(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989077
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ニット手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/015 20060101AFI20211220BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20211220BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20211220BHJP
D04B 1/28 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
A41D19/015 610Z
A41D19/00 M
D04B1/00 Z
D04B1/28
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-102454(P2017-102454)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197407(P2018-197407A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年4月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年11月25日に、武田レッグウェアー株式会社が、自らの商品を紹介するウェブサイトに本発明に係る商品を掲載し、公開
(73)【特許権者】
【識別番号】597062524
【氏名又は名称】武田レッグウェアー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111224
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 攻治
(72)【発明者】
【氏名】武田 大輔
【審査官】
冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−250813(JP,A)
【文献】
特開2008−308773(JP,A)
【文献】
特開平5−302247(JP,A)
【文献】
特開平11−256456(JP,A)
【文献】
実開昭54−30525(JP,U)
【文献】
実開平3−120507(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/08、19/00−19/04
D04B1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横編機を用いて編糸により編成されるニット手袋において、一対の手袋の内の少なくともいずれか一方の、掌側もしくは甲側の少なくともいずれか一方の手首部に、腕時計視認用の窓を備え、当該窓がスリット状の窓であることを特徴とするニット手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニット手袋ならびにニット手袋の編成方法に関し、より具体的には、手袋を装着したままで手袋の内側にある腕時計を視認して時刻を知ることができる腕時計視認用の窓を設けたニット手袋ならびに該ニット手袋の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に腕時計をしたままで手袋を装着した際、腕時計は手袋の手首部によってその内側に覆われるため、そのままでは時刻を確認することはできない。手袋を脱ぐか、少なくとも腕時計が露出するまで手袋の手首部分を捲り上げるなどが必要となり、煩わしさが伴う。荷物を持つなどによって手袋を装着した両手が塞がれている場合などでは、時刻の確認そのものを諦めざるを得ない事態もあり得る。さらには自転車やオートバイを運転する際、あるいはスキーをする際などではこのような腕時計を見るための行為そのものが煩わしいばかりではなく、危険を伴うことにもなり得る。手袋をはめたままの状態で、容易に腕時計の文字盤を視認することができる手袋があればこのような不便、事態を解消させることができて便利である。
【0003】
この目的に沿って従来技術においても腕時計視認用の覗窓を設けた手袋が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
図4は、特許文献1に開示された手袋の概要を示しており、図において手袋1は、手首部に窓部4を設け、その上にドーム状に外方向に凸形状となった透明な覆い部材5でカバーすることで内部の時計の視認を可能としている。当該手袋1は、オートバイ用もしくは野外用に適した手袋とされ、この目的のために「布と皮で縫製した全体的に柔軟性を有する手袋」とされ、「窓部4は、例えば、時計の外観形状よりやや全体を大きくさせた形状とした皮等の硬質の枠部材3上に形成され」、「覆い部材5は、透明な硬質または軟質のプラスチック、好適には時計の文字盤にフィットするように軟質のプラスチックで形成されていて、周縁のフランジの裏面、つまり身につける時計の文字盤の外周縁との当接部位に環状の突出リブ5aが形成され」るなど、頑丈に構成されたものとなっている。
【0004】
特許文献2にもほぼこれと同様に、手首部に覗窓部を設け、その上に覗窓部の拡開を押さえる目的で紐体を被せるか透明プラスチック体などの窓板を設けて時計の視認を確保する手袋が開示されている。この手袋の用途も同様に「オートバイ用の手袋、その他、レジャー用、作業用等、各種の手袋を含む」とされ、皮革製の手袋の手首位置に円形の窓部が設けられ、その周囲を同じく皮革製の帯状片が縫着されるなど、目的に応じてそれなりに頑丈に構成されている。
【0005】
このような特殊用途の手袋とは異なり、一般用途として幅広く普及しているのはニット製の手袋である。ニット手袋は糸もしくは毛糸(以下、これらの総称として「編糸」という。)を編み立てたもので、その編成方法は既に従来技術において広く知られている(例えば、特許文献3参照。)。すなわち、一般にニット手袋は、前後一対のニードルベッド(針床)を備えた横編機を用いて編成される。典型的な編成方法では、まず小指から人差し指までの4本の各指袋部が編成された後、これら指袋部に続いてこれをまとめた四本胴部が編成される。次に、親指の指袋部が編まれ、この親指の指袋部と四本胴部とをつないで五本胴部が編成された後、これに続く手首部の編成が行われて編成が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−44053号公報
【特許文献2】特開平07−300709号公報
【特許文献3】特開2008−308773号公報
【特許文献4】特開平04−214448号公報
【特許文献5】特開平07−138851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示された従来技術による腕時計用覗窓を設けた手袋には改善の余地があった。いずれの手袋も皮、合成皮革、布等(以下、「皮革等」という。)を利用して形成されるもので、この場合の製造方法としては一般に手袋を幾つもの部分に分けてそれらを展開した部位を設け、パターンと呼ばれる型を用いた打抜き等によって各部位の形状に即した皮革等を作り、これらを相互に縫合もしくは溶着することによって手袋を形成していた。そのいずれかの過程において腕時計視認用の覗窓が打抜かれ、周囲が補強された後にその形状に沿って透明な覆い部材(特許文献1)、もしくは紐体や透明窓板(特許文献2)が固定されていた。
【0008】
両文献に示された手袋はいずれも特殊用途に向けられたものであって、上記製造方法からも明らかなように丈夫な作りとされ、時計用覗窓を設けるための余分な加工工程が加わるなど構造が複雑であり、材料、生産性からして比較的高価なものとなっていた。これらの手袋においては丈夫に作られている分だけに着脱が容易とはいえず、したがって安価でありながら手袋をしたままで煩わされることなく時刻を知りたいとするさらなるニーズはそれなりに高いものであることが理解できる。
【0009】
しかしながら、日常生活で一般に用いられ広く普及しているニット手袋である。ニット手袋は上述した皮革等から成る手袋とは製造方法、構造が全く異なり、数値制御された横編機を用いて連続して大量に、安価に製造することができる特徴を備え、皮革等からなる手袋とは明らかに一線を画するものである。ニット手袋は柔軟性が高く、腕時計の視認をするための動作の煩わしさの程度は異なっても、手袋を装着したままで腕時計を視認したいとするユーザの志向は不変である。そのようなユーザのニーズを満たすニット手袋を提供するとした場合、上記特許文献に見られるような皮革製の手袋への覗窓を設ける製造技術をそのままニット手袋に適用することはできない。特殊用途の目的ではなく、日常生活で最も広く使用されているニット製の手袋においても、装着したままで時刻が見られる手袋があれば利用者に快適さを提供できるものとなる。
【0010】
以上より、本発明は、腕時計の上から被せるように装着しても腕時計の視認を可能にするニット手袋、ならびに該ニット手袋の編成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、腕時計に被さるニット手袋の手首部の位置に腕時計視認用の窓を設け、その窓を介してニット手袋を装着したままで腕時計の視認を可能にすることによって上述した課題を解消するもので、具体的には以下の内容を含む。
【0012】
すなわち、本発明に係る1つの態様は、横編機を用いて編糸により編成されるニット手袋において、一対の手袋の内の少なくともいずれか一方の、掌側もしくは甲側の少なくともいずれか一方の手首部に、腕時計視認用の窓を備えていることを特徴とするニット手袋に関する。前記腕時計視認用の窓の形状は、円形、長円形、ひし形、矩形、スリット状のいずれとすることができる。
【0013】
本発明に係る他の態様は、横編機を用いて編糸によりニット手袋を編成するニット手袋の編成方法であって、該ニット手袋の手首部編成時に、掌側もしくは甲側の少なくともいずれか一方の手首部でウエル数を増減させる減らし目、次いで増し目を各所定コース繰り返すことにより、腕時計視認用の窓を形成することを特徴とするニット手袋の編成方法に関する。
【0014】
本発明に係るさらに他の態様は、横編機を用いて編糸によりニット手袋を編成するニット手袋の編成方法において、該ニット手袋の手首部編成時に、掌側もしくは甲側の少なくともいずれか一方の手首部で所定ウエル数伏目処理し順次編針から外してスリット状部の一方の縁部を形成し、該縁部に対向して編目形成手段により編目を形成してスリット状部の他方の縁部を形成することにより腕時計視認用のスリット状の窓を形成することを特徴とするニット手袋の編成方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るニット手袋並びにその編成方法の実施により、腕時計をはめたままその上から装着しても時刻の確認を可能にするニット手袋を安く、大量に供給できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るニット手袋を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すニット手袋の腕時計視認用の窓の編成方法の一例を示す説明図である。
【
図3】腕時計視認用の窓の形状例を示す平面図である。
【
図4】従来技術による腕時計視認用の窓を設けた手袋を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係るニット手袋について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る腕時計視認用の窓を設けたニット手袋10を示している。ニット手袋10は、図の上から四本指部11、四本胴部12、親指部13、五本胴部14、そして手首部15に大きく区別され、上述したように一般に横編機によってこの順番に編成される。なお、四本指部11が指ごとに独立せず、四本胴部12がそのまま指先まで一体に形成されたニット手袋もあるが、その編成方法も基本的にこれと同様である。本実施の形態に係るニット手袋10も、この従来技術によるものと同様の製法によって作られるが、手首部15に腕時計視認窓20が設けられる点が相違している。
【0018】
一般にニット手袋の編成には、少なくとも前後一対のニードルべッドを備え、何れか一方もしくは双方のニードルベッドが左右にラッキング可能に構成され、前後ニードルベッド間で編目の受け渡しが可能な横編機が使用されている。本実施の形態に係るニット手袋10も四本指部11から五本胴部14に至るまでは従来技術のニット手袋と同様に編成され、手首部15に至って腕時計視認用の窓20を形成している。この窓20の編成方法は、例えばニットウェアのVネックやUネックを形成する際の従来技術で知られた手法を適用することができる。
【0019】
図2は、特許文献4に表示された横編機を用いてニットウェアのVネックを形成する際の編成の状況を示している。図において、ニットウェア下方の裾部から編み進められ、Vネックの下端に至って身頃の中心線から左右に向けて衿ぐり周縁の編目(ウエル)を順次編成から外して不作用状態(最大幅で図の針符号G−Mの間)としてゆく引き返し編みを所定のコース数繰り返して減らし目を形成している。本実施の形態に係るニット手袋10の視認窓20もこれと同様の操作で一旦編目を順次減少させてゆき、所定コースの後に今度は逆に編目を順次増加させて編み立てること(増やし目)により窓状部分を編成することができる。
【0020】
図3は、視認用の窓20の各種形状を示している。
図3(a)は
図1に示す丸形の視認窓20aであり、この丸形状は編目を増減させるウエル数とコースとの関係を制御することにより(すなわち、窓20aに至った後はコースに対するウエル数減の比を大き目とし、順次のこの比を低減させて丸形状の半分に至ってウエル数増に転じ、上記比を順次大きくすることにより)形成することができる。このコース数に対するウエル数の増減比を変化させることによって
図3(b)に示す長円形(楕円を含む)の窓20bにすることができ、さらに増減比を所定コース別に一定に保って増減することによって
図3(c)に示すひし形の窓20cにすることができる。また、一旦ウエル数を減少させてそのままの状態で所定コース編み立て後に元に戻すことにより、
図3(d)に示す矩形状の窓20dとすることができる。なお、窓20の内側に表示された編目は、時計をはめていない時に窓を通して視認される反対側(掌側)の手首部の編目を表したもので、時計をはめた際にはこの部分に時計の文字盤が表れる。これは
図1についても同様である。
【0021】
図3(e)は以上のものとは異なり、切欠き状のスリットを利用した視認窓20eを示している。横編機を用いてニット地にこのようなスリットを設ける製造方法は、カーディガンなどのニット製品にボタンホールを設ける手法として従来技術にも開示されている(例えば、特許文献5参照。)。特許文献5によれば、スリットを有する編地を編成するに際し、編地のスリット形成位置において、編成ウエル方向に連続している任意数の一連の編目に伏目処理を施して順次編針から外してスリットの一方の縁部を形成し、該スリットに対向する位置に編目形成手段により編目を形成してスリットの他方の縁部を形成することにより編成している。本実施の形態に係るスリット状の視認窓20eも全く同様な手法によって形成することができる。
【0022】
スリット状の視認窓20eを他の視認窓20a〜20dと比較した場合の特徴としては、ボタンホールと同様に窓20eを視認用として用いることなく普通に使用する場合においてはスリット状の窓20eが閉じた状態となるため手首部15に違和感がなく、美観を損ねず、加えてスリットが閉じるために手袋の主要機能である保温効果を高めることができる。さらに、腕時計をした場合には丁度ボタンホールに止めたボタンと同様に腕時計がボタンをはめたときのようにニット手袋の手首部の外側に出てスリット周縁が腕時計の裏側に入り込むため、腕時計の視認性が高まり、また腕時計がスリットに拘束されて位置決めとなるため、例えば腕時計のベルトの締まりが緩くても腕時計が回転したりずれたりすることがなくなる、などのメリットが得られる。
【0023】
図3に示す各視認窓20a−20eは単なる例示であって、ウエル数の増減とコースとの関係を変化させることによってこれ以外の任意の形状の視認窓20を形成することができる。しかもこれらの形状の設定、あるいは視認窓20を設けるか否かの設定も単に横編機のプログラムを変えることによって自由に選ぶことができる。加えて、人によっては腕時計を手の甲側ではなく掌側に向けてはめる人や、左手ではなく右手の方にはめる人もいるが、その際に腕時計視認用の窓20をどの側のどちらの手に設けるかも、プログラムによって自在に変更することができる。あるいは共通化を狙って、この全ての位置に予め窓20を設けておくことも可能である。
【0024】
以上のまとめとして、本実施の形態に係る腕時計視認用の窓20を設けたニット手袋10を、特許文献1、2に示した従来技術による腕時計覗窓を設けた皮革等製の手袋と比較した場合の優位点は以下の通りである。
a)手軽に使用できるニット製の腕時計視認用の窓を設けた手袋を安価に提供することができる。(横編機を用いて全自動により連続編成可能である。)
b)製造が容易であり、型が不要であることから視認窓の形状、設ける位置の決定に関する拘束が少なく、バリエーション展開が容易である。(横編機制御用のプログラムの変更により容易に形状等の変更が可能である。)
c)皮革等製とは異なり、例えば軍手のように表裏区別のないものであれば、腕時計が左右のいずれの手にはめられた場合にも同じニット手袋で対応できる。
e)柔軟性があるため、腕時計の形状に沿い易く、腕時計の位置決め効果がある。(皮革等製の手袋では、腕時計と窓との位置がずれた場合には容易にずれの修正ができない。)
f)皮革等製には困難なスリット状の視認窓も形成が可能となり、その際には腕時計をはめていない場合にもおいても違和感がない。(柔軟性の劣る皮革等製の場合には、スリット状の窓の実施は困難である。)
g)スリット状の窓とした場合、使用しない場合には窓が閉じて目立たないため、両手や掌側、甲側の両方に窓を設けるようにしても美観や保温性を害することがない。また、ニット製には皮革製にない柔軟性があるため、スリット状以外の窓形状においてもある程度同様の効果を期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る腕時計視認窓を設けたニット手袋ならびに当該手袋を編成する方法は、ニット手袋を製造、販売する産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10.ニット手袋、 11.四本指部、 12.四本胴部、 13.親指部、 14.五本胴部、 15.手首部、 20(20a〜20e).窓