(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6988337
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ブレード及びそれを備えたセーバソー
(51)【国際特許分類】
B23D 61/12 20060101AFI20211220BHJP
B23D 49/14 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
B23D61/12 A
B23D49/14
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-190754(P2017-190754)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-63911(P2019-63911A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】海野 眞由美
(72)【発明者】
【氏名】田子 達寛
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−104401(JP,U)
【文献】
特開平03−019807(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0940210(EP,A1)
【文献】
実用新案登録第2595562(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 61/12
B23D 49/14
B27B 19/09
B28D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転運動をプランジャの往復運動に変換する運動変換手段と、
ブレードと、
前記プランジャの先端に取り付けられ前記ブレードを保持するブレード保持手段と、を備え、
前記ブレードは、
長手方向に延び、中心軸に直交する幅方向における一端に刃部を有するブレード本体と、
前記ブレード本体の長手方向における一端に隣接し、前記ブレード保持手段に保持される被保持部と、を備え、
前記被保持部は、
前記幅方向における両端に前記長手方向へ延び前記ブレード保持手段と当接する一対の当接面を有する当接部と、
前記幅方向における他端に位置する幅狭部上面を有し、前記長手方向において前記当接部と前記ブレード本体との間に設けられ、前記当接部よりも前記幅方向における長さが小さい幅狭部と、
前記長手方向及び前記幅方向に直交する左右方向に前記被保持部を貫通する貫通孔と、を有し、
前記ブレード保持手段は、
前記貫通孔に嵌合する突出部と、
前記長手方向における位置が前記当接部と重なる位置から前記ブレード保持手段の前記ブレード本体側端部まで延び、前記長手方向に延びる平坦形状を有する平坦面と、を有し、
前記平坦面は、前記平坦面が前記当接部の前記当接面に対して当接しかつ前記突出部が前記貫通孔に嵌合することで前記ブレード保持手段が前記ブレードを保持した状態において、前記幅狭部上面に対して当接しないことを特徴とするセーバソー。
【請求項2】
前記ブレード本体は、
前記幅方向における長さが一定かつ前記幅狭部よりも大きい中央部と、
前記長手方向における前記一端側で前記中央部及び前記幅狭部と隣接し、前記幅方向における長さが前記幅狭部側から前記中央部側へ徐々に拡大する拡大部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のセーバソー。
【請求項3】
前記幅狭部は、前記幅方向における長さが前記当接部側から前記拡大部側へ一定の割合で減少することを特徴とする請求項2に記載のセーバソー。
【請求項4】
前記一対の当接面は、前記幅方向における一端に位置し前記ブレード保持手段と当接する当接上面と、前記幅方向における他端に位置して前記当接上面と平行に延び前記ブレード保持手段と当接する当接下面とを有し、
前記幅狭部上面は、前記拡大部側が前記当接上面の延長線から離れる方向に延び、
前記幅狭部は、前記幅方向における他端に位置し前記拡大部側が前記当接下面の延長線から離れる方向に延びる幅狭部下面を有し、
前記当接上面及び前記当接下面の垂線に対して前記幅狭部上面および前記幅狭部下面がなす角度は、75度よりも大きく87度よりも小さいことを特徴とする請求項2または3に記載のセーバソー。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記長手方向における位置が前記幅狭部と少なくとも一部重なり、
前記幅狭部上面の前記当接上面側端部と前記貫通孔中心との距離は、前記幅狭部下面の前記当接下面側端部と前記貫通孔中心との距離と等しいことを特徴とする請求項4に記載のセーバソー。
【請求項6】
前記拡大部は、前記幅方向一端に位置する拡大部上面と、前記幅方向他端に位置する拡大部下面とを有し、
前記当接上面及び前記当接下面と平行な基準直線に対して前記拡大部上面および前記拡大部下面がなす角度は、50度よりも大きく75度よりも小さいことを特徴とする請求項4または5に記載のセーバソー。
【請求項7】
前記平坦面は、上壁および下壁を有し、
前記被保持部は、前記当接部のみで前記上壁および前記下壁と当接することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のセーバソー。
【請求項8】
モータと、
前記モータの回転運動をプランジャの往復運動に変換する運動変換手段と、
前記プランジャの先端に取り付けられるブレード保持手段と、を備えたセーバソーに取り付けられるブレードであって、
長手方向に延び、中心軸に直交する幅方向における一端に刃部を有するブレード本体と、
前記ブレード本体の長手方向における一端に隣接し、前記ブレード保持手段に保持される被保持部と、を備え、
前記被保持部は、
前記幅方向における両端に前記長手方向へ延び前記ブレード保持手段と当接する一対の当接面を有する当接部と、
前記幅方向における他端に位置する幅狭部上面を有し、前記長手方向において前記当接部と前記ブレード本体との間に設けられ、前記当接部よりも前記幅方向における長さが小さい幅狭部と、
前記長手方向及び前記幅方向に直交する左右方向に前記被保持部を貫通する貫通孔と、を有し、
前記ブレード保持手段は、
前記貫通孔に嵌合する突出部と、
前記長手方向における位置が前記当接部と重なる位置から前記ブレード保持手段の前記ブレード本体側端部まで延び、前記長手方向に延びる平坦形状を有する平坦面と、を有し、
前記幅狭部上面は、前記当接部の前記当接面が前記平坦面に対して当接しかつ前記貫通孔に前記突出部が嵌合することで前記被保持部が前記ブレード保持手段に保持された状態において、前記平坦面に対して当接しないことを特徴とするブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セーバソーに装着可能なブレード、及び、前記ブレードを備えたセーバソーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータにより駆動される往復動形式の切断工具としてセーバソーがある。セーバソーは、周知の如く、木材、鋼材、パイプ等の被切断材を切断するために用いられ、のこ刃(以下、「ブレード」という)を先端に装着した往復動軸(以下、「プランジャ」という)を往復駆動し、これに取り付けられるブレード保持手段(以下、「ブレードホルダ」という)が保持するブレードによって被切断材を切断する。
【0003】
図7は従来のブレードを示す側面図である。ブレード135は、ブレードホルダ23によって保持される被保持部136と切断刃部1373aを有し、被保持部136には上側と下側の基準面が平行に形成され、その間には丸孔1375が形成される。下側基準面と切断刃部1373aには、切断効率の向上のために、例えば約5度〜6度の角度が設けられる。被保持部136には、丸孔1375が形成され、この丸孔1375は、ブレードホルダ23のブレードホルダ位置決め凸部233に装着する際に用いられる。
【0004】
ブレードホルダ23は平行に延びるブレードホルダ上壁231とブレードホルダ下壁232とを有しており、ブレードホルダ位置決め突部233が丸孔1375に係合した状態において、上壁231と
下壁232とがそれぞれ被保持部136の上面および下面と当接することで、ブレード135はブレードホルダ23に保持される。
【0005】
このようなブレード135は例えば特開2011−131317号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−131317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、被削材の反力で上側へ押し上げられたブレード135は、平行に装着された被保持部136の上面および下面とブレードホルダ23の双壁の間に例えば0.1mmの隙間があるため、丸孔1375を中心に回動しようとする。この時、被保持部136上面がブレードホルダ上壁231のエッジ部231aへ衝突し、被保持部136上面にブレードホルダ上壁231のエッジ部231aの食い込みが発生し、亀裂を生じ、製品の寿命を著しく損ねる結果となる。
【0008】
また、非保持部136の上面がエッジ部231aへ衝突した反動でブレード135は下方へ押し返され、非保持部136下面がブレードホルダ下壁232のエッジ部232aへ衝突し、非保持部136の下面にエッジ部232aの食い込みが発生し、亀裂を生じ、製品の寿命を著しく損ねる結果となる。
【0009】
そこで本発明の目的は、簡単な構成で耐久性が良く、長寿命を可能とするブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、モータと、前記モータの回転運動をプランジャの往復運動に変換する運動変換手段と、ブレードと、前記プランジャの先端に取り付けられ前記ブレードを保持するブレード保持手段と、を備え、前記ブレードは、長手方向に延び、中心軸に直交する幅方向における一端に刃部を有するブレード本体と、前記ブレード本体の長手方向における一端に隣接し、前記ブレード保持手段に保持される被保持部と、を備え、前記被保持部は、前記幅方向における両端に前記長手方向へ延び前記ブレード保持手段と当接する一対の当接面を有する当接部と、
前記幅方向における他端に位置する幅狭部上面を有し、前記長手方向において前記当接部と前記ブレード本体との間に設けられ、前記当接部よりも前記幅方向における長さが小さ
い幅狭部と、
前記長手方向及び前記幅方向に直交する左右方向に前記被保持部を貫通する貫通孔と、を有
し、前記ブレード保持手段は、前記貫通孔に嵌合する突出部と、前記長手方向における位置が前記当接部と重なる位置から前記ブレード保持手段の前記ブレード本体側端部まで延び、前記長手方向に延びる平坦形状を有する平坦面と、を有し、前記平坦面は、前記平坦面が前記当接部の前記当接面に対して当接しかつ前記突出部が前記貫通孔に嵌合することで前記ブレード保持手段が前記ブレードを保持した状態において、前記幅狭部上面に対して当接しないことを特徴とするセーバソーを提供している。
【0011】
前記ブレード本体は、前記幅方向における長さが一定かつ前記幅狭部よりも大きい中央部と、前記長手方向における前記一端側で前記中央部及び前記幅狭部と隣接し、前記幅方向における長さが前記幅狭部側から前記中央部側へ徐々に拡大する拡大部と、を有することが望ましい。
【0012】
前記幅狭部は、前記幅方向における長さが前記当接部側から前記拡大部側へ一定の割合で減少することが望ましい。
【0013】
前記一対の当接面は、前記幅方向における一端に位置し前記ブレード保持手段と当接する当接上面と、前記幅方向における他端に位置して前記当接上面と平行に延び前記ブレード保持手段と当接する当接下面とを有し、前記幅狭部
上面は
、前記拡大部側が前記当接上面の延長線から離れる方向に延
び、前記幅狭部は、前記幅方向における他端に位置し前記拡大部側が前記当接下面の延長線から離れる方向に延びる幅狭部下
面を有し、前記当接上面及び前記当接下面の垂線に対して前記幅狭部上面および前記幅狭部下面がなす角度は、75度よりも大きく87度よりも小さいことが望ましい。
【0014】
前記
貫通孔は
、前記長手方向における位置が前記幅狭部と少なくとも一部重なり
、前記幅狭部上面の前記当接上面側端部と前記貫通孔中心との距離は、前記幅狭部下面の前記当接下面側端部と前記貫通孔中心との距離と等しいことが望ましい。
【0015】
前記拡大部は、前記幅方向一端に位置する拡大部上面と、前記幅方向他端に位置する拡大部下面とを有し、前記当接上面及び前記当接下面と平行な基準直線に対して前記拡大部上面および前記拡大部下面がなす角度は、50度よりも大きく75度よりも小さいことが望ましい。
【0016】
前記平坦面は、上壁および下壁を有し、前記被保持部は、前記当接部のみで前記上壁および前記下壁と当接することが望ましい。
【0017】
また、本発明は、
モータと、前記モータの回転運動をプランジャの往復運動に変換する運動変換手段と、前記プランジャの先端に取り付けられるブレード保持手段と、を備えたセーバソーに取り付けられるブレードであって、長手方向に延び、中心軸に直交する幅方向における一端に刃部を有するブレード本体と、前記ブレード本体の長手方向における一端に隣接し、前記ブレード保持手段に保持される被保持部と、を備え、前記被保持部は、前記幅方向における両端に前記長手方向へ延び前記ブレード保持手段と当接する一対の当接面を有する当接部と、前記幅方向における他端に位置する幅狭部上面を有し、前記長手方向において前記当接部と前記ブレード本体との間に設けられ、前記当接部よりも前記幅方向における長さが小さい幅狭部と、前記長手方向及び前記幅方向に直交する左右方向に前記被保持部を貫通する貫通孔と、を有し、前記ブレード保持手段は、前記貫通孔に嵌合する突出部と、前記長手方向における位置が前記当接部と重なる位置から前記ブレード保持手段の前記ブレード本体側端部まで延び、前記長手方向に延びる平坦形状を有する平坦面と、を有し、前記幅狭部上面は、前記当接部の前記当接面が前記平坦面に対して当接しかつ前記貫通孔に前記突出部が嵌合することで前記被保持部が前記ブレード保持手段に保持された状態において、前記平坦面に対して当接しないことを特徴とするブレードを提供している
。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐久性が良く、長寿命を可能とするブレードを簡単な構成で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るブレードが装着されたセーバソーの断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るブレードの側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るブレードの部分拡大図であり、斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るブレードの部分拡大図であり、側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態の変形例に係るブレードの部分拡大図であり、側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るブレードの寸法関係の最適値範囲を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について
図1乃至
図6を参照しながら説明する。なお、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は
図1に示す方向であるとして説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施態様に係る電動工具であるセーバソーの全体を示す断面図である。電気モータ1は樹脂製のモータハウジング2に内蔵され、モータハウジング2の後方にはハンドル3が接続される。モータハウジング2の前方には動力伝達手段を収容するためのアルミニウム製のギヤカバー6が設けられる。モータ軸7の先端には駆動歯車8が形成される。モータ軸7の回転運動は、運動変換手段によってプランジャ20の往復運動に変換される。運動変換手段は、モータ軸7と直行に設けられたスピンドル9と、スピンドル9に取付けられる従動歯車10と、従動歯車10に取付けられるコネクテイングピース11を含んで構成される。
【0022】
電気モータ1は、減速用の駆動歯車8及び従動歯車10を介してコネクテイングピース11を回転させる。コネクテイングピース11はプランジャ20の凹部(図示せず)に係合し、コネクテイングピース11は回転運動するとともに、プランジャ20と一体に往復運動できるよう設けられる。以上の構成により、減速用の駆動歯車8、従動歯車10、コネクテイングピース11の回転運動がプランジャ20の往復運動に変換されることになる。
【0023】
プランジャ20の前方のブレードホルダ(ブレード保持手段)23には、ブレード35が、ブレードホルダ位置決め凸部233にブレードの丸孔(貫通孔)375を係合されており、この位置決めのためのブレードの丸孔375を中心に微少角度だけ回動可能に、図示しないブレード固定用のボルトによって固定される。
【0024】
図2は、ブレード35の全体側面図である。ブレード35は、長手方向Bに延びるブレード本体37と、ブレード本体37の長手方向Bにおける一端に隣接する被保持部36とを有する。ブレード本体37は2つの対向面を有する板状であり、対向面の垂直方向視における幅方向A一端に切断刃部(刃部)373aを有する。刃部373aは微小なダイヤモンド砥粒が装着されて構成されるが、この構成に限定されるものではなく、複数の鋭利な突部が連続して設けられる鋸刃としてもよい。
【0025】
図3はブレード35の部分拡大図である斜視図であり、
図4はブレード35の部分拡大図である側面図である。被保持部36は、ブレードホルダ23に当接する当接面を有する当接部361を有する。この当接面は、当接部361の幅方向Aにおける上端に位置し、ブレード本体37の長手方向Bに延び、ブレードホルダ上壁231と当接する当接上面361aと、当接部361の幅方向Aにおける下端に位置し、ブレード本体37の長手方向Bに延び、ブレードホルダ下壁232と当接する当接下面361bと、を有する。ブレードホルダ位置決め突部233に丸孔375が係合した状態においては、当接上面361aがブレードホルダ上壁231と当接し、当接下面361bがブレードホルダ下壁232と当接することで、ブレード35は過度ながたつきが抑制された(前述の丸孔375を中心とした微少角度の回動以上の回動が抑制された)状態でブレードホルダ23に固定される。
【0026】
被保持部36は、当接部361のブレード本体37側に隣接し、当接部361よりも幅方向Aにおける長さが小さい幅狭部を有する。幅狭部362は、幅方向Aにおける上端に位置しブレード本体37側が当接上面361aの延長線よりも離れる方向に延びる(傾斜する)幅狭部上面362aと、幅方向Aにおける下端に位置しブレード本体37側が当接下面36abの延長線よりも離れる方向に延びる(傾斜する)幅狭部下面362bとを有する。つまり、幅狭部362は、幅方向Aにおける長さが当接部361側からブレード本体部37側へ徐々に減少するように形成されている。幅狭部上面362aと幅狭部下面362bとはいずれも平面状に形成されており、幅狭部362の幅方向Aにおける長さは、当接部361側からブレード本体37側へ一定の割合で減少する。また、幅狭部上面362aの当接上面361a側端部362cと丸孔375の中心(貫通孔中心)375aとの距離L1と、幅狭部下面362bの当接下面361b側端部362dと中心375aとの距離L2とは、互いに等しい。
【0027】
ブレード35がブレードホルダ23に保持されたとき、前述のとおり、当接上面361aはブレードホルダ上壁231と当接し、当接下面361bがブレードホルダ下壁232と当接するが、幅狭部上面362aはブレードホルダ上壁231と当接せず、幅狭部下面362bはブレードホルダ下壁232と当接しない。言い換えると、幅狭部362が設けられるため、被保持部36は当接上面361aおよび当接下面361bのみでブレードホルダ23と当接し、幅狭部362側に位置するエッジ部231a、232aとは当接することがない。このため、エッジ部231a、232aの被保持部36への食い込みが生じ、亀裂が生じ、製品の寿命を著しく損ねることが抑制できる。また、ブレード35に幅狭部362を設けるだけでよいため、安価な構成で、製品の寿命を損ねることが抑制できる。
【0028】
尚、
図5に示す変形例のように幅狭部上面362aのみを傾斜させて幅狭部を形成することもできるが、
図2乃至4のように幅狭部上面362aと幅狭部下面362bの両者を傾斜させたほうが、エッジ部231aと232aの両者による食い込みを抑制し応力集中を避けることができる点や、幅狭部362に弾性を持たせ負荷を分散させる点で、有利である。
【0029】
ブレード本体37は、幅方向Aにおける長さが一定かつ幅狭部362の幅よりも大きい中央部373と、長手方向Bにおける後端側で中央部373と隣接し、幅方向Aにおける長さが幅狭部362側から中央部373側へ徐々に拡大する拡大部374とを有する。拡大部374は、平面状の拡大部上面374aと拡大部下面374bとからなる。当接上面361aおよび当接下面361bと平行な基準直線361cに対して幅狭部上面362aおよび幅狭部下面362bがなす角度は、基準直線361cに対して拡大部上面374aおよび拡大部下面374bがなす角度よりも小さい。幅狭部上面362aと拡大部下面374aとの接続部、幅狭部下面362bと拡大部下面374bとの接続部はそれぞれ所定の曲率を有するR形状を有している。
【0030】
具体的な寸法関係の最適値範囲を
図6に示す。ブレードホルダ下壁232のエッジ部232aと当接下面361bの端部362dとの間の距離をh、丸孔中心375aとブレードホルダ下壁232のエッジ部232aとの距離をoとするとき、hの値はoの値の1/3倍よりも大きく、oの値よりも小さいとよい。当接下面361bの垂線と幅狭部下面362bとのなす角iは、75度より大きく87度よりも小さいとよい。幅方向Aにおける当接下面361bと幅狭部下面362bとの距離jは、0.5mmよりも大きく、1.0mmよりも小さいとよい。拡大部下面374bと当接下面361bとのなす角eは50度より大きく75度よりも小さいとよい。幅狭部下面362bと拡大部下面374bとの接続部は曲率Rnを有するR形状を有しており、幅狭部下面362bの延長線と拡大部下面374bの延長線との交点から当接下面361bの端部362dまでの距離をdとするとき、Rnの曲率半径はdの1/2より大きく、dより小さいとよい。尚、各パラメータの最適値は、oが5.5mm、ブレード本体の幅が25mmとしたとき、hが4.7mm、iが85度、jが0.7mm、eが60度、Rnが5mmとなる。尚、幅狭部上面362a側も、被保持部36の幅方向中心軸を中心として幅狭部下面362bと線対称形状とするのが最適であり、同様の寸法関係が最適値範囲となる。
【0031】
以上のように本発明によれば、エッジ部231a、232aの被保持部36への食い込みが生じ、亀裂が生じ、製品の寿命を著しく損ねることが抑制できる。また、ブレード35に幅狭部362を設けるだけでよいため、安価な構成で、製品の寿命を損ねることが抑制できる。また、幅狭部362に弾性を持たせ負荷を分散させ、応力集中を避けることができる。具体的には、
図1乃至
図4に記載の構成では、CAE解析により最大応力が45%低減することがわかっている。発明者による比較実験によれば、
図6に記載の従来構成と比較して、
図5に記載の構成では2倍、
図1乃至
図4に記載の構成では4倍の製品寿命(ブレードに亀裂等が生じ、使用不能となるまでの期間)を得ることができた。従来の製品寿命を4倍とするためには、例えば高周波焼入れなどの生産技術による方法も検討されている。この方法によれば長寿命化は可能となるが、加工費の追加により、原価が上昇する。本実施形態を用いれば、焼入れの有無にかかわらず、長寿命化を図ることが可能となり、耐久性が良く、長寿命を可能とする安価なブレード、および当該ブレードを有するセーバソーを提供することが可能となる。
【0032】
本発明によるブレードおよびそれを備えたセーバソーは、上述した実施の形態及び変形例に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 電気モータ、2 モータハウジング、3 ハンドル、6 ギヤカバー、7 モータ軸、8 駆動歯車、9 スピンドル、10 従動歯車、11 コネクティングピース、20 プランジャ、23 ブレードホルダ(ブレード保持手段)、231 ブレードホルダ上壁、231a エッジ部、232 ブレードホルダ下壁、232a エッジ部、233 位置決め突部、135 ブレード、136 被保持部、1373a 切断刃部、1375 丸孔(貫通孔)、35 ブレード、36 被保持部、361 当接部、361a 当接上面、361b 当接下面、361c 基準直線、362 幅狭部、362a 幅狭部上面、362b 幅狭部下面、362c、362d 端部、37 ブレード本体、373 中央部、373a 切断刃部、374 拡大部、374a 拡大部上面、374b 拡大部下面、375 丸孔(貫通孔)、375a 丸孔中心(貫通孔中心)、38 ブレード先端部、A 幅方向、B 長手方向