【実施例1】
【0017】
図1は本発明による三相の電力変換装置19の実施例を示すブロック図である。
この電力変換装置19は、図示しない三相交流電源のR相が接続される入力端1とS相が接続される入力端2とT相が接続される入力端3と、ノイズを低減させるフィルタ回路14と、フィルタ回路14を介して入力端1に接続されるR相ライン7と入力端2に接続されるS相ライン8と入力端3に接続されるT相ライン9と、IGBTからなる上アームと下アームを3組備えた三相コンバータ13と、フィルタ回路14と三相コンバータ13との間でR相ライン7に直列に接続されるリアクタ10とS相ライン8に直列に接続されるリアクタ11とT相ライン9に直列に接続されるリアクタ12を備えている。
【0018】
また、電力変換装置19は、三相コンバータ13の出力電圧が印加される出力端16と出力端17と、三相コンバータ13と出力端17との間に直列に接続されて母線電流を検出するシャント抵抗5と、出力端16と出力端17の間に接続された平滑コンデンサ15と直流電圧検出部6と、各相ラインの相電圧を検出する相電圧検出部4と、母線電流から各相電流をそれそれ検出する三相電流検出部30と、電力変換装置19全体を制御する制御部(制御手段)18を備えている。
【0019】
三相コンバータ13は、上アームを構成するスイッチング素子(IGBT)Q1と下アームを構成するスイッチング素子Q2とがトーテムポール型に接続され、この接続点がリアクタ10に接続されている。同様に上アームを構成するスイッチング素子Q3と下アームを構成するスイッチング素子Q4とがトーテムポール型に接続され、この接続点がリアクタ11に接続されている。同様に上アームを構成するスイッチング素子Q5と下アームを構成するスイッチング素子Q6とがトーテムポール型に接続され、この接続点がリアクタ12に接続されている。また、スイッチング素子Q1〜Q6は対応するR相スイッチングパルス信号Rp,Rn,Sp,Sn,Tp,Tnによってオンオフ制御される。なお、上アームのIGBTのコレクタ端子は出力端16に、下アームのIGBTのエミッタ端子はシャント抵抗5を介して出力端17にそれぞれ接続されている。また、各IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子の間に還流用のダイオードが備えられている
【0020】
制御部18は、各相電流波形が各相電圧波形と同じ位相になるように各相電流指令を生成する電流指令生成部(電流指令生成手段)20と、各相電流指令と各相電流を比較して二相変調方式による各相電圧指令を生成する二相電圧指令生成部(二相電圧指令生成手段)21と、各相電圧指令に対応する各キャリア信号を生成するキャリア信号生成部(キャリア信号生成手段)40と、各相電圧指令と各キャリア信号から三相コンバータ13を駆動するR相スイッチングパルス信号Rp,R相スイッチングパルス信号Rn,S相スイッチングパルス信号Sp,S相スイッチングパルス信号Sn,T相スイッチングパルス信号Tp,T相スイッチングパルス信号TnをPWM制御により生成するスイッチングパルス信号生成部(スイッチングパルス信号生成手段)22を備えている。
【0021】
相電圧検出部4は、R相ライン7の電圧を検出してR相電圧信号Erとして、また、S相ライン8の電圧を検出してS相電圧信号Esとして、T相ライン9の電圧を検出してT相電圧信号Etとして、それぞれ二相電圧指令生成部21と電流指令生成部20に出力する。また、直流電圧検出部6は出力端16と出力端17の間に出力される直流電圧を検出し、直流電圧信号として電流指令生成部20へ出力する。
【0022】
電流指令生成部20は、入力された各相電圧信号と直流電圧信号を用いてR相電流指令指令信号Ir*とS相電流指令指令信号Is*とT相電流指令指令信号It*を生成して二相電圧指令生成部21へ出力する。具体的に電流指令生成部20は、出力電圧の目標電圧と検出された直流電圧との差を求め、PI制御により相電流振幅指令値を算出する。一方、電流指令生成部20は、検出した各相電圧信号から求めた各相電圧から対象となる相の位相θを求め、算出した相電流振幅指令値にsinθを乗じて各相電流指令をそれぞれ算出する。
【0023】
二相電圧指令生成部21は、入力された各相電流指令と各相電流と各相電圧からR相電圧指令信号Vr*とS相電圧指令信号Vs*とT相電圧指令信号Vt*を生成してスイッチングパルス信号生成部22とキャリア信号生成部40にそれぞれ出力する。具体的に二相電圧指令生成部21は、各相電流指令と各相電流の差を求めPI制御によりそれぞれの相のリアクタにより低下する電圧値Δvを算出する。そして、二相電圧指令生成部21は、検出したそれぞれの相電圧から算出したそれぞれの電圧値Δvを差し引いて三相変調方式による三相電圧指令信号をそれぞれ算出する。そして二相電圧指令生成部21は、算出した三相変調方式による三相電圧指令信号を二相変調方式によって変調して二相変調方式による相電圧指令として出力する。
【0024】
図2は本発明によるキャリア信号生成部40を示すブロック図である。このキャリア信号生成部40は、R相電圧指令信号Vr*が入力されてR相用のR相キャリア信号Crを出力するR相キャリア信号制御部(R相キャリア信号制御手段)41と、S相電圧指令信号Vs*が入力されてS相用のS相キャリア信号Csを出力するS相キャリア信号制御部(S相キャリア信号制御手段)42と、T相電圧指令信号Vt*が入力されてT相用のT相キャリア信号Ctを出力するT相キャリア信号制御部(T相キャリア信号制御手段)43と、正相キャリア信号と半周期だけ位相のずれた逆相キャリア信号を生成してそれぞれ3つのキャリア信号制御部へ出力するキャリア信号発生部44を備えている。
【0025】
R相キャリア信号制御部41は、R相電圧指令信号Vr*の位相を示すR相位相信号を出力するR相最大・最小電圧検出部(R相最大・最小電圧検出手段)41aと、出力されるR相キャリア信号Crの最大電圧のタイミングを検出してR相上ピーク検出信号を出力するR相上ピーク検出部(R相上ピーク検出手段)41eと、出力されるR相キャリア信号Crの最小電圧のタイミングを検出してR相下ピーク検出信号を出力するR相下ピーク検出部(R相下ピーク検出手段)41dと、正相キャリア信号と逆相キャリア信号の切替を許可するR相キャリア切替許可部(R相キャリア切替許可手段)41bと、実際に正相キャリア信号と逆相キャリア信号の切替を行なうR相キャリア信号切替部(R相キャリア信号切替手段)41cを備えている。
【0026】
R相最大・最小電圧検出部41aは、R相電圧指令信号Vr*の電圧を監視しており、R相電圧指令信号Vr*が最大電圧になった以降、ハイレベルのR相位相信号を出力し続け、R相電圧指令信号Vr*が最小電圧になった以降、ローレベルのR相位相信号を出力し続ける。
【0027】
R相キャリア切替許可部41bは、R相位相信号とR相上ピーク検出信号とR相下ピーク検出信号が入力され、R相電圧指令信号Vr*が最大電圧になった以降、つまり、R相位相信号がハイレベルになった以降、最初にR相下ピーク信号がローレベルからハイレベルに変化した時、キャリア信号の位相を切り替えるためにR相キャリア切替信号をハイレベル(正相キャリア信号を選択)からローレベル(逆相キャリア信号を選択)にしてR相キャリア信号切替部41cに出力する。
【0028】
また、R相キャリア切替許可部41bは、R相電圧指令信号Vr*が最小電圧になった以降、つまり、R相位相信号がローレベルになった以降、最初にR相上ピーク信号がローレベルからハイレベルに変化した時、キャリア信号の位相を切り替えるためにR相キャリア切替信号をローレベル(逆相キャリア信号を選択)からハイレベル(正相キャリア信号を選択)にしてR相キャリア信号切替部41cに出力する。
【0029】
R相キャリア信号切替部41cは、正相キャリア信号と逆相キャリア信号とR相キャリア切替信号が入力されており、R相キャリア切替信号がローレベルなら逆相キャリア信号を、ハイレベルなら正相キャリア信号を選択してR相キャリア信号Crとして出力する。なお、R相キャリア信号切替部41cは、R相キャリア信号CrをR相上ピーク検出部41eとR相下ピーク検出部41dへ出力する。
【0030】
なお、S相キャリア信号制御部42とT相キャリア信号制御部43もR相キャリア信号制御部41と同じ構成であるため図示と説明を省略する。S相キャリア信号制御部42はR相位相信号とR相キャリア切替信号にそれぞれ対応するS相位相信号とS相キャリア切替信号を生成し、T相キャリア信号制御部43はR相位相信号とR相キャリア切替信号にそれぞれ対応するT相位相信号とT相キャリア切替信号を生成する。
【0031】
図3は本発明による電力変換装置19の動作を説明する説明図である。
図3(1)はR相電圧指令信号Vr*とR相キャリア信号Crを、
図3(2)はR相位相信号を、
図3(3)はR相キャリア切替信号を、
図3(4)はS相電圧指令信号Vs*とS相キャリア信号Csを、
図3(5)はS相位相信号を、
図3(6)はS相キャリア切替信号を、
図3(7)はT相電圧指令信号Vt*とT相キャリア信号Ctを、
図3(8)はT相位相信号を、
図3(9)はT相キャリア切替信号を、
図3(10)〜
図3(15)はR相スイッチングパルス信号Rp,S相スイッチングパルス信号Sp,T相スイッチングパルス信号Tp,R相スイッチングパルス信号Rn,S相スイッチングパルス信号Sn,T相スイッチングパルス信号Tnをそれぞれ示している。
【0032】
なお、R相スイッチングパルス信号Rp,S相スイッチングパルス信号Sp,T相スイッチングパルス信号Tpは上アーム用であり、R相スイッチングパルス信号Rn,S相スイッチングパルス信号Sn,T相スイッチングパルス信号Tnは下アーム用である。また、t0〜t7は時刻である。なお、t0〜t7は各相電圧指令信号の1周期を示しており、t7の次はt0から繰り返される。
【0033】
前述したように二相電圧指令生成部21は、各相電圧指令信号を二相変調して出力しており、各相電圧の1周期(t0〜t7)のうち1/6周期の期間だけ電圧指令信号を最大電圧もしくは最小電圧にして出力している。
例えば二相電圧指令生成部21は、R相電圧指令信号Vr*に関してt2〜t3の期間を最大電圧、t5〜t6の期間を最小電圧として出力する。従ってこの最大又は最小電圧は1/2周期毎に出現することになる。また、二相電圧指令生成部21はS相電圧指令信号Vs*に関してt4〜t5の期間を最大電圧、t1〜t2の期間を最小電圧として出力し、T相電圧指令信号Vt*に関してt6〜t7〜t0〜t1の期間を最大電圧、t3〜t4の期間を最小電圧として出力する。
【0034】
さらに、R相電圧指令信号Vr*が入力されたキャリア信号生成部40のR相最大・最小電圧検出部41aは、t2〜t5の期間でR相位相信号をハイレベルに、それ以外の区間でローレベルにする。キャリア信号生成部40は、その他のS相位相信号、T相位相信号もR相位相信号と同様にそれぞれの相電圧指令信号に対応して変化させる。
【0035】
また、キャリア信号生成部40は、各相キャリア切替信号を各相位相信号に基づいて位相が逆となるように割り当てて制御しており、各相電圧指令信号が最大電圧に変化したタイミングで逆相キャリア信号を、各相電圧指令信号が最小電圧に変化したタイミングで正相キャリア信号をそれぞれ割り当てて各相キャリア切替信号を出力する。
【0036】
このため、1つの相の相電圧指令信号が最大電圧、又は最小電圧の状態の時、他の二相の相電圧指令信号と対応するキャリア信号は正相キャリア信号と逆相キャリア信号との組み合わせになる。
これにより、他の二相のスイッチング素子のオンオフタイミングが半周期ずれることになり、従来のようにスイッチング素子が同時にオンオフすることで発生する大きな電流変化を分散させ、これによる平滑コンデンサ15のリップル電流変化が分散されて低減されると共に母線電流からの各相電流検出が容易になる。なお、相電流の検出方法については後で詳細に説明する。
【0037】
図4はキャリア信号を切り替える場合に発生する問題を説明する説明図である。
図4の横軸は時間を示している。縦軸に関して、
図4(1)はキャリア信号と上下アーム用のキャリア信号と相電圧指令信号の関係を、
図4(2)はスイッチングパルス信号Rpを、
図4(3)はスイッチングパルス信号Rnをそれぞれ示している。なお、t10〜t18は時刻である。
【0038】
図4(1)において、キャリア信号のレベルを上側にシフトした上アーム用キャリア信号と、キャリア信号のレベルを下側にシフトした下アーム用キャリア信号がスイッチングパルス信号生成部で生成される。そして、この上アーム用キャリア信号と相電圧指令信号が比較され、上アーム用キャリア信号よりも相電圧指令信号が大きい場合にスイッチングパルス信号Rpがハイレベルになり、逆の場合にローレベルになる。
【0039】
一方、スイッチングパルス信号生成部で下アーム用キャリア信号と相電圧指令信号が比較され、下アーム用キャリア信号よりも相電圧指令信号が大きい場合にスイッチングパルス信号Rnがローレベルになり、逆の場合にハイレベルになる。この結果、t10〜t11とt12〜t13の間はスイッチングパルス信号Rpとスイッチングパルス信号Rnが共にローレベル(スイッチング素子がオフ)となる期間、つまり、デッドタイムを設けることができる。
【0040】
ここで、各キャリア信号が最大電圧となるt16で相電圧指令信号が最大電圧に変化した時に各キャリア信号を逆位相にすると、t14〜t15ではデッドタイムが確保されるが、t16でスイッチングパルス信号Rpとスイッチングパルス信号Rnのレベルがそれぞれ同時に反転し、デッドタイムが確保できないタイミングが発生する。図示はしないが、各キャリア信号が最小電圧となる時に相電圧指令信号が最小電圧に変化した時に各キャリア信号を逆位相にする場合も同様にデッドタイムが確保できないタイミングが発生する。
【0041】
このため、本発明では各キャリア信号切替部において、各相電圧指令信号が最大電圧に変化した時には該当する相電圧指令信号と対応するキャリア信号が最小電圧なったタイミングで、また、各相電圧指令信号が最小電圧に変化した時には該当する相電圧指令信号と対応するキャリア信号が最大電圧なったタイミングで、それぞれキャリア信号を反転させる。この状態を次に詳しく説明する。
【0042】
図5はR相電圧指令信号Vr*が最大電圧に変化する場合にR相キャリア信号Crを切り替える場合を説明する説明図である。なお、他の相電圧指令信号の場合も同様である。
図5の横軸は時間を示している。縦軸に関して、
図5(1)はR相キャリア信号CrとR相上アーム用のキャリア信号とR相下アーム用のキャリア信号とR相電圧指令信号Vr*の関係を、
図5(2)はR相スイッチングパルス信号Rpを、
図5(3)はR相スイッチングパルス信号Rnをそれぞれ示している。
図5(4)はR相位相信号を、
図5(5)はR相下ピーク検出信号を、
図5(6)はR相上ピーク検出信号を、
図5(7)はR相キャリア切替信号をそれぞれ示している。なお、t19〜t32は時刻である。また、初期条件としてR相キャリア切替信号はハイレベル(正相キャリア信号を選択)である。
【0043】
図4で説明したように
図5(1)において、R相キャリア信号Crのレベルを上側にシフトしたR相上アーム用キャリア信号と、R相キャリア信号Crのレベルを下側にシフトしたR相下アーム用キャリア信号がスイッチングパルス信号生成部22で生成される。そして、このR相上アーム用キャリア信号とR相電圧指令信号Vr*が比較され、R相上アーム用キャリア信号よりも相電圧指令信号が大きい場合にR相スイッチングパルス信号Rpがハイレベルになり、逆の場合にローレベルになる。
【0044】
一方、R相下アーム用キャリア信号とR相電圧指令信号Vr*が比較され、R相下アーム用キャリア信号よりもR相電圧指令信号Vr*が大きい場合にR相スイッチングパルス信号Rnがローレベルになり、逆の場合にハイレベルになる。この結果、t20〜t21とt23〜t24の間はR相スイッチングパルス信号RpとR相スイッチングパルス信号Rnが共にローレベル(スイッチング素子がオフ)となる期間、つまり、デッドタイムを設けることができる。
【0045】
一方、R相下ピーク検出部41dは、R相キャリア信号Crの最小電圧(下ピーク)を検出すると、t19、t25、t30、t32・・・で、R相下ピーク検出信号のパルスを出力する。同様にR相上ピーク検出部41eは、R相キャリア信号Crの最大電圧(上ピーク)を検出すると、t22、t28、t30・・・で、R相上ピーク検出信号のパルスを出力する。
【0046】
R相最大・最小電圧検出部41aはR相電圧指令信号Vr*を監視しており、R相電圧指令信号Vr*が最大電圧になったt26でR相位相信号をローレベルからハイレベルにして出力する。一方、R相キャリア切替許可部41bは、t26でR相位相信号がハイレベルに変化すると、この変化から最初に出力されるR相下ピーク検出信号のパルスを待ち、t30でこのパルスを検出すると、R相キャリア切替信号をハイレベル(正相キャリア信号)からローレベル(逆相キャリア信号)にして出力する。R相キャリア信号切替部41cは、これに対応して正相キャリア信号から逆相キャリア信号に切り替えてR相キャリア信号Crとして出力する。
【0047】
このため、R相電圧指令信号Vr*がt26で最大電圧に変化して以降、R相下アーム用キャリア信号とR相電圧指令信号Vr*の関係に変化が無いようにR相キャリア信号Crの位相を反転させるため、t26以降ではR相スイッチングパルス信号Rnがローレベルのままとなり、デッドタイムが確保される。
【0048】
図6はR相電圧指令信号Vr*が最小電圧に変化する場合にR相キャリア信号Crの位相を切り替える場合を説明する説明図である。なお、他の相電圧指令信号の場合も同様である。
図6の横軸は時間を示している。縦軸に関して、
図6(1)はR相キャリア信号CrとR相上アーム用のキャリア信号とR相下アーム用のキャリア信号とR相電圧指令信号Vr*の関係を、
図6(2)はR相スイッチングパルス信号Rpを、
図6(3)はR相スイッチングパルス信号Rnをそれぞれ示している。
図6(4)はR相位相信号を、
図6(5)はR相下ピーク検出信号を、
図6(6)はR相上ピーク検出信号を、
図6(7)はR相キャリア切替信号をそれぞれ示している。なお、t40〜t53は時刻である。また、初期条件としてR相キャリア切替信号はローレベル(逆相キャリア信号を選択)である。
【0049】
図4や
図5で説明したように
図6(1)において、R相キャリア信号Crのレベルを上側にシフトしたR相上アーム用キャリア信号と、R相キャリア信号Crのレベルを下側にシフトしたR相下アーム用キャリア信号がスイッチングパルス信号生成部22で生成される。そして、このR相上アーム用キャリア信号とR相電圧指令信号Vr*が比較され、R相上アーム用キャリア信号よりもR相電圧指令信号Vr*が大きい場合にR相スイッチングパルス信号Rpがハイレベルになり、逆の場合にローレベルになる。
【0050】
一方、下アーム用キャリア信号とR相電圧指令信号Vr*が比較され、R相下アーム用キャリア信号よりもR相電圧指令信号Vr*が大きい場合にR相スイッチングパルス信号Rnがローレベルになり、逆の場合にハイレベルになる。この結果、t41〜t42の間はR相スイッチングパルス信号RpとR相スイッチングパルス信号Rnが共にローレベル(スイッチング素子がオフ)となる期間、つまり、デッドタイムを設けることができる。
【0051】
一方、R相下ピーク検出部41dは、R相キャリア信号Crの最小電圧(下ピーク)を検出すると、t40、t46、t48、t52・・・で、R相下ピーク検出信号のパルスを出力する。同様にR相上ピーク検出部41eは、R相キャリア信号Crの最大電圧(上ピーク)を検出すると、t43、t48、t50・・・で、R相上ピーク検出信号のパルスを出力する。
【0052】
R相最大・最小電圧検出部41aはR相電圧指令信号Vr*を監視しており、R相電圧指令信号Vr*が最小電圧になったt44でR相位相信号をハイレベルからローレベルにして出力する。一方、R相キャリア切替許可部41bは、t44でR相位相信号がローレベルに変化すると、この変化から最初に出力されるR相上ピーク検出信号のパルスを待ち、t48でこのパルスを検出すると、R相キャリア切替信号をローレベル(逆相キャリア信号)からハイレベル(正相キャリア信号)にして出力する。R相キャリア信号切替部41cは、これに対応して逆相キャリア信号から正相キャリア信号に切り替えてR相キャリア信号Crとして出力する。
【0053】
このため、R相電圧指令信号Vr*がt44で最小電圧に変化して以降、R相下アーム用キャリア信号とR相電圧指令信号Vr*の関係に変化が無いようにR相キャリア信号Crの位相を反転させるため、t41以降ではR相スイッチングパルス信号Rpがローレベルのままとなり、デッドタイムが確保される。
【0054】
図7は本発明による構成を用いた場合の相電流検出タイミングを示す説明図である。
図7の横軸は時間を示している。
図7の縦軸は
図7(1)各相電圧指令信号と、これに対応する各キャリア信号を、
図7(2)はR相スイッチングパルス信号Rpを、
図7(3)はS相スイッチングパルス信号Spを、
図7(4)はT相スイッチングパルス信号Tpを、
図7(5)は検出可能な相電流をそれぞれ示している。なお、t60〜t67は時刻である。また、説明を簡略化するため上下アーム用のキャリア信号を分けないでR相キャリア信号CrとS相キャリア信号CsとT相キャリア信号Ctを代表として用いて説明する。
なお、
図7(4)の破線で示す波形は、従来技術のようにR相電圧指令信号Vr*とT相電圧指令信号Vt*に同じ位相のキャリア信号、例えばR相キャリア信号Crを用いた場合を示している。
【0055】
図7(1)において、実線で示す山形の三角形がR相キャリア信号Crであり、これはR相電圧指令信号Vr*に対応している。一方、破線で示す谷形の三角形がS相キャリア信号Cs,T相キャリア信号Ctであり、これはS相電圧指令信号Vs*,T相電圧指令信号Vt*に対応している。また、徐々に電圧が増加しているR相電圧指令信号Vr*と、徐々に電圧が低下しているT相電圧指令信号Vt*と、電圧が最小となっているS相電圧指令信号Vs*をそれぞれ実線で示している。
【0056】
図7(1)に示すように、スイッチングパルス信号生成部22は、R相電圧指令信号Vr*がR相キャリア信号Crよりも大きいt60〜t62の期間に、R相スイッチングパルス信号Rpをハイレベルにし、R相電圧指令信号Vr*がR相キャリア信号Crよりも小さいt62〜t65の期間に、R相スイッチングパルス信号Rpをローレベルにし、R相電圧指令信号Vr*がR相キャリア信号Crよりも大きいt65以降の期間に、R相スイッチングパルス信号Rpをハイレベルにする。
【0057】
また、スイッチングパルス信号生成部22は、S相電圧指令信号Vs*がS相キャリア信号Csよりも小さいため、
図7に示す期間ではS相スイッチングパルス信号Spをローレベルにする。さらに、スイッチングパルス信号生成部22は、T相電圧指令信号Vt*がT相キャリア信号Ctよりも小さいt60〜t61の期間に、T相スイッチングパルス信号Tpをローレベルにし、T相電圧指令信号Vt*がT相キャリア信号Ctよりも大きいt61〜t67の期間に、T相スイッチングパルス信号Tpをハイレベルにし、T相電圧指令信号Vt*がT相キャリア信号Ctよりも小さいt67以降の期間に、T相スイッチングパルス信号Tpをローレベルにする。
【0058】
このため、t60〜t61の期間はR相スイッチングパルス信号Rpのみがハイレベルとなり、その他のスイッチングパルス信号はローレベルになる。このため、三相電流検出部30はこの期間においてR相電流を検出する。
一方、t61〜t62の期間はS相スイッチングパルス信号Spのみがローレベルとなり、他のR相スイッチングパルス信号RpとT相スイッチングパルス信号Tpはハイレベルとなる。つまり、t61〜t62の期間はR相電流とT相電流の合計電流が母線電流に流れており、三相電流の合計はゼロであるため、三相電流検出部30は検出した母線電流に基づいてこの期間のS相電流を算出する。また、t62〜t65の期間はT相スイッチングパルス信号Tpのみがハイレベルであるため、三相電流検出部30はこの期間で検出した母線電流をT相電流とする。
【0059】
さらに、t65〜t67はR相電流とT相電流の合計電流が母線電流として流れており、三相電流の合計はゼロであるため、三相電流検出部30はこの期間で検出した母線電流からS相電流を算出する。このようにスイッチングパルス信号が三相共にハイレベルとなるタイミングが存在しないため、
図7で説明した以外のタイミングにおいてもR相電流とS相電流とT相電流を確実に求めることができる。
【0060】
もし従来技術のように、R相電圧指令信号Vr*とT相電圧指令信号Vt*に同じ位相のキャリア信号、例えばR相キャリア信号Crを用いた場合、R相スイッチングパルス信号Rpと、
図7(4)の破線で示す波形のようにT相スイッチングパルス信号Tpはほぼ同じタイミングの波形となり、T相電流を唯一検出できるt62〜t63の期間が非常に短い期間となり、処理速度の遅い安価なA/Dコンバータでは正確なT相電流を検出することができない。
【0061】
以上説明したように二相変調方式の電力変換装置19において、キャリア信号生成部40が3つの相電圧指令信号のうち駆動している二相と対応するキャリア信号の位相を互いに逆相にする。
これに対して、2つの相電圧指令に1つのキャリア信号を用いる従来の方法では2つの相電圧指令の電圧差が小さい時、出力されるスイッチングパルス信号がほぼ同じタイミングでオンオフする。これによって三相コンバータ13内のスイッチング素子がオンオフし、これによる大きな電流の変化によって母線電流にリップル電流が発生する。本発明では2つの相電圧指令に互いに逆相のキャリア信号をそれぞれ割り当てて用いる。このため、出力されるスイッチングパルス信号がほぼ同じタイミングでオンオフする頻度を低減させることで平滑コンデンサ15のリップル電流を低減させる。
【0062】
また、背景技術の項で説明したように、キャリア信号の一周期内で相電圧指令信号を意図的に変化させないので、
図7で説明したようにT相電圧指令Vt*とR相電圧指令Vr*の電圧差がほとんどない場合でも各キャリア信号が最大・最小電圧となるt63付近で各スイッチングパルス信号の変化がない。このため、スイッチングパルス信号のオンオフタイミングの時間的な重なりで発生する大きな電流変化による無用な平滑コンデンサ15のリップル電流発生をなくすことができる。
また、駆動されている各相電圧指令信号に位相が異なる専用のキャリア信号を用いる簡単な構成を用いて母線電流から三相電流を検出することができる。
【0063】
また、
図7に示すように3つの相電圧指令信号のうち、最低電圧となっているS相電圧指令信号Vs*以外の駆動している2つの相電圧指令信号の電圧差が小さい場合であっても、この2つの相電圧指令信号と対応するキャリア信号が逆相であるため、各相電流を算出するために母線電流の電圧をA/D変換するための十分なパルス幅の時間、つまり、t61〜t62とt62〜t65とt65〜t67を確保することができ、正確な相電流を検出することができる。
【0064】
なお、キャリア信号を反転させない従来の電力変換装置で発生していた平滑コンデンサのリップル電流(実効値):5.52Aに対して本発明をシュミレーションで確認した結果、リップル電流(実効値):3.88Aとなり、約70%に低減することができた。
<条件>
入力電圧(相電圧):230V
リアクタ10,11,12:8mH
平滑コンデンサ15:660μF
出力端16,17間に接続される抵抗負荷:80Ω
キャリア信号の周波数:4KHz
【0065】
本実施例では、各部をハードウェアのブロック図として説明しているが、これに限るものでなく、ソフトウェアを用いてハードウェアと同じ機能を手段として実現してもよい。