(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1表面とは反対側となる前記板体の第2表面に設けられ、前記第2表面の中心領域から外縁部に向けて延びる直線に交差する内面を有する第3壁部を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流体分散器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は、例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素については、図示を省略する。さらに、以下の各図では、流体分散器において、多数の孔が形成されている板体の表面と平行にXY平面を取り、XY平面に対して垂直となる孔の貫通方向にZ方向を取る。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る流体分散装置120の一部の構成を示す斜視図である。本発明の流体分散装置は、例えば、反応装置や熱交換器などの熱処理装置や、圧力容器に採用され得る装置であり、流入した流体を、下流側に設置されている複数の流路などに向けて分散させる。本実施形態では、一例として、流体分散装置が反応装置に設置される場合を想定する。ここで、反応装置とは、反応流体と熱媒体との熱交換を利用し、反応体としての反応原料を含んだ気体又は液体の反応流体を加熱又は冷却することで反応体の反応を進行させて、所望の生成物を得る装置をいう。
【0014】
反応装置100は、本体部としての熱交換部110と、流体を熱交換部110に導入する流体導入部としての流体分散装置120とを含む。なお、流体分散装置120に流入される流体は、反応装置100の構成により、反応流体となる場合も熱媒体となる場合もあるが、ここでは、反応流体であるものとする。
【0015】
熱交換部110は、反応流体に含まれる原料ガスから生成物を生成する。熱交換部110は、複数の第1伝熱体と、複数の第2伝熱体とを含む。第1伝熱体及び第2伝熱体は、それぞれ、耐熱性の高い熱伝導性素材で形成された平板状部材である。第1伝熱体と第2伝熱体とは、交互に積層されて、全体として直方体状の熱交換部110を形成する。
【0016】
第1伝熱体は、Y方向に一列に並ぶ複数の第1流路を有する。第1流路は、流体分散装置120を通じて導入された反応流体が流通する反応流路となる管内流路である。第1流路の入口側の開口130は、それぞれ、流体分散装置120側の第3空間S3に面した管の先端部の開口に相当する。また、第1流路の出口側の開口は、不図示であるが、熱交換部110の別位置に設けられており、生成された生成物等を熱交換部110の外部へ排出する。
【0017】
第2伝熱体は、Y方向に一列に並ぶ複数の第2流路を有する。第2流路は、熱媒体が流通する熱媒体流路となる管内流路である。第2流路の入口側の開口は、不図示であるが、それぞれ、流体分散装置120とはZ方向で反対側に面するように設けられており、流体分散装置120の筒状部140と類似形状の熱媒体導入部を通じて熱媒体を導入する。また、第2流路の出口側の開口は、不図示であるが、熱交換部110の別位置に設けられており、第2流路を通過し終えた熱媒体を熱交換部110の外部へ排出する。
【0018】
熱交換部110は、このように、第1流路内の反応流体と第2流路内の熱媒体とが互いに反対方向に流れる対向流型の構造を有する。そして、第1流路では、第2流路を流通する熱媒体から供給された熱を受容して原料ガスが反応し、生成物が生成される。
【0019】
流体分散装置120は、筒状部140と、それぞれ筒状部140の内部に設置される、本発明の一実施形態に係る流体分散器10と、多孔板150とを有する。
【0020】
筒状部140は、互いにZ方向で対向する2つの開口を有し、その内部空間を反応流体の流路とする部材である。特に、一方の開口が、反応流体を導入する第1開口部140aであり、他方の開口が、熱交換部110に向けて反応流体を導出する第2開口部140bである。Z方向に沿った軸を中心軸とすると、中心軸に対して垂直となるXY平面で切った筒状部140の断面形状は環状となる。ただし、筒状部140の内径である流路径は、上流側から下流側に進むにつれて徐々に大きくなる。特に、第1開口部140aにおける流路径が最小であり、第2開口部140bにおける流路径が最大である。すなわち、筒状部140は、下流側の流路径が上流側の流路径よりも大きい内曲面140cを有する。
【0021】
第1開口部140aは、不図示であるが、反応装置100の外部に設置されている反応流体供給部に供給配管を介して接続されている。したがって、第1開口部140aの内径は、供給配管の管径におおよそ合わせて設定されている。一方、第2開口部140bは、複数の開口130が形成されている熱交換部110の側面をすべて覆う程度の内径を有する。これにより、筒状部140の内部には、熱交換部110の反応流体導入側の側面に面する密閉された空間が形成される。
【0022】
なお、筒状部140は、熱交換部110に対して着脱可能又は開閉可能に設置される。この着脱等により、筒状部140の内部空間に、流体分散器10及び多孔板150を設置することができる。また、熱交換部110の第1流路内には、反応に寄与する触媒体が別途設置される場合があるが、この着脱等により、作業者が第1流路に対する触媒体の挿入や抜き出しを行うことができる。
【0023】
図2は、流体分散器10の構成を示す斜視図である。このうち、
図2(a)は、流体分散器10の反応流体が突き当たる側を見た図である。一方、
図2(b)は、流体分散器10の反応流体が放出される側を見た図である。
【0024】
流体分散器10は、まず、円板状の板体12を有する。板体12は、円形である表裏の主表面を有する。以下、筒状部140の流路内に設置されたときに反応流体が突き当たる側、すなわち、上流側に面する側の主表面を第1表面12aとする。一方、筒状部140の流路内に設置されたときに反応流体が放出される側、すなわち、下流側に面する側の主表面を第2表面12bとする。板体12は、それぞれ、第1表面12aと第2表面12bとで貫通し、上流側から下流側へ反応流体を流通可能とする複数の孔12cを有する。ただし、孔12cは、板体12の主平面全体に形成されてはおらず、特に主平面の中心領域には形成されていない。以下、孔12cが形成されていない板体12の中心領域の部分を第1壁部12dと表記する。
【0025】
また、流体分散器10は、第1表面12aに設けられる第2壁部14を有する。本実施形態では、第2壁部14は、板体12の中心領域を中心基準として設置される環状部材である。第2壁部14は、板体12とは別に製作され、板体12に対して、溶接や接着等により固定され得る。ただし、板体12と第2壁部14とは、予め一体として製作されてもよい。なお、第2壁部14を規定する条件などについては、以下で詳説する。
【0026】
さらに、流体分散器10は、それぞれ、第2表面12bに設けられる第3壁部16及び第4壁部18を有する。本実施形態では、第3壁部16及び第4壁部18は、ともに、板体12の中心領域を中心基準として設置される環状部材である。また、第3壁部16の内径は、第4壁部18の外径よりも大きい。第3壁部16及び第4壁部18も、板体12とは別に製作され、板体12に対して、溶接や接着等により固定されてもよいし、板体12と第3壁部16及び第4壁部18とは、予め一体として製作されてもよい。なお、第3壁部16及び第4壁部18を規定する条件などについては、以下で詳説する。
【0027】
図3は、流体分散器10の構成条件を説明するための平面図である。このうち、
図3(a)は、流体分散器10の第1表面12a側を見た図である。一方、
図3(b)は、流体分散器10の第2表面12b側を見た図である。
【0028】
第2壁部14は、
図3(a)に示すように、第1表面12aの中心領域から外縁部に向けて延びる直線LNに交差する内面14aを有する。例えば、ここでいう中心領域を、第1表面12aの重心点P
0とする。重心点P
0から外縁部に向けて放射状に延びる直線LNは、第2壁部14のいずれかの部分に突き当たる必要がある。本実施形態では、第2壁部14のXY平面で切った断面形状が環状であるから、直線LNが重心点P
0からXY平面内のどの方向の外縁部に向けて延びたとしても、必ず第2壁部14の内面14aに突き当たり、交点P
1で交差することになる。
【0029】
第3壁部16及び第4壁部18についても、
図3(b)に示すように、上記の第2壁部14に関する条件と同様の条件を満たすことが望ましい。例えば、第3壁部16は、板体12の中心領域から外縁部に向けて延びる直線LNに交点P
2で交差する内面16aを有するものとする。同様に、第4壁部18も、板体12の中心領域から外縁部に向けて延びる直線LNに交点P
3で交差する内面18aを有するものとする。
【0030】
図4は、流体分散器10の寸法条件を説明するための側面及び断面図である。板体12について、外径はDであり、厚さはt
0である。板体12に形成されている孔12cの開口径は、それぞれd
0である。第2壁部14について、壁部の厚さはt
1であり、内径はd
1であり、第1表面12aからの高さはL
1である。第3壁部16について、壁部の厚さはt
2であり、内径はd
2であり、第2表面12bからの高さはL
2である。また、第4壁部18について、壁部の厚さはt
3であり、内径はd
3であり、第2表面12bからの高さは、第3壁部16と同様にL
2である。ここで、各壁部の厚さt
1,t
2,t
3については、特に限定するものではないが、多くの孔12cを塞ぐことのないように、孔12cの開口径d
0よりも小さいことが望ましい。なお、これらの定義を用いた流体分散器10の各条件については、流体分散器10及び流体分散装置120の作用と併せて後述する。
【0031】
また、多孔板150は、上流側から下流側へ反応流体を流通可能とする複数の孔150aを有する流体分散板である。特に、多孔板150は、
図1に示すように、筒状部140の流路内において、流体分散器10の板体12と平行となり、かつ、流体分散器10よりも下流側に設置される。多孔板150の外径は、設置される流路内の位置により、筒状部140に接しない程度に、筒状部140の内径と同等とし得る。多孔板150の厚さも、流体分散器10の板体12の厚さt
0と同等とし得る。また、多孔板150に形成されている孔150aの開口径も、流体分散器10の板体12に形成されている孔12cの開口径と同等とし得る。
【0032】
筒状部140の流路内には、流体分散器10と、多孔板150との存在により、3つの空間が形成される。具体的には、第1開口部140aと流体分散器10との間の空間が第1空間S1であり、流体分散器10と多孔板150との間の空間が第2空間S2であり、そして、多孔板150と第2開口部140bとの間の空間が第3空間S3である。
【0033】
次に、本実施形態による作用について、
図1を参照して説明する。
図1では、反応流体Rを流れ方向とともに白抜きの矢印で示している。
【0034】
流体分散器10は、板体12の中央領域にある第1壁部12dが、第1開口部140aの開口に対向するように、予め筒状部140の流路内に設置されている。また、板体12の外径Dは、板体12が筒状部140に接しない程度に、筒状部140の内径と同等に予め設定されている。すなわち、厳密には、板体12の外縁部とそれに近接する筒状部140の内面との間には、隙間が存在している。
【0035】
まず、外部の反応流体供給部から供給された反応流体R1は、第1開口部140aから筒状部140内の第1空間S1へ流入する。流入した反応流体R1は、流体分散器10の第1壁部12dに衝突する。第1壁部12dには孔12cが存在しないので、衝突した反応流体R2は、第1表面12aに沿って放射状に流れる。
【0036】
本実施形態では、第1表面12a上に、第2壁部14が存在する。特に、流体分散器10が第1開口部140aに近い位置に設置されていると、第2壁部14は、第1表面12aから、筒状部140の内曲面140cに向かって突出する形となる。換言すれば、第1表面12aに対して垂直となるZ方向について、第2壁部14の内面14aの延長上に、内曲面140cが存在することになる。したがって、第1表面12aに沿って放射状に流れてきた反応流体R2は、第2壁部14の内面14aに衝突する。内面14aに衝突した反応流体R3は、内曲面140cに向かうように流れ方向を変える。そして、内曲面140cに衝突した反応流体は、2つの流れ方向に分岐する。
【0037】
第1に、内曲面140cに衝突した反応流体の一部は、反応流体R4として、第2壁部14よりも内側の領域で、第1壁部12d側に戻され、再度、第1表面12aに沿って第2壁部14に向かうような、旋回流となる。ここで、第2壁部14よりも内側の領域の圧力が上昇すると、旋回流の一部が、反応流体R5として、第2壁部14よりも内側の板体12に存在する孔12cを通過し、第2空間S2へ流入する。
【0038】
第2に、内曲面140cに衝突した反応流体のその他の一部は、反応流体R6として、内曲面140cに沿って板体12の外縁部側に流れる。そして、外縁部近傍の圧力が上昇すると、反応流体R6の一部が、反応流体R7として、第2壁部14よりも外側の領域に存在する孔12cを通過し、第2空間S2へ流入する。一方、反応流体R6のその他の一部は、反応流体R8として、板体12の外縁部とそれに近接する筒状部140の内面との間の隙間を通過して、第2空間S2へ流入する。
【0039】
このように、流体分散器10を通過する反応流体は、反応流体R5のように、板体12のおおよそ中心領域から分散されるものと、反応流体R7のように、板体12のおおよそ外縁部から分散されるものとに分かれる。すなわち、流体分散器10を通過する反応流体は、板体12の第2表面12bの一部の領域から偏って放出されるのではなく、第2表面12bの比較的全面から放出されることになり、結果として分散性が良好となる。
【0040】
第2空間S2へと流入した反応流体R5,R7,R8は、おおよそ直線状に多孔板150に向かって流れ、それぞれ、多孔板150に形成されている孔150aを通過する。そして、それぞれ孔150aを通過した反応流体R9は、多孔板150により整流されて、多孔板150の全面についておおよそ均一な流速分布となって、熱交換部110にある複数の開口130のそれぞれに対してバランスよく分配される。
【0041】
ここで、本実施形態に対する比較例として、本実施形態に係る流体分散器10を用いない場合の反応流体Rの流れについて説明する。
図6は、比較例としての流体分散装置220の一部の構成を示す斜視図である。なお、
図6は、
図1に対応するように描画されており、ここでも、反応流体Rを流れ方向とともに白抜きの矢印で示している。
【0042】
流体分散装置220は、本実施形態と同様に反応装置200に採用されるものである。特に、流体分散装置220では、流体分散器10に代えて、複数の孔230aが形成されている単なる多孔板230が設置されている点が、本実施形態に係る流体分散装置120と異なる。ここでは、比較を容易とするために、多孔板230が、流体分散器10に含まれる板体12と同等の構成を有するものとする。
【0043】
まず、外部の反応流体供給部から供給された反応流体R1が、多孔板230の表面に衝突し、衝突した反応流体R2が、表面に沿って放射状に流れる点は、本実施形態の場合と同様である。
【0044】
しかし、多孔板230は、本実施形態のような第2壁部14を有しない。そのため、反応流体R2は、多孔板230の表面に沿って多孔板230の外縁部まで流れる。そして、外縁部に到達した反応流体R2は、2つの流れ方向に分岐する。
【0045】
第1に、外縁部に到達した反応流体R2の一部は、反応流体R3として、筒状部140の内曲面140cに沿って第1開口部140a側に戻され、再度、多孔板230の表面に沿って外縁部に向かうような、旋回流となる。結果として、この旋回流は、反応流体R2に合流する。
【0046】
第2に、外縁部に到達した反応流体R2のその他の一部は、反応流体R4として、圧力上昇に伴って、外縁部近傍に存在する孔230aを通過するとともに、外縁部とそれに近接する筒状部140の内面との間の隙間を通過して、第2空間S2へ流入する。
【0047】
このように、多孔板230を通過する反応流体は、そのほとんどが、反応流体R4のように、多孔板230のおおよそ外縁部から分散される。すなわち、多孔板230を通過する反応流体は、板体12の第2表面12bに相当する多孔板230の裏面の一部の領域から偏って放出される。
【0048】
第2空間S2へと流入した反応流体R4は、おおよそ直線状に多孔板150に向かって流れる。そのため、反応流体R9が多孔板150により整流されたとしても、多孔板150の中心領域を含む広い領域にある孔150aを通過した反応流体R9
bよりも、多孔板150の外縁部にある孔150aを通過した反応流体R9
aの方が、流速が速まる。したがって、多孔板150の全面に対する流速分布には偏りが生じることになるため、反応流体R9が、熱交換部110にある複数の開口130のそれぞれに対してバランスよく分配されづらくなる。
【0049】
次に、本実施形態による効果について説明する。
【0050】
まず、本実施形態に係る流体分散器10は、流路内に設置され、上流側に面する第1表面12aの中心領域に第1壁部12dを有し、上流側から下流側へ流体を流通可能とする複数の孔12cを有する板体12を有する。また、流体分散器10は、第1表面12aに設けられ、第1表面12aの中心領域から外縁部に向けて延びる直線LNに交差する内面14aを有する第2壁部14を有する。
【0051】
第1壁部12dに向けて流入してきた流体は、第1表面12aに沿って放射状に流れるが、放射状に流れる流体は、一旦、第2壁部14の内面14aに衝突することになる。これにより、流体分散器10は、通過する流体を、第2壁部14よりも内側にある孔12cを流通するものと、第2壁部14よりも外側にある孔12cを流通するものとに分けて分散させることができる。これに対して、上記例示したように、第2壁部14が存在しない場合には、板体12の主に外縁部から流体を分散させることになり、板体12の表面全体からバランスよく分散させることが難しい。したがって、本実施形態に係る流体分散器10によれば、流体の分散性を向上させることができると言える。
【0052】
また、本実施形態に係る流体分散器10では、第1表面12aに対して平行に切った第2壁部14の断面形状は、第1表面12aの中心領域を中心基準とした環状である。
【0053】
本実施形態に係る流体分散器10によれば、第1に、第2壁部14の断面形状が環状であるので、第1壁部12dに衝突した後に第1表面12aに沿って流れる流体を、第2壁部14の内面14aに確実に衝突させることができる。第2に、第2壁部14を設置するときの基準を第1表面12aの中心領域に合わせるので、第1壁部12dに衝突して第1表面12aに沿って放射状に流れる流体は、放射方向のいずれの方向について、ほぼ同じタイミングで第2壁部14の内面14aに衝突する。したがって、流体分散器10により分散される流体は、放射方向のいずれの方向においても同等の流れとなるので、流体の分散性のバランスを向上させることができる。第3に、第2壁部14の断面形状を環状とすることで、第2壁部14の製作が容易となる。
【0054】
また、本実施形態に係る流体分散器10では、第2壁部14の高さL
1は、板体12に設けられている孔12cの開口径d
0よりも小さい。
【0055】
本実施形態に係る流体分散器10によれば、第1に、第1壁部12dに衝突した後に第1表面12aに沿って流れる流体の流れ方向を、第2壁部14の内面14aで確実に方向転換させることができる。第2に、第2壁部14の高さL
1を孔12cの開口径d
0よりも小さく抑えることで、のちに流体が第2壁部14を越えて第2壁部14の外側に流れようとしたときに、その流体の流れを阻害することを抑えることができる。特に、これらの効果をより好適に奏するためには、第2壁部14の高さL
1は、(0.4×開口径d
0)よりも大きく、かつ、開口径d
0よりも小さいことが望ましい。
【0056】
また、本実施形態に係る流体分散器10は、第1表面12aとは反対側となる板体12の第2表面12bに設けられ、第2表面12bの中心領域から外縁部に向けて延びる直線LNに交差する内面16aを有する第3壁部16を有する。
【0057】
本実施形態に係る流体分散器10によれば、第3壁部16は、孔12cを通過して第2表面12b側から放出される流体の旋回を抑止して、その流体の流れ方向を、下流側の所定の方向に向かうように整流することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る流体分散器10では、第3壁部16の高さL
2は、第2壁部14の高さL
1よりも高い。
【0059】
本実施形態に係る流体分散器10によれば、第3壁部16は、孔12cを通過して第2表面12b側から放出される流体の旋回の抑止と、その流体の整流とを、より確実に、又は、より精度よく行うことができる。特に、この効果をより好適に奏するためには、第3壁部16の高さL
2は、孔12cの(3×開口径d
0)よりも大きく、かつ、(5×開口径d
0)よりも小さいことが望ましい。なお、この高さ範囲は、第4壁部18についても同様である。また、
図4に示す例では、第3壁部16の高さと第4壁部18の高さとを同一のL
2としているが、互いに差があってもよい。
【0060】
また、本実施形態に係る流体分散器10では、第3壁部16の内径d
2は、第2壁部14の内径d
1と同一、又は、第2壁部14の内径d
1よりも大きい。
【0061】
本実施形態に係る流体分散器10によれば、第3壁部16は、特に、第2壁部14よりも内側の領域にある孔12cを通過した流体の整流を行うことができるので、流体分散器10の全体としての整流効率が向上する。
【0062】
また、本実施形態に係る流体分散器10では、第2表面12bに設けられ、第2表面12bの中心領域から外縁部に向けて延びる直線LNに交差する内面18aを有する第4壁部18を有する。そして、第4壁部18の外径は、第2壁部14及び第3壁部16のいずれの内径よりも小さい。
【0063】
本実施形態に係る流体分散器10によれば、流体分散器10は、第2表面12bに、第3壁部16に限らず、第4壁部18のような複数の同様の壁部を設置することで、孔12cを通過した流体の整流を、より確実に、又は、より精度よく行うことができる。特に、第4壁部18の外径は、第2壁部14及び第3壁部16のいずれの内径よりも小さく設定しておくことが望ましい。これにより、第2空間S2へ流入した反応流体R5(
図1参照)の流れのうち、外周側へ移動しようとする流れは、第3壁部16の内面16aに沿って整流され、一方、内周側へ移動しようとする流れは、第4壁部18の外面18bに沿って整流される。したがって、反応流体R5は、おおよそ直線状に多孔板150に向かって流れることになり、多孔板150での整流がより効率的に行われやすくなる。
【0064】
また、本実施形態に係る流体分散装置120は、下流側の流路径が上流側の流路径よりも大きくなる内曲面140cを有する筒状部140と、筒状部140に設置され、流路内に流体を流入させる開口部140aと、流路内に設置される流体分散器10とを有する。流体分散器10の第1壁部12dは、開口部140aの開口に対向する。また、流体分散器10の第2壁部14は、内曲面140cに向けて突出する。
【0065】
本実施形態に係る流体分散装置120によれば、流体の分散性を向上させることができる流体分散器10を用いるので、流体分散装置120から排出される流体の流速分布の均一化や分散バランスの向上に寄与し得る。特に、第1壁部12dが開口部140aの開口に対向し、また、第2壁部14が内曲面140cに向けて突出するように、筒状部140の流路内に流体分散器10を設置することで、より効率よく上記の効果を奏し得る。
【0066】
また、本実施形態に係る流体分散装置120は、上流側から下流側へ流体を流通可能とする複数の孔150aを有する多孔板150を有する。また、多孔板150は、流路内において、流体分散器10の板体12と平行に、かつ、流体分散器10よりも下流側に設置される。
【0067】
本実施形態に係る流体分散装置120によれば、流体分散器10に加えて、その下流側に多孔板150を設置するので、流体分散装置120から排出される流体の流速分布の均一化や分散バランスの向上を、より効果的に実現させることができる。
【0068】
なお、上記説明では、第2壁部14の断面形状が環状、より具体的には円環状であるものとしたが、本発明は、これに限定するものではない。例えば、
図5に示すように、第2壁部14に相当する第5壁部20の断面形状を、円環状ではなく、直線状の内面20aをいくつか組み合わせて環状とした多角形状としてもよい。この場合も、第5壁部20は、第1表面12aの中心領域から外縁部に向けて延びる直線LNに交点P
4で交差する内面20aを有することになるので、流体分散器10は、上記効果を奏し得る。
【0069】
また、第2壁部14の断面形状を説明するに際して、環状と表現したが、これは、必ずしも完全な環状のみを意図したものではない。例えば、上記説明した効果を奏するものであれば、第2壁部14は、所々が分断されているものの連続と見なせる環状であってもよい。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。