特許第6988723号(P6988723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6988723車載通信装置、通信プログラム及びメッセージ送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6988723
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】車載通信装置、通信プログラム及びメッセージ送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20211220BHJP
【FI】
   H04L12/28 200D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-134508(P2018-134508)
(22)【出願日】2018年7月17日
(65)【公開番号】特開2020-14097(P2020-14097A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2020年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 剛史
(72)【発明者】
【氏名】生田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佑樹
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−091711(JP,A)
【文献】 特開2015−067187(JP,A)
【文献】 特開2012−253671(JP,A)
【文献】 特開2009−165047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/28,12/44−12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の装置と複数の通信線を介して接続され、
前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部と、
前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類する処理を行う分類処理部と、
前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信するメッセージ送信処理部と
を備え、
優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い、車載通信装置。
【請求項2】
前記メッセージ送信処理部は、複数の通信部に対して所定の順番でメッセージを分配する、請求項1に記載の車載通信装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記メッセージ送信処理部から複数の群に分類された複数のメッセージを与えられた場合に、優先度の高いメッセージを先に送信する、請求項1又は請求項2に記載の車載通信装置。
【請求項4】
他の装置と2つの通信線を介して接続され、
前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う2つの通信部と、
前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて2つの群に分類する処理を行う分類処理部と、
前記2つの群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信するメッセージ送信処理部と
を備え、
優先度が高いメッセージが分類される群に対して2つの通信部が割り当てられ、
優先度が低いメッセージが分類される群に対して1つの通信部の割り当てられる、車載通信装置。
【請求項5】
他の装置と複数の通信線を介して接続され、前記通信線に対してそれぞれ設けられて前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部を備える車載通信装置に、
前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類し、
前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信する
処理を行わせ、
優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い、通信プログラム。
【請求項6】
他の装置と複数の通信線を介して接続された車載通信装置が
前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類し、
前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部のうち、一又は複数の通信部を各群に対してそれぞれ割り当て、
前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信し、
優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い、メッセージ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において通信を行う車載通信装置、この車載通信装置が実行する通信プログラム、及び、この車載通信装置によるメッセージ送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)は増加する傾向にある。各ECUは、他のECUとの間で通信を行って情報を交換し、各々の処理を行っている。このため、車両内のECUの増加に伴って、ECUが通信を行うために設けられる車両内の通信線の量が増加し、車両の重量の増加及び車両内の通信線を配するスペースの減少等が懸念される。
【0003】
特許文献1においては、車両内を複数の領域に分け、領域毎に複数の機能ECUを第1ネットワークにて中継ECUに接続し、複数の中継ECUを第2ネットワークにて接続した構成の車両制御システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−67187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の車両制御システムにおいては、異なる領域に設けられた複数の機能ECU間での通信量が増大した場合に、これらの通信を中継する中継ECU間の通信帯域が逼迫し、通信遅延が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制することが期待できる車載通信装置、通信プログラム及びメッセージ送信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る車載通信装置は、他の装置と複数の通信線を介して接続され、前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部と、前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類する処理を行う分類処理部と、前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信するメッセージ送信処理部とを備え、優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い。
【0008】
本態様に係る通信プログラムは、他の装置と複数の通信線を介して接続され、前記通信線に対してそれぞれ設けられて前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部を備える車載通信装置に、前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類し、前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信する処理を行わせ、優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い。
【0009】
本態様に係るメッセージ送信方法は、他の装置と複数の通信線を介して接続された車載通信装置が、前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類し、前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部のうち、一又は複数の通信部を各群に対してそれぞれ割り当て、前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信し、優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い。
【0010】
なお、本願は、このような特徴的な処理部を備える車載中継装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする通信方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるための通信プログラムとして実現したりすることができる。また、車載中継装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、車載中継装置を含むその他の装置又はシステムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記によれば、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施の形態に係るGWの構成を示すブロック図である。
図3】本実施の形態に係るGWが行う他のGWへのメッセージ送信処理を説明するための模式図である。
図4】本実施の形態に係るGWが行うメッセージの分類処理の手順を示すフローチャートである。
図5】本実施の形態に係るGWが行うメッセージの送信処理の手順を示すフローチャートである。
図6】本実施の形態に係るGWが行うメッセージの送信処理の手順を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態に係るGWが行うメッセージの送信処理の手順を示すフローチャートである。
図8】変形例1に係るGWが行う他のGWへのメッセージ送信処理を説明するための模式図である。
図9】変形例2に係るGWが行う他のGWへのメッセージ送信処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施の形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(1)本態様に係る車載通信装置は、他の装置と複数の通信線を介して接続され、前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部と、前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類する処理を行う分類処理部と、前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信するメッセージ送信処理部とを備え、優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い。
【0015】
本態様にあっては、車載通信装置と他の装置とを複数の通信線を介して接続する。車載通信装置は、通信線を介して他の装置とのメッセージ送受信を行う複数の通信部を備える。車載通信装置は、他の装置へ送信すべきメッセージを、このメッセージに付された優先度に応じて複数の群に分類する。各群に対しては一又は複数の通信部が割り当てられ、優先度が高いメッセージが分類される群には多数の通信部が割り当てられ、優先度が低いメッセージが分類される群には少数の通信部が割り当てられる。車載通信装置は、各群に分類されたメッセージを、この群に割り当てられた一又は複数の通信部へ分配することで、他の装置へのメッセージ送信を行う。
これにより、優先度が高いメッセージは多くの通信線を利用して他の装置へ送信され、優先度が低いメッセージは少ない通信線を利用して他の装置へ送信されることとなる。よって、優先度が高いメッセージについて通信容量を増すことができ、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制できる。
【0016】
(2)前記メッセージ送信処理部は、複数の通信部に対して所定の順番でメッセージを分配することが好ましい。
【0017】
本態様にあっては、1つの群に対して複数の通信部が割り当てられている場合には、この群に分類されたメッセージを所定の順番で複数の通信部に与えることによって、メッセージを複数の通信部から所定の順番で送信する。これにより車載通信装置は、各群に割り当てられた複数の通信部を均等に利用してメッセージを送信することができる。
【0018】
(3)前記通信部は、前記メッセージ送信処理部から複数の群に分類された複数のメッセージを与えられた場合に、優先度の高いメッセージを先に送信することが好ましい。
【0019】
本態様にあっては、車載通信装置の各通信部は、複数の群からの複数のメッセージが同時的に与えられた場合、優先度が高いメッセージを優先的に先に送信し、優先度が低いメッセージはその後に送信する。これにより、優先度が低いメッセージに優先度が高いメッセージの送信が妨げられることがなく、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制できる。
【0020】
(4)本実施の形態に係る車載通信装置は、他の装置と2つの通信線を介して接続され、前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う2つの通信部と、前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて2つの群に分類する処理を行う分類処理部と、前記2つの群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信するメッセージ送信処理部とを備え、優先度が高いメッセージが分類される群に対して2つの通信部が割り当てられ、優先度が低いメッセージが分類される群に対して1つの通信部に割り当てられる。
【0021】
本態様にあっては、車載通信装置と他の装置とを2つの通信線を介して接続する。車載通信装置は、通信線を介して他の装置とのメッセージ送受信を行う2つの通信部を備える。車載通信装置は、他の装置へ送信すべきメッセージを、このメッセージに付された優先度に応じて2つの群に分類する。優先度が高いメッセージが分類される群には2つの通信部が割り当てられ、優先度が低いメッセージが分類される群には1つの通信部が割り当てられる。車載通信装置は、2つの群に分類されたメッセージを、各群に割り当てられた一又は複数の通信部へ分配することで、他の装置へのメッセージ送信を行う。
これにより、優先度が高いメッセージは2つの通信線を利用して他の装置へ送信され、優先度が低いメッセージは1つの通信線を利用して他の装置へ送信されることとなる。よって、優先度が高いメッセージについて通信容量を増すことができ、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制できる。
【0022】
(5)本態様に係る通信プログラムは、他の装置と複数の通信線を介して接続され、前記通信線に対してそれぞれ設けられて前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部を備える車載通信装置に、前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類し、前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信する処理を行わせ、優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い。
【0023】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制できる。
【0024】
(6)本態様に係るメッセージ送信方法は、他の装置と複数の通信線を介して接続され、前記他の装置へ送信すべきメッセージを、該メッセージの優先度に応じて複数の群に分類し、前記通信線に対してそれぞれ設けられ、前記通信線を介してメッセージの送受信を行う複数の通信部のうち、一又は複数の通信部を各群に対してそれぞれ割り当て、前記複数の群に分類されたメッセージを、各群に対して割り当てられた一又は複数の通信部に分配することで前記他の装置へメッセージを送信し、優先度が高いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数は、優先度が低いメッセージが分類される群に対して割り当てられる通信部の数より多い。
【0025】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制できる。
【0026】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る車載通信装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<システム構成>
図1は、本実施の形態に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態1に係る車載通信システム1は、車両100に複数のECU3と、複数のGW(GateWay)10とを備え、複数のECU3及びGW10が通信線5,6を介してメッセージの送受信を行うシステムである。一例として図1には、車両100にGW10が2つ搭載され、2つのGW10が2つの通信線6を介して接続され、各GW10に3つの通信線5が接続され、各通信線5に3つのECU3が接続された車載通信システム1の構成が示されている。以下の説明において2つのGW10を区別する必要がある場合には、図1に示すように一方をGW10aとし、他方をGW10bとして、異なる符号を付して区別する。2つの通信線6についても同様に、必要に応じて各通信線を6a,6bとして区別する。なお車載通信システム1に含まれるECU3の数、GCW10の数、通信線5,6の数、装置の接続態様及びネットワーク構成等は、図示のものに限らない。
【0028】
車両100に搭載されたECU3は、例えば車両100のエンジンの動作を制御するECU、ドアのロック/アンロックを制御するECU、ライトの点灯/消灯を制御するECU、エアバッグの動作を制御するECU、及び、ABS(Antilock Brake System)の動作を制御するECU等の種々のECUが含まれ得る。各ECU3は、車両100に配された通信線5のいずれかに接続され、通信線5及びGW10を介して他のECU3との間でメッセージの送受信を行うことができる。
【0029】
各GW10は、複数の通信線5が接続されており、通信線5を介して複数のECU3との間でメッセージの送受信を行うことができる。ECU3が送信したメッセージを受信したGW10は、受信したメッセージに付されたIDに基づいて中継の要否を判断し、中継が必要なメッセージを受信元とは異なる通信線5から送信する。このためGW10は、メッセージに付されるIDと、このメッセージの送信先となる通信線5との対応関係を記憶した送信先マップを有している。
【0030】
車載通信システム1では、一方のGW10aに接続されたECU3から他方のGW10bに接続されたECU3へメッセージを送信することが可能である。この場合、ECU3からのメッセージを受信したGW10aは、このメッセージに付されたIDに基づいて他方のGW10bへ中継すべきと判断し、このメッセージを通信線6から出力することでGW10bへ送信する。通信線6を介してGW10aからのメッセージを受信したGW10bは、受信したメッセージに付されたIDに基づいて中継先の通信線5がいずれであるかを判断し、このメッセージを中継先の通信線5から送信する。GW10bからGW10aへメッセージを送信する場合も同様である。
【0031】
また実施の形態1に係る車載通信システム1では、2つのGW10が2つの通信線6を介して接続されている。2つの通信線6は同じ通信規格に従うものであり、本実施の形態においてはCAN(Controller Area Network)の通信規格に従ってメッセージの送受信が行われるものとする。また本実施の形態においては、いずれの通信線6を用いた場合であっても、通信速度は同じであるものとする。ただしGW10は、イーサネット(登録商標)又はFlexRay等の通信規格でメッセージの送受信を行う構成であってよく、2つの通信線6の通信速度が異なっていてもよい。
【0032】
GW10が他のGW10へメッセージを送信する場合には、2つの通信線6のいずれか1つが選択され、選択された通信線6からこのメッセージが送信される。本実施の形態に係るGW10は、他のGW10へ送信すべきメッセージを、そのメッセージの優先度に応じて、優先度が高い第1群と優先度が低い第2群とに分類する。優先度が高い第1群に対しては2つの通信線6が割り当てられ、第1群に分類されたメッセージは2つの通信線6のいずれか1つから送信される。これに対して優先度が低い第2群に対しては1つの通信線6のみが割り当てられ、第2群に分類されたメッセージはこの1つの通信線6から送信される。なお2つのGW10は、メッセージの送信を同期して行うのではなく、各々の判断でメッセージを送信する。このため、通信線6において2つのGW10によるメッセージ送信が同時的に行われ、メッセージ送信の衝突が発生する可能性がある。この場合には、CANの通信規格に従ってメッセージ送信の調停処理が行われる。
【0033】
<装置構成>
図2は、本実施の形態に係るGW10の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係る車載通信システム1が備える2つのGW10は、略同じ構成であるため、図2には一方のGW10aのみ詳細な構成を図示し、他方のGW10bは詳細な構成の図示を省略している。本実施の形態に係るGW10は、処理部(プロセッサ)11、記憶部(ストレージ)12、通信部(トランシーバ)13,14、接続部(コネクタ)15,16及び通信バッファ17等を備えて構成されている。
【0034】
処理部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施の形態において処理部11は、記憶部12に記憶された通信プログラム12aを読み出して実行することにより、通信線5間のメッセージを中継する処理、他のGW10へ送信すべきメッセージを分類する処理、及び、分類したメッセージを他のGW10へ送信する処理等を行う。
【0035】
記憶部12は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行する通信プログラム12aを記憶している。なお通信プログラム12aは、例えばGW10の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよく、また例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものをGW10が通信にて取得してもよく、また例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録されたプログラムをGW10が読み出して記憶部12に記憶してもよく、また例えば記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出してGW10の記憶部12に書き込んでもよい。通信プログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0036】
接続部15,16は、通信線5,6を着脱可能に接続するためのものであり、いわゆるコネクタである。接続部15,16は、接続される通信線5,6の形状及び規格等に適した構成とされる。なお図2においては、ECU3との通信を行う通信線5を接続するための3つの接続部15と、他のGW10との通信を行うための通信線6を接続するための2つの接続部16とを別符号を付して図示している。しかしGW10及びECU3の通信と、2つのGW10の間の通信とが同じ通信規格であり、通信線5,6が同じ規格のものである場合には、実質的に接続部15,16は同じものであってよい。
【0037】
通信部13,14は、接続部15,16に接続された通信線5,6を介したメッセージの送受信に関する処理を行う。本実施の形態において通信部13,14は、CANの通信規格に従ってメッセージの送受信を行う。通信部13,14は、例えばCANトランシーバなどの通信ICを用いて構成され得る。通信部13,14は、接続部15,16に接続された通信線5,6の電位を周期的にサンプリングして取得することにより、通信線5,6上の電気信号をデジタルデータに変換し、このデジタルデータを受信メッセージとして処理部11へ与える。また通信部13,14は、処理部11からデジタルデータとして与えられたメッセージを電気信号に変換し、変換した電気信号を接続部15,16に接続された通信線5,6へ出力することによって、メッセージを送信する。なお図2においては、ECU3との通信を行う3つの通信部13と、他のGW10との通信を行う2つの通信部14とを別符号を付して図示している。しかしGW10及びECU3の通信と、2つのGW10の間の通信とが同じ通信規格である場合には、実質的に通信部13,14は同じものであってよい。
【0038】
通信バッファ17は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のデータ書換可能なメモリ素子を用いて構成されている。通信バッファ17は、ECU3又は他のGW10から受信したメッセージを一時的に記憶する。本実施の形態に係るGW10においては、通信バッファ17に第1バッファ及び第2バッファの2つのバッファが設けられ、他のGW10へ送信するメッセージは分類結果に応じていずれかのバッファに格納される。
【0039】
また本実施の形態に係るGW10は、記憶部12に記憶された通信プログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、中継処理部11a、分類処理部11b及び送信処理部11c等が処理部11にソフトウェア的な機能ブロックとして実現される。中継処理部11aは、通信部13が受信したECU3からのメッセージを、他のECU3へ中継する処理を行う。中継処理部11aは、通信部13にて受信されたメッセージに付されたIDを取得して送信先マップを参照し、送信先マップにてIDに対応付けられた送信先を調べる。中継処理部11aは、送信先マップにて指定された送信先の通信部13へメッセージを与え、通信部13に通信線5へのメッセージ送信を行わせる。また中継処理部11aは、送信先マップにて指定された送信先が他のGW10である場合、他のGW10へ送信すべきメッセージを分類処理部11bへ与える。
【0040】
分類処理部11bは、中継処理部11aから他のGW10へ送信すべきメッセージを与えられた場合に、メッセージに付されたIDに基づいて、このメッセージを優先度が高い第1群又は優先度が低い第2群に分類する。CANの通信規格においてメッセージに付されるIDは、このメッセージの優先度を表しており、その値が小さいほど優先度が高く、値が大きいほど優先度が低い。分類処理部11bは、メッセージに付されたIDと予め定められた閾値とを比較することによって、メッセージを優先度に応じて2つの群に分類する。例えばIDが16進数の3桁である場合、0x000〜0x2FFのIDが付されたメッセージを第1群に分類し、0x300〜0xFFFのIDが付されたメッセージを第2群に分類する構成とすることができる。分類処理部11bは、第1群に分類したメッセージを通信バッファ17の第1バッファに格納し、第2群に分類したメッセージを通信バッファ17の第2バッファに格納する。なお、第1バッファ及び第2バッファは、FIFO(First In First Out)のバッファである。
【0041】
送信処理部11cは、分類処理部11bにより分類された他のGW10へ送信すべきメッセージを、通信バッファ17の第1バッファ又は第2バッファから取得して通信部14へ与えることにより、メッセージを送信する処理を行う。なお図2においては、送信処理部11cが1つ図示されているが、GW10の処理部11にはメッセージを分類する群と同じ数の送信処理部11cが設けられる。即ち、本実施の形態においては2つの送信処理部11cが処理部11に設けられ、一方の送信処理部11cが第1バッファに格納されたメッセージの送信処理を行い、他方の送信処理部11cが第2バッファに格納されたメッセージの送信処理を行う。2つの送信処理部11cは、互いに独立して並列的にメッセージの送信処理を行う。
【0042】
本実施の形態において、第1群に対応する送信処理部11cは、通信バッファ17の第1バッファに格納されたメッセージを、2つの通信部14に対して交互に与えることによって、2つの通信線6から交互に優先度の高いメッセージを送信する。また、第2群に対応する送信処理部11cは、通信バッファ17の第2バッファに格納されたメッセージを、予め定められた1つの通信部14へ与えることによって、予め定められた1つの通信線6から優先度の低いメッセージを送信する。このときに他のGW10のメッセージ送信との衝突が発生した場合、メッセージの調停及び再送信等の処理は通信部14にて行われ、メッセージの調停及び再送信等の処理に送信処理部11cは関与しない。
【0043】
<メッセージ送信処理>
図3は、本実施の形態に係るGW10が行う他のGW10へのメッセージ送信処理を説明するための模式図である。なお以下においては、GW10が備える2つの通信部14について、これらを区別する必要がある場合には通信部14a,14bの符号を付して説明する。本実施の形態に係るGW10は、通信線5を介して接続されたECU3からのメッセージを受信し、このメッセージを他のECU3へ中継する。このときにGW10は、メッセージを中継すべきECU3が他のGW10に接続されている場合、このメッセージを他のGW10へ送信する。GW10の分類処理部11bは、他のGW10へ送信すべきメッセージに付されたIDに基づいて、このメッセージを優先度が高い第1群又は優先度が低い第2群のいずれかに分類する。分類処理部11bは、第1群に分類したメッセージを通信バッファ17の第1バッファ17aに格納し、第2群に分類したメッセージを第2バッファ17bに格納する。
【0044】
分類処理部11bが分類する第1群に対応付けて設けられる送信処理部11cは、第1バッファ17aに格納されたメッセージを古いものから順に取得し、GW10の2つの通信部14a及び14bへ交互に与えることによって、他のGW10へのメッセージ送信を行う。第2群に対応付けて設けられる送信処理部11cは、第2バッファ17bに格納されたメッセージを古いものから順に取得し、GW10の定められた1つの通信部14bへ与えることによって、他のGW10へのメッセージ送信を行う。2つの送信処理部11cによるメッセージの送信処理は、非同期且つ並列的に行われる。
【0045】
通信部14は、送信処理部11cからメッセージが与えられた場合に、このメッセージを対応する通信線6へ出力することによって、他のGW10へメッセージを送信する。ここで、第1バッファ17aからのメッセージのみが与えられる一方の通信部14aは、与えられたメッセージを順に送信する。第1バッファ17a及び第2バッファ17bの両方からメッセージが与えられるもう一方の通信部14bは、第1バッファ17aからのメッセージと第2バッファ17bからのメッセージとが同時的に与えられる可能性がある。このような場合に通信部14bは、同時的に与えられた2つのメッセージのうち、優先度が高いメッセージ(即ち第1バッファ17aから与えられたメッセージ)を先に送信し、その後に優先度が低いメッセージ(即ち第2バッファ17bから与えられたメッセージ)を送信する。
【0046】
図4は、本実施の形態に係るGW10が行うメッセージの分類処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係るGW10の処理部11の分類処理部11bは、他のGW10へ送信すべきメッセージの有無を判定する(ステップS1)。他のGW10へ送信すべきメッセージが存在しない場合(S1:NO)、分類処理部11bは、他のGW10へ送信すべきメッセージが与えられるまで待機する。他のGW10へ送信すべきメッセージが存在する場合(S1:YES)、分類処理部11bは、このメッセージに含まれるIDを取得する(ステップS2)。
【0047】
分類処理部11bは、ステップS2にて取得したIDを優先度情報とみなし、IDと所定の閾値との比較により、送信すべきメッセージが高優先度であるか否かを判定する(ステップS3)。メッセージが高優先度である場合(S3:YES)、分類処理部11bは、このメッセージを第1群に分類し、第1群に対応する第1バッファ17aに格納して(ステップS4)、ステップS1へ処理を戻す。メッセージが高優先度ではない場合(S3:NO)、即ちメッセージが低優先度である場合、分類処理部11bは、このメッセージを第2群に分類し、第2群に対応する第2バッファ17bに格納して(ステップS5)、ステップS1へ処理を戻す。
【0048】
図5は、本実施の形態に係るGW10が行うメッセージの送信処理の手順を示すフローチャートである。なお本フローチャートは、通信バッファ17の2つのバッファのうち、第1バッファ17aに格納された高優先度のメッセージに関する送信処理を示している。また本フローチャートにおいては、2つの通信部14のいずれからメッセージを送信するかを示す送信フラグを処理に用いるが、このフラグは例えば処理部11のレジスタなどの記憶領域を用いて実現され、0又は1の値が設定され得る。本実施の形態に係るGW10の送信処理部11cは、まず送信フラグの値を0に初期化する(ステップS11)。
【0049】
次いで送信処理部11cは、第1バッファ17aにメッセージが格納されているか否かを判定する(ステップS12)。第1バッファ17aにメッセージが格納されていない場合(S12:NO)、送信処理部11cは、第1バッファ17aにメッセージが格納されるまで待機する。第1バッファ17aにメッセージが格納されている場合(S12:YES)、送信処理部11cは、第1バッファ17aからこのメッセージを取得する(ステップS13)。
【0050】
次いで送信処理部11cは、送信フラグの値が0であるか否かを判定する(ステップS14)。送信フラグの値が0である場合(S14:YES)、送信処理部11cは、ステップS13にて取得したメッセージを通信部14aへ与えて(ステップS15)、このメッセージを他のGW10へ送信する。送信処理部11cは、送信フラグの値に1を設定し(ステップS16)、ステップS12へ処理を戻す。
【0051】
送信フラグの値が0でない場合(S14:NO)、即ち送信フラグの値が1である場合、送信処理部11cは、ステップS13にて取得したメッセージを通信部14bへ与えて(ステップS17)、このメッセージを他のGW10へ送信する。送信処理部11cは、送信フラグの値に0を設定し(ステップS18)、ステップS12へ処理を戻す。
【0052】
図6は、本実施の形態に係るGW10が行うメッセージの送信処理の手順を示すフローチャートである。なお本フローチャートは、通信バッファ17の2つのバッファのうち、第2バッファ17bに格納された低優先度のメッセージに関する送信処理を示している。本実施の形態に係るGW10の送信処理部11cは、第2バッファ17bにメッセージが格納されているか否かを判定する(ステップS21)。第2バッファ17bにメッセージが格納されていない場合(S21:NO)、送信処理部11cは、第2バッファ17bにメッセージが格納されるまで待機する。第2バッファ17bにメッセージが格納されている場合(S21:YES)、送信処理部11cは、第2バッファ17bからこのメッセージを取得する(ステップS22)。送信処理部11cは、取得したメッセージを通信部14bへ与えて(ステップS23)、このメッセージを他のGW10へ送信し、ステップS21へ処理を戻す。
【0053】
図7は、本実施の形態に係るGW10が行うメッセージの送信処理の手順を示すフローチャートであり、第1バッファ17a及び第2バッファ17bの両方からメッセージが与えられる通信部14bが行う処理である。本実施の形態に係るGW10の通信部14bは、例えば送信すべきメッセージを格納するレジスタを複数有しており、第1バッファ17aに格納されたメッセージの送信処理を行う送信処理部11cと、第2バッファ17bに格納されたメッセージの送信処理を行う送信処理部11cとから同時的に送信すべきメッセージが与えられ得る。なお本実施の形態においては、図7に示すフローチャートの処理を通信部14bが行う構成とするが、処理部11にて本処理を行う構成としてもよい。
【0054】
本実施の形態に係るGW10の通信部14bは、処理部11から他のGW10へ送信すべきメッセージが与えられたか否かを判定する(ステップS31)。メッセージが与えられていない場合(S31:NO)、通信部14bは、送信すべきメッセージが与えられるまで待機する。メッセージが与えられた場合(S31:YES)、通信部14bは、第1バッファ17aからのメッセージと、第2バッファ17bからのメッセージとの2つのメッセージが与えられたか否かを判定する(ステップS32)。
【0055】
送信すべき2つのメッセージが与えられた場合(S32:YES)、通信部14bは、この2つのメッセージのIDを取得する(ステップS33)。通信部14bは、2つのメッセージのIDに基づいて優先度を判定し、高優先度のメッセージを通信線6へ出力することで他のGW10へ送信し(ステップS34)、ステップS31へ処理を戻す。送信すべきメッセージが2つ与えられていない場合(S32:NO)、即ち第1バッファ17aからのメッセージ又は第2バッファ17bからのメッセージのいずれか一方のみが与えられている場合、通信部14bは、与えられたメッセージを通信線6へ出力することで他のGW10へ送信し(ステップS35)、ステップS31へ処理を戻す。
【0056】
なお、第1バッファ17aからのみメッセージが与えられる通信部14aが行うメッセージの送信処理は、単に与えられたメッセージを順番に送信すればよいため、フローチャートの図示を省略する。
【0057】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る車載通信システム1では、2つのGW10を2つの通信線6を介して接続する。GW10は、2つの通信線6を介して他のGW10とのメッセージ送受信を行う2つの通信部14を備える。GW10は、他のGW10へ送信すべきメッセージを、このメッセージに付された優先度(ID)に応じて第1群及び第2群の2つの群に分類する。優先度が高いメッセージが分類される第1群に対しては2つの通信部14a及び14bが割り当てられ、優先度が低いメッセージが割り当てられる第2群に対しては1つの通信部14bが割り当てられる。GW10は、第1群及び第2群に分類されたメッセージを、各群に割り当てられた通信部14へ分配することで、他のGW10へのメッセージ送信を行う。
【0058】
これにより本実施の形態に係るGW10は、優先度が高いメッセージは多くの通信線6を利用して他のGW10へ送信し、優先度が低いメッセージは少ない通信線6を利用して他のGW10へ送信することとなる。よって、優先度が高いメッセージについての通信容量を増すことができ、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制できる。
【0059】
また本実施の形態に係るGW10は、2つの通信部14a及び14bが割り当てられている第1群については、第1群に分類されたメッセージを交互に通信部14a及び14bへ与える。これによりGW10は、第1群に分類された優先度が高いメッセージを、2つの通信部14a及び14bを均等に利用して他のGW10へのメッセージ送信を行うことができる。
【0060】
また本実施の形態に係るGW10では、第1群及び第2群の2つの群からメッセージが与えられる可能性がある通信部14bは、第1群及び第2群から同時的に2つのメッセージが与えられた場合、優先度が高いメッセージを優先的に先に送信する。通信部14bは、優先度が高いメッセージの送信後に、優先度が低いメッセージを送信する。これにより、優先度が低いメッセージに優先度が高いメッセージの送信が妨げられることがなく、優先度が高いメッセージの送信に遅延が発生することを抑制できる。
【0061】
なお本実施の形態においては、車載通信装置として車両100に搭載されるGW10を例に説明を行ったが、車載通信装置はGW10に限らない。例えばECU3に同様のメッセージの分類及び送信の機能を搭載してもよい。車載通信装置はGW10及びECU3以外の装置であってもよい。また、2つのGW10を2つの通信線6を介して接続する構成としたが、これに限るものではなく、2つのGW10を3つ以上の通信線6を介して接続してもよい。また車両100に2つのGW10を搭載する構成としたが、これに限るものではなく、車両100に1つ又は3つ以上のGW10を搭載してもよい。またGW10は、他のGW10へ送信すべきメッセージを第1群及び第2群の2つに分類する構成としたが、これに限るものではなく、3つ以上の群に分類してもよい。
【0062】
(変形例1)
図8は、変形例1に係るGW10が行う他のGW10へのメッセージ送信処理を説明するための模式図である。変形例1に係る車載通信システム1では、2つのGW10が3つの通信線6を介して接続されている。変形例1に係るGW10は、他のGW10との通信を行う通信部14を3つ備え、通信バッファ17には第1バッファ17a〜第3バッファ17cの3つのバッファが設けられている。
【0063】
変形例1に係るGW10は、他のGW10へ送信すべきメッセージを、このメッセージに付された優先度(ID)に基づいて第1群〜第3群の3つの群に分類する。第1群は、優先度が高いメッセージが分類される。第2群は、優先度が中程度のメッセージが分類される。第3群は、優先度が低いメッセージが分類される。例えばGW10は、優先度を判定する基準として第1閾値及び第2閾値を記憶し、第1閾値より優先度が高いメッセージを第1群に分類し、第2閾値より優先度が低いメッセージを第3群に分類し、第1閾値から第2閾値までの優先度のものを第2群に分類する。GW10は、第1群に分類したメッセージを第1バッファ17aに格納し、第2群に分類したメッセージを第2バッファ17bに格納し、第3群に分類したメッセージを第3バッファ17cに格納する。
【0064】
変形例1に係るGW10では、第1群に対して3つの通信部14a〜14cが割り当てられ、第2群に対して2つの通信部14b及び14cが割り当てられ、第3群に対して1つの通信部14cが割り当てられる。またGW10の処理部11には、第1群〜第3群に対応付けて3つの送信処理部11cが設けられる。第1群に対応する送信処理部11cは、第1バッファ17aに格納されたメッセージを古いものから順に取得し、例えば通信部14a→通信部14b→通信部14c→通信部14a…のように、3つの通信部14a〜14cに対して所定の順番で取得したメッセージを与えることによって、他のGW10へのメッセージ送信を行う。第2群に対応する送信処理部11cは、第2バッファ17bに格納されたメッセージを古いものから順に取得し、2つの通信部14b及び14cへ交互に与えることによって、他のGW10へのメッセージ送信を行う。第3群に対応する送信処理部11cは、第3バッファ17cに格納されたメッセージを古いものから順に取得し、1つの通信部14cへ与えることによって、他のGW10へのメッセージ送信を行う。3つの送信処理部11cによるメッセージの送信処理は、非同期且つ並列的に行われる。
【0065】
変形例1に係るGW10の3つの通信部14のうち、通信部14b及び14cは複数の送信処理部11cからのメッセージが同時的に与えられる可能性がある。通信部14b及び14cは、複数のメッセージが同時的に与えられた場合、これら複数のメッセージの優先度を比較し、優先度が高いものから順にメッセージを送信する。
【0066】
(変形例2)
図9は、変形例2に係るGW10が行う他のGW10へのメッセージ送信処理を説明するための模式図である。変形例2に係るGW10は、変形例1に係るGW10と同様に、3つの通信部14a〜14cを備え、通信バッファ17には第1バッファ17a〜第3バッファ17cの3つのバッファが設けられている。変形例2に係るGW10は、変形例1に係るGW10と同様に、他のGW10へ送信すべきメッセージを優先度に応じて第1群〜第3群に分類し、通信バッファ17の第1バッファ17a〜第3バッファ17cに格納する。
【0067】
変形例2に係るGW10では、第1群に対して3つの通信部14a〜14cが割り当てられ、第2群に対して2つの通信部14a及び14bが割り当てられ、第3群に対して1つの通信部14cが割り当てられる。即ち変形例2に係るGW10は、第2群に対する通信部14の割り当てを、変形例1に係るGW10とは異なる割り当てとした構成である。第2群に対応する送信処理部11cは、第2バッファ17bに格納されたメッセージを古いものから順に取得し、2つの通信部14a及び14bへ交互に与えることによって、他のGW10へのメッセージ送信を行う。
【0068】
変形例2に係るGW10の3つの通信部14a〜14cは、それぞれ2つのバッファからメッセージが同時的に与えられる可能性がある。通信部14a〜14cは、2つのメッセージが同時的に与えられた場合、これら2つのメッセージの優先度を比較し、優先度が高いメッセージを先に送信し、その後に優先度が低いメッセージを送信する。
【0069】
以上の構成の変形例1,2に係る車載通信システム1では、2つのGW10を3つの通信線6を介して接続することによって、2つのGW10間の通信容量を更に増すことができる。またGW10が他のGW10へ送信すべきメッセージを3つの群に分類して送信処理を行うことによって、メッセージの優先度に適したメッセージ送信を行うことができる。
【0070】
なお、変形例1,2においては、2つのGW10を3つの通信線6を介して接続し、各GW10に他のGW10との通信を行う3つの通信部14を備える構成としたが、これに限るものではなく、2つのGW10を4つ以上の通信線6を介して接続してもよい。また変形例1,2においてはGW10がメッセージを3つの群に分類する構成としたが、これに限るものではなく、4つ以上の群に分類してもよい。
【0071】
また上述の車載通信システム1では、2つのGW10を接続する通信線6の数(即ち各GW10が備える通信部14の数)と、他のGW10へ送信すべきメッセージを分類する群の数とが等しい構成を示したが、これに限るものではない。例えばGW10は、メッセージを3つの群に分類し、且つ、4つの通信部14を備える構成であってよい。このような構成の場合、優先度が高いメッセージが分類される群に対して多くの通信部14が割り当てられればよく、各郡に対する通信部14の割り当てはどのようなものであってもよい。また例えばGW10は、メッセージを4つの群に分類し、且つ、3つの通信部14を備える構成であってよい。
【0072】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 車載通信システム
3 ECU
5 通信線
6,6a,6b 通信線
10,10a,10b GW(車載通信装置)
11 処理部
11a 中継処理部
11b 分類処理部
11c 送信処理部(メッセージ送信処理部)
12 記憶部
12a 通信プログラム
13 通信部
14,14a,14b,14c 通信部
15 接続部
16 接続部
17 通信バッファ
17a 第1バッファ
17b 第2バッファ
17c 第3バッファ
99 記録媒体
100 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9