(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1加圧装置は、マスタシリンダと、マスタピストンを駆動する駆動液圧を発生させる駆動液圧室へのブレーキ液の流入出を調整する常開型の調圧電磁弁とを有し、前記駆動液圧を保持するに際し前記調圧電磁弁が閉弁されるように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用制動装置。
前記第1加圧装置は、マスタシリンダと、電気モータの作動による回転運動を直線運動に変換する直動機構によって駆動されるマスタピストンと、を有し、前記マスタシリンダ内の液圧を保持するに際し前記電気モータが作動されるように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用制動装置。
前記第1加圧装置は、前記第2加圧装置の出力液圧と前記ホイール圧との間の差圧を調整する常開型の差圧電磁弁と、前記第2加圧装置と前記差圧電磁弁との間のブレーキ液を、前記差圧電磁弁と前記ホイールシリンダとの間に吐出するポンプとを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用制動装置。
前記第2加圧装置は、前記第1加圧装置の出力液圧と前記ホイール圧との間の差圧を調整する常開型の差圧電磁弁と、前記第1加圧装置と前記差圧電磁弁との間のブレーキ液を、前記差圧電磁弁と前記ホイールシリンダとの間に吐出するポンプとを有し、
前記制御部は、前記第2制御において、前記第1制御の実行に伴う前記第1加圧装置の出力液圧の変化量よりも大きな変化量を想定して、前記第2加圧装置を制御する請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用制動装置。
マスタシリンダと、マスタピストンを駆動する駆動液圧を発生させる駆動液圧室とリザーバとを接続する流路に配置された常開型の調圧電磁弁と、前記流路のうち前記調圧電磁弁と前記リザーバとの間の部分に配置された常開型の保持電磁弁と、を有し、前記駆動液圧を保持するに際し前記調圧電磁弁が閉弁されるように構成されている加圧装置と、
前記調圧電磁弁の発熱状態を示す発熱相関値を取得する取得部と、
前記取得部により取得されている前記発熱相関値が所定の閾値以上である場合に、前記調圧電磁弁への電力供給を減少させる第1制御と、前記マスタシリンダ内の液圧の前記第1制御の実行に伴う変化を防止すべく、前記保持電磁弁を制御する第2制御とを実行する制御部と、
を備える車両用制動装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
<第1実施形態>
車両用制動装置BFは、
図1に示すように、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、第1制御弁22と、第2制御弁23と、サーボ圧発生装置(「第1加圧装置」に相当する)4と、アクチュエータ(「第2加圧装置」に相当する)5と、ホイールシリンダ541〜544と、各種センサ71〜77と、上流側ECU6と、下流側ECU¥6Aと、を備えている。
【0011】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)10の操作量に応じてブレーキ液をアクチュエータ5に供給する部位であり、メインシリンダ11、カバーシリンダ12、入力ピストン13、第1マスタピストン14、および第2マスタピストン15を備えている。ブレーキペダル10は、ドライバがブレーキ操作可能なブレーキ操作手段であれば良い。マスタシリンダ1(メインシリンダ11)内には、マスタピストン14、15が摺動可能に配置されている。
【0012】
メインシリンダ11は、前方が閉塞されて後方に開口する有底略円筒状のハウジングである。メインシリンダ11の内周側の後方寄りに、内向きフランジ状に突出する内壁部111が設けられている。内壁部111の中央は、前後方向に貫通する貫通孔111aとされている。また、メインシリンダ11の内部の内壁部111よりも前方に、内径がわずかに小さくなっている小径部位112(後方)、113(前方)が設けられている。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11の内周面から内向き環状に突出している。メインシリンダ11の内部には、小径部位112に摺接して軸方向に移動可能に第1マスタピストン14が配設されている。同様に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に第2マスタピストン15が配設されている。
【0013】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121、蛇腹筒状のブーツ122、およびカップ状の圧縮スプリング123で構成されている。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の後側の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大きい。また、シリンダ部121の後方部位121bの内径は、前方部位121aの内径よりも小さい。
【0014】
防塵用のブーツ122は蛇腹筒状で前後方向に伸縮可能であり、その前側でシリンダ部121の後端側開口に接するように組み付けられている。ブーツ122の後方の中央には貫通孔122aが形成されている。圧縮スプリング123は、ブーツ122の周りに配置されるコイル状の付勢部材であり、その前側がメインシリンダ11の後端に当接し、後側はブーツ122の貫通孔122aに近接するように縮径されている。ブーツ122の後端および圧縮スプリング123の後端は、操作ロッド10aに結合されている。圧縮スプリング123は、操作ロッド10aを後方に付勢している。
【0015】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能かつ液密的に配置され、底壁131がシリンダ部121の前方部位121aの内周側に入り込んでいる。
【0016】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10に連動する操作ロッド10aが配設されている。操作ロッド10aの先端のピボット10bは、入力ピストン13を前側に押動できるようになっている。操作ロッド10aの後端は、入力ピストン13の後側の開口およびブーツ122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。ブレーキペダル10が踏み込み操作されたときに、操作ロッド10aは、ブーツ122および圧縮スプリング123を軸方向に押動しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴い、入力ピストン13も連動して前進する。
【0017】
第1マスタピストン14は、メインシリンダ11の内壁部111に軸方向に摺動可能に配設されている。第1マスタピストン14は、前方側から順番に加圧筒部141、フランジ部142、および突出部143が一体となって形成されている。加圧筒部141は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、メインシリンダ11の内周面との間に間隙を有し、小径部位112に摺接している。加圧筒部141の内部空間には、第2マスタピストン15との間にコイルばね状の付勢部材144が配設されている。付勢部材144により、第1マスタピストン14は後方に付勢されている。換言すると、第1マスタピストン14は、設定された初期位置に向けて付勢部材144により付勢されている。
【0018】
フランジ部142は、加圧筒部141よりも大径で、メインシリンダ11の内周面に摺接している。突出部143は、フランジ部142よりも小径で、内壁部111の貫通孔111aに液密に摺動するように配置されている。突出部143の後端は、貫通孔111aを通り抜けてシリンダ部121の内部空間に突出し、シリンダ部121の内周面から離間している。突出部143の後端面は、入力ピストン13の底壁131から離間し、その離間距離は変化し得るように構成されている。
【0019】
ここで、メインシリンダ11の内周面、第1マスタピストン14の加圧筒部141の前側、および第2マスタピストン15の後側により、「第1マスタ室1D」が区画されている。また、メインシリンダ11の内周面(内周部)と小径部位112と内壁部111の前面、および第1マスタピストン14の外周面により、第1マスタ室1Dよりも後方の後方室が区画されている。第1マスタピストン14のフランジ部142の前端部および後端部は後方室を前後に区分しており、前側に「第2液圧室1C」が区画され、後側に「サーボ室1A」が区画されている。第2液圧室1Cは、第1マスタピストン14の前進により容積が減少し第1マスタピストン14の後退により容積が増加する。また、メインシリンダ11の内周部、内壁部111の後面、シリンダ部121の前方部位121aの内周面(内周部)、第1マスタピストン14の突出部143(後端部)、および入力ピストン13の前端部により「第1液圧室1B」が区画されている。
【0020】
第2マスタピストン15は、メインシリンダ11内の第1マスタピストン14の前方側に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に配置されている。第2マスタピストン15は、前方に開口を有する筒状の加圧筒部151、および加圧筒部151の後側を閉塞する底壁152が一体となって形成されている。底壁152は、第1マスタピストン14との間に付勢部材144を支承している。加圧筒部151の内部空間には、メインシリンダ11の閉塞された内底面111dとの間に、コイルばね状の付勢部材153が配設されている。付勢部材153により、第2マスタピストン15は後方に付勢されている。換言すると、第2マスタピストン15は、設定された初期位置に向けて付勢部材153により付勢されている。メインシリンダ11の内周面、内底面111d、および第2マスタピストン15により、「第2マスタ室1E」が区画されている。
【0021】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通させるポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111よりも後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11の内周面とシリンダ部121の外周面との間の環状空間を介して連通している。ポート11aおよびポート11bは、配管161に接続され、かつリザーバ171(低圧源)に接続されている。
【0022】
また、ポート11bは、シリンダ部121および入力ピストン13に形成された通路18により第1液圧室1Bに連通している。通路18は入力ピストン13が前進すると遮断され、これによって第1液圧室1Bとリザーバ171とが遮断される。ポート11cは、内壁部111より後方かつポート11aよりも前方に形成され、第1液圧室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cよりも前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dよりも前方に形成され、第2液圧室1Cと配管164とを連通させている。
【0023】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材G1、G2の間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11の内部とを連通している。ポート11fは、第1マスタピストン14に形成された通路145を介して第1マスタ室1Dに連通している。通路145は、第1マスタピストン14が前進するとポート11fと第1マスタ室1Dが遮断される位置に形成されている。ポート11gは、ポート11fよりも前方に形成され、第1マスタ室1Dと管路31とを連通させている。
【0024】
ポート11hは、小径部位113の両シール部材G3、G4の間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11の内部とを連通させている。ポート11hは、第2マスタピストン15の加圧筒部151に形成された通路154を介して第2マスタ室1Eに連通している。通路154は、第2マスタピストン15が前進するとポート11hと第2マスタ室1Eが遮断される位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hよりも前方に形成され、第2マスタ室1Eと管路32とを連通させている。
【0025】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材が配置されている。シール部材G1、G2は、小径部位112に配置され、第1マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材G3、G4は、小径部位113に配置され、第2マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材G5、G6が配置されている。
【0026】
ストロークセンサ71は、ドライバによりブレーキペダル10が操作された操作量(ストローク)を検出するセンサであり、検出信号を上流側ECU6及び下流側ECU6Aに送信する。ブレーキストップスイッチ72は、ドライバによるブレーキペダル10の操作の有無を2値信号で検出するスイッチであり、検出信号を上流側ECU6に送信する。
【0027】
反力発生装置2は、ブレーキペダル10が操作されたとき操作力に対抗する反力を発生する装置であり、ストロークシミュレータ21を主にして構成されている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第1液圧室1Bおよび第2液圧室1Cに反力液圧を発生させる。ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合されて構成されている。ピストン212は圧縮スプリング213によって後方に付勢されており、ピストン212の後面側に反力液圧室214が形成される。反力液圧室214は、配管164およびポート11eを介して第2液圧室1Cに接続され、さらに、反力液圧室214は、配管164を介して第1制御弁22および第2制御弁23に接続されている。
【0028】
第1制御弁22は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、上流側ECU6により開閉が制御される。第1制御弁22は、配管164と配管162との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第2液圧室1Cに連通し、配管162はポート11cを介して第1液圧室1Bに連通している。また、第1制御弁22が開くと第1液圧室1Bが開放状態になり、第1制御弁22が閉じると第1液圧室1Bが密閉状態になる。したがって、配管164および配管162は、第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとを連通するように設けられている。
【0029】
第1制御弁22は通電されていない非通電状態で閉じており、このとき第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとが遮断される。これにより、第1液圧室1Bが密閉状態になってブレーキ液の行き場がなくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14とが一定の離間距離を保って連動する。また、第1制御弁22は通電された通電状態では開いており、このとき第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとが連通される。これにより、第1マスタピストン14の進退に伴う第1液圧室1Bおよび第2液圧室1Cの容積変化が、ブレーキ液の移動により吸収される。
【0030】
圧力センサ73は、第2液圧室1Cおよび第1液圧室1Bの反力液圧を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、第1制御弁22が閉状態の場合には第2液圧室1Cの圧力を検出し、第1制御弁22が開状態の場合には連通された第1液圧室1Bの圧力も検出することになる。圧力センサ73は、検出信号を上流側ECU6に送信する。
【0031】
第2制御弁23は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、上流側ECU6により開閉が制御される。第2制御弁23は、配管164と配管161との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第2液圧室1Cに連通し、配管161はポート11aを介してリザーバ171に連通している。したがって、第2制御弁23は、第2液圧室1Cとリザーバ171との間を非通電状態で連通して反力液圧を発生させず、通電状態で遮断して反力液圧を発生させる。
【0032】
サーボ圧発生装置4は、マスタシリンダ1内のマスタピストン14、15を駆動する駆動力を発生させることで、マスタ室1D、1Eにマスタ圧を発生させる装置である。サーボ圧発生装置4は、いわゆる油圧式ブースタ(倍力装置)であって、駆動力として、例えばブレーキペダル10の操作量に応じて、後述するパイロット圧(サーボ圧)を第1パイロット室4D(サーボ室1A)に発生させる装置である。サーボ圧発生装置4は、減圧弁(「調圧電磁弁」に相当する)41、増圧弁(「調圧電磁弁」に相当する)42、圧力供給部43、およびレギュレータ44を備えている。減圧弁41は、非通電状態で開く常開型の電磁弁(常開弁)であり、上流側ECU6により流量(又は圧力)が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、およびポート11a、11bを介してリザーバ171に連通している。減圧弁41は、閉弁することで、後述する第1パイロット室4Dからブレーキ液が流出することを阻止する。つまり、減圧弁41は、電流が供給されることで閉弁し、第1パイロット室4Dの液圧(以下「パイロット圧」という)、サーボ室1Aの液圧(以下「サーボ圧」という)、ひいてはマスタ室1D、1Eの液圧(以下「マスタ圧」という)を保持するように作動する。なお、リザーバ171とリザーバ434とは、図示していないが連通している。リザーバ171とリザーバ434が同一のリザーバであっても良い。
【0033】
増圧弁42は、非通電状態で閉じる常閉型の電磁弁(常閉弁)であり、上流側ECU6により流量(又は圧力)が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。増圧弁42は、アキュムレータ431と第1パイロット室4Dとを接続する流路に配置されており、電流が供給されることで開弁し、パイロット圧、サーボ圧、ひいてはマスタ圧を増大するように作動する増圧部ともいえる。圧力供給部43は、レギュレータ44に主に高圧のブレーキ液を供給する部位である。圧力供給部43は、アキュムレータ431、液圧ポンプ432、モータ433、およびリザーバ434を備えている。
【0034】
アキュムレータ431は、高圧のブレーキ液を蓄積するタンクである。アキュムレータ431は、配管431aによりレギュレータ44および液圧ポンプ432に接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433によって駆動され、リザーバ434に貯留されたブレーキ液を、アキュムレータ431に圧送する。配管431aに設けられた圧力センサ75は、アキュムレータ431のアキュムレータ液圧を検出し、検出信号を上流側ECU6に送信する。アキュムレータ液圧は、アキュムレータ431に蓄積されたブレーキ液の蓄積量に相関する。
【0035】
アキュムレータ液圧が所定のオン圧以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、上流側ECU6からの指令に基づいてモータ433が駆動される。これにより、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431にブレーキ液を圧送して、アキュムレータ液圧を所定値以上に回復する。また、アキュムレータ液圧が所定のオフ圧以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、上流側ECU6からの指令に基づいてモータ433が停止する。つまり、上流側ECU6には、モータ433(アキュムレータ431)のオン圧とオフ圧が設定されており、上流側ECU6が圧力センサ75の検出値に基づいてアキュムレータ液圧を制御している。
【0036】
レギュレータ44は、
図2に示すように、シリンダ441、ボール弁442、付勢部443、弁座部444、制御ピストン445、およびサブピストン446を備えている。シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。蓋部材441bも、略有底円筒状に形成されており、筒状部の複数のポート4a〜4hに対向する各部位に各ポートが形成されている。
【0037】
ポート4aは、配管431aに接続されている。ポート4bは、配管422に接続されている。ポート4cは、配管163に接続されている。配管163は、サーボ室1Aとポート4cとを接続している。ポート4dは、配管414を介してリザーバ434に接続されている。ポート4eは、配管424に接続され、さらにリリーフバルブ423を経由して配管422に接続されている。ポート4fは、配管413に接続されている。ポート4gは、配管421に接続されている。ポート4hは、管路31から分岐した管路311に接続されている。
【0038】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部のシリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁座部444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。貫通路444aのシリンダ底面側の開口部には、ボール弁442が離脱可能に着座(当接)する弁座面444bが形成されている。
【0039】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、およびシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を「第1室4A」とする。第1室4Aは、ブレーキ液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0040】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した径方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口位置に対応したシリンダ441の一部の内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪んでいる。この窪んだ空間を「第3室4C」とする。
【0041】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0042】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外周面、シリンダ441の内周面、弁座部444、およびボール弁442によって区画された空間を「第2室4B」とする。第2室4Bは、突出部445bとボール弁442とが当接していない状態で、通路445d,445c、および第3室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0043】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第1突出部446bと、第2突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。また、サブピストン446のシリンダ底面側の端部には、ダンパ機構が設けられても良い。
【0044】
第1突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第1突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第2突出部446cは、第1突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第2突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0045】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第1突出部446bの外周面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第1パイロット室4D」とする。第1パイロット室4Dは、ポート4fおよび配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4gおよび配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0046】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第2突出部446cの外周面、蓋部材441b、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第2パイロット室4E」とする。第2パイロット室4Eは、ポート4hおよび管路311、31を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、ブレーキ液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aに供給されるサーボ圧を検出するセンサであり、配管163に接続されている。圧力センサ74は、検出信号を上流側ECU6に送信する。
【0047】
このように、レギュレータ44は、パイロット圧(第1パイロット室4Dの液圧)に対応する力とサーボ圧に対応する力との差によって駆動される制御ピストン445を有し、制御ピストン445の移動に伴って第1パイロット室4Dの容積が変化し、第1パイロット室4Dに流入出する液体の流量が増大すると、パイロット圧に対応する力とサーボ圧に対応する力とが釣り合っている平衡状態における制御ピストン445の位置を基準とする同制御ピストン445の移動量が増大して、サーボ室1Aに流入出する液体の流量が増大するように構成されている。すなわち、レギュレータ44は、パイロット圧とサーボ圧との差圧に応じた流量の液体がサーボ室1Aに流入出するように構成されている。
【0048】
第1パイロット室4D又はサーボ室1Aは「駆動液圧室」に相当し、パイロット圧又はサーボ圧は「駆動液圧」に相当する。また、サーボ圧発生装置4は、マスタシリンダ1内のマスタピストン14、15を駆動するパイロット圧又はサーボ圧を第1パイロット室4D又はサーボ室1Aに発生させることで、マスタ室1D、1Eにマスタ圧を発生させる装置といえる。
【0049】
レギュレータ44は、アキュムレータ431から第1パイロット室4Dに流入する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが拡大するとともにアキュムレータ431からサーボ室1Aに流入する液体の流量が増大し、第1パイロット室4Dからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが縮小するとともにサーボ室1Aからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するように構成されている。このような構成のレギュレータ44は、増圧制御又は減圧制御から保持制御に移行しても所定期間だけサーボ圧(パイロット圧)が変動するヒステリシスを有している。所定期間は、サーボ圧(パイロット圧)の勾配に応じて変動する期間(状態に応じた期間)である。
【0050】
ヒステリシスの量は、サーボ圧の増圧制御又は減圧制御を終了しても(保持制御に移行しても)なお変化するサーボ圧の変化量である。保持制御は、減圧弁41及び増圧弁42を閉弁状態とする制御である。ヒステリシスは、例えば増圧制御、すなわち制御ピストン445がボール弁442を押して第1室4Aと第2室4Bとを連通させた状態(制御ピストン445が増圧位置にある状態)から、保持制御、すなわち減圧弁41と増圧弁42を閉状態として第1パイロット室4Dを密閉状態とした状態に切り替えた際、制御ピストン445が増圧位置から後退して第1室4Aと第2室4Bを遮断するまでの間、増圧状態が続くことで生じる。サーボ圧の勾配、すなわちパイロット圧の勾配が大きいほど、制御ピストン445が前進した状態となり、保持制御に切り替えた後に後退する時間が長くなり、ヒステリシス量は大きくなる。反対にサーボ圧の勾配が小さいほど、ヒステリシス量は小さくなる。
【0051】
また、上流側ECU6には、目標サーボ圧に対する不感帯が設定されている。不感帯は、目標サーボ圧に対してプラス側とマイナス側に設定される。上流側ECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲内の値となると、ブレーキ制御を保持制御に切り替える。つまり、上流側ECU6は、ブレーキ制御を行うにあたり、実サーボ圧が不感帯の範囲内(不感帯領域)に入ると実質的に目標サーボ圧に達したものと認識する。このような不感帯を設定することで、目標サーボ圧を一点に設定する場合よりも液圧制御のハンチングを抑制することができる。
【0052】
アクチュエータ5は、マスタ圧が発生する第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eと、ホイールシリンダ541〜544の間に配置されている。アクチュエータ5と第1マスタ室1Dとは管路31により接続され、アクチュエータ5と第2マスタ室1Eは管路32により接続されている。アクチュエータ5は、下流側ECU6Aの指示に応じて、ホイールシリンダ541〜544の液圧(ホイール圧)を調整する装置である。アクチュエータ5は、下流側ECU6Aの指令に応じて、ブレーキ液をマスタ圧からさらに加圧する加圧制御、減圧制御、及び保持制御を実行する。アクチュエータ5は、下流側ECU6Aの指令に基づき、これら制御を組み合わせて、アンチスキッド制御(ABS制御)、又は横滑り防止制御(ESC制御)等を実行する。
【0053】
具体的に、アクチュエータ5は、
図3に示すように、油圧回路5Aと、電気モータ90と、を備えている。油圧回路5Aは、第1配管系統50aと、第2配管系統50bと、を備えている。第1配管系統50aは、後輪Wrl、Wrrに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。第2配管系統50bは、前輪Wfl、Wfrに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。また、各車輪Wに対して、車輪速度センサ76が設置されている。第1実施形態では前後配管が採用されている。
【0054】
第1配管系統50aは、主管路Aと、差圧電磁弁51と、増圧弁52、53と、減圧管路Bと、減圧弁54、55と、調圧リザーバ56と、還流管路Cと、ポンプ57と、補助管路Dと、オリフィス部58と、ダンパ部59と、を備えている。説明において、「管路」の用語は、例えば液圧路、流路、油路、通路、又は配管等に置換可能である。
【0055】
主管路Aは、管路32とホイールシリンダ541、542とを接続する管路である。差圧電磁弁51は、主管路Aに設けられ、主管路Aを連通状態と差圧状態に制御する電磁弁(差圧制御弁)である。差圧状態は、弁により流路が制限された状態であり、絞り状態ともいえる。差圧電磁弁51は、下流側ECU6Aの指示に基づく制御電流に応じて、自身を中心としたマスタシリンダ1側の液圧とホイールシリンダ541、542側の液圧との差圧(以下、「第一差圧」とも称する)を制御する。換言すると、差圧電磁弁51は、主管路Aのマスタシリンダ1側の部分の液圧と主管路Aのホイールシリンダ541、542側の部分の液圧との差圧を制御可能に構成されている。差圧電磁弁51は、供給される電流値が高いほど差圧を大きく制御可能な電磁弁といえる。
【0056】
差圧電磁弁51は、非通電状態で連通状態となるノーマルオープンタイプである。差圧電磁弁51に印加される制御電流が大きいほど、第一差圧は大きくなる。差圧電磁弁51が差圧状態に制御されてポンプ57が駆動している場合、制御電流に応じて、マスタシリンダ1側の液圧よりもホイールシリンダ541、542側の液圧のほうが大きくなる。差圧電磁弁51に対しては、チェックバルブ51aが設置されている。主管路Aは、ホイールシリンダ541、542に対応するように、差圧電磁弁51の下流側の分岐点Xで2つの管路A1、A2に分岐している。
【0057】
増圧弁52、53は、下流側ECU6Aの指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で開状態(連通状態)となるノーマルオープンタイプの電磁弁である。増圧弁52は管路A1に配置され、増圧弁53は管路A2に配置されている。増圧弁52、53は、増圧制御時に非通電状態で開状態となってホイールシリンダ541〜544と分岐点Xと連通させ、保持制御及び減圧制御時に通電されて閉状態となりホイールシリンダ541〜544と分岐点Xとを遮断する。
【0058】
減圧管路Bは、管路A1における増圧弁52とホイールシリンダ541、542との間と調圧リザーバ56とを接続し、管路A2における増圧弁53とホイールシリンダ541、542との間と調圧リザーバ56とを接続する管路である。減圧弁54、55は、下流側ECU6Aの指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で閉状態(遮断状態)となるノーマルクローズタイプの電磁弁である。減圧弁54は、ホイールシリンダ541、542側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁55は、ホイールシリンダ541、542側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁54、55は、主に減圧制御時に通電されて開状態となり、減圧管路Bを介してホイールシリンダ541、542と調圧リザーバ56とを連通させる。調圧リザーバ56は、シリンダ、ピストン、及び付勢部材を有するリザーバである。
【0059】
還流管路Cは、減圧管路B(又は調圧リザーバ56)と、主管路Aにおける差圧電磁弁51と増圧弁52、53の間(ここでは分岐点X)とを接続する管路である。ポンプ57は、吐出ポートが分岐点X側で吸入ポートが調圧リザーバ56側に配置されるように、還流管路Cに設けられている。ポンプ57は、電気モータ90によって駆動されるギア式の電動ポンプである。ポンプ57は、還流管路Cを介して、調圧リザーバ56からマスタシリンダ1側又はホイールシリンダ541、542側にブレーキ液を流動させる。また、ポンプ57は、例えばアンチスキッド制御の際、開状態の減圧弁54、55を介して、ホイールシリンダ541、542内のブレーキ液をマスタシリンダ1に汲み戻す。このように、ポンプ57は、マスタシリンダ1とホイールシリンダ541、542との間に配置され、ホイールシリンダ541、542内のブレーキ液をホイールシリンダ541、542外に吐出することができる。
【0060】
ポンプ57は、ブレーキ液を吐出する吐出過程と、ブレーキ液を吸入する吸入過程と、を繰り返すように構成されている。つまり、ポンプ57は、電気モータ90により駆動されると、吐出過程と吸入過程とを交互に繰り返して実行する。吐出過程では、吸入過程で調圧リザーバ56から吸入したブレーキ液が、分岐点Xに供給される。電気モータ90は、下流側ECU6Aの指示により、リレー(図示せず)を介して通電され、駆動する。ポンプ57と電気モータ90は、併せて電動ポンプともいえる。
【0061】
オリフィス部58は、還流管路Cのポンプ57と分岐点Xとの間の部分に設けられた、絞り形状部位(いわゆるオリフィス)である。ダンパ部59は、還流管路Cのポンプ57とオリフィス部58との間の部分に接続されたダンパ(ダンパ機構)である。ダンパ部59は、還流管路Cのブレーキ液の脈動に応じて、当該ブレーキ液を吸収・吐出する。オリフィス部58及びダンパ部59は、脈動を低減(減衰、吸収)する脈動低減機構といえる。
【0062】
補助管路Dは、調圧リザーバ56の調圧孔56aと、主管路Aにおける差圧電磁弁51よりも上流側(又はマスタシリンダ1)とを接続する管路である。調圧リザーバ56は、ストローク増加による調圧孔56aへのブレーキ液の流入量増加に伴い、弁孔56bが閉塞されるように構成されている。弁孔56bの管路B、C側にはリザーバ室56cが形成される。
【0063】
ポンプ57の駆動により、調圧リザーバ56又はマスタシリンダ1内のブレーキ液が、還流管路Cを介して主管路Aにおける差圧電磁弁51と増圧弁52、53の間の部分(分岐点X)に吐出される。そして、差圧電磁弁51及び増圧弁52、53の制御状態に応じて、ホイール圧が加圧される。このようにアクチュエータ5では、ポンプ57の駆動と各種弁の制御により加圧制御が実行される。つまり、アクチュエータ5は、ホイール圧を加圧可能に構成されている。なお、主管路Aの差圧電磁弁51とマスタシリンダ1の間の部分には、当該部分の液圧(マスタ圧)を検出する圧力センサ77が設置されている。圧力センサ77は、検出結果を上流側ECU6及び下流側ECU6Aに送信する。
【0064】
第2配管系統50bは、第1配管系統50aと同様の構成であって、前輪Wfl、Wfrのホイールシリンダ543、544の液圧を調整する系統である。第2配管系統50bは、主管路Aに相当し管路31とホイールシリンダ543、544とを接続する主管路Abと、差圧電磁弁51に相当する差圧電磁弁91と、増圧弁52、53に相当する増圧弁92、93と、減圧管路Bに相当する減圧管路Bbと、減圧弁54、55に相当する減圧弁94、95と、調圧リザーバ56に相当する調圧リザーバ96と、還流管路Cに相当する還流管路Cbと、ポンプ57に相当するポンプ97と、補助管路Dに相当する補助管路Dbと、オリフィス部58に相当するオリフィス部58aと、ダンパ部59に相当するダンパ部59aと、を備えている。第2配管系統50bの詳細構成については、第1配管系統50aの説明を参照できるため、説明を省略する。また、以下の説明において、アクチュエータ5の各部の記載は、第1配管系統50aの符号を用い、第2配管系統50bの符号は省略する。このように、アクチュエータ5は、サーボ圧発生装置4の出力液圧(マスタ圧)とホイール圧との間の差圧を調整する常開型の差圧電磁弁51、91と、サーボ圧発生装置4と差圧電磁弁51、91との間のブレーキ液を、差圧電磁弁51、91とホイールシリンダ541〜544との間に吐出するポンプ57、97と、を備えている。
【0065】
上流側ECU6及び下流側ECU6Aは、CPUやメモリ等を備える電子制御ユニット(ECU)である。上流側ECU6は、ホイール圧の目標値である目標ホイール圧(又は目標減速度)に基づいて、サーボ圧発生装置4に対する制御を実行するECUである。上流側ECU6は、目標ホイール圧に基づいて、サーボ圧発生装置4に対して、増圧制御(加圧制御)、減圧制御、又は保持制御を実行する。増圧制御では、増圧弁42が開状態となり、減圧弁41が閉状態となる。減圧制御では、増圧弁42が閉状態となり、減圧弁41が開状態となる。保持制御では、増圧弁42及び減圧弁41が閉状態となる。このように、サーボ圧発生装置4は、ホイールシリンダ541〜544に供給する液圧(マスタ圧)を保持する際に電力が消費されるように構成されている。サーボ圧発生装置4は、マスタシリンダ1と、マスタピストン14、15を駆動する駆動液圧(パイロット圧又はサーボ圧)を発生させる駆動液圧室(第1パイロット室4D又はサーボ室1A)へのブレーキ液の流入出を調整する常開型の減圧弁41とを有し、当該駆動液圧を保持するに際し減圧弁41が閉弁されるように構成されている。また、加圧されたブレーキ液を出力する装置として、加圧装置は、マスタシリンダ1及びサーボ圧発生装置4を含んで構成されているといえる。
【0066】
上流側ECU6には、各種センサ71〜77が接続されている。上流側ECU6は、これらセンサから、ストローク情報、マスタ圧情報、反力液圧情報、サーボ圧情報、及び車輪速度情報等を取得する。上記センサと上流側ECU6とは、図示しない通信線(CAN)により接続されている。また、上流側ECU6は、下流側ECU6Aからアクチュエータ5の制御状況に関する情報(アンチスキッド制御中等)を取得する。
【0067】
下流側ECU6Aは、ホイール圧の目標値である目標ホイール圧(又は目標減速度)に基づいて、アクチュエータ5に対する制御を実行するECUである。下流側ECU6Aは、目標ホイール圧に基づいて、アクチュエータ5に対して、増圧制御、減圧制御、保持制御、又は加圧制御を実行する。
【0068】
ここで、ホイールシリンダ541に対する制御を例に下流側ECU6Aによる各制御状態について説明すると、増圧制御では、増圧弁52(及び差圧電磁弁51)が開状態となり、減圧弁54が閉状態となる。なお、差圧電磁弁51と並列に設置されたチェックバルブ51aにより、上流から下流へのブレーキ液の流れは許容され、その逆は禁止される。したがって、上流側の液圧が下流側の液圧より高い場合、差圧電磁弁51への制御なしに、チェックバルブ51aを介してブレーキ液は下流に供給される。減圧制御では、増圧弁52が閉状態となり、減圧弁54が開状態となる。減圧制御では、ポンプ57によりホイールシリンダ541からブレーキ液を吸い出すこともできる。
【0069】
保持制御では、増圧弁52及び減圧弁54が閉状態となる。また、保持制御は、増圧弁52を閉じず、減圧弁54を閉じ、差圧電磁弁51を閉じる(絞る)ことでも実行できる。また、保持制御では、加圧応答性の観点から電気モータ90及びポンプ57を駆動させたまま、差圧電磁弁51からブレーキ液を上流側に漏らしつつ、差圧を維持する制御もなされる。つまり、差圧電磁弁51及び/又は増圧弁52は、ホイール圧を保持する保持電磁弁(保持装置)といえる。ただし、増圧弁52には逆止弁が設けられており、ホイール圧が分岐点Xの液圧より高くなると、当該逆止弁を介して分岐点X側にブレーキ液が流出する。つまり、第1実施形態の増圧弁52では、ホイール圧をマスタ圧より高く保持することはできない。一方、差圧電磁弁51は、マスタ圧とホイール圧とが同じ液圧である状態で差圧制御する(絞る)と、ポンプ57の駆動なく、当該差圧分はマスタ圧がホイール圧より小さくなっても差圧制御時のホイール圧が保持される。したがって、第1実施形態では、差圧電磁弁51を保持電磁弁として機能させ、増圧弁52は減圧制御の際に閉弁させる。
【0070】
加圧制御では、差圧電磁弁51が差圧状態(絞り状態)となり、増圧弁52が開状態となり、減圧弁54が閉状態となり、電気モータ90及びポンプ57が駆動する。電気モータ90及びポンプ57は、マスタ室とホイールシリンダとを接続する液圧路にブレーキ液を供給する液圧供給部ともいえる。また、減圧弁54は、差圧電磁弁51によって保持されたホイール圧を減圧する弁といえる。アクチュエータ5、差圧電磁弁51、又は差圧電磁弁51とポンプ57と電気モータ90は、電流が供給されることでマスタ圧とホイール圧との差圧を制御可能に構成された「第2加圧装置」に相当する。第2加圧装置は、差圧電磁弁51と、差圧電磁弁51とホイールシリンダ541、542とを接続する主管路Aにブレーキ液を供給するポンプ57と、ポンプ57を駆動する電気モータ90と、を備えているといえる。
【0071】
下流側ECU6Aには、ストロークセンサ71、圧力センサ73、77、及び車輪速度センサ76等の各種センサが接続されている。下流側ECU6Aは、これらセンサから、ストローク情報、マスタ圧情報、反力液圧情報、及び車輪速度情報等を取得する。各種センサと下流側ECU6Aとは、図示しない通信線により接続されている。下流側ECU6Aは、状況や要求に応じて、アクチュエータ5に対し、横滑り防止制御やアンチスキッド制御を実行する。
【0072】
両ECU6、6Aの協調制御の例について簡単に説明すると、上流側ECU6は、ストローク情報に基づいて目標減速度を設定し、通信線を介して目標減速度情報を下流側ECU6Aに伝達する。目標マスタ圧及び目標ホイール圧は、目標減速度に基づいて決定される。上流側ECU6と下流側ECU6Aは、協調制御により、ホイール圧を目標ホイール圧に(減速度を目標減速度に)近づけるようにブレーキ液の液圧を制御する。上流側ECU6ではストロークに基づき目標減速度を演算して目標マスタ圧を演算し、下流側ECU6Aでは目標減速度に基づき目標ホイール圧を演算し、検出されたマスタ圧(又は目標マスタ圧)と目標ホイール圧とに基づき加圧量(制御量)を設定する。下流側ECU6Aは、制御状況(アンチスキッド制御中等)を上流側ECU6に送信する。なお、ホイール圧は、マスタ圧(圧力センサ77の検出値)及びアクチュエータ5の制御状態から推定することができる。また、例えばホイールシリンダ541、544に対してホイール圧センサを設けても良い。
【0073】
(発熱抑制制御)
第1実施形態では、サーボ圧発生装置4及び上流側ECU6によるマスタ圧の制御をメインとし、アクチュエータ5及び下流側ECU6Aによる調圧を補助として、制動力(ホイール圧)を制御している。つまり、各ECU6、6Aは、アンチスキッド制御や横滑り防止制御等の特定制御時を除く通常時において、目標マスタ圧と目標ホイール圧とを同じ値に設定している。通常制御では、ホイール圧はマスタ圧と同じ値となる。
【0074】
ここで、上流側ECU6及び下流側ECU6Aは、所定条件が満たされると、協調して発熱抑制制御(特定制御に含まれる)を実行する。したがって、発熱抑制制御の説明において上流側ECU6及び下流側ECU6Aを1つの制御装置60と称する。制御装置60は、発熱抑制制御を実行する機能として、取得部61と、制御部62と、を備えている。取得部61は、サーボ圧発生装置4の発熱状態を示す発熱相関値を取得する。制御部62は、取得部61により取得されている発熱相関値が所定の閾値以上である場合に、サーボ圧発生装置4(第1実施形態では減圧弁41)への電力供給を減少させる第1制御と、ホイール圧の第1制御の実行に伴う変化を補償すべく、アクチュエータ5(第1実施形態では差圧電磁弁51、91)を制御する第2制御とを実行する。ここで、本実施形態の取得部61は、サーボ圧発生装置4(第1実施形態では減圧弁41)がホイールシリンダ541〜544に供給する液圧(マスタ圧)を保持している状態における発熱相関値を維持状態相関値として取得する。制御部62は、維持状態相関値が閾値以上である場合に、第1制御及び第2制御を実行する。換言すると、制御装置60は、発熱抑制制御として、減圧弁41の発熱に相関する発熱相関値(維持状態相関値)が閾値以上となった場合、発熱相関値が閾値未満である場合よりも減圧弁41に供給する電流値を規定値低下させ、且つ規定値に応じて差圧電磁弁51、91に供給する電流値を上昇させる。差圧電磁弁51、91への制御電流の上昇度は、規定値と目標ホイール圧に基づいて、ホイール圧が目標ホイール圧を維持できるように設定される。
【0075】
第1実施形態の発熱相関値(維持状態相関値)は、停車中(車速=0km/h)における制動力の継続発生時間、すなわち停車中における減圧弁41への継続通電時間(連続通電時間又は継続閉弁時間ともいえる)に設定されている。減圧弁41への継続通電時間と減圧弁41の発熱温度との関係は、通電時間に対する減圧弁41のコイルの抵抗値の変化等から、予め演算等で求めることができる。減圧弁41への継続通電時間が長いほど又は減圧弁41に供給する電流値が大きいほど、減圧弁41の発熱温度は高くなる。制御装置60は、停車中における減圧弁41への継続通電時間が所定時間以上となった場合、上記の発熱抑制制御を実行する。なお、発熱相関値は、例えば実際の減圧弁41の温度(例えば温度センサの検出値)や演算による推定温度であっても良く、この場合、閾値は所定温度となる。
【0076】
発熱抑制制御の具体例を、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、具体例の状況では、ブレーキ操作が為されて制動力が発生して車両が停車し、停車後にブレーキペダル10が踏み増されて目標減速度(目標ホイール圧)が上昇している。目標減速度の上昇に応じて、目標マスタ圧も上昇し、減圧弁41に供給される電流値(制御電流値)も上昇する。減圧弁41への電流値が上昇することで、パイロット圧をより高い液圧で保持できるようになり、サーボ圧及びマスタ圧を上昇させることができる。この際、アクチュエータ5は作動しておらず、差圧電磁弁51、91は連通状態(非通電状態)となっている。
【0077】
そして、制御装置60は、制動力発生状態において、停車から所定時間後、減圧弁41に供給する電流値を規定値低下させ、且つ規定値に応じて差圧電磁弁51、91に供給する電流値を上昇させる。つまり、取得部61は、マスタ圧を所定圧以上に保持する制御(増圧の場合も減圧弁41の閉弁が前提)の、停車後からの継続時間を取得する。制御部62は、取得部61が取得した継続時間が所定時間以上となった場合、第1制御及び第2制御を実行する。そして、この際、第1実施形態の制御部62は、差圧電磁弁51、91に対する電流値の上昇(第2制御)を、減圧弁41に対する電流値の低減(第1制御)よりも若干先に行っている。つまり、制御部62は、第2制御を実行した後に、第1制御を実行する。換言すると、制御装置60は、規定値に応じて差圧電磁弁51、91に供給する電流値を上昇させた後に、減圧弁41に供給する電流値を規定値低下させる。これにより、制動力の抜け(低下)の発生を精度良く抑制できる。なお、これら電流値の上昇と低減は同時に行われても良い。
【0078】
また、制御部62は、第2制御において、第1制御の実行に伴うサーボ圧発生装置4の出力液圧(マスタ圧)の変化量よりも大きな変化量を想定して、アクチュエータ5を制御する。換言すると、制御部62は、差圧電磁弁51、91に供給する電流値の上昇により大きくなる差圧量が、規定値に対応するマスタ圧の減圧量よりも大きくなるように、差圧電磁弁51、91に供給する電流値を上昇させる。つまり、制御部62は、減圧弁41への制御電流を低下させてマスタ圧を所定圧だけ低下させ、差圧電磁弁51、91に対して制御電流を供給し、制御差圧を0から所定差圧(所定圧<所定差圧)に上昇させる。これにより、ポンプ57及び電気モータ90が駆動していない状態における圧損が考慮された制御となり、制動力の抜け(低下)の発生を精度良く抑制できる。
図4の例において、電気モータ90は駆動していない。なお、所定差圧は所定圧と同じ値になるように設定されても良い。
【0079】
そして、ブレーキペダル10がリリースされて目標減速度が低下すると、制御装置60は、目標減速度の低下に応じて、減圧弁41への制御電流を低下させて0にし、その後、差圧電磁弁51、91への制御電流を低下させて0(差圧=0)にする。つまり、制御装置60は、目標減速度(目標ホイール圧)の低下に応じて、減圧弁41への制御電流を低下させた後、差圧電磁弁51、91への制御電流を低下させる。上流側のマスタ圧は、例えば機械的なヒステリシスの影響が出やすく、減圧弁41を先に開弁し、その後、比較的リニアに調圧可能な差圧電磁弁51、91の制御差圧を低下させることで、滑らかにホイール圧を減圧することができる。アクチュエータ5によるホイール圧の制御には、不感帯が不要であり、制御の精度は上流側よりも高くなる。ヒステリシス(制御遅れ)は、例えばレギュレータ44におけるシール部材と制御ピストン445との間の摺動抵抗などにより発生する。なお、ホイール圧の減圧は、これに限らず、制御装置60が目標減速度の低下に応じて適宜行っても良い。また、ヒステリシスが小さい場合、制御装置60は、差圧電磁弁51、91への制御電流を低下させて0(差圧=0)にした後、減圧弁41への制御電流を低下させて0にしても良い。
【0080】
第1実施形態によれば、マスタ圧を保持する状況において、減圧弁41が通電により閾値以上発熱した場合、第1制御により減圧弁41への供給電流(制御電流)が低下するとともに、第2制御により差圧電磁弁51、91への供給電流が上昇する。制御電流の低下により、減圧弁41の発熱は抑制される。また、差圧電磁弁51、91への供給電流の上昇により、減圧弁41への供給電流の低下によるホイール圧の低下が補償され(すなわちホイール圧は保持され)、制動力は保持される。つまり、第1実施形態によれば、電力供給による装置の発熱、ここでは電流が供給されることで液圧を保持する装置である減圧弁41の発熱を、制動力を低下させることなく抑制することができる。また、第1実施形態によれば、アクチュエータ5の差圧電磁弁51、91を利用するため、新たに電磁弁を追加することなく、上記作用効果を実現することができる。
【0081】
また、減圧弁41のオリフィス(開口)は、マスタ圧のスムーズな減圧の観点から、大きいほうが好ましい。そこでオリフィスを大きくすると、その分シール径も大きくなり、所定の液圧保持に必要な制御電流が増える。このため、特に減圧弁41は、制動が継続されることによる発熱の課題が重要となる。なお、発熱抑制制御は、マスタ圧が規定値以上である場合に実行されることが好ましい。これにより、発熱抑制制御について、不要と推定される場合(マスタ圧が低圧の際)での実行を極力抑えつつ、実際に発熱する可能性が高い場合(マスタ圧が高圧の際)に適切に実行することができる。
【0082】
<第2実施形態>
第2実施形態の車両用制動装置は、第1実施形態と比べて、制御装置60の制御方法が異なっている。したがって、第1実施形態の説明及び図面に基づいて、異なっている部分のみを説明する。第2実施形態では、アクチュエータ(第2実施形態では「第1加圧装置」に相当する)5及び下流側ECU6Aによる調圧をメインとし、サーボ圧発生装置(第2実施形態では「第2加圧装置」に相当する)4及び上流側ECU6によるマスタ圧の制御を補助として、制動力(ホイール圧)を制御している。つまり、制御装置60は、通常時において、サーボ圧発生装置4による補助(倍力)なく、ほぼアクチュエータ5の加圧制御によってホイール圧を発生させている。通常時、マスタ圧は、ブレーキ操作(踏力)で機械的に生じる液圧となる。目標ホイール圧は、上記同様、ストロークに応じて設定される。
【0083】
この構成において、取得部61は、アクチュエータ5(ここでは差圧電磁弁51、91又は電気モータ90)の発熱状態を示す発熱相関値を取得する。制御部62は、取得部61により取得されている発熱相関値が所定の閾値以上である場合に、アクチュエータ5(第2実施形態では差圧電磁弁51、91又は電気モータ90)への電力供給を減少させる第1制御と、ホイール圧の第1制御の実行に伴う変化を補償すべく、サーボ圧発生装置4を制御する第2制御とを実行する。換言すると、制御装置60は、発熱抑制制御として、差圧電磁弁51、91又は電気モータ90の発熱に相関する発熱相関値が閾値以上となった場合、発熱相関値が閾値未満である場合よりも差圧電磁弁51、91又は電気モータ90に供給する電流値を規定値低下させ、且つ規定値に応じてマスタ圧が増大するようにサーボ圧発生装置4に供給する電流値を上昇させる。発熱相関値(例えば維持状態相関値)は、第1実施形態同様、停車後の差圧電磁弁51、91又は電気モータ90への継続通電時間に設定されている。差圧電磁弁51、91又は電気モータ90への供給電流の低下により、差圧電磁弁51、91又は電気モータ90の発熱は抑制される。また、サーボ圧発生装置4への供給電流が上昇することで、ホイール圧の基礎となるマスタ圧が増大し、ホイール圧は保持される。したがって、第2実施形態によっても、電流が供給されることで液圧を保持する装置である差圧電磁弁51、91又は電気モータ90の発熱を、制動力を低下させることなく抑制することができる。
【0084】
また、第2実施形態において、電気モータ90の発熱のみに着目すると、制御装置60は、電気モータ90の発熱に相関する発熱相関値が閾値以上となった場合、電気モータ90への制御電流を低下させ、電気モータ90を停止させても良い。そして、差圧電磁弁51、91及びサーボ圧発生装置4(例えば減圧弁41)への制御電流を上昇させて、目標ホイール圧を達成させても良い。
【0085】
<第3実施形態>
第3実施形態の車両用制動装置は、第1実施形態と比べて、減圧弁41近辺及びアクチュエータ5の構成が異なっている。したがって、第1実施形態の説明及び図面と
図5に基づいて、異なっている部分のみを説明する。
図5に示すように、第1パイロット室4Dとリザーバ171とを接続する配管(「流路」に相当する)411には、減圧弁41及び保持電磁弁8が直列に配置されている。つまり、サーボ圧発生装置4を含む加圧装置は、マスタシリンダ1と、マスタピストン14、15を駆動するパイロット圧を発生させる第1パイロット室4Dとリザーバ171を接続する配管411に配置された常開型の減圧弁41と、配管411のうち減圧弁41とリザーバ171との間の部分に配置された常開型の保持電磁弁8と、を有しパイロット圧を保持するに際し減圧弁41が閉弁されるように構成されている。保持電磁弁8は、電流が供給されることでマスタ圧を保持するように作動する電磁弁である。第3実施形態の保持電磁弁8は、第1実施形態の差圧電磁弁51、91と同様の構成となっている。つまり、保持電磁弁8は、配管411のうち自身より減圧弁41側の液圧が自身よりリザーバ171側の液圧よりも差圧制御分だけ高くなるように制御可能な電磁弁である。
【0086】
アクチュエータ5は、第1実施形態のようなホイール圧を単独で加圧可能ないわゆるESCアクチュエータではなく、差圧電磁弁51、91等を備えない、いわゆるABSアクチュエータである。アクチュエータ5は、図示しないが、電磁弁、ポンプ、及びモータを備え、アンチスキッド制御を実行可能に構成されている。ポンプは、例えば減圧時に、ホイールシリンダ541〜544内のブレーキ液をマスタシリンダ1側に吸い出すことができる。
【0087】
この構成において、取得部61は、減圧弁41の発熱状態を示す発熱相関値を取得する。制御部62は、取得部61により取得されている発熱相関値が所定の閾値以上である場合に、減圧弁41への電力供給を減少させる第1制御と、マスタ圧の第1制御の実行に伴う変化を防止すべく、保持電磁弁8を制御する第2制御とを実行する。換言すると、制御装置60は、減圧弁41の発熱に相関する発熱相関値が閾値以上となった場合、発熱相関値が閾値未満である場合よりも減圧弁41に供給する電流値を規定値低下させ、且つ規定値に応じて保持電磁弁8に供給する電流値を上昇させる。この発熱抑制制御は、第1実施形態同様、
図4に示すように(差圧電磁弁51、91を保持電磁弁8に置き換えて)実行することができる。つまり、減圧弁41への供給電流の低下により、減圧弁41の発熱は抑制される。また、保持電磁弁8への供給電流が上昇することで、マスタ圧は保持される。したがって、第3実施形態によっても、電流が供給されることで液圧を保持する装置である減圧弁41の発熱を、制動力を低下させることなく抑制することができる。なお、アクチュエータ5は、ESCアクチュエータであっても良い。
【0088】
<その他>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、第1実施形態のサーボ圧発生装置4に代わる装置としての加圧装置80は、
図6に示すように、マスタシリンダ1と、電気モータ81の作動による回転運動を直線運動に変換する直動機構82によって駆動されるマスタピストン14と、を有し、マスタ圧を保持するに際し電気モータ81が作動されるように構成されている。直動機構82は、例えばボールねじ機構である。電動ブースタでは、直動機構82の逆効率が高いため、マスタ圧を保持するために、電気モータ81に電力供給し駆動力を維持する必要がある。この構成においても、取得部61が、加圧装置80(例えば電気モータ81)の発熱相関値(例えば維持状態相関値)を取得し、制御部62が、発熱相関値が所定の閾値以上である場合に、加圧装置80(例えば電気モータ81)への電力供給を減少させる第1制御と、ホイール圧の第1制御の実行に伴う変化を補償すべく、アクチュエータ5を制御する第2制御とを実行する。これによっても第1実施形態と同様の効果が発揮される。
【0089】
また、発熱抑制制御は、停車中の実行に限らず、例えば車速が所定速度以下の際に実行するように設定されても良い。制御装置60は、例えば、車速が所定速度以下で且つマスタ圧又はホイール圧が規定値以上である継続時間が所定時間以上である場合に、発熱抑制制御を実行しても良い。ただし、停車中に実行することにより、発熱抑制制御の実行により制動力が変動した場合でも、運転者が違和感をもつ可能性が低くなる。また、本発明は、例えばハイブリッド車両、自動運転機能をもつ車両、又は自動ブレーキ機能をもつ車両に対しても適用できる。また、制御装置60は、1つのECUで構成されても良い。また、サーボ圧発生装置4は、レギュレータ44がない構成、例えばサーボ室1Aに減圧弁41及び増圧弁42が接続される構成であっても良い。また、ヒステリシスは、レギュレータ44以外でも生じ得る。また、レギュレータ44は、例えばスプール弁を用いたタイプでも良い。また、目標減速度(目標ホイール圧)はブレーキペダル10のストロークに対応するため、
図4の目標減速度はストロークに置き換えることもできる。また、制御装置60は、発熱相関値が大きいほど、規定値を大きく設定しても良い。規定値は、発熱対象毎に設定されている。また、第1又は第2実施形態において、発熱抑制制御の実行(及び/又は発熱相関値の判定)は、保持制御時に限らず、増減圧制御時に行っても良い。