し、最下流の蒸発器にはホットガスバイパスを経由したホットガスの流量を減圧手段で調整しながら冷媒と混合させて注入する構成としている。蒸発器が3台に対して減圧手段は2台であり、蒸発器を並列に接続した従来の冷却装置と比較して減圧手段の数が少なくすむため、小型でコスト的に低廉な装置が実現されている。もちろん、本実施形態の冷却装置の蒸発器の数は3台に限定されるわけではないので、より多くの蒸発器を直列にすれば、この効果は相対的にさらに大きくなる。
【0030】
最も大きな冷却能力を必要とし、しかも温度制御の精度が要求される蒸発器を最下流に配置する構成の本実施形態の冷却装置は、露光機をはじめとする各種の産業用機器において利用価値が高く、好適に用いることが出来る。
最下流の蒸発器には熱交換量が最大の被冷却対象とするのが好ましい理由としては、最下流の蒸発器にはホットガス制御を行うため最適な温度に向けて高精度な冷却が可能になる。それにより加熱機が不要となり、消費電力削減効果を大きく得ることができる。
また、熱交換量が最大の蒸発器を最下流に置くことで過熱度を大きくとることができ、冷媒を気化させやすくなり、多量の液相を吸入することによる圧縮機の故障を防ぐことができる。
尚、例えば被冷却対象を21℃以上で25℃以下の範囲内の所定温度に温調する場合には、最下流の蒸発器を除いた蒸発器の熱交換量の合計が、最下流の蒸発器の熱交換量に対して1/9以上で1/4以下にするのが好適である。1/9未満の場合には、最下流の蒸発器の熱交換を担保するために上流側の蒸発器にも多くの冷媒が流れるため、上流側で被冷却対象を過度に冷却してしまう可能性が生じる。過度に冷却した被冷却対象をヒーターで加熱して温度調整する必要が生じれば、消費電力が増大するため好ましくないのである。逆に1/4を超える場合には、最下流の蒸発器の熱交換量に合わせた量の冷媒を流すと、上流の蒸発器で冷媒が気化してしまい、最下流の蒸発器に必要とする冷媒流量が供給できない懸念が生ずる。このため、1/9以上で1/4以下にするのが好ましいのである。
【0031】
また、本実施形態の冷却装置は、産業用機器に組み込んで実用する場合に、操作性に優れていると言える。例えば、露光機においては、調整や保守のために、駆動動力系の動作は停止するが、その他の部分は稼動状態に有り、その他の部分の温度やチャンバー内の雰囲気の温度およびクリーン度を一定に保持する必要が生じる場合がある。この時、駆動動力系の液冷の蒸発器では被冷却対象の温度は低いため熱交換を行う必要がないが、他の蒸発器は通常通り動作させる必要がある。従来の蒸発器を並列に配置した冷却装置では、駆動動力系の蒸発器に冷媒を流し続けると、液相を過多に含んだ状態の冷媒が圧縮機に還流し、液相を多量に吸入した圧縮機が故障する可能性がある。そのため、こうした調整や保守を行う場合には、熱源が停止した側の冷媒の流れを停止バルブで止めるように制御する必要があり、操作上不便であった。
【0032】
一方、本実施形態では、駆動動力系が停止して被冷却対象Bの温度が低い状態であったとしても、検知手段6により圧縮機に還流する冷媒の温度または圧力、あるいは温度と圧力は検知され、制御部12が過熱度を監視して減圧手段4の開閉度を調整する。このため、本実施形態の冷却装置では、液相を過多に含んだ冷媒が圧縮機に還流することがないため、調整や保守を行う場合に格別の操作を必要としない。露光機の例に限らず、保守、点検、調整等のために、産業用機器の一部のみを停止するケースはよく発生するので、本実施形態の冷却装置は実用上の操作性に優れていると言える。
尚、上記説明で挙げた圧力、温度、冷却能力等の数値は一例に過ぎず、本実施形態がこの例に限られないことは言うまでもない。
【0033】
[実施形態2]
実施形態1の冷却装置1では、蒸発器5bで冷却した被冷却対象B’に対しては温度制御を行わなかったが、実施形態2では被冷却対象B’が過冷却された状態で産業用機器を循環するのを防止するため、冷却後の被冷却対象を加熱する加熱手段を設けている。
図4に、実施形態2の冷却装置31の構成を示すが、実施形態1の冷却装置1と同様の要素については、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0034】
実施形態2は、前述の実施形態1に対して、合流点8より上流側の蒸発器5bの被冷却対象B’の経路に温度を検知する温度検知手段14と、温度検知手段14の下流側に被冷却対象B’を加熱する加熱手段16を追加した点が異なる。加熱手段16としては、例えば電気ヒーターを用いても良い。温度検知手段14により検知した温度情報は、制御部12に伝達され、制御部12は被冷却対象B’が所定の温度になるよう加熱手段16の加熱強度を制御する。
図4では、蒸発器5bの被冷却対象の経路にのみ、温度検知手段14や加熱手段16を追加しているが、蒸発器5aにも、同様の構成を追加しても良い。このように、本実施形態では、最下流の蒸発器以外の蒸発器で冷却された被冷却対象についても、高い精度での温度制御が可能である。
【0035】
本実施形態の冷却装置も、実施形態1と同様に、小型で温度調整の制御性がよく、コスト的に低廉でしかも操作性がよい冷却装置であり、半導体製造装置をはじめとする各種の産業用機器に好適に用いることが出来る。
【0036】
[実施形態3]
実施形態3は、減圧手段の構成と制御方法が実施形態1とは異なる。
図5に、実施形態3の冷却装置41の構成を示すが、実施形態1の冷却装置1と同様の要素については、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0037】
実施形態3では、凝縮器3の下流側に設ける減圧手段44は、制御部によって開閉度を可変制御して圧力を調整するのではなく、一定の圧力に減圧する構成としている。
一方、ホットガスバイパス回路に配置した減圧手段11の開閉度は、最下流に位置する蒸発器5cで冷却された被冷却対象C’の温度と、蒸発器5cを流れた冷媒の過熱度に基づいて、制御部42が以下のように制御する。
【0038】
図6は、制御シーケンスを説明するための模式的なブロック図である。
まず、蒸発器5cで冷却された被冷却対象C’の温度が温度検知手段10により検知され、制御部42に伝達される。制御部42は、伝達された温度情報に基づいて、比例、積分、微分を含むPID演算によりフィードバック制御を行って、被冷却対象C’が予め設定した目標温度になるように、蒸発器5cを通過した後の冷媒の目標過熱度を決定する。(マスター制御ループ系の温調PID演算1)。
【0039】
次に、検知手段6により検知された温度または圧力、或いは温度と圧力の情報が制御部42に伝達され、制御部42は検知された温度または圧力、あるいは温度と圧力に基づいて過熱度を算出する。制御部42は、算出した過熱度に基づいて、比例、積分、微分を含むPID演算によりフィードバック制御を行って、冷媒がマスターループにより決定した目標過熱度となるように、減圧手段11の開度を決定する。(スレーブ制御ループ系の温調PID演算2)。
【0040】
本実施形態では、検知した温度情報を制御パラメータとして、上述したカスケード制御を実施することにより、外乱の変化に対して、より早く応答して温度調節をすることが可能となる。
本実施形態の冷却装置も、実施形態1と同様に、小型で温度調整の制御性がよく、コスト的に低廉でしかも操作性がよい冷却装置であり、半導体製造装置をはじめとする各種の産業用機器に好適に用いることが出来る。
【0041】
[実施形態4]
実施形態4は、冷却装置の蒸発器として、
図7に示す構成の蒸発器71を用いるものである。
図7に示す蒸発器71は、大量の熱交換を必要とせず、かつ、被冷却対象Fが液体の場合に好適に用いることができる。被冷却対象Fには、比熱の高い冷却用液体が好適である。72は冷媒配管であるが、熱交換を行う部分は常に被冷却対象Fに浸っているように構成する必要がある。そこで、本実施形態では槽を設けて被冷却対象Fを一定量貯留している。冷媒配管72の径は、蒸発器5cを通過する冷媒配管と同じ径とする。蒸発器5cは、他の蒸発器に比べ多大な量の熱交換を実施する蒸発器であることから、蒸発器5cを通過する冷媒配管を基準とするためである。また、冷媒配管72が、被冷却対象Fに常に浸漬している部分の長さは、予め設定した熱交換量で熱交換することを可能にするための接触面積が得られる長さである。被冷却対象Fは、貯液槽73に一時蓄えられ、熱源側の要求に応じて、不図示の送液ポンプで熱源側に必要量だけ送られ、残りは貯液槽73に戻り貯留される。
【0042】
実施形態4の蒸発器は、実施形態1〜実施形態3の冷却装置の上流側の蒸発器として好適に用いることができる。本実施形態の蒸発器を用いた場合にも、小型で温度調整の制御性がよく、コスト的に低廉でしかも操作性がよい冷却装置を実現でき、半導体製造装置をはじめとする各種の産業用機器に好適に用いることが出来る。
【0043】
[実施形態5]
実施形態5は、冷却装置内の蒸発器として、
図8に示す構成の蒸発器80を用いるものである。蒸発器を直列に配置する場合、最下流の蒸発器まで十分な冷却能力を担保するために十分な流量の冷媒を流すが、上流側の蒸発器では必要以上に被冷却対象を冷却してしまう場合がある。実施形態2のように加熱手段を設けて被冷却対象の過度の冷却を防止する方法もあるが、加熱手段による電力消費を低減するため、本実施形態は気液二相(混合)状態の冷媒の流路を工夫している。
【0044】
図8において、85は熱交換部であり、流入側分岐点81から分流した冷媒が流通する流路と、被冷却対象Gが流通する流路を含む。冷媒は、熱交換部85において被冷却対象Gと熱交換を実施する。熱交換部85の下流側に配置された82は、冷媒流量を絞る絞り弁であり、絞り弁82の下流側は合流点83に接続している。また、冷媒の流入側分岐点81から分岐した86はバイパス流路で、バイパス流路86は熱交換部85を経由せずに合流点83に接続している。また、合流点83の下流側には逆流防止弁84が配置されている。
【0045】
絞り弁82の開度は、熱交換部85において被冷却対象Gを冷却するのに必要な量の冷媒が流れるように予め調整されている。調整時には、熱交換部85を通過する冷媒が潜熱状態を維持できるように、言い換えれば開度を絞りすぎて冷媒が気化しないように、留意する。
【0046】
本実施形態によれば、冷凍サイクル全体を流れる冷媒流量を十分大きく保ちながら、最適な冷却量に近づける制御を行うことができる。本実施形態は、熱交換部の熱交換量が大きくなりすぎてしまうのを防止したい場合に好適に用いることが可能である。
【0047】
実施形態5の蒸発器は、実施形態1〜実施形態3の冷却装置の上流側の蒸発器として好適に用いることができる。本実施形態の蒸発器を用いた場合にも、小型で温度調整の制御性がよく、コスト的に低廉でしかも操作性がよい冷却装置を実現でき、半導体製造装置をはじめとする各種の産業用機器に好適に用いることが出来る。
【0048】
[実施形態6]
実施形態6は、
図1の凝縮器3と減圧手段4を接続する配管途中に、過冷却装置を配置した冷却装置である。高温、高圧の冷媒は、凝縮器3で冷却され液化されるが、完全には液化されない。このため、さらに下流側に過冷却装置を配置し、気液二相(混合)状態の冷媒の液化比率を増大させる。液化比率が増大することで、冷却効率が向上するため、ホットガスバイパス回路を構成した冷却装置において、ホットガスバイパスによる消費電力の削減以上にさらに消費電力を削減できる。過冷却装置は、方式を特定するものでは無く、空冷、水冷あるいは冷媒の配管形状を利用したものでもよく、冷媒の液化率が向上するものであればよい。
【0049】
[他の実施形態]
本発明の冷却装置は、露光機や、露光機を備えた半導体製造装置や、露光機を備えたディスプレイ製造装置において、発熱部を冷却するための冷却装置として好適に実施することができるが、実施形態はこれらに限られない。光源や、加熱源や、動力部や、電気回路など、冷却を要する発熱量が異なる複数の発熱部を備えた各種の産業用機器において、発熱部を冷却するための冷却装置として好適に実施することが出来る。
【0050】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば半導体製造用の露光機のように、冷却を要する複数の発熱部を備えた各種の産業用機器において、発熱部を冷却するための冷却装置として好適に実施することができる。特に、発熱量が異なる複数の発熱部を備えた各種の産業用機器において、好適に実施することができる。
本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0052】
1・・・冷却装置/2・・・圧縮機/3・・・凝縮器/4・・・減圧手段/5a〜5c・・・蒸発器/6・・・検知手段/7・・・分岐点/8・・・合流点/9・・・ホットガスバイパス回路/10・・・温度検知手段/11・・・減圧手段/12・・・制御部/13・・・還流路/19・・・外部機器/20・・・露光装置/21・・・制御回路系/22・・・駆動動力系/23・・・光学ユニット/24・・・雰囲気/25、26・・・ポンプ/27・・・送風機/28・・・チャンバー/31・・・冷却装置/41・・・冷却装置/42・・・制御部/44・・・減圧手段/71・・・蒸発器/72・・・冷媒配管/73・・・貯液槽/80・・・蒸発器/81・・・流入側分岐点/82・・・絞り弁/83・・・合流点/84・・・逆流防止弁/85・・・熱交換部/86・・・バイパス流路