特許第6988032号(P6988032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6988032
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】焼結機のエアシール装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 21/08 20060101AFI20211220BHJP
   C22B 1/20 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   F27B21/08 D
   C22B1/20 S
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-228163(P2018-228163)
(22)【出願日】2018年12月5日
(65)【公開番号】特開2020-91060(P2020-91060A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】清水 基志
(72)【発明者】
【氏名】織田 剛
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−180993(JP,U)
【文献】 実開昭62−019597(JP,U)
【文献】 実開昭58−055297(JP,U)
【文献】 特開2015−055429(JP,A)
【文献】 特開2001−330374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 21/00−21/14
C22B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限軌道であるレール上を連結して移動する複数台のパレット台車上に焼結原料を載置して、前記パレット台車の下部に設けられたウインドボックスより大気を下方へ吸引して前記焼結原料の焼成を行うことにより、連続的に焼結鉱を生産するドワイトロイド式の焼結機に備えられているエアシール装置であって、
前記エアシール装置は、前記パレット台車の下側の幅方向端部に取り付けられていて、前記パレット台車の進行方向に沿って長尺の棒状とされたエアシールバーと、上方から前記エアシールバーに嵌り込む長尺のエアシールケースと、を有していて、
前記エアシールケースと前記エアシールバーとで囲まれる空間内部において、前記エアシールバーの上面に、当該エアシールバーの幅を超える幅を有し且つ、耐熱性を備えるシート材を敷設する構成とされていて、
前記シート材として、500℃以上の耐熱性能を備えるガラスクロス、シリカクロスのいずれか一つ以上使用するものとし、
前記シート材は、少なくとも二層以上の多層構造とされ、
下層のシート材は、当該下層のシート材の上方に積層される上層のシート材よりも高い耐久性を有するものとされ、
前記上層のシート材は、前記下層のシート材よりも高い気密性を有するものとされている
ことを特徴とする焼結機のエアシール装置。
【請求項2】
前記シート材は、前記エアシールケースの内壁に沿うように折り返されて、
前記シート材は、前記ウインドボックス内が負圧になったとき、前記エアシールケースと前記エアシールバーの間に形成される隙間を閉塞可能とする可撓性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の焼結機のエアシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石焼結鉱製造設備に関する技術であって、特に焼結機のパレット台車とウィンドボックスとの間を気密になるように接続して、ウィンドボックス内を外気から隔離する焼結機のエアシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結機(例えば、ドワイトロイド式)では、鉄鉱石を主とする焼成原料をパレット台車上に充填し、点火炉で原料充填層の表面の粉コークスに着火した後、パレット台車の下部に設けられたウィンドボックスに接続された焼成ブロアより大気を下方へ吸引して原料中の粉コークスを連続的に燃焼させることにより、焼結鉱を製造している。
パレット台車は、搬送方向の始端にて、ホッパーより焼結原料が供給され、終端にて焼結鉱を排鉱した後、反転した状態で始端に戻り、再びホッパーからの焼結原料の供給を受け、搬送しながら焼成原料を焼成する手順を繰り返すこととなる。
【0003】
このように、ドワイトロイド式の焼結機では、焼成原料を焼成するため、パレット台車の下面から大気を下方へ吸引している。
そのため、焼結機においては、パレット台車とウィンドボックスとの間には、原料を焼成する際、外気が入り込まないように、パレット台車とウィンドボックスの間を気密になるように接続し、ウィンドボックス内の空間を外気から隔離するエアシール装置が設けられている。
【0004】
エアシール装置に関する技術としては、例えば、特許文献1、2に開示されているものがある。
特許文献1は、焼結機のエアシール装置に関する技術であって、大幅な設計変更を伴うことなく、スプリングの固着によるエアシールバーの上下動不良の発生を回避して、パレット台車とウィンドボックスとの間のシール不良を防止することを目的としている。
【0005】
具体的には、焼結機のエアシール装置において、焼結エアシールケース、またはエアシールケースおよびパレット台車に、エアシールケース該エアシールバーで囲まれる空間を外気と連通させる連通経路を設け、さらに該連通経路に集塵フィルタを取り付けることで、当該空間と外気の圧力差を解消することよって、エアシール装置の外側下方から当該空間へのグリスや粉塵の侵入を防止することとしている。また、エアシールケースとエアシールバーの間に、その隙間をシールすることができるシール用構造体を設けることとしている。
【0006】
すなわち、特許文献1には、シール用構造体を設けてエアシールケースとエアシールバーの間隙間をシールする方法が開示されている。この文献では、特に材料や形状が限定されていないが、シール用構造体の断面を上方開口コの字形として、その底面をエアシールバーの上面に固定し、その両端をエアシールケースの内面に当接させるような構造の弾性体や、断面をL字形として一辺をエアシールバーの上面に固定し、他辺をエアシールケースの内面に当接するような構造が開示されている。
【0007】
特許文献2は、焼結機パレット用エアシール装置に関する技術であって、焼結機の漏風を防止することを目的としている。
具体的には、エアシールケース内面とエアシールバー上面との間に少なくとも一端が断面L形の弾性体からなる第2のシール部材を装入し、前記エアシールバーの外側側面を覆い、下端がスライドベッドの側面に達するように弾性体からなる第3のシール部材を吊り下げることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−055429号公報
【特許文献2】実開昭62−019597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に関しては、焼結機が急に運転を停止した時には、エアシールケースとエアシールバーで囲まれた空間内部に500℃にもなる高温の焼成燃焼ガスが逆流することとなるので、シール用構造体(エアシール装置)に対しては、500℃以上の耐熱性が要求される。また、パレット台車の両端をエアシールケースの内面に当接させた状態を維持するためには、形状が変化しても復元性のある弾性体が好ましいが、一般的なゴム等の弾性体の耐熱性能は低いので、上記の500℃を満足せず、熱損傷に曝される虞がある。
【0010】
また、特許文献2は、上記した特許文献1の課題と同様に、焼結機が急に運転を停止した時には、エアシールケースとエアシールバーで囲まれた空間内部に500℃にもなる高温の焼成燃焼ガスが逆流することとなるので、シール用構造体(エアシール装置)に対しては、500℃程度の耐熱性が要求される。また同様に、パレット台車の両端をエアシールケースの内面に当接させた状態を維持するためには、形状が変化しても復元性のある弾性体が好ましいが、一般的なゴム等の弾性体の耐熱性能は低いので、上記の500℃を満足せず、熱損傷に曝される虞がある。
【0011】
すなわち、本発明が解決しようとする課題については、以下に示す二つの課題を同時に満足することであり、本発明はそのためのシール構造を有するエアシール装置を提供することにある。
(1)500℃の耐熱性能を備えること。
(2)エアシールケースの内面に当接する状態を定常的に維持して、ウィンドボックス内の気密を維持することができること。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、焼結機において、パレット台車とウィンドボックスとの間に形成される隙間を確実に閉塞することにより、隙間のシール不良を防止することができ、外気から入り込む漏風を防ぎ、ウィンドボックス内部の気密性を維持することができる焼結機のエアシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる焼結機のエアシール装置は、無限軌道であるレール上を連結して移動する複数台のパレット台車上に焼結原料を載置して、前記パレット台車の下部に設けられたウインドボックスより大気を下方へ吸引して前記焼結原料の焼成を行うことにより、連続的に焼結鉱を生産するドワイトロイド式の焼結機に備えられているエアシール装置であって、前記エアシール装置は、前記パレット台車の下側の幅方向端部に取り付けられていて、前記パレット台車の進行方向に沿って長尺の棒状とされたエアシールバーと、上方から前記エアシールバーに嵌り込む長尺のエアシールケースと、を有していて、前記エアシールケースと前記エアシールバーとで囲まれる空間内部において、前記エアシールバーの上面に、当該エアシールバーの幅を超える幅を有し且つ、耐熱性を備えるシート材を敷設する構成とされていて、前記シート材として、500℃以上の耐熱性能を備えるガラスクロス、シリカクロスのいずれか一つ以上使用するものとし、前記シート材は、少なくとも二層以上の多層構造とされ、下層のシート材は、当該下層のシート材の上方に積層される上層のシート材よりも高い耐久性を有するものとされ、前記上層のシート材は、前記下層のシート材よりも高い気密性を有するものとされていることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記シート材は、前記エアシールケースの内壁に沿うように折り返されて、前記シート材は、前記ウインドボックス内が負圧になったとき、前記エアシールケースと前記エアシールバーの間に形成される隙間を閉塞可能とする可撓性を有するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼結機において、パレット台車とウィンドボックスとの間に形成される隙間を確実に閉塞することにより、隙間のシール不良を防止することができ、外気から入り込む漏風を防ぎ、ウィンドボックス内部の気密性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】パレット台車とウィンドボックスとエアシール装置の概略を模式的に示した図である。
図2】エアシール装置の基本構成を模式的に示した図であり、ウィンドボックスへ侵入する漏風の経路を示した図である。
図3】本発明の焼結機のエアシール装置の概略を模式的に示した図である。
図4】本発明の焼結機のエアシール装置の別例の概略を模式的に示した図である。
図5】エアシールの動的試験装置における漏風流量計測系の系統を示した図である。
図6A】アクチュエーターを含む動的試験装置の正面図である。
図6B】アクチュエーターを含む動的試験装置の側面図である。
図7A】耐熱シート材を単層とした場合の気密試験結果(実施例1)を示したグラフである。
図7B】耐熱シート材を多層構造とした場合の気密試験結果(実施例2)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる焼結機のエアシール装置の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
図1に、パレット台車5とウィンドボックス1とエアシール装置10の位置関係などの概略を模式的に示す。図2に、エアシール装置10の基本構成を模式的に示し、ウィンドボックス1へ侵入する漏風の経路を示す。
【0018】
図3に、本発明の焼結機のエアシール装置10の概略を模式的に示す。
本発明は、無限軌道であるレール4上を連結して移動する複数台のパレット台車5上に焼結原料を載置して、パレット台車5の下部に設けられたウィンドボックス1より大気を下方へ吸引して焼結原料の焼成を行うことにより、連続的に焼結鉱を生産するドワイトロイド式の焼結機を対象としている。
【0019】
ドワイトロイド式の焼結機は、搬送方向に長尺とされていて、その搬送方向の始端においてホッパーより鉄鉱石を主とする焼結原料がパレット台車5上に供給され、点火炉で原料充填層の表面の粉コークスに着火した後、パレット台車5の下部に設けられたウィンドボックス1に接続された焼成ブロアより大気を下方へ吸引して原料中の粉コークスを、搬送しながら連続的に燃焼させることにより焼結鉱を製造し、終端において焼結鉱を排鉱するものである。なお、焼結鉱とは、主たる高炉原料で粉状の鉄鉱石に、石灰石などの溶剤を添加して、焼結機にて焼き固めたものである。
【0020】
図1に示すように、ウィンドボックス1には、ウィンドレッグ2が幅方向(左右方向)一対備えられている。ウィンドレッグ2の上端には、スライドベッド3が設けられている。また、ウィンドボックス1の下部には、焼成ブロア(図示せず)が接続されている。ウィンドボックス1は、焼成ブロアが大気を下方へ吸引することにより、ウィンドレッグ2に囲まれた内部が外部に対して負圧となる。ウィンドレッグ2の側方には、搬送方向に沿ったレール4が設けられている。
【0021】
一方で、パレット台車5は、搬送方向(長手方向)の始端にて、ホッパーより焼結原料が供給され、終端にて焼結鉱を排鉱した後、反転した状態で始端に戻り、再びホッパーからの焼結原料の供給を受け、搬送しながら焼成原料を焼成する手順を繰り返すこととなる。
パレット台車5は、ホッパー(図示せず)より供給された焼結原料が載置される載置部6と、載置部6の幅方向両端に設けられている側壁部7と、側壁部7の下部から下方へと延びるように形成されているフード部8と、側壁部7の幅方向外側に設けられている車輪9と、を有している。
【0022】
載置部6には、その下面から大気を下方へ吸引されたときに通風路となるスリット状の隙間(図示せず)が設けられている。車輪9は、ウィンドレッグ2の側方に設けられたレール4上を走行する。
パレット台車5の幅方向両端部には、ウィンドレッグ2の上部とパレット台車5の側壁部7との間での外気から侵入する漏風を防止して、ウィンドボックス1を密閉状態にシールするためのエアシール装置10が設けられている。
【0023】
すなわち、エアシール装置10とは、パレット台車5の下部に設置されており、パレット台車5とウィンドボックス1の間に形成される隙間17をシールする(閉塞する)装置である。
図2図3に示すように、エアシール装置10は、パレット台車5の下側の幅方向端部に取り付けられていて、パレット台車5の進行方向に沿って長尺の棒状とされたエアシールバー13と、上方からエアシールバー13に嵌り込む長尺のエアシールケース11と、を有している。
【0024】
エアシールバー13は、正面視で矩形状の棒材で形成されていて、ウィンドレッグ2の上部に設けられたスライドベッド3に対して、摺動自在に設けられている。
エアシールケース11は、パレット台車5の進行方向に沿って長尺の枠体であって、エアシールバー13に嵌り込む。エアシールケース11は、正面視で、下方が開口されたU字形状とされている。
【0025】
また、エアシールケース11とエアシールバー13との間に形成される空間内部には、スプリング14が配備されている。スプリング14は、スライドベッド3上を摺動するエアシールバー13に対して、上下方向に付勢するものとなっている。スプリング14の付勢により、エアシールバー13とスライドベッド3とは、密着するようになる。
エアシールケース11は、上記のフード部8よりも内側であって、レール4と平行となるように、パレット台車5の下面に取り付けられている。エアシールケース11は、左右一対の側壁12が下方に垂下するように設けられていて、その一対の側壁12の間にエアシールバー13が嵌め込まれる。
【0026】
エアシールバー13は、幅方向の長さが、エアシールケース11を構成する一対の側壁12の間隔とほぼ同じ長さ、或いは、少し短い長さとされている。エアシールバー13がエアシールケース11に嵌め込まれたとき、そのエアシールバー13とエアシールケース11とに囲まれる空間内に、スプリング14が配置される。スプリング14は、反力によりエアシールバー13を下方向に押圧することにより、スライドベッド3に押し付ける。
【0027】
すなわち、エアシール装置10は、ウィンドレッグ2の上端に設置されたスライドベッド3に対して、エアシールバー13を押しつけて摺動させることで、ウィンドボックス1内部をシールして気密状態にすることにより、外気からの漏風を防止する。
ところが、図2に示すように、従来では、エアシールバー13とエアシールケース11が嵌合した部分(エアシールバー13の外側面とエアシールケース11の内側面との間)に隙間17が形成される。この隙間17は、大気(外気)側からウィンドボックス1への侵入空気(漏風)が発生する際の経路Aとなる。
【0028】
また、エアシールバー13とスライドベッド3の間にも隙間が生じる。この隙間は、大気側からウィンドボックス1への侵入空気(漏風)が発生する際の経路Bとなる。
特に、大気側から経路Aを通過して、エアシールケース11とエアシールバー13で囲まれた空間内部に空気が流れて、ウィンドボックス1へ侵入する漏風については、生産性の低下など実操業への影響が大きかった。
【0029】
そこで、本発明においては、大気側からエアシールケース11とエアシールバー13の隙間17(漏風の経路Aとなる隙間17)をシート材で塞ぐことで、その経路Aを通過してウィンドボックス1へ侵入する漏風を防ぐこととしている。
すなわち、本発明にかかる焼結機のエアシール装置10においては、エアシールケース11とエアシールバー13とで囲まれた空間内部において、エアシールバー13の上面に、当該エアシールバー13の全幅を超える幅を有し且つ、耐熱性を備えるシート材15(耐熱シート材)を敷設することとしている。この耐熱シート材は、スプリング14でエアシールバー13に対して押さえ付けられている。
【0030】
図3に示すように、焼結機の操業中においては、エアシールバー13は約500℃程度まで加熱されるため、エアシールバー13の上面に敷設する耐熱シート材15については、500℃以上の耐熱性能が必要となる。
そこで、本発明では、耐熱シート材15として、耐熱温度=500℃以上を満足する耐熱シート材を用いている。その耐熱シート材15に関しては、例えば、ガラスクロス、シリカクロス等が挙げられ、これらの耐熱シート材を採用するとよい。なお、耐熱シート材15について、耐熱温度=500℃以上を満足するものであれば、特に限定はしない。
【0031】
本発明では、「耐熱シート材15の幅」>「エアシールバー13の全幅」としているので、耐熱シート材15がエアシールケース11の内面に当接することとなり、ウィンドボックス1内の気密性が維持される。これにより、経路Aの漏風が低減される。
耐熱シート材15は、エアシールケース11とエアシールバー13との間に組み込まれたとき、エアシールケース11の内壁に沿うように折り返されるようになっている。つまり、耐熱シート材15は、エアシールケース11の内壁に接触するように組み込まれる。
【0032】
耐熱シート材15は、ウィンドボックス1内が負圧になったとき、エアシールケース11とエアシールバー13の間に形成される隙間17を閉塞可能とする可撓性を有するものである。この構成にすることより、エアシールケース11とエアシールバー13とに形成される隙間17を確実に閉塞することができる。
なお好ましくは、エアシールケース11とエアシールバー13との間に形成される隙間17に関し、大気(外気)側の隙間17、ウィンドボックス1側の隙間17のうち、少なくとも一方を耐熱シート材15で閉塞するとよい。
【0033】
これにより、パレット台車5とウィンドボックス1との間が気密下に接続されるので、外気からの漏風が防止されて、ウィンドボックス1内が外気から隔離されることとなる。
好ましくは、耐熱シート材15は、少なくとも二層以上の多層構造とされているとよい。また、耐熱シート材15については、下層の耐熱シート材15a(第1耐熱シート材)が高耐久性のものとされ、下層の耐熱シート材15aの上方に積層される上層の耐熱シート材15b(第2耐熱シート材)が高気密性のものとされているとよい。
【0034】
詳しくは、下層の第1耐熱シート材15aに、例えば、耐熱繊維を用いて製織し、所定の厚みとされたものを用いる。第1耐熱シート材15aとしては、例えば、耐熱温度=500℃以上を満足するガラスクロス等を採用するとよい。
また、上層の第2耐熱シート材15bに、例えば、耐熱繊維を用いて製織し、第1耐熱シート材15aの気密性より高いものを用いる。第2耐熱シート材15bとしては、例えば、耐熱温度=500℃以上を満足するシリカクロス等を採用するとよい。
【0035】
ところで、気密性の高い耐熱シート材は、細い糸を密に編み上げていることから、1mm未満の厚さのものがある。しかし、エアシールケース11とエアシールバー13との嵌合部分の隙間17(経路Aとなる隙間17)は、約1mmのオーダーであることから、厚みが薄い耐熱シート材だけでは、気密性能に優れていても、実操業時にその隙間17に挟まれて破れる可能性がある。
【0036】
そこで、気密性が少し低いものではあるが、高い耐久性を有する耐熱シート材(例えば、ガラスクロス等)を、下層の第1耐熱シート材15aとして敷設し、さらにその上層に気密性が高い耐熱シート材(例えば、シリカクロス等)を第2耐熱シート材15bとして積層して、耐熱シート材15の厚みを隙間17より厚くすることで、実操業時に、エアシールケース11とエアシールバー13の隙間17に耐熱シート材15が挟み込まれることを防止し、高いシール性能を発揮させることができる。
【0037】
すなわち、本発明において、耐熱シート材15を多層構造とするポイントとしては、以下の二点である。
一点目としては、多層化した耐熱シート材15の厚さが隙間17(約1mm)よりも厚いものとしていることである。さらに、二点目としては、下層の第1耐熱シート材15aが第2耐熱シート材15bに対して気密性に劣るが、耐久性に勝るものを用いていることである。
【0038】
図4に、本発明の焼結機のエアシール装置10の別例の概略を模式的に示す。
さらに好ましくは、図4に示すように、耐熱シート材15の上面に、正面視でエアシールバー13の幅よりも短い幅を有する押さえ板16を載置し、押さえ板16とエアシールバー13とで、耐熱シート材15を挟み込む構成とされているとよい。
すなわち、耐熱シート材15の密着性を向上させるために押さえ板16を備えていてもよい。
【0039】
具体的には、エアシールケース11の開口幅よりも、片側で3mm〜4mm短い幅、すなわち両側で6mm〜8mm短い幅を有する押さえ板16を、耐熱シート材15の上面に載置する。この押さえ板16で耐熱シート材15をエアシールバー13の上面に押さえ付けておくことで、耐熱シート材15の剛性によって、エアシールケース11の側壁12の内壁面側に当接する状態を定常的に維持するようにする。
【0040】
すなわち、多層構造の耐熱シート材15の上に、エアシールバー13の全幅よりも短い幅を有する押さえ板16を載置して、その押さえ板16をスプリング14で押圧することにより、耐熱シート材15の幅方向端部をエアシールケース11の側壁12の内壁面に当接させて、エアシールケース11とエアシールバー13の隙間17を閉塞した状態を維持する。その隙間17を閉塞するにあたっては、少なくとも、下層の第1耐熱シート材15a、上層の第2耐熱シート材15bのいずれか一方が、エアシールケース11の内壁に当接しているとよい。
【0041】
なお、押さえ板16については、耐熱温度=500℃以上を満足するものであるとよい。
押さえ板16の効果について、以下に示す。
押さえ板16で耐熱シート材15に対して均等に荷重をかけることで、穴加工部のほつれ等による耐熱シート材15の寿命低下を防止する効果がある。
【0042】
側壁12(エアシールケース11)の両側の内壁面に、耐熱シート材15を接触させた場合、外気(大気)側の隙間17を閉塞する耐熱シート材15が容易に浮き上がるので、耐熱シート材15の下側を、漏風がショートパスして侵入してしまうことを防止する効果がある。
[実施例]
以下に、本発明にかかる焼結機のエアシール装置10の実施例について、説明する。
【0043】
本実施例における実施条件については、以下の通りである。
焼結機については、ドワイトロイド式であり、有効焼成面積=371m(幅×長さ=4.5m×82.4m)である。
パレット台車5については、幅×長さ=4.5m×1.5mであり、サイドウォール(側壁部7)の高さ=0.89mである。
【0044】
排ガス吸引ブロアについては、以下の通りである。
低温ブロアは、吸引能力=9900Nm/minであり、操業時入口圧力=−17kPa〜−18kPa(最大)である。
メインブロアは、吸引能力=24000Nm/mimであり、操業時入口圧力=−17kPa〜−18kPa(最大)である。
【0045】
なお、焼結機から排出される排気ガスについては、これらのブロアで下方吸引され、排気ガス脱硝設備で処理された後、系外に排出される。
高温循環ブロアは、吸引能力=((5120Nm/min)×2) であり、操業時入口圧力=−13kPa〜−14kPa(最大)である。
なお、高温循環ブロアで吸引した排気ガスは、焼結機の前半部に循環される。
【0046】
配合原料については、「配合原料=新原料+返鉱」である。新原料については、鉄鉱石、副原料等、新たに供給される原料である。返鉱については、成品を所定粒度になるように、篩処理した後の篩下粉である。
床敷鉱については、粒径=10mm〜25mm、層厚=50mm〜70mmであり、焼成中にグレート面に焼結鉱が焼き付くことを防止することを目的とし、グレート面に敷くものである。なお、床敷鉱は、一般に、成品焼結鉱の一部を回収したものが使用される。
【0047】
原料配合については、生石灰:配合量=1.0質量%〜4.9質量%(対新原料)とし、使用量は生産計画、および、原料通気性見合いで決定する。なお、生石灰配合量増により、原料の造粒性が向上することで、生産量は増加する。
原料充填層については、高さ=580mm〜780mmであり、「原料充填層の高さ=原料層厚+床敷層厚」である。なお、原料層厚については、原料層の通気性の変化に合わせて、メインブロアの入口圧力が一定になるよう調整する。
【0048】
なお、本実施形態で用いるパラメータの定義については、表1に示す通りである。表1は、本実施形態で用いる記号の定義について示したものである。
【0049】
【表1】
【0050】
図5に、エアシールの動的試験装置における漏風流量計測系の系統を示す。図6Aに、アクチュエーターを含む動的試験装置の正面図を示す。図6Bに、アクチュエーターを含む動的試験装置の側面図を示す。
図5図6A図6Bに示す動的試験装置を用いて、気密性能と耐久性能の試験を行って、本発明の効果を確認した。
【0051】
なお、気密試験では、エアシール装置10における前後の差圧Δpを、5kPa,10kPa,15kPaに変更して、各差圧条件での漏風質量流量m(ドット)を流量計で測定し、エアシール装置10の隙間面積Aを、以下に示す式(1)により求めた。
【0052】
【数1】
【0053】
ただし、ρ:エアシール装置10の上流側空気密度、L:エアシール装置10の長さである。
[実施例1]
表2に、本エアシール性能試験において用いた単層の耐熱シート材15の諸元(エアシール供試体の材料)と、気密試験の結果(実施例1)を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
ただし、実施例1及び実施例2においては、ガラスクロスAとして、マリンテックス(登録商標)クロスを用いている。ガラスクロスBとして、インサルテックス(登録商標)クロスを用いている。ガラスクロスCとして、イソウール(登録商標)を用いている。シリカクロスとして、シルテックス(登録商標)クロスを用いている。
なお、表2中の「*1」について、図5中の流量計:FM1で読み取った漏風質量流量m(ドット)が、当該流量計の最小目盛り以下であった。
【0056】
耐久試験では、エアシール装置10における前後の差圧=15kPaを作用させた状態で、アクチュエーターを用いて約0.2Hzの周波数でエアシールバー13を上下方向に動作させた。表2に、6時間耐久試験を行った後の耐熱シート材15の状態を示す。この6時間耐久試験に関して、概ね実機で6カ月間運用した時のエアシールバー13の上下動回数になる。
【0057】
ここで、侵入空気の削減率Rを、以下に示す式(2)より算出した。
R=(m−m)/m×100 ・・・(2)
ただし、m:耐熱シート材15が無い場合でのエアシール装置10の漏風量、m:耐熱シート材15が備えた場合でのエアシール装置10の漏風量である。
図7Aに、耐熱シート材15を単層とした場合の気密試験結果(実施例1)を示す。
【0058】
図7Aに示すように、実施例1においては、耐久試験、および、気密試験の両方から評価しても、ガラスクロスA〜ガラスクロスCの性能に大きな差はなく、気密性能では内部に耐熱シート材15のない現状と比較して、エアシール装置10の隙間面積Aは約40%低減される。したがって、侵入空気流量については、60%削減させることができる。
一方で、シリカクロスは、非常に細い糸で緻密に編まれているため、ほとんどの空気はこのシリカクロスを通過しない。しかしながら、シリカクロスの厚みは0.8mmで薄いため、エアシールケース11とエアシールバー13との嵌合部分の隙間17に挟まれてしまう状況となり、シリカクロスの一部に直線状の破れが発生することとなった。
【0059】
この結果より、実操業では、耐熱シート材15としてシリカクロスだけを敷設して、エアシールケース11とエアシールバー13との隙間17(経路Aとなる隙間17)を閉塞した場合、シリカクロスが破れてしまう虞がある。すなわち、シリカクロスは、高気密性であるものの、耐久性については満足しないことを知見した。
[実施例2]
そこで、実施例2において、耐熱シート材15の耐久性向上を目的として、エアシールバー13の上面に、多層構造の耐熱シート材15を載置して、上記の実施例1と同じ条件で気密試験を実施した。
【0060】
例えば、下層の第1耐熱シート材15aにガラスクロスA(厚さ=0.7mm)を採用し、上層の第2耐熱シート材15bにシリカクロス(厚さ=0.8mm)を採用した多層シール構造の耐熱シート材15を作成した。
また、下層の第1耐熱シート材15aにガラスクロスB(厚さ=2mm)を採用し、上層の第2耐熱シート材15bにシリカクロス(厚さ=0.8mm)を採用した多層シール構造の耐熱シート材15を作成した。
【0061】
また、下層の第1耐熱シート材15aにガラスクロスC(厚さ=2mm)を採用し、上層の第2耐熱シート材15bにシリカクロス(厚さ=0.8mm)を採用した多層シール構造の耐熱シート材15を作成した。
表3に、本エアシール性能試験において用いた多層構造の耐熱シート材15の諸元(エアシール供試体の材料)と、気密試験の結果(実施例2)を示す。
【0062】
【表3】
【0063】
図7Bに、第1耐熱シート材15aと第2耐熱シート材15bとを積層して、耐熱シート材15を多層構造とした場合の気密試験結果(実施例2)を示す。
図7Bに示すように、耐熱シート材15を多層構造とした場合、その侵入空気の削減率は、耐熱シート材15を単層とした場合の侵入空気の削減率を上回ることとなる。
つまり、実施例2によれば、第1耐熱シート材15aと第2耐熱シート材15bとを積層して、耐熱シート材15を多層構造とすることにより、ガラスクロスA〜ガラスクロスCのいずれかを用いて単層とした耐熱シート材15の場合と比較して、気密性能をより向上させることができる。
【0064】
すなわち、耐熱シート材15として、下層に耐久性を有する第1耐熱シート材15aを敷設し、上層に高気密性を有する第2耐熱シート材15bを積層させて敷設した多層シール構造とする方が、エアシールケース11とエアシールバー13の隙間17を確実に閉塞することができ、経路Aを通過する漏風をより低減させることができる。
以上、本発明によれば、焼結機において、パレット台車5とウィンドボックス1との間に形成される隙間17(漏風の経路Aとなる隙間17)を、耐熱シート材15(好ましくは、第1耐熱シート材15aと第2耐熱シート材15bの多層構造とする)で確実に閉塞することにより、隙間17のシール不良を防止することができ、外気から入り込む漏風を防ぎ、ウィンドボックス1内部の気密性を維持することができる。
【0065】
すなわち、本発明は、確実に漏風を防止することができるので、焼結鉱の生産性向上、吸引ブロアの電力削減による省エネルギー効果を得ることができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0066】
1 ウィンドボックス
2 ウィンドレッグ
3 スライドベッド
4 レール
5 パレット台車
6 載置部
7 側壁部
8 フード部
9 車輪
10 エアシール装置
11 エアシールケース
12 側壁
13 エアシールバー
14 スプリング
15 耐熱シート材
15a 第1耐熱シート材(下層)
15b 第2耐熱シート材(上層)
16 押さえ板
17 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B