(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血液を流動させる血液ポンプと、超音波を送受する送受波器を有し、該送受波器の送受波面が平面で構成され、血液の流量を測定するための超音波流量計と、を備える体外循環装置に用いられ、血液浄化器と接続され前記血液ポンプが配置されて血液を循環させる血液回路であって、
主チューブと、
前記送受波面と接触するチューブ平面部を有し、流量の測定に用いられ、前記主チューブよりも柔軟性を有する軟質樹脂で構成される測定用チューブと、を含み、
前記測定用チューブに前記送受波器が取り付けられる血液回路。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の血液回路、超音波流量計、及びこれらを備える体外循環装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明では体外循環装置の一例として、腎不全患者や薬物中毒患者の血液を浄化すると共に、血液中の余分な水分を除去し、必要に応じて血液中に水分を補充する血液透析を行う血液透析装置について説明する。
【0020】
また、本実施形態の血液透析装置は、プライミング工程、脱血工程、透析工程、返血工程等の各工程を、血液回路内の透析液の流れを制御することで連続して自動的に行う自動血液透析装置である。
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態の血液透析装置100Aの全体構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における血液透析装置100Aの概略構成を示す図であり、
図2は、血液透析装置100Aを示すブロック図、及び血液回路における超音波流量計の取り付け部分の説明図を示す。
【0022】
図1及び
図2に示すように、血液透析装置100Aは、血液を流すための血液回路110と、血液ポンプ111aと、血液浄化器120と、透析液回路130と、除水/逆ろ過ポンプP1と、超音波流量計140Aと、制御装置150と、を備える。
【0023】
血液回路110は、動脈側ライン111と、静脈側ライン112と、薬剤ライン113と、排液ライン114と、を有する。また、血液回路110を構成する動脈側ライン111、静脈側ライン112、薬剤ライン113、及び排液ライン114は、主チューブ110mと、測定用チューブ110sと、を含んで構成される(
図2参照)。主チューブ110m及び測定用チューブ110sの構成については、後に詳述する。
【0024】
動脈側ライン111は、一端側が後述する血液浄化器120の血液導入口122aに接続される。動脈側ライン111には、血液ポンプ111a、動脈側気泡検知器111b、動脈側接続部111c、及び、後述する超音波流量計140Aが備える一対の送受波器141A及び141Bが配置される。
血液ポンプ111aは、動脈側ライン111を構成するチューブをローラーでしごくことにより、動脈側ライン111の内部の血液やプライミング液等の液体を送出する。
動脈側接続部111cは、動脈側ライン111の他端側に配置される。動脈側接続部111cには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
【0025】
静脈側ライン112は、一端側が後述する血液浄化器120の血液導出口122bに接続される。静脈側ライン112には、ドリップチャンバ112a、静脈側気泡検知器112b、静脈側クランプ112c、及び静脈側接続部112dが配置される。
ドリップチャンバ112aは、静脈側ライン112に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、一定量の血液を貯留する。
静脈側気泡検知器112bは、ドリップチャンバ112aよりも下流側に配置され、チューブ内の気泡の有無を検出する。
静脈側クランプ112cは、静脈側気泡検知器112bよりも下流側に配置される。静脈側クランプ112cは、静脈側気泡検知器112bによる気泡の検出結果に応じて制御され、静脈側ライン112の流路を開閉する。
静脈側接続部112dは、静脈側ラインの他端側に配置される。静脈側接続部112dには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
【0026】
薬剤ライン113は、血液透析中に必要な薬剤を動脈側ライン111に供給する。薬剤ライン113は、一端側が薬剤を送り出す薬注装置113aに接続され、他端側が動脈側ライン111に接続される。また、薬剤ライン113には不図示のクランプ手段が設けられており、薬剤を注入するとき以外は、クランプ手段により流路は閉鎖された状態となっている。
【0027】
排液ライン114は、ドリップチャンバ112aに接続される。排液ライン114には、排液ライン用クランプ114aが配置される。排液ライン114は、プライミング工程でプライミング液を排液するためのラインである。
【0028】
血液浄化器120は、筒状に形成された容器本体121と、この容器本体121の内部に収容された透析膜(図示せず)と、を備える。容器本体121の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画される(いずれも図示せず)。容器本体121には、血液回路110に連通する血液導入口122a及び血液導出口122bと、透析液回路130に連通する透析液導入口123a及び透析液導出口123bと、が形成される。本実施形態では、血液浄化器120としてダイアライザを用いている。
【0029】
以上の血液回路110及び血液浄化器120によれば、対象者(透析患者)の動脈から取り出された血液は、血液ポンプ111aにより動脈側ライン111を流通して血液浄化器120の血液側流路に導入される。血液浄化器120に導入された血液は、透析膜を介して後述する透析液回路130を流通する透析液により浄化される。血液浄化器120において浄化された血液は、静脈側ライン112を流通して対象者の静脈に返血される。
【0030】
透析液回路130は、本実施形態では、いわゆる密閉容量制御方式の透析液回路130により構成される。この透析液回路130は、透析液チャンバ131と、透析液供給ライン132aと、透析液導入ライン133aと、透析液導出ライン133bと、透析液排液ライン132bと、バイパスラインL1と、除水/逆ろ過ポンプP1と、を備える。
【0031】
透析液チャンバ131は、一定容量(例えば、300ml〜500ml)の透析液を収容可能な硬質の容器で構成され、この容器の内部は軟質の隔膜(ダイアフラム)により送液収容部1311a及び排液収容部1311bに区画される。
【0032】
透析液供給ライン132aは、基端側が透析液供給装置(図示せず)に接続され、先端側が透析液チャンバ131に接続される。透析液供給ライン132aは透析液チャンバ131の送液収容部1311aに透析液を供給する。
【0033】
透析液導入ライン133aは、透析液チャンバ131と血液浄化器120の透析液導入口123aとを接続し、透析液チャンバ131の送液収容部1311aに収容された透析液を血液浄化器120の透析液側流路に導入する。
【0034】
透析液導出ライン133bは、血液浄化器120の透析液導出口123bと透析液チャンバ131とを接続し、血液浄化器120から排出された透析液を透析液チャンバ131の排液収容部1311bに導出する。
【0035】
透析液排液ライン132bは、基端側が透析液チャンバ131に接続され、排液収容部1311bに収容された透析液の排液を排出する。
【0036】
バイパスラインL1は、透析液導出ライン133bと透析液排液ライン132bとを接続する。
【0037】
除水/逆ろ過ポンプP1は、バイパスラインL1の中途部に設けられている。除水/逆ろ過ポンプP1は、後述の制御装置150により制御され、バイパスラインL1の内部の透析液を透析液排液ライン132b側に流通させる方向(除水方向)及び透析液導出ライン133b側に流通させる方向(逆ろ過方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。
【0038】
以上の透析液回路130によれば、透析液チャンバ131を構成する硬質の容器の内部を軟質の隔膜(ダイアフラム)により区画することで、透析液チャンバ131からの透析液の導出量(送液収容部1311aへの透析液の供給量)と、透析液チャンバ131(排液収容部1311b)に回収される排液の量と、を同量にできる。
これにより、除水/逆ろ過ポンプP1を停止させた状態では、血液浄化器120に導入される透析液の流量と血液浄化器120から導出される透析液(排液)の量とを同量にできる。
【0039】
また、除水/逆ろ過ポンプP1を逆ろ過方向に送液するように駆動させた場合には、透析液チャンバ131から排出された排液の一部がバイパスラインL1及び透析液導出ライン133bを通って再び透析液チャンバ131に回収される。そのため、血液浄化器120から導出される透析液の量は、透析液チャンバ131に回収される量(即ち、透析液導入ライン133aを流通する透析液の量)から、バイパスラインL1を流通する透析液の量を減じた量となる。これにより、血液浄化器120から導出される透析液の量は、バイパスラインL1を通って再び透析液チャンバ131に回収される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン133aを流通する透析液の流量よりも少なくなる。即ち、除水/逆ろ過ポンプP1を逆ろ過方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液回路110に所定量の透析液が注入(逆ろ過)される。
【0040】
一方、除水/逆ろ過ポンプP1を除水方向に送液するように駆動させた場合には、透析液導出ライン133bを流通する透析液の量は、透析液チャンバ131に回収される透析液の量(即ち、透析液導入ライン133aを流通する透析液の量)に、バイパスラインL1を流通する透析液の量を加えた量となる。これにより、透析液導出ライン133bを流通する透析液の量は、バイパスラインL1を通って透析液排液ライン132bに排出される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン133aを流通する透析液の量よりも多くなる。即ち、除水/逆ろ過ポンプP1を除水方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液から所定量の除水が行われる。
【0041】
超音波流量計140Aは、一対の送受波器141A及び141Bと、流量測定部142と、を備え、両者は配線により接続される。本実施形態では、一対の送受波器141A及び141Bは、動脈側ライン111において、血液ポンプ111aの下流側かつ血液浄化器120よりも上流側であって、薬剤ライン113の接続箇所よりも上流側に取り付けられる。このような場所に配置することで、血液浄化器120による除水の影響や、薬剤ライン113からの薬液の注入による影響を受けずに、血液回路110における流量の測定が可能である。
【0042】
送受波器141A、141Bは、それぞれ圧電素子1411と、圧電素子カバー1412とで構成され、超音波信号を送受可能である。送受波器141A、141Bの超音波の送受波面1413は平面で構成される。
【0043】
ここで、一対の送受波器141A及び141Bが取り付けられる動脈側ライン111(血液回路110)の詳細について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図3は、
図2における測定用チューブ110sのX−X断面図を示す。
【0044】
上述のように、血液回路110を構成する動脈側ライン111、静脈側ライン112、薬剤ライン113、及び排液ライン114は、チューブを主体として構成されている。そして、これら各ラインを構成するチューブとして、主チューブ110m及び測定用チューブ110sが用いられている。
【0045】
主チューブ110mは、血液回路110を構成するチューブのうち、測定用チューブ110s部分を除く大部分に用いられる。主チューブ110mは、液体が流通可能で可撓性を有する軟質のチューブにより構成される。主チューブ110mの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニルが用いられる。
本実施形態では、主チューブ110mとして、外径が6.5mm、内径が4.7mmのポリ塩化ビニル製のチューブが用いられる。また、主チューブ110mの表面には、高温での滅菌処理時においてチューブ同士がくっついてしまうブロッキングを防止するため、一般に梨地処理が施される。
【0046】
測定用チューブ110sは、
図2及び
図3に示すように、一対のチューブ平面部1101を備え、血液回路110において超音波流量計140Aが取り付けられる位置に設けられる。測定用チューブ110sは、液体が流通可能で可撓性を有し、主チューブ110mよりも柔軟性を備える軟質のチューブにより構成される。測定用チューブ110sの材質としては、ポリ塩化ビニル等が用いられる。
測定用チューブ110sは、主チューブ110mよりも柔軟性を備えるので、超音波流量計140Aが備える送受波器141A及び141Bの送受波面1413との密着性を上げることができる。
【0047】
測定用チューブ110sの材質としては、超音波の伝搬速度が血液の伝搬速度に近いもの、あるいはそれよりも速いものを用いることが好ましい。これにより、材質の境界部における超音波の屈折を小さくすることができるので、精度よく流量測定を行うことができる。測定用チューブ110sとしては、超音波伝搬速度が1400m/sec以上の材質のものを用いることが好ましく、1500m/sec以上の材質のものを用いることがより好ましい。
【0048】
チューブ平面部1101は、送受波器141A及び141Bの送受波面1413と接触する部分であり(
図2参照)、平面で構成される(
図3参照)。これにより、外壁が曲面で構成される主チューブ110mに比して送受波面1413との密着性を向上させられる。
一対のチューブ平面部1101における外壁間の距離は、例えば、5mm、内壁間の距離は3mmに設定される。また、チューブ平面部1101における外壁と内壁は略平行となるように形成される。これにより、超音波が指向性を保ったまま測定用チューブ110s内部で送受されて効率よく超音波を伝搬させることができる。
測定用チューブ110sの表面には、梨地処理を施さず、鏡面に仕上げることが好ましい。測定用チューブ110sの表面粗さRaは、1.5μm以下であることが好ましく、1.0μmであることがより好ましい。これにより、チューブ平面部1101と送受波面1413とが接触した状態において、測定用チューブ110sの表面の凹凸の存在により空気層が形成されることを防げる。よって、空気層による超音波の減衰を抑制して、伝搬時間の測定誤差を小さくすることができるので、精度よく流量測定を行うことができる。
【0049】
一対の送受波器141A及び141Bは、
図2に示すように、血液回路110を流れる液体の流れ方向に所定の距離をおいて配置され、送受波面1413が測定用チューブ110sのチューブ平面部1101に接触して斜めに対向して取り付けられる。また、一対の送受波器141A及び141Bは、液体(血液)の流れ方向に対して斜めに超音波信号を送受する。
圧電素子1411の両面には、それぞれ不図示の電極が取り付けられており、入力された電気信号を機械的振動に変換し、また、伝達された機械的振動を電気信号に変換して出力することができる。圧電素子1411は、硬質ポリ塩化ビニルや変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネイト、アクリル等の樹脂により形成される圧電素子カバー1412の内部に埋め込まれて配置される。圧電素子の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電セラミックス、酸化亜鉛等の圧電薄膜、フッ化ビニリデン等の圧電高分子膜等が適用可能である。本実施形態では、圧電素子の材料として、チタン酸ジルコン酸鉛を用い、電極として銀と白金を用いた。
【0050】
流量測定部142は、送信部1421と、受信部1422と、送受信切替部1423と、流量算出部1424と、を備え、後述の制御装置150に配置される。流量測定部142は、一対の送受波器141A及び141Bで送受される超音波信号に基づいて、液体の流量を測定可能である。
【0051】
送信部1421は、送受信切替部1423を介して送受波器141A又は141Bの圧電素子1411に接続され超音波信号を送信する。
受信部1422は、送受信切替部1423を介して送受波器10A又は10Bの圧電素子1411に接続され超音波信号を受信し、受信した超音波信号を増幅する。
送受信切替部1423は、送受波器141A及び141Bの一方を送信部1421に、他方を受信部1422に切り替える。これにより、送受信切替部1423は、送受波器141Aから超音波信号を送信して送受波器141Bで受信する時の伝搬時間と、送受波器141Bから超音波信号を送信して送受波器141Aで受信する時の伝搬時間とを測定可能としている。
流量算出部1424は、送受波器141A及び141B間の超音波信号の伝搬時間に基づいて、血液回路110(測定用チューブ110s)を流れる液体の流量を算出する。流量の算出方法については、後に詳述する。
【0052】
制御装置150は、情報処理装置(コンピュータ)により構成されており、ポンプ動作部151と、クランプ動作部152と、流量測定部142と、を備える。
【0053】
ポンプ動作部151は、血液回路110及び透析液回路130に配置された各種ポンプの動作を制御する。
【0054】
クランプ動作部152は、各種ポンプの動作や気泡検知器による気泡の検知結果に応じて、血液回路110及び透析液回路130に配置された各種クランプの動作を制御する。
【0055】
以上、説明した制御装置150は、以下に説明する各工程の制御プログラムを実行することにより、血液透析装置100Aの動作を制御して運転する。
各工程とは、血液回路110や血液浄化器120を洗浄し清浄化する準備工程であるプライミング工程、穿刺後に患者の血液を血液回路110に充填させて体外循環させる脱血工程、脱血工程に続いて行われ血液を透析して浄化する透析工程、血液回路110内の血液を患者の体内に戻す返血工程等である。
【0056】
本実施形態では、上述の制御装置150、除水/逆ろ過ポンプP1、薬注装置113a、超音波流量計140A及び血液ポンプ111aは、所定の配置で一体化され、コンソール(装置本体)160を構成している。
【0057】
次に、流量算出部1424における具体的な流量の算出方法について説明する。超音波を用いた流量の算出方法には、ドップラー法、伝搬時間差法等、様々な方法があるが、本実施形態では、一例として伝搬時間逆数差法を用いて以下のように流量Qを算出する。送受波器141A及び141Bは、液体の流れ方向に対して斜めに超音波信号を送受する。具体的には、超音波信号を送受する方向と液体の流れ方向とがなす角が所定の角度φとなるように測定用チューブ110sの外側に対向して配置され、交互に超音波信号を送受し、超音波信号の伝搬に要する時間を測定する(
図2参照)。
【0058】
送受波器141Aから141Bへ超音波が伝搬する時間をT
AB、送受波器141Bから141Aへ超音波が伝搬する時間をT
BA、超音波の伝搬する距離をL、音速をC、測定用チューブ110s内の液体の流速をVとする。
測定用チューブ110s内に液体が満たされた状態で、実流量がゼロ、即ち流速Vがゼロの場合、T
ABとT
BAとは等しく、
T
AB=T
BA=L/C ・・・(a)
となる。
【0059】
図2に示すように液体が流速Vで送受波器141A側から送受波器141B側へ向かって流れる場合、
T
AB=L/(C+Vcosθ) ・・・(b)
となり、
T
BA=L/(C−Vcosθ) ・・・(c)
となる。これら(b)及び(c)式の関係からそれぞれの伝搬時間T
AB、T
BAの逆数の差を取ると、
1/T
AB−1/T
BA=(2Vcosθ)/L ・・・(d)
となる。(d)式から流速Vを求めると、
V=L/(2cosθ)×(1/T
AB−1/T
BA) ・・・(e)
となる。(e)式によれば、超音波の伝搬時間を測定することにより、流速Vが算出できる。
【0060】
以上説明した第1実施形態の血液回路110及び超音波流量計140Aを備える血液透析装置100Aによれば、以下のような効果を奏する。
【0061】
(1)血液回路110を、主チューブ110mと、送受波面1413と接触するチューブ平面部1101を有し、流量の測定に用いられる測定用チューブ110sと、を含んで構成し、測定用チューブ110sに送受波器141A、141Bが取り付けられるものとした。これにより、測定用チューブ110sのチューブ平面部1101と送受波器141A、141Bの送受波面1413との密着性を向上させることができるので、超音波を効率よく伝搬させることができ、流量の測定精度を上げることができる。
【0062】
(2)測定用チューブ110sを、主チューブ110mよりも柔軟性を有する軟質樹脂で構成した。これにより、測定用チューブ110sの送受波面1413との密着性をより向上させることができるので、超音波を効率よく伝搬させることができ、流量の測定精度を上げることができる。また、測定用チューブ110s部分のみの柔軟性を高めているので、血液回路110としての取り扱い性能を低下させない。
【0063】
(3)測定用チューブ110sを、超音波伝搬速度が1400m/sec以上の材質のものにより構成した。これにより、超音波がチューブ壁を伝搬する時間を短くして伝搬時間の測定誤差を小さくすることができるので、精度よく流量測定を行うことができる。
【0064】
(4)測定用チューブ110sを、表面粗さがRa1.5μm以下であるものとした。これにより、チューブ平面部1101と送受波面1413とが接触した状態において、測定用チューブ110sの表面の凹凸の存在により空気層が形成されることを防げる。よって、空気層による超音波の減衰を抑制して、伝搬時間の測定誤差を小さくすることができるので、精度よく流量測定を行うことができる。
【0065】
(5)一対の送受波器141A及び141Bを、血液回路110(測定用チューブ110s)における血液の流れ方向に所定の距離をおいて配置し、血液の流れ方向に対して斜めに超音波信号を送受するものとした。これにより、伝搬時間逆差法を用いて、流量を算出することができる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、超音波流量計の構成が異なる点以外は、第1実施形態の構成と同様であるので、同様の符号を付して説明を省略する。
【0067】
第2実施形態における超音波流量計140Bの取り付け部分の構成について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、血液回路110における超音波流量計140Bの取り付け部分の説明図であり、
図5は、
図4におけるY−Y断面図を示す。
【0068】
第2実施形態では、超音波流量計140Bは、
図4に示すように、一対の送受波器141A及び141Bと、流量測定部142と、回路装着部143と、を備え、送受波器141A、141Bと流量測定部142とは配線(不図示)により接続される。本実施形態においても第1実施形態と同様に、一対の送受波器141A及び141Bは、動脈側ライン111において、血液ポンプ111aの下流側かつ血液浄化器120よりも上流側であって、薬剤ライン113の接続箇所よりも上流側に取り付けられる。このような場所に配置することで、血液浄化器120による除水の影響や、薬剤ライン113からの薬液の注入による影響を受けずに、血液回路110における流量の測定が可能である。
【0069】
回路装着部143は、測定用チューブ110sを装着可能な幅の溝が形成されたブロック状に構成される。回路装着部143の溝を構成する一対の側面は、平行に配置され、対向して配置される一対のセンサ平面部1431A,1431Bを構成する。
一対のセンサ平面部1431A及び1431Bは、測定用チューブ110sをチューブ平面部1101で挟持可能に対向して配置される。また、
図5に示すように、送受波器141A及び141Bは、送受波面1413がセンサ平面部1431A、1431Bと面一になるよう、回路装着部143にそれぞれ固定して配置される。
測定用チューブ110sは、チューブ平面部1101とセンサ平面部1431A及び1431Bとが接触するように回路装着部143に装着される。
【0070】
以上、説明した回路装着部143によれば、血液回路110を構成する測定用チューブ110sを、回路装着部143に装着するだけで、チューブ平面部1101とセンサ平面部1431A、1431Bとが密着した状態で固定される。また、回路装着部143に送受波器141A、141Bが固定して配置されるので、送受波器141A、141B間の距離を一定に保つことができ、流量の測定精度を向上させることができる。
【0071】
以上説明した第2実施形態の血液回路110及び超音波流量計140Bを備える血液透析装置によれば、上述した効果(1)〜(5)に加え、以下のような効果を奏する。
【0072】
(6)超音波流量計140Bを、測定用チューブ110sを挟持可能に対向して配置される一対のセンサ平面部1431A,1431Bを有する回路装着部143と、これら一対のセンサ平面部1431A,1431Bに配置される一対の送受波器と、を含んで構成した。これにより、血液回路110を構成する測定用チューブ110sを、回路装着部143に装着するだけで、チューブ平面部1101とセンサ平面部1431A、1431Bとを密着した状態で固定できる。また、回路装着部143に送受波器141A、141Bを固定して配置できるので、送受波器141A、141B間の距離を一定に保つことができ、流量の測定精度を向上させることができる。
【0073】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、血液回路及び超音波流量計の構成が異なる点以外は、第2実施形態の構成と同様であるので、同様の符号を付して説明を省略する。
【0074】
第3実施形態における超音波流量計140Cの取り付け部分構成について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、血液回路110Cにおける超音波流量計140Cの取り付け部分の説明図であり、
図7は、
図6におけるZ−Z断面図を示す。
【0075】
第3実施形態では、血液回路110が、測定用チューブ110sを有していない点で第1及び第2実施形態と異なる。
超音波流量計140Cは、
図6に示すように、一対の送受波器141A及び141Bと、流量測定部142と、回路装着部143と、を備え、送受波器141A、141Bと流量測定部142とは配線(不図示)により接続される。本実施形態においても第1実施形態及び第2実施形態と同様に、一対の送受波器141A及び141Bは、動脈側ライン111において、血液ポンプ111aの下流側かつ血液浄化器120よりも上流側であって、薬剤ライン113の接続箇所よりも上流側に取り付けられる。このような場所に配置することで、血液浄化器120による除水の影響や、薬剤ライン113からの薬液の注入による影響を受けずに、血液回路110における流量の測定が可能である。
【0076】
回路装着部143は、主チューブ110mをある程度変形させた状態で装着可能な幅の溝が形成されたブロック状に構成される。回路装着部143の溝を構成する一対の側面は、平行に配置され、対向して配置される一対のセンサ平面部1431A,1431Bを構成する。
一対のセンサ平面部1431A及び1431Bは、主チューブ110mを挟持可能に対向して配置される。また、送受波器141A及び141Bは、
図6に示すように、送受波面1413がセンサ平面部1431A、1431Bと面一になるよう、回路装着部143にそれぞれ固定して配置される。
【0077】
一対のセンサ平面部1431A及び1431Bは、
図7に示すように、センサ平面部1431A、1431B間の距離が、主チューブ110mが回路装着部143に装着された状態において、主チューブ110mのうち一対のセンサ平面部1431A、1431Bと接触する部分全体において、チューブ壁の外壁及び内壁が略平行となるように、回路装着部143に配置される。
【0078】
以上、説明した回路装着部143によれば、血液回路110を主として構成する主チューブ110mを、回路装着部143に装着するだけで、主チューブ110mとセンサ平面部1431A、1431Bとが密着した状態で固定される。また、回路装着部143に送受波器141A、141Bが固定して配置されるので、送受波器141A、141B間の距離を一定に保つことができ、流量の測定精度を向上させることができる。また、回路装着部143に装着されるチューブとして第1実施形態及び第2実施形態に記載の測定用チューブ110sを適用することも可能である。
【0079】
以上説明した第3実施形態の血液回路110C及び超音波流量計140Cを備える血液透析装置によれば、以下のような効果を奏する。
【0080】
(7)超音波流量計140Cを、主チューブ110mを挟持可能に対向して配置される一対のセンサ平面部1431A,1431Bを有する回路装着部143と、これら一対のセンサ平面部1431A,1431Bに配置される一対の送受波器と、を含んで構成し、一対のセンサ平面部1431A及び1431B間の距離を、主チューブ110mが回路装着部143に装着された状態において、主チューブ110mのうち一対のセンサ平面部1431A及び1431Bと接触する部分全体においてチューブ壁の外壁及び内壁が略平行となる長さとなるように設定した。これにより、血液回路の測定箇所を構成するチューブが測定用チューブ110sではなく、主チューブ110mであっても、一対のセンサ平面部1431A及び1431Bを適切な大きさに設定することにより、主チューブ110mと送受波面1413との密着性を向上させることができ、流量の測定精度を上げることができる。
【0081】
<変形例>
次に、第3実施形態の変形例について、
図8を参照して説明する。
本実施形態では、超音波流量計の構成が異なる以外は、第3実施形態の構成と同様であるので、説明を省略する。
図8を参照して、超音波流量計140Dのうち、特に回路装着部143の構成について、詳しく説明する。
【0082】
変形例の超音波流量計140Dは、一対の送受波器141A及び141Bと、流量測定部142と、回路装着部143と、基底部1432と、開閉可能に構成される蓋部1433と、を備え、送受波器141A、141Bと流量測定部142とは配線により接続される。
【0083】
回路装着部143は、一対のセンサ平面部1431A及び1431Bと、を備える。
基底部1432と蓋部1433とは、一対のセンサ平面部1431A及び1431Bが対向する方向に略直交する方向に主チューブ110mを挟持可能に対向して配置され、主チューブ110mを装着可能に構成され、装置本体160に固定して配置される。
一対のセンサ平面部1431A及び1431Bは、主チューブ110mを挟持可能に対向して配置される。また、送受波器141A及び141Bは、送受波面1413がセンサ平面部1431A、1431Bと面一になるよう、また、センサ平面部1431A、1431Bにおける上下方向の中央部において、回路装着部143にそれぞれ固定して配置される。
【0084】
一対のセンサ平面部1431A及び1431Bは、
図8に示すように、センサ平面部1431A、1431B間の距離が、主チューブ110mが回路装着部143に装着された状態において、主チューブ110mのうち一対のセンサ平面部1431A、1431Bと接触する部分全体においてチューブ壁の外壁及び内壁が略平行となるように、回路装着部143に配置される。
【0085】
以上、説明した変形例の回路装着部143によれば、血液回路110Cを主に構成する主チューブ110mを、回路装着部143に装着して蓋部1433を閉状態とするだけで、主チューブ110mが基底部1432及び蓋部1433により上下方向に押されることにより、主チューブ110mとセンサ平面部1431A、1431Bとを更に密着した状態で固定させることができる。また、送受波器141A及び141Bをセンサ平面部1431A、1431Bにおける上下方向の中央部に配置することで、センサ平面部1431A、1431Bと送受波面1413とが密着する部分のみに超音波を照射して、効率よく超音波を伝搬させることができる。また、回路装着部143に送受波器141A、141Bが固定して配置されるので、送受波器141A、141B間の距離を一定に保つことができ、流量の測定精度を向上させることができる。また、回路装着部143に装着されるチューブとして第1実施形態及び第2実施形態に記載の測定用チューブ110sを適用することも可能である。
【0086】
以上、本発明の血液回路、超音波流量計、及びこれらを備える血液透析装置の好ましい各実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述した各実施形態及び変形例に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、各実施形態及び変形例では、一対の超音波送受波器が対向して配置される例を示したがこれに限らない。1つ送受波器のみを配置してもよいし、2つの送受波器を同じ側に配置し、反射した超音波を送受する構成としてもよい。
【0087】
また、各実施形態及び変形例では、流量の算出方法として、伝搬時間逆数差法による例を示したがこれに限らない。流量をドップラー法、伝搬時間差法等、周知の算出方法により算出してもよい。