(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、上記構成のラフテレーンクレーンを走行させる場合において、走行体の手前下部及び走行体の左方は、キャビンに搭乗するオペレータから死角になりやすいという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行体の前端より後方で且つブームと左右方向に隣接するキャビンからの死角を少なくしたクレーン車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本実施形態に係るクレーン車は、走行体と、旋回可能に上記走行体に支持された旋回体と、起伏及び伸縮可能に上記旋回体に支持されたブームと、上記旋回体に支持されたキャビンと、上記キャビンより前方で且つ上記走行体の左右方向の一方側の端部に取り付けられて、上記走行体の後方に向けられた第1カメラと、上記キャビンより後方で且つ上記走行体の左右方向の一方側の端部に取り付けられて、上記走行体の前方に向けられた第2カメラと、上記キャビンの内部空間に配置されており、上記走行体を走行させ、上記旋回体を旋回させ、且つ上記ブームを起伏及び伸縮させるオペレータの操作を受け付ける操作部と、上記キャビンの内部空間に配置されており、上記第1カメラ及び上記第2カメラが撮影した映像を表示させるディスプレイとを備える。上記キャビンが上記走行体の進行方向を向き、上記ブームを最も倒伏させ且つ最も短くした走行姿勢において、上記ブームは、上記走行体の前端より前方にまで延設されており、上記キャビンは、上記走行体の前端より後方で且つ左右方向の他方において上記ブームに隣接して配置されている。
【0007】
上記構成によれば、向かい合って配置された第1カメラ及び第2カメラで走行体の左右方向の一方側が撮影され、撮影された映像がキャビン内のディスプレイに表示される。これにより、キャビンに搭乗するオペレータは、キャビンから死角になるブームの向こう側の状況を確認しながら、クレーン車を走行させることができる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記第1カメラ及び上記第2カメラは、撮影範囲の一部が重複するように配置されている。
【0009】
上記構成によれば、ブームの向こう側の死角をさらに少なくすることができる。
【0010】
(3) 好ましくは、上記ディスプレイには、表示面の一部である第1領域に、上記第1カメラが撮影した第1映像が表示され、上記第1領域の上方に隣接する第2領域に、上記第2カメラが撮影した第2映像が表示される。
【0011】
上記構成によれば、移動体(例えば、自転車)がクレーン車の一方側を追い越す場合、キャビンに搭乗するオペレータには、移動体がディスプレイの下から上に移動するように見える。また、移動体をクレーン車が追い越す場合、キャビンに搭乗するオペレータには、移動体がディスプレイの上から下に移動するように見える。このように、クレーン車及び移動体の相対位置の現実の変化に近い態様でディスプレイに映像が表示されるので、オペレータは、ブームの向こう側の状況を適切に把握することができる。
【0012】
(4) 好ましくは、該クレーン車は、上記走行体の前端で且つ左右方向の他方に偏った位置に取り付けられて、上記走行体の左右方向の一方に向けられた第3カメラをさらに備える。上記ディスプレイには、上記第1領域或いは上記第2領域と左右方向に隣接する第3領域に、上記第3カメラが撮影した第3映像が表示される。
【0013】
上記構成によれば、走行体の手前下部及び左右方向の一方が第3カメラで撮影され、撮影された映像がキャビン内のディスプレイに表示される。これにより、キャビンに搭乗するオペレータは、キャビンから死角になる走行体の手前下部及び左右方向の一方の状況を確認しながら、クレーン車を走行させることができる。
【0014】
(5) 好ましくは、該クレーン車は、上記ブームの先端に取り付けられて、上記走行姿勢における上記走行体の後方で且つ下方に向けられた第3カメラをさらに備える。上記ディスプレイには、上記第1領域或いは上記第2領域と左右方向に隣接する第3領域に、上記第3カメラが撮影した第3映像が表示される。
【0015】
上記構成によれば、走行体の手前下部が第3カメラで撮影され、撮影された映像がキャビン内のディスプレイに表示される。これにより、キャビンに搭乗するオペレータは、キャビンから死角になる走行体の手前下部の状況を確認しながら、クレーン車を走行させることができる。
【0016】
(6) 好ましくは、該クレーン車は、上記走行体の後端に取り付けられて、上記走行体の後方に向けられた第4カメラをさらに備える。上記ディスプレイには、上記第1領域と左右方向に隣接し且つ上記第3領域の下方に隣接する第4領域に、上記第4カメラが撮影した第4映像が表示される。
【0017】
上記構成によれば、第1〜第4カメラの映像が1画面に纏めて表示されるので、キャビンに搭乗するオペレータは、後を振り返ったり、サイドミラーに視線を移動させたりしなくても、走行体の後方の状況をさらに確認することができる。
【0018】
(7) 好ましくは、上記ディスプレイは、上記キャビン内において、左右方向の一方側に偏った位置に配置されている。
【0019】
上記構成によれば、キャビンに搭乗するオペレータは、走行体の一方側の映像を見るために、視線をその方向に移動させることになる。すなわち、走行体の一方側を直接見る時の視線の動きに近いので、走行体の状況を自然な動作で確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、向かい合って配置された第1カメラ及び第2カメラで走行体の左右方向の一方側が撮影され、撮影された映像がキャビン内のディスプレイに表示される。これにより、キャビンに搭乗するオペレータは、キャビンから死角になるブームの向こう側の状況を確認しながら、クレーン車を走行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0023】
[ラフテレーンクレーン10]
本実施形態に係るラフテレーンクレーン10は、
図1〜
図3に示されるように、下部走行体20と、上部旋回体30とを主に備える。ラフテレーンクレーン10は、下部走行体20によって目的地まで走行し、当該目的地で上部旋回体30に所定の動作をさせるものである。ラフテレーンクレーン10は、クレーン車の一例である。
【0024】
[下部走行体20]
下部走行体20は、左右一対の前輪21と、左右一対の後輪22とを有する。前輪21は、後述するステアリング42Bによって操舵される操舵輪である。後輪22は、トランスミッション(図示省略)を介して伝達されるエンジン(図示省略)の駆動力によって回転される駆動輪である。
【0025】
また、下部走行体20は、アウトリガ23、24を有する。アウトリガ23は下部走行体20の前端に配置され、アウトリガ24は下部走行体20の後端に配置される。アウトリガ23、24は、下部走行体20から左右方向に張り出した位置において地面に接地する張出状態と、地面から離間した状態で下部走行体20に格納される格納状態とに状態変化が可能である。上部旋回体30の動作時にアウトリガ23、24を張出状態とすることにより、ラフテレーンクレーン10の姿勢が安定する。一方、アウトリガ23、24は、下部走行体20の走行時に格納状態とされる。
【0026】
[上部旋回体30]
上部旋回体30は、旋回ベアリング(図示省略)を介して下部走行体20に旋回可能に支持されている。上部旋回体30は、旋回モータ71(
図5参照)の駆動力が伝達されて旋回する。上部旋回体30の旋回角度は、例えば、下部走行体20の前進方向を0°としたときの時計回り方向の角度で表される。上部旋回体30は、伸縮ブーム32と、フック33と、キャビン40とを主に備える。
【0027】
伸縮ブーム32は、起伏シリンダ72(
図2及び
図5参照)によって起伏され、伸縮シリンダ73(
図5参照)によって伸縮される。伸縮ブーム32の基端32Aは、下部走行体20の前端及び後端の間において、上部旋回体30に支持されている。また、
図2及び
図3に示されるように、伸縮ブーム32を最も倒伏させ且つ最も短くした状態において、伸縮ブーム32の先端32Bは、下部走行体20の前端より前方に位置している。以下、上部旋回体30の旋回角度が0°で、伸縮ブーム32を最も倒伏させ、且つ伸縮ブーム32を最も短くした状態を、ラフテレーンクレーン10の走行姿勢と表記する。すなわち、ラフテレーンクレーン10の走行姿勢において、伸縮ブーム32は、下部走行体20の前端より前方にまで延設されている。
【0028】
また、伸縮ブーム32の先端32Bには、作業半径及び作業高さを延伸させるためのジブ(図示省略)が着脱可能であってもよい。フック33は、伸縮ブーム32の先端32B或いはジブの先端にワイヤ38によって吊り下げられており、ワイヤ38を巻き取り或いは繰り出すウインチ74(
図5参照)によって昇降される。
【0029】
[キャビン40]
キャビン40は、ラフテレーンクレーン10を操作するオペレータが搭乗するための内部空間を有する箱型である。キャビン40は、下部走行体20の前端より後方で且つ伸縮ブーム32の基端32Aより前方において、上部旋回体30に支持されている。また、キャビン40は、伸縮ブーム32の右隣に配置されている。キャビン40の内部空間には、
図4に示されるように、座席41と、第1操作部42と、第2操作部43と、ディスプレイ44とが収容されている。
【0030】
第1操作部42は、下部走行体20を走行させるためのオペレータの指示を受け付ける。より詳細には、第1操作部42は、複数のペダル42Aと、ステアリング42Bとを主に備える。ペダル42Aは、下部走行体20を加速或いは減速させる指示を受け付けるものであって、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等である。ステアリング42Bは、下部走行体20の進行方向を指示する操作を受け付けるものである。第1操作部42の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0031】
第2操作部43は、アウトリガ23、24を状態変化させ、上部旋回体30を旋回させ、伸縮ブーム32を伸縮及び起伏させ、フック33を昇降させる指示を受け付ける。第2操作部43は、例えば、レバー43A、ペダル43B、或いはスイッチ(図示省略)等によって構成される。第2操作部43の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0032】
ディスプレイ44は、キャビン40内において、左右方向の中央より左方に偏った位置に配置されている。より詳細には、ディスプレイ44は、ステアリング42Bの左隣に配置されている。ディスプレイ44は、ラフテレーンクレーン10の状態を表示する。より詳細には、ディスプレイ44は、アウトリガ23、24の状態、上部旋回体30の旋回角、伸縮ブーム32の伸縮長さ及び起伏角等を表示する。さらに、ディスプレイ44は、後述するカメラ61〜64が撮影した映像を表示する。
【0033】
座席41に座ったオペレータは、第1操作部42及び第2操作部43を操作することができ、且つディスプレイ44に表示された情報を視認することができる。より詳細には、オペレータは、座席41に座った状態で、下部走行体20を走行させることができ、上部旋回体30及び伸縮ブーム32を動作させることができる。また、ラフテレーンクレーン10の走行姿勢において、伸縮ブーム32の上端は、座席41に座ったオペレータの視線より高い位置にある。すなわち、走行姿勢のラフテレーンクレーン10の座席41に座ったオペレータは、下部走行体20の手前下部と、下部走行体20の左側とが見難い状態で、ラフテレーンクレーン10を走行させなければならない。
【0034】
[カメラ61〜64]
カメラ61〜64は、被写体を撮影して映像データを生成する。換言すれば、カメラ61〜64は、映像(動画像)を示す映像データを生成する。カメラ61〜64は、俯瞰画像を生成するために用いる広角(例えば、80°〜240°)のカメラである必要はなく、標準的な画角(例えば、25°〜50°)のカメラであってもよい。カメラ61〜64は、
図1〜
図3に示されるように、ラフテレーンクレーン10の各部に取り付けられて、互いに異なる向きに向けられている。なお、カメラ61〜64の位置及び向きを明らかにするために、
図1〜
図3にはカメラ61〜64を大きく図示しているが、小型のカメラが望ましい。
【0035】
カメラ61は、下部走行体20の前端で且つ下部走行体20の右端に取り付けられている。カメラ61の取付位置は、少なくとも下部走行体20の左右方向の中央より右方に偏っていればよい。また、カメラ61は、
図3に示されるように、最も倒伏した伸縮ブーム32より下方に取り付けられている。本実施形態に係るカメラ61は、右側のサイドミラーに取り付けられているが、フロントバンパー或いは右側のアウトリガ23等に取り付けられてもよい。そして、カメラ61は、下部走行体20の左方に向けられている。すなわち、カメラ61は、下部走行体20の手前下部と、伸縮ブーム32の下から下部走行体20の左前方とを、右方側から左方側に向けて撮影している。カメラ61は第3カメラの一例であり、カメラ61が撮影する映像は第3映像の一例である。
【0036】
カメラ62は、下部走行体20の前端で且つ下部走行体20の左端に取り付けられている。本実施形態に係るカメラ62は、左側のサイドミラーに取り付けられているが、フロントバンパー、左側のアウトリガ23、或いは下部走行体20の左側面等に取り付けられてもよい。カメラ62の設置位置は、下部走行体20の前端に限定されず、少なくともキャビン40より前方に取り付けられていればよい。カメラ62は、下部走行体20の後方に向けられている。すなわち、カメラ62は、下部走行体20の左側方を、前方側から後方側に向けて撮影している。カメラ62は、第1カメラの一例であり、カメラ62が撮影する映像は第1映像の一例である。
【0037】
カメラ63は、下部走行体20の後端で且つ下部走行体20の左端に取り付けられている。本実施形態に係るカメラ63は、左側のアウトリガ24に取り付けられているが、リアバンパー或いは下部走行体20の左側面等に取り付けられてもよい。カメラ63の設置位置は、下部走行体20の後端に限定されず、少なくともキャビン40より後方に取り付けられていればよい。カメラ63は、下部走行体20の前方に向けられている。すなわち、カメラ63は、下部走行体20の左側方を、後方側から前方側に向けて撮影している。カメラ63は、第2カメラの一例であり、カメラ63が撮影する映像は第2映像の一例である。
【0038】
カメラ62、63は、下部走行体20の左側方を互いに反対側から撮影している。換言すれば、カメラ62、63は、互いに向かう合うように配置されている。さらに、カメラ62、63は、撮影範囲の一部が重複するように配置されている。より詳細には、下部走行体20の左側方で且つカメラ62、63の設置位置の間の領域は、カメラ62、63の両方によって撮影される。換言すれば、下部走行体20の左側方で且つ前後方向におけるキャビン40の位置を含む領域は、カメラ62、63の両方によって撮影される。
【0039】
カメラ64は、下部走行体20の後端に取り付けられている。カメラ64は、例えば、カウンタウェイト(図示省略)を支持するウェイト支持部に取り付けられていてもよい。カメラ64は、左右方向における下部走行体20の中央に取り付けられているのが望ましい。また、カメラ64は、下部走行体20に代えて、上部旋回体30の後端に取り付けられていてもよい。カメラ64は、下部走行体20の後方に向けられている。すなわち、カメラ63は、下部走行体20の後方を、前方側から後方側に向けて撮影している。カメラ64は、第4カメラの一例であり、カメラ64が撮影する映像は第4映像の一例である。
【0040】
[制御部50]
ラフテレーンクレーン10は、
図5に示されるように、制御部50と、記憶部51とを備える。制御部50は、ラフテレーンクレーン10の動作を制御する。制御部50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)によって実現されてもよいし、ハードウェア回路によって実現されてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。記憶部51は、CPUによって実行されるプログラム、及びプログラムの実行中に一時記憶される各種情報を記憶する。
【0041】
制御部50は、第1操作部42及び第2操作部43から出力される操作信号を取得する。また、制御部50は、カメラ61〜64から出力される映像データを取得する。さらに、制御部50は、上部旋回体30の旋回角度を検出する旋回角センサ(図示省略)、伸縮ブーム32の起伏角度を検出する起伏角センサ(図示省略)、伸縮ブーム32の伸縮長さを検出する長さセンサ、及びウインチ74によるワイヤ38の操出長さを検出するワイヤセンサから出力される検出信号を取得する。
【0042】
また、本実施形態に係る旋回モータ71、起伏シリンダ72、伸縮シリンダ73、及びウインチ74は、油圧式のアクチュエータである。すなわち、制御部50は、第2操作部43から出力される操作信号に従って、供給する作動油の方向及び流量を制御することによって、各アクチュエータを動作させる。但し、本発明のアクチュエータは油圧式に限定されず、電動式等であってもよい。そして、制御部50は、上部旋回体30の旋回角度、伸縮ブーム32の起伏角度、伸縮ブーム32の伸縮長さ、及びワイヤ38の操出長さを、各種センサから取得した検出信号に基づいて把握する。また図示は省略するが、制御部50は、第1操作部42から出力される操作信号に従って、前輪21の舵角を変更し、エンジンの回転数を制御し、ブレーキ(図示省略)を作動させる。
【0043】
さらに、制御部50は、ディスプレイ44に情報を表示させる。一例として、制御部50は、アウトリガ23、24が張出状態のときに、各種センサの検出信号で示される上部旋回体30の旋回角度、伸縮ブーム32の起伏角度、伸縮ブーム32の伸縮長さ、及びワイヤ38の操出長さを、ディスプレイ44に表示させる。他の例として、制御部50は、アウトリガ23、24が格納状態のときに、
図7或いは
図9に示されるように、カメラ61〜64が撮影した映像をディスプレイ44に表示させる。
【0044】
より詳細には、ディスプレイ44は、第3領域の一例である右上領域44Aと、第2領域の一例である左上領域44Bと、第1領域の一例である左下領域44Cと、第4領域の一例である右下領域44Dとに仮想的に分割される。右上領域44A及び右下領域44Dは上下方向に隣接し、左上領域44B及び左下領域44Cは上下方向に隣接し、右上領域44A及び左上領域44Bは左右方向に隣接し、左下領域44C及び右下領域44Dは左右方向に隣接する。そして、制御部50は、カメラ61が撮影した映像を右上領域44Aに、カメラ63が撮影した映像を左上領域44Bに、カメラ62が撮影した映像を左下領域44Cに、カメラ64が撮影した映像を右下領域44Dに表示させる。
【0045】
図6は、前進走行中のラフテレーンクレーン10が交差点に進入する状態を示す平面図である。
図6のラフテレーンクレーン10の周囲には、左前方の横断歩道を渡ろうとする人81と、左側を併走する自転車82とが存在している。しかしながら、
図6のラフテレーンクレーン10のキャビン40に搭乗するオペレータは、伸縮ブーム32が邪魔になって、人81及び自転車82を視認することができない。
【0046】
図7は、
図6に示されるラフテレーンクレーン10のディスプレイ44に表示される映像である。すなわち、右上領域44Aには、カメラ61が人81を右方から撮影した映像が表示される。また、左上領域44Bには、カメラ63が自転車82を後方から撮影した映像が表示される。さらに、左下領域44Cには、カメラ62が自転車82を前方から撮影した映像が表示される。さらに図示は省略するが、前後方向における自転車82及びラフテレーンクレーン10の相対位置が変化すると、左上領域44B及び左下領域44Cの表示内容は、以下のように変化する。
【0047】
まず、カメラ63より後方の位置Aにいる自転車82は、カメラ62、63のうちのカメラ62のみに撮影されて、左上領域44B及び左下領域44Cのうちの左下領域44Cのみに表示される。また、カメラ62、63の間にいる自転車82は、カメラ62、63の両方に撮影されて、左上領域44B及び左下領域44Cの両方に表示される。そして、カメラ63より前方の位置Bにいる自転車82は、カメラ62、63のうちのカメラ63のみに撮影されて、左上領域44B及び左下領域44Cのうちの左上領域44Bのみに表示される。
【0048】
一例として、自転車82がラフテレーンクレーン10を追い越す場合、キャビン40内のオペレータには、ディスプレイ44の下から上(すなわち、左下領域44Cから左上領域44B)に自転車82が移動するように見える。他の例として、ラフテレーンクレーン10が自転車82を追い越す場合、キャビン40内のオペレータには、ディスプレイ44の上から下(すなわち、左上領域44Bから左下領域44C)に自転車82が移動するように見える。
【0049】
また
図8は、ラフテレーンクレーン10が後進して駐車スペース90に進入する状態を示す平面図である。
図8のラフテレーンクレーン10の周囲には、駐車スペース90の左側に駐車している自動車91と、駐車スペース90の右側に駐車している自動車92とが存在している。
図8のラフテレーンクレーン10のキャビン40に搭乗するオペレータは、伸縮ブーム32が邪魔になって自動車91を視認することができず、右後ろを振り向かなければ自動車92を視認することができない。
【0050】
図9は、
図8に示されるラフテレーンクレーン10のディスプレイ44に表示される映像である。すなわち、左下領域44Cには、カメラ62が自動車91を前方から撮影した映像が表示される。また、右下領域44Dには、カメラ64が駐車スペース90及び自動車91、92を前方から撮影した映像が表示される。一方、
図9では、右上領域44A及び左上領域44Bに表示される映像の図示を省略している。
【0051】
[実施形態の作用効果]
上記の実施形態によれば、下部走行体20の手前下部及び下部走行体20の左前方がカメラ61で撮影され、下部走行体20の左側方が互いに向かい合ったカメラ62、63で撮影され、撮影された映像がキャビン40内のディスプレイ44に表示される。これにより、キャビン40に搭乗するオペレータは、キャビン40から死角になる下部走行体20の手前下部、左前方、及び左側方の状況を確認しながら、ラフテレーンクレーン10を走行させることができる。
【0052】
また、上記の実施形態によれば、撮影範囲の少なくとも一部が重複するようにカメラ62、63を配置するので、下部走行体20の左側方の死角をさらに少なくすることができる。そして、ディスプレイ44上において、カメラ62、63が撮影した映像を上下に並べて表示させるので、ラフテレーンクレーン10及び自転車82の相対位置の現実の変化に近い態様で、2つのカメラ62、63が撮影した映像がディスプレイ44に表示される。これにより、キャビン40に搭乗するオペレータは、下部走行体20の左側方の状況を、さらに適切に把握することができる。
【0053】
また、ディスプレイ44は、キャビン40の左右方向の中央より左方に偏った位置に配置される。これにより、キャビン40に搭乗するオペレータは、カメラ61〜63が撮影した下部走行体20の左側方の映像を見るために、視線を左に移動させることになる。すなわち、オペレータは、下部走行体20の左側方を直接見る時と同じような視線の動きで、下部走行体20の左側方の状況をディスプレイ44を通じて確認することができる。
【0054】
また、下部走行体20の後方がカメラ64で撮影され、撮影された映像がカメラ61〜63の映像と共にディスプレイ44に表示される。これにより、キャビン40に搭乗するオペレータは、後を振り返ったり、サイドミラーに視線を移動させたりしなくても、下部走行体20の後方の状況をさらに確認することができる。
【0055】
また、上記の実施形態によれば、4つのカメラ61〜64が撮影した4つの映像を合成及び加工することなく、ディスプレイ44の4つの領域44A〜44Dに別々に表示させる。これにより、複数の映像を合成及び加工して得られる所謂「俯瞰映像」等と比較して、映像間の継ぎ目が削減される共に、映像の歪みが低減される。但し、映像の表示方法は前述の例に限定されず、複数の映像を合成及び加工してディスプレイ44に表示させてもよい。
【0056】
[変形例]
図10は、変形例に係るラフテレーンクレーン10Bの左側面図である。以下、前述の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例に係るラフテレーンクレーン10Bは、カメラ61に代えて、カメラ65を備える。カメラ65は第3カメラの一例であり、カメラ65が撮影した映像は第3映像の一例である。
【0057】
カメラ65は、伸縮ブーム32の先端に取り付けられている。すなわち、走行姿勢のラフテレーンクレーン10Bにおいて、カメラ65は、下部走行体20の前端より前方に配置され、左右方向における下部走行体20の中央に配置される。また、カメラ65は、下部走行体20の後方で且つ下方に向けられている。すなわち、カメラ65は、下部走行体20の直ぐ前を、前上方から後下方に向けて撮影する。さらに、制御部50は、カメラ65が撮影した映像をディスプレイ44の右上領域44Aに表示させる。
【0058】
上記の変形例によれば、下部走行体20の手前下部がカメラ65で撮影され、撮影された映像がキャビン40内のディスプレイ44に表示される。これにより、キャビン40に搭乗するオペレータは、キャビン40から死角になる下部走行体20の手前下部の状況を確認しながら、ラフテレーンクレーン10を走行させることができる。
【0059】
また、上記の実施形態及び変形例では、伸縮ブーム32の右隣にキャビン40が配置されている例を説明した。しかしながら、伸縮ブーム32及びキャビン40の位置関係は前述の例に限定されない。すなわち、キャビン40は、伸縮ブーム32の左隣に位置していてもよい。この場合、カメラ61は、下部走行体20の前端で且つ左右方向の左方に偏った位置に、右方を向けて配置される。また、カメラ62、63は、下部走行体20の右端に配置される。すなわち、左右方向の「一方」は、右方を指してもよいし、左方を指してもよい。左右方向の「他方」についても同様である。
【0060】
また、上記の実施形態及び変形例では、ラフテレーンクレーン10、10Bに4つのカメラを設置した例を説明したが、カメラの一部は省略されてもよい。さらに、上記の実施形態及び変形例では、ディスプレイ44に4つの映像を纏めて表示させる例を説明したが、映像の表示方法はこれに限定されない。
【0061】
一例として、制御部50は、切替ボタン(図示省略)の押下を受け付けたことに応じて、ディスプレイ44に表示させる映像を切り替えてもよい。他の例として、制御部50は、下部走行体20の進行方向に応じて、ディスプレイ44に表示させる映像を切り替えてもよい。より詳細には、制御部50は、下部走行体20が前進している時に、カメラ61〜63、65が撮影した映像を表示させ、下部走行体20が後進している時に、カメラ62、64が撮影した映像を表示させてもよい。