(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力した正弦波信号の波形値の絶対値が連続して当該正弦波信号における一方の極性側に規定された第1閾値の絶対値以上となる第1期間において当該波形値と当該第1閾値との差分についての時間積分値を算出して記憶部に記憶させる第1積分値記憶処理を実行し、
前記第1期間の終了時点において、当該第1期間に記憶された前記時間積分値のうちの最終時間積分値の実質的に半分となる時間積分値に対応する時間を前記正弦波信号の前記第1期間での第1ピーク値時間として特定する第1ピーク検出処理を実行し、
入力した前記波形値の絶対値が再度連続して前記第1閾値の絶対値以上となる第2期間において当該波形値と当該第1閾値との差分についての時間積分値を算出して前記記憶部に記憶させる第2積分値記憶処理を実行し、
前記第2期間の終了時点において、当該第2期間に記憶された前記時間積分値のうちの最終時間積分値の実質的に半分となる時間積分値に対応する時間を前記正弦波信号の前記第2期間での第2ピーク値時間として特定する第2ピーク検出処理と、前記第1ピーク値時間と前記第2ピーク値時間とのピーク値時間差を特定するピーク値時間差特定処理とを実行し、
前記第2期間の終了時点以降において新たな前記波形値を入力する都度、前記一方の極性を示す極性情報、前記新たな波形値を入力した時間と前記第2ピーク値時間との間の時間差、および前記ピーク値時間差に基づいて、当該新たな波形値の入力時点での前記正弦波信号の位相を検出する位相検出処理を実行する処理部を備えている正弦波信号位相検出装置。
入力した正弦波信号の波形値の絶対値が連続して当該正弦波信号における一方の極性側に規定された第1閾値の絶対値以上となる第1期間において当該波形値と当該第1閾値との差分についての時間積分値を算出して記憶部に記憶させる第1積分値記憶処理を実行し、
前記第1期間の終了時点において、当該第1期間に記憶された前記時間積分値のうちの最終時間積分値の実質的に半分となる時間積分値に対応する時間を前記正弦波信号の前記第1期間での第1ピーク値時間として特定する第1ピーク検出処理を実行し、
入力した前記波形値の絶対値が連続して前記正弦波信号における他方の極性側に規定された第2閾値の絶対値以上となる第2期間において当該波形値と当該第2閾値との差分についての時間積分値を算出して前記記憶部に記憶させる第2積分値記憶処理を実行し、
前記第2期間の終了時点において、当該第2期間に記憶された前記時間積分値のうちの最終時間積分値の実質的に半分となる時間積分値に対応する時間を前記正弦波信号の前記第2期間での第2ピーク値時間として特定する第2ピーク検出処理と、前記第1ピーク値時間と前記第2ピーク値時間とのピーク値時間差を特定するピーク値時間差特定処理とを実行し、
前記第2期間の終了時点以降において新たな前記波形値を入力する都度、前記他方の極性を示す極性情報、前記新たな波形値を入力した時間と前記第2ピーク値時間との間の時間差、および前記ピーク値時間差に基づいて、当該新たな波形値の入力時点での前記正弦波信号の位相を検出する位相検出処理を実行する処理部を備えている正弦波信号位相検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、スイッチング電源装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
最初に、スイッチング電源装置の一例としての
図1,2に示すブリッジレストーテムポール力率改善コンバータ1(以下、単に「コンバータ1」ともいう)の構成について説明する。
【0013】
コンバータ1は、
図1に示すように、一対の入力端子2a,2b(特に区別しないときには、「入力端子2」ともいう)、一対の出力端子3a,3b(特に区別しないときには、「出力端子3」ともいう)、昇圧インダクタ4、スイッチ回路部5、2つの整流素子6,7、平滑コンデンサ8、入力電圧検出部9、極性検出部10、電流検出部11、目標電流信号生成部12、ゼロ電流検出部13、駆動信号生成部14およびA/D変換部15を備え、電流臨界モードで動作して、入力端子2間に入力される交流入力電圧Vac(50Hzや60Hzなどの商用周波数のAC100Vなどの正弦波信号としての交流電圧)を直流出力電圧Vdc(交流入力電圧Vacの最大値を超える電圧)に変換して出力端子3間から出力するように構成されている。この場合、直流出力電圧Vdcは、一対の出力端子3a,3bのうちの他方の出力端子3bの電位(基準電位(本例では一例として、グランドGの電位(ゼロ電圧))を基準として一方の出力端子3aが正電位となる状態で、かつ一対の出力端子3a,3b間に接続された平滑コンデンサ8で平滑された状態で、出力端子3a,3b間から出力される。本例では一例として、交流入力電圧VacはAC100Vであり、直流出力電圧VdcはDC400Vであるものとして説明する。
【0014】
具体的には、昇圧インダクタ4は、一例として、磁気コアおよび磁気コアに巻回されたコイルで構成されて、一対の入力端子2のうちの一方の入力端子(本例では一例として入力端子2a)とスイッチ回路部5とを接続する電力ラインLa、および一対の入力端子2のうちの他方の入力端子(本例では一例として入力端子2b)と2つの整流素子6,7とを接続する電力ラインLbのうちの少なくとも一方に挿入接続されている。本例では一例として、電力ラインLaにのみ挿入接続されているが、この構成に限定されず、例えば、電力ラインLbにのみ挿入接続する構成や、電力ラインLa,Lbのそれぞれに挿入接続する構成を採用することもできる。
【0015】
スイッチ回路部5は、トーテムポール接続された一対のスイッチ素子5a,5bで構成されて、一対の出力端子3間に接続されている。本例では一例として、スイッチ素子5a,5bは、ボディダイオードを内蔵するnチャネル型のMOSFET(以下、単にFETともいう)で構成されて、ハイサイドのスイッチ素子5aのソース端子とローサイドのスイッチ素子5bのドレイン端子とが接続点Aで接続され、ハイサイドのスイッチ素子5aのドレイン端子が高電位側の出力端子3aに接続され、かつローサイドのスイッチ素子5bのソース端子がゼロ電圧となる出力端子3bに接続されている。なお、スイッチ素子5a,5bは、FETに代えて、バイポーラトランジスタで構成することもできる。
【0016】
また、各スイッチ素子5a,5bについては、ハイサイドのスイッチ素子5aは駆動信号生成部14から供給される駆動信号S9aにより、またローサイドのスイッチ素子5bは駆動信号生成部14から供給される駆動信号S9bにより、交互にON・OFF動作(スイッチング動作)するように駆動される。
【0017】
これにより、昇圧インダクタ4には、交流入力電圧Vacが正極性の場合において、スイッチ素子5bがON状態のときには、等価的にグランドGの電位(ゼロ電圧)になる接続点A側の端部の電圧を基準として、入力端子2a側の端部が高電位(交流入力電圧Vac)となる電圧(Vac。両端間電圧)が印加されてエネルギーが蓄積される。一方、スイッチ素子5bがOFF状態のときには、昇圧インダクタ4はエネルギーを放出するため(昇圧インダクタ4からON状態のスイッチ素子5aを経由して出力端子3aに向かう電流(インダクタ電流I
L)が流れるため)、昇圧インダクタ4には、入力端子2a側の端部の電圧(交流入力電圧Vac)を基準として、接続点A側の端部が高電位(等価的に直流出力電圧Vdc)となる電圧(Vdc−Vac。両端間電圧)が発生する(印加される)。この場合、昇圧インダクタ4からのエネルギーの放出が完了したとき(つまり、昇圧インダクタ4からON状態のスイッチ素子5aを経由して出力端子3aに電流(インダクタ電流I
L)が流れなくなったとき)に、昇圧インダクタ4の両端間電圧は、電圧(Vdc−Vac)から急速に低下する。したがって、交流入力電圧Vacが正極性のときに、昇圧インダクタ4に流れているインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングは、昇圧インダクタ4のこの両端間電圧の立ち下がりのタイミング(立ち下がりエッジ)と同期したものとなっている。
【0018】
また、昇圧インダクタ4には、交流入力電圧Vacが負極性の場合において、スイッチ素子5aがON状態のときには、等価的に直流出力電圧Vdcになる接続点A側の端部の電圧を基準として、入力端子2a側の端部が低電位(Vdc−Vac)となる電圧(Vac。両端間電圧)が印加されてエネルギーが蓄積される。一方、スイッチ素子5aがOFF状態のときには、昇圧インダクタ4はエネルギーを放出するため、昇圧インダクタ4には、等価的にグランドGの電位(ゼロ電圧)になる接続点A側の端部の電圧を基準として、入力端子2a側の端部が高電位(Vdc−Vac)となる電圧(Vdc−Vac。両端間電圧)が発生する(印加される)。この場合、昇圧インダクタ4からのエネルギーの放出が完了したとき(つまり、ON状態のスイッチ素子5bを経由して昇圧インダクタ4に戻るインダクタ電流I
Lが流れなくなったとき)に、昇圧インダクタ4の両端間電圧は、電圧(Vdc−Vac)から急速に低下する。したがって、交流入力電圧Vacが負極性のときに、昇圧インダクタ4に流れているインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングは、昇圧インダクタ4のこの両端間電圧の立ち下がりのタイミング(立ち下がりエッジ)と同期したものとなっている。
【0019】
2つの整流素子6,7は、順方向を揃えて互いに直列接続されると共に、スイッチ回路部5に並列接続されている。本例では一例として、各整流素子6,7は、ダイオードで構成されて、整流素子6,7全体での電流出力端部(整流素子6を構成するダイオードのカソード端子)が出力端子3aに接続され、かつ整流素子6,7全体での電流入力端部(整流素子7を構成するダイオードのアノード端子)が出力端子3bに接続されることで、スイッチ回路部5に並列接続されている。なお、各整流素子6,7は、ダイオードに代えて、
図1に示すスイッチ回路部5と同様の構成で直列接続されると共に、同期整流駆動されるFET(ボディダイオードを内蔵するnチャネル型のMOSFET)で構成することもできる。平滑コンデンサ8は、例えば電解コンデンサで構成されている。
【0020】
入力電圧検出部9は、例えば、正と負の補助電源から出力される正と負の電源電圧で動作する演算増幅器で構成されて、交流入力電圧Vacを入力すると共に、予め規定された増幅率(後段の回路で処理し得る電圧まで低減すべく、1未満の増幅率)で増幅して、グランドGの電位(ゼロ電圧)を基準とする交流電圧信号S1(つまり、交流入力電圧Vacと同期し、かつ同極性の正弦波信号)に変換して出力する。
【0021】
A/D変換部15は、交流電圧信号S1を入力すると共に、予め規定された固定のサンプリング周期Tsp(交流入力電圧Vacの周期に対して十分に短い既知の周期)で、交流電圧信号S1をサンプリングすることにより、交流電圧信号S1の瞬時値を波形値Vsに変換して出力する。
【0022】
極性検出部10は、正弦波信号位相検出装置であって、例えば、DSPやCPUなどで構成された処理部を備えて構成されて、A/D変換部15から出力される交流電圧信号S1の波形値Vsに基づいて、波形値比較処理60(
図8参照)、ピーク値時間特定処理70(
図9参照)、ピーク値時間差特定処理、および位相検出処理を実行することにより、交流電圧信号S1の位相をリアルタイムで検出する。また、極性検出部10は、検出した位相に基づいて交流電圧信号S1の極性を検出して、交流電圧信号S1の極性を示す極性信号S2(例えば、交流電圧信号S1が正極性であることを示す正極性信号、および交流電圧信号S1が負極性であることを示す負極性信号)を出力する極性検出処理を実行する。
【0023】
電流検出部11は、ホール素子やカレントトランスを用いて構成されて、電力ラインLa,Lbの一方に配設されている。また、電流検出部11は、昇圧インダクタ4に流れるインダクタ電流I
Lを検出して、インダクタ電流I
Lの電流値に比例して電圧値が変化し、かつインダクタ電流I
Lの極性に応じて極性が変化する電流検出信号S3を出力する。
【0024】
目標電流信号生成部12は、一例として
図1に示すように、出力電圧検出部12a、誤差積分部12bおよび乗算部12cを備えて構成されている。この場合、出力電圧検出部12aは、例えば分圧抵抗回路で構成されて、直流出力電圧Vdcの電圧値に比例して電圧値が変化する電圧検出信号S4(後段の回路で処理し得る電圧まで低減され、かつグランドGの電位(ゼロ電圧)を基準とする信号)を出力する。誤差積分部12bは、例えば、演算増幅器を利用した積分回路で構成されて、電圧検出信号S4と、直流出力電圧Vdcについての目標電圧を示す目標基準電圧Vr1との差分(誤差)を積分して、誤差積分信号S5を出力する。乗算部12cは、誤差積分信号S5と交流電圧信号S1とを入力して乗算することにより、目標電流信号S6を生成して出力する。このようにして生成される目標電流信号S6は、
図10に示すように、昇圧インダクタ4に流す三角波状のインダクタ電流I
Lを示す電流検出信号S3におけるピーク電流値Pの包絡線が描くべき正弦波状の信号となる。
【0025】
ゼロ電流検出部13は、
図1,2に示すように、1つの検出巻線21、抵抗22、クランプ部23およびパルス出力部24を備えている。検出巻線21は、昇圧インダクタ4に磁気結合されると共に、一端が基準電位としてのグランドGの電位(ゼロ電圧)に直接接続されて、他端に昇圧インダクタ4の両端間電圧の電圧値に比例して電圧値が変化するゼロ電流検出信号S7を発生させる。本例では一例として、検出巻線21は、昇圧インダクタ4の不図示の磁芯に、昇圧インダクタ4を構成する不図示の巻線と共に巻回されているものとし、そのターン数は昇圧インダクタ4を構成する巻線のターン数のk分の1(kは、1を超える整数。例えば、10)に規定されているものとする。抵抗22は、一端が検出巻線21の他端に接続されている。
【0026】
クランプ部23は、抵抗22を介して入力されるゼロ電流検出信号S7を、2種のクランプ電圧(基準電位と正の定電圧)でクランプして矩形信号S8に変換して出力する。具体的には、クランプ部23は、
図2に示すように、順方向を揃えて互いに直列接続された2つのダイオード23a,23bで構成されると共に、2つのダイオード23a,23bの接続点が抵抗22の他端に接続されている。また、ダイオード23a,23b全体としての電流入力端部(本例では、ダイオード23bのアノード端子)が基準電位としてのグランドGの電位(ゼロ電圧)に接続され、かつ全体としての電流出力端部(本例では、ダイオード23aのカソード端子)が正の定電圧(本例では一例として、正の補助電源から出力される正の電源電圧Vcc。約3V〜5V程度の定電圧)に接続されている。この構成により、クランプ部23は、理解の容易のためダイオード23a,23bの順方向電圧を無視し得るもの(ゼロボルト)とすると、ゼロ電流検出信号S7の最小電圧を一方のクランプ電圧としてのゼロ電圧(ゼロボルト)にクランプし、かつ最大電圧を他方のクランプ電圧としての正の電源電圧Vccにクランプして、矩形信号S8を出力する。
【0027】
パルス出力部24は、基準電位としてのゼロ電圧と正の定電圧との間(クランプ部23での上記の2種のクランプ電圧間)に規定された比較電圧Vr2と矩形信号S8とを比較するコンパレータを有して、立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのうちの一方のエッジが昇圧インダクタ4に流れるインダクタ電流I
Lがゼロとなるタイミングに同期する検出パルスを出力する。本例では一例として、パルス出力部24は、
図2に示すように、グランドGの電位(ゼロ電圧)を基準とした正の電源電圧Vccで動作する(つまり、正の補助電源の片電源で動作する)第1コンパレータ24aおよび第2コンパレータ24bの2つのコンパレータを有して構成されている。また、第1コンパレータ24aは、その正入力端子に矩形信号S8が入力され、その負入力端子に比較電圧Vr2が入力されている。また、第2コンパレータ24bは、その正入力端子に比較電圧Vr2が入力され、その負入力端子に矩形信号S8が入力されている。
【0028】
この構成により、パルス出力部24では、第1コンパレータ24aが、矩形信号S8を比較電圧Vr2と比較することにより、矩形信号S8が比較電圧Vr2を上回るときにハイレベル(正の電源電圧Vcc)となり、矩形信号S8が比較電圧Vr2を下回るときにローレベル(ゼロボルト)となる検出パルス(第1検出パルスSz1)を出力する。この第1検出パルスSz1は、矩形信号S8と、さらにはゼロ電流検出信号S7と同位相のパルス信号(互いの立ち上がりエッジが実質的に一致し、互いの立ち下がりエッジが実質的に一致する信号)であることから、第1検出パルスSz1の立ち下がりエッジは、交流入力電圧Vacが正極性の場合において、昇圧インダクタ4に流れているインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期したものとなっている。
【0029】
また、第2コンパレータ24bは、矩形信号S8を比較電圧Vr2と比較することにより、矩形信号S8が比較電圧Vr2を上回るときにローレベルとなり、矩形信号S8が比較電圧Vr2を下回るときにハイレベルとなる検出パルス(第2検出パルスSz2)を出力する。この第2検出パルスSz2は、矩形信号S8と、さらにはゼロ電流検出信号S7と逆位相のパルス信号(一方の立ち上がりエッジが他方の立ち下がりエッジと実質的に一致し、一方の立ち下がりエッジが他方の立ち上がりエッジと実質的に一致する信号)であることから、第2検出パルスSz2の立ち下がりエッジは、交流入力電圧Vacが負極性の場合において、昇圧インダクタ4に流れているインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期したものとなっている。
【0030】
駆動信号生成部14は、例えば、DSPやCPUなどで構成されて、第1検出パルスSz1、第2検出パルスSz2、電流検出信号S3、極性信号S2(正極性信号と負極性信号)および目標電流信号S6に基づいて、スイッチ素子5aをON・OFF駆動するための駆動信号S9a(スイッチ素子5aを構成するFETのゲート・ソース端子間に印加される信号)、およびスイッチ素子5bをON・OFF駆動するための駆動信号S9b(スイッチ素子5bを構成するFETのゲート・ソース端子間に印加される信号)を生成して出力する。
【0031】
この場合、駆動信号生成部14は、極性信号S2に基づいて交流入力電圧Vacの極性を判別しつつ、交流入力電圧Vacが正極性のとき(正極性信号が出力されているとき)には、第1検出パルスSz1の立ち下がりエッジに同期してローレベルからハイレベルに移行させ、その後、電流検出信号S3のレベルが目標電流信号S6に達したとき(つまり、電流検出信号S3で示されるインダクタ電流I
Lの電流値が目標電流信号S6で示される目標電流値に達したとき)にハイレベルからローレベルに移行させるという動作を繰り返すことで、駆動信号S9bを生成して出力する。また、駆動信号生成部14は、交流入力電圧Vacが正極性のときには、駆動信号S9bがハイレベルのときにはローレベルに移行させ、駆動信号S9bがローレベルのときにはハイレベルに移行させるという動作を、駆動信号S9bとの間にデッドタイムを設けつつ繰り返すことで、駆動信号S9aを生成して出力する。
【0032】
また、駆動信号生成部14は、交流入力電圧Vacが負極性のとき(負極性信号が出力されているとき)には、第2検出パルスSz2の立ち下がりエッジに同期してローレベルからハイレベルに移行させ、その後、電流検出信号S3のレベルが目標電流信号S6に達したとき(つまり、電流検出信号S3で示されるインダクタ電流I
Lの電流値が目標電流信号S6で示される目標電流値に達したとき)にハイレベルからローレベルに移行させるという動作を繰り返すことで、駆動信号S9aを生成して出力する。また、駆動信号生成部14は、交流入力電圧Vacが負極性のときには、駆動信号S9aがハイレベルのときにはローレベルに移行させ、駆動信号S9aがローレベルのときにはハイレベルに移行させるという動作を、駆動信号S9aとの間にデッドタイムを設けつつ繰り返すことで、駆動信号S9bを生成して出力する。
【0033】
次いで、正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10を含むコンバータ1全体の動作について、添付図面を参照して説明する。
【0034】
このコンバータ1では、上記したように、入力電圧検出部9が、一対の入力端子2間に入力されている交流入力電圧Vacを入力して、
図3,10に示すように、グランドGの電位(ゼロ電圧)を基準とする交流電圧信号S1に変換して出力する。
【0035】
また、A/D変換部15は、この交流電圧信号S1を入力すると共に、交流電圧信号S1の瞬時値を波形値Vsに変換して出力する。また、極性検出部10は、この波形値Vsに基づいて、交流電圧信号S1の極性(つまり、交流入力電圧Vacの極性)を示す極性信号S2(正極性信号および負極性信号)を出力する。
【0036】
この極性検出部10の動作について、
図3〜
図10を参照して詳細に説明する。
【0037】
極性検出部10は、波形値Vsの入力を開始したときに、
図8に示す波形値比較処理60の実行を開始して、新たな波形値Vsを入力する都度、比較フラグを更新する。具体的には、極性検出部10は、波形値比較処理60では、入力した波形値Vsと予め規定された閾値Vth(本例では、交流電圧信号S1の一方の極性側(本例では一例として
図3に示すように、正極性側)に規定された第1閾値としての閾値Vth1)とを比較して、詳細には、波形値Vsの絶対値と閾値Vthの絶対値(本例では閾値Vth1の絶対値)とを比較して、波形値Vsが閾値Vth1以上であるか否かを判別する(ステップ61)。
【0038】
なお、この閾値Vthの電圧レベルについては、交流電圧信号S1に対して重畳する虞のあるノイズの比率が小さくなる(S/N比が高く、ノイズの影響を受け難い)程度の高電圧であり、かつ波形値Vsが閾値Vth1以上となる期間(後述する第1期間T1,第2期間T2)において入力する波形値Vsの個数が十分に多くなるように交流電圧信号S1のピーク値(ピーク電圧。つまり、交流電圧信号S1の振幅)よりも十分に低い電圧に予め規定されている。例えば、閾値Vthは、ピーク電圧(振幅)の30%以上80%以下の範囲に含まれる所定の電圧値に規定されていることが本願の効果上好ましい。
【0039】
この判別の結果、波形値Vsが閾値Vth1以上のとき(波形値Vsの絶対値が閾値Vth1の絶対値以上のとき)には、極性検出部10は、比較フラグを「1」とし(ステップ62)、一方、波形値Vsが閾値Vth1未満のとき(波形値Vsの絶対値が閾値Vth1の絶対値未満のとき)には、比較フラグを「0」として(ステップ63)、比較フラグを随時更新する。これにより、比較フラグは、「1」のときには、
図3に示すように、交流電圧信号S1(その波形値Vs)が連続して閾値Vth1以上となる第1期間T1や第2期間T2であることを示し、「0」のときには、第1期間T1および第2期間T2以外の期間であることを示すものとなっている。また、極性検出部10は、比較フラグを更新する際には、更新する直前の比較フラグについても記憶するものとし、また後述する直前の比較フラグの初期値は「0」であるものとする。
【0040】
また、極性検出部10は、波形値Vsの入力を開始したときに、交流電圧信号S1の位相の検出に際して必要となる第1ピーク値時間tp1および第2ピーク値時間tp2の特定が完了しているか否かを判別して、第1ピーク値時間tp1の特定が完了していないときには、波形値Vsを入力する都度、波形値比較処理60と並行して、第1ピーク値時間tp1を特定するために、
図9に示すピーク値時間特定処理70を実行する。また、極性検出部10は、第1ピーク値時間tp1の特定は完了しているものの、第2ピーク値時間tp2の特定が完了していないときには、波形値Vsを入力する都度、波形値比較処理60と並行して、第2ピーク値時間tp2を特定するために、
図9に示すピーク値時間特定処理70を実行する。なお、極性検出部10は、比較フラグが「1」のときにピーク値時間特定処理70の実行を開始したときには、正確なピーク値時間tp1,tp2を特定できないため、比較フラグが「0」のときにピーク値時間特定処理70の実行を開始する。
【0041】
まず、第1ピーク値時間tp1を特定するためのピーク値時間特定処理70では、極性検出部10は、新たな波形値Vsを入力した時点で、比較フラグが「1」であるか「0」であるか(波形値Vsが閾値Vth1以上となる第1期間T1であるか否か)を判別する(ステップ71)。上記したように、極性検出部10は、比較フラグが「0」のときにピーク値時間特定処理70の実行を開始するため、比較フラグが「1」になる前に、比較フラグが「0」の状態が継続する場合がある。この場合、極性検出部10は、ステップ71において、比較フラグが「0」であると判別して、この現在の比較フラグの1つ前の比較フラグの状態(直前の比較フラグが「1」であるか、「0」であるか)を判別する(ステップ75)。このように比較フラグが「0」の状態が継続するときには、直前の比較フラグも「0」であることから、極性検出部10は、ステップ75において、直前の比較フラグが「0」であると判別して、入力した波形値Vsに基づくピーク値時間特定処理70を終了させる。
【0042】
その後、
図4に示すように、波形値Vsが閾値Vth1未満の状態から閾値Vth1以上の状態になったとき(
図4の時間t1になったとき)には、極性検出部10は、波形値比較処理60において比較フラグを「0」から「1」に更新する。これにより、極性検出部10は、
図9に示すピーク値時間特定処理70では、ステップ71において比較フラグが「1」であると判別して、入力した波形値Vsに基づき、積分値記憶処理(この場合には、第1ピーク値時間tp1を特定するための第1積分値記憶処理)を実行する。
【0043】
この第1積分値記憶処理では、極性検出部10は、まず、入力した波形値Vsと閾値Vth(本例では閾値Vth1)との差分ΔV(=|Vs|−|Vth1|)を算出し(ステップ72)、次いで、この差分ΔVについての時間積分値Vsm(以下、単に積分値Vsmともいう)を算出し(ステップ73)、続いて、この算出した積分値Vsmを(本例では、波形値Vsと共に積分値Vsmを)、積分値Vsmの算出時間(積分値Vsmを算出した時点での時間(時刻))に対応させて不図示の記憶部(例えば、RAMなどの半導体メモリで構成された記憶部)に記憶させて(ステップ74)、第1積分値記憶処理を終了させる。また、極性検出部10は、これに伴い、入力した波形値Vsに基づくピーク値時間特定処理70を終了させる。これにより、時間t1において入力した波形値Vsを波形値Vs
1とすると、極性検出部10は、差分ΔVとして差分ΔV
1(=|Vs
1|−|Vth1|)を算出し、また積分値Vsmとして積分値Vsm
1(=Vsmの初期値(=0)+ΔV
1)を算出する。このため、記憶部には、
図6に示すように、時間t1に対応させられて、波形値Vs
1および積分値Vsm
1が記憶される。
【0044】
なお、極性検出部10は、A/D変換部15でのサンプリング周期Tsp(つまり、波形値Vsの入力間隔)に対して十分に短い時間でピーク値時間特定処理70を実行し得るように構成されている。このため、記憶部に記憶させる積分値Vsmの算出時間として、波形値Vsを入力した時間を記憶させてもよい。
【0045】
続いて、例えば
図4に示すように、時間t12において入力する波形値Vsまで閾値Vth1以上となるときには、極性検出部10は、波形値Vsが閾値Vth1以上となる各時間t2〜t12に実行するピーク値時間特定処理70において、上記した時間t1のときと同様にして第1積分値記憶処理を実行する。つまり、極性検出部10は、時間t1から時間t12までの第1期間T1(
図3,4参照)に亘り、第1積分値記憶処理を実行する。これにより、各時間t2,t3,・・・,t11,t12においても、各時間t2,t3,・・・,t11,t12での波形値Vs
2,Vs
3,・・・,Vs
11,Vs
12に基づいて、差分ΔV
2,ΔV
3,・・・,ΔV
11,ΔV
12(
図4参照)が算出されると共に、積分値Vsm
2(=Vsm
1+ΔV
2),Vsm
3(=Vsm
2+ΔV
3),・・・,Vsm
11(=Vsm
10+ΔV
11),Vsm
12(=Vsm
11+ΔV
12)が算出されて、
図6に示すように、各積分値Vsm
2,Vsm
3,・・・,Vsm
11,Vsm
12が対応する波形値Vs
2,Vs
3,・・・,Vs
11,Vs
12と共に、各時間t2,t3,・・・,t11,t12に対応させられて記憶部に記憶される。
【0046】
次いで、
図4に示すように、時間t13において入力した波形値Vsが閾値Vth1未満の状態になったときには、極性検出部10は、波形値比較処理60において比較フラグを「1」から「0」に更新する。これにより、極性検出部10は、ピーク値時間特定処理70では、ステップ71において比較フラグが「0」であると判別し、次いで、現在の比較フラグの直前の比較フラグが「1」であるか「0」であるかを判別する(ステップ75)。この場合、時間t13の直前の時間t12では、上記したように波形値Vsが閾値Vth1以上であって、比較フラグが「1」であることから、極性検出部10は、直前の比較フラグが「1」であると判別して、ピーク検出処理(この場合には、第1ピーク値時間tp1を特定するための第1ピーク検出処理)を、
図3に示すように第1積分値記憶処理の完了直後に実行する(ステップ76)。
【0047】
この第1ピーク検出処理では、極性検出部10は、第1期間T1の終了時点(時間t13から次の波形値Vsを入力する時間t14に至るまでの間の任意の時間。本例では時間t13)において、第1期間T1に記憶された積分値Vsm
1〜Vsm
12のうちの最終時間積分値(本例では、時間t12に対応する積分値Vsm
12)の実質的に半分となる積分値Vsmに対応する時間を交流電圧信号S1の第1期間T1での第1ピーク値時間tp1(
図3参照)として特定して記憶部に記憶する。
【0048】
この場合、交流電圧信号S1は正弦波信号であることから、
図4に示すように、交流電圧信号S1は閾値Vth1以上となる期間Txの中間点tcにおいてピークとなる。また、交流電圧信号S1のうちの閾値Vth1以上となる期間Txでの信号波形は中間点tcを中心として左右対称であることから、この期間Txでの交流電圧信号S1の信号波形と閾値Vth1を示す直線とで囲まれた領域(
図4に示す斜線を付した領域)の面積は、中間点tcで2つに分割したときに等分される(つまり、中間点tc以前の面積と、中間点tc以降の面積とが等しくなる)。本例では、上記したように波形値Vsが閾値Vth1以上となる第1期間T1において入力する波形値Vsの個数が十分に多いことから、最終時間積分値としての積分値Vsm
12は、上記の斜線を付した領域の面積と実質的に同等となることから、積分値Vsm
12の実質的に半分となる積分値Vsmに対応する時間は、中間点tcと実質的に同一、つまり交流電圧信号S1がピークとなる時間(つまり、上記の第1ピーク値時間tp1)であるとみなせる。
【0049】
なお、第1期間T1の各時間t1〜t12において算出される積分値Vsmは、離散的な波形値Vsに基づいて算出される値であることから、それ自体も離散的な値となっている。このため、積分値Vsm
12の半分の値に丁度一致する積分値Vsmは存在しない場合が殆どであるが、本例では、積分値Vsm
12の半分の値に最も近い積分値Vsmを、上記の実質的に半分となる積分値Vsmとみなして、第1ピーク値時間tp1を特定するものとする。
【0050】
また、本例では、
図9に示すピーク値時間特定処理70において、比較フラグが「0」から「1」に更新された直後から、ステップ72以降の積分値記憶処理を実行し、比較フラグが「1」から「0」に更新された直後から、ステップ76のピーク検出処理を行う構成を採用しているが、この構成に限定されない。例えば、波形値Vsのノイズが大きく、閾値Vth1との比較結果にチャタリングがある場合は、比較フラグが「0」から「1」に更新されて、さらに「1」が継続してから、ステップ72以降の積分値記憶処理を実行し、比較フラグが「1」から「0」に更新されて、さらに「0」が継続してから、ステップ76のピーク検出処理を実行する構成にしてもよい。また、2つの閾値Vth1a,Vth1b (Vth1a >Vth1b) によってヒステリシスを設けて、比較フラグが「0」から「1」に更新されるかどうかを判定する閾値に閾値Vth1aを用いると共に、比較フラグが「1」から「0」に更新されるかどうかを判定する閾値に閾値Vth1bを用いて、積分値記憶処理ではΔV(=|Vs| − |Vth1b|)を実行する構成としてもよい。この場合、積分値記憶処理でのΔVの算出において、 |Vth1b|に代えて|Vth1a|を使用することもできる。
【0051】
これらの構成のうちのいずれかを採用することにより、交流電圧信号S1に重畳しているノイズの影響を一層受けにくくすることができ、その結果として、積分値記憶処理およびピーク検出処理をより安定して実行することが可能となることから、ピーク値時間tp1,tp2をより安定して特定(検出)することが可能となる。
【0052】
なお、これらの構成のうちの前者の構成においては、本来であれば積分値記憶処理の対象とすべき波形値Vsがノイズの影響を受けて、同じ比較フラグが継続するという条件から外れて、積分値記憶処理の対象とならなかったり、逆に、本来であれば積分値記憶処理の対象とすべきでない波形値Vsがノイズの影響を受けて、同じ比較フラグが継続するという条件に合致して、積分値記憶処理の対象となったりすることがあるが、これら波形値Vsはいずれも積分値記憶処理を実行する期間(第1積分値記憶処理については第1期間T1)の始期の近傍や終期の近傍の波形値Vsであって、閾値Vth1との差分ΔV(=|Vs|−|Vth1|)は小さい。このため、積分値記憶処理を実行する期間の始期の近傍や終期の近傍の波形値Vsについての差分ΔVが積分値記憶処理の対象となるか否かということの積分値Vsmに与える影響は小さい。したがって、前者の構成を採用した場合であっても、ピーク検出処理においてピーク値時間tp1,tp2を正確に特定することが可能となる。また、これらの構成のうちの後者の構成においては、2つの異なる閾値Vth1a,Vth1bを使用する構成のため、同じ波形値Vsであっても、積分値記憶処理の始期の近傍では積分値Vsmの算出に使用されず、積分値記憶処理の終期の近傍では積分値Vsmの算出に使用されるというように、処理内容に差が生じるが、上記したように、積分値記憶処理の始期の近傍や終期の近傍の波形値Vsについては、差分ΔV(=|Vs|−|Vth1b|)は小さいため、積分値Vsmに与える影響は小さい。したがって、後者の構成を採用した場合であっても、ピーク検出処理においてピーク値時間tp1,tp2を正確に特定することが可能となる。
【0053】
続いて、極性検出部10は、波形値Vsの入力の都度、波形値比較処理60と並行して、第2ピーク値時間tp2の特定のために、
図9に示すピーク値時間特定処理70を実行する。
【0054】
このピーク値時間特定処理70では、極性検出部10は、上記した第1ピーク値時間tp1の特定のときと同様にして、新たな波形値Vsを入力する都度、比較フラグが「0」から「1」になったか否かをステップ71において判別しつつ、比較フラグが「1」になったと判別したときに、入力した波形値Vsに基づき、積分値記憶処理(この場合には、第2ピーク値時間tp2を特定するための第2積分値記憶処理)を実行する。
【0055】
具体的には、
図3に示すように、第1期間T1の始期から交流電圧信号S1の1周期後に、波形値Vsが再度、閾値Vth1以上になり、その後、第1期間T1と同等の長さの第2期間T2に亘り、波形値Vsが閾値Vth1以上となる状態が継続(連続)する。例えば、
図5に示す状態となる場合においては、時間t21のときに波形値Vsが閾値Vth1以上になり、第2期間T2の終期の手前の時間t32まで、波形値Vsが閾値Vth1以上となる状態が継続する。このため、極性検出部10は、時間t21での波形値比較処理60において比較フラグを「0」から「1」に更新し、時間t32まで比較フラグを「1」にする。
【0056】
このため、極性検出部10は、時間t21から時間t32までの第2期間T2に亘り、新たな波形値Vsを入力する都度、ピーク値時間特定処理70における第2積分値記憶処理を実行する。これにより、各時間t21,t22,・・・,t31,t32において、各時間t21,t22,・・・,t31,t32での波形値Vs
21,Vs
22,・・・,Vs
31,Vs
32に基づいて、差分ΔV
21,ΔV
22,・・・,ΔV
31,ΔV
32(
図5参照)が算出されると共に、積分値Vsm
21(=Vsmの初期値(=0)+ΔV
21),Vsm
22(=Vsm
21+ΔV
22),・・・,Vsm
31(=Vsm
30+ΔV
31),Vsm
32(=Vsm
31+ΔV
32)が算出されて、
図7に示すように、各積分値Vsm
21,Vsm
22,・・・,Vsm
31,Vsm
32が対応する波形値Vs
21,Vs
22,・・・,Vs
31,Vs
32と共に、各時間(算出時間)t21,t22,・・・,t31,t32に対応させられて記憶部に記憶される。
【0057】
次いで、
図5に示すように、時間t33において入力した波形値Vsが閾値Vth1未満の状態になったときには、極性検出部10は、波形値比較処理60において比較フラグを「1」から「0」に更新する。これにより、極性検出部10は、ピーク値時間特定処理70では、ステップ71において比較フラグが「0」であると判別し、次いで、現在の比較フラグの直前の比較フラグが「1」であるか「0」であるかを判別する(ステップ75)。この場合、時間t33の直前の時間t32では、上記したように比較フラグが「1」であることから、極性検出部10は、直前の比較フラグが「1」であると判別して、ピーク検出処理(この場合には、第2ピーク値時間tp2を特定するための第2ピーク検出処理)を、
図3に示すように第2積分値記憶処理の完了直後に実行する(ステップ76)。
【0058】
この第2ピーク検出処理では、極性検出部10は、第2期間T2の終了時点(時間t33から次の波形値Vsを入力する時間t34に至るまでの間の任意の時間。本例では時間t33)において、第2期間T2に記憶された積分値Vsm
21〜Vsm
32のうちの最終時間積分値(本例では、時間t32に対応する積分値Vsm
32)の実質的に半分となる積分値Vsmに対応する時間を交流電圧信号S1の第2期間T2での第2ピーク値時間tp2として特定して記憶部に記憶する。
【0059】
このようにして特定された第2ピーク値時間tp2は、上記した第1ピーク値時間tp1のときと同様の理由により、
図5に示すように、交流電圧信号S1における閾値Vth1以上となる期間Txの中間点tc、つまり、交流電圧信号S1がピークとなる時間であるとみなせる。
【0060】
また、極性検出部10は、このようにして第2ピーク値時間tp2の特定が完了したとき(第2ピーク検出処理が完了したとき)には、
図3に示すように、直ちに、つまり、次の新たな波形値Vsの入力前に(
図5の場合には、時間t34の到来前に)、ピーク値時間差特定処理を実行して、特定した第1ピーク値時間tp1および第2ピーク値時間tp2の2つのピーク値時間tpの差(=tp2−tp1。本例では交流電圧信号S1の1周期でもある)を、ピーク値時間差Δtpとして特定(算出)して記憶する。
【0061】
また、極性検出部10は、このようにしてピーク値時間差Δtpの特定が完了したときには、第2期間T2の終了時点以降(例えば、時間t33,t34,・・・)において新たな波形値Vsを入力する都度、
図3に示すように、位相検出処理を実行して、新たな波形値Vsを入力した時点での交流電圧信号S1の位相θ(交流電圧信号S1と同期し、かつ同極性の交流入力電圧Vacの位相でもある)を検出すると共に、極性検出処理を実行して、検出した位相θに基づき、この時点での交流電圧信号S1の極性を検出して、交流電圧信号S1の極性を示す極性信号S2を出力する。
【0062】
具体的には、極性検出部10は、位相検出処理では、第1閾値としての閾値Vth1が規定された交流電圧信号S1の一方の極性を示す極性情報(本例では、正極性を示す極性情報に関連して予め規定されている第2ピーク値時間tp2での位相(基準位相θr)を示す情報)、新たな波形値Vsを入力した時間t(例えば、時間t33に新たな波形値Vsを入力したときには、この時間t33)と第2ピーク値時間tp2との間の時間
差Δt(=t−tp2)、およびピーク値時間差Δtpに基づいて、時間tでの交流電圧信号S1の位相θを検出する。この場合、
図3に示すように、第2期間T2の直前での交流電圧信号S1についての立ち上がりゼロクロス点を起点としたときに、第2ピーク値時間tp2での位相は90°となるため、基準位相θrは90°とする。このため、極性検出部10は、位相検出処理では、時間tでの交流電圧信号S1の位相θを下記式に基づいて算出する。
θ={θr+Δt/(tp2−tp1)×360}mod360
={90+Δt/(tp2−tp1)×360}mod360
なお、modは、剰余演算を示すものとする(以下の式においても同様)。
【0063】
また、極性検出部10は、極性検出処理を実行して、検出した位相θが0°を超え、180°未満のときには、交流電圧信号S1は正極性であり、検出した位相θが180°を超え、360°未満のときには、交流電圧信号S1は負極性であると検出して、検出した極性を示す極性信号S2を出力する。例えば、極性検出部10は、
図10に示すように、交流電圧信号S1の正極性の期間において、極性信号S2として正極性信号S2aを出力し、交流電圧信号S1の負極性の期間において、極性信号S2として負極性信号S2bを出力する。このようにして、第2期間T2の終了時点以降、極性検出部10は、新たな波形値Vsを入力する都度、位相検出処理および極性判定処理を実行することにより、交流電圧信号S1の位相θおよび極性をリアルタイムで検出して、極性信号S2(正極性信号S2aまたは負極性信号S2b)を出力する。
【0064】
また、各スイッチ素子5a,5bが駆動信号生成部14から出力される駆動信号S9a,S9bに基づいてON・OFF動作する(電流臨界モードで動作する)ことにより、入力端子2間に入力される交流入力電圧Vacを直流出力電圧Vdcに変換して出力端子3間から出力する。
【0065】
また、電流検出部11は、昇圧インダクタ4に流れるインダクタ電流I
Lの電流値に比例して電圧値が変化し、かつインダクタ電流I
Lの極性に応じて極性が変化する電流検出信号S3を出力する。また、目標電流信号生成部12は、上記したように、直流出力電圧Vdc、目標基準電圧Vr1および交流電圧信号S1に基づいて、
図10に示すように、昇圧インダクタ4に流す三角波状のインダクタ電流I
Lを示す電流検出信号S3におけるピーク電流値Pが描くべき正弦波状の目標電流信号S6を生成して出力する。
【0066】
また、ゼロ電流検出部13は、検出巻線21で検出される昇圧インダクタ4の両端間電圧(具体的には、検出巻線21から出力されるゼロ電流検出信号S7)に基づいて、第1検出パルスSz1および第2検出パルスSz2を生成して出力する。この場合、ゼロ電流検出部13は、後述するように、第1検出パルスSz1については、その立ち下がりエッジが交流入力電圧Vacの正極性の期間においてインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期するパルス信号として出力し、第2検出パルスSz2については、その立ち下がりエッジが交流入力電圧Vacの負極性の期間においてインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期するパルス信号として出力する。
【0067】
駆動信号生成部14は、各スイッチ素子5a,5bを電流臨界モードで動作させるため、各極性信号S2a,S2bに基づいて交流入力電圧Vacの極性を判別しつつ、
図10に示すように、交流入力電圧Vacが正極性のときには、第1検出パルスSz1に基づいて、その立ち下がりエッジに同期して(インダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期して)、ハイサイドのスイッチ素子5aに対応する駆動信号S9aをローレベルに移行させて、スイッチ素子5aをOFF状態に移行させ、続いてローサイドのスイッチ素子5bに対応する駆動信号S9bをハイレベルに移行させて、スイッチ素子5bをON状態に移行させる。その後、駆動信号生成部14は、増加するインダクタ電流I
Lを示す電流検出信号S3が目標電流信号S6に達するか否かを検出しつつ、電流検出信号S3が目標電流信号S6に達したときには、駆動信号S9bをローレベルに移行させてスイッチ素子5bをOFF状態に移行させ、続いてハイサイドのスイッチ素子5aに対応する駆動信号S9aをハイレベルに移行させて、スイッチ素子5aをON状態に移行させる。これにより、インダクタ電流I
Lが減少し、インダクタ電流I
Lを示す電流検出信号S3も減少する。
【0068】
交流入力電圧Vacが正極性のときに、駆動信号生成部14が上記のように動作して、駆動信号S9a,S9bを生成してスイッチ素子5a,5bをON・OFF駆動するため、
図10に示すように、電流検出信号S3がゼロ電圧と目標電流信号S6との間で三角波状に連続して変化する(インダクタ電流I
Lが、ゼロアンペアと目標電流値との間で三角波状に連続して変化する)。つまり、交流入力電圧Vacが正極性のときに、各スイッチ素子5a,5bが電流臨界モードで動作する。
【0069】
また、駆動信号生成部14は、
図10に示すように、交流入力電圧Vacが負極性のときには、第2検出パルスSz2に基づいて、その立ち下がりエッジに同期して(インダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期して)、ローサイドのスイッチ素子5bに対応する駆動信号S9bをローレベルに移行させて、スイッチ素子5bをOFF状態に移行させ、続いてハイサイドのスイッチ素子5aに対応する駆動信号S9aをハイレベルに移行させて、スイッチ素子5aをON状態に移行させる。その後、駆動信号生成部14は、交流入力電圧Vacが正極性のときとは逆方向に増加するインダクタ電流I
Lを示す電流検出信号S3が目標電流信号S6に達するか否かを検出しつつ、電流検出信号S3が目標電流信号S6に達したときには、駆動信号S9aをローレベルに移行させてスイッチ素子5aをOFF状態に移行させ、続いてローサイドのスイッチ素子5bに対応する駆動信号S9bをハイレベルに移行させて、スイッチ素子5bをON状態に移行させる。これにより、インダクタ電流I
Lが減少し、インダクタ電流I
Lを示す電流検出信号S3も減少する。
【0070】
交流入力電圧Vacが負極性のときに、駆動信号生成部14が上記のように動作して、駆動信号S9a,S9bを生成してスイッチ素子5a,5bをON・OFF駆動するため、
図10に示すように、電流検出信号S3がゼロ電圧と目標電流信号S6との間で三角波状に連続して変化する(インダクタ電流I
Lが、ゼロアンペアと目標電流値との間で三角波状に連続して変化する)。つまり、交流入力電圧Vacが負極性のときにも、各スイッチ素子5a,5bが電流臨界モードで動作する。
【0071】
このように、このコンバータ1では、ゼロ電流検出部13が、検出巻線21で検出される昇圧インダクタ4の両端間電圧に基づいて、交流入力電圧Vacの正極性の期間においては、立ち下がりエッジがインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期する第1検出パルスSz1を出力し、交流入力電圧Vacの負極性の期間においては、立ち下がりエッジがインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期する第2検出パルスSz2を出力するという動作を実行する。次いで、このゼロ電流検出部13の動作について詳細に説明する。
【0072】
上記したように、昇圧インダクタ4の両端間電圧は、交流入力電圧Vacが正極性の場合においては、スイッチ素子5bがON状態のときに、接続点A側の端部に対して入力端子2a側の端部が交流入力電圧Vacだけ高電位となり、スイッチ素子5bがOFF状態のときに、入力端子2a側の端部に対して接続点A側の端部が電圧(Vdc−Vac)だけ高電位となるように変化する。また、昇圧インダクタ4の両端間電圧は、交流入力電圧Vacが負極性の場合においては、スイッチ素子5aがON状態のときに、入力端子2a側の端部に対して接続点A側の端部が交流入力電圧Vacだけ高電位となり、スイッチ素子5aがOFF状態のときに、接続点A側の端部に対して入力端子2a側の端部が電圧(Vdc−Vac)だけ高電位となるように変化する。
【0073】
このため、この昇圧インダクタ4に対して
図1に示す極性で形成された検出巻線21の他端には、交流入力電圧Vacが正極性の場合においては、スイッチ素子5bがON状態(スイッチ素子5aはOFF状態)のときに電圧(−Vac/k)となり、スイッチ素子5bがOFF状態(スイッチ素子5aはON状態)のときに電圧(Vdc−Vac)/kとなり、また交流入力電圧Vacが負極性の場合においては、スイッチ素子5aがON状態(スイッチ素子5bはOFF状態)のときに電圧(|Vac|/k)となり、スイッチ素子5aがOFF状態(スイッチ素子5bはON状態)のときに電圧(−(Vdc−|Vac|)/k)となる
図10に示すような矩形波状のゼロ電流検出信号S7が発生する。
【0074】
この場合、交流入力電圧Vacが正極性の場合においては、上記したように、昇圧インダクタ4に流れているインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングは、スイッチ素子5bがOFF状態のときの昇圧インダクタ4の両端間電圧(入力端子2a側の端部の電圧を基準として接続点A側の端部が高電位となる電圧)の立ち下がりのタイミング(立ち下がりエッジ)と同期したものとなっていることから、ゼロ電流検出信号S7が電圧(Vdc−Vac)/kから立ち下がるタイミング(ゼロ電流検出信号S7の立ち下がりエッジ)とも同期したものとなっている。また、交流入力電圧Vacが負極性の場合においては、上記したように、昇圧インダクタ4に流れているインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングは、スイッチ素子5aがOFF状態のときの昇圧インダクタ4の両端間電圧(接続点A側の端部の電圧を基準として入力端子2a側の端部が高電位となる電圧)の立ち下がりのタイミング(立ち下がりエッジ)と同期したものとなっていることから、ゼロ電流検出信号S7が電圧(−(Vdc−|Vac|)/k)から立ち上がるタイミング(ゼロ電流検出信号S7の立ち上がりエッジ)とも同期したものとなっている。
【0075】
クランプ部23は、このゼロ電流検出信号S7を2種のクランプ電圧(ゼロ電圧と正の電源電圧Vcc)でクランプして、最大電圧が正の電源電圧Vccで、かつ最小電圧がゼロ電圧の矩形信号S8に変換して出力する。この矩形信号S8は、ゼロ電流検出信号S7の電圧レベルを単に変換しただけの信号であることから、
図10に示すように、その立ち上がりエッジはゼロ電流検出信号S7の立ち上がりエッジに同期し、かつその立ち下がりエッジはゼロ電流検出信号S7の立ち下がりエッジに同期した信号である。
【0076】
パルス出力部24では、第1コンパレータ24aが、この矩形信号S8と比較電圧Vr2とを比較して、
図10に示すように、その立ち上がりエッジが矩形信号S8の立ち上がりエッジに同期し、かつその立ち下がりエッジが矩形信号S8の立ち下がりエッジに同期した第1検出パルスSz1(矩形信号S8と同位相のパルス信号)を出力する。また、第2コンパレータ24bが、この矩形信号S8と比較電圧Vr2とを比較して、
図10に示すように、その立ち上がりエッジが矩形信号S8の立ち下がりエッジに同期し、かつその立ち下がりエッジが矩形信号S8の立ち上がりエッジに同期した第2検出パルスSz2(矩形信号S8と逆位相のパルス信号)を出力する。
【0077】
この場合、上記したように、交流入力電圧Vacが正極性のときには、インダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングは、ゼロ電流検出信号S7の立ち下がりエッジに同期しているため、矩形信号S8と同位相、つまりゼロ電流検出信号S7とも同位相の第1検出パルスSz1の立ち下がりエッジに同期している。また、交流入力電圧Vacが負極性のときには、インダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングは、ゼロ電流検出信号S7の立ち上がりエッジに同期しているため、矩形信号S8と逆位相、つまりゼロ電流検出信号S7とも逆位相の第2検出パルスSz2の立ち下がりエッジに同期している。
【0078】
このようにしてゼロ電流検出部13は、検出巻線21で検出される昇圧インダクタ4の両端間電圧に基づいて、交流入力電圧Vacの正極性の期間においては、立ち下がりエッジがインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期する第1検出パルスSz1を出力し、交流入力電圧Vacの負極性の期間においては、立ち下がりエッジがインダクタ電流I
Lがゼロになるタイミングと同期する第2検出パルスSz2を出力する。
【0079】
このように、スイッチング電源装置としてのコンバータ(ブリッジレストーテムポール力率改善コンバータ)1に設けられた正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10は、ピーク値時間特定処理70において、交流電圧信号S1の波形値Vsの絶対値が連続して交流電圧信号S1における一方の極性(上記の例では正極性)側に規定された閾値Vth1(ピーク電圧(振幅)の30%以上80%以下の範囲に含まれる所定の電圧値)の絶対値以上となる第1期間T1,T2のそれぞれにおいて、波形値Vsと閾値Vth1との差分ΔV(=|Vs|−|Vth1|)についての積分値(時間積分値)Vsmを算出すると共に算出時点での時間tに対応させて記憶部に記憶させる積分値記憶処理と、第1期間T1,T2の各終了時点において、第1期間T1,T2に記憶された積分値Vsのうちの最終時間積分値(上記の例では、第1期間T1では時間t12における積分値Vsm
12、第2期間T2では時間t32における積分値Vsm
32)の実質的に半分となる積分値Vsmに対応する時間を交流電圧信号S1の第1期間T1での第1ピーク値時間tp1および第2期間T2での第2ピーク値時間tp2として特定するピーク検出処理を実行し、位相検出処理において、閾値Vth1が規定された交流電圧信号S1の一方の極性を示す極性情報(第2ピーク値時間tp2での位相(基準位相θr)を示す情報)、新たな波形値Vsを入力した時間tと第2ピーク値時間tp2との間の時間
差Δt(=t−tp2)、およびピーク値時間差Δtp(=tp2−tp1)に基づいて、時間tでの交流電圧信号S1の位相θを検出する。
【0080】
したがって、この正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10によれば、交流電圧信号S1に重畳する虞のあるノイズの影響を受けにくい高電圧に規定された閾値Vth1に基づいて算出される波形値Vsと閾値Vth1との差分ΔVを使用し、かつこの差分ΔVを積分することでノイズの影響を一層低減し得る積分値Vsmを使用して、交流電圧信号S1の位相θを検出するため、ノイズの影響の少ない状態で、位相θを正確に検出することができる。また、このように正確な位相θに基づいて、交流電圧信号S1の極性を正確に示す極性信号S2を出力することができる。これにより、この極性検出部10を備えたコンバータ1によれば、このノイズの影響の少ない極性信号S2に基づいて、各スイッチ素子5a,5bを電流臨界モードで正確に動作させることができる。
【0081】
なお、上記の正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10では、第1閾値としての閾値Vth1を、交流電圧信号S1の正極性側に規定する構成を採用したが、交流電圧信号S1の一方の極性側としての負極性側に規定する構成を採用することもできる。図示はしないが、この構成を採用した場合にも、極性検出部10は、交流電圧信号S1の正極性側に閾値Vth1を規定する上記の構成と同様にして、ピーク値時間特定処理70において交流電圧信号S1の1周期分だけ離れた2つのピーク値時間tp1,tp2を特定できる。このことから、極性検出部10は、第1閾値としての閾値Vth1が規定された交流電圧信号S1の一方の極性を示す極性情報(この場合には、負極性を示す極性情報に関連して予め規定されている第2ピーク値時間tp2での位相(基準位相θr=270°)を示す情報)、新たな波形値Vsを入力した時間tと第2ピーク値時間tp2との間の時間
差Δt(=t−tp2)、およびピーク値時間差Δtpに基づいて、時間tでの交流電圧信号S1の位相θを、下記式に基づいて検出(算出)することができる。
θ={θr+Δt/(tp2−tp1)×360}mod360
={270+Δt/(tp2−tp1)×360}mod360
【0082】
また、交流電圧信号S1の一方の極性側にのみ第1閾値としての閾値Vth1を1つだけ規定する構成について上記したが、正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10は、
図11に示すように、交流電圧信号S1の一方の極性側(例えば、正極性側)に第1閾値としての閾値Vth1を規定すると共に、交流電圧信号S1の他方の極性側(例えば、負極性側)に第2閾値としての閾値Vth2を規定する構成を採用することもできる。この場合、閾値Vth1の絶対値と閾値Vth2の絶対値とを同じ値とする構成でもよいし、異なる値とする構成でもよい。
【0083】
この構成を採用した極性検出部10は、第1期間T1において実行するピーク値時間特定処理70では、上記した構成(第1閾値としての閾値Vth1を交流電圧信号S1の正極性側に規定する構成)のときと同様にして第1ピーク値時間tp1を特定する。また、
図12に示すように、時間t21から時間t32までの第2期間T2に亘り、波形値Vsの絶対値が閾値Vth2の絶対値以上となる状態が継続するときには(なお、この例では、理解の容易のため、第1閾値としての閾値Vth1を交流電圧信号S1の正極性側に規定する上記構成での第2期間T2と同じ個数(第1期間T1のときと同数)の波形値Vsが入力されるものとしているが、各閾値Vth1,Vth2が異なるときには、波形値Vsの個数は異なるものとなる)、極性検出部10は、時間t21から時間t32までの第2期間T2に亘り、新たな波形値Vsを入力する都度、ピーク値時間特定処理70における第2積分値記憶処理を実行する。これにより、各時間t21,t22,・・・,t31,t32において、各時間t21,t22,・・・,t31,t32での波形値Vs
21,Vs
22,・・・,Vs
31,Vs
32に基づいて、差分ΔV
21,ΔV
22,・・・,ΔV
31,ΔV
32(
図12参照)が算出されると共に、積分値Vsm
21(=Vsmの初期値(=0)+ΔV
21),Vsm
22(=Vsm
21+ΔV
22),・・・,Vsm
31(=Vsm
30+ΔV
31),Vsm
32(=Vsm
31+ΔV
32)が算出されて、
図7に示すように、各積分値Vsm
21,Vsm
22,・・・,Vsm
31,Vsm
32が対応する波形値Vs
21,Vs
22,・・・,Vs
31,Vs
32と共に、各時間t21,t22,・・・,t31,t32に対応させられて記憶部に記憶される。
【0084】
これにより、極性検出部10は、続いて、第2ピーク検出処理を実行することにより、第2期間T2に記憶された積分値Vsm
21〜Vsm
32のうちの最終時間積分値(本例では、時間t32に対応する積分値Vsm
32)の実質的に半分となる積分値Vsmに対応する時間(期間Txの中間点tcと実質的に同一となる時間)を交流電圧信号S1の第2期間T2での第2ピーク値時間tp2として特定して記憶部に記憶する。つまり、極性検出部10は、交流電圧信号S1の1/2周期分だけ離れた2つのピーク値時間tp1,tp2を特定できる。このことから、極性検出部10は、第2期間T2を規定するための第2閾値としての閾値Vth2が規定された交流電圧信号S1の極性を示す極性情報(この場合には、負極性を示す極性情報に関連して予め規定されている第2ピーク値時間tp2での位相(基準位相θr=270°)を示す情報)、新たな波形値Vsを入力した時間tと第2ピーク値時間tp2との間の時間差Δt(=t−tp2)、およびピーク値時間差Δtpに基づいて、時間tでの交流電圧信号S1の位相θを、下記式に基づいて検出(算出)することができる。
θ={θr+Δt/(tp2−tp1)×180}mod360
={270+Δt/(tp2−tp1)×180}mod360
【0085】
この交流電圧信号S1の各極性側(正極性側と負極性側)に閾値Vth1,Vth2を規定する構成の正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10においても、交流電圧信号S1に重畳する虞のあるノイズの影響を受けにくい高電圧に規定された各閾値Vth1,Vth2に基づいて算出される波形値Vsと各閾値Vth1,Vth2との差分ΔVを使用し、かつこの差分ΔVを積分することでノイズの影響を一層低減し得る積分値Vsmを使用して、交流電圧信号S1の位相θを検出するため、ノイズの影響の少ない状態で、位相θを正確に検出することができる。また、この極性検出部10によれば、交流電圧信号S1の一方の極性側にのみ閾値Vth1を規定する構成よりも、より早く交流電圧信号S1の位相θの検出を開始することができる。また、このように正確な位相θに基づいて、交流電圧信号S1の極性を正確に示す極性信号S2を出力することができる。これにより、この極性検出部10を備えたコンバータ1においても、このノイズの影響の少ない極性信号S2に基づいて、各スイッチ素子5a,5bを電流臨界モードで正確に動作させることができる。
【0086】
また、上記の正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10では、積分値記憶処理(第1期間T1での第1積分値記憶処理や第2期間T2での第2積分値記憶処理)において、算出した積分値Vsmを、この積分値Vsmの算出時間(算出時点での時間)に対応させて記憶部に記憶させ、ピーク検出処理(第1期間T1での第1ピーク検出処理や第2期間T2での第2ピーク検出処理)において、最終時間積分値の実質的に半分となる積分値Vsmに対応する時間を記憶部を参照して求めて、第1期間T1での第1ピーク値時間tp1や第2期間T2での第2ピーク値時間tp2として特定する構成を採用しているが、積分値記憶処理において、算出した積分値Vsmだけを記憶部に記憶させる構成(積分値Vsmの算出時間を記憶させない構成)においても、各期間T1,T2での第1ピーク値時間tp1および第2ピーク値時間tp2を特定することもできる。
【0087】
例えば、
図4に示す第1期間T1を例に挙げて説明すると、時間t13に開始するピーク検出処理(第1ピーク値時間tp1を特定するための第1ピーク検出処理)において、最終時間積分値の半分となる積分値Vsmを算出し、この半分の積分値Vsmに最も近い積分値Vsmを記憶部を参照して実質的に半分となる積分値Vsmとして特定し、この特定した積分値Vsmから最終時間積分値までの積分値の個数、A/D変換部15のサンプリング周期Tsp(波形値Vsの出力間隔)および時間t13に基づいて、第1ピーク値時間tp1を特定する構成を採用することもできる。
【0088】
また、上記した正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10を、スイッチング電源装置の一例としてのブリッジレストーテムポール力率改善コンバータに適用した例について説明したが、入力される交流入力電圧Vacなどの正弦波信号の極性を検出する必要のある他の形式のスイッチング電源装置に適用できるのは勿論である。また、上記の極性検出部10については、極性検出処理の実行を省いて、位相検出処理の実行までとして、検出した位相θを出力する正弦波信号位相検出装置として構成することもできる。
【0089】
なお、閾値Vthについては、予め規定しておく上記の構成に代えて、極性検出部10が、波形値Vsに基づいて交流電圧信号S1の振幅を検出すると共に、検出した振幅に応じて閾値Vthを決定する構成(例えば、決定した振幅の上記の範囲(30%以上80%以下)内に含まれる所定の電圧値を閾値Vthとして決定する構成)を採用することもできる。この構成を採用することにより、正弦波信号位相検出装置としての極性検出部10は、異なる振幅の交流電圧信号S1に対しても、好ましい閾値Vthを自動的に決定して、各ピーク値時間tp1,tp2、交流電圧信号S1の位相θ、ひいては交流電圧信号S1の極性を正確に検出することが可能となる。