(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマーが、4−メチル−1−ペンテンポリマー、4−メチル−1−ペンテンコポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及びTPX(商標)から成る群より選択される、請求項1に記載の選択的放射冷却構造体。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】地表面におけるAM1.5での分光放射照度、及び大気透過窓における15℃での黒体表面の放射スペクトルである。
【
図3A】ポリマーマトリックス中に分散した粒子30を含むポリマー20を含む放射層5の概略図である。
【
図3B】直径8μmの固体シリカ微小球が5%である厚さ50μmのポリメチルペンテンフィルムについての、波長に応じた吸収率/放出率を示す。
【
図4A】金属反射層40に接した、ポリマー20及び粒子30を含む放射層5の概略図である。
【
図4B】ポリマー20及び粒子30を含む放射層5の概略図であり、放射層の片面は、金属反射層40に接しており、放射層のもう一方の面は、反射防止層50に接しており、反射防止層50は、保護層60に接している。
【
図4C】ポリマー20及び粒子30を含む放射層5の概略図であり、放射層の片面は、バリア層70に接しており、バリア層70は、金属反射層40に接しており、放射層のもう一方の面は、保護層60に接している。
【
図4D】ポリマー20及び粒子30を含む放射層5の概略図であり、放射層の片面は、バリア層70に接しており、バリア層70は、金属反射層40に接しており、金属反射層40は、熱伝導層に接しており、放射層のもう一方の面は、反射防止層50に接しており、反射防止層50は、保護層60に接している。
【
図4E】ポリマー20及び粒子30を含む放射層5の概略図であり、放射層の片面は、バリア層70に接しており、バリア層70は、金属反射層40に接しており、放射層のもう一方の面は、反射防止層50に接しており、反射防止層50は、保護層60に接している。
【
図5】太陽電池の上部に直接取り付けられた放射冷却シートの概略図である。
【
図6】放射天井パネルに直接取り付けられた放射冷却シートの概略図である。
【
図7A】組み立てられた構造体の屋根に反射層が直接取り付けられた放射冷却シートの概略図である。
【
図7B】車の屋根に反射層が直接取り付けられた放射冷却シートの概略図である。
【
図8A】複数の冷気回収装置に接した放射冷却構造体の概略図である。
【
図8C】放射冷却構造体により生み出された冷気を回収するために放射冷却構造体に接した状態で使用され得るサーモサイフォンの概略図である。
【
図9】放射冷却構造体を使用して冷気貯蔵システムによる冷却を可能にしている建築物についての能動的な冷却システムの概略図である。
【
図10A】発電所の復水器の冷却を補助するための複数の冷気回収装置の概略図である。
【
図10B】選択的放射冷却構造体を使用して得られた冷気を回収するために受動的なサーモサイフォンを使用して、冷気の回収及び貯蔵を可能にする、例示的な12時間の稼働スケジュールである。
【
図11】ポリマーベースのフィルムを押出成形する装置の概略図である。
【
図12】フィルムを酸化物及び金属で被覆する装置の概略図である。
【
図13A】厚さ50μmの裸のポリメチルペンテン(TPX(商標))フィルム、及び直径8μmの固体シリカ微小球の体積割合が5%である厚さ50μmのフィルムについての、波長に応じた放出率/吸収率を示す。
【
図13B】直径8μmの固体シリカ微小球の体積割合が5%である様々な厚さのポリメチルペンテンフィルムについての、波長に応じた放出率/吸収率を示す。
【
図13C】直径8μmの固体シリカ微小球の体積割合が5%である厚さ55μmのポリメチルペンテンフィルムについての、波長に応じた吸収率/放出率を示す。
【
図14】様々な径のビーズについての、ガラスビーズ濃度(体積割合)に応じた放出率を図示する。
【
図15A】ガラスポリマーハイブリッドメタマテリアルである。(
図15A)大規模な放射冷却のためにSiO
2微小球がランダムに分布した状態で含有されているポリマーベースのハイブリッドメタマテリアルの略図である。分極性微小球は赤外光と強く相互作用して、メタマテリアルについて大気透過窓全体にわたって放射性を極めて高くする一方で、太陽光スペクトルに対しては透明を維持する。
【
図15B】(
図15B)個別の微小球についての、サイズパラメータ(k
0a)に応じた、吸収(青)、散乱率(赤)及び消光率(黒)の正規化された断面積である。消光率、すなわち散乱率と吸収との合計は、2.5のサイズパラメータでピークとなり、これは4μmの微小球半径に相当する。差込図は、10μmの波長で照らされた、直径1μm及び直径8μmの2個の微小球の電界分布を示す。スケールバーは4μmである。より小さな微小球が電気双極子共鳴(electric dipolar resonance)で共鳴している一方で、より大きな微小球においては、高次の電気及び磁気モードが励起される。
【
図15C】(
図15C)10μmの波長の照明による直径8μmの微小球の散乱遠視野放射照度のアンギュラーダイアグラム(angular diagram)である。入射場は、y方向に沿って偏光しており、z方向に沿って伝播している。
【
図16】ハイブリッドメタマテリアルのフレーリッヒ共鳴(Froehlich resonance)及び広帯域赤外吸収率である。ガラスポリマーハイブリッドメタマテリアルについての実効屈折率の実数部(
図16A)及び虚数部(
図16B)。直径1μmのSiO
2微小球を有するメタマテリアル(黒の曲線)が、9.7μmのフォノン−ポラリトン周波数で強いフレーリッヒ共鳴を示す一方で、直径8μmの微小球を有するメタマテリアル(赤の曲線)は、赤外波長にわたって、明らかにより広帯域な吸収を示す。強いフレーリッヒ共鳴は、強い放出率の帯域幅を制限するだけでなく、入射する赤外放射の強い反射をもたらす。どちらの場合でも、メタマテリアルは、6体積%のSiO
2を含有する。(
図16C)2つのハイブリッドメタマテリアルの減衰長であり、直径8μmのSiO
2微小球の場合、平均減衰長は、λ=7〜13μmで約50μmを示す。
【
図17A】ハイブリッドメタマテリアルの分光応答である。(
図17A)薄い銀フィルムを裏面に備えたハイブリッドメタマテリアルの略図である。銀フィルムが、入射する太陽光照射の大部分を拡散反射する一方で、ハイブリッド材料は、入射する赤外照射をすべて吸収し、且つ赤外放射放出性が高い。
【
図17B】(
図17B)ハイブリッドメタマテリアルの3次元共焦点顕微鏡画像である。微小球は、SiO
2が自家蛍光しているために目に見える。
【
図17C】(
図17C)太陽光スペクトルの照射(AM1.5)及び室温での黒体の熱放射のパワー密度である。双方のスペクトルにおいて急激に変化している特徴部分は、大気(気体分子)の吸収によるものである。放射冷却プロセスは、8〜13μmの間、すなわち大気透過窓での強い放出に基づく。
【
図17D】(
図17D)300nm〜25μmでの厚さ50μmのハイブリッドメタマテリアルの放出率/吸収率の測定値(黒の曲線)である。太陽光スペクトル(300nm〜2.5μm)及び赤外スペクトル(2.5μm〜25μm)の双方を測定するために積分球を用いる。同じハイブリッドメタマテリアル構造体についての理論上の結果(赤の曲線)を比較のためにプロットする。2つの異なる数値解析技術、すなわち、RCWA及び非干渉性トランスファーマトリックス方法(incoherent transfer matrix method)を太陽光スペクトル及び赤外スペクトルの範囲にそれぞれ用いる。
【
図18】効果的な放射冷却のためにスケーラブルな製造をしたハイブリッドメタマテリアルの性能である。(
図18A)毎分5メートルの速度にてロール・ツー・ロール法で作製された幅300mmのハイブリッドメタマテリアル薄膜を示す写真である。フィルムは、厚さが50μmであり、まだ銀で被覆されてはいない。(
図18B)直接の熱試験における、周囲温度(黒)及び直径8インチのハイブリッドメタマテリアルの表面温度(赤)についての72時間にわたる連続的な測定である。フィードバック制御式電気ヒーターにより、周囲温度とメタマテリアル表面温度との差を、3日間連続で0.2℃未満に保つ。電気ヒーターにより生み出される加熱力によって、ハイブリッドメタマテリアルからの放射冷却力が相殺される。メタマテリアルが外気と同じ温度になったら、電気加熱力から、メタマテリアルの放射冷却力が正確に測定される。影が付いた領域は、夜間の時刻を表す。(
図18C)3日間にわたり放射冷却力を連続的に測定することで、平均冷却力は、110W/m
2超であり、正午の冷却力は、午前11時〜午後2時の間で93W/m
2であると示される。夜間の平均冷却力は、日中の平均冷却力よりも高く、冷却力は、日の出後及び日没前がピークである。放射冷却力の測定誤差は、十分に10W/m
2内にある(32)。
【
図19A】(
図19A)幅300mmのメタマテリアルにおけるシリカ微小球のエッジ・ツー・エッジ濃度分布である。濃度の変動は、0.4%未満である。差込図は、メタマテリアル薄膜の光学画像を示す。スケールバー:40μm。
【
図20A】(
図20A)半透明のハイブリッドメタマテリアルの光散乱効果を示す写真である。532nmの波長での直径2mmのレーザービームは、フィルムを透過する際に大幅に分散する。
【
図20B】(
図20B)メタマテリアルの色度分析である。ハイブリッドメタマテリアルの色は、微小球による可視光の強い散乱効果の結果、色空間の中央に位置する(ホワイトバランス)。
【
図21A】(
図21A)フィードバック制御式電気ヒーターを備える直接熱測定装置の略図である。閉ループ型電子装置でメタマテリアル表面温度を追跡して、周囲環境の温度と同じにして、対流及び伝導による熱損失を最小限にする。このフィードバック制御式測定装置により、HDPE保護フィルムを除去すること、及びハイブリッドメタマテリアルを連続的に常時空気に直接曝すことが可能になり、放射冷却力が正確に測定される。
【
図22】(
図22A)2016年10月8日にコロラド州ボルダーで18時間にわたり測定された周囲温度及びハイブリッドメタマテリアル表面温度である。影が付いた領域は、夜間の時刻を表す。フィードバック制御式電気ヒーターにより、表面温度は周囲温度を近似的に辿る。差込図は、制御ループのスイッチを入れた際の初期の動きを示す。(
図22B)周囲温度の測定値とハイブリッドメタマテリアル表面との間の温度差である。日中(
図22C)及び夜間(
図22D)の温度差のヒストグラムは、それぞれ0.2℃及び0.1℃と、僅かなずれを示す。
【
図23】(
図23A)電子式フィードバック制御を使用した、表面温度(赤)及び周囲温度(黒)の連続的な測定である。(
図23B)24時間にわたる表面温度と周囲温度との間の温度差の分布である。(
図23C)連続的に測定した冷却力(1秒でサンプリング)及び実施時間にわたるその平均値(5分で平均化)である。回路がフィードバック制御式であるために、実時間のデータについて瞬間的な発振が存在し、これを灰色で示す。(
図23D)瞬時に測定した冷却力と実施時間にわたるその平均値との間の差の分布である。測定誤差は10ワット未満であり、瞬間的な発振は、実時間でのパワー測定における誤差を明らかに超過している。
【
図24】水体の直接的な放射冷却である。(
図24A)本構成の略図である。(
図24B)時間に応じた、周囲温度(黒)、水槽表面温度(青)、水温(緑)及びメタマテリアル表面温度(赤)である。2016年9月15日午前3:10に、メタマテリアルを空に曝した。(
図24C)水に貯蔵された冷気エネルギー(青)、プラスチック製の水槽に貯蔵された冷気エネルギー(緑)、メタマテリアルと、銀被覆ウェハと、銅板とを含む積層構造体に貯蔵された冷気エネルギー(シアン)、及びこれら3つの合計(赤)の非定常解析である。ポリスチレンフォーム容器を通した対流及び伝導による熱損失の合計(マゼンタ)は、筐体と外気との温度差が広がるほど増加した。合計熱容量は、約33KJ/(m
2・K)である。メタマテリアルの合計放射冷却力(黒)は、熱損失と全材料に貯蔵された冷気との合計であり、合計は、約120W/m
2であった。測定開始時に測定された放射冷却力におけるオーバーシュートは、測定システムの要素間の非定常熱流によるものであった。
【0048】
[発明の詳細な説明]
[0081]図面において、同じ参照番号は、同じ要素を指す。
【0049】
[0082]電磁スペクトルを幾つかの領域に分類することができる。本明細書において参照される領域は、赤外領域(約1mm〜750nmの波長)、可視領域(約750nm〜400nmの波長)及び紫外領域(約400nm〜40nmの波長)である。また赤外領域は、様々な分類スキームを使用してサブ領域に分類されている。ISOの分類スキームにおいて、中赤外域は、約3μm〜50μmである。本明細書で使用されているように、放射束とは、単位時間あたりの放射エネルギー(例えば、W)であり、放射照度とは、表面により受け取られる単位面積あたりの放射束(例えば、Wm
−2)であり、分光放射照度とは、単位波長あたりの表面の放射照度である(例えば、Wm
−2nm
−1)。
【0050】
[0083]絶対零度ケルビン超の温度で物質から放出される電磁放射は、熱放射と称されることもある。太陽光スペクトルとは、電磁波の波長に応じた、太陽により放出される電磁放射の分布を指す。太陽エネルギーの大部分は、
図1に見られるように、約0.3μm〜約3μmの波長にわたる。
【0051】
[0084]放出率から、実際の表面が黒体に比べて電磁エネルギーをどの程度良好に放射するかが分かり、放出率は0〜1の間の範囲にあり得る。指向分光放出率(directional spectral emissivity)とは、黒体の放射能力に対する実際の表面の放射能力の比率である。全波長について、合計放出率を平均化する。全方向について、半球放出率を平均化する。本明細書で使用されているように、選択的放出層は、絶対零度超の温度において、0〜1の間の所望の放出率を伴う波長範囲にわたり電磁放射を放出するように構成されている。
【0052】
[0085]本明細書で使用されているように、選択的放出層は、波長選択的の放出率を有する。選択的放出層は、絶対零度ケルビン以外の温度で電磁放出を熱により生成するように構成されており、黒体ではない。放出率は吸収率と相関関係にあるため、選択的放出層は、選択的吸収層でもある。実施形態において、選択的放出層は、スペクトルの赤外部分の少なくとも幾つかの部分において高い放出率を有するが、太陽光スペクトルの少なくとも幾つかの部分における放出は制限されている。また、このような選択的放出層は、選択的に吸収性を示し、スペクトルの赤外部分の少なくとも幾つかの部分における吸収が高いが、太陽光スペクトルの少なくとも幾つかの部分における吸収は制限されている。
【0053】
[0086]本明細書で使用されているように、平均径は、有効径の数値平均又は算術平均を指す。一実施形態において、平均径は例えば、全粒子の有効径の合計を粒子数で割った値を指す。平均径が有効径を指すことを考慮すると、粒子は、様々な形状を有することができ、球形又は球状の粒子に限定されることはない。また、粒子の分布は変化してもよく、粒子は例えば、分布が狭くても幅広くてもよく、単分散性であっても多分散性であってもよい。
【0054】
[0087]本明細書で使用されているように、吸収率とは、物体の表面に入射して物体に吸収される放射エネルギーの比率と規定される。入射放射は、入射エネルギー源における放射条件に応じる。一実施形態において、平均吸収率は、対象となる波長範囲での平均化された半球吸収率である。
【0055】
[0088]本明細書で使用されているように、透過率とは、物体の表面に入射して物体を透過する放射エネルギーの比率と規定される。本明細書で使用されているように、透過性材料は、指定の波長範囲における放射について、透過率が平均0超である。一実施形態において、平均透過率は、対象となる波長範囲での平均化された半球透過率である。幾つかの実施形態において、透過性材料は、指定の波長範囲について、透過率が0.9超である。
【0056】
[0089]本明細書で使用されているように、反射率とは、物体に入射して物体により反射される放射エネルギーの比率と規定される。太陽光反射率とは、太陽光スペクトルの指定領域(例えば、0.3μm〜3μm)における、物体に入射して物体により反射される放射エネルギーの比率と規定される。一実施形態において、太陽光反射率は、スペクトルの指定領域で平均化されたものである。一実施形態において、平均反射率とは、対象となる波長範囲での平均化された半球反射率である。
【0057】
[0090]本明細書で使用されているように、室温とは、約20℃〜30℃である。
【0058】
[0091]また、本発明の実施形態は、関連する冷却用途に有用なサイズスケールで放射冷却構造体を製造する方法に関する。本発明の幾つかの実施形態において、ポリマー又はポリマーベースの材料を、押出成形機、任意選択で工業用押出成形機又はダイカスターに供給し、溶融及び押出成形して薄いシートにする。例として、押出成形機に供給されるポリマーは、ペレット、粉末又はその他の乾燥した形態にある。放射複合層を作製するための実施形態において、ポリマー溶融の前、その間又はその後に、先に論じた非ポリマー材料、例えば、誘電体又はガラス粒子をポリマーに混合し、それから押出成形を行う。非ポリマー材料は、あらゆる手法で混合可能であり、また非ポリマー材料を混合して、ポリマー材料及び非ポリマー材料の均質又はほぼ均質なブレンドにしてもよい。先に論じたように、このようなポリマーベースのシートは、厚さが3μm〜数ミリメートルであり得る。押し出されるシートは、固体基材に注型され得るか、又は一実施形態において、冷えたローラにおいて形成されて、自立型薄膜(standalone thin film)を形成し得る。
【0059】
[0092]他の実施形態において、ポリマー又はポリマーベースのシートを、様々なポリマー製造方法のうちのいずれか1つ又は組合せにより製造することができ、製造方法には、液体又は溶液流延、ブローイング又はブロー成形、スピニング、圧縮成形、噴霧方法及び射出成形が含まれるが、これらに制限されることはない。例えば、最初のポリマー材料を非ポリマー粒子と混合して溶融し、溶融した混合物をブローするか、圧縮するか、又は違った形で成形して、任意の厚さのシートにすることができる。他の実施形態において、例えば塗装、刷毛塗り、被覆又は噴霧によりポリマーを表面に直接塗布することができるように、ポリマーを流体又は液体の形態で用意することができる。幾つかの実施形態において、液状ポリマーは、粒子を全体に分散した状態で有し得る。ポリマーは、塗布後に硬化プロセスを必要とし得るか、又は乾燥して所望のポリマー層を形成し得る。
【0060】
[0093]本明細書で言及したすべての特許及び刊行物は、本発明が関連する技術分野の当業者の技術水準を表す。ここで、本明細書において引用するすべての参照を、本開示とこれらの参照が矛盾しない程度に参照により組み込む。本願を通して、すべての参照、例えば、交付済み又は取得済みの特許又はその等価物を含む特許文書、特許出願公開、及び非特許文献の文書又はその他の資料について、個別に参照により組み込むかのように、それぞれの参照が本願における開示と少なくとも部分的に矛盾しない程度に、その全体を参照により本明細書に組み込む(例えば、部分的に矛盾した参照は、参照の部分的に矛盾した部分を除いて参照により組み込まれる)。
【0061】
[0094]本明細書で言及したすべての特許及び刊行物は、本発明が関連する技術分野の当業者の技術水準を表す。本明細書において引用する参照について、場合によっては参照の出願日における技術水準を表すために、その全体を参照により本明細書に組み込み、必要に応じて、従来技術にある特定の実施形態を排除(例えば、放棄)するために、この情報を本明細書において用いることができると意図されている。例えば、化合物について特許を請求する場合、本明細書に開示されている参照(特に特許文書の参照)に開示されている特定の化合物を含む、従来技術において公知の化合物は、特許請求の範囲に含まれることが意図されていないと理解されるものとする。
【0062】
[0095]置換基の群が本明細書に開示されている場合、これらの群のすべての個別構成要素と、群の構成要素の異性体及び鏡像異性体を含むすべての下位群と、置換基を使用して形成され得る化合物群とは、個別に開示されていると理解される。化合物について特許を請求する場合、本明細書に開示されている参照に開示されている化合物を含む当技術分野において公知の化合物が含まれることは意図されていないと理解されるものとする。本明細書においてマーカッシュ群又はその他のグループ分けを使用する場合、群におけるすべての個別構成要素、並びに群においてあり得るすべての組合せ及び部分的組合せが本開示において個別に含まれることが意図されている。
【0063】
[0096]特に記載のない限り、記載又は例示される要素のあらゆる配合又は組合せを使用して本発明を実践することができる。当業者であれば同じ化合物を異なる名称で呼び得ることが知られているため、化合物の特定の名称は、例示的なものであると意図されている。本明細書において化合物が記載されており、化合物の特定の異性体又は鏡像異性体が、例えば、式又は化学名で指定されていない場合、この記載は、個別又は任意の組合せで記載されている化合物のあらゆる異性体及び鏡像異性体を含むことを意図している。当業者であれば、余計な実験を実施することなく、詳細に例示したもの以外の方法、装置要素、出発材料及び合成方法を本発明の実践において用いることができることを認識するであろう。このような方法、装置要素、出発材料及び合成方法について当技術分野で公知の機能的等価物をすべて本発明に含むことが意図されている。本明細書において範囲、例えば、温度範囲、時間範囲又は組成範囲が記載されている場合、すべての中間範囲及び部分範囲、並びに記載された範囲に含まれるすべての個別値を本開示に含むことが意図されている。
【0064】
[0097]本明細書で使用されているように、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「を特徴とする」の同義語であり、包括的又は非限定的であり、挙げられていないさらなる要素又は方法ステップを排除しない。本明細書で使用されているように、「から成る」は、特許請求の範囲の要素に指定されていない要素、ステップ又は成分を排除する。本明細書で使用されているように、「から実質的に成る」は、特許請求の範囲の基本的且つ新たな特性に対して実質的に影響を与えない材料又はステップを排除しない。本明細書における「含む」という用語の列挙、特に組成物の成分の記載における「含む」という用語の列挙、又は装置の要素の記載における「含む」という用語の列挙は、挙げられた成分又は要素から実質的に成るこれらの組成物及び方法、並びに挙げられた成分又は要素から成るこれらの組成物及び方法を包含すると理解される。本明細書において実例を挙げて記載されている本発明は、本明細書に詳細に開示されていない要素(複数可)や限定(複数可)のない状態で実践可能であることが適切である。
【0065】
[0098]用いられた用語及び表現は、説明のために使用されるのであって、限定することはなく、示されて記載される特徴の等価物又はその一部を排除するような用語及び表現の使用は意図されていないが、特許請求の対象となる本発明の範囲内で、様々な変形形態が可能であると認識されている。したがって、好ましい実施形態及び任意選択の特徴により本発明を詳細に開示してきたが、本明細書に開示されている概念の変形形態及び変法については、当業者に委ねることができ、このような変形形態及び変法は、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲内にあると考えられると理解されるものとする。
【0066】
[0099]一般的に、本明細書で使用される用語及び成句には、当技術分野において認知されている意味があり、この意味は、標準的な文書、雑誌参照欄及び当業者に公知の文脈を参照することで見つけることができる。前述の規定は、本発明の文脈における用語及び成句の特定の使用を明確にすべく用いられる。
【0067】
[00100]本明細書における記載には、多くの特異な点が含まれるが、これらの特異な点は、本発明の範囲を限定するものではなく、好ましい幾つかの本発明の実施形態を説明するものに過ぎないと解釈されるべきである。したがって、例えば、本発明の範囲は、記載されている例よりも、添付の特許請求の範囲及びその等価物により決定されるべきである。
【0068】
[00101]以下の非制限的な実施例により、本発明をさらに理解することができる。
【0069】
実施例1:ポリメチルペンテンベースの放射冷却フィルム
[00102]
図13Aは、厚さ50μmの裸のポリメチルペンテン(TPX(商標))フィルム、及び直径8μmの固体シリカ微小球が5%である厚さ50μmのフィルムについての、電磁波の波長に応じた放出率/吸収率を示す。TPX(商標)フィルムのトレースは、複合フィルムのトレースよりも薄い灰色である。ポリメチルペンテンは、太陽光スペクトルにおいてはシリカと指数が一致しているが、赤外スペクトルにおいては指数が一致していない。シリカ微小球を混合したポリメチルペンテンフィルムは、7〜13μmの赤外放射波長で放出率が高くなる。いかなる特定の信念に縛られることを望むものではないが、シリカ球は、赤外散乱体として働き、赤外放射と共鳴相互作用して、フィルムの赤外放出率を改善する役割を果たすと考えられている。
【0070】
[00103]
図13Bは、直径8μmの固体シリカ微小球の体積割合が5%である様々な厚さのポリメチルペンテンフィルムについての、波長に応じた放出率/吸収率を示す(色調:50μmのフィルムは濃い灰色の実線、80μmのフィルムは破線、120μmのフィルムは、薄い灰色の実線)。シリカ微小球を有するポリメチルペンテンフィルムが厚いほど、太陽光スペクトルにおいて著しい吸収効果を示すことなく、7〜13μmの赤外放射波長での放出率が増加する。
【0071】
[00104]
図13Cは、直径8μmの固体シリカ微小球の体積割合が5%である厚さ55μmのポリメチルペンテンフィルムについての、波長に応じた吸収率/放出率を示す。日中の正味冷却力は113W/m
2であり、太陽光の平均した吸収率は4%未満であり、赤外放射の平均放出率は0.8超である。
図13A〜13Cに記載されているフィラーのパーセントは、体積パーセントである。
【0072】
[00105]
図14は、反射層を備える放射層の放射冷却力の予測値を示す。放射層は、埋め込まれた球体の様々な体積比率とフィルム厚とに応じて誘電球体が埋め込まれたポリマーシートを含む。
【0073】
実施例2:ガラスポリマーがランダムに組み込まれたハイブリッドメタマテリアルを日中の放射冷却のためにスケーラブルに製造
[00106]受動放射冷却により、表面から熱が抜かれ、熱は、大気に対して透明な赤外放射として空間に放射される。しかしながら、太陽光の照射と、ほぼ周囲温度の表面からの低い赤外放射束との間のエネルギー密度が一致していないため、熱エネルギーを強く放出し、且つ日光をほぼ吸収しない材料が必要とされる。共鳴性の極性誘電性微小球をポリマーマトリックスにランダムに埋め込むと、太陽光スペクトルに対して完全に透明でありながら、大気の窓で0.93超の赤外放出率を有するメタマテリアルが得られた。裏面に銀を被覆すると、メタマテリアルは、直射日光での正午の放射冷却力が93W/m
2であると示す。より重大なのは、処理能力が高く経済的なロール・ツー・ロールでのメタマテリアルの製造が、実行可能なエネルギー技術として放射冷却を促進するのに重要であると我々が証明したことである。
【0074】
[00107]放射冷却(黒体の放射線が、温かい物から大気の赤外透明窓を通って外部空間の冷たいシンクに沈積すること)は、発電からデータセンターにわたる日常で必要とされる物事の大部分で過剰な熱が発生するこの21世紀において、魅力的なコンセプトである。熱を取り去るためにエネルギー及び資源を必要とする現在用いられている大半の冷却方法とは反対に、放射冷却は、地球における自然の自己冷却方法を受動的に向上させたものである。効率的な夜間の放射冷却システムについて、これまでに広く調査が行われており、着色塗料を含む有機材料及び無機材料のどちらにおいても、赤外放出率が有望である(1〜5)。しかしながら、日中の放射冷却には、また別の困難な点がある。なぜなら、太陽光吸収率は、冷却力をほんの数パーセント超過しており、事実上、表面が加熱されるからである。提示されたナノフォトニックデバイスは、太陽光の照射を効率的に跳ね返すことができるが、赤外放出が強い(6〜7)ため、日中の放射冷却に有望である。しかしながら、ナノフォトニック的な手法には、徹底したナノメートル精度での製造が必要であり、製造は、放射冷却から最も恩恵を受けるであろう住宅及び商業用の用途での大面積の要件を満たすようにスケールアップすることが費用効果的に難しい。
【0075】
[00108]ポリマーフォトニクスは、経済性及びスケーラビリティの点で魅力的な成長分野である(8〜11)。ランダム型光学メタマテリアルとポリマーフォトニクスとのハイブリッド化は、効率的な日中の放射冷却における有望な手法であり得る。これまでに、フォトニックシステムにおけるランダム性を利用することで、自然放出増幅(12、13)、非常に局所化された電磁ホットスポット(electromagnetic hotspot)(14〜16)、光起電力セルの改善された光捕捉効率(17、18)、並びに負の透過率、及び多重安定性を有するスイッチング素子(19、20)がもたらされた。ランダム型メタマテリアルにおける電磁共鳴子を集合的に励起させると、材料における消光率及び光路長がどちらも増加し、共鳴時に、ほぼ完全な吸収が起こる(21、22)。このことは、大気透過窓全体にわたり完全な吸収(放出率)が達成可能である場合、効果的な放射冷却のために光学共鳴子がランダムに分布したメタマテリアルの利用について大きな可能性を秘めている。
【0076】
[00109]本明細書において、日中及び夜間の効率的な放射冷却方法と、ガラスポリマーがランダム化されたハイブリッドメタマテリアルを有する装置とを提供する。一実施形態において、メタマテリアルは、ランダムに分布した二酸化ケイ素(SiO
2)微小球をカプセル化している、可視光に対して透明なポリマーから成る。分光応答は、2桁の波長に及ぶ(0.3〜25μm)。ハイブリッドメタマテリアルは、微小球のフレーリッヒ共鳴のフォノンが増加しているため、大気透過窓(8〜13μm)全体にわたり放射性が極めて高い。6体積%の微小球を含有する厚さ50μmのメタマテリアルフィルムは、平均した赤外放出率が0.93超であり、裏面を厚さ200nmの銀で被覆すると、太陽光の照射の約96%を反射する。我々は、3日間のフィールドテストにおいて、直射日光での正午(午前11時〜午後2時)の平均放射冷却力が93W/m
2であり、72時間の昼夜連続の試験において、平均冷却力が110W/m
2超であると実験的に証明する。5m/minの速度で、メタマテリアルから幅300mmのシートを製造し、そのため実験の過程で、数百平方メートルの材料を生産した。
【0077】
[00110]本実施例に記載されている、ガラスポリマーがランダム化されたハイブリッドメタマテリアルの構造体は、ポリメチルペンテン(TPX)のマトリックス材料中にランダムに分布した、マイクロメートルサイズのSiO
2球を含有する(
図15A)。TPXは、その太陽光透過率が優れているために使用された。可視光に対して透明なその他のポリマー、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリエチレンを使用してもよい。ポリマーマトリックス材料及びカプセル化されたSiO
2微小球はどちらも、太陽光スペクトルにおける損失がないため、吸収はほぼ起こらず、直射太陽光の照射によってメタマテリアルが加熱されることはない。
【0078】
[00111]赤外波長の場合、カプセル化されたSiO
2微小球は、9.7μmで強いフォノン−ポラリトン共鳴が存在するため、光学特性が、周囲のマトリックス材料の光学特性とはかなり異なる(23)。TPX中にカプセル化された個別の微小球について、10μmの入射波長の場合に、サイズパラメータk
0aに応じて、吸収率(σ
abs/a
2)、散乱率(σ
sca/a
2)及び消光率(σ
ext/a
2)の正規化された断面積(
図15B)を計算した。ここで、k
0は自由空間における波数ベクトルであり、aは微小球の半径である。消光率は、約2.5のサイズパラメータでピークとなり、これは約4μmの微小球半径に相当する。微小球のサイズパラメータは、放射冷却用のハイブリッドメタマテリアルの設計において鍵となる役割を果たす。小粒子(準静的)極限において、共鳴は、純粋に電気的に双極性であることを特徴とする(
図15Bの差込図)。消光率のピークにおいて、電気モード及び磁気モードをどちらも含む高次フレーリッヒ共鳴も強く励起されており、このことは、
図15Cの3次元パワー散乱関数(遠視野散乱パターン)に示される強い前方散乱により証明される(24)。
【0079】
[00112]ここで、フォノン−ポラリトンの線幅が本質的に狭いという、しばしば赤外検出のような用途における優れた利点(25、26)により、放射性の高い赤外領域の帯域幅が制限され得る。極性誘電性微小球の高次フレーリッヒ共鳴に達することで、大気の窓全体にわたり、広帯域の放出率が得られた(27)。
図16に図示されているように、得られる実効屈折率:
【数1】
の実数部及び虚数部は、直径1μmと8μmの微小球についての、波長と微小球径との関数である。濃度が低いこと(6体積%)を考慮し、微小球の径及び分布が均質であることを前提として、
【数2】
から、ハイブリッドメタマテリアルの効果的な誘電率及び透過率がそれぞれ得られ(28)、式中、S
0及びS
1は、カプセル化媒体中の個々の微小球の前方散乱係数及び後方散乱係数であり、因数γには体積割合f及びサイズパラメータ:
【数3】
が組み込まれる。微小球が大きい場合、高次モード間のモード干渉により、ハイブリッドメタマテリアルの赤外吸収が強くなる。ハイブリッドメタマテリアルが赤外においてほぼ分散性でなくなることが重要である。実効屈折率の実数部及び虚数部の双方の分散性は、赤外波長範囲全体にわたり9×10
−5/nm未満であり(
図16)、この同じ範囲において約5×10
−3/nmである極性誘電体バルクSiO
2の高い分散性とは著しく対照的である。分散性が低いことで、自由空間に対するメタマテリアルの優れた広帯域のインピーダンス整合がもたらされ、太陽放射及び赤外放射のどちらについても反射が極めて低くなる。薄さ50μmのハイブリッドメタマテリアルにより、大気の窓全体にわたり均質且つ十分に強い吸収率を得ることができ、これにより、放射冷却のための完全な広帯域の赤外放出が得られる(
図16C)。対照的に、微小球が小さい場合(k
0a<<1)、急激な共鳴が生じ(
図16B)、これにより、ポラリトン共鳴波長に対してのみ、高い赤外放出率が制限される。さらに、共鳴により強い反射がもたらされ、全体的な放出率がさらに低下する。
【0080】
[00113]ハイブリッドメタマテリアルは、電子ビーム蒸着により作製された厚さ200nmの銀薄膜を裏面に備えると、太陽光の照射を強く反射する(
図17A)。紫外可視近赤外分光光度計及びフーリエ変換赤外分光計(FTIR)をそれぞれ使用して、太陽光領域(0.3μm〜2.5μm)及び赤外領域(2.5μm〜25μm)の双方におけるメタマテリアル薄膜の分光性能を特徴付けた(
図17C及び
図17D)。双方のスペクトル領域における全立体角から散乱光を求めるために積分球を使用した。試料の分光吸収率(放出率)の測定値(
図17D)により、厚さ50μmのフィルムが、8〜13μmの間で0.93超のほぼ飽和した放出率を有する一方で、約96%の太陽光の照射を反射することが示される(室温で直射日光のもと100W/m
2超の放射冷却力がもたらされる)。実験結果は理論とよく一致しており、その際、3μmと16μmの波長付近での分光の不一致は主に、周囲条件におけるFTIR測定の間に水及び空気による吸収が起こることを理由とする。太陽光及び赤外の波長範囲において放出率を計算するためには、様々な理論的手法を用いる必要がある。赤外領域において、一般的な非干渉性トランスファーマトリックス方法を使用した(29)。太陽光領域において、代わりに厳密結合波解析(RCWA)を使用した。なぜなら、微小球の径が、関連する波長よりも大きい場合、メタマテリアルの得られた有効パラメータが不正確であるからである(30)。我々は、16〜25μmの間の第二の大気の窓における高い放出率がさらなる放射冷却に利用され得ることに注目している(31)。
【0081】
[00114]放射冷却のためにポリマーをマトリックス材料として使用することには、軽量且つ曲面における積層化が容易であるという利点がある。この使用には、微小球の径及び形状における変法が少し含まれ得るが、全体的な性能に対する影響は微々たるものである。TPXは、機械抵抗及び耐薬品性が優れており、屋外での使用について、潜在的に寿命が長い。しかしながら、ガラスポリマーハイブリッドメタマテリアルの開発における最も魅力的な利点のうちの1つは、費用効果のよいスケーラブルな製造が可能になることである。幅300mm及び厚さ50μmのハイブリッドメタマテリアルフィルムのロールを、5m/minで作製することができる(
図18A)。SiO
2微小球の体積濃度は、重力式フィーダーを使用することによって制御可能である。得られるフィルムは、微小球が均質に分布しており、濃度の変動は0.4%未満である(32)(
図19)。ハイブリッドメタマテリアルフィルムは、含有されている微小球により可視光が散乱させられるため、半透明である(
図20)。さらに、ハイブリッドメタマテリアルは、厚さ200nmの反射性銀被覆を裏面に備えると、バランスのよい白色になる(32)(
図20)。メタマテリアルの強散乱及び非鏡面光学応答により、ヒトに対して有害な視覚効果をもたらし、且つ航空機の操作を妨害し得る裏面反射グレアが回避されるだろう(33)。
【0082】
[00115]雲のない秋の数日間にわたり、アリゾナ州ケーブクリーク(33°49’32”N、112°1’44”W、標高585m)で、直径8インチのスケーラブルに製造されたハイブリッドメタマテリアルフィルムを使用して熱測定を実施することにより、実時間での連続的な放射冷却を実証する(
図18B、18C)。下からの熱損失を防止するフォーム容器内にメタマテリアルを置いた。メタマテリアルの上面は空に向いており、空気に直接曝されていた(32)(
図21)。伝導及び対流による熱損失の影響を最小限に抑えるようにメタマテリアルと熱的に接触しているフィードバック制御式電気ヒーターを使用して、メタマテリアルの表面温度を周囲温度の測定値と同じに保った。よって、表面と外気との間に温度差がない場合、合計放射冷却力は、電気ヒーターにより生み出される加熱力と同じである。フィードバック制御により、表面温度は、日中は±0.2℃以内の精度で、夜間は±0.1℃未満の精度で、周囲温度の測定値を辿る(32)(
図22)。放射冷却力を連続的に測定することで、平均放射冷却力が、連続72時間の日中/夜間の測定にわたり、110W/m
2超になる(
図18C)。正午頃の平均冷却力は、垂直入射する太陽光の照射が900W/m
2の場合に、93W/m
2に達する。日中よりも夜間の平均放射冷却度がより高いことが観察された。しかしながら、周囲温度が迅速に変化し、大きな斜角で太陽光の照射が入射する場合、冷却力は、日の出後及び日没前にピークになる。放射冷却の有効性をさらに証明するために、冷気貯蔵媒体として水も使用し、スケーラブルに製造されたハイブリッドメタマテリアルによる冷水式作製を示す(32)(
図24)。化学添加剤及び高品質のバリア被覆を用いることで、寿命及び信頼性を含む、屋外での性能を向上させることができる。今日では、多くのポリマー薄膜が利用可能であり、屋外での寿命が延びたものが設計されている(34)。
【0083】
[00116]補足文
【0084】
[00117]ポリマーマトリックスにおける微小球の分布
【0085】
[00118]ポリマーマトリックスにおけるシリカ微小球の分布の均質性を定量化し、幅300mmのメタマテリアル薄膜について、エッジ・ツー・エッジの均質性が達成されることを示した。
図19Aに示されるように、濃度の変動は0.4%未満であり、相応する放出率の変動はさらに低い(
図19B)。
【0086】
[00119]ハイブリッドメタマテリアルの光拡散性
【0087】
[00120]ガラスポリマーハイブリッドメタマテリアルの本来の有益な特性は、光拡散性である。壁から約1m離したフィルムを通して、532nmの波長で単純なレーザーポインターをあてることにより、この光学特性を示した。50μmの試料内に2mmのビームを散乱させると、壁に80cmの直径が見られる(
図20A)。銀フィルムを裏面に備えた試料の外観を色度分析によりさらに分析すると、試料が、バランスのよい純粋な白色であると判明した(
図20B)。
【0088】
[00121]フィードバック制御式電気ヒーターによる放射冷却力の直接の熱測定
【0089】
[00122]メタマテリアルと外気との間で観察された温度差が大きいと、開放環境において、特に周囲温度の変動が大きい日中に、対流及び伝導による多大な熱損失が生じ得る。境界条件及び確率的な環境パラメータ、例えば風による強制対流の変化により熱交換が複雑化することを考慮して、フィードバック制御式システムを実装することで、メタマテリアル表面の温度を周囲温度と同じに保ち、真の放射冷却力を正確に評価した。したがって、外気とメタマテリアルとの間の対流及び伝導による熱交換に基づく測定の不確実性が実質的に抑えられた。HDPE上部保護フィルムを除去すること、及び完全に空気に曝されたハイブリッドメタマテリアルを用いて直接の熱測定を実施することが可能になった(
図21の装置を参照)(実践的な用途についての好ましい構成)。
【0090】
[00123]
図22Aに示されているように、メタマテリアルの表面温度は、日中及び夜間のどちらの時間においても、外気の温度を緊密に辿る。差込図は、フィードバックループのスイッチが入った際の動的挙動を示す。積分時定数は約5分であり、周囲とメタマテリアル表面との間の温度差を、30分以内に0.2℃未満にして維持することができる。同じ18時間にわたる周囲とメタマテリアル表面との間の温度差は、
図22Bに示されている。実験の全過程において、ピークの温度差は、±1℃未満であった。時折生じる温度の急激な上昇は、主に突風によるものであり、この上昇からトラッキングを再構築するのに、フィードバックシステムは約30分を要した。日中及び夜間のそれぞれについて、周囲とメタマテリアル表面との間の温度差のヒストグラムを
図22C及びDに示す。約5W/(m
2・K)の自然対流、及びこのような小さな温度差での空気・メタマテリアル界面における伝導率を考慮して、フィードバック式電子装置によりもたらされる電気の加熱力によって、実時間の放射冷却力が正確に測定される。
【0091】
[00124]雲のない秋の数日間にわたり、アリゾナ州ケーブクリーク(33°49’32”N、112°1’44”W、標高585m)で、フィードバック制御式の直接式熱測定装置により、ハイブリッドメタマテリアルの放射冷却力を測定した。連続3日間の測定を
図18に表す。72時間の平均冷却力は110W/m
2超であり、正午(午前11時〜午後2時)の平均冷却力は93W/m
2であると証明された。
【0092】
[00125]放射冷却力の測定誤差は、24時間の連続測定を反映したヒストグラム幅により規定されているように、10W/m
2未満である(これは、フィードバック制御式測定システムの性質を理由に、実際には多めに見積もられている)。
図23A及び
図23Bに示されているように、フィードバック制御式システムにより、メタマテリアル表面の温度は周囲温度を辿る。2つの温度間の不一致は、24時間にわたり1℃よりはるかに少ない。
図23Cには、瞬間的なパワー及び時間平均化のパワーが示されており、差のヒストグラムは、
図23Dに示されている。フィードバック制御ループにおける瞬間的な発振により、冷却力の測定誤差が誤って大きく生じる。よって、この理由のために、冷却力について、実施時間にわたるその平均値を使用して、ハイブリッドメタマテリアルを特徴付ける。
【0093】
[00126]水の直接冷却
【0094】
[00127]水を冷気貯蔵媒体として使用して、比較的大きな熱質量について、放射冷却の有効性をさらに証明する。実験の構成を
図24Aに概略的に示す。プラスチック製の水槽を放射冷却ガラスポリマーハイブリッドメタマテリアルの下に置き、水と熱伝導性の銅板とを密接させた。実験において水は静止しているため、その大きな熱容量により、冷却プロセスの速度がかなり低下する。よって、この構成において、厚さ10μmのHDPEフィルムをポリスチレンフォーム容器の上部に使用することで、対流による熱損失が低減され、断熱性が改善される。
図24Bは、午前3時10分に雲のない空にハイブリッドメタマテリアルを曝した後の、時間に応じた、周囲温度(T
空気)、水槽の表面温度(T
槽)、水温(T
水)及びメタマテリアルの表面温度(T
表面)を示す。水温は連続的に低下し、2時間曝した後には、周囲より低い8℃超に達した。
【0095】
[00128]温度変化に基づき、水、プラスチック製の水槽、及びハイブリッドメタマテリアルと、銀で被覆されたシリコンウェハと、銅板とを含む材料積層体を含む、実験に関わる各材料に貯蔵された熱量を、
図24Cに示されるように時間に応じて計算した。
図24Cは、ポリスチレンフォーム容器からの熱損失、及び熱損失と全材料に貯蔵された総熱量との合計である合計放射冷却力も示す。これらの結果により、夜間の放射冷却力が100W/m
2超であることが再度証明され、より重要なのは、冷水式作製に関して、スケーラブルに製造された低コストなガラスポリマーハイブリッドメタマテリアルによる放射冷却の有効性が証明されたことであり、ガラスポリマーハイブリッドメタマテリアルは、建築物、データセンター、さらには火力発電所の冷却において用いることが可能である。
【0096】
[00129]参照
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