(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の空気清浄用濾材は、シリカゲルを含むことが必要である。シリカゲルは活性炭と異なり天然物由来の表面官能基や不純物を有しないので、アルデヒド吸着用の薬剤を添着してもシリカゲルと反応することはなく、薬剤が劣化するのを抑制できる。シリカゲルは、二酸化珪素を主成分とした一次粒子の凝集体であり気相法、湿式法(沈降法)、ゾルゲル法など各種方法により得ることができる。本発明に用いられるシリカゲルは、所望の特性が得られるものであれば、どのような方法にて得られるものでも用いることができる。
【0013】
本発明に用いられるシリカゲルは、破砕形状であることが必要である。球状であるとカバー層間に担持した際に、充てん密度が高くなり通気抵抗が大きくなるばかりか、粒子が滑りやすいためにシート化後、あるいはプリーツ加工後に粒子脱落が多くなる。
【0014】
本発明に用いられるシリカゲルの平均粒径は、50μm以上であることが好ましく、100〜600μmであることがより好ましい。平均粒径が50μm未満であると吸着速度を得るには有利であるが、カバー層間にシリカゲル粒子を固定化して空気清浄用濾材として使用する場合、吸着容量を確保するために使用量を増やすと充てん密度が高くなるため、通気抵抗が大きすぎて、通風できなくなる。さらに脱落や飛散が生じやすくなる可能性がある。
【0015】
本発明に用いられるシリカゲルの細孔直径は、12〜100nmであることが好ましく、20〜90nmであることがより好ましく、30〜80nmであることがさらに好ましく、40〜70nmであることが最も好ましい。細孔直径が12nm未満であると薬剤添着時に細孔が閉塞しやすくなるため、反応速度の面で不利となり、また壁間の分子間力による物理吸着力が大きくなるため臭気の非意図的吸着および脱離が大きくなる。一方、細孔直径が100nmを超える場合には表面積を得ることが困難であるため、十分な脱臭速度が得られない。
【0016】
なお、本発明で定義される細孔直径はBJH法により得られるピーク直径を意味しており、より詳しくは77ケルビン(液体窒素温度)における窒素吸着法により得られる吸着側等温線を用いて求められる。本法では必ずしも全細孔容積を求める必要がないため、評価、解析が容易となる。
【0017】
本発明に用いられるシリカゲルでは毛管凝縮の作用を低減するために上述の細孔直径を有するとともに、脱臭材として有用な吸着速度を発現させるために表面積が必要である。すなわち、77ケルビンにおける窒素吸着BET法により計算される比表面積において20〜1000m
2/gであることが好ましく、35〜500m
2/gであることがより好ましく、50〜400m
2/gであることがさらに好ましく、70〜300m
2/gであることがなおさら好ましい。比表面積が20m
2/g未満であるとアルデヒドの除去速度が小さくなり、1000m
2/gを超えると臭気の物理吸着量が多くなる。
【0018】
本発明の空気清浄用濾材はアセトアルデヒド等の低級アルデヒドに対する吸着性能を発現させるために、シリカゲルに少なくとも1種のヒドラジド化合物を担持してなることを特徴とする。
【0019】
ヒドラジド化合物としては、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物等を挙げることができる。
【0020】
モノヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、一般式(1)R−CO−NHNH
2[式中、Rは水素原子、アルキル基または置換基を有することのあるアリール基を示す。]で表されるモノヒドラジド化合物を挙げることができる。 上記一般式(1)において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキル基を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、これらの中でもフェニル基が好ましい。またアリール基の置換基としては、例えば、水酸基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基等を挙げることができる。
【0021】
上記一般式(1)のヒドラジド化合物としては、より具体的には、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等を例示できる。
【0022】
ジヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、一般式(2)H
2NHN−X−NHNH
2[式中Xは基−CO−または基−CO−A−CO−を示す。Aはアルキレン基またはアリーレン基を示す。]で表わされるジヒドラジド化合物を挙げることができる。 上記一般式(2)において、Aで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキレン基を挙げることができる。アルキレン基の置換基としては、例えば水酸基等を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等を挙げることができ、これらの中でもフェニレン基、ナフチレン基等が好ましい。アリーレン基の置換基としては、上記アリール基の置換基と同様のものを挙げることができる。
【0023】
上記一般式(2)のジヒドラジド化合物は、具体的には、例えば、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。さらに、特公平2−4607号公報に記載の各種2塩基酸ジヒドラジド化合物、2,4−ジヒドラジノ−6−メチルアミノ−sym−トリアジン等も本発明のジヒドラジドとして用いることができる。
【0024】
ポリヒドラジド化合物は、具体的には、ポリアクリル酸ヒドラジド等を例示できる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましく、2塩基酸ジヒドラジドが特に好ましく、アジピン酸ジヒドラジドがより一層好ましい。
【0025】
上記ヒドラジド化合物は1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
シリカゲル上へのヒドラジド化合物の担持処理法としては、所望の特性が得られる手法であれば特に制限されないが、例えばシリカゾル中にヒドラジド化合物を混合し一次粒子表面上に担持させると共に乾燥固化させる方法、シリカゲルを溶媒中に溶解させヒドラジド化合物を含浸担持する方法、ヒドラジド化合物を溶媒中に溶解させシリカゲル上に噴霧ま
たは塗布することにより吸収させる方法などにより担持させ、続く工程により溶媒の乾燥を行う。溶媒としてはヒドラジド化合物の特性ならびに作業性を考慮し適当なものを選択することができる。このうち安全性ならびに作業性の観点から水系溶媒を用いることが好ましい。
【0027】
より好ましい担持処理方法としては、容器中で攪拌混合しながら水分が滞留する未満の薬剤溶液を吸収担持させ、続く乾燥工程においても攪拌混合もしくは流動層などにより粒子分散性を維持する方法である。当該方法を用いることにより、粒子間を架橋した溶液による凝集固着が軽減されると共に、後述する濾材のシート化時にシリカゲルおよびシート表面へのヒドラジド化合物の析出および析出物の飛散を低減することができる。さらには、シート加工時に、薬剤析出物または微粉末が減少することによる粒子固着性向上効果もある。
【0028】
より具体的な担持例としてはヘンシェルミキサーまたはリボンミキサー等にて攪拌混合しながらヒドラジド化合物溶液を噴霧または適時注入することで溶液を吸収させるとともに、続く工程で加熱、減圧、またはその併用をすることにより乾燥することが好ましい。ヒドラジド化合物および担体であるシリカゲルも親水性であるため活性炭と比較して薬剤の平衡吸着力に劣るため、当該手法を用いることで表面析出の低減された良好な濾材を得ることができる。
【0029】
攪拌混合法により担持させる場合においては装置およびシリカゲルの特性により適当な条件を用いることができる。より具体的には溶媒使用量はシリカゲル粒子100部に対し5〜300重量部が好ましく、10〜250重量部がより好ましく、20〜200重量部がさらに好ましく、50〜150重量部が最も好ましい。溶媒使用量が、5重量部未満の場合には、担体への浸透が不十分となるため吸着性能が低下する。また、溶媒使用量が、300重量部を超える場合には、シリカゲルが飽和するため、表面への薬剤析出および凝集が生じると共に、乾燥に多大なエネルギーが必要となる。シリカゲルの細孔容積との観点から鑑みると、概ね全細孔容積に対して5%〜200%の溶媒体積が好ましく、10%〜150%の溶媒体積がより好ましく、20〜110%の溶媒体積がさらに好ましい。
【0030】
本発明におけるヒドラジド化合物のシリカゲルへの担持量としては、シリカゲル100部に対して1〜100重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましい。1重量部未満であると除去容量と速度が不十分となり、100重量部を超えるとシリカゲルの細孔閉塞が顕著となり、多孔質体との併用効果である除去容量と速度が得られなくなる。
【0031】
本発明に用いられる活性炭の原料としては、ヤシ殻、木質系、石炭系、ピッチ系などが挙げられるが、ヤシ殻であることが好ましい。ヤシ殻活性炭の細孔は他の原料と比較して小さい細孔の比率が多く、不純物である灰分も少ない。つまり、ヤシ殻活性炭は細孔が小さいために、吸着した臭気分子に対して効果的に細孔壁との分子間力が働き、吸着した臭気分子を脱離させにくい特徴がある。また灰分が少ないことから重量当たりの臭気吸着性能も高い。
【0032】
本発明に用いられる活性炭の形状は、破砕形状であることが必要である。球状であるとカバー層間に担持した際に、充てん密度が高くなり通気抵抗が大きくなるばかりか、粒子が滑りやすいためにシート化後、またはプリーツ加工後に粒子脱落が多くなる。破砕形状の活性炭はヤシ殻活性炭をボールミルや破砕機等で機械的に粉砕することにより得ることができる。
【0033】
本発明に用いられる活性炭の平均粒径は、通気性、ダスト保持性、脱落性、シート加工性等を考慮して、JIS K 1474活性炭試験方法に基づいた質量平均径にて100μm以上であることが好ましく、200〜600μmであることがより好ましい。平均粒径が100μm未満であると吸着速度を得るには有利であるが、カバー層間にシリカゲルを固定化して空気清浄用濾材として使用する場合、吸着容量を確保するために使用量を増やすと充てん密度が高くなり、通気抵抗が大きすぎ通風できなくなる。さらに脱落や飛散が生じやすくなる可能性がある。なお、上記の粒状活性炭は、通常の分級機を使用して所定の粒度調整をすることにより、得ることが可能である。
【0034】
本発明に用いられる活性炭は、JIS K 1474活性炭試験方法にて硬さ90%以上を有するヤシ殻活性炭を用いることが好ましく、硬さ95%以上のヤシ殻活性炭がより好ましい。活性炭の硬さが90%未満であるとシート加工時やプリーツ加工時に活性炭が破砕され、濾材表面やプリーツ頂点から活性炭の脱落が発生する。
【0035】
本発明に用いられる活性炭のJIS K 1474に準拠して測定したときのトルエン吸着量は、20重量%以上が好ましい。悪臭ガス等の無極性のガス状及び液状物質に対して高い吸着性能を必要とするためである。
【0036】
本発明の空気清浄用濾材は、活性炭、シリカゲルおよび熱可塑性樹脂の混合物がカバー層間に挟持されており、前記シリカゲルにはヒドラジド化合物が担持されており、前記熱可塑性樹脂の溶融により、吸着材である活性炭とシリカゲルが接着されると共に、カバー層と吸着材が接着されているものである。
【0037】
本発明の空気清浄用濾材では、吸着材として活性炭とヒドラジド化合物が担持されたシリカゲルを併用することが必要である。活性炭単独では炭化水素系の臭気ガスは吸着できるが、沸点が低く極性の高い低分子アルデヒド類は吸着できないため、それを補う目的で、低分子アルデヒド類の吸着性能が高いヒドラジド化合物を担持したシリカゲルを併用する。その結果、種々の臭気に対してバランスよく脱臭することが可能になる。
【0038】
さらに、活性炭単独であると、濾材が黒色化するため、空気清浄時にダストが堆積してもダストが視認できず、ダスト堆積による目詰まりが起こっていても気付くことができない恐れがある。混合物中における活性炭に対するヒドラジド化合物が担持されたシリカゲルの含有量の重量比は、1〜100とする必要があり、1未満であるとダスト視認性に劣り、100を超えると炭化水素系ガスの吸着能が不足する。
【0039】
本発明の空気清浄用濾材に使用するカバー層は、織布状、不織布状のいずれの繊維構造体でも構わない。空気清浄時の上流側となるカバー層を構成する繊維の平均繊維径は、10〜100μmが好ましく、20〜60μmがより好ましく、20〜45μmがさらに好ましい。上流側カバー層は、被処理空気の流入面であるため、構成繊維の平均繊維径が10μm未満であると、繊維間の空隙も狭くなり、空気中の塵埃がカバー層上に堆積し、通気抵抗が急上昇する。構成する繊維の平均繊維径が100μmを超えると、特にプリーツ加工時に、吸着材粒子が飛び出すあるいは脱落する。
【0040】
一方で、空気清浄時の下流側となるカバー層を構成する繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、吸着材の脱落を考慮し10〜30μmが好ましい。構成繊維の平均繊維径が10μm未満であると通気抵抗が高くなり、30μmを超えると吸着材の脱落が生じる。
【0041】
本発明のカバー層を構成する繊維構造体の充てん密度は、0.05g/cc以上であることが好ましい。充てん密度が0.05g/cc未満であるとプリーツ加工時に熱セットが効かず、プリーツ形状を保つことが難しくなる。より好ましくは0.15g/cc以上である。
【0042】
本発明のカバー層は、厚みが0.1〜3.0mmであることが好ましい。厚みが0.1mm未満であると目付斑も考慮すると活性炭の抜け、脱落の懸念が生じる。厚みが3.0mmを超えると濾材全体の厚みが大き過ぎ、プリーツ状ユニットとした場合に構造抵抗が大きくなり、結果としてユニット全体での通気抵抗が高くなり過ぎ、実用上問題がある。
【0043】
本発明のカバー層は、目付量が15〜100g/m
2であることが好ましく、20〜80g/m
2がより好ましい。目付が15g/m
2未満であれば吸着材および熱可塑性樹脂の抜けが多くなる。目付が100g/m
2を越えると、シート厚み大きくなり、プリーツ状ユニットとした場合の構造抵抗が大きくなる。
【0044】
本発明のカバー層を構成する繊維構造体の繊維素材は、特に限定されず、ポリオレフィン系、ポリエステル系、レーヨン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系等の素材を用いることができる。そのなかでも、低融点熱可塑性樹脂成分を鞘成分に、高融点熱可塑性樹脂成分を芯成分に用いた芯鞘型複合繊維を用いれば後述する加熱シート化時に鞘成分が溶融して活性炭との結合力が高まり好ましい。
【0045】
本発明のカバー層には、タバコ煙粒子、カーボン粒子、海塩粒子をはじめとするサブミクロン粒子に対する除去効果も増大することができる帯電した不織布、いわゆるエレクトレットシートを使用することが好ましい。エレクトレットシートをカバー層とすることにより、臭気物質のみならずサブミクロン粒子も同時に除去可能となり、空気清浄効果がより一層向上する。また、エレクトレットシートを吸着材の上流に設置すれば、ダスト等が活性炭、シリカゲル、熱可塑性樹脂から構成される吸着材層に侵入して吸着材層内の活性炭およびシリカゲルの細孔が閉塞することを防止し、フィルタ寿命を延長することができるからである。
【0046】
本発明のカバー層を構成する繊維構造体の繊維配向は、特に限定はなく、例えば不織布状であればランダム状、クロス状、パラレル状いずれでも構わない。
【0047】
本発明の空気清浄用濾材において、カバー層と吸着材との接着には、熱可塑性樹脂が用いられ、その素材としてはポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、エチレン−アクリル共重合体、ポリアクリレート、ポリアーレン、ポリアクリル、ポリジエン、エチレン−酢酸ビニル、PVC、PS等の熱可塑性樹脂が挙げられる。 本発明の熱可塑性樹脂の大きさは、特に限定されないが、粉末状で平均粒径1〜200μm程度のものが好ましい。平均粒径1〜200μmであれば、熱可塑性樹脂が、吸着材の表面細孔を塞ぐことを低減できる一方、吸着材との混合時にファンデルワールス力や静電気力による活性炭への予備接着が有効になされ、均一に分散することができ、吸着材層内、及びカバー層との接着性を良好にできるからである。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂は粉末状であれば形状は特に規定しないが、破砕状であるとカバー層への散布時にカバー層からの脱落が少なく好ましい。熱可塑性樹脂の融点は、移動車両等の室内の環境温度等考慮すると80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂の溶融時の流動性は、JIS K−7210記載のMI値で、1〜80g/10minが好ましく、3〜30g/10minがより好ましい。かかる範囲であれば、吸着材の表面の閉塞を防止しつつ、吸着材層とカバー層を強固に接着することができるからである。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂の含有量は、吸着材に対して3〜100重量%であることが好ましく、5〜70重量%であることがより好ましい。かかる範囲内であれば、カバー層との接着力、通気抵抗、脱臭性能に優れる脱臭濾材が得られるからである。
【0051】
本発明の空気清浄用濾材は、抗菌剤、抗かび剤、抗ウイルス剤、難燃剤等の付随的機能を有する成分等を含めて構成してもよい。これらの成分は繊維類や不織布、織物中に練り込んでも、後加工で添着、または担持して付与してもよい。例えば、難燃剤を含めて構成することにより、FMVSS.302で規定されている遅燃性の基準やUL難燃規格に合致した空気清浄用濾材を製造することが可能である。
【0052】
上記の付随的機能を有する成分は、活性炭等へ添着または担持してもよい。但し、この際には、活性炭本来の吸着機能を損なわないよう留意する必要がある。また、カバー層の繊維に吸着性能を有する機能を付与、例えば、酸やアルカリの薬剤を添着したり
、イオン交換繊維等を用いたりすることにより、脱臭機能を強化することも可能である。
【0053】
空気清浄用濾材の基本的な製法について説明する。まず、ヒドラジド化合物が担持されたシリカゲル、活性炭および粉末状熱可塑性樹脂を所定の重量秤量し、シェーカー(撹拌器)に入れ、約10分間回転速度30rpmで撹拌する。この際の水分率は混合物重量の15%以内が好ましい。この時点で粉末状熱可塑性樹脂が活性炭表面およびヒドラジド化合物が担持されたシリカゲル表面に仮接着された混合物となっている。次に、この混合物をカバー層の上に散布後、カバー層を積層し、熱プレス処理を実施する。熱プレスの際のシート表面温度は粉末状熱可塑性樹脂の融点の好ましくは3〜30℃、より好ましくは5〜20℃高い程度である。
【0054】
別法として、ヒドラジド化合物が担持されたシリカゲル、活性炭および粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体をカバー層の上に散布後、さらに粒状熱可塑性樹脂を一定量散布し、さらにカバー層を積層後、熱プレス処理を実施する方法、またはカバー層に予め粒状熱可塑性樹脂を固着させておき、このシートを上述したカバー層として、この上に活性炭と粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体を散布、またはカバー層に使用し、熱プレス処理を実施して空気清浄用濾材を得ることもできる。
【0055】
別法として、活性炭、ヒドラジド化合物が担持されたシリカゲル、および粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体をカバー層の上に散布後、さらに粒状熱可塑性樹脂を一定量散布し、さらにカバー層を積層後、熱プレス処理を実施する方法、またはカバー層に予め粒状熱可塑性樹脂を固着させておき、このシートを上述したカバー層として、この上に活性炭と粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体を散布、またはカバー層に使用し、熱プレス処理を実施して、空気清浄用濾材を得ることもできる。
【0056】
また、熱処理する前に赤外線等で予め予備加熱し、仮接着しておけば、プレス時におこりがちな混合物の不規則な流動も生じず、より分散性が良好な空気清浄用濾材が製造できる。赤外線による熱処理は、気流などを起こさず、混合物を静置した状態で加熱することができ、混合物の飛散などを防止することができる。
【0057】
最終的に熱プレスしシート製造するにはよく使用されるロール間熱プレス法、または上下ともフラットな熱ベルトコンベヤー間にはさみこむフラットベッドラミネート法等があげられる。より均一な厚み、接着状態をつくりだすには後者の方がより好ましい。また、本発明で記載するカバー層と上記製法の特徴の組み合わせにより、活性炭同志の過度の結着を抑制することができると同時に、カバー層との実用上充分な接着強力を得ることができる。
【0058】
本発明で得られた空気清浄用濾材は、プリーツ形状に加工するのに好適である。プリーツ形状への加工方法は特に限定されずレシプロ方式、ロータリー方式、ストライピング方式等、広く利用できる。プリーツ形状に加工することによって単位面積あたりの濾材折り込み量を増やせるため、脱臭性能やダスト保持性能を飛躍的に向上させることができる。
【0059】
本発明の空気清浄用濾材を使用したプリーツ状フィルタユニットの厚みは、10〜400mmが好ましい。カーエアコンに内蔵装着をはじめとする車載用途や家庭用空気清浄機であれば、通常の内部スペースの関係から、10〜60mm程度、ビル空調用途へよく設置される大型のフィルタユニットであれば40〜400mm程度が収納スペースから考えると好ましい。
【0060】
本発明のフィルタユニットのひだ山頂点間隔は、2〜30mmが好ましい。2mm未満ではひだ山間が密着しすぎでデッドスペースが多く、効率的にシートを活用できなくなるため好ましくない。一方、30mmを越えると濾材折り込み面積が小さくなるためフィルタ厚みに応じた除去効果を得ることができなくなるため好ましくない。
【実施例】
【0061】
以下本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。 なお、実施例中の数値は以下の方法で測定した値である。
【0062】
(平均繊維径) カバー層表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率100〜1000倍)を撮影し、その写真からn=30にて繊維径を測定した平均値を算出した。
【0063】
(平均粒径) 活性炭およびシリカゲルについては、JIS K 1474活性炭試験方法に基づいた質量平均径を平均粒径とした。また、熱可塑性樹脂については、レーザ回折式粒子径分布測定装置(島津製作所製)を用いてD50メジアン径を平均粒径とした。
【0064】
(目付) 200mm×200mmの試料を使用し、80℃の恒温槽中に30分放置後、デシケータ(乾燥剤:シリカゲル)中で30分放置する。その後取り出し、感量10mgの化学天秤で測定して、m
2当りの重量に換算した。
【0065】
(通気抵抗)
図2に示す測定冶具により、試料大きさφ75mm、有効濾過面積φ50.5mm、濾材通過風速50cm/secとなるよう通風した時の上流側と下流側の差圧をマノスターゲージで測定し、通気抵抗とした。
【0066】
(厚み) φ75mmの試料を用い、ダイヤルシックネスゲージにより測定した。測定子の大きさはφ50mm、測定荷重は2.94Nとした。
【0067】
(充てん密度) JIS K 1474(2007)活性炭試験法に基づき充てん密度を測定した。
【0068】
(0.3μm粒子捕集効率) 濾材をダクト内に設置し、空気濾過速度が20cm/秒になるよう大気を通気させ、濾材の上流、下流の0.3〜0.5μm粒子の個数濃度をパーティクルカウンターにて計測し、次式にて粒子捕集効率を算出した。 粒子捕集効率(%)=[1−(下流側濃度/上流側濃度)]×100
【0069】
(アセトアルデヒド脱臭効率) 25℃、相対湿度50%雰囲気中で、3ppmのアセトアルデヒドガスを風速20cm/secにて試験濾材に通風した。通風1分後に濾材の上下流の濃度をそれぞれガステック製検知管で測定し、上流側のガス濃度から下流側のガス濃度を減じた値を上流側のガス濃度で除した値の百分率で示した。測定は6cm×6cmに切り取った濾材単板サンプルで行った。
【0070】
(トルエン脱臭効率) 25℃、相対湿度50%雰囲気中で、80ppmのトルエンガスを風速20cm/secにて試験濾材に通風した。通風1分後に濾材の上下流の濃度をそれぞれガステック製検知管で測定し、上流側のガス濃度から下流側のガス濃度を減じた値を上流側のガス濃度で除した値の百分率で示した。測定は6cm×6cmに切り取った濾材単板サンプルで行った。
【0071】
(粒子脱落量) 200mm幅で作成した濾材をプリーツ折り高さが28mmになるように山谷交互スジ付け方式にてプリーツ加工を実施した。プリーツ加工品を30山でカットし、カット端面から活性炭が脱落しないようにヒートシール処理を施した。プリーツカット品に200mm×30mm、厚み1mmの枠体用不織布をプリーツピッチが等間隔になるように周囲4面に貼り付けフィルタユニットとした(
図3)。 作成したフィルタユニットを地面に水平方向に配置し、高さ50cmから平滑でクリーンな台上に自由落下させ、これを上下それぞれ3回繰り返しフィルタユニットから脱落した活性炭の重量を測定し、これを活性炭脱落量とした。
【0072】
<実施例1> ポリプロピレン繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)と、ポリエステル繊維(繊度1.7dtex、繊維長44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/m
2の混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/m
2のポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、下流層となるエレクトレット積層シートを得た。 活性炭として平均粒径250μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法の充てん密度が0.43g/cc、BET比表面積1500m
2/gである破砕形状ヤシガラ系粒状活性炭と、シリカゲルとして平均粒径120μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法の充てん密度が0.71g/cc、BET比表面積610m
2/gの破砕形状A型シリカゲルに、アジピン酸ジヒドラジドをシリカゲル100重量部に対し5重量部担持させたもの用い、さらに、熱可塑性粉末樹脂としては破砕形状エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(平均粒径150μm、MI 24g/10min、融点100℃)を用い、これらを50:25:25の重量比にて秤量し、フープシェーカー(京町産業車両株式会社製)にて15分撹拌混合した。この混合粉粒体を前記エレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ総量100g/m
2になるように均一に散布した。 その上にレーヨン繊維(繊維径20μm)からなるレジンボンド不織布(目付40g/m
2、厚み0.2mm)を上流側カバー層として重ね合わせ、テフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.5mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。
【0073】
<実施例2> 下流層として平均繊維径7μmからなるポリプロピレンメルトブローン不織布をエレクトレット化して用いた以外は、実施例1と同様にして空気清浄用濾材を得た。
【0074】
<比較例1> シリカゲルとして平均粒径125μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法の充てん密度が0.75g/cc、BET比表面積610m
2/gの球状A型シリカゲルに、アジピン酸ジヒドラジドをシリカゲル100重量部に対し5重量部担持させたもの用いた以外は、実施例1と同様にして空気清浄用濾材を得た。
【0075】
<比較例2> 活性炭として平均粒径250μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法の充てん密度が0.50g/cc、BET比表面積1200m
2/gである球状ピッチ系活性炭を用いた以外は実施例1と同様にして空気清浄用濾材を得た。
【0076】
以上、実施例および比較例にて得られた空気清浄用濾材について通気抵抗、厚み、捕集効率、アセトアルデヒド脱臭効率、トルエン脱臭効率、粒子脱落量の評価を実施した。測定結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例では通気抵抗が低く、アセトアルデヒドだけでなく、炭化水素系ガスの代表であるトルエンも除去可能であり、捕集効率にも優れている。脱臭材であるシリカゲルおよび活性炭の粒径が破砕形状であるため、プリーツ加工後も濾材からの脱臭材粒子の脱落量が少ない。 一方、比較例ではシリカゲルまたは活性炭の形状が球形であるため、濾材中の粒子の充てん密度が高くなり通気抵抗が高いだけでなく、粒子間や粒子−カバー層間で脱臭材粒子が滑りやすくシート化後の脱落が大きい。