(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6989040
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】バッテリケース及びこれを用いた蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20211220BHJP
H05K 5/04 20060101ALI20211220BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20211220BHJP
【FI】
H01M50/204 101
H05K5/04
H01M50/271 B
H01M50/271 S
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-6117(P2021-6117)
(22)【出願日】2021年1月19日
【審査請求日】2021年5月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀世
(72)【発明者】
【氏名】上原 雄司
【審査官】
井原 純
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/136248(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/001972(WO,A1)
【文献】
特開2012−204101(JP,A)
【文献】
特開平11−067176(JP,A)
【文献】
特開平11−067177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20−50/298
H05K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールを収容するためのバッテリケースであって、
一枚の金属板からなり、主面板と、前記主面板に対して垂直な第1の側面板と、前記第1の側面板と平行に向かい合う第2の側面板と、前記第1の側面板側に位置し、前記主面板と平行に向かい合う第1の折り返し部と、前記第2の側面板側に位置し、前記主面板と平行に向かい合う第2の折り返し部と、上端部を内側に折り曲げてなる第1のフランジ部と、下端部を内側に折り曲げてなる第3のフランジ部とを有する三面カバーと、
前記三面カバーに固定され、前記主面板と平行に向かい合う枠状のフレーム部材と、
前記フレーム部材の開口部を閉塞するよう、前記フレーム部材に着脱可能に固定された着脱カバーと、
前記三面カバー、前記フレーム部材及び前記着脱カバーによって構成される筒状体の上部を閉塞する天板と、
前記筒状体の下部を閉塞する底板と、を備え、
前記フレーム部材は、前記開口部を囲む接続面と、前記接続面の外側に位置する第1及び第2の突出部と、上端部を内側に折り曲げてなる第2のフランジ部と、下端部を内側に折り曲げてなる第4のフランジ部とを有し、
前記着脱カバーは、第1の防水部材を介して前記接続面と向かい合うよう、前記フレーム部材に固定され、
前記フレーム部材は、前記第1の突出部の外側面と前記第1の折り返し部の内側面が第2の防水部材を介して向かい合い、前記第2の突出部の外側面と前記第2の折り返し部の内側面が第3の防水部材を介して向かい合い、前記第2のフランジ部の端部が前記第1のフランジ部の端部と向かい合い、且つ、前記第4のフランジ部の端部が前記第3のフランジ部の端部と向かい合うよう、前記三面カバーに固定され、
前記天板は、前記第1及び第2のフランジ部に跨がって設けられた第4の防水部材を介して、前記筒状体に固定され、
前記底板は、前記第3及び第4のフランジ部に跨がって設けられた第5の防水部材を介して、前記筒状体に固定されていることを特徴とするバッテリケース。
【請求項2】
前記フレーム部材の厚みは、前記三面カバーよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載のバッテリケース。
【請求項3】
前記フレーム部材は、カシメ加工によって前記三面カバーに固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリケース。
【請求項4】
前記三面カバーがカラー鋼板により構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッテリケース。
【請求項5】
一枚の金属板からなり、主面板と、前記主面板に対して垂直な第1の側面板と、前記第1の側面板と平行に向かい合う第2の側面板と、前記第1の側面板側に位置し、前記主面板と平行に向かい合う第1の折り返し部と、前記第2の側面板側に位置し、前記主面板と平行に向かい合う第2の折り返し部と、上端部を内側に折り曲げてなる第1のフランジ部と、下端部を内側に折り曲げてなる第3のフランジ部とを有する別の三面カバーと、
前記別の三面カバーに固定され、前記主面板と平行に向かい合う枠状の別のフレーム部材と、
前記別の三面カバー、前記別のフレーム部材及び前記着脱カバーによって構成される別の筒状体の下部を閉塞する別の底板と、さらに備え、
前記着脱カバーは、前記フレーム部材の開口部を閉塞するよう、前記フレーム部材に固定されるとともに、前記別のフレーム部材の開口部を閉塞するよう、前記別のフレーム部材に固定され、
前記別のフレーム部材は、前記開口部を囲む接続面と、前記接続面の外側に位置する第1及び第2の突出部と、上端部を内側に折り曲げてなる第2のフランジ部と、下端部を内側に折り曲げてなる第4のフランジ部とを有し、
前記着脱カバーは、第6の防水部材を介して前記接続面と向かい合うよう、前記フレーム部材に固定され、
前記別のフレーム部材は、前記第1の突出部の外側面と前記第1の折り返し部の内側面が第7の防水部材を介して向かい合い、前記第2の突出部の外側面と前記第2の折り返し部の内側面が第8の防水部材を介して向かい合い、前記第2のフランジ部の端部が前記第1のフランジ部の端部と向かい合い、且つ、前記第4のフランジ部の端部が前記第3のフランジ部の端部と向かい合うよう、前記別の三面カバーに固定され、
前記別の底板は、前記第3及び第4のフランジ部に跨がって設けられた第9の防水部材を介して、前記別の筒状体に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバッテリケース。
【請求項6】
前記底板は、前記筒状体の内部と前記別の筒状体の内部を区画する中板を構成することを特徴とする請求項5に記載のバッテリケース。
【請求項7】
前記中板は、配線を通すことが可能な開口部を有していることを特徴とする請求項6に記載のバッテリケース。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のバッテリケースと、前記バッテリケースに収容されたバッテリモジュールとを備える蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリケースに関し、防水性に優れ、かつ、より軽量で、製造コストが低減されたバッテリケースに関する。また、本発明は、このようなバッテリケースを用いた蓄電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリモジュール等を内部に格納するバッテリケースは、10年以上もの長期間、屋外設置されるため、高性能の防水防塵性、錆等に対する耐久性が必要とされる。また、バッテリモジュールの1個あたりの重さは20〜30kgであり、これを複数個収納する場合には、バッテリケース自体も、大型でかつ重量が重いものになってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2018/079019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、バッテリケースの設置場所への運搬が困難となることから、現地でバッテリモジュールをバッテリケース内に収納する現地施工も要望されている。しかし、現地で施工する場合には、防水保証、組立保証等の確保が困難となる。このため、防水性に優れ、かつ、より軽量で、製造コストが低減されたバッテリケースが必要となっている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、防水性に優れ、かつ、より軽量で、製造コストが低減されたバッテリケース及びこれを用いた蓄電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるバッテリケースは、バッテリモジュールを収容するためのバッテリケースであって、一枚の金属板からなり、主面板、主面板に対して垂直な第1の側面板及び第1の側面板と平行に向かい合う第2の側面板を有する三面カバーと、三面カバーに固定され、主面板と平行に向かい合う枠状のフレーム部材と、フレーム部材の開口部を閉塞するよう、フレーム部材に着脱可能に固定された着脱カバーと、三面カバー、フレーム部材及び着脱カバーによって構成される筒状体の上部を閉塞する天板とを備えることを特徴とする。また、本発明による蓄電池システムは、上記のバッテリケースと、バッテリケースに収容されたバッテリモジュールとを備える。
【0007】
本発明によれば、三面カバーが一枚の金属板からなることから、高い防水性を得ることできるとともに、部品点数が少ないことから軽量化を図ることが可能となる。また、一枚の金属板を折り曲げることによって三面カバーを作製することができるため、製造コストも低減される。しかも、着脱カバーが着脱可能であることから、設置後におけるバッテリモジュールの交換も容易であり、メンテナンス性が高められる。
【0008】
本発明において、フレーム部材は開口部を囲む接続面を有し、着脱カバーは、第1の防水部材を介して接続面と向かい合うよう、フレーム部材に固定されていても構わない。これによれば、着脱カバーとフレーム部材の間の防水性が高められる。
【0009】
本発明において、三面カバーは、第1の側面板側に位置し主面板と平行に向かい合う第1の折り返し部と、第2の側面板側に位置し主面板と平行に向かい合う第2の折り返し部とをさらに有し、フレーム部材は、接続面の外側に位置する第1及び第2の突出部をさらに有し、第1の突出部の外側面と第1の折り返し部の内側面が第2の防水部材を介して向かい合い、且つ、第2の突出部の外側面と第2の折り返し部の内側面が第3の防水部材を介して向かい合うよう、三面カバーに固定されていても構わない。これによれば、三面カバーとフレーム部材の間の防水性が高められる。
【0010】
本発明において、フレーム部材の厚みは三面カバーよりも厚くても構わない。これによれば、三面カバーを薄くすることにより軽量化を維持しつつ、全体の機械的強度を高めることが可能となる。
【0011】
本発明において、三面カバーは、上端部を内側に折り曲げてなる第1のフランジ部を有し、フレーム部材は、上端部を内側に折り曲げてなる第2のフランジ部を有し、第2のフランジ部の端部が第1のフランジ部の端部と向かい合うよう三面カバーに固定され、天板は、第1及び第2のフランジ部に跨がって設けられた第4の防水部材を介して筒状体に固定されていても構わない。これによれば、三面カバー及びフレーム部材の機械的強度が高められるとともに、天板と筒状体の間の防水性が高められる。
【0012】
本発明によるバッテリケースは、筒状体の下部を閉塞する底板をさらに備え、三面カバーは下端部を内側に折り曲げてなる第3のフランジ部を有し、フレーム部材は下端部を内側に折り曲げてなる第4のフランジ部を有し、第4のフランジ部の端部が第3のフランジ部の端部と向かい合うよう三面カバーに固定され、底板は、第3及び第4のフランジ部に跨がって設けられた第5の防水部材を介して筒状体に固定されていても構わない。これによれば、複数のバッテリケースを積み重ねて使用することが可能となる。
【0013】
本発明によるバッテリケースは、一枚の金属板からなり、主面板、主面板に対して垂直な第1の側面板及び第1の側面板と平行に向かい合う第2の側面板とを有する別の三面カバーと、別の三面カバーに固定され、主面板と平行に向かい合う枠状の別のフレーム部材と、別の三面カバー、別のフレーム部材及び着脱カバーによって構成される別の筒状体の下部を閉塞する底板とさらに備え、着脱カバーは、フレーム部材の開口部を閉塞するよう、フレーム部材に固定されるとともに、別のフレーム部材の開口部を閉塞するよう、別のフレーム部材に固定されていても構わない。これによれば、より大容量のバッテリケースを提供することが可能となる。
【0014】
この場合、筒状体の内部と別の筒状体の内部を区画する中板をさらに備えていても構わない。これによれば、上部の筒状体に収容するバッテリモジュールを中板によって支持することが可能となる。さらにこの場合、中板は配線を通すことが可能な開口部を有していても構わない。これによれば、上下のバッテリモジュールを接続することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、防水性に優れ、かつ、より軽量で、製造コストが低減されたバッテリケース及びこれを用いた蓄電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるバッテリケース1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、バッテリケース1の略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、バッテリケース1からフレーム部材20、着脱カバー30及び天板40を外した状態を示す図である。
【
図4】
図4は、三面カバー10、フレーム部材20、着脱カバー30及び天板40を相互に固定する方法を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、フレーム部材20を三面カバー10に固定した状態を示す部分拡大図である。
【
図6】
図6は、つなぎ金具70の外観を示す略斜視図である。
【
図7】
図7は、フランジ部12aとフランジ部14aの接続部近傍の部分拡大図である。
【
図8】
図8は、三面カバー10につなぎ金具70を取り付けた状態を示す部分拡大図である。
【
図10】
図10は、第1の変形例の主要部を示す略分解斜視図である。
【
図11】
図11は、第2の変形例の主要部を示す略分解斜視図である。
【
図12】
図12は、第3の変形例の主要部を示す略分解斜視図である。
【
図13】
図13は本実施形態によるバッテリケース1の使用例を示す図であり、(a)は略断面図、(b)は透視側面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第2の実施形態によるバッテリケース2の外観を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態によるバッテリケース1の外観を示す略斜視図である。また、
図2はバッテリケース1の略分解斜視図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本発明の第1の実施形態によるバッテリケース1は、三面カバー10、フレーム部材20、着脱カバー30、天板40及び底板50によって構成されている。これら各部材10,20,30,40,50は、いずれも金属材料からなる。バッテリケース1からフレーム部材20、着脱カバー30及び天板40を外した状態である
図3に示すように、バッテリケース1内には、バッテリモジュールBや制御ボックスHが収容され、これにより蓄電池システムが構成される。バッテリケース1は、固定金具6を介して土台7に固定される。さらに、バッテリケース1には、制御ボックスHに接続される電線管8が設けられている。
【0020】
三面カバー10は、一枚の金属板、例えばカラー鋼板と呼ばれる先塗装材が折り曲げ加工された部材であり、主面板11、側面板12,13、折り返し部14,15を備えている。主面板11及び折り返し部14,15はXZ面を構成し、側面板12,13はYZ面を構成する。したがって、主面板11と側面板12,13は互いに垂直である。主面板11と折り返し部14,15はY方向に向かい合い、側面板12と側面板13はX方向に向かい合う。折り返し部14は、側面板12のY方向における端部がX方向に折り曲げられた部分である。一方、折り返し部15は、側面板13のY方向における端部がX方向に折り曲げられた部分である。
図1及び
図2に示す三面カバー10は、Y方向における長さ(奥行き)よりも、X方向における長さ(幅)の方が大きい。つまり、XZ面が長側面を構成し、YZ面が短側面を構成する。
【0021】
このように、本実施形態によるバッテリケース1は、一枚の金属板が折り曲げ加工されてなる三面カバー10を用いていることから、三面カバー10につなぎ目が存在せず、高い防水性を得ることが可能となる。特に、三面カバー10の材料として先塗装材を使用すれば、大幅なコストダウンが図ることができる。三面カバー10を構成する金属板の厚みが薄い場合、強度が不足するおそれがあるが、本実施形態においては、三面カバー10の上端部及び下端部を内側に折り曲げることによってフランジ部11a〜15a,11b〜15bが設けられており、これによって三面カバー10の強度が高められている。フランジ部11a,11bは、主面板11の上下端部を内側に折り返した部分であり、フランジ部12a,12bは、側面板12の上下端部を内側に折り返した部分であり、フランジ部13a,13bは、側面板13の上下端部を内側に折り返した部分であり、フランジ部14a,14bは、折り返し部14の上下端部を内側に折り返した部分であり、フランジ部15a,15bは、折り返し部15の上下端部を内側に折り返した部分である。フランジ部11a〜15a,11b〜15bは、いずれもXY平面を構成する。
【0022】
フレーム部材20は枠状であり、主面板11とY方向に向かい合うよう三面カバー10に固定される。着脱カバー30は板状であり、フレーム部材20の開口部20aを閉塞するよう、ネジなどを用いてフレーム部材20に着脱可能に固定される。これにより、三面カバー10、フレーム部材20及び着脱カバー30によって筒状体が構成され、その上部が天板40によって閉塞され、下部が底板50によって閉塞される。
【0023】
図4は、三面カバー10、フレーム部材20、着脱カバー30及び天板40を相互に固定する方法を説明するための模式図である。
【0024】
図4に示すように、フレーム部材20は、開口部20aを囲む接続面21と、接続面21のX方向における外側に位置する突出部22と、接続面21のZ方向における外側に位置するフランジ部23とを有している。突出部22のX方向における端部はY方向に折り曲げられてフランジ部22aを構成する。フランジ部22a,23は、フレーム部材20の強度を高める役割を果たす。フレーム部材20を構成する金属板の厚みは、三面カバー10を構成する金属板の厚みよりも厚くても構わない。これによれば、軽量化のために三面カバー10を構成する金属板の厚みを薄くしても、フレーム部材20による補強によって全体の機械的強度を高めることが可能となる。
【0025】
フレーム部材20を三面カバー10に固定する際には、突出部22に防水両面テープ62を貼り付けた状態で、突出部22の外側面と折り返し部14(及び15)の内側面を向かい合わせ、この状態でネジ82を用いて両者を固定する。これにより、突出部22の外側面と折り返し部14(及び15)の内側面の界面を防水した状態で、フレーム部材20と三面カバー10が強固に固定される。フレーム部材20は、三面カバー10から取り外す必要がないことから、ネジ82の代わりにリベットなどを用いても構わない。
【0026】
着脱カバー30をフレーム部材20に固定する際には、接続面21に防水クッション61を貼り付けた状態で、接続面21と着脱カバー30を向かい合わせ、この状態でネジ81を用いて両者を固定する。これにより、接続面21と着脱カバー30の界面を防水した状態で、着脱カバー30とフレーム部材20が強固に固定される。また、ネジ81を用いて着脱カバー30をフレーム部材20に固定していることから、着脱カバー30は着脱自在となる。
【0027】
着脱カバー30をフレーム部材20に固定すると、
図5に示すように、着脱カバー30のフランジ部23の端部(YZ端面)とフレーム部材20のフランジ部14aの端部(YZ端面)が向かい合い、好ましくは、フランジ部23のXY平面とフランジ部14aのXY平面が同一平面を構成する。図示しないが、フランジ部23とフランジ部15aについても同様である。これにより、フランジ部11a〜15aとフランジ部23は、ほぼ平坦なリング状のXY平面を構成する。このようにして形成されたリング状のXY平面にはパッキン64が貼り付けられ、パッキン64を介して天板40が固定される。このように、パッキン64は、フランジ部23とフランジ部14aのつなぎ目を跨ぐように設けられる。これにより、三面カバー10、フレーム部材20及び着脱カバー30からなる筒状体と天板40の界面がパッキン64によって防水される。
【0028】
底板50についても同様であり、リング状のXY平面を構成するフランジ部11b〜15b及びフランジ部23に図示しないパッキンが貼り付けられ、このパッキンを介して底板50が固定される。底板50側のパッキンについても、フランジ部23とフランジ部14b,15bのつなぎ目を跨ぐように設けられる。
【0029】
また、
図5に示すように、フランジ部12aとフランジ部14aの境界に位置する角部には、防水両面テープ66が貼り付けられ、防水両面テープ66上につなぎ金具70が接着される。つなぎ金具70形状は
図6に示されており、L字型の板状部71と、板状部71の屈曲部分に設けられた突起部72を有している。板状部71には、2つの貫通孔71a,71bが形成されている。そして、つなぎ金具70は、板状部71を防水両面テープ66に接着することによって三面カバー10に固定される。つなぎ金具70を三面カバー10に固定すると、突起部72がZ方向に突出する。
【0030】
図7に示すように、フランジ部14a,12aにはそれぞれ貫通孔73a,73bが設けられており、つなぎ金具70は、貫通孔71aと貫通孔73aが重なり、且つ、貫通孔71bと貫通孔73bが重なるよう三面カバー10に接着される。そして、
図8に示すように、貫通孔71a,73aにリベット74aを挿入し、貫通孔71b,73bにリベット74bを挿入することにより、つなぎ金具70が三面カバー10に強固に固定される。これらの構成は、反対側に位置するフランジ部13a,15aにおいても同様である。
【0031】
図9は、天板40の部分的な拡大図である。
図9に示すように、天板40は、XY平面を構成する天井部41と、YZ平面を構成する側面部42と、XZ平面を構成する側面部43とを有している。天井部41は、三面カバー10、フレーム部材20及び着脱カバー30からなる筒状体の上部開口部を閉塞する部分であり、側面部42は三面カバー10の側面板12,13をX方向から覆う部分であり、側面部43は三面カバー10の主面板11、並びに、折り返し部14,15及び着脱カバー30をY方向から覆う部分である。天井部41には貫通孔44が設けられており、天板40を固定する際、つなぎ金具70の突起部72を貫通孔44に挿入することによって、天板40が位置決めされる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によるバッテリケース1は、一枚の金属板を折り曲げ加工してなる三面カバー10を用いていることから、防水性に優れるとともに、軽量化及び低コスト化を実現することが可能となる。しかも、三面カバー10の折り返し部14,15にはフレーム部材20が固定されることから、三面カバー10の材料として比較的薄い先塗装材を用いた場合であっても、十分な機械的強度を確保することが可能となる。さらに、フレーム部材20に固定される着脱カバー30は着脱自在であることから、設置後におけるバッテリモジュールの交換も容易であり、高いメンテナンス性を得ることもできる。また、フレーム部材20が長側面であるXZ面に設けられていることから、フレーム部材20の開口部20aの面積を十分に確保することができ、バッテリモジュールの交換作業がしやすくなる。
【0033】
尚、上述したバッテリケース1は、長側面であるXZ面にフレーム部材20及び着脱カバー30を設けた構成を有しているが、本発明においてこの点は必須ではない。例えば、
図10に示す第1の変形例のように、主面板11が短側面であるYZ面を構成し、側面板12,13が長側面であるXZ面を構成する三面カバー10Aを用い、フレーム部材20Aを短側面であるYZ面に接続する構成であっても構わない。これによれば、三面カバー10Aによって覆われる面積が拡大することから、防水性がより高められるとともに、機械的強度がより高められる。
【0034】
さらに、上述したバッテリケース1は、ネジ82を用いてフレーム部材20を三面カバー10に固定しているが、本発明においてこの点は必須ではない。例えば、
図11に示す第2の変形例のように、三面カバー10Bにカシメ部14B,15Bを設けるとともに、フレーム部材20Bにカシメ部24B,25Bを設け、カシメ部14B,24Bを係合させ、カシメ部15B,25Bを係合させた状態でカシメ加工することにより、フレーム部材20Bを三面カバー10Bに固定しても構わない。これによれば、三面カバー10Bとフレーム部材20Bの接続部分における防水性をより高めることが可能となる。
【0035】
さらに、
図12に示す第3の変形例のように、三面カバー10Cのカシメ部14C,15Cとフレーム部材20Cのカシメ部24C,25Cをカシメ加工するとともに、三面カバー10Cとフレーム部材20Cの境界を覆うよう、つなぎ金具70a及び防水板70bを設けても構わない。つなぎ金具70aの板状部71は、フランジ部12a,23の境界を覆っている。さらに、つなぎ金具70aは、板状部71を90°折り曲げた折り返し部73を有しており、折り返し部73によってXZ面に露出する三面カバー10Cとフレーム部材20Cの境界の上部が覆われている。XZ面に露出する三面カバー10Cとフレーム部材20Cの境界の下部は、防水板70bによって覆われる。このように、三面カバー10Cとフレーム部材20Cをカシメ加工によって固定するとともに、つなぎ金具70a及び防水板70bによって境界部分を覆えば、より防水性能が高められる。
【0036】
図13は本実施形態によるバッテリケース1の使用例を示す図であり、(a)は略断面図、(b)は透視側面図である。
【0037】
図13に示す使用例では、2つのバッテリケース1A,1Bが積層された構成を有しており、下側に位置するバッテリケース1AにはバッテリモジュールB1が収容され、上側に位置するバッテリケース1BにはバッテリモジュールB2及び制御ボックスHが収容されている。このため、上側に位置するバッテリケース1Bは、下側に位置するバッテリケース1AよりもZ方向における高さが拡大されている。バッテリケース1A,1Bの接続は、領域Aの拡大図である
図14に示すように、L字型の固定金具90が用いられる。固定金具90は、ネジ91によって上側の底板50にネジ止めされるとともに、接着剤92によって下側の天板40に固定される。
【0038】
さらに、
図13に示す使用例では、バッテリケース1A,1Bの側面が電線管カバー100で覆われている。電線管カバー100は、配線箱101〜103と電線管104a,104bを覆う金属製のカバーである。ここで、上側に位置するバッテリケース1Bの天板40BのX方向における幅は、三面カバー10だけでなく、三面カバー10と電線管カバー100の両方を覆う大きさを有している。
【0039】
電線管104a,104bは、それぞれ動力線PC1及び信号線SC1を収容する。動力線PC1は、配線箱101に設けられたグロメット101aを介して、制御ボックスHの外部動力端子H1aに接続される。また、信号線SC1は、配線箱101に設けられたグロメット101bを介して、制御ボックスHの外部信号端子H1bに接続される。制御ボックスHは、内部動力端子H2a及び内部信号端子H2bをさらに有している。内部動力端子H2aは、動力線PC2を介して、バッテリモジュールB1,B2の動力端子B1a,B2aに接続される。また、内部信号端子H2bは、信号線SC2を介して、バッテリモジュールB1,B2の信号端子B1b,B2bに接続される。
【0040】
ここで、上側のバッテリケース1Bに収容された制御ボックスHと、下側のバッテリケース1Aに収容されたバッテリモジュールB1の接続は、配線箱102に設けられたグロメット102a,102bと、配線箱103に設けられたグロメット103a,103bを介して行われる。
【0041】
このように、複数のバッテリケース1A,1Bを積み重ねて使用することによってより大容量の蓄電池システムを構成することが可能である。
【0042】
<第2の実施形態>
図15は本発明の第2の実施形態によるバッテリケース2の外観を示す略斜視図である。また、
図16はバッテリケース2の略分解斜視図である。
【0043】
図15及び
図16に示すように、本発明の第2の実施形態によるバッテリケース2は、2つの三面カバー10D,10E、2つのフレーム部材20D,20E、着脱カバー30A、天板40、底板50及び中板110によって構成されている。三面カバー10D,10Eの基本的な形状は第1の実施形態において用いた三面カバー10と同じであるが、下側に位置する三面カバー10Dよりも上側に位置する三面カバー10Eの方がZ方向における高さが大きい。フレーム部材20D,20Eについても、それぞれ三面カバー10D,10Eに対応するサイズを有している。フレーム部材20D,20Eの基本的な形状は第1の実施形態において用いフレーム部材20と同じである。着脱カバー30Aは、フレーム部材20D,20Eに対して共通であり、フレーム部材20D,20Eの両方の開口部を閉塞する。中板110は、上側の筒状体の内部と下側の筒状体の内部を区画する。
【0044】
本実施形態によるバッテリケース2は、下側に位置する三面カバー10D、フレーム部材20D及び着脱カバー30Aによって構成される筒状体の内部に例えば2個のバッテリモジュールを収容し、上側に位置する三面カバー10E、フレーム部材20E及び着脱カバー30Aによって構成される筒状体の内部に例えば2個のバッテリモジュールと制御ボックスを収容することができる。これによって、より大容量の蓄電池システムを構成することが可能となる。
【0045】
ここで、下側の筒状体に収容されるバッテリモジュールは底板50によって支持され、上側の筒状体に収容されるバッテリモジュール及び制御ボックスは中板110によって支持される。中板110には配線を通すことが可能な開口部111が設けられており、下側の筒状体に収容されるバッテリモジュールは、開口部111を通過するケーブルを介して、上側の筒状体に収容される制御ボックスに接続される。
【0046】
このように、本実施形態によるバッテリケース2は、中板110を介して複数の三面カバー10D,10Eが上下に連結された構成を有していることから、より大容量の蓄電池システムを構成することが可能となる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0048】
例えば、第1の実施形態においては、防水部材として、防水クッション61、防水両面テープ62,66及びパッキン64を用いているが、本発明において使用する防水部材がこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1,1A,1B,2 バッテリケース
6 固定金具
7 土台
8 電線管
10,10A〜10E 三面カバー
11 主面板
11a〜15a,11b〜15b フランジ部
12,13 側面板
14,15 折り返し部
14B,15B,24B,25B,14C,15C,24C,25C カシメ部
20,20A〜20E フレーム部材
20a 開口部
21 接続面
22 突出部
22a,23 フランジ部
30,30A 着脱カバー
40,40B 天板
41 天井部
42,43 側面部
44 貫通孔
50 底板
61 防水クッション
62,66 防水両面テープ
64 パッキン
70,70a 金具
70b 防水板
71 板状部
71a,71b,73a,73b 貫通孔
72 突起部
74a,74b リベット
81,82 ネジ
90 固定金具
91 ネジ
92 接着剤
100 電線管カバー
101〜103 配線箱
101a,101b,102a,102b,103a,103b グロメット
104a,104b 電線管
110 中板
111 開口部
B,B1,B2 バッテリモジュール
B1a,B2a 動力端子
B1b,B2b 信号端子
H 制御ボックス
H1a 外部動力端子
H1b 外部信号端子
H2a 内部動力端子
H2b 内部信号端子
PC1,PC2 動力線
SC1,SC2 信号線
【要約】
【課題】防水性に優れ、かつ、より軽量で、製造コストが低減されたバッテリケースを提供する。
【解決手段】バッテリケース1は、一枚の金属板からなり、主面板11及び側面板12,13を有する三面カバー10と、三面カバーに固定されたフレーム部材20と、フレーム部材20の開口部20aを閉塞するよう、フレーム部材20に着脱可能に固定された着脱カバー30と、三面カバー10、フレーム部材20及び着脱カバー30によって構成される筒状体の上部及び下部をそれぞれ閉塞する天板40及び底板50とを備える。このように、三面カバー10が一枚の金属板からなることから、高い防水性を得ることできるとともに、部品点数が少ないことから軽量化を図ることが可能となる。しかも、着脱カバーが着脱可能であることから、設置後におけるバッテリモジュールの交換も容易であり、メンテナンス性が高められる。
【選択図】
図2