(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱伝導性シリコーン放熱材料は、空気中220℃で100時間エージングした後のアスカーC硬さが、初期硬さに比較してマイナス15〜0であり、更に空気中220℃でエージングを継続した時の500時間のアスカーC硬さが初期硬さに比較してマイナス20〜プラス20である請求項1に記載の熱伝導性シリコーン放熱材料。
前記熱伝導性無機フィラーは、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム及びシリカ(但し、親水性ヒュームドシリカを除く)から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン放熱材料。
前記耐熱性向上剤は、前記マトリックス樹脂のシリコーンポリマー100質量部としたとき、0.01〜10質量部含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン放熱材料。
前記熱伝導性シリコーン放熱材料は、空気中220℃で100時間エージングにより一度軟化もしくは初期硬さを維持し、同温度で500時間エージングにより再び硬化する特性を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン放熱材料。
【発明を実施するための形態】
【0009】
BET比表面積が0.3m
2/g以上の熱伝導性無機フィラー(無機フィラー、無機粒子ともいう。)を表面処理せずにシリコーンポリマーと混合すると、硬化阻害が起き、良好な硬化物が得られない。これは、フィラー表面の水酸基が付加型シリコーンの架橋成分SiHと反応して、本来シリコーンポリマーの架橋点となる成分が少なくなるためと考えられる。これらの現象を回避するためBET比表面積が大きい熱伝導性無機フィラーは予めシランカップリング剤による表面処理が必要になる。本発明者らは、BET比表面積が大きく、平均粒子径の小さい熱伝導性無機フィラーに対して、分子量の小さいシランカップリング剤で表面処理することにより、放熱材料の耐熱性が向上することを見出した。なお、前記BET比表面積(A
BET)が0.3m
2/gは粒子形状によって平均粒子径は異なるが、球形粒子の場合の平均粒子径は10μmである。
【0010】
本発明の熱伝導性シリコーン放熱材料は、マトリックス樹脂であるシリコーンポリマーと熱伝導性無機フィラーを含む。前記熱伝導性無機フィラーは、BET比表面積(A
BET)が0.3m
2/g以上であり、好ましくは0.3〜100m
2/gであり、より好ましくは0.5〜80m
2/gであり、さらに好ましくは1.0〜50m
2/gである。これにより、目的に応じて様々な無機フィラーを使用でき、熱伝導性も向上できる。
【0011】
前記熱伝導性無機フィラーは、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム又はシリカ(但し、親水性ヒュームドシリカを除く)が好ましい。これらは一種でもよいし複数種類混合してもよい。あるいはBET比表面積(粒子径)、形状が異なる粒子を複数種類混合してもよい。
【0012】
前記熱伝導性無機フィラーは、Si(OR’)
4またはR
xSi(OR’)
4−x(ただしRは炭素数1〜4の炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、R’は炭素数1〜4の炭化水素基、x=1〜2の整数)で示される表面処理剤により表面処理されている。この表面処理剤は長鎖アルキル基を含まないので耐熱性があり、硬化阻害を起こすことも防止できる。この表面処理剤はシランカップリング剤ともいう。
【0013】
シランカップリング剤は、一例としてメチルトリメトキシシラン,エチルトリメトキシシラン,プロピルトリメトキシシラン(n-,iso-を含む),ブチルトリメトキシシラン(n-,iso-を含む),フェニルトリメトキシシラン等がある。シランカップリング剤は、一種又は二種以上混合して使用することができる。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。これにより、無機フィラーの表面との反応性に優れる表面処理ができる。
【0014】
表面処理はマトリックス樹脂との混合の前に無機フィラーのみをシランカップリング剤などの表面処理剤で前処理しておくか(前処理法)、あるいはマトリックス樹脂と混合する際に添加する(インテグラルブレンド法)。前処理法の場合は、無機フィラーに表面処理剤の原液または溶剤希釈液を添加して混合する乾式処理と、表面処理剤と溶剤と無機フィラーを混合してスラリー液を作製して、攪拌しながら溶剤を揮発させて除去する湿式処理がある。処理操作からは乾式処理が好ましい。乾式処理は必要により加熱や減圧(気相処理)をしてもよい。これにより、共有結合あるいは吸着を強固にすることができる。無機フィラー100質量部に対し、表面処理剤は0.01〜5質量部付与するのが好ましく、より好ましくは0.05〜3質量部である。
【0015】
前記マトリックス樹脂のシリコーンポリマー100質量部に対して、前記熱伝導性無機フィラーは100〜10000質量部含み、好ましくは200〜5000質量部であり、さらに好ましくは250〜3000質量部である。これにより、本発明の放熱材料は好ましい熱伝導率となる。熱伝導率は1〜5W/m・Kが好ましく、より好ましくは1.2〜4.5W/m・Kであり、さらに1.5〜4W/m・Kが好ましい。
【0016】
前記シリコーン放熱材料は、空気中220℃で100時間エージングした後のアスカーC硬さが、初期硬さに比較してマイナス15〜0であり、更に空気中220℃でエージングを継続した時の500時間のアスカーC硬さが初期硬さに比較してマイナス20〜プラス20であるのが好ましい。この現象は、短期(100時間)の高温エージングにより一度軟化し、中期(500時間)の高温エージングにより再び硬化するシリコーン系放熱シートである。すなわち、空気中220℃で100時間エージングにより一度軟化もしくは初期硬さを維持し、同温度で500時間エージングにより再び硬化する特性を有する。この現象を経るシリコーン放熱シートは、長期の高温エージングによる熱劣化が小さいことを見出した。
【0017】
前記耐熱性向上剤は、下記の(a)−(e)から選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。
(a)テトラヨードフタル酸金属塩、アセチルアセトン金属塩、2−エチルヘキサン酸金属塩、オクチル酸セリウム金属塩、及びフタロシアニン金属から選ばれる少なくとも一つの有機金属錯体
(b)セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから選ばれる少なくとも一つの希土類金属化合物
(c)銅、亜鉛、アルミ、鉄、ジルコニウム、及びチタンから選ばれる少なくとも一つの金属又はこれらの酸化物、水酸化物
(d)アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及びファーネスブラックから選ばれる少なくとも一つのカーボン粉もしくはナノ粒径カーボン粉
(e)ベンゾイミダゾロン系化合物
このうち、α-三酸化二鉄、フタロシアニン銅、オクチル酸セリウム、ベンゾイミダゾロン系化合物又はヒュームド酸化チタンが好ましい。前記耐熱性向上剤は1種で添加してもよいし、複数種類添加することもできる。耐熱性向上剤は、マトリックス樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部加えるのが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5質量部である。
【0018】
前記熱伝導性シリコーン放熱材料には、さらにBET比表面積(A
BET)が0.3m
2/g未満の熱伝導性無機フィラー(大粒子ともいう。)を添加してもよい。BET比表面積(A
BET)の下限値は0.01m
2/g以上が好ましい。前記大粒子は、表面の水酸基が付加型シリコーンの架橋成分SiHと反応する確率が低いと考えられるため硬化阻害は起きにくく、表面処理をしなくても硬化物が得られる。高温エージングでのシランカップリング剤による前記熱伝導性シリコーン放熱材料への耐熱性低下が起きないため、耐熱性が向上する。前記大粒子を併用する場合は、全体の熱伝導性無機フィラーの合計を100質量%としたとき、前記大粒子は10質量%以上90質量%未満添加するのが好ましく、より好ましくは30〜90質量%であり、さらに好ましくは50〜90質量%である。
【0019】
前記シリコーン放熱材料は、グリース、パテ、ゲル及びゴムから選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。ゲル又はゴムは、シート状に成形されていてもよい。これらの材料は、半導体などの発熱体と放熱体との間に介在させるTIM(Thermal Interface Material)として好適である。
【0020】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物の製造方法は、マトリックス樹脂であるシリコーンポリマーと前記表面処理した熱伝導性無機フィラーを混合し、必要により硬化させて得る。グリース、パテなどの液状物は硬化させないものもある。硬化させる場合は、硬化触媒を加える。シート成形など、成形する場合は、混合と硬化の間に成形工程を入れる。シート成形されていると電子部品等へ実装するのに好適である。前記熱伝導性シートの厚みは0.2〜10mmの範囲が好ましい。
【0021】
硬化組成物とする場合は、下記組成のコンパウンドが好ましい。
A マトリックス樹脂成分(ベースポリマー)
下記(A1)(A2)を含む。(A1)+(A2)で100質量部とする。
(A1)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン
(A2)架橋成分:1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、前記A成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.5〜1.5モルの量
前記(A1)(A2)成分以外に反応基を持たないオルガノポリシロキサンを含んでもよい。
B 熱伝導性無機フィラー
前記表面処理した熱伝導性無機フィラー:マトリックス樹脂成分100質量部に対し100〜10000質量部
C 硬化触媒
硬化触媒は、(1)付加反応触媒の場合は白金系金属触媒:マトリックス樹脂成分に対して質量単位で0.01〜1000ppmの量
D 耐熱性向上剤:マトリックス樹脂成分100質量部に対し0.01〜10質量部
また必要に応じて下記のE成分を含んでもよい。
E その他添加剤:硬化遅延剤、着色剤等;任意量
【0022】
以下、各成分について説明する。
(1)ベースポリマー成分(A1成分)
ベースポリマー成分は、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンであり、アルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンは本発明のシリコーンゴム組成物における主剤(ベースポリマー成分)である。このオルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に2個有する。粘度は25℃で10〜1000000mPa・s、特に100〜100000mPa・sであることが作業性、硬化性などから望ましい。
【0023】
具体的には、下記一般式(化1)で表される1分子中に2個以上かつ分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンを使用する。側鎖はアルキル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンである。25℃における粘度は10〜1000000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【化1】
【0024】
式中、R
1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
2はアルケニル基であり、kは0又は正の整数である。ここで、R
1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。R
2のアルケニル基としては、例えば炭素原子数2〜6、特に2〜3のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。一般式(1)において、kは、一般的には0≦k≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k≦2000、より好ましくは10≦k≦1200を満足する整数である。
【0025】
A1成分のオルガノポリシロキサンとしては一分子中に例えばビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6のケイ素原子に結合したアルケニル基を3個以上、通常、3〜30個、好ましくは、3〜20個程度有するオルガノポリシロキサンを併用しても良い。分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの分子構造のものであってもよい。好ましくは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、25℃での粘度が10〜1000000mPa・s、特に100〜100000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0026】
アルケニル基は分子のいずれかの部分に結合していればよい。例えば、分子鎖末端、あるいは分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合しているものを含んでも良い。なかでも下記一般式(化2)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ1〜3個のアルケニル基を有し(但し、この分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基が、両末端合計で3個未満である場合には、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したアルケニル基を、(例えばジオルガノシロキサン単位中の置換基として)、少なくとも1個有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、上記でも述べた通り25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【化2】
【0027】
式中、R
3は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基であって、少なくとも1個がアルケニル基である。R
4は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5はアルケニル基であり、l,mは0又は正の整数である。ここで、R
3の一価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
また、R
4の一価炭化水素基としても、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R
1の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。R
5のアルケニル基としては、例えば炭素数2〜6、特に炭素数2〜3のものが好ましく、具体的には前記式(化1)のR
2と同じものが例示され、好ましくはビニル基である。l,mは、一般的には0<l+m≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦l+m≦2000、より好ましくは10≦l+m≦1200で、かつ0<l/(l+m)≦0.2、好ましくは、0.0011≦l/(l+m)≦0.1を満足する整数である。
【0028】
(2)架橋成分(A2成分)
本発明のA2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、この成分中のSiH基とA成分中のアルケニル基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであればいずれのものでもよく、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は2〜1000、特に2〜300程度のものを使用することができる。
【0029】
水素原子が結合するケイ素原子の位置は特に制約はなく、分子鎖の末端でも分子鎖非末端(分子鎖途中)でもよい。また、水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前記一般式(化1)のR
1と同様の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基が挙げられる。
【0030】
A2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記構造のものが例示できる。
【化3】
【0031】
上記の式中、R
6は互いに同一又は異種のアルキル基、フェニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アルコキシ基、水素原子であり、少なくとも2つは水素原子である。Lは0〜1,000の整数、特には0〜300の整数であり、Mは1〜200の整数である。
【0032】
(3)触媒成分(C成分)
C成分の触媒成分はヒドロシリル化反応に用いられる触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。
【0033】
(4)熱伝導性無機フィラー(B成分)、及び耐熱性向上剤(D成分)
前記のとおりである。
(5)その他添加剤
本発明の組成物には、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えば難燃助剤、硬化遅延剤などを添加してもよい。着色、調色の目的で有機或いは無機顔料を添加しても良い。
【実施例】
【0034】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。各物性の測定方法は次のとおりである。
【0035】
<BET比表面積>
熱伝導性フィラーの各メーカーのカタログ値を使用した。なお、比表面積とは、ある物体について単位質量あたりの表面積または単位体積あたりの表面積のことである。比表面積分析は、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量からBETの式を用いて試料の比表面積を求める。
<平均粒子径>
平均粒子径は、レーザー回折光散乱法による粒度分布測定において、体積基準による累積粒度分布のD
50(メジアン径)とした。この測定器としては、例えば堀場製作所製社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950S2がある。
<熱伝導性シリコーンシートの熱伝導率>
熱伝導性シリコーンシートの熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007−2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置1は
図1Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ2を2個の試料3a,3bで挟み、センサ2に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ2の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ2は先端4が直径7mmであり、
図1Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極5と抵抗値用電極(温度測定用電極)6が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出する。
【数1】
<硬さ>
作製したシリコーンシートの硬さは、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)アスカーC硬度に従い測定した。
<耐熱性>
作製したシリコーンシートを220℃の熱風循環式オーブンに投入し、所定の時間経過した後取り出し、室温まで冷やした後、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)アスカーC硬度に従い硬さを測定した。
【0036】
<原料>
実施例、比較例で使用した原料は次のとおりである。
A マトリックス樹脂(ベースポリマー)
市販の付加反応型シリコーンゲル原料のオルガノポリシロキサン(A剤とB剤で一方には架橋剤が、他方には白金系触媒が配合されている)を使用した。
B 熱伝導性無機フィラー
・B−1:BET比表面積5.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)2.3μm、不定形粒子を使用し、アルミナ100gに対してメチルトリメトキシシラン1.0gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−2:BET比表面積5.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)2.3μm、不定形粒子を使用し、アルミナ100gに対してエチルトリメトキシシラン1.1gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−3:BET比表面積5.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)2.3μm、不定形粒子を使用し、アルミナ100gに対してn−プロピルトリエトキシシラン1.5gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−4:BET比表面積5.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)2.3μm、不定形粒子を使用し、アルミナ100gに対してデシルトリメトキシシラン2.0gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−5:BET比表面積5.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)2.3μm、不定形粒子、表面処理無し。
・B−6:BET比表面積0.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)35μm、球状、溶融固化粒子を使用した。表面処理はしていない。
・B−7:BET比表面積1.3m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)3μm、球状、溶融固化粒子を使用し、アルミナ100gに対してテトラエトキシシラン0.35gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−8:BET比表面積1.3m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)3μm、球状、溶融固化粒子を使用した。表面処理はしていない。
・B−9:BET比表面積5.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)2.3μm、不定形粒子を使用し、アルミナ100gに対してiso−ブチルトリメトキシシラン1.3gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−10:BET比表面積5.2m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)2.3μm、不定形粒子を使用し、アルミナ100gに対してフェニルトリメトキシシラン1.5gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−11:BET比表面積1.3m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)3μm、球状、溶融固化粒子を使用し、アルミナ100gに対してメチルトリエトキシシラン0.3gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−12:BET比表面積1.3m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)3μm、球状、溶融固化粒子を使用し、アルミナ100gに対してn−ブチルトリメトキシシラン0.3gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
・B−13:BET比表面積1.3m
2/gの酸化アルミニウム(アルミナ)、平均粒子径(D50)3μm、球状、溶融固化粒子を使用し、アルミナ100gに対してフェニルトリメトキシシラン0.35gを加えて混合し、130℃,120分間熱処理して固定した(前処理法)。
C 耐熱性向上剤
・C−1:α-三酸化二鉄
・C−2:フタロシアニン銅
・C−3:ヒュームド酸化チタン
・C−4:ベンゾイミダゾロン
【0037】
(実施例1〜3、5、6、11〜13、比較例1〜2)
上記マトリックス樹脂と熱伝導性フィラー(表面処理品)と耐熱性向上剤を使用し、表1に示す組成で、自転公転ミキサー(マゼルスターKK-400W、クラボウ(株)製)を用いて混合することにより、混合物を作成した。離型処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで上記混合組成物を挟み込み、ロールプレス機にて厚み2.0mmのシート状に成形し、100℃、30分加熱硬化し、シリコーンゲルシートを成形した。得られた熱伝導性シリコーンゲルシートの硬化後のアスカーC硬度、熱伝導率を測定した。熱伝導率をホットディスク(京都電子工業(株)製)により測定した。条件と結果を表1にまとめて示す。なお質量は、マトリックス樹脂を100gとしたときの質量(g)とした。
【0038】
【表1】
【0039】
以上の結果から、実施例1〜3、5、6、11〜13は耐熱性が高いことが確認できた。また、耐熱性試験の結果から、短期(100時間)の高温エージングにより一度軟化し、中期(500時間)の高温エージングにより再び硬化するシリコーン系放熱シートであり、この現象を経るシリコーン放熱シートは、長期の高温エージングによる熱劣化が小さいことも確認できた。
これに対して比較例1は表面処理剤がデシルトリメトキシシランであったので耐熱性は好ましくなく、比較例2は表面処理剤を使用しなかったので硬化不良を起こした。
【0040】
(実施例4、7〜10)
熱伝導性無機フィラーとして、表面処理無しの大粒子67質量%と、表面処理した小粒子33質量%を併用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0041】
(比較例3)
熱伝導性無機フィラーとして、表面処理無しの大粒子67質量%と、表面処理無しの小粒子を併用した以外は実施例4と同様に実施した。
以上の条件と結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示すように、表面処理無しの大粒子と、表面処理無しの小粒子を併用しても耐熱性を高いことが確認できた。また、耐熱性試験の結果から、短期(100時間)の高温エージングにより一度軟化もしくは初期硬さを維持し、中期(500時間)の高温エージングにより再び硬化するシリコーン系放熱シートであり、この現象を経るシリコーン放熱シートは、長期の高温エージングによる熱劣化が小さいことも確認できた。
これに対して比較例3は表面処理剤を使用しなかったので硬化不良を起こした。
(ただしRは炭素数1〜4の炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、R’は炭素数1〜4の炭化水素基、x=1〜2の整数)で示される表面処理剤により表面処理されており、シリコーンポリマー100質量部に対して、熱伝導性無機フィラーを100-10000質量部含む。比表面積が大きく平均粒子径が小さい熱伝導性無機フィラーを分子量の小さいシランカップリング剤で表面処理し、耐熱性を向上する。