(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の技術では、照明器の設置位置、向き及び配光特性等が考慮されていない。これらの要因が変化すれば、画像中の暗部の幅も変化するので、特許文献1の計測方法はテールクリアランスの幅を正確に計測することができない。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、テールクリアランスの幅を正確に計測できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、シールドマシンのスキンプレートの内側にあるセグメントリングの外面から前記スキンプレートの内面までの幅を計測するテールクリアランス計測装置は、前記スキンプレートの内面上の各点の三次元座標と前記セグメントリングの内面上の各点の三次元座標を計測する三次元計測器と、前記三次元計測器によって計測された各点の三次元座標から、前記幅を算出するコンピュータと、を備える。
【0007】
以上によれば、三次元計測器によって計測される各点の三次元座標は何れも同一の座標系で表現されたものであり、スキンプレートの内面とセグメントリングの内面が同一座標系の点群モデルとしてモデリングされる。従って、三次元計測器の設置の位置及び向きを正確にせずとも、テールクリアランスの幅を正確に計測することができる。
【0008】
好ましくは、前記コンピュータが、前記三次元計測器によって計測された前記スキンプレートの内面上の各点の三次元座標から平面を特定する平面特定処理と、前記平面特定処理によって特定された前記平面と、前記三次元計測器によって計測された前記セグメントリングの内面上の点の三次元座標とから、その点から前記平面までの距離を算出する距離算出処理と、前記距離算出処理によって算出された前記距離から前記セグメントリングの厚さを減算することによって、その差を前記テールクリアランスの幅として得る減算処理と、を実行する。
【0009】
以上によれば、スキンプレートの内面を平面として、その平面をその内面上の各点の三次元座標から特定すると、その平面は計測範囲からセグメントリングによって隠れる範囲にまで延長したものと適用できる。それゆえ、セグメントリングによって隠れる範囲について三次元座標の計測を行えなくても、テールクリアランスの幅を計測することができる。
また、平面を特定するアルゴリズムは簡便であり、平面と点の距離を算出するアルゴリズムも簡便である。よって、コンピュータの処理負担を軽減できる。
【0010】
好ましくは、前記コンピュータが、前記三次元計測器によって計測された前記セグメントリングの内面上の各点の三次元座標から平面を特定する平面特定処理と、前記平面特定処理によって特定された前記平面と、前記三次元計測器によって計測された前記スキンプレートの内面上の点の三次元座標とから、その点から前記平面までの距離を算出する距離算出処理と、前記距離算出処理によって算出された前記距離から前記セグメントリングの厚さを減算することによって、その差を前記テールクリアランスの幅として得る減算処理と、を実行する。
【0011】
以上によれば、セグメントリングの内面を平面として、その平面をその内面上の各点の三次元座標から特定すると、その平面はセグメントリングの端から延長した範囲にも適用できる。それゆえ、セグメントリングの端から延長した範囲について三次元座標の計測を行えなくても、テールクリアランスの幅を計測することができる。
また、平面を特定するアルゴリズムは簡便であり、平面と点の距離を算出するアルゴリズムも簡便である。よって、コンピュータの処理負担を軽減できる。
【0012】
好ましくは、前記コンピュータが、前記三次元計測器によって計測された前記スキンプレートの内面上の各点の中から何れかの点を選択する選択処理と、前記選択処理により選択した前記点から、前記三次元計測器によって計測された前記セグメントリングの内面上の各点までの距離を算出する距離算出処理と、前記距離算出処理により算出した前記距離の一群から最小値を取得する最小値取得処理と、前記最小値取得処理によって取得された前記最小値から前記セグメントリングの厚さを減算することによって、その差を前記テールクリアランスの幅として得る減算処理と、を実行する。
【0013】
以上によれば、スキンプレートの内面上の何れかの点から、セグメントリングの内面上の各点までの距離を算出するアルゴリズムは簡便である。よって、コンピュータの処理負担を軽減できる。
また、算出した距離の一群から最小値を取得したので、その最小値は、スキンプレートの内面とセグメントリングの内面との距離を最適に表したものである。よって、テールクリアランスの幅を計測することができる。
【0014】
好ましくは、前記コンピュータが、前記三次元計測器によって計測された前記セグメントリングの内面上の各点の中から何れかの点を選択する選択処理と、前記選択処理により選択した前記点から、前記三次元計測器によって計測された前記スキンプレートの内面上の各点までの距離を算出する距離算出処理と、前記距離算出処理により算出した前記距離の一群から最小値を取得する最小値取得処理と、前記最小値取得処理によって取得された前記最小値から前記セグメントリングの厚さを減算することによって、その差を前記テールクリアランスの幅として得る減算処理と、を実行する。
【0015】
以上によれば、セグメントの内面上の何れかの点から、スキンプレートの内面上の各点までの距離を算出するアルゴリズムは簡便である。よって、コンピュータの処理負担を軽減できる。
また、算出した距離の一群から最小値を取得したので、その最小値は、スキンプレートの内面とセグメントリングの内面との距離を最適に表したものである。よって、テールクリアランスの幅を計測することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テールクリアランスの幅を正確に計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
1. シールドマシン及びセグメントリング
図1は、トンネル施工工事に用いられるシールドマシン10を示した図である。スキンプレート11はシールドマシン10の外殻体を構成するものである。スキンプレート11はリングガーダー12によって補強されている。スキンプレート11の先端部に回転カッター13が設けられている。スキンプレート11の内側に、カッター駆動機構14、シールドジャッキ15、排土装置17及びエレクタ18等が設けられている。
【0020】
回転カッター13がカッター駆動機構14によって回転駆動されると、切羽が掘削される。掘削により発生した土砂はチャンバー19に貯められて、排土装置17によってチャンバー19から排土される。切羽の掘削中、シールドジャッキ15のシュー16を施工済みのセグメントリング20に押し当てた状態で、シールドジャッキ15のロッド15bをシールドジャッキ15の本体部15aから進出させる。シールドジャッキ15の伸長によって、セグメントリング20から反力をとって、シールドマシン10の推進力を得る。
【0021】
以上のようにシールドマシン10を掘進させた後、シールドジャッキ15を収縮させる。そして、エレクタ18によって既設のセグメントリング20の前にセグメントをリング状に組み立てることによって新たなセグメントリング20を構築する。新たなセグメントリング20の構築の際には、そのセグメントリング20の外面20bとスキンプレート11の内面11aとの間に隙間21、つまりテールクリアランス21を形成する。セグメントリング20の構築後にシールドマシン10を掘進させる際にテールクリアランス21を監視するべく、
図2に示すテールクリアランス計測装置30を用いる。なお、スキンプレート11の後端部の内面11aとセグメント20の後端部の外面20bとの間の隙間22は、テールエンドクリアランスともいう。
【0022】
2. テールクリアランス計測装置
図2は、テールクリアランス計測装置30のブロック図である。テールクリアランス計測装置30は、テールクリアランス21の幅、つまりセグメントリング20の外面20bからスキンプレート11の内面11aまでの距離を計測する装置である。
【0023】
テールクリアランス計測装置30は、コンピュータ31、表示デバイス32、入力デバイス33、記憶部34及び三次元計測器35等を備える。
【0024】
コンピュータ31は、CPU、GPU、ROM、RAM、システムバス及びハードウェアインタフェース等を有する。
表示デバイス32は、例えば液晶ディスプレイデバイス、有機ELディスプレイデバイス又はプロジェクタである。コンピュータ31が演算処理によって映像信号を生成し、その映像信号を表示デバイス32に出力する。そうすると、映像信号に従った画面が表示デバイス32に表示される。表示デバイス32とコンピュータ31が一体化されていてもよいし、別体であってもよい。
入力デバイス33は、例えばスイッチ、キーボード若しくはポインティングデバイス又はこれらの組み合わせである。入力デバイス33は、表示デバイス32の表面に設けられたタッチパネルであってもよい。入力デバイス33は、操作されると操作内容に応じた信号をコンピュータ31に出力する。
【0025】
記憶部34は、半導体メモリ又はハードディスクドライブ等からなる記憶装置である。記憶部34は、コンピュータ31に内蔵されたものでもよいし、コンピュータ31に外付けされたものでもよい。記憶部34には、コンピュータ31によって読取可能且つ実行可能なプログラム40が格納されている。コンピュータ31の機能及び演算処理は、プログラム40によって実現される。
【0026】
三次元計測器35は、計測対象物の表面上の多数の点の三次元座標を計測する。三次元計測器35によって計測される各点の三次元座標は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸によって定義される直交座標系によって表現される。つまり、三次元計測器35によって計測される各点の三次元座標は、X座標、Y座標及びZ座標からなる。三次元計測器35によって計測される多数の点の集合は点群(point cloud)であり、三次元計測器35の計測結果は計測対象物の表面を点群によりモデリングした点群モデルとなる。
【0027】
三次元計測器35には、計測対象物に赤外線を照射する赤外線照射器と、距離画像カメラ(奥行き画像カメラ)又は三次元レーザースキャナーと、距離画像カメラ又は三次元レーザースキャナーの出力信号を信号処理することによって点の三次元座標に変換するマイコンと、を有する。三次元計測器35が更にRGBカラー画像カメラを有し、マイコンが距離画像カメラ又は三次元レーザースキャナーの出力信号とRGBカラー画像カメラの出力信号から点の三次元座標に変換してもよい。
【0028】
ここで、距離画像カメラはその距離画像カメラから計測対象物の表面上の各点までの距離を計測するものであり、距離画像カメラの撮像によって得られる画像の各画素の値は距離を表す。距離画像カメラの測距方式は、TOF(Time of Flight:光飛行時間)方式であってもよいし、Light Coding方式であってもよい。
例えば、マイクロソフト社によって販売されているKinect(登録商標)というセンサを三次元計測器35に利用してもよい。Kinect(登録商標)というセンサの市販価格が低いので、テールクリアランス計測装置30を低コストで提供することができる。なお、マイコン等が三次元計測器35に内蔵されておらず、三次元計測器35の出力信号がコンピュータ31によって信号処理されることによって、コンピュータ31が三次元計測器35の出力信号を点の三次元座標に変換してもよい。
【0029】
三次元計測器35の設置状態を
図3に示す。
図3に示すように、三次元計測器35がスキンプレート11の後部の内側においてセグメントリング20の内面20a及びスキンプレート11の内面11aに向けられるように設置されている。三次元計測器35の設置の位置及び向きが決まると、直交座標系の原点の位置及び各軸の向きが決まる。三次元計測器35が非接触型の計測器であるので、この三次元計測器35がスキンプレート11とセグメントリング20の内面11a,20aから離れて設置されている。それゆえ、三次元計測器35の接触によるスキンプレート11、セグメントリング20及び三次元計測器35の損傷及び汚損を抑えることができる。
【0030】
三次元計測器35がセグメントリング20の内面20a及びスキンプレート11の内面11aに向けられているので、スキンプレート11の内面11a及びセグメントリング20の内面20aが計測対象物となる。それゆえ、これらの内面11a,20a上の多数の点の三次元座標が三次元計測器35によって計測される。
【0031】
図3に示すように網掛けした範囲11c,20c,20d(範囲11c,20dの一部はロッド15bによって隠れている)は三次元計測器35の計測範囲の一部である。範囲20dはセグメントリング20の端面の一部の範囲である。範囲11cは、スキンプレート11の内面11aのうち、セグメントリング20の端面寄りの部分である。範囲20cは、セグメントリング20の内面20aのうち、セグメントリング20の端面寄りの部分である。三次元計測器35によって三次元座標が計測された全ての点のうち、範囲11c,20c内の限定された点がコンピュータ31によって抽出されるので、処理時間を短縮することができる。
【0032】
3. コンピュータが実行する処理
プログラム40が以下に説明する処理をコンピュータ31に実行させて、テールクリアランス21の幅がコンピュータ31によって算出される。
【0033】
(1) 計測処理
まず、コンピュータ31が三次元計測器35を制御することによって、三次元計測器35がスキンプレート11とセグメントリング20の内面11a,20aを計測する。そして、コンピュータ31が三次元計測器35の計測結果を入力して、各点の三次元座標を取得する。ここで、上述したように三次元計測器35の計測結果から三次元座標に変換する処理は、三次元計測器35のマイコンが行ってもよいし、コンピュータ31が行ってもよい。
【0034】
コンピュータ31が取得した三次元座標の集合には、スキンプレート11とセグメントリング20の内面11a,20a上の各点の三次元座標のほかに、周辺物(例えば、本体部15a、ロッド15b、ジャッキシュー16等)の表面上の点も含まれることもある。
【0035】
(2) 抽出処理(認識処理)
次に、コンピュータ31は、取得した三次元座標の集合の中からスキンプレート11とセグメントリング20の内面11a,20aの点群を認識する。例えば、コンピュータ31は、取得した三次元座標の集合について三次元特徴量を算出し、三次元特徴量を利用して、三次元座標の集合の中からスキンプレート11の内面11aの点群とセグメントリング20の内面20aの点群を抽出する。以下、コンピュータ31がスキンプレート11の内面11aの点群として認識した各点の三次元座標をスキンプレート三次元座標といい、コンピュータ31がセグメントリング20の内面20aの点群として認識した各点の三次元座標をセグメントリング三次元座標という。
なお、コンピュータ31が、スキンプレート11の内面11aの点群から、更に範囲11c内の点群を抽出してもよい。また、コンピュータ31が、セグメントリング20の内面20aの点群から、更に範囲20c内の点群を抽出してもよい。これにより、以降の処理時間を短縮することができる。
【0036】
(3) 平面の特定処理
コンピュータ31は、スキンプレート三次元座標の集合に基づいて、スキンプレート11の内面11aに沿った平面を特定する。つまり、コンピュータ31は、スキンプレート三次元座標の集合から、次式で表す平面の方程式の係数a〜dを算出する。係数aは平面の単位法線ベクトルV
nのX成分であり、係数bは平面の単位法線ベクトルV
nのY成分であり、係数cは平面の単位法線ベクトルV
nのZ成分であり、係数dは原点から平面までの距離である。
【0038】
図4を参照して、平面の特定について具体的に説明する。
図4に示すように、3点P
1,P
2,P
3のスキンプレート三次元座標から係数a〜dを算出することができる。つまり、ベクトルP
1P
2とベクトルP
2P
3の外積をそのノルム(長さ)で除すれば、単位法線ベクトルV
nが求まる。また、原点からスキンプレート三次元座標の集合の何れかの点P
aまでのベクトルOP
aと単位法線ベクトルV
nの内積が係数dである。ここで、
図4では、点P
2を点P
aとしているが、点P
aは点P
1,P
2,P
3の何れであってもよいし、点P
1,P
2,P
3以外の点であってもよい。
【0039】
なお、スキンプレート三次元座標の集合を3点ずつにグループ分けして、各グループ内の3点の三次元座標を利用して、グループごとに係数a〜dを算出してもよい。この場合、これらグループの係数aの平均値を上記の平面方程式の係数aとする。係数c〜dについても同様である。
【0040】
上記方程式は、
図3に示すように網掛けした計測範囲11c内の平面のみならず、その計測範囲11cから外側に延長した平面も定義したものである。つまり、以上のように特定した平面は、範囲11c内の平面を、セグメントリング20によって隠れる範囲まで延長したものと考慮できる。
【0041】
(4) 距離の算出処理
次に、コンピュータ31は、セグメントリング三次元座標の集合の何れかの点P
cから上述のように特定した平面までの距離を算出する。より具体的には、以下の(4−1)又は(4−2)の通りである。
【0042】
(4−1) 平面方程式の係数を用いた距離の算出
図5を参照して、平面方程式の係数を用いた距離Lの算出について具体的に説明する。点P
cはセグメントリング三次元座標の集合の何れかの点であり、点P
cの三次元座標を(X
c,Y
c,Z
c)とする。点P
cから平面までの距離Lは、次式の通りである。
【0044】
なお、スキンプレート三次元座標の集合の各点について距離Lを算出してもよい。この場合、算出した距離Lの平均値をとる。
【0045】
(4−2) 平面の単位法線ベクトルを用いた距離の算出
図5を参照して、平面の単位法線ベクトルを用いた距離Lの算出について具体的に説明する。点P
cはセグメントリング三次元座標の集合の何れかの点である。つまり、点P
cはセグメントリング20の内面20a上の点である。点P
bはスキンプレート三次元座標の集合の何れかの点である。つまり、点P
bはスキンプレート11の内面11a上の点であり、上述のように特定した平面上の点ともみなせる。点P
bは、スキンプレート三次元座標の集合の何れかの点であれば、平面を特定する際に用いた点P
a,P
1,P
2,P
3の何れかであってもよいし、それ以外の点であってもよい。
点P
cから点P
bまでのベクトルP
cP
bと単位法線ベクトルV
nの内積の絶対値が、点P
cから上述のように特定した平面までの距離Lとなる。このようにベクトルP
cP
bと単位法線ベクトルV
nの内積から距離Lを算出する場合、係数dを直接使用しないので、上記(3)の平面の特定処理の際に係数dを算出しなくてもよい。
【0046】
なお、スキンプレート三次元座標の集合とセグメントリング三次元座標の集合とを一点ずつ組み合わせることで、複数のグループを作り、各グループ内の2点の三次元座標を利用して、グループごとに距離Lを算出してもよい。この場合、これらグループの距離Lの平均値をとる。
【0047】
(5) 厚さの減算処理
次に、コンピュータ31は、算出した距離L(又はそれらの平均値)から厚さTを減算する。厚さTは、セグメントリング20の厚さ、つまり外面20bから内面20aまでの距離である。厚さTは既知であり、ユーザが入力デバイス33を用いて入力することによって、コンピュータ31がその入力値を厚さTとして取得する。なお、厚さTが予めプログラム40又は予め記憶部34に格納され、コンピュータ31がプログラム40又は記憶部34から厚さTを読み込んでもよい。また、セグメントリング20の厚さTが計測器によって計測され、その計測結果がコンピュータ31に入力されてもよい。
減算処理により得られた差がテールクリアランス21の幅である。
【0048】
(6) 結果の記録・出力処理
次に、コンピュータ31は、減算処理により得られた差、つまりテールクリアランス21の幅を記憶部34に記録する。また、コンピュータ31がその差を数値により表示デバイス32に表示させる。なお、コンピュータ31がネットワークにより他のコンピュータに接続されている場合、コンピュータ31がその差を他のコンピュータに送信し、その差が他のコンピュータによって記憶・管理されてもよい。
【0049】
4. 有利な効果
(1) 非接触型の三次元計測器35をスキンプレート11とセグメントリング20の内面11a,20aから離して設置することによって、スキンプレート11とセグメントリング20の損傷及び汚損を抑えられる。
【0050】
(2) 三次元計測器35によって計測される各点の三次元座標は、三次元計測器35を基準とした直交座標系で表現されたものである。それゆえ、三次元計測器35の設置の位置及び向きが正確にわからなくても、つまり、直交座標系の原点及び各軸の向きがスキンプレート11やセグメントリング20に対してどのようになっていても、スキンプレート11の内面11aに沿った平面を正確に特定することができる。更に、テールクリアランス21の幅も正確に計測することができる。
【0051】
(3) スキンプレート11の内面11aに沿った平面をスキンプレート三次元座標の集合から特定しており、その平面の方程式又は単位法線ベクトルはセグメントリング20によって隠れる範囲にも適用できる。それゆえ、セグメントリング20によって隠れる範囲について、スキンプレート11の内面11aの計測を行えなくても、テールクリアランス21の幅を正確に計測することができる。
【0052】
(4) 三次元計測器35によって計測される範囲はスキンプレート11及びセグメントリング20の全体の大きさと比較しても十分に狭い。そのため、その範囲におけるスキンプレート11の内面11aを平面に近似させても、つまり、スキンプレート11の内面11a上の各点が平面上にあるものとしてその平面を特定しても、テールクリアランス21の幅を正確に計測することができる。
【0053】
(5) 平面を特定するアルゴリズムは簡便であり、平面と点の距離を算出するアルゴリズムも簡便であり、コンピュータ31の処理負荷が小さい。
【0054】
5. 変形例
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。以下に、以上の実施形態からの変更点について説明する。以下に説明する変更点は、可能な限り組み合わせて適用してもよい。
【0055】
(1) 上記実施形態では、「(3)平面の特定処理」において、コンピュータ31が、スキンプレート三次元座標の集合に基づいて、スキンプレート11の内面11aに沿った平面を特定する。それに対して、コンピュータ31が、セグメントリング三次元座標の集合に基づいて、セグメントリング20の内面20aに沿った平面を特定してもよい。この場合、「(4)距離の算出処理」においては、点P
cはスキンプレート三次元座標の集合の何れかの点とし、点P
bはセグメントリング三次元座標の集合の何れかの点とする。また、セグメントリング20の内面20aに沿った平面の特定のアルゴリズムは、スキンプレート11の内面11aに沿った平面の特定のアルゴリズムと同一である。なお、特定された平面の方程式又は単位法線ベクトルは、セグメントリング20の内面20aがそのエッジから切羽側へ延長した範囲にも適用できる。
【0056】
(2) 上記実施形態では、コンピュータ31が、三次元計測器35によって計測された三次元座標の集合の中からスキンプレート11の内面11aの点群を認識する処理を実行した。それに対して、ユーザがコンピュータ31にティーチングしてもよい。つまり、ユーザが入力デバイス33を用いて三次元座標の集合の中からスキンプレート11の内面11aの点群を特定することによって、コンピュータ31が三次元座標の集合の中からスキンプレート11の内面11aの点群を認識してもよい。セグメントリング20の内面20aの点群についても同様である。
【0057】
(3) 複数の三次元計測器35をスキンプレート11の内面11aに沿って周方向に配列するように設置すれば、テールクリアランス21の幅についての周方向の分布を得ることができる。
【0058】
(4) 点P
cは、
図3に示す範囲20e内の点であってもよい。範囲20eは、三次元計測器35の計測範囲の一部ある。更に、範囲20eは、セグメントリング20の内面20aのうち、セグメントリング20の端面から離れた部分である。点P
cが範囲20e内の点であれば、テールエンドクリアランス22の幅を算出することができる。この場合、厚さTは、テールエンドクリアランス22の内側におけるセグメントリング20の厚さである。点P
cが
図3に示す範囲20c内の点である場合に算出したテールクリアランス21の幅と、点P
cが
図3に示す範囲20e内の点である場合に算出したテールエンドクリアランス22の幅とから、セグメントリング20とスキンプレート11との角度を算出することができる。セグメントリング20とスキンプレート11との角度を所定範囲に抑えるようにシールドマシン10を操縦すると、スキンプレート11とセグメントリング20の接触(所謂、せり)を未然に防げる。
【0059】
(5) 上記実施形態の「(3)平面の特定処理」、「(4)距離の算出処理」及び「(5)厚さの減算処理」を以下のような処理に変更してもよい。
上述の(2)抽出処理後、コンピュータ31が、スキンプレート11の内面11aの点群の中から1つの点を選択する。
次に、コンピュータ31が、選択した点から、セグメントリング20の内面20aの点群の各点までの距離を算出する。このような距離算出のアルゴリズムは、三平方の定理を利用したものであって、簡便である。よって、コンピュータ31の処理負荷が低い。
次に、コンピュータ31が、算出した距離の一群から最小値を取得する。この最小値は、スキンプレート11の内面11aとセグメントリング20の内面20aとの距離を最適に表したものである。
その後、コンピュータ31が、取得した最小値からセグメントリング20の厚さTを減算する。減算処理により得られた差がテールクリアランス21の幅である。
【0060】
(6) 上記実施形態の「(3)平面の特定処理」、「(4)距離の算出処理」及び「(5)厚さの減算処理」を以下のような処理に変更してもよい。
上述の(2)抽出処理後、コンピュータ31が、セグメントリング20の内面20aの点群の中から1つの点を選択する。
次に、コンピュータ31が、選択した点から、スキンプレート11の内面11aの点群の各点までの距離を算出する。このような距離算出のアルゴリズムは、三平方の定理を利用したものであって、簡便である。よって、コンピュータ31の処理負荷が低い。
次に、コンピュータ31が、算出した距離の一群から最小値を取得する。この最小値は、スキンプレート11の内面11aとセグメントリング20の内面20aとの距離を最適に表したものである。
次に、コンピュータ31が、取得した最小値からセグメントリング20の厚さTを減算する。減算処理により得られた差がテールクリアランス21の幅である。