特許第6988411号(P6988411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6988411
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20211220BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20211220BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20211220BHJP
   B29C 59/14 20060101ALI20211220BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   H05H1/46 L
   H01L21/302 101C
   H01L21/31 C
   B29C59/14
   C23C16/509
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-231374(P2017-231374)
(22)【出願日】2017年12月1日
(65)【公開番号】特開2019-102252(P2019-102252A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】安東 靖典
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−004602(JP,A)
【文献】 特開2017−033788(JP,A)
【文献】 特表2002−541336(JP,A)
【文献】 特開2001−60581(JP,A)
【文献】 特開平11−162696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/509
B29C 59/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にプラズマを発生させて、当該プラズマを用いて基板を処理するプラズマ処理装置であって、
高周波電流が流されて、プラズマを発生させるためのアンテナ導体と、
前記アンテナ導体に電気的に接続される可変コンデンサとを備え、
前記アンテナ導体は、内部に冷却液が流れる流路を有しており、
前記可変コンデンサの誘電体は、前記アンテナ導体を流れる冷却液により構成されている、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記可変コンデンサは、
前記アンテナ導体に電気的に接続される第1の固定電極と、
前記アンテナ導体とは別のアンテナ導体に電気的に接続され、又は接地される第2の固定電極と、
前記第1の固定電極との間で第1のコンデンサを形成するとともに、前記第2の固定電極との間で第2のコンデンサを形成する可動電極とを有する、請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記可動電極は、所定の回転軸周りに回転するものであり、
前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極は、前記回転軸周りにおいて互いに異なる位置に設けられている、請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極は、前記回転軸に関して対称となる位置に設けられるとともに、互いに同一形状をなすものであり、
前記可動電極は、前記第1の固定電極に対向する第1の可動金属板と、前記第2の固定電極に対向する第2の可動金属板とを有し、
前記第1の可動金属板及び前記第2の可動金属板は、前記回転軸に関して対称となる位置に設けられるとともに、互いに同一形状をなすものである、請求項3記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極はそれぞれ、互いに対向するように設けられた複数の固定金属板を有しており、
前記第1の可動金属板は、前記第1の固定電極を構成する複数の固定金属板に対応して複数設けられており、
前記第2の可動金属板は、前記第2の固定電極を構成する複数の固定金属板に対応して複数設けられている、請求項4記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の可動金属板及び前記第2の可動金属板は、平面視において、前記回転軸から径方向外側に行くに従って拡開する扇形状をなすものであり、
前記固定金属板は、平面視において、前記回転軸に向かうに従って幅が縮小する形状をなし、当該固定金属板の縮小する端辺は前記回転軸の径方向に沿って形成されており、前記回転軸側の先端辺は円弧状をなすものである、請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記可変コンデンサは、前記第1の固定電極、前記第2の固定電極及び前記可動電極を収容する絶縁性を有する収容容器を備えており、
前記収容容器は、前記冷却液を導入する導入ポートと、前記冷却液を導出する導出ポートとを有しており、
前記導入ポート及び前記導出ポートは互いに対向した位置に設けられている、請求項2乃至6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極と前記可動電極との対向方向が、前記導入ポート及び前記導出ポートの対向方向と直交するように構成されている、請求項7記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1の固定電極は、前記導入ポート又は前記導出ポートの一方から収容容器の内部に挿入して設けられており、
前記第2の固定電極は、前記導入ポート又は前記導出ポートの他方から収容容器の内部に挿入して設けられている、請求項7又は8記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記アンテナ導体は、前記真空容器を貫通して設けられており、
前記可変コンデンサは、前記アンテナ導体における前記真空容器の外部に延出した端部に電気的に接続されるものである、請求項1乃至9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
複数の前記アンテナ導体が、前記真空容器を貫通して設けられており、
前記可変コンデンサは、互いに隣接する前記アンテナ導体における前記真空容器の外部に延出した端部同士を電気的に接続するものであり、且つ、互いに隣接する前記アンテナ導体の流路を連通させるものである、請求項10記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内にプラズマを発生させて、当該プラズマを用いて基板を処理するプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンテナに高周波電流を流し、それによって生じる誘導電界によって誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させ、この誘導結合型のプラズマを用いて基板Wに処理を施すプラズマ処理装置が従来から提案されている。
【0003】
この種のプラズマ処理装置としては、特許文献1に示すように、プラズマ生成チャンバ内に複数の内部直線アンテナを配置し、当該内部直線アンテナと接地との間や複数の内部直線アンテナなどの各間に浮遊コンデンサや中間コンデンサを接続したものが考えられている。
【0004】
このプラズマ処理装置では、浮遊コンデンサや中間コンデンサを可変容量としている。そして、それらの容量を変化させることにより、内部直線アンテナなどの上での高周波電圧分布を変化させ、この内部直線アンテナなどとプラズマとの静電的結合を制御するようにしている。
【0005】
しかしながら、浮遊コンデンサや中間コンデンサは、プラズマ生成時に生じる熱によって、それらコンデンサの比誘電率が変化してしまう。その結果、浮遊コンデンサや中間コンデンサの静電容量が不意に変動してしまうという問題がある。
【0006】
また、内部直線アンテナがプラズマ生成時に生じる熱によって高温となり、アンテナ自体の破損又はその周辺構造の破損などによって安定してプラズマを発生させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開11−317299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、アンテナ導体を冷却してプラズマを安定して発生させるとともに、アンテナ導体に接続される可変コンデンサを冷却しつつその静電容量の不意の変動を抑えることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、真空容器内にプラズマを発生させて、当該プラズマを用いて基板を処理するプラズマ処理装置であって、高周波電流が流されて、プラズマを発生させるためのアンテナ導体と、前記アンテナ導体に電気的に接続される可変コンデンサとを備え、前記アンテナ導体は、内部に冷却液が流れる流路を有しており、前記可変コンデンサの誘電体は、前記アンテナ導体を流れる冷却液により構成されていることを特徴とする。
【0010】
このようなプラズマ処理装置であれば、アンテナ導体を冷却液により冷却することができるので、プラズマを安定して発生させることができる。また、可変コンデンサの誘電体をアンテナ導体を流れる冷却液により構成しているので、可変コンデンサを冷却しつつその静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【0011】
通常、冷却液は温調機構により一定温度に調整されており、この冷却液を誘電体として用いることによって、温度変化による比誘電率の変化を抑えて、それに伴って生じる静電容量の変化を抑えることができる。さらに、冷却液として水を用いた場合には、水の比誘電率は約80(20℃)であり、高電圧に耐えうる可変コンデンサを構成することができる。
【0012】
前記可変コンデンサは、前記アンテナ導体に電気的に接続される第1の固定電極と、前記アンテナ導体とは別のアンテナ導体に電気的に接続され、又は接地される第2の固定電極と、前記第1の固定電極との間で第1のコンデンサを形成するとともに、前記第2の固定電極との間で第2のコンデンサを形成する可動電極とを有することが望ましい。
この構成であれば、可動電極に外部の回路要素(例えばアンテナ導体や接地)を接続する必要がない。その結果、可動電極と外部の回路要素とを接触させる摺動子(ブラシ)を用いたコネクタを不要にすることができ、摺動子を用いたコネクタにより生じる接続不良を低減することができる。
【0013】
前記可動電極は、所定の回転軸周りに回転するものであり、前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極は、前記回転軸周りにおいて互いに異なる位置に設けられていることが望ましい。
この構成であれば、第1の固定電極及び第2の固定電極が回転軸周りに配置されることになり、回転軸の軸方向の寸法をコンパクトにすることができる。
【0014】
前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極は、前記回転軸に関して対称となる位置に設けられるとともに、互いに同一形状をなすものであり、前記可動電極は、前記第1の固定電極に対向する第1の可動金属板と、前記第2の固定電極に対向する第2の可動金属板とを有し、前記第1の可動金属板及び前記第2の可動金属板は、前記回転軸に関して対称となる位置に設けられるとともに、互いに同一形状をなすものであることが望ましい。
この構成であれば、可動電極を回転させたときの、第1のコンデンサの静電容量の変化量と、第2のコンデンサの静電容量の変化量とを同一にすることができる。その結果、静電容量の調整を容易にすることができる。また、各固定電極を構成する金属板が同一形状であり、可動電極の各可動金属板が同一形状であるので、部品点数を削減することもできる。
【0015】
前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極はそれぞれ、互いに対向するように設けられた複数の固定金属板を有しており、前記第1の可動金属板は、前記第1の固定電極を構成する複数の固定金属板に対応して複数設けられており、前記第2の可動金属板は、前記第2の固定電極を構成する複数の固定金属板に対応して複数設けられていることが望ましい。
この構成であれば、固定金属板及び可動金属板の面積を大きくすることなく、電極間の対向面積の最大値を大きくすることができる。
【0016】
前記第1の可動金属板及び前記第2の可動金属板は、平面視において、前記回転軸から径方向外側に行くに従って拡開する扇形状をなすものであり、前記固定金属板は、平面視において、前記回転軸に向かうに従って幅が縮小する形状をなし、当該金属板の縮小する端辺は前記回転軸の径方向に沿って形成されており、前記回転軸側の先端辺は円弧状をなすものであることが望ましい。
この構成であれば、可動電極の回転角度に比例して静電容量を調整することができる。
【0017】
前記可変コンデンサは、前記第1の固定電極、前記第2の固定電極及び前記可動電極を収容する絶縁性を有する収容容器を備えており、前記収容容器は、前記冷却液を導入する導入ポートと、前記冷却液を導出する導出ポートとを有しており、前記導入ポート及び前記導出ポートは互いに対向した位置に設けられていることが望ましい。
この構成であれば、収容容器の内部を冷却液が流れやすくなる。その結果、収容容器内の冷却液の置換が容易となり、可変コンデンサの冷却を効率良く行うことができる。
【0018】
前記第1の固定電極及び前記第2の固定電極と前記可動電極との対向方向が、前記導入ポート及び前記導出ポートの対向方向と直交するように構成されていることが望ましい。
この構成であれば、各固定電極及び可動電極の間を冷却液が流れやすくなる。その結果、各固定電極及び可動電極の間の冷却液の置換が容易となり、誘電体となる冷却液の温度変化が抑えられる。これにより、可変コンデンサの静電容量を一定に維持しやすくなる。
【0019】
収容容器への各固定電極の取り付けを容易にするためには、前記第1の固定電極は、前記導入ポート又は前記導出ポートの一方から収容容器の内部に挿入して設けられており、前記第2の固定電極は、前記導入ポート又は前記導出ポートの他方から収容容器の内部に挿入して設けられていることが望ましい。
【0020】
プラズマ処理装置において前記アンテナ導体が前記真空容器を貫通して設けられている場合には、前記可変コンデンサは、前記アンテナ導体における前記真空容器の外部に延出した端部に電気的に接続されるものであることが望ましい。
【0021】
このプラズマ処理装置において大面積の基板に対して処理を施すためには、複数の前記アンテナ導体を備えることが考えられる。ここで、複数の前記アンテナ導体は、前記真空容器を貫通して設けられることになる。この場合、前記可変コンデンサは、互いに隣接する前記アンテナ導体における前記真空容器の外部に延出した端部同士を電気的に接続するものであり、且つ、互いに隣接する前記アンテナ導体の流路を連通させるものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、プラズマを安定して発生させるとともに、可変コンデンサを冷却しつつその静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
図2】同実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す横断面図である。
図3】同実施形態の接続導体を模式的に示す横断面図である。
図4】同実施形態の接続導体を模式的に示す縦断面図である。
図5】同実施形態の可変コンデンサを導入ポート側から見た側面図である。
図6】同実施形態の固定金属板及び可動金属板が対向しない状態を示す模式図である。
図7】同実施形態の固定金属板及び可動金属板が対向した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0026】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0027】
具体的にプラズマ処理装置100は、図1及び図2に示すように、真空排気され且つガスGが導入される真空容器2と、真空容器2内に配置された直線状のアンテナ導体3と、真空容器2内に誘導結合型のプラズマPを生成するための高周波をアンテナ導体3に印加する高周波電源4とを備えている。なお、アンテナ導体3に高周波電源4から高周波を印加することによりアンテナ導体3には高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0028】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置5によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0029】
真空容器2内に、例えば流量調整器(図示省略)及びアンテナ導体3に沿う方向に配置された複数のガス導入口21を経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。
【0030】
また、真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ6が設けられている。この例のように、基板ホルダ6にバイアス電源7からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ6内に、基板Wを加熱するヒータ61を設けておいても良い。
【0031】
アンテナ導体3は、真空容器2内における基板Wの上方に、基板Wの表面に沿うように(例えば、基板Wの表面と実質的に平行に)複数配置されている。
【0032】
アンテナ導体3の両端部付近は、真空容器2の相対向する側壁をそれぞれ貫通している。アンテナ導体3の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材8がそれぞれ設けられている。この各絶縁部材8を、アンテナ導体3の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン91によって真空シールされている。各絶縁部材8と真空容器2との間も、例えばパッキン92によって真空シールされている。なお、絶縁部材8の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
【0033】
さらに、アンテナ導体3において、真空容器2内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー10により覆われている。この絶縁カバー10の両端部は絶縁部材8によって支持されている。なお、絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0034】
そして、複数のアンテナ導体3は、内部に冷却液CLが流通する流路3Sを有する中空構造のものである。本実施形態では、直管状をなす金属パイプである。金属パイプ31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0035】
なお、冷却液CLは、真空容器2の外部に設けられた循環流路11によりアンテナ導体3を流通するものであり、前記循環流路11には、冷却液CLを一定温度に調整するための熱交換器などの温調機構111と、循環流路11において冷却液CLを循環させるためのポンプなどの循環機構112とが設けられている。冷却液CLとしては、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましく、例えば純水またはそれに近い水が好ましい。その他、例えばフッ素系不活性液体などの水以外の液冷媒を用いても良い。
【0036】
また、複数のアンテナ導体3は、図2に示すように、接続導体12によって接続されて1本のアンテナ構造となるように構成されている。つまり、互いに隣接するアンテナ導体3における真空容器2の外部に延出した端部同士を接続導体12によって電気的に接続している。具体的には、互いに隣接するアンテナ導体3において一方のアンテナ導体3の端部と他方のアンテナ導体3の端部とを接続導体12により電気的に接続している。
【0037】
ここで、接続導体12により接続される2つのアンテナ導体3の端部は同じ側壁側に位置する端部である。これにより、複数のアンテナ導体3は、互いに隣接するアンテナ導体3に互いに逆向きの高周波電流が流れるように構成される。
【0038】
そして、接続導体12は内部に流路を有しており、その流路に冷却液CLが流れように構成されている。具体的には、接続導体12の一端部は、一方のアンテナ導体3の流路と連通しており、接続導体12の他端部は、他方のアンテナ導体3の流路と連通している。これにより、互いに隣接するアンテナ導体3において一方のアンテナ導体3を流れた冷却液CLが接続導体12の流路を介して他方のアンテナ導体3に流れる。これにより、共通の冷却液CLにより複数のアンテナ導体3を冷却することができる。また、1本の流路によって複数のアンテナ導体3を冷却することができるので、循環流路11の構成を簡略化することができる。
【0039】
複数のアンテナ導体3のうち接続導体12で接続されていない一方の端部が給電端部3aとなり、当該給電端部3aには、整合回路41を介して高周波電源4が接続される。また、他方の端部である終端部3bは直接接地されている。なお、終端部3bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地しても良い。
【0040】
上記構成によって、高周波電源4から、整合回路41を介して、アンテナ導体3に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0041】
<接続導体12の構成>
次に接続導体12について、図3図7を参照して詳細に説明する。なお、図3及び図4などにおいて一部のシール部材などは記載を省略している。
【0042】
接続導体12は、図3及び図4に示すように、アンテナ導体3に電気的に接続される可変コンデンサ13と、当該可変コンデンサ13と一方のアンテナ導体3の端部とを接続する第1の接続部14と、可変コンデンサ13と他方のアンテナ導体3の端部とを接続する第2の接続部14とを有している。
【0043】
第1の接続部14及び第2の接続部15は、アンテナ導体3の端部を取り囲むことによって、アンテナ導体3に電気的に接触するとともに、アンテナ導体3の端部に形成された開口部3Hから冷却液CLを可変コンデンサ13に導くものである。これら接続部14、15の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0044】
本実施形態の各接続部14、15は、アンテナ導体3の端部において、開口部3Hよりも真空容器2側でOリングなどのシール部材S1を介して液密に装着されるものであり、開口部3Hよりも外側は拘束しないように構成されている(図3参照)。これにより、接続部14、15に対するアンテナ導体3の若干の傾きを許容する構成としている。
【0045】
可変コンデンサ13は、一方のアンテナ導体3に電気的に接続される第1の固定電極16と、他方のアンテナ導体3に電気的に接続される第2の固定電極17と、第1の固定電極16との間で第1のコンデンサを形成するとともに、第2の固定電極17との間で第2のコンデンサを形成する可動電極18とを有している。
【0046】
本実施形態の可変コンデンサ13は、可動電極133が所定の回転軸C周りに回転することによって、その静電容量を変更できるように構成されている。そして、可変コンデンサ13は、第1の固定電極16、第2の固定電極17及び可動電極18を収容する絶縁性を有する収容容器19を備えている。
【0047】
収容容器19は、一方のアンテナ導体3からの冷却液CLを導入する導入ポートP1と、冷却液Clを他方のアンテナ導体3に導出する導出ポートP2とを有している。導入ポートP1は、収容容器134の一方の側壁(図3では左側壁19a)に形成され、導出ポートP2は収容容器19の他方の側壁(図3では右側壁19b)に形成されており、導入ポートP1及び導出ポートP2は互いに対向した位置に設けられている。なお、本実施形態の収容容器19は、内部に中空部を有する概略直方体形状をなすものであるが、その他の形状であってもよい。
【0048】
第1の固定電極16及び第2の固定電極17は、可動電極18の回転軸C周りに互いに異なる位置に設けられている。本実施形態では、第1の固定電極16は、収容容器19の導入ポートP1から収容容器19の内部に挿入して設けられている。また、第2の固定電極17は、収容容器19の導出ポートP2から収容容器19の内部に挿入して設けられている。これにより、第1の固定電極16及び第2の固定電極17は、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられている。
【0049】
第1の固定電極16は、互いに対向するように設けられた複数の第1の固定金属板161を有している。また、第2の固定電極17は、互いに対向するように設けられた複数の第2の固定金属板171を有している。これら固定金属板161、171はそれぞれ、回転軸Cに沿って互いに略等間隔に設けられている。
【0050】
そして、複数の第1の固定金属板161は、互いに同一形状をなすものであり、第1のフランジ部材162に支持されている。第1のフランジ部材162は、収容容器19の導入ポートP1が形成された左側壁19aに固定される。ここで、第1のフランジ部材162には、導入ポートP1に連通する貫通孔162Hが形成されている(図5参照)。また、複数の第2の固定金属板171は、互いに同一形状をなすものであり、第2のフランジ部材172に支持されている。第2のフランジ部材172は、収容容器19の導出ポートP2が形成された右側壁19bに固定される。ここで、第2のフランジ部材172には、導出ポートP2に連通する貫通孔172Hが形成されている。これら複数の第1の固定金属板161及び複数の第2の固定金属板171は、収容容器19に固定された状態で、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられる。
【0051】
また、第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171は平板状をなすものであり、図6に示すように、平面視において、回転軸Cに向かうに従って幅が縮小する形状をなしている。そして、各固定金属板161、171において、幅が縮小する端辺161a、171aは回転軸Cの径方向に沿って形成されている。なお、互いに対向する端辺161a、171aのなす角度は、90度である。また、各固定金属板161、171の回転軸C側の先端辺161b、171bは円弧状をなしている。
【0052】
可動電極18は、図3に示すように、収容容器19の側壁(図3では前側壁19c)に回転軸C周りに回転可能に軸支される回転軸体181と、当該回転軸体181に支持されて第1の固定電極16に対向する第1の可動金属板182と、回転軸体181に支持されて第2の固定電極17に対向する第2の可動金属板183とを有している。
【0053】
回転軸体181は、回転軸Cに沿って延びる直線状をなすものである。この回転軸体181は、その一端部が収容容器19の前側壁19cから外部に延出するように構成されている。そして、この収容容器19の前側壁19cにおいてOリングなどのシール部材S2により回転可能に支持される。ここでは、前側壁において2つのOリングにより2点支持されている。また、回転軸体181の他端部は、収容容器19の内面に設けられた位置決め凹部191に回転可能に接触している。
【0054】
また、回転軸体181は、第1の可動金属板182及び第2の可動金属板183を支持する部分181xが金属製などの導電材料から形成され、収容容器19から外部に延出した部分181yが樹脂製などの絶縁材料から形成されている。
【0055】
第1の可動金属板182は、第1の固定金属板161に対応して複数設けられている。なお、第1の可動金属板182はそれぞれ同一形状をなすものである。また、第2の可動金属板182は、第2の固定金属板171に対応して複数設けられている。なお、第2の可動金属板182はそれぞれ同一形状をなすものである。これら可動金属板182、183はそれぞれ、回転軸Cに沿って互いに略等間隔に設けられている。また、本実施形態では、各可動金属板182、183が各固定金属板161、171の間に挟まれる構成としてある。図3では、固定金属板161、171を6枚とし、可動金属板182、183を5枚としているが、これに限られない。なお、可動金属板182、183と固定金属板161、171とのギャップは例えば1mmである。
【0056】
第1の可動金属板182及び第2の可動金属板183は、図4に示すように、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられるとともに、互いに同一形状をなすものである。具体的に各可動金属板182、183は、図6に示すように、平面視において、回転軸Cから径方向外側に行くに従って拡開する扇形状をなすものである。本実施形態では、中心角が90度の扇形状をなすものである。
【0057】
このように構成された可変コンデンサ13において可動電極18を回転させることによって、図7に示すように、第1の固定金属板161及び第1の可動金属板182の対向面積(第1の対向面積A1)が変化し、第2の固定金属板171及び第2の可動金属板183の対向面積(第2の対向面積A2)が変化する。本実施形態では、第1の対向面積A1と第2の対向面積A2とは同じように変化する。また、各固定金属板161、171の回転軸C側の先端辺161b、171bが円弧状であり、可動電極18を回転させることによって、第1の対向面積A1と第2の対向面積A2とは、可動電極18の回転角度θに比例して変化する。
【0058】
また、本実施形態では、図7に示すように、各固定金属板161、171及び各可動金属板182、183が対向しない状態では、平面視において、可動金属板182、183の拡開する端辺182a、183aと、固定金属板161、171の縮小する端辺161a、171aとの間に隙間Xを設けている。これにより、可動電極18を軸方向に取り外し可能にしている。本実施形態では、可動電極18を支持している前側壁19cを軸方向に沿って取り外すことによって可動電極18が取り外される。
【0059】
上記の構成において、収容容器19の導入ポートP1から冷却液CLが流入すると、収容容器19の内部が冷却液CLにより満たされる。このとき、第1の固定金属板161及び第1の可動金属板182の間が冷却液CLで満たされるとともに、第2の固定金属板161及び第2の可動金属板183の間が冷却液CLで満たされる。これにより、冷却液CLが第1のコンデンサの誘電体及び第2のコンデンサの誘電体となる。本実施形態では、第1のコンデンサの静電容量と第2のコンデンサの静電容量とは同じである。また、このように構成される第1のコンデンサ及び第2のコンデンサは直列に接続されており、可変コンデンサ13の静電容量は、第1のコンデンサ(又は第2のコンデンサ)の静電容量の半分となる。
【0060】
ここで、本実施形態では、第1の固定電極16及び第2の固定電極17と可動電極18との対向方向が、導入ポートP1及び導出ポートP2の対向方向と直交するように構成されている。つまり、固定金属板161、171及び可動金属板182、183が導入ポートP1及び導出ポートP2の対向方向に沿って設けられている。この構成により、収容容器19の内部を冷却液CLが流れやすくなる。その結果、収容容器19内の冷却液CLの置換が容易となり、可変コンデンサ13の冷却を効率良く行うことができる。また、導入ポートP1から流入した冷却液CLは固定金属板161、171及び可動金属板182、183の間に流入しやすく、固定金属板161、171及び可動金属板182、183の間から流出しやすい。その結果、固定金属板161、171及び可動金属板182、183の間の冷却液の置換が容易となり、誘電体となる冷却液CLの温度変化が抑えられる。これにより、可変コンデンサ13の静電容量を一定に維持しやすくなる。さらに、固定金属板161、171及び可動金属板182、183の間に気泡が滞留しにくくなる。
【0061】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、アンテナ導体3を冷却液CLにより冷却することができるので、プラズマPを安定して発生させることができる。また、可変コンデンサ13の誘電体をアンテナ導体3を流れる冷却液CLにより構成しているので、可変コンデンサ13を冷却しつつその静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【0062】
また、本実施形態では、可動電極18にアンテナ導体3や接地などの外部の回路要素を接続する必要が無いので、可動電極18と外部の回路要素とを接触させる摺動子(ブラシ)を用いたコネクタを不要にすることができ、摺動子を用いたコネクタにより生じる接続不良を低減することができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、第1の固定電極16及び第2の固定電極17が回転軸C周りにおいて互いに異なる位置に設けられているので、回転軸Cの軸方向における寸法をコンパクトにすることができる。
【0064】
その上、本実施形態では、各固定電極16、17が複数の固定金属板161、171を有し、可動電極が複数の可動金属板182、183を有するので、固定金属板161、171及び可動金属板182、183の面積を大きくすることなく、電極間の対向面積の最大値を大きくすることができる。
【0065】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0066】
前記実施形態では、可動電極が回転軸C周りに回転するものであったが、可動電極が一方向にスライド移動するものであってもよい。ここで、可動電極がスライドする構成としては、可動電極が固定電極との対向方向に直交する方向にスライドして対向面積が変化するものであってもよいし、可動電極が固定電極との対向方向に沿ってスライドして対向距離が変化するものであってもよい。
【0067】
また、可動金属板及び固定金属板の形状は前記実施形態に限られず、種々の形状とすることができる。
【0068】
さらに、前記実施形態では、可変コンデンサが互いに隣接するアンテナ導体の間に設けられているが、アンテナ導体と接地との間に設けられるものであってもよい。この場合、第1の固定電極はアンテナ導体に電気的に接続され、第2の固定電極は接地される。
【0069】
その上、前記実施形態では、アンテナ導体は直線状をなすものであったが、湾曲又は屈曲した形状であっても良い。この場合、金属パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良いし、絶縁パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良い。
【0070】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
100・・・プラズマ処理装置
W・・・基板
P・・・誘導結合プラズマ
2・・・真空容器
3・・・アンテナ導体
3S・・・流路
CL・・・冷却液
13・・・可変コンデンサ
16・・・第1の固定電極
161・・・固定金属板
17・・・第2の固定電極
171・・・固定金属板
18・・・可動電極
C・・・回転軸
182・・・第1の可動金属板
183・・・第2の可動金属板
161a、171a・・・縮小する端辺
161b、171b・・・先端辺
19・・・収容容器
P1・・・導入ポート
P2・・・導出ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7