特許第6988145号(P6988145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6988145ヘッダー部材、その製造方法、給水給湯配管設備及び給水給湯システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6988145
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ヘッダー部材、その製造方法、給水給湯配管設備及び給水給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/28 20060101AFI20211220BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20211220BHJP
   E03C 1/02 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   F16L47/28
   F16L57/00 D
   E03C1/02
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-82103(P2017-82103)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2017-207204(P2017-207204A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2020年1月30日
(31)【優先権主張番号】特願2016-96253(P2016-96253)
(32)【優先日】2016年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】飯島 滋子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一範
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−031665(JP,A)
【文献】 特開平05−264126(JP,A)
【文献】 特開2004−278624(JP,A)
【文献】 特開2002−235889(JP,A)
【文献】 特開2005−188682(JP,A)
【文献】 特開2013−152004(JP,A)
【文献】 実開平04−066492(JP,U)
【文献】 特開平04−119290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/28
F16L 57/00
E03C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流入又は流出用の集合流通口と液体の流出又は流入用の複数の分岐流通口とを備え、
該集合流通口と分岐流通口とが流路によって連通しているヘッダー部材本体を有するヘッダー部材において、
該流路内にインナーが設置されて流路の容積が減少されているヘッダー部材であって、
前記ヘッダー部材本体は、
筒状であり、
一端側に第1の集合流通口が設けられ、
他端側に第2の集合流通口が設けられ、
側周面に分岐流通口が設けられており、
前記インナーは、筒状であり、該ヘッダー部材本体と同軸状に設置されており、
前記分岐流通口と重なる位置に開口が設けられている
ことを特徴とするヘッダー部材。
【請求項2】
請求項1において、前記インナーの体積が前記ヘッダー部材本体内の容積の45〜90%であることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記インナーはヘッダー部材本体に対し着脱可能となっていることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記ヘッダー部材は、給水給湯システムに用いられるヘッダー部材であり、
前記ヘッダー部材は、前記ヘッダー部材本体内の残留水量を減少させて凍結時の膨張圧を減少させるためのものである
ことを特徴とするヘッダー部材。
【請求項5】
請求項4において、前記インナーは、前記ヘッダー部材本体に嵌合していることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項6】
請求項5において、前記開口の直径が前記分岐流通口の内径の0.8〜1.3倍であることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記インナーの周方向の位相決めを行うための係合部が前記ヘッダー部材本体の内周面とインナーの外周面とに設けられていることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれか1項において、前記インナーの内径が7〜17mmであることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項9】
請求項4ないし8のいずれか1項において、前記インナーの内部の1cm当たりの容積が0.3〜2cmであることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項10】
請求項4ないし9のいずれか1項において、複数の前記分岐流通口は、前記ヘッダー部材本体の筒軸心方向と平行な一直線上に配置されており、
該ヘッダー部材本体の肉厚は、該一直線に沿う部分において、ヘッダー部材本体の周方向における他の部分よりも大きくなっており、該一直線に沿う部分の最大肉厚は、該他の部分の厚みの1.1〜1.5倍であることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項11】
請求項10において、前記ヘッダー部材本体の筒軸心方向と垂直な断面におけるヘッダー部材本体の内周面の形状は、前記一直線に沿う部分が弦方向に延在する直線となっており、前記他の部分は円弧形であることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項12】
請求項4ないし11のいずれか1項において、前記インナーの厚みが2〜8mmであることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項13】
請求項4ないし12のいずれか1項において、前記ヘッダー部材本体の厚みが1.5〜5mmであることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項14】
請求項4ないし13のいずれか1項において、前記インナーの内径が前記分岐流通口の内径の1〜2倍であることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項において、前記インナーがポリオレフィンを含む樹脂組成物からなることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項において、前記ヘッダー部材本体は、ポリフェニレンサルファイド樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物からなり、該無機充填材の含有量が樹脂組成物中の10〜50質量%であることを特徴とするヘッダー部材。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載のヘッダー部材の流路内に設置されることを特徴とするインナー。
【請求項18】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載のヘッダー部材を備えたヘッダー方式の給水給湯配管設備。
【請求項19】
水源機器と、
請求項18の給水給湯配管設備と、
該給水給湯配管設備を介して該水源機器から給水又は給湯される機器と
を備えてなる給水給湯システム。
【請求項20】
請求項19において、前記水源機器は、上水道又は給湯器であることを特徴とする給水給湯システム。
【請求項21】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載のヘッダー部材を組み立てる方法であって、
前記ヘッダー部材本体の前記流路内に前記インナーを挿入する工程を有することを特徴とするヘッダー部材の組立方法。
【請求項22】
液体の流入又は流出用の集合流通口と液体の流出又は流入用の複数の分岐流通口とを備え、
該集合流通口と分岐流通口とが流路によって連通しているヘッダー部材本体を有するヘッダー部材において、該流路内にインナーを設置し流路の容積を減少させることにより該ヘッダー部材の割れを抑制する方法であって、
前記ヘッダー部材本体は、
筒状であり、
一端側に第1の集合流通口が設けられ、
他端側に第2の集合流通口が設けられ、
側周面に分岐流通口が設けられており、
前記インナーは、筒状であり、該ヘッダー部材本体と同軸状に設置されており、
前記分岐流通口と重なる位置に開口が設けられている
ことを特徴とするヘッダー部材の割れ防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水給湯システムに用いられるヘッダー部材と、その製造方法に関する。また、本発明は、このヘッダー部材を用いた給水給湯配管設備及び給水給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅等に設置される給水給湯システムとして、ヘッダー本体に複数の分岐部を設けたヘッダーを床下などに設置し、このヘッダーから給湯管や給水管を台所、浴室、洗面所等に配管するヘッダー方式の配管システムがある。このヘッダーとして合成樹脂製ヘッダー(樹脂ヘッダー)が広く用いられるようになってきている。
【0003】
樹脂ヘッダーは、円筒形状のヘッダー主管部の側面に、複数の分岐部がヘッダー主管部から突出した状態で一体成形されている。そして、各分岐部には受け口が設けられており、この受け口に給水管あるいは給湯管等を接続することができる(例えば特許文献1)。
【0004】
この樹脂ヘッダーは、金属ヘッダーに比べ、軽量、低コスト、継手の向きの変更が簡単に出来る、射出成形法を採用できるため形状の自由度が大きい等という利点がある一方、金属ヘッダーに比べ剛性が低いという問題があった。剛性を改善するためにガラス繊維等の無機充填材で補強することが通常行われるが、ガラス繊維等の無機充填材を配合することによって、靱性、耐衝撃性が低下してしまう。そして、この靱性、耐衝撃性の低下により、例えば、冬期に寒さが厳しくなると、ヘッダー内部を流通する水が凍結することによって、ヘッダーに亀裂が入ったり、割れる等の損傷を受ける等の問題があった。
【0005】
このようなヘッダー内を流通する水の凍結によるヘッダーの損傷を防止するために、ヘッダー内に凍結解除装置を挿入する技術(例えば、特許文献2参照)や、ヘッダー本体の他端又は分岐管に凍結圧力緩和装置を設けるという技術(例えば、特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−48322号公報
【特許文献2】特開2001−208282号公報
【特許文献3】特開2004−278624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の凍結解除装置では、ヘッダー内の氷を解凍する際に作業者がコードをヘッダー内に押込んだり、引いたりすることにより、ヒーター部を移動させながら順次ヘッダー内の氷を解凍していく必要がある。また、ヒーター部の発熱によりヘッダー内の氷を解凍する際にも少なからず時間を要する。このため、これらの作業に手間がかかるという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献3に記載の凍結圧力緩和装置では、ヘッダーの分岐部の数が多くなるとヘッダー本体が長くなり、ヘッダー内部の水が凍結すると、凍結圧力緩和装置による圧力の緩和よりも強い力がヘッダーにかかることとなり、ヘッダーが破壊されてしまう危険性がある。そして、このようなヘッダーが長い場合のヘッダー破壊を防止するためには、凍結圧力緩和装置自体も長くしなければならなくなり、ヘッダー全体として実使用とかけ離れた形状になってしまい、さらにはコスト高になる等の問題があることが本発明者らの検討により明らかとなった。また、圧力緩和装置側から凍ってしまった場合は、圧力緩和機能が作用しない危険性があるということも、本発明者らの検討により明らかになった。
【0009】
ヘッダーの破壊を防止する別の方法として、ヘッダー主管の厚みを大きくして強度を向上させる方法や、樹脂自体の強度を上げるべくポリフェニルスルホン等のスーパーエンジニアリングプラスチックを採用する方法も考えられるが、前者は肉厚成形となるため成形品内部に空隙や気泡が発生し反って強度が低下するといった問題があり、後者は高価な樹脂であるため、ヘッダーのコストアップに繋がるといった問題があることも分かった。
【0010】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、ヘッダー内の水の凍結によるヘッダーの損傷を容易に防止することができるヘッダー部材、その製造方法、該ヘッダー部材を用いた給水給湯配管設備及びシステムを提供することを目的とし、以下を要旨とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 液体の流入又は流出用の集合流通口と液体の流出又は流入用の複数の分岐流通口とを備え、該集合流通口と分岐流通口とが流路によって連通しているヘッダー部材本体を有するヘッダー部材において、該流路内にインナーが設置されて流路の容積が減少されていることを特徴とするヘッダー部材。
【0012】
[2] [1]において、前記インナーの体積が前記ヘッダー部材本体内の容積の45〜90%であることを特徴とするヘッダー部材。
【0013】
[3] [1]又は[2]において、前記インナーはヘッダー部材本体に対し着脱可能となっていることを特徴とするヘッダー部材。
【0014】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記ヘッダー部材本体は、筒状であり、一端側に第1の集合流通口が設けられ、他端側に第2の集合流通口が設けられ、側周面に分岐流通口が設けられており、前記インナーは、筒状であり、該ヘッダー部材本体と同軸状に設置されていることを特徴とするヘッダー部材。
【0015】
[5] [4]において、前記インナーは、前記ヘッダー部材本体に嵌合しており、前記分岐流通口と重なる位置に開口が設けられていることを特徴とするヘッダー部材。
【0016】
[6] [5]において、前記開口の直径が前記分岐流通口の内径の0.8〜1.3倍であることを特徴とするヘッダー部材。
【0017】
[7] [5]又は[6]において、前記インナーの周方向の位相決めを行うための係合部が前記ヘッダー部材本体の内周面とインナーの外周面とに設けられていることを特徴とするヘッダー部材。
【0018】
[8] [4]ないし[7]のいずれかにおいて、前記インナーの内径が7〜17mmであることを特徴とするヘッダー部材。
【0019】
[9] [4]ないし[8]のいずれかにおいて、前記インナーの内部の1cm当たりの容積が0.3〜2cmであることを特徴とするヘッダー部材。
【0020】
[10] [4]ないし[9]のいずれかにおいて、複数の前記分岐流通口は、前記ヘッダー部材本体の筒軸心方向と平行な一直線上に配置されており、該ヘッダー部材本体の肉厚は、該一直線に沿う部分において、ヘッダー部材本体の周方向における他の部分よりも大きくなっており、該一直線に沿う部分の最大肉厚は、該他の部分の厚みの1.1〜1.5倍であることを特徴とするヘッダー部材。
【0021】
[11] [10]において、前記ヘッダー部材本体の筒軸心方向と垂直な断面におけるヘッダー部材本体の内周面の形状は、前記一直線に沿う部分が弦方向に延在する直線となっており、前記他の部分は円弧形であることを特徴とするヘッダー部材。
【0022】
[12] [4]ないし[11]のいずれかにおいて、前記インナーの厚みが2〜8mmであることを特徴とするヘッダー部材。
【0023】
[13] [4]ないし[12]のいずれかにおいて、前記ヘッダー部材本体の厚みが1.5〜5mmであることを特徴とするヘッダー部材。
【0024】
[14] [4]ないし[13]のいずれかにおいて、前記インナーの内径が前記分岐流通口の内径の1〜2倍であることを特徴とするヘッダー部材。
【0025】
[15] [1]ないし[14]のいずれかにおいて、前記インナーがポリオレフィンを含む樹脂組成物からなることを特徴とするヘッダー部材。
【0026】
[16] [1]ないし[15]のいずれかにおいて、前記ヘッダー部材本体は、ポリフェニレンサルファイド樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物からなり、該無機充填材の含有量が樹脂組成物中の10〜50質量%であることを特徴とするヘッダー部材。
【0027】
[17] [1]ないし[16]のいずれかに記載のヘッダー部材の流路内に設置されることを特徴とするインナー。
【0028】
[18] [1]ないし[16]のいずれかに記載のヘッダー部材を備えたヘッダー方式の給水給湯配管設備。
【0029】
[19] 水源機器と、[18]の給水給湯配管設備と、該給水給湯配管設備を介して該水源機器から給水又は給湯される機器とを備えてなる給水給湯システム。
【0030】
[20] [19]において、前記水源機器は、上水道又は給湯器であることを特徴とする給水給湯システム。
【0031】
[21] [1]ないし[16]のいずれかに記載のヘッダー部材を組み立てる方法であって、前記ヘッダー部材本体の前記流路内に前記インナーを挿入する工程を有することを特徴とするヘッダー部材の組立方法。
【0032】
[22] 液体の流入又は流出用の集合流通口と液体の流出又は流入用の複数の分岐流通口とを備え、該集合流通口と分岐流通口とが流路によって連通しているヘッダー部材本体を有するヘッダー部材の割れを抑制する方法であって、該流路内にインナーを設置し流路の容積を減少させることを特徴とするヘッダー部材の割れ防止方法。
【0033】
なお、水源機器としては、給湯器、上水道配管などが例示される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、ヘッダー部材内にインナーを配置したので、ヘッダー部材内の容積が小さく、内部に残留する水量が少ない。そのため、凍結時の膨張圧が小さくなり、これにより、ヘッダー部材の凍結破壊が防止される。
【0035】
上述の通り、ヘッダー部材が満水状態で凍結すると、一番最後に凍結する部分が、体積膨張に耐えられず凍結破壊し易い。インナーの存在によりヘッダー部材本体内部の容積が小さくなるので、水凍結による体積膨張が原因でヘッダー部材が割れることが抑制できる。
【0036】
インナーの体積は大きすぎると水が流れにくくなり、小さすぎると凍結時の水の体積膨張が大きくヘッダーが割れやすくなるので、ヘッダー部材本体内の容積の45〜90%が好ましい。また、インナーの内径が小さすぎると水が流れにくくなり、大きすぎると割れやすくなるので、インナーの厚みは2〜8mmが好ましい。また、インナーの内径は7〜17mmが好ましい。インナーの内径は、分岐流通口の内径の1〜2倍が好ましい。このように、インナーの内径を分岐流通口の内径と同程度にすると、水が凍結した際、ヘッダー部材本体内の水が分岐流通口に逃げやすくなることによって、ヘッダー部材本体内の水凍結による体積膨張をより少なくできる。この比が小さすぎると水が流れにくくなり、大きすぎるとヘッダーが割れやすくなる。
【0037】
インナー側周面の開口の直径は分岐流通口の内径と同程度かそれよりも少し大きい(0.8〜1.3倍)方が、通水の観点からよい。この比が小さすぎると水が流れにくくなり、大きすぎるとヘッダーが割れやすくなる。
【0038】
ヘッダー部材本体の厚みは、大きいほど割れにくくなるので、特定の厚み(1.5〜5mm)において特定のインナー内部容積(インナー1cm当たりの容積0.3〜2cm)とすることで、効果が顕著に現れやすい。
【0039】
ヘッダー部材本体の厚みが大きすぎる場合は、成形し難しくなり、成形できた場合でも成形品内部に巣ができ強度が低下しやすくなるなど、好ましくない。ヘッダー部材本体の厚みが薄すぎると、強度が低下し割れやすくなる。
【0040】
ヘッダー部材が満水状態で凍結すると、ヘッダー部材本体においては、膨張圧により、周方向に引張応力が生じる。各分岐流通口が一直線に配列されている場合、該一直線に沿う部分が(分岐流通口たる開口が存在するため)低強度部となり、前記引張応力が集中することになる。そのため、ヘッダー部材本体の肉厚が周方向において均一であると、ヘッダー部材が満水状態で凍結した場合、該一直線が割れ易くなる。
【0041】
そこで、本発明では、ヘッダー部材本体の分岐流通口側の最大厚みが、他の部分の厚みよりも1.1〜1.5倍大きいことが好ましい。なお、ヘッダー部材本体の分岐流通口側の最大厚みが大きすぎる場合は、成形し難しくなったり、成形できた場合でもヘッダー部材本体内部に巣ができ強度が低下しやすくなったりするおそれがある。また、インナーのヘッダー部材本体の分岐流通口側部分が薄肉となり、水圧等によって割れやすくなる。ヘッダー部材本体の分岐流通口側の最大厚みが小さすぎる場合は、強度が不足し割れやすくなるおそれがある。
【0042】
インナーの素材は、オレフィン系樹脂がよい。特に、架橋ポリエチレン、ポリブテンが好ましい。収縮自在の材料であればなおよい。素材としては、JIS K7161:2014に準拠して測定される引張弾性率が300〜1200MPaのものがよい。引張弾性率はより好ましくは500〜1000MPaであり、さらに好ましくは600〜900MPaである。
【0043】
ヘッダー部材本体は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物からなり、無機充填材の含有量が樹脂組成物中の10〜50質量%であることが好ましい。無機充填材の含有量はより好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。PPS樹脂は、耐熱水性に優れ、粘り強く衝撃に強い。非強化であると凍結破壊は起きにくくなるが、高温域での使用や、水撃がかかる状態では強度が不足し、継手が抜けてしまい止水できなくなる。無機充填材としてガラス繊維を配合することにより剛性が上がり、はめ込み式部の強度やフランジ部の強度を維持している。
【0044】
無機充填材の含有量が10質量%未満であると長期耐久性が低下する傾向となり、50質量%を超えると伸び難く割れやすくなるおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施の形態に係るヘッダー部材の分解斜視図である。
図2】ヘッダー部材本体の断面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図1のIV−IV線断面図である。
図5】インナーをヘッダー部材本体に装着した実施の形態に係るヘッダー部材の断面図である。
図6】別の実施の形態に係るヘッダー部材本体の断面図である。
図7図6のVII−VII線断面図である。
図8図6のヘッダー部材本体に挿入されるインナーの斜視図である。
図9図8のIX−IX線断面図である。
図10図9のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図1〜5を参照して第1の実施の形態に係るヘッダー部材について説明する。
【0047】
このヘッダー部材は、給湯器からの温水を温水使用機器(例えば湯水混合水栓、浴槽、温水暖房器具など)に供給する給湯ラインに設置される。また、このヘッダー部材は、上水道配管からの上水を複数の水栓に供給する給水ラインに設置されてもよい。
【0048】
以下の説明では、ヘッダー部材1は、給湯ラインの途中に設置されるものとして説明されるが、上記の通り、各種の給湯ライン、給水ラインにも設置することが可能である。また、本発明のヘッダー部材1は、チューブや配管を介して給湯器等に接続される使用形態や、給湯器に直接に接続される使用形態などを採ることもできる。
【0049】
このヘッダー部材1は、合成樹脂製のヘッダー部材本体2と、該ヘッダー部材本体2内に挿入される合成樹脂製のインナー20とを有する。ヘッダー部材本体2は、円筒状の主筒部3と、該主筒部3の筒軸心方向一端側から主筒部3と同軸状に突出する小径筒部4とを有する。小径筒部4内が第1の集合流通口5(図2)となっている。小径筒部4の外周面にはOリングの装着溝4aが設けられている。この装着溝4aには、止水ゴムシールリングが設けられることが好ましい。
【0050】
主筒部3の筒軸心方向他端側が第2の集合流通口6となっている。主筒部3の側周面には、分岐用ノズル部7が設けられ、該ノズル部7内が分岐流通口8となっている。この実施の形態では、ノズル部7が該主筒部3の筒軸心方向と平行方向に間隔をおいて3個設けられている。なお、ノズル部7は2個又は4個以上(例えば4〜8個)であってもよく、1個であってもよい。
【0051】
ノズル部7は、主筒部3の筒軸心方向と直交方向に突設されており、樹脂チューブ等よりなる温水配管が接続可能とされている。各分岐流通口8と前記集合流通口5,6とが、主筒部3内の流路9によって連通している。
【0052】
主筒部3の一端側及び他端側にそれぞれフランジ部11,12が設けられている。小径筒部4には主給水管を直接連結してもよいし、分岐流通口8が多く必要な場合は、同様の形状のヘッダー部材本体2を差し込んでもよい。ヘッダー部材本体2を複数連結する場合は、ファスナーによってフランジ部11とフランジ部12とが保持され、これによりヘッダー部材1同士が連結される。
【0053】
なお、フランジ部11に切欠きを設けて、ヘッダー部材1同士を連結してもよい。
【0054】
主筒部3の外周面には、周方向に延在する補強用のリブ13が設けられている。
【0055】
ヘッダー部材本体2の内周面には、インナー20の外周面の溝21と係合する凸条14が筒軸心方向と平行方向に延在している。この実施の形態では、凸条14は、主筒部3の直径方向に対峙して2条設けられている。
【0056】
凸条14の長手方向の一端側は、主筒部3から小径筒部4の内周面にまで延在している。凸条14の長手方向の他端側は、主筒部3の他端近傍まで延在しているが、該他端からは所定距離だけ離隔している。これは、主筒部3の他端にヘッダー部材1と同様のヘッダー部材や、エンドプラグを差し込んで接続するためである。各凸条14は、分岐流通口8の中心から主筒部3の周方向に90°の位置に配置されている。なお、凸条14は、図示のものよりも短く設けられてもよい。
【0057】
インナー20は、大径円筒状の大径部22と、該大径部22の筒軸心方向の一端側から大径部22と同軸状に突出する小径部23とを有する。大径部22の側周面に開口24が設けられている。この実施の形態では、開口24は、インナー20の筒軸心方向と平行方向に間隔をおいて分岐流通口8と同数個設けられている。開口24の位置は、インナー20をヘッダー部材本体2に挿入したときに、開口24と分岐流通口8とが同軸状に重なるように設定されている。
【0058】
大径部22の外径は、ヘッダー部材本体2の主筒部3の内径と同一か、ごく僅かに小さいものとなっている。小径部23の外径はヘッダー部材本体2の小径筒部4の内径と同一か、ごく僅かに小さいものとなっている。
【0059】
インナー20の側周面には、前述の溝21が設けられている。溝21は、インナー20の直径方向に対峙して2条設けられている。
【0060】
溝21は、大径部23と小径部24を含めて、インナー20の一端側から他端側まで連続して設けられている。各溝21は、開口24の中心から、インナー20の周方向に90°の位置に配置されている。
【0061】
凸条14と溝21とを係合させながら、インナー20をヘッダー部材本体2に挿入することにより、ヘッダー部材1が構成される。凸条14と溝21とが係合することにより、インナー20の周方向の回転が阻止され、開口24と分岐流通口8とが対面する。
【0062】
図5の通り、このヘッダー部材1にあっては、インナー20の小径部23の先端(一端)とヘッダー部材本体2の小径筒部4の先端とは面一となっている。インナー20の後端(他端)は、ヘッダー部材本体2の後端よりも所定距離だけヘッダー部材本体2内に入り込んでいる。インナー20の開口24と分岐流通口8とは同軸状となっている。
【0063】
以上の説明では、溝21と凸条14による係合が2ヶ所である場合として説明したが、が、この溝21と凸条14による係合の数は、インナーの周方向の位置決めを行うことができればいくつであってもよい。例えば、溝21と凸条14による係合を1ヶ所とする場合は、後述の図6〜10の実施の形態のように、開口24の中心からインナー20の周方向に180°の位置のインナー21外周面に溝21を設け、分岐流通口8の中心から主筒部3の周方向に180°の位置のヘッダー部材本体2の内周面に溝21と係合する凸条14が1条設けられる。
【0064】
図6〜10を参照して第2の実施の形態に係るヘッダー部材1Aについて説明する。
このヘッダー部材も、第1の実施の形態のヘッダー部材1と同じく、ヘッダー部材本体2Aとインナー20Aとを有する。図6,7は、このヘッダー部材本体2Aを示すものであり、図6はヘッダー部材本体2Aの筒軸心線方向に沿う断面図、図7図6のVII−VII線断面図である。また、図8〜10は、このインナー20Aを示すものであり、図8はインナー20Aの斜視図、図9図8のIX−IX線断面図、図10図9のX−X線断面図である。
このヘッダー部材本体2Aは、前記ヘッダー部材本体2と同じく、主筒部3と、小径筒部4とを有し、小径筒部4内が第1の集合流通口5となっている。小径筒部4の外周にOリングの装着溝4aが設けられている。主筒部3の小径筒部4と反対側が第2の集合流通口6となっている。
主筒部3の側周面に複数個(第1の実施の形態と同じく2〜8個程度。この実施の形態では3個)の分岐用ノズル部7が設けられている。各分岐用ノズル部7は、主筒部3の筒軸心方向と平行な一直線上に配列されている。
この実施の形態では、主筒部3の内周面のうち、この一直線に沿う部分は、平坦面3fとなっている。これにより、主筒部3の筒軸心方向と垂直断面図である図7において、主筒部3の内周面は、該一直線に沿う部分が弦方向に延在する直線となっている。
また、この実施の形態では、2条の前記凸条14の代わりに、1条の凸条14Aが設けられている。この凸条14Aは、主筒部3の筒軸心を挟んでノズル部7側(前記平坦面3f側)と反対側に位置している。
平坦面3f及び凸条14Aを除いて、主筒部3の内周面は円弧形となっている。
主筒部3に平坦面3fを設けたことに対応して、インナー20Aの外周面には、平坦面3fと対面する平坦面22fが設けられている。即ち、インナー20Aの筒軸心と垂直断面(図9)において、インナー20Aの外周面は、該平坦面22f部分が弦方向の直線として表われる。開口24は、この平坦面22fに設けられている。
このインナー20Aには、1条の凸条14Aに係合する1条の溝21Aが設けられている。
ヘッダー部材本体2A及びインナー20Aのその他の構成はヘッダー部材本体2及びインナー20と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0065】
このヘッダー部材1,1Aを、連絡管を介して給湯器等に接続し、各分岐用ノズル部7に配管30を接続した給水給湯配管設備及び給水給湯システムにあっては、給湯器からの温水は、ヘッダー部材1,1A、配管30を通って各温水機器に分配供給される。なお、ヘッダー部材1,1Aの後端は、エンドプラグで封じられるか、又はさらに同一又は別のヘッダー部材が接続される。
【0066】
この給水給湯システムが寒冷地等に設置され、内部で水が凍結した場合、ヘッダー部材1,1A内の容積が小さいため、水が凍ることによる膨張圧が小さくなり、ヘッダー部材1,1Aの破損が防止される。
【0067】
特に、第2の実施の形態に係るヘッダー部材1Aにあっては、前記一直線に沿う部分(分岐用ノズル部7が配列されている部分)において、主筒部3の内面を平坦面3fとしており、該一直線に沿う部分における主筒部3の肉厚(分岐流通口8側の位置における肉厚)が、それ以外における主筒部3の肉厚よりも大きくなっており、該一直線に沿う部分の強度が大きいものとなっている。これにより、水の凍結圧が加えられても、ヘッダー部材1Aの破損が防止される。
【0068】
このヘッダー部材1,1Aが非寒冷地に設置される場合には、インナー20,20Aをヘッダー部材本体2,2A内に挿入しないようにしてもよい。このヘッダー部材本体2,2Aは、その形状及び構成が既存のヘッダー部材と凸条14,14Aの有無のみが相違するものとすることができ、ヘッダー部材製造用金型の設計が容易である。
【0069】
以上の説明では、ヘッダー部材本体2,2A及びインナー20,20Aが筒状である場合として説明したが、それらの筒状に限定されるものではなく、ヘッダー部材本体2,2Aの内周面及びインナー20,20Aの外周面の形状は、インナー20,20Aの回り止め(周方向の位相決め)ができるものであれば、その他の形状であってもよい。
【0070】
また、以上の説明では、溝21,21Aと凸条14,14Aの係合によりインナー20,20Aの回り止め(周方向の位相決め)を行う場合として説明したが、インナー20,20Aの回り止めの方法は、これに限定されるものではない。例えば、インナー20,20Aを予め金型に装着し、それにヘッダー部材本体2をインサート成形する二色成形法により行ってもよいし、加熱、振動、超音波等の熱融着や接着剤による接着によって、インナー20,20Aの回り止めを行うことも可能である。また、第2の実施の形態にあっては、平坦面3f,22fが係合することによってもインナー20Aの回り止め効果が得られる。
【0071】
上記ヘッダー部材1,1Aの各部分の好ましい寸法は次の通りである。
【0072】
ヘッダー部材本体2の内径及びヘッダー部材本体2Aの平坦面3f以外の部分の内径は、好ましくは15〜30mm、さらに好ましくは18〜27mm、特に好ましくは20〜25mmである。なお、ヘッダー部材本体2の内径とはヘッダー部材本体2の主筒部3の内径をいい、内径が一律でない場合はその平均値をいう。ヘッダー部材本体2Aの平坦面3f以外の内径とは、ヘッダー部材本体2Aの主筒部3の平坦面3f以外の内径をいい、内径が一律でない場合はその平均値をいう。
【0073】
ヘッダー部材本体2Aの平坦面3f部分の厚みは、ヘッダー部材本体の他の部分の厚みの1.1〜1.5倍であることが好ましく、1.2〜1.4倍であることがさらに好ましい。なお、ヘッダー部材本体2Aの平坦面3f部分の厚みとは、径方向の最大厚みをいう。ヘッダー部材本体2Aの他の部分の厚みとは、ヘッダー部材本体2Aの主筒部3の周方向における平坦面3f以外の部分の厚みをいい、厚みが一律でない場合はその最小値をいう。
【0074】
また、ヘッダー部材本体2Aの内径が大きいほどヘッダー部材本体2Aの平坦面3f部分の厚みが大きいことが好ましく、ヘッダー部材本体2Aの内径が小さいほどヘッダー部材本体2Aの分岐流通口8側の厚みも小さいことが好ましい。具体的には、ヘッダー部材本体2Aの内径が18〜25mmである場合は、ヘッダー部材本体2Aの平坦面3f部分の厚みは1.7〜7.5mmであることが好ましく、1.8〜7mmであることがより好ましい。
【0075】
ヘッダー部材本体2の厚み及びヘッダー部材本体2Aの平坦面3f以外の部分の厚みは、好ましくは1.5〜5mm、さらに好ましくは2〜4.5mm、特に好ましくは2〜4mmである。なお、ヘッダー部材本体2の厚みとはヘッダー部材本体2の主筒部3の厚みをいい、厚みが一律でない場合はその最小値をいう。ヘッダー部材本体2Aの平坦面3f以外の部分の厚みとは、ヘッダー部材本体2Aの主筒部3の平坦面3f以外の部分の厚みをいい、厚みが一律でない場合はその最小値をいう。
【0076】
分岐流通口8の内径は、好ましくは3〜12mm、さらに好ましくは4〜11mm、特に好ましくは5〜10mmである。なお、分岐流通口8の内径が一律でない場合は、その平均値を分岐流通口8の内径とする。また、複数の分岐流通口8の内径がそれぞれ異なる場合は、その平均値を分岐流通口の内径とする。
【0077】
分岐用ノズル部7の厚みは、好ましくは0.5〜7mm、さらに好ましくは1〜6mm、特に好ましくは1.2〜5mmである。なお、分岐用ノズル部7の厚みが一律でない場合は、その最小値を分岐用ノズル部7の厚みとする。また、複数の分岐用ノズル部7の厚みがそれぞれ異なる場合は、その平均値を分岐用ノズル部7の厚みとする。
【0078】
インナー20の外径及びインナー20Aの平坦面22f以外の部分における外径は、好ましくは15〜30mm、さらに好ましくは18〜27mm、特に好ましくは20〜25mmである。なお、インナー20の該外径とは、インナー20の大径部22の外径をいい、外径が一律でない場合はその平均値をインナー20の外径とする。インナー20Aの平坦面22f以外の部分の厚みとは、インナー20Aの大径部22の平坦面22f以外の部分の厚みをいい、厚みが一律でない場合はその平均値をインナー20Aの外径とする。
【0079】
インナー20,20Aの内径は、好ましくは5〜20mm、さらに好ましくは6〜17mm、特に好ましくは7〜15mmである。なお、インナー20,20Aの内径が一律でない場合は、その平均値をインナー20,20Aの内径とする。
【0080】
インナー20の厚み及びインナー20Aの平坦面22f以外の部分の厚みは、好ましくは2〜10mm、さらに好ましくは3〜8mm、特に好ましくは3〜7mmである。なお、インナー20の厚み、インナー20Aの平坦面22f以外の部分の厚みが一律でない場合は、その平均値をインナー20の厚み、インナー20Aの平坦面22f以外の部分の厚みとする。
【0081】
インナー20Aの平坦面22f部分の厚みは、ヘッダー部材本体2Aの平坦面3f部分の厚みに対応するように調整して決めればよいが、インナー20Aの他の部分の厚みの0.6〜0.9倍であることが好ましく、0.7〜0.8倍であることがさらに好ましい。なお、インナー20Aの平坦面22f部分の厚みとは、径方向の最大厚みをいう。インナー20Aの他の部分の厚みとは、インナー20Aの周方向における平坦面22f以外の部分の厚みをいい、厚みが一律でない場合はその最小値をいう。
【0082】
インナー20,20Aの開口24の直径は、好ましくは3〜12mm、さらに好ましくは4〜11mm、特に好ましくは5〜10mmである。なお、複数の開口24の直径がそれぞれ異なる場合は、その平均値を開口24の直径とする。
【0083】
インナー20,20Aの1cm当たりの内部容積は、好ましくは0.3〜2cm、さらに好ましくは0.4〜1.7cm、特に好ましくは0.5〜1.6cmである。なお、インナー20,20Aの1cm当たりの内部容積が部位によって異なる場合は、その平均値を1cm当たりの内部容積とする。
【0084】
ヘッダー部材本体2,2Aの内部容積に対するインナー20,20Aの体積の割合は、好ましくは45〜90%、さらに好ましくは50〜88%、特に好ましくは54〜85%である。
【0085】
(インナー20,20Aの内径)/(分岐流通口8の内径)は、好ましくは1〜2.5、より好ましくは1〜2.2、特に好ましくは1.1〜2.0である。なお、複数の(インナー20,20Aの内径)/(分岐流通口8の内径)がそれぞれ異なる場合は、その平均値を(インナー20,20Aの内径)/(分岐流通口8の内径)とする。
【0086】
(インナー20,20Aの開口24の直径)/(分岐流通口8の内径)は、好ましくは0.8〜1.5、より好ましくは0.9〜1.4、特に好ましくは0.92〜1.3である。なお、ここでいう(インナー20,20Aの開口24の直径)/(分岐流通口8の内径)とは、分岐流通口8とそれと重なる位置に設置されたインナー20,20Aの開口24との径比であり、複数の(インナー20,20Aの開口24の直径)/(分岐流通口8の内径)が異なる場合は、その平均値を(インナー20,20Aの開口24の直径)/(分岐流通口8の内径)とする。
【0087】
ヘッダー部材1,1Aの先端又は後端に接続される連絡管の内径は、好ましくは10〜30mm、さらに好ましくは12〜26mm、特に好ましくは14〜23mmである。なお、連絡管の内径が一律でない場合は、その平均値を連絡管の内径とする。
【0088】
なお、断面形状が円形ではない非円形断面形状の場合は、断面の中心を通る径のうちの最小径を外径又は内径とする。
【0089】
上記実施の形態では、ヘッダー部材1,1Aは直管状のヘッダー部材本体2を備えたものとなっているが、ヘッダー部材本体2,2Aにエルボを接続した場合には、このエルボ内にもインナーを設置してもよい。
【0090】
上記実施の形態のインナー20,20Aには、図1,4,6,7において上面側にのみ開口24が設けられているが、これに限定されない。上記実施の形態では、凸条14,14Aと溝21,21Aとを係合させることによってインナー20,20Aの回り止めを行っているが、他の係合部によってインナーの回り止め(周方向の位相決め)を行ってもよい。
【実施例】
【0091】
本発明のヘッダー部材を製作し、凍結耐久性を試験した。
【0092】
[実施例1]
[ヘッダー部材本体]
ガラス繊維30質量%含有ポリフェニレンサルファイド樹脂を用い、図1〜5に示すものと同様の、主筒部の外径28.2mm、内径22.0mm、厚み3.1mmで、分岐用ノズル部を2個(ヘッダー部材本体長さ11.55cm(主筒部10cm、小径筒部1.55cm)又は3個(ヘッダー部材本体長さ16.55cm(主筒部15cm、小径筒部1.55cm)有するヘッダー部材を射出成形により製造した。ヘッダー部材本体の内周面には、幅2mm、高さ2mmの凸条を、分岐流通口の中心から主筒部の周方向に180°の位置にヘッダー部材本体の長さ方向に渡るように1条設けた。なお、凸条の長手方向の一端側は、主筒部から小径筒部の内周面にまで延在させた。一方、凸条の長手方向の他端側は、他のヘッダー部材又はエンドプラグを差し込んで接続できるように、該他端から17mm離隔させた。分岐用ノズル部は内径7.5mm、厚み2.55mm、分岐流通口の内径は7.5mmとした。
【0093】
分岐用ノズル部が2個のものを以下、ヘッダー部材Aといい、分岐用ノズル部が3個のものを以下、ヘッダー部材Bという。
【0094】
[インナー]
高密度ポリエチレン樹脂を用い、図1,4,5に示すものと同様の大径部外径21.7mm、大径部内径10.0mm、開口24の内径8.5mm、長さ9.85cm(インナーA)又は長さ14.85cm(インナーB)のインナーを射出成形した。なお、各インナーには、幅2.3mm、深さ2.15mmの溝を、開口の中心からインナーの周方向180°の位置にインナーの長さ方向に渡るように設けた。
【0095】
[凍結・水圧試験]
ヘッダー部材AにインナーAを挿入し、ヘッダー部材BにインナーBを挿入した。ヘッダー部材Aの後端にヘッダー部材Bを差し込んでファスナーで固定した。各ヘッダー部材A,Bの分岐用ノズル部に、枝管として内径13mmで長さ30cmの架橋ポリエチレンパイプを接続し、ヘッダー部材Aの先端の連絡管として内径20mmで長さ14cmの架橋ポリエチレンパイプを、ワンタッチ継手を介して取り付けた。また、ヘッダー部材Bの後端には止水のための金属のエンドプラグを取り付け、ヘッダー試験体とした。
【0096】
得られたヘッダー試験体の内部を満水にした。これを、5℃の雰囲気温度に3時間以上放置し、ヘッダーの内外部の温度を同程度にした後に、−5℃に温度を下げて12時間以上放置して凍結させた後、室温に2時間放置して解凍し、1MPa×2分間の水圧試験を行った。これを1サイクルとして、水圧試験でヘッダーが割れるか、水漏れが発生するまで繰り返し、ヘッダーの割れ、水漏れが発生するまでのサイクル数を表1に示した。サイクル数が5回以上であれば、実製品としての使用に問題ないレベルと言える。なお、実施例1、3、4については凍結及び水圧試験を1サイクルだけ行い、割れや水漏れが発生しないことを確認したところで、試験を終了した。
【0097】
【表1】
【0098】
[比較例1]
実施例1において、インナーA,Bを装着しないこと以外は同一の試験体を製作し、同一条件で凍結、解凍及び水圧試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0099】
[実施例2]
実施例1において、連絡管を内径16mmのものとしたこと以外は同一の試験体を製作し、同一条件で凍結、解凍及び水圧試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0100】
[比較例2]
実施例2において、インナーA,Bを装着しないこと以外は同一の試験体を製作し、同一条件で凍結、解凍及び水圧試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0101】
[実施例3]
実施例1において、インナーA,Bとして、内径が12mmのものを用い、連絡管を内径16mmのものとしたこと以外は同一の試験体を製作し、同一条件で凍結、解凍及び水圧試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0102】
[実施例4]
実施例1において、インナーA,Bとして、内径が13.7mmのものを用い、連絡管を内径16mmのものとしたこと以外は同一の試験体を製作し、同一条件で凍結、解凍及び水圧試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0103】
[実施例5]
実施例1において、図6〜10のように、ヘッダー部材本体の平坦面3f部分の厚みを大きく(最大厚みが4mm)したこと以外は同一の試験体を製作し、同一条件で凍結、解凍及び水圧試験を行った。評価結果を表1に示す。なお表1中、ヘッダー部材本体の主筒部内径及び厚みは、平坦面3f部分を除いた主筒部3の内径及び厚みとして記載した。インナーの外径及び厚みも同様に、平坦面22fを除いた部分の外径及び厚みとして記載した。凍結及び水圧試験では20サイクルまで割れや水漏れが確認されなかったので、そこで試験を中止した。
【0104】
[実施例6]
実施例2において、図6〜10のように、ヘッダー部材本体の平坦面3f部分の厚みを大きく(最大厚みが4mm)し、ヘッダー部材A,Bとインナー部材A,Bとを、A/B/A/Bの順番で挿入、ファスナーで固定し、分岐用ノズル部を10個とした以外は同一の試験体を製作し、同一条件で凍結、解凍及び水圧試験を行った。この試験体も実施例2と同様に、11サイクル目でヘッダーの割れが確認されたが、実製品としての使用には問題ないレベルであることがわかった。
【0105】
表1及び実施例6の試験結果の通り、実施例1〜6のヘッダー部材は耐凍結特性に優れる。
【符号の説明】
【0106】
1,1A ヘッダー部材
2,2A ヘッダー部材本体
3 主筒部
3f 平坦面
4 小径筒部
5 第1の集合流通口
6 第2の集合流通口
7 分岐用ノズル部
8 分岐流通口
9 流路
11,12 フランジ部
14,14A 凸条
20,20A インナー
21,21A 溝
22 大径部
22f 平坦面
24 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10