(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(1)本開示の一態様に係る給電制御装置は、半導体スイッチをオン又はオフに切替えることによって、前記半導体スイッチを介した給電を制御する車両用の給電制御装置であって、ヒューズと、前記半導体スイッチ及びヒューズが取り付けられる回路基板とを備え、前記ヒューズは、一列に並べられている長板状の複数の端子と、前記複数の端子中の2つの端子に接続される溶断部と、前記複数の端子の一部及び前記溶断部を覆うハウジングとを有し、前記半導体スイッチを介して流れる電流の電流経路に、前記複数の端子中の2つが配置され、電流は前記溶断部を介して流れ、前記溶断部は、前記溶断部の温度が所定温度を超えた場合に溶断され、前記ハウジングは耐熱性を有する。
【0015】
上記の態様にあっては、リフロー方式で回路基板への取り付けを行う場合、熱風がハウジングに吹き付けられるか、又は、赤外線がハウジングに照射される。これにより、ハウジングの温度が上昇する。ハウジングの温度がX度以下である場合、ハウジングにおいて変形又は溶融は発生することはない。ここで、Xは正の実数である。ハウジングにおいて変形又は溶融が発生しない場合、ハウジングの形状が維持される。耐熱性は、Xが250以上であることを意味する。ハウジングは耐熱性を有する。このため、ハウジングにおいては、熱風の吹き付け又は赤外線の照射によって、溶融又は変形が生じることはない。結果、ヒューズは、リフロー方式での回路基板への取り付けに適している。
【0016】
(2)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記ハウジングは、300度以上の耐熱性を有する。
【0017】
上記の態様にあっては、ハウジングは300度以上の耐熱性を有する。従って、前述したXは300度以上である。このため、ヒューズは、リフロー方式での回路基板への取り付けにより適している。
【0018】
(3)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記電流経路に配置される前記ヒューズの2つの端子間の電圧値を検出する検出部を備える。
【0019】
上記の態様にあっては、ヒューズの溶断部は、ヒューズの電圧値を検出するための抵抗として用いられる。
【0020】
(4)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記回路基板は、絶縁基板と、前記絶縁基板を貫通する複数の貫通孔と、前記絶縁基板を覆う複数の基板メッキとを有し、前記ヒューズが有する複数の端子それぞれは、複数の貫通孔に挿入されており、半田によって前記複数の基板メッキに接続されている。
【0021】
上記の態様にあっては、ヒューズが有する複数の端子を複数の貫通孔に挿入する。複数の端子それぞれを、半田によって、複数の基板メッキに接続する。これにより、ヒューズが回路基板に取り付けられる。
【0022】
(5)本開示の一態様に係る給電制御装置では、各端子は、金属体と、前記金属体の表面を覆う錫製の端子メッキとを有する。
【0023】
上記の態様にあっては、各端子では、金属体の表面が錫製の端子メッキで覆われている。半田には、通常、錫成分が含まれている。従って、錫製の端子メッキを有する端子に関して、半田の馴染み易さ、所謂、濡れ性が高い。このため、半田が端子に強力に接着する。
【0024】
(6)本開示の一態様に係る給電制御装置では、各端子は、一部が前記ハウジングによって覆われている長板状の第1板部分と、前記第1板部分に連結している第2板部分とを有し、前記複数の端子それぞれについて、前記第1板部分の一方の端部は前記ハウジングの共通の一面から突出しており、前記第2板部分は、前記ハウジングから突出している前記第1板部分の先端面の一部分から突出しており、前記第2板部分の断面積は前記第1板部分の断面積よりも小さい。
【0025】
上記の態様にあっては、ハウジングから突出している第1板部分の先端面から第2板部分が突出しており、段差構造が実現されている。回路基板では、絶縁基板に貫通孔が設けられており、絶縁基板において、貫通孔の内面と、貫通孔の周縁部とを基板メッキが覆っている。例えば、面積が第2板部分の断面積よりも若干大きい貫通孔が設けられる。この場合において、第2板部分が貫通孔に挿入されたとき、第1板部分は、貫通孔を通らず、貫通孔の周縁部を覆っている基板メッキに当たる。このとき、ハウジングは、第1板部分によって回路基板から離れている。この場合においては、半田で端子を回路基板に取り付けたときに、フィレット形状の半田が形成され易い。フィレット形状の半田が形成されることは、良好な取り付けが実現されていることを意味する。
【0026】
また、基板メッキ上にペースト状の半田を塗布した状態で貫通孔に端子が挿入される。前述したように段差構造が実現されているため、貫通孔に端子が挿入された場合、ハウジングがペースト状の半田に接触することはない。このため、リフロー方式で半田を溶かした場合に、ボール状の半田が形成される可能性は低い。
【0027】
更に、第2板部分の断面積が第1板状部分の断面積よりも小さく、第2板部分は細い。このため、第2板部分を挿入する貫通孔として、面積が小さい貫通孔を用いることができる。この場合においては、第2板部分と貫通孔との間の隙間が小さい。このため、例えば、ハウジングに熱風が吹き付けられた場合であっても、第2板部分、即ち、ヒューズが大きく傾くことがなく、ハウジングは回路基板の板面に対して略垂直に立っている。結果、リフロー方式で実装を行う場合に、治具によってハウジングを、略垂直に立っている状態で固定する必要がなく、安価な実装を実現することができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
(実施形態1)
<電源システムの構成>
図1は、実施形態1における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は車両Cに搭載されている。電源システム1は、給電制御装置10、直流電源11及び負荷12を備える。直流電源11は例えばバッテリである。給電制御装置10は、直流電源11の正極に接続されている。給電制御装置10は負荷12の一端に接続されている。直流電源11の負極と、負荷12の他端とは接地されている。
【0030】
直流電源11は、給電制御装置10を介して負荷12に電力を供給する。負荷12は電気機器である。負荷12に電力が供給された場合、負荷12は作動する。負荷12の給電が停止した場合、負荷12は動作を停止する。給電制御装置10は、直流電源11から負荷12への給電を制御する。
【0031】
<給電制御装置10の構成>
給電制御装置10は、半導体スイッチ20、ヒューズ21、駆動回路22を有する。半導体スイッチ20は、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。ヒューズ21は、2つの端子31及び溶断部32を有する。2つの端子31は溶断部32によって接続されている。
【0032】
ヒューズ21の一方の端子31は、直流電源11の正極に接続されている。ヒューズ21の他方の端子31は、半導体スイッチ20のドレインに接続されている。半導体スイッチ20のソースは負荷12の一端に接続されている。半導体スイッチ20のゲートは駆動回路22に接続されている。
【0033】
半導体スイッチ20において、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値が一定電圧値以上である場合、半導体スイッチ20はオンである。半導体スイッチ20がオンである場合、半導体スイッチ20のドレイン及びソースを介して電流が流れることが可能である。半導体スイッチ20において、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値が一定値未満である場合、半導体スイッチ20はオフである。半導体スイッチ20がオフである場合、半導体スイッチ20のドレイン及びソースを介して電流が流れることはない。
【0034】
駆動回路22には、ハイレベル電圧及びローレベル電圧によって構成される制御信号が入力される。制御信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、駆動回路22は、基準電位が接地電位であるゲートの電圧を上昇させる。これにより、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値が一定電圧値以上の電圧値に上昇し、半導体スイッチ20がオンに切替わる。半導体スイッチ20がオンに切替わった場合、電流が、直流電源11の正極から、半導体スイッチ20、ヒューズ21及び負荷12の順に流れ、負荷12に電力が供給される。これにより、負荷12は作動する。
【0035】
ヒューズ21では、電流は、端子31、溶断部32及び端子31の順に流れる。従って、ヒューズ21が有する2つの端子31は、半導体スイッチ20を介して流れる電流経路に配置されている。
【0036】
制御信号の電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、駆動回路22は、基準電位が接地電位であるゲートの電圧を低下させる。これにより、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値が一定電圧値未満の電圧値に低下し、半導体スイッチ20がオフに切替わる。半導体スイッチ20がオフに切替わった場合、直流電源11から負荷12への電流の通流が停止し、負荷12への給電が停止する。これにより、負荷12は動作を停止する。
【0037】
以上のように、駆動回路22は、制御信号の電圧に応じて半導体スイッチ20をオン又はオフに切替える。駆動回路22が半導体スイッチ20をオン又はオフに切替えることによって、半導体スイッチ20を介した負荷12への給電が制御される。
【0038】
半導体スイッチ20がオンである場合、電流は、ヒューズ21の溶断部32を介して負荷12に流れる。溶断部32を介して電流が流れた場合、溶断部32は発熱する。溶断部32を介して流れる電流の電流値が大きい程、溶断部32の発熱量は大きい。ヒューズ21の溶断部32に関して、単位時間当たりの発熱量が単位時間当たりの放熱量よりも大きい場合、溶断部32の温度は上昇する。溶断部32の温度が所定温度、例えば420度を超えた場合、溶断部32が溶断される。
【0039】
溶断部32が溶断された場合、直流電源11から負荷12への電流の通流が停止し、負荷12への給電が停止する。負荷12に流れる電流の電流値が一定の基準電流値以上である場合、溶断部32の温度が所定温度を超え、溶断部32は溶断される。このため、半導体スイッチ20を介して負荷12に過電流が流れることが防止される。
【0040】
<給電制御装置10の回路構成>
図2は給電制御装置10の回路構成の説明図である。給電制御装置10は、矩形板状をなす回路基板23を更に有する。
図2には、回路基板23の平面が示されている。回路基板23の板面には、半導体スイッチ20、ヒューズ21及び駆動回路22が取り付けられている。板面は、板の幅広面である。
なお、駆動回路22は、回路基板23とは異なる回路基板に取り付けられていてもよい。
以下では、ヒューズ21の構成と、ヒューズ21が回路基板23に取り付けられた状態とを説明する。
【0041】
<ヒューズ21の構成>
図3はヒューズ21の正面図である。
図4はヒューズ21の側面図である。ヒューズ21は、樹脂製のハウジング30を有する。
図3及び
図4に示すように、ヒューズ21では、2つの端子31が、ハウジング30の共通の一面から突出している。各端子31は導電性を有する。
【0042】
図5は端子31の断面図である。各端子31は長板状の金属体50を有する。各端子31では、金属体50の両側の板面は錫(Sn)製の端子メッキ51によって覆われている。前述したように、板面は板の幅広面である。各端子31の側面では、金属体50が露出している。金属体50及び端子メッキ51は導電性を有する。金属体50は、例えば、亜鉛合金を用いて製造される。
図5以外の図面では、金属体50及び端子メッキ51の記載を省略している。
なお、端子メッキ51は、板面とは異なる金属体50の面、例えば側面を覆ってもよい。
【0043】
図6はヒューズ21の断面図である。
図3、
図4及び
図6に示すように、ハウジング30は一面が開放された箱体状をなす。2つの端子31それぞれの一部は、ハウジング30によって覆われている。前述したように、ハウジング30の共通の一面から2つの端子31が突出している。ここで、共通の一面は、開放面であり、
図3、
図4及び
図6の下側に位置する。
図6に示すように、ハウジング30の内部において、2つの端子31は一列に並べられている。溶断部32は棒状をなす。前述したように、溶断部32は2つの端子31を接続している。溶断部32は導電性を有する。溶断部32もハウジング30によって覆われている。
【0044】
図7は、
図3の上側から見た2つの端子31及び溶断部32の状態の説明図である。
図6及び
図7に示すように、各端子31は長板状をなす。2つの端子31の板面は揃っており、
図6では2つの端子31の板面が示されている。2つの端子31それぞれについて、一方の端部はハウジング30の共通の一面(開放面)から、
図6の下側に向けて突出している。
なお、2つの端子31の板面は同一平面上に位置していることが好ましい。
【0045】
前述したように、各端子31が長板状をなしているので、ヒューズ21はブレード型のヒューズである。一般的に、ブレード型のヒューズの端子の断面積は、チップ型のヒューズの端子の断面積よりも大きい。このため、ブレード型のヒューズは、状態が正常である場合に大電流が流れる回路のヒューズとして用いることができる。
【0046】
各端子31では、長板状の第1板部分40の端部に長板状の第2板部分41の端部が連結している。第1板部分40の一部はハウジング30によって覆われている。第1板部分40の第1端部は、前述したハウジング30の共通の一面から、
図6の下側に向けて突出している。ハウジング30の共通の一面と、第1板部分40の第1端部の先端面は平行である。また、2つの端子31について、2つの第1板部分40の第1端部の先端面は同一平面上に位置する。
【0047】
なお、共通の一面及び先端面の平行は、完全な平行のみを意味せず、実質的な平行であればよい。従って、共通の一面及び先端面が平行である状態には、共通の一面及び先端面がなす角度が設計上の誤差範囲内の値である状態も含まれる。また、2つの先端面が同一平面上に位置することは、2つの先端面の段差が実質的にないことを意味する。従って、2つの先端面の段差が設計上の誤差範囲内の値である場合、2つの先端面は同一平面上に位置する。
【0048】
各端子31では、第1板部分40の第1端部の先端面の一部分から、第1板部分40の長さ方向に沿って、第2板部分41が突出している。第2板部分41の断面積は第1板部分40の断面積よりも小さく、第2板部分41は第1板部分40よりも細い。第1板部分40及び第2板部分41の厚みは一致しており、第1板部分40及び第2板部分41の板面は連続している。第1板部分40及び第2板部分41の長さ方向は、一致しており、
図3、
図4及び
図6の上下方向である。第1板部分40及び第2板部分41の断面積は、第1板部分40及び第2板部分41の幅方向、即ち、
図3、
図4及び
図6の左右方向に沿った切断によって得られる断面の面積である。
【0049】
なお、第1板部分40及び第2板部分41の厚みの一致は、完全な一致のみを意味せず、実質的な一致であればよい。従って、第1板部分40及び第2板部分41の厚みが一致している状態には、2つの厚みの差が誤差範囲である状態も含まれる。また、2つの長さ方向の一致は、完全な一致のみを意味せず、実質的な一致であればよい。従って、2つの長さ方向が一致している状態には、2つの長さ方向がなす角度が誤差範囲内である状態も含まれる。
【0050】
2つの端子31それぞれについて、第2板部分41は、第1板部分40の第1端部の先端面において、2つの端子31の並び方向の中央部分から突出している。並び方向は
図6の左右方向である。
図3及び
図4に示すように、第2板部分41の先端部分は角錐台状をなし、第2板部分41について、ハウジング30に近い部分の断面積は大きく、ハウジング30から遠い部分の断面積は小さい。
【0051】
図6及び
図7に示すように、棒状の溶断部32は、2つの端子31の第1板部分40間に配置されている。溶断部32の一方の端部は、一方の端子31の第1板部分40の側面に接続されている。溶断部32の他方の端部は、他方の端子31の第1板部分40の側面に接続されている。溶断部32が接続している2つの側面は互いに対向している。溶断部32は、曲がっており、全体としてV字状をなす。
図6の例では、溶断部32は、
図6の上側に曲がっている。
なお、溶断部32の形状は、V字状に限定されず、例えば、S字状であってもよい。
【0052】
図6及び
図7に示すように、ハウジング30について、前述した共通の一面の反対側に位置する一面、即ち、
図6の上側の一面には、2つの開口60が設けられている。2つの端子31の第1板部分40の第2端部それぞれは、2つの開口60と対向している。ヒューズ21の使用者は、例えば、テスターを用いて、2つの端子31間の抵抗値を測定する。使用者は、測定した抵抗値に基づいて、溶断部32が溶断しているか否かを確認することができる。
【0053】
<ヒューズ21の取り付け状態>
図8は、ヒューズ21が回路基板23に取り付けられた状態を示す説明図である。
図9は、ヒューズ21が回路基板23に取り付けられた状態を示す他の説明図である。回路基板23は、所謂、プリント基板である。ヒューズ21は、半田Hによって回路基板23に取り付けられる。
図8及び
図9は、ヒューズ21が半田Hによって回路基板23に取り付けられた後の状態を示している。
図8及び
図9には、回路基板23の断面が示されている。
図8及び
図9に示すように、回路基板23は絶縁基板70を有する。絶縁基板70では、表側板面から裏側板面まで貫通する2つの貫通孔70aが設けられている。貫通孔70aの数は、ヒューズ21の端子31の数以上である。貫通孔70aの開口は円形状をなす。絶縁基板70について、
図8及び
図9では、上側の板面が表側板面であり、下側の板面が裏側板面である。
【0054】
絶縁基板70の表側板面上には、導電性を有する複数の配線パターン72が配置されている。絶縁基板70の裏側板面上にも、複数の配線パターン72が配置されている。回路基板23では、各貫通孔70aの内面は基板メッキ71によって覆われている。基板メッキ71は導電性を有する。表側板面及び裏側板面それぞれにおける貫通孔70aの周縁部は配線パターン72によって覆われている。各基板メッキ71は、貫通孔70aの内面に加えて、表側板面及び裏側板面それぞれにおける貫通孔70aの周縁部を、配線パターン72を介して覆っている。
図8においては、基板メッキ71は、配線パターン72の上側から貫通孔70aの周縁部を覆うとともに、配線パターン72の下側から貫通孔70aの周縁部を覆っている。
【0055】
基板メッキ71は例えば錫成分を含む。配線パターン72は、例えば銅製である。基板メッキ71は、配線パターン72に接触しており、配線パターン72と導通している。基板メッキ71において、貫通孔70aの内面及び周縁部を除く他の部分は、絶縁性を有するレジスト73によって覆われている。
【0056】
貫通孔70aの面積は、端子31の第2板部分41の断面積よりも若干大きい。このため、端子31の第2板部分41を貫通孔70aに挿入することができる。第1板部分40の幅は十分に長いので、第2板部分41を貫通孔70aに挿入した場合、端子31の第1板部分40は、貫通孔70aを通らず、貫通孔70aの周縁部を覆っている基板メッキ71に当たる。2つの第1板部分40の第1端部の先端面は同一平面上に位置するので、ヒューズ21は、安定した状態で回路基板23によって支持される。
【0057】
ヒューズ21を回路基板23に取り付ける場合、絶縁基板70の表側板面を覆っている基板メッキ71上にペースト状の半田Hを塗布する。基板メッキ71上に半田Hが塗布されている状態で、2つの端子31の第2板部分41それぞれを、絶縁基板70の表側から、即ち、
図8及び
図9の上側から、2つの貫通孔70aに挿入する。このとき、2つの端子31の第1板部分40は、表側板面を覆っている基板メッキ71によって支持される。第2板部分41の一部は、回路基板23の裏側板面から露出している。
【0058】
この状態で、ヒューズ21及び回路基板23はリフロー炉に通される。リフロー炉内では、ヒューズ21及び回路基板23に熱風が吹き付けられるか、又は、ヒューズ21及び回路基板23に赤外線が照射される。これにより、ペースト状の半田Hが溶け、半田Hは端子31及び基板メッキ71を接続する。具体的には、
図8及び
図9に示すように、半田Hの一部は、第1板部分40の軸回りに沿って、ハウジング30から露出している端子31の第1板部分40の板面及び端面に接着するとともに、絶縁基板70の表側板面を覆っている基板メッキ71に接着する。
【0059】
更に、溶けた半田Hの一部は、貫通孔70a内に入り込み、貫通孔70aの内面を覆っている基板メッキ71と、端子31の第2板部分41の板面及び端面とに接着する。半田Hは導電性を有する。半田Hによって、端子31及び基板メッキ71は導通する。ヒューズ21が有する2つの端子31それぞれを半田Hによって、回路基板23が有する2つの基板メッキ71に接続する。
【0060】
以上のように、給電制御装置10では、ヒューズ21が回路基板23に取付けられている。2つの端子31それぞれは、2つの貫通孔70aに挿入されている。2つの端子31それぞれは、半田Hによって2つの基板メッキ71に接続されている。
【0061】
リフロー方式の一例では、ヒューズ21が挿入された回路基板23は、リフロー炉内において、第1領域及び第2領域の順に通過する。第1領域の温度は170度から190度までの範囲内の温度である。回路基板23は、80秒から140秒の間、第1領域内に位置している。第2領域の温度は、230度から250度までの範囲内の温度である。回路基板23は、60秒から90秒の間、第2領域内に位置している。
【0062】
リフロー方式でヒューズ21を回路基板23に取り付ける場合、熱風がハウジング30に吹き付けられるか、又は、赤外線がハウジング30に照射される。このとき、ハウジング30の温度は上昇する。ハウジング30の温度がX度以下である場合、ハウジング30において変形又は溶融が発生することはない。ここで、Xは正の実数である。ハウジング30において変形又は溶融が発生しない場合、ハウジング30の形状が維持される。ハウジング30に関して耐熱性は、Xが250以上であることを意味する。ヒューズ21のハウジング30は耐熱性を有する。従って、ハウジング30の温度が250度以下である場合、ハウジング30において変形又は溶融が生じずにハウジング30の形状が維持される。このため、ハウジング30では、熱風の吹き付け又は赤外線の照射によって、溶融又は変形が生じることはない。ヒューズ21の構成は、リフロー方式での回路基板23への取り付けに適した構成である。
【0063】
ヒューズ21の温度がY度以下である場合、ヒューズ21に関しては、溶断特性が実質的に変化せず、かつ、長期信頼性が実質的に低下しない。ヒューズ21に関して、耐熱性はYが250以上であることを意味する。ハウジング30だけではなく、ヒューズ21も耐熱性を有する。従って、ヒューズ21の温度が250度以下である場合、溶断特性は実質的に変化せず、かつ、長期信頼性は実質的に低下しない。溶断特性は、ヒューズ21を介して流れる電流と、電流が流れてから溶断部32の溶断が発生するまでの溶断時間との関係を示す。溶断特性では、種々の電流の溶断時間が示されている。長期信頼性は、ヒューズ21が仕様書の規格通りに正常に機能する寿命である。リフロー方式で取り付けを行うことによって、ヒューズ21の寿命が低下することは好ましくない。
ハウジング30の製造に用いられる耐熱性の樹脂として例えばナイロン樹脂が挙げられる。
【0064】
なお、ハウジング30は、300度以上の耐熱性を有することが好ましい。ハウジング30に関して、300度以上の耐熱性は、前述したXが300以上であることを意味する。ハウジング30が300度以上の耐熱性を有する場合、ヒューズ21の構成は、リフロー方式での回路基板23への取り付けにより適した構成である。
また、ヒューズ21も、300度以上の耐熱性を有することが好ましい。ヒューズ21に関して、300度以上の耐熱性は、前述したYが300以上であることを意味する。
【0065】
前述したように、各端子31では、金属体50の表面が錫製の端子メッキ51で覆われている。半田Hには、通常、錫成分が含まれている。従って、錫製の端子メッキ51を有する端子31に関して、半田Hの馴染み易さ、所謂、濡れ性が高い。このため、半田Hが端子31に強力に接着する。
なお、端子メッキ51は、錫製に限定されず、例えば、錫成分を含む合金製であってもよい。
【0066】
前述したように、各端子31では、第1板部分40の先端面から第2板部分41が突出しており、段差構造が実現されている。第1板部分40は貫通孔70aを通らず、絶縁基板70上の基板メッキ71に当たっている。このため、ハウジング30は、回路基板23から離れている。この場合においては、半田Hで端子31を回路基板23に取り付けたときに、フィレット形状の半田Hが形成され易い。フィレット形状の半田Hが形成されることは、良好な取り付けが実現されていることを意味する。
【0067】
また、基板メッキ71上にペースト状の半田Hを塗布した状態で貫通孔70aに端子31が挿入される。前述したように段差構造が実現されているため、貫通孔70aに端子31が挿入された場合、ハウジング30がペースト状の半田Hに接触することはない。このため、リフロー方式で半田Hを溶かした場合に、ボール状の半田Hが形成される可能性は低い。
【0068】
前述したように、端子31について、第2板部分41の断面積は第1板部分40の断面積よりも小さく、第2板部分41は細い。このため、貫通孔70aとして、面積が小さい貫通孔を用いることができる。この場合において、第2板部分41と貫通孔70aとの間の隙間が小さい。このため、例えば、ハウジング30に熱風が吹き付けられた場合であっても、第2板部分41、即ち、ヒューズ21が大きく傾くことはなく、ハウジング30は、回路基板23の板面に対して略垂直に立っている。結果、リフロー方式で実装を行う場合に、治具によってハウジング30を、略垂直に立っている状態で固定する必要がなく、安価な実装を実現することができる。
【0069】
(実施形態2)
実施形態1においては、直流電源11の正極から負荷12の一端に流れる電流の電流経路において、ヒューズ21は半導体スイッチ20の上流側に配置されている。しかしながら、ヒューズ21が配置される場所は、半導体スイッチ20の上流側に限定されない。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0070】
<給電制御装置10の構成>
図10は、実施形態2における給電制御装置10の要部構成を示すブロック図である。実施形態2における給電制御装置10を、実施形態1における給電制御装置10と比較した場合、ヒューズ21が配置されている場所が異なる。実施形態2において、半導体スイッチ20及び駆動回路22は実施形態1と同様に接続されている。
【0071】
半導体スイッチ20のドレインは直流電源11の正極に接続されている。ヒューズ21が有する一方の端子31は半導体スイッチ20のソースに接続されている。ヒューズ21が有する他方の端子31は負荷12の一端に接続されている。
【0072】
駆動回路22が半導体スイッチ20をオンに切替えた場合、電流は、直流電源11の正極から、半導体スイッチ20、ヒューズ21及び負荷12の順に流れ、負荷12に電力が供給される。ヒューズ21では、電流は、実施形態1と同様に、端子31、溶断部32及び端子31の順に流れる。駆動回路22が半導体スイッチ20をオフに切替えた場合、半導体スイッチ20及びヒューズ21を介した電流の通流が停止し、負荷12への給電が停止する。
【0073】
以上のように、実施形態2における給電制御装置10では、直流電源11の正極から負荷12に流れる電流の電流経路において、ヒューズ21は半導体スイッチ20の下流側に配置されている。実施形態2における給電制御装置10は、実施形態1における給電制御装置10が奏する効果を同様に奏する。
【0074】
(実施形態3)
実施形態2における給電制御装置10は電流を検出する機能を有していてもよい。
以下では、実施形態3について、実施形態2と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態2と共通している。このため、実施形態2と共通する構成部には実施形態2と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0075】
<給電制御装置10の構成>
図11は、実施形態3における給電制御装置10の要部構成を示すブロック図である。実施形態3における電源システム1を、実施形態2における電源システム1と比較した場合、給電制御装置10の構成が異なる。実施形態3における給電制御装置10は、実施形態2における給電制御装置10が有する構成部を同様に有する。実施形態3における給電制御装置10は、差動増幅器24を更に有する。差動増幅器24は、プラス端、マイナス端及び出力端を有する。
【0076】
差動増幅器24のプラス端には、半導体スイッチ20及びヒューズ21間の接続ノードが接続されている。差動増幅器24のマイナス端には、半導体スイッチ20及び負荷12間の接続ノードが接続されている。差動増幅器24の出力端は駆動回路22に接続されている。
【0077】
ヒューズ21の溶断部32は抵抗成分を有する。このため、ヒューズ21を介して電流が流れた場合、ヒューズ21において電圧降下が生ずる。差動増幅器24は、ヒューズ21が有する2つの端子31間の電圧値を増幅し、増幅した電流値を駆動回路22に出力する。以下では、ヒューズ21が有する2つの端子31間の電圧値をヒューズ電圧値と記載する。差動増幅器24の増幅率は一定値である。差動増幅器24が出力する電圧値は、ヒューズ電圧値と増幅率との積で表される。差動増幅器24が出力する電圧値は、ヒューズ電圧値が高い程、高い。従って、差動増幅器24が出力する電圧値はヒューズ電圧値を示す。差動増幅器24は、ヒューズ電圧値を検出する検出部として機能する。ヒューズ21の溶断部32はヒューズ電圧値を検出するための抵抗として用いられる。
【0078】
電流は、半導体スイッチ20及びヒューズ21を介して流れる。以下では、半導体スイッチ20を介して流れる電流の電流値をスイッチ電流値と記載する。ヒューズ電圧値は、溶断部32の抵抗値と、スイッチ電流値との積によって表される。
【0079】
従って、差動増幅器24の出力電圧値は、スイッチ電流値と、溶断部32の抵抗値と、差動増幅器24の増幅率との積で表される。差動増幅器24の出力電圧値は、スイッチ電流値が大きい程、高い。従って、差動増幅器24の出力電圧値はスイッチ電流値を示す。ヒューズ21は、スイッチ電流値を検出するためのシャント抵抗としても機能する。
【0080】
駆動回路22は、差動増幅器24の出力電圧値が一定の基準電圧値未満である場合、実施形態2と同様に、制御信号の電圧に応じて半導体スイッチ20をオン又はオフに切替える。駆動回路22は、差動増幅器24の出力電圧値が基準電圧値以上の電圧値となった場合、制御信号の電圧に無関係に半導体スイッチ20をオフに切替える。その後、駆動回路22は、半導体スイッチ20のオフを維持する。
【0081】
差動増幅器24の出力電圧値が基準電圧値である場合、スイッチ電流値は、(基準電圧値)/((溶断部32の抵抗値)・(差動増幅器24の増幅率)で表される。ここで「・」は積を表す。差動増幅器24の出力電圧値が基準電圧値である場合のスイッチ電流値を電流閾値と記載する。前述したように、駆動回路22は、差動増幅器24の出力電圧値が基準電圧値以上の電流となった場合、半導体スイッチ20をオフに切替える。このため、スイッチ電流値が電流閾値以上の値となることはない。結果、半導体スイッチ20を介して過電流が流れることが防止される。従って、実施形態3における給電制御装置10では、ヒューズ21及び駆動回路22それぞれが過電流の通流を防止する。
【0082】
実施形態3における給電制御装置10は、実施形態2における給電制御装置10が奏する効果を同様に奏する。
なお、ヒューズ21が配置される場所は、半導体スイッチ20の下流側に限定されず、半導体スイッチ20の上流側であってもよい。この構成は、実施形態1における給電制御装置10において、差動増幅器24を更に配置した構成である。ヒューズ21が半導体スイッチ20の上流側に配置されている場合、差動増幅器24のプラス端は直流電源11及びヒューズ21間の接続ノードに接続される。差動増幅器24のマイナス端は、ヒューズ21及び半導体スイッチ20間の接続ノードに接続される。
【0083】
<変形例>
実施形態1〜3において、ヒューズ21が有する端子31の数は、2に限定されず、3以上であってもよい。例えば、ヒューズ21が3つの端子31を有する場合、3つの端子31は、板面が揃っている状態で、左右方向に一列に並べられる。左側の端子31及び中央の端子31に1つの溶断部32が接続される。中央の端子31及び右側の端子31に他の溶断部32が接続される。中央の端子31に直流電源11の正極が接続される。ヒューズ21が3つの端子31を有する場合、電源システム1は2つの負荷12を有する。給電制御装置10は、2つの半導体スイッチ20及び2つの駆動回路22を有する。
【0084】
ヒューズ21の中央の端子31は直流電源11の正極に接続される。一方の半導体スイッチ20のドレイン、ソース及びゲートそれぞれは、ヒューズ21の左側の端子31、一方の負荷12の一端及び一方の駆動回路22に接続される。他方の半導体スイッチ20のドレイン、ソース及びゲートそれぞれは、ヒューズ21の右側の端子31、他方の負荷12の一端及び他方の駆動回路22に接続される。2つの負荷12の他端は接地される。
【0085】
一方の半導体スイッチ20がオンである場合、電流は、直流電源11の正極から、ヒューズ21の一方の溶断部32、半導体スイッチ20及び負荷12の順に流れる。他方の半導体スイッチ20がオンである場合、電流は、直流電源11の正極から、ヒューズ21の他方の溶断部32、半導体スイッチ20及び負荷12の順に流れる。2つの駆動回路22それぞれは、制御信号の指示に応じて、2つの半導体スイッチ20をオン又はオフに切替える。これにより、2つの負荷12への給電が各別に制御される。
【0086】
実施形態3においてヒューズ21が3つの端子31を有する場合、給電制御装置10は2つの差動増幅器24を有する。一方の差動増幅器24のプラス端、マイナス端及び出力端それぞれは、中央の端子31、左側の端子31及び一方の駆動回路22に接続される。他方の差動増幅器24のプラス端、マイナス端及び出力端それぞれは、中央の端子31、右側の端子31及び他方の駆動回路22に接続される。各駆動回路22は、差動増幅器24の出力電圧値に応じて、実施形態3と同様に、半導体スイッチ20をオフに切替える。
【0087】
実施形態3において、差動増幅器24が検出したヒューズ電圧値は、ヒューズ21を介して流れる電流の電流経路に配置された電線の電線温度の算出に用いられてもよい。この場合、例えば、ヒューズ電圧値はマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)に入力される。マイコンは、ヒューズ電圧値からスイッチ電流値を算出し、算出したスイッチ電流値に基づいて電線温度を算出する。電線温度が高い場合、マイコンは、半導体スイッチ20のオフへの切替えを駆動回路22に指示する。
【0088】
実施形態1〜3において、端子31の構成は、第1板部分40の先端面から第2板部分41が突出している構成に限定されない。端子31は、十分に長い第1板部分40によって構成されてもよい。この場合、貫通孔70aの開口は矩形状をなし、第1板部分40を回路基板23の貫通孔70aに挿入する。第1板部分40は、半田Hによって基板メッキ71に接続される。
【0089】
実施形態1〜3において、半導体スイッチ20は、Nチャネル型のFETに限定されず、例えば、Pチャネル型のFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタ等であってもよい。また、半導体スイッチ20及び駆動回路22の代わりに、IPD(Intelligent Power Device)を用いてもよい。この場合、IPDが回路基板23の板面に取り付けられる。
【0090】
開示された実施形態1〜3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】給電制御装置10は車両Cに搭載される。給電制御装置10は、半導体スイッチ20をオン又はオフに切替えることによって、半導体スイッチ20及びヒューズ21を介した給電を制御する。半導体スイッチ20及びヒューズ21は回路基板に取り付けられている。ヒューズ21では、長板状の2つの端子31が一列に並べられている。2つの端子31の一部及び溶断部32は、耐熱性を有するハウジングによって覆われている。半導体スイッチ20を介して流れる電流の電流経路には、2つの端子31が配置されている。電流は、溶断部32を介して流れる。溶断部32の温度が所定温度を超えた場合、溶断部32は溶断される。