特許第6988692号(P6988692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6988692
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】積層型配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20211220BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20211220BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20211220BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   H01B7/08
   H01B7/00 301
   B60R16/02 620Z
   H05K7/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-100772(P2018-100772)
(22)【出願日】2018年5月25日
(65)【公開番号】特開2019-204745(P2019-204745A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】江端 大輔
(72)【発明者】
【氏名】深水 雄也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 仁志
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 龍太
(72)【発明者】
【氏名】松尾 祐揮
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】水下 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】池田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/030361(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01209700(EP,A1)
【文献】 特開平10−223056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/00
B60R 16/02
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の偏平配線部材を備え、
前記複数の偏平配線部材のそれぞれが、複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材をそれらの延在方向の少なくとも一部において並列状態に保つベース部材とを含み、
前記複数の偏平配線部材の積層方向において、前記複数の線状伝送部材のうち太さが異なるものが併存するように配置され、
前記複数の偏平配線部材が、前記複数の線状伝送部材として太さが異なる複数の線状伝送部材を含む第1併存偏平配線部材及び第2併存偏平配線部材を備え、
前記第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分に対応する位置に、前記第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものが配置され、
前記第1併存偏平配線部材及び前記第2併存偏平配線部材が、前記ベース部材としてのシート材の一方主面に前記複数の線状伝送部材が配設された部材であり、
前記第1併存偏平配線部材及び前記第2併存偏平配線部材が、それぞれの前記シート材を互いに反対側に向けた姿勢で隣接しており、
前記第1併存偏平配線部材に含まれる線状伝送部材と前記第2併存偏平配線部材に含まれる線状伝送部材とが接触した状態となっている、積層型配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型配線部材であって、
前記複数の偏平配線部材が、第1偏平配線部材と、含まれる前記複数の線状伝送部材が前記第1偏平配線部材に含まれる線状伝送部材よりも細い第2偏平配線部材とを備える、積層型配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層型配線部材であって、
前記複数の偏平配線部材のそれぞれが、前記ベース部材としてのシート材の一方主面に前記複数の線状伝送部材が配設された部材である、積層型配線部材。
【請求項4】
請求項3に記載の積層型配線部材であって、
前記複数の偏平配線部材のうち前記積層方向における両外側のものの前記シート材が外側を向くように配置されている、積層型配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載される部品同士を接続する積層型配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電線と、その電線に巻かれた保護シートと、保護シートを電線に留める粘着テープとを備えるワイヤーハーネスを開示している。このワイヤーハーネスの横断面は、円形状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−72798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤーハーネスの横断面形状が円形状を呈していると、当該ワイヤーハーネスを配設するスペースの隙間を大きくする必要がある。
【0005】
そこで、車両に搭載される部品同士を接続する部材として、偏平な配線部材を用いることが検討されている。
【0006】
しかしながら、多数の配線を組込む必要がある場合、偏平な配線部材を積層する必要がある。すると、積層された配線部材の総厚みが大きくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、偏平配線部材を積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る積層型配線部材は、積層された複数の偏平配線部材を備え、前記複数の偏平配線部材のそれぞれが、複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材をそれらの延在方向の少なくとも一部において並列状態に保つベース部材とを含み、前記複数の偏平配線部材の積層方向において、前記複数の線状伝送部材のうち太さが異なるものが併存するように配置されているものである。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る積層型配線部材であって、前記複数の偏平配線部材が、第1偏平配線部材と、含まれる前記複数の線状伝送部材が前記第1偏平配線部材に含まれる線状伝送部材よりも細い第2偏平配線部材とを備える。
【0010】
また、第1の態様は、前記複数の偏平配線部材が、前記複数の線状伝送部材として太さが異なる複数の線状伝送部材を含む第1併存偏平配線部材及び第2併存偏平配線部材を備え、前記第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分に対応する位置に、前記第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものが配置されているものである。
【0011】
さらに、第1の態様は、前記第1併存偏平配線部材及び前記第2併存偏平配線部材が、前記ベース部材としてのシート材の一方主面に前記複数の線状伝送部材が配設された部材であり、前記第1併存偏平配線部材及び前記第2併存偏平配線部材が、それぞれの前記シート材を互いに反対側に向けた姿勢で隣接しているものである。さらに、前記第1併存偏平配線部材に含まれる線状伝送部材と前記第2併存偏平配線部材に含まれる線状伝送部材とが接触した状態となっている。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る積層型配線部材であって、前記複数の偏平配線部材のそれぞれが、前記ベース部材としてのシート材の一方主面に前記複数の線状伝送部材が配設された部材とされている。
【0013】
第4の態様は、第3の態様に係る積層型配線部材であって、前記複数の偏平配線部材のうち前記積層方向における両外側のものの前記シート材が外側を向くように配置されているものである。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様によると、複数の偏平配線部材の積層方向において、複数の線状伝送部材のうち太さが異なるものが併存するように配置されているため、比較的太い線状伝送部材だけが複数の偏平配線部材の積層方向において並んで配置されることが抑制される。このため、偏平配線部材を積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。
【0015】
第2の態様によると、比較的太い複数の線状伝送部材が第1偏平配線部材に含まれており、第2偏平配線部材に含まれる複数の線状伝送部材は、前記第1偏平配線部材に含まれる線状伝送部材よりも細い。このため、第1偏平配線部材と第2偏平配線部材とを含む複数の偏平配線部材を積層した形態において、前記積層方向において、比較的太い複数の線状伝送部材が並んで配置されることが抑制され、太い線状伝送部材と細い線状伝送部材が併存するようになる。このため、偏平配線部材を積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。
【0016】
第1の態様によると、複数の偏平配線部材の積層方向において、第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分に対応する位置に、第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものが配置されている。このため、第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分によって生じた隙間に、第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものを配置することができる。このため、偏平配線部材を積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。
【0017】
第1の態様によると、シート材に複数の線状伝送部材を配設することで、偏平配線部材を実現できる。また、第1併存偏平配線部材及び第2併存偏平配線部材が、それぞれのシート材を互いに反対側に向けた姿勢で隣接しているため、第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分によって生じた隙間に、第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものを効率よく配置することができる。
【0018】
第3の態様によると、シート材に複数の線状伝送部材を配設することで、偏平配線部材を実現できる。
【0019】
第4の態様によると、複数の偏平配線部材のうち積層方向における両外側のものの前記シート材が外側を向くように配置されているため、シート材によって線状伝送部材を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る積層型配線部材を示す概略斜視図である。
図2】同上の積層型配線部材の概略断面図である。
図3】絶縁電線をシート材に超音波接合する工程を示す説明図である。
図4】絶縁電線を縫糸によってシート材に縫い付けられた状態を示す説明図である。
図5】比較例に係る積層型配線部材を示す概略断面図である。
図6】変形例に係る積層型配線部材を示す概略断面図である。
図7】第2実施形態に係る積層型配線部材を示す概略断面図である。
図8】他の変形例に係る積層型配線部材を示す概略断面図である。
図9】さらに他の変形例に係る積層型配線部材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る積層型配線部材について説明する。図1は積層型配線部材10を示す概略斜視図であり、図2は積層型配線部材10の概略断面図である。
【0022】
積層型配線部材10は、積層された複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eを備える。
【0023】
複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eは、車両に搭載される部品をつなぐ部材である。複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eのそれぞれは、複数の線状伝送部材14、15と、ベース部材18とを備える。
【0024】
線状伝送部材14、15は、電気又は光等を伝送する線状の部材である。ここでは、線状伝送部材14,15は、芯線と芯線を覆う絶縁被覆とを含む絶縁電線14、15である例で説明する。芯線は、1本又は複数本の素線で構成される。素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体で形成される。絶縁被覆は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの樹脂材料が芯線の周囲に押出成形されることで形成される。
【0025】
絶縁電線14、15は、異なる太さの絶縁電線14、15を含む。ここでは、絶縁電線14は、絶縁電線15よりも太い。
【0026】
ベース部材18は、複数の線状伝送部材14、15を、それらの延在方向の少なくとも一部において並列状態に保つ部材である。
【0027】
ここでは、ベース部材18は、シート材18である例で説明する。シート材18を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート材18は、好ましくはPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成される。シート材18は、内部が一様に埋ったシート材であってもよいし、不織シート等であってもよい。シート材18は、金属などの材料を含むこともあり得る。シート材18は、好ましくは、厚み方向において容易に曲る柔軟性を有する。シート材18は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0028】
図1に示す例では、シート材18は方形状に形成されているが、シート材18の形状はこれに限られない。シート材18は、絶縁電線14、15の配設経路等に応じた形状に形成されていてもよい。
【0029】
複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eのそれぞれにおいて、シート材18の一方主面に複数の絶縁電線14、15が配設されている。
【0030】
複数の絶縁電線14、15を、シート材18の主面上で保持する構成は特に限定されるものではない。
【0031】
ここでは、電線とシート材との接合手段として、ここでは溶着が採用されている。つまり、電線とシート材とのうち少なくとも一方が樹脂材料を有し、この樹脂材料が溶けて相手側に接合される。ここでは絶縁被覆と、樹脂製のシート材とが共に溶けて相互に接合されている。この場合、絶縁被覆と、樹脂製のシート材とは同じ樹脂材料を含むことが好ましい。
【0032】
係る溶着手段としては、特に限定されるものではなく、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。
【0033】
例えば、電線とシート材とが、熱又は溶剤等によって少なくとも一方の樹脂が溶かされて接合されていてもよい。係る接合手段は、溶着、融着、溶接等の公知の接合手段を用いることができる。
【0034】
例えば、図3に示すように、絶縁電線14、15とシート材18とを超音波接合用のチップ40とアンビル42との間に挟み込んで、絶縁電線14、15をシート材18に溶着してもよい。この場合、絶縁電線14、15とシート材18とは、それらの少なくとも一方が溶けた接合部19を介して接合される。
【0035】
絶縁電線14、15とシート材18とは、熱溶着によって溶着されてもよいし、接着剤、両面テープ等によって接合されていてもよい。また、図4に示すように、絶縁電線14、15が縫糸19Bによってシート材18に縫い付けられて接合されていてもよい。
【0036】
ここでは、偏平配線部材12Aの一方主面に比較的太い複数(ここでは6本)の絶縁電線14が並列状態でシート材18の一方主面に保持されている。
【0037】
また、偏平配線部材12Bの一方主面に、比較的太い少なくとも1本(ここでは5本)の絶縁電線14と比較的細い少なくとも1本(ここでは2本)の絶縁電線15とが並列状態でシート材18の一方主面に保持されている。ここでは、シート材18の幅方向両外側に比較的太い絶縁電線14が設けられ、シート材18の幅方向中央に比較的細い絶縁電線15が設けられている。
【0038】
また、偏平配線部材12C、12D、12Eの一方主面に比較的細い複数(ここでは9本)の絶縁電線15が並列状態でシート材18の一方主面に保持されている。
【0039】
なお、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eにおいて、複数の絶縁電線14、15が並列状態に保たれず、分岐したり、曲ったりする部分が存在していてもよい。
【0040】
絶縁電線14、15を全体的に観察すると、絶縁電線14は比較的太い絶縁電線14の一例であり、絶縁電線15は比較的細い絶縁電線15の一例である。
【0041】
上記偏平配線部材12Aは、比較的太い複数の絶縁電線14を含む第1偏平配線部材12Aの一例である。
【0042】
また、偏平配線部材12C、12D、12Eは、含まれる絶縁電線15が第1偏平配線部材12Aに含まれる絶縁電線14よりも細い第2偏平配線部材12C、12D、12Eの一例である。
【0043】
偏平配線部材12Bは、太い絶縁電線14及び細い絶縁電線15を含むため、第1偏平配線部材及び第2偏平配線部材のいずれでもない。
【0044】
積層型配線部材10においては、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eの積層方向(それらの厚み方向でもある)において、複数の絶縁電線14、15のうち太さが異なるものが併存するように配置されている。
【0045】
ここでは、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eが、その順で下から上に並ぶように積層されている。この状態で、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eのそれぞれにおける複数の絶縁電線14、15の並列保持部分が、並列方向を揃えた状態で同じ領域上で重なって配置されている。
【0046】
ここで、上記したように、偏平配線部材12Aには、比較的太い絶縁電線14が保持されている。偏平配線部材12C、12D、12Eには、比較的細い絶縁電線15が保持されている。このため、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eの積層体を、その積層方向において観察すると、比較的太い絶縁電線14の上方に比較的細い絶縁電線15が配置されており、太さが異なる絶縁電線14、15が併存するように配置された構成となっている。このため、前記積層方向において、比較的太い複数の絶縁電線14だけが並ぶことが抑制され、もって、積層体の薄型化が図られる。
【0047】
複数の絶縁電線14、15の並列方向の全てに関して、前記積層方向において、太さが異なる絶縁電線14、15が併存していることが好ましいがこれは必須ではない。複数の絶縁電線14、15の並列方向の一部においても、前記積層方向において、太さが異なる絶縁電線14、15が併存していれば、その部分では、薄型化を期待できるからである。
【0048】
なお、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eを積層状態に保つ構造は特に限定されない。例えば、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eの積層体の周囲に粘着テープ等の結束部材が巻付けられる構成であってもよい。また、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eがそれらの間に介在する接着剤、両面テープ等によって接着されてもよい。また、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eの両側部のシート材18が溶着、粘着テープ、接着剤等によって接合されること、或は、クランプ等によって重ね合せ状態に保たれる構成であってもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eのうち前記積層方向における両外側のものである偏平配線部材12A、12Eのシート材18が外側を向くように配置されている。より具体的には、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12Dについては、シート材18が下側に配置されている。偏平配線部材12Eについては、上下反転されて、シート材18が上側に配置されている。このため、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eの積層体を全体として観察すると、積層方向両側には、シート材18が積層方向外側に位置している。このため、絶縁電線14、15は、両外側のシート材18の間に配設された構成となっている。
【0050】
図5は、比較例として、複数の偏平配線部材50のそれぞれのシート材18に比較的太い絶縁電線14と比較的細い絶縁電線15とを混在させ、これを積層した形態を示している。この場合、各シート材18の全ての間には、比較的太い絶縁電線14に合せた間隔D1が設けられることになる。
【0051】
これに対して、本実施形態では、偏平配線部材12Aのシート材18と偏平配線部材12Bのシート材18との間には、比較的太い絶縁電線14の直径に応じた間隔D1が設けられる。偏平配線部材12Bのシート材18と偏平配線部材12Cのシート材18との間には、比較的太い絶縁電線14の直径に応じた間隔D1が設けられる。しかしながら、偏平配線部材12Cのシート材18と偏平配線部材12Dのシート材18との間には、比較的細い絶縁電線15の直径に応じた間隔D2が設けられることになる。また、偏平配線部材12Dのシート材18と偏平配線部材12Eのシート材18との間には、太い絶縁電線14が存在しないため、比較的細い絶縁電線15の直径の2倍に応じた間隔(D2+D2)が設けられることになる。
【0052】
このため、偏平配線部材12Cのシート材18と偏平配線部材12Dのシート材18との間隔D2、偏平配線部材12Dのシート材18と偏平配線部材12Eのシート材18との間隔(D2+D2)を、比較的細い絶縁電線15を1層又は2層に配設可能な比較的小さい間隔とできる分、小さくできる。結果、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eの厚みをなるべく小さくできることになる。
【0053】
以上のように構成された積層型配線部材10によると、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eの積層方向において、複数の絶縁電線14、15のうち太さが異なる絶縁電線14、15ものが併存するように配置されているため、比較的太い絶縁電線14が前記積層方向において並んで配置されることが抑制される。このため、偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eを積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。これにより、積層型配線部材10の省スペース配線が可能となる。
【0054】
具体的には、比較的太い複数の絶縁電線14が第1偏平配線部材12Aに含まれており、第2偏平配線部材12C、12D、12Eに含まれる複数の絶縁電線15は、第1偏平配線部材12Aに含まれる絶縁電線14よりも細い。このため、第1偏平配線部材12Aと第2偏平配線部材12C、12D、12Eとを含む複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eを積層した形態において、その積層方向において、比較的太い複数の絶縁電線14が並んで配置されることが抑制され、太い絶縁電線14と細い絶縁電線15とが併存するようになる。このため、偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eを積層した積層型配線部材10の厚みをなるべく小さくできる。
【0055】
また、偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eは、シート材18の一方主面に複数の絶縁電線14、15を保持した構成であるため、シート材18に複数の絶縁電線14、15を配設することで、偏平配線部材を容易に実現できる。
【0056】
また、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eのうち積層方向における両外側の偏平配線部材12A、12Eのシート材18が外側を向くように配置されているため、シート材18によって絶縁電線14、15を保護することができる。また、絶縁電線14、15が積層型配線部材10から外部に飛出し難くなる。
【0057】
なお、第1実施形態に係る積層型配線部材10は、図6に示す変形例に係る積層型配線部材110のように、絶縁電線14、15、16の太さが3段階以上変化する場合にも適用可能である。
【0058】
ここでは、絶縁電線14が最も太く、絶縁電線15が最も細く、絶縁電線16がそれらの間の中間の太さであるとする。偏平配線部材112Aには比較的太い絶縁電線14が含まれ、偏平配線部材112Bには比較的太い絶縁電線15及び中間程度の太さの絶縁電線16が含まれ、偏平配線部材112Cには中間程度の太さの絶縁電線16及び比較的細い絶縁電線15が含まれ、偏平配線部材112D、112Eには、比較的細い絶縁電線15が含まれる。
【0059】
この場合、偏平配線部材112Aが、比較的太い複数の絶縁電線14を含む第1偏平配線部材112Aであり、偏平配線部材112Cが、絶縁電線14よりも細い絶縁電線15、16を含む第2偏平配線部材112Cであり、偏平配線部材112D、112Eも、絶縁電線14よりも細い絶縁電線15を含む第2偏平配線部材112D、112Eであると捉えることができる。
【0060】
また、偏平配線部材112Bが、比較的太い複数の絶縁電線14及び中間程度の太さの絶縁電線16を含む第1偏平配線部材112Bであり、偏平配線部材112D、112Eが、第1偏平配線部材112Bに含まれる絶縁電線14、16よりも細い絶縁電線15を含む第2偏平配線部材112D、112Eであると捉えることもできる。
【0061】
いずれにせよ、積層方向において、相対的に太い絶縁電線14、或は、中間程度の絶縁電線16だけが積層方向に並ぶことなく、それらと細い絶縁電線14が混じった状態で配設されるため、積層型配線部材110をなるべく薄くすることができる。
【0062】
{第2実施形態}
第2実施形態に係る積層型配線部材210について説明する。図7は積層型配線部材210を示す概略断面図である。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
積層型配線部材210は、積層された複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eを備える。
【0064】
複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eは、複数の偏平配線部材12A、12B、12C、12D、12Eと同様構成であり、複数の線状伝送部材の一例としての絶縁電線14、15と、ベース部材18とを備える。
【0065】
上記偏平配線部材212Aには、比較的太い複数の絶縁電線14が保持されている。なお、偏平配線部材212Aは、第1実施形態で説明した第1偏平配線部材212Aの一例と捉えることもできる。
【0066】
また、偏平配線部材212D、212Eは、比較的細い複数の絶縁電線15が保持されている。なお、偏平配線部材212D、212Eは、第1偏平配線部材212Aに含まれる絶縁電線14よりも細い絶縁電線15を含む第2偏平配線部材212D、212Eの一例と捉えることもできる。
【0067】
偏平配線部材212B、212Cには、太さが異なる複数の絶縁電線14、15が保持されている。このため、偏平配線部材212Bは、太さが異なる複数の絶縁電線14、15を含む第1併存偏平配線部材212Bの一例である。また、偏平配線部材212Cも太さが異なる複数の絶縁電線14、15を含む第2併存偏平配線部材212Cの一例である。
【0068】
積層型配線部材210においては、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eの積層方向(それらの厚み方向でもある)において、複数の絶縁電線14、15のうち太さが異なるものが併存するように配置されている。
【0069】
ここでは、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eが、その順で下から上に並ぶように積層されている。この状態で、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eのそれぞれにおける複数の絶縁電線14、15の並列保持部分が、並列方向を揃えた状態で同じ領域上で重なって配置されている。
【0070】
ここでは、上記したように、第1併存偏平配線部材212Bには、太さが異なる絶縁電線14、15が保持されている。第1併存偏平配線部材212Bにおいては、シート材18の幅方向両側に少なくとも1本(それぞれに2本)の比較的太い絶縁電線14が保持され、その中間部に、少なくとも1本(ここでは2本)の比較的細い絶縁電線15が保持されている。
【0071】
また、第2併存偏平配線部材212Cには、太さが異なる絶縁電線14、15が保持されている。第2併存偏平配線部材212Cにおいては、シート材18の幅方向両側に少なくとも1本(それぞれに2本)の比較的細い絶縁電線15が保持され、その中間部に、少なくとも1本(ここでは2本)の比較的太い絶縁電線14が保持されている。
【0072】
シート材18の幅方向において観察すると、第1併存偏平配線部材212Bのうち比較的太い絶縁電線14が配置される部分は、第2併存偏平配線部材212Cのうち比較的細い絶縁電線15が配置される部分に対応している。また、第1併存偏平配線部材212Bのうち比較的細い絶縁電線15が配置される部分は、第2併存偏平配線部材212Cのうち比較的太い絶縁電線14が配置される部分に対応している。
【0073】
また、本実施形態においては、第1併存偏平配線部材212B及び第2併存偏平配線部材212Cが、それぞれのシート材18を互いに反対側に向けた姿勢で隣接している。すなわち、第1併存偏平配線部材212Bは、偏平配線部材212Aと同じ向きで当該偏平配線部材212A上に重ねられ、第2併存偏平配線部材212Cは、表裏反転させた状態で、第1併存偏平配線部材212B上に重ねられている。
【0074】
そして、第1併存偏平配線部材212B及び第2併存偏平配線部材212Cの関係で観察すると、第1併存偏平配線部材212Bに含まれる複数の絶縁電線14、15のうち相対的に細い絶縁電線15が配置される部分に対応する位置(幅方向中央)に、第2併存偏平配線部材212Cに含まれる絶縁電線14、15のうち相対的に太い絶縁電線14が配置されている。すなわち、第1併存偏平配線部材212Bを観察すると、複数の絶縁電線14、15のうち相対的に細い絶縁電線15が配置される部分には、相対的に太い絶縁電線14よりも凹む空間が形成される。そこで、第2偏平配線部材212Cによって保持される複数の絶縁電線14、15のうち相対的に太い絶縁電線14によって生じる出っ張り部分を、当該凹んだ空間に配置するようにしている。なお、2つの絶縁電線の関係に関して前記積層方向において対応する位置に配設される場合とは、例えば、前記積層方向において2つの絶縁電線が幅方向に重なって配設される位置関係にある場合である。
【0075】
逆に、第2併存偏平配線部材212Cに含まれる複数の絶縁電線14、15のうち相対的に細い絶縁電線15が配置される部分に対応する位置(幅方向両側)に、第1併存偏平配線部材212Bに含まれる絶縁電線14、15のうち相対的に太い絶縁電線14が配置されている。すなわち、第2併存偏平配線部材212Cを観察すると、複数の絶縁電線14、15のうち相対的に細い絶縁電線15が配置される部分(幅方向両側)には、相対的に太い絶縁電線14よりも凹む空間が形成される。そこで、第1偏平配線部材212Bによって保持される複数の絶縁電線14、15のうち相対的に太い絶縁電線14によって生じる出っ張り部分を、当該凹んだ空間に配置するようにしている。
【0076】
つまり、第1併存偏平配線部材212B及び第2併存偏平配線部材212Cとの関係に関して、相対的に太い絶縁電線14によって生じる出っ張り部分と、相対的に細い絶縁電線15によって生じる凹んだ部分とを互違いに設ける構成とすることで、上記出っ張り部分を、凹んだ部分に収容し、全体として厚み寸法がなるべく小さくなるようにしている。
【0077】
第1併存偏平配線部材212B及び第2併存偏平配線部材212Cに着目すると、積層方向において、太さが異なる複数の絶縁電線14、15が併存しており、従って、積層型配線部材210全体としてみても、積層方向において、太さが異なる複数の絶縁電線14、15が併存している。
【0078】
なお、本実施形態においても、偏平配線部材212Aには、比較的太い絶縁電線14が保持されている。偏平配線部材212D、212Eには、比較的細い絶縁電線15が保持されている。このため、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eの積層体を、その積層方向において観察すると、比較的太い絶縁電線14の上方に比較的細い絶縁電線15が配置されており、この点からも、太さが異なる絶縁電線14、15が併存するように配置された構成となっている。かかる構成によって、上記第1実施形態と同様に、前記積層方向において、比較的太い複数の絶縁電線14だけが並ぶことが抑制され、もって、積層体の薄型化が図られる。
【0079】
また、本実施形態においても、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eのうち前記積層方向における両外側のものである偏平配線部材212A、212Eのシート材18が外側を向くように配置されている。これにより、絶縁電線14、15は、両外側のシート材18の間に配設された構成となっている。
【0080】
本実施形態においては、偏平配線部材212Bと偏平配線部材212Cとの間隔は太い絶縁電線14の直径と細い絶縁電線15の直径との和に応じた間隔(D1+D2)となるため、積層型配線部材210の厚みをなるべく小さくできる。
【0081】
また、偏平配線部材212Aのシート材18と偏平配線部材212Bのシート材18との間隔は、太い絶縁電線14の直径に応じた間隔D1となり、偏平配線部材212Cのシート材18と偏平配線部材212Dのシート材18とは接した状態となる。偏平配線部材212Dと偏平配線部材212Eと間には太い絶縁電線14が存在しないため、それらの間隔は細い絶縁電線15の直径の2倍に応じた間隔(D2+D2)となる。この点からも、積層型配線部材210の厚みをなるべく小さくできる。
【0082】
以上のように構成された積層型配線部材210によると、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eの積層方向において、複数の絶縁電線14、15のうち太さが異なる絶縁電線14、15ものが併存するように配置されているため、比較的太い絶縁電線14が前記積層方向において並んで配置されることが抑制される。このため、偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eを積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。これにより、積層型配線部材10の省スペース配線が可能となる。
【0083】
具体的には、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eが、複数の線状伝送部材として太さが異なる複数の絶縁電線14、15を含む第1併存偏平配線部材212B及び第2併存偏平配線部材212Cとを備え、第1併存偏平配線部材212Bに含まれる複数の絶縁電線14、15のうち相対的に細い絶縁電線15が配置される部分に対応する位置に、第2併存偏平配線部材212Cに含まれる複数の絶縁電線14、15のうち相対的に太い絶縁電線14が配置されているため、それらをなるべく小さい厚み寸法で積層した形態とすることができる。
【0084】
しかも、第1併存偏平配線部材212B及び第2併存偏平配線部材212Cが、それぞれのシート材18を互いに反対側に向けた姿勢で隣接しているため、第1併存偏平配線部材212Bに含まれる複数の絶縁電線14、15のうち相対的に細い絶縁電線14が配置される部分によって生じた隙間に、第2併存偏平配線部材212Cに含まれる複数の絶縁電線14、15のうち相対的に太い絶縁電線15を効率よく配置することができる。
【0085】
また、上記第1実施形態と同様に、比較的太い複数の絶縁電線14が第1偏平配線部材212Aに含まれ、第2偏平配線部材212D、212Eに含まれる複数の絶縁電線15は、第1偏平配線部材212Aに含まれる絶縁電線14よりも細いため、この点からも、積層型配線部材10の厚みをなるべく小さくできる。
【0086】
また、偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eは、シート材18の一方主面に複数の絶縁電線14、15を保持した構成であるため、シート材18に複数の絶縁電線14、15を配設することで、偏平配線部材を容易に実現できる。
【0087】
また、複数の偏平配線部材212A、212B、212C、212D、212Eのうち積層方向における両外側の偏平配線部材212A、212Eのシート材18が外側を向くように配置されているため、シート材18によって絶縁電線14、15を保護することができる。また、絶縁電線14、15が積層型配線部材10から外部に飛出し難くなる。
【0088】
なお、第2実施形態に係る積層型配線部材210は、図8に示す変形例に係る積層型配線部材310のように、絶縁電線14、15、16の太さが3段階以上変化する場合にも適用可能である。
【0089】
ここでは、絶縁電線14が最も太く、絶縁電線15が最も細く、絶縁電線16がそれらの間の中間の太さであるとする。上記実施形態と異なる点は、偏平配線部材212Bに対応する偏平配線部材(第1併存偏平部材)312Bにおいて、シート材18の幅方向中央に比較的細い絶縁電線15に代えて、中間程度の太さの絶縁電線16が保持されていることである。
【0090】
この場合においても、第1併存偏平配線部材312Bに含まれる複数の絶縁電線14、16のうち相対的に細い絶縁電線16が配置される部分に対応する位置に、第2併存偏平配線部材212Cに含まれる複数の絶縁電線14、15のうち相対的に太い絶縁電線14を配置することができ、上記と同様に、積層型配線部材310の厚み寸法をなるべく小さくできる。
【0091】
また、上記第2実施形態のように、第1併存偏平配線部材212B及び第2併存偏平配線部材212Cが、シート材18を互いに反対側に向けた状態となっていることは必要ではない。例えば、図9に示す変形例に係る積層型配線部材410のように、シート材18が柔軟に変形可能であれば、第2併存偏平配線部材212Cのシート材18は、第1併存偏平配線部材212Bの細い絶縁電線15によって生じる空間に応じた形状に応じて変形し、第2併存偏平配線部材212Cの太い絶縁電線14分の出っ張りを当該第1併存偏平配線部材212Bの細い絶縁電線15によって生じる空間に配置することができる。
【0092】
{変形例}
上記各実施形態及び各変形例では、線状伝送部材が絶縁電線である例で説明したが、これに限られない。線状伝送部材は、電気又は光等を伝送する線状の部材であってもよい。例えば、線状伝送部材は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0093】
電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。
【0094】
また、偏平配線部材は、並列した線状導体(線状伝送部材)をフィルム等の絶縁被覆(ベース部材)で被覆したフレキシブルフラットケーブル(FFC)であってもよいし、樹脂フィルム等の絶縁部材(ベース部材)に印刷回路(線状伝送部材)を形成したフレキシブルプリント回路基板(FPC)であってもよいし、絶縁電線を並列状態で接合したフラットケーブル(絶縁電線内部の芯線自体が線状伝送部材であり、並列状態に接合された絶縁被覆がベース部材)等であってもよい。これらの場合であっても、内部の導体の太さが異なれば、上記と同様に適用可能である。
【0095】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
本開示は、下記の各態様を開示する。
第1の態様に係る積層型配線部材は、積層された複数の偏平配線部材を備え、前記複数の偏平配線部材のそれぞれが、複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材をそれらの延在方向の少なくとも一部において並列状態に保つベース部材とを含み、前記複数の偏平配線部材の積層方向において、前記複数の線状伝送部材のうち太さが異なるものが併存するように配置されているものである。
第2の態様は、第1の態様に係る積層型配線部材であって、前記複数の偏平配線部材が、第1偏平配線部材と、含まれる前記複数の線状伝送部材が前記第1偏平配線部材に含まれる線状伝送部材よりも細い第2偏平配線部材とを備える。
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る積層型配線部材であって、前記複数の偏平配線部材が、前記複数の線状伝送部材として太さが異なる複数の線状伝送部材を含む第1併存偏平配線部材及び第2併存偏平配線部材を備え、前記第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分に対応する位置に、前記第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものが配置されているものである。
第4の態様は、第3の態様に係る積層型配線部材であって、前記第1併存偏平配線部材及び前記第2併存偏平配線部材が、前記ベース部材としてのシート材の一方主面に前記複数の線状伝送部材が配設された部材であり、前記第1併存偏平配線部材及び前記第2併存偏平配線部材が、それぞれの前記シート材を互いに反対側に向けた姿勢で隣接しているものである。
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る積層型配線部材であって、前記複数の偏平配線部材のそれぞれが、前記ベース部材としてのシート材の一方主面に前記複数の線状伝送部材が配設された部材とされている。
第6の態様は、第5の態様に係る積層型配線部材であって、前記複数の偏平配線部材のうち前記積層方向における両外側のものの前記シート材が外側を向くように配置されているものである。
第1の態様によると、複数の偏平配線部材の積層方向において、複数の線状伝送部材のうち太さが異なるものが併存するように配置されているため、比較的太い線状伝送部材だけが複数の偏平配線部材の積層方向において並んで配置されることが抑制される。このため、偏平配線部材を積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。
第2の態様によると、比較的太い複数の線状伝送部材が第1偏平配線部材に含まれており、第2偏平配線部材に含まれる複数の線状伝送部材は、前記第1偏平配線部材に含まれる線状伝送部材よりも細い。このため、第1偏平配線部材と第2偏平配線部材とを含む複数の偏平配線部材を積層した形態において、前記積層方向において、比較的太い複数の線状伝送部材が並んで配置されることが抑制され、太い線状伝送部材と細い線状伝送部材が併存するようになる。このため、偏平配線部材を積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。
第3の態様によると、複数の偏平配線部材の積層方向において、第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分に対応する位置に、第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものが配置されている。このため、第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分によって生じた隙間に、第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものを配置することができる。このため、偏平配線部材を積層した積層型配線部材の厚みをなるべく小さくできる。
第4の態様によると、シート材に複数の線状伝送部材を配設することで、偏平配線部材を実現できる。また、第1併存偏平配線部材及び第2併存偏平配線部材が、それぞれのシート材を互いに反対側に向けた姿勢で隣接しているため、第1併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に細いものが配置される部分によって生じた隙間に、第2併存偏平配線部材に含まれる前記複数の線状伝送部材のうち相対的に太いものを効率よく配置することができる。
第5の態様によると、シート材に複数の線状伝送部材を配設することで、偏平配線部材を実現できる。
第6の態様によると、複数の偏平配線部材のうち積層方向における両外側のものの前記シート材が外側を向くように配置されているため、シート材によって線状伝送部材を保護することができる。
【0096】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0097】
10、110、210、310、410 積層型配線部材
12A 偏平配線部材(第1偏平配線部材)
12B 偏平配線部材
12C 偏平配線部材(第2偏平配線部材)
12D 偏平配線部材(第2偏平配線部材)
12E 偏平配線部材(第2偏平配線部材)
14、15、16 線状伝送部材(絶縁電線)
18 ベース部材(シート材)
112A 偏平配線部材(第1偏平配線部材)
112B 偏平配線部材(第1偏平配線部材)
112C 偏平配線部材(第2偏平配線部材)
112D 偏平配線部材
112E 偏平配線部材
212A 偏平配線部材(第1偏平配線部材)
212B 偏平配線部材(第1偏平配線部材、第1併存偏平配線部材)
212C 偏平配線部材(第2偏平配線部材、第2併存偏平配線部材)
212D 偏平配線部材(第2偏平配線部材)
212E 偏平配線部材(第2偏平配線部材)
312B 第1併存偏平配線部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9