(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記耐震構造は屋内の収納部に適用され、揺れが発生しても、収納部からの収納物の落下を防止することができる。
ところで、屋内と屋外とを隔て、窓サッシと呼ばれる、建具としての引き違い引き戸には、上記耐震構造の適用がなかった。そもそも、引き違い引き戸には、召し合わせ部分にクレセント錠と呼ばれる施錠器が取り付けられている。例えば2枚の引き違い引き戸が施錠器により施錠された状態では、建具枠内の開口部は閉状態であり、引き違い引き戸の建具枠内での位置は固定されている。
しかしながら、ペアガラスの採用、建具枠並びに建具枠内の開口面積の拡大等により、引き違い引き戸の重量が増加すると、地震の揺れが発生した場合には施錠器に大きな荷重が加わる。このため、揺れが発生した場合でも施錠された状態を維持するには、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、揺れが発生した場合でも、引き違い引き戸が施錠された状態を維持することができる耐震引き戸構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1実施態様に係る耐震引き戸構造は、建具枠内の開口部に摺動可能に設けられた複数枚の引き違い引き戸と、複数枚の引き違い引き戸のうち、隣合う一方の引き違い引き戸の召し合わせ部分に設けられた係合部を、隣合う他方の引き違い引き戸の召し合わせ部分に設けられた被係合部に係合させて、一方の引き違い引き戸と他方の引き違い引き戸とを施錠する施錠器と、施錠器による施錠状態において揺れを感知すると、一方の引き違い引き戸又は他方の引き違い引き戸の摺動を制限する制限装置と、を備えている。
【0007】
第1実施態様に係る耐震引き戸構造では、複数枚の引き違い引き戸が建具枠内の開口部に摺動可能に設けられる。複数枚の引き違い引き戸のうち、隣合う一方の引き違い引き戸と隣合う他方の引き違い引き戸との召し合わせ部分には施錠器が設けられる。施錠器は、一方の引き違い引き戸に設けられた係合部と、他方の引き違い引き戸に設けられた被係合部とを含んで構成される。係合部が被係合部に係合されると、一方の引き違い引き戸と他方の引き違い引き戸とが施錠される。
【0008】
ここで、耐震引き戸構造は、施錠器に加えて、制限装置を備える。制限装置は、施錠器による施錠状態において揺れを感知すると、一方の引き違い引き戸又は他方の引き違い引き戸の摺動を制限する。このため、施錠器の強度が制限装置により補強されるので、揺れが発生した場合でも、施錠器の損傷や破壊を防止することができる。
【0009】
本発明の第2実施態様に係る耐震引き戸構造では、第1実施態様に係る耐震引き戸構造において、制限装置は、施錠器の施錠状態にある一方の引き違い引き戸又は他方の引き違い引き戸の最大可動位置よりも、密閉位置に近い位置に配設されている。
【0010】
第2実施態様に係る耐震引き戸構造によれば、制限装置が施錠器の最大可動位置よりも一方又は他方の引き違い引き戸の密閉位置に近い位置に配設されるので、施錠器に最大荷重が加わる前に制限装置により一方又は他方の引き違い引き戸の摺動が制限される。このため、揺れが発生した場合でも、施錠器の損傷や破壊を防止することができる。
【0011】
本発明の第3実施態様に係る耐震引き戸構造では、第1実施態様又は第2実施態様に係る耐震引き戸構造において、制限装置は、施錠器の強度よりも高い強度を備えている。
【0012】
第3実施態様に係る耐震引き戸構造によれば、制限装置が施錠器の強度よりも高い強度を備えるので、施錠器の強度を制限装置により補強し、施錠器の損傷や破壊を防止することができる。
【0013】
本発明の第4実施態様に係る耐震引き戸構造では、第1実施態様〜第3実施態様のいずれか1つに係る耐震引き戸構造において、制限装置は、一方の引き違い引き戸上又は他方の引き違い引き戸上の摺動軌跡上に配設されている。
【0014】
第4実施態様に係る耐震引き戸構造によれば、制限装置が一方又は他方の引き違い引き戸上の摺動軌跡上に配設されるので、引き違い引き戸本体への制限装置の取付け作業が不要となる。このため、引き違い引き戸の構造や形状を問わずに、制限装置を備えることができる。
また、住宅や建物が完成した後に、建具枠に制限装置を取り付けることができる。
【0015】
本発明の第5実施態様に係る耐震引き戸構造では、第1実施態様〜第3実施態様に係る耐震引き戸構造において、制限装置は、建具枠及び建具枠外の下地材にわたって配設されている。
【0016】
第5実施態様に係る耐震引き戸構造によれば、制限装置が建具枠及び建具枠外の下地材にわたって配設されるので、引き違い引き戸本体への制限装置の取付け作業が不要となる。このため、引き違い引き戸の構造や形状を問わずに、制限装置を備えることができる。
また、住宅や建物が完成した後に、建具枠に制限装置を取り付けることができる。
さらに、制限装置が建具枠から下地材にわたって配設されるので、制限装置の取付け強度を向上することができる。
【0017】
本発明の第6実施態様に係る耐震引き戸構造では、第1実施態様〜第5実施態様に係る耐震引き戸構造において、制限装置は、建具枠に設けられる筐体と、揺れを感知すると、筐体から建具枠の内側に突出し、一方の引き違い引き戸又は他方の引き違い引き戸の摺動を制限する突出部材と、突出部材の突出状態を保持する保持手段と、を備えている。
【0018】
第6実施態様に係る耐震引き戸構造では、制限装置が、筐体と、突出部材と、保持手段とを備える。筐体は建具枠に設けられる。突出部材は、揺れを感知すると、筐体から建具枠の内側へ突出し、一方又は他方の引き違い引き戸の摺動を制限する。保持手段は、突出部材の突出状態を保持する。
これにより、揺れを感知すると、突出部材により一方又は他方の引き違い引き戸の摺動が制限され、保持手段により突出部材の突出状態が保持されるので、施錠器による施錠状態を維持しつつ、施錠器の損傷や破壊を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る耐震引き戸構造は、揺れが発生した場合でも、引き違い引き戸の施錠状態を維持することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施の形態]
以下、
図1〜
図5を用いて、一般住宅や建物に適用された本発明の第1実施の形態に係る耐震引き戸構造を説明する。
【0022】
(耐震引き戸構造の構成)
図1に示されるように、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10は、複数枚の、ここでは2枚の隣合う引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18と、施錠器20と、制限装置22とを含んで構成されている。複数枚の引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18は、屋内から屋外に向かって見て、水平方向を長手方向とする矩形状の建具枠12内の開口部14において水平方向(左右方向)へ摺動可能に設けられている。建具枠12は、建物の床側の図示省略の下地材上に設けられた建具下枠12Aと、天井側の図示省略の下地材下に設けられた建具上枠12Bと、左右の下地材に各々設けられた建具右枠12C及び建具左枠12Dとを備えている。これらの建具下枠12A、建具上枠12B、建具右枠12C及び建具左枠12Dは、例えばアルミニウムを主組成とする軽金属材料により形成され、相互に連結されている。
【0023】
複数枚のうち、左側の引き違い引き戸(隣合う他方の引き違い引き戸)16は、建具下枠12A、建具上枠12Bのそれぞれの図示省略のレールにガイドされて摺動し、閉状態では開口部14の左側半分を覆って、屋内と屋外とを隔てる構成とされている。
図1及び
図2に示されるように、引き違い引き戸16は上下方向を長手方向とする矩形状の枠体16Aを有し、この枠体16Aの中央部にはガラス16Bが装着されている。ガラス16Bは、ここでは、矩形板状の単層ガラスとされているが、空気層を挟んで複数枚のガラスを厚さ方向に重ねた多層ガラスとしてもよい。
複数枚のうち、右側の引き違い引き戸(隣合う一方の引き違い引き戸)18は、建具下枠12A、建具上枠12Bのそれぞれの図示省略のレールにガイドされて摺動し、閉状態では開口部14の右側半分を覆って、屋内と屋外とを隔てる構成とされている。引き違い引き戸18が摺動するレールは、引き違い引き戸16が摺動するレールと平行に屋内側に配設されている。引き違い引き戸18は、引き違い引き戸16と同様に、矩形状の枠体18Aを有し、枠体18Aにはガラス18Bが装着されている。
ここで、枠体16A、枠体18Aのそれぞれは、例えば建具枠12と同一材料により形成されている。
【0024】
図4(A)に示されるように、施錠器20は係合部20Bと被係合部20Cとを含んで構成され、ここでは施錠器20として所謂クレセント錠が使用されている。係合部20Bは、引き違い引き戸18と引き違い引き戸16との召し合わせ部分24であって、枠体18Aの上下方向中間部の引き違い引き戸16側の側面に設けられている。係合部20Bは、三日月(クレセント)状に形成され、枠体18Aの側面から突出する回転軸20Aを中心として回転自在に設けられている。
一方、被係合部20Cは、召し合わせ部分24であって、係合部20Bに対応する位置の、枠体16Aの上下方向中間部に設けられている。被係合部20Cは係合部20Bの回転動作により係止され、逆回転動作により係止が解除されるフック状に形成されている。被係合部20Cは、可動はせず、枠体16Aに固定されている。
施錠器20は、建具枠12、枠体16A、枠体18Aのそれぞれと同一材料、又はそれらよりも機械的強度が高い金属材料により形成されている。
【0025】
図1、
図2及び
図3(A)に示されるように、制限装置22は、建具枠12と引き違い引き戸16、引き違い引き戸18のそれぞれとの間に配設されている。詳細に説明すると、ここでは制限装置22は2個配設されている。一方の制限装置22は、建具枠12の建具上枠12Bの上端から室内側に折り曲げられた符号省略のフランジと引き違い引き戸18の枠体18Aの上端との間であって、開口部14の水平方向中間位置からやや左側の、引き違い引き戸18の摺動軌跡上に配設されている。一方の制限装置22は、開口部14が閉状態であって、施錠器20により引き違い引き戸16と引き違い引き戸18とが施錠状態において、地震の揺れが発生した場合に、引き違い引き戸18の矢印B方向(
図1参照)への摺動を制限する。
【0026】
他方の制限装置22は、建具上枠12Bの上端のフランジと引き違い引き戸16の枠体1Aの上端との間であって、開口部14の水平方向中間位置からやや右側の、引き違い引き戸16の摺動軌跡上に配設されている。他方の制限装置22は、開口部14が閉状態であって、施錠器20による施錠状態において、地震の揺れが発生した場合に、引き違い引き戸16の矢印A方向(
図1参照)への摺動を制限する。
【0027】
図4(B)に示されるように、制限装置22は、機械式とされ、筐体22Aと、突出部材22Dと、保持手段とを含んで構成されている。
筐体22Aは、内部にガイド空間22Cを有し、金属製若しくは硬質樹脂製の箱体状に形成されている。筐体22Aは、
図1、
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、建具枠12の建具上枠12Bに装着されている。
図4(B)に示されるように、筐体22Aの水平方向の一端部(左側端部)には、ガイド空間22Cから建具枠12内側へ貫通する貫通孔22Bが設けられている。
【0028】
突出部材22Dは貫通孔22B内を上下方向へ摺動する中実又は中空の円柱状に形成されている。この突出部材22Dは、揺れが発生すると、建具上枠12B側から下方向へ矢印C方向に下がる構成とされている。突出部材22Dの上端部は、円柱部位の外径よりも径方向外側へ拡がる板状に形成され、抜け防止部(符号省略)とされている。抜け防止部の上面は上方へ若干突出された曲面形状に形成され、この曲面形状に形成された部分においてガイド空間22Cの上下方向の寸法が抜け防止部により小さくされている。突出部材22Dは、筐体22Aと同様に、金属製若しくは硬質樹脂製とされている。
なお、突出部材22Dは、円柱状に限らず、楕円柱状、角柱状、多角柱状等の形状に形成されてもよい。
保持手段は、ガイド空間22Cと、突出部材22Dの抜け防止部と、揺れが発生すると、ガイド空間22Cを他端部(右側端部)から一端部へ矢印D方向に移動する移動部材22Eとを含んで構成されている。移動部材22Eとして、慣性力が高い、1つ又は複数個の鋼球が使用されている。
【0029】
制限装置22は施錠器20の機械的強度を補強する機械的強度を備えていれば足りるが、ここでは制限装置22の機械的強度は筐体22A及び突出部材22Dを含めて施錠器20の機械的強度よりも高く構成されている。
【0030】
また、
図3(B)に示されるように、突出部材22Dと施錠器20の施錠状態にある引き違い引き戸18との離間距離Lとされる位置に、制限装置22が配設されている。離間距離Lは、施錠器20の施錠状態おける引き違い引き戸18の最大可動位置よりも引き違い引き戸18の密閉位置に近い位置までの距離とされる。施錠器20には引き違い引き戸18の摺動方向へ摺動が許容された若干の摺動許容寸法があり、摺動許容寸法がゼロの位置が密閉位置とされ、摺動許容寸法が最も大きい位置が最大可動位置とされる。この最大可動位置を超えると、施錠器20が損傷し、又破壊される。
同様に、他方の制限装置22は、突出部材22Dと施錠器20の施錠状態にある引き違い引き戸16との離間距離Lとされる位置に配設されている。
【0031】
(本実施の形態の作用及び効果)
図1に示されるように、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、
図1及び
図2に示されるように、複数枚の隣合う引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18が建具枠12内の開口部14に摺動可能に設けられる。引き違い引き戸18と引き違い引き戸16とには施錠器20が設けられる。
図4(A)に示されるように、施錠器20は、引き違い引き戸18の召し合わせ部分24に設けられた係合部20Bと、引き違い引き戸16の召し合わせ部分24に設けられた被係合部20Cとを含んで構成される。係合部20Bが被係合部20Cに係合されると、
図1及び
図2に示されるように、開口部14が閉状態において引き違い引き戸18と引き違い引き戸16とが施錠される。
【0032】
ここで、
図1、
図2、
図3(A)及び
図4(B)に示されるように、耐震引き戸構造10は、施錠器20に加えて、制限装置22を備える。制限装置22は、施錠器20による施錠状態において揺れを感知すると、本実施の形態では引き違い引き戸18及び引き違い引き戸16の摺動を制限する。
【0033】
詳しく説明すると、地震の揺れが発生する前の状態においては、
図3(A)に示されるように、制限装置22から突出部材22Dが突出されていない。
地震の揺れが発生すると、
図4(B)に示されるように、制限装置22では、筐体22Aのガイド空間22C内において移動部材22Eが揺れに応じて矢印D方向へ移動を繰り返す。揺れにより貫通孔22Bを通して突出部材22Dが開口部14側に下がり始めると共に、移動部材22Eが移動して突出部材22Dの抜け防止部上に移動部材22Eが乗り上げ、突出部材22Dが開口部14側の矢印C方向へ押し下げられる。そして、制限装置22の保持手段が作用し、
図4(B)に二点鎖線を用いて示されるように移動部材22Eがガイド空間22Cの天壁と抜け防止部との間に挟み込まれ、
図3(B)及び
図4(B)に示されるように突出部材22Dが押し下げられた状態において保持される。この制限装置22の突出部材22Dは、施錠状態にある引き違い引き戸18の揺れに伴う摺動並びに引き違い引き戸16の揺れに伴う摺動を堰き止めて制限する。
このため、施錠器20の強度が制限装置22により補強されるので、揺れが発生した場合でも、施錠器20に作用する荷重が小さくされ、施錠器20の損傷や破壊を防止することができる。
【0034】
また、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、
図3(B)に示されるように、制限装置22の突出部材22Dは、引き違い引き戸18、引き違い引き戸16のそれぞれに対して離間距離Lを持って配設される。つまり、制限装置22が、施錠器20の施錠状態にある引き違い引き戸18の最大可動位置よりも引き違い引き戸18の密閉位置に近い位置に配設され、引き違い引き戸16の最大可動位置よりも引き違い引き戸16の密閉位置に近い位置に配設される。
このため、施錠器20に揺れに伴う荷重が加わる前に、制限装置22により引き違い引き戸18、引き違い引き戸16のそれぞれの摺動が制限されるので、揺れが発生した場合でも、施錠器20の損傷や破壊を防止することができる。
【0035】
さらに、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、制限装置22が施錠器20の強度よりも高い強度を備えるので、施錠器20の強度を制限装置22により補強し、施錠器20の損傷や破壊をより一層防止することができる。
【0036】
また、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、
図3(A)に示されるように、制限装置22が引き違い引き戸18上の摺動軌跡上、引き違い引き戸16上の摺動軌跡上にそれぞれ配設される。これにより、引き違い引き戸18本体及び引き違い引き戸16本体への制限装置22の取付け作業が不要となる。このため、引き違い引き戸18、引き違い引き戸16のそれぞれの構造や形状を問わずに、制限装置22を備えることができる。
また、住宅や建物が完成した後に、建具枠12に制限装置22を簡単に取り付けて、耐震引き戸構造10を構築することができる。
【0037】
さらに、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、
図4(B)に示されるように、制限装置22が、筐体22Aと、突出部材22Dと、保持手段とを備える。筐体22Aは建具枠12に設けられる。突出部材22Dは、揺れを感知すると、筐体22Aから建具枠12内側へ突出し、引き違い引き戸18及び引き違い引き戸16の摺動を制限する。保持手段は、突出部材22Dの突出状態を保持する。
これにより、揺れを感知すると、突出部材22Dにより引き違い引き戸18及び引き違い引き戸16の摺動が制限され、保持手段により突出部材22Dの突出状態が保持されるので、施錠器20による施錠状態を維持しつつ、施錠器20の損傷や破壊を防止することができる。
なお、地震の揺れが収まった際には、突出状態にある突出部材22Dが手動により簡単に押し上げられて、制限装置22の摺動の制限が解除される。
【0038】
従って、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10によれば、揺れが発生した場合でも、施錠器20の損傷や破壊を防止して、
図1及び
図2に示されるように、引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18の施錠状態を維持することができる。
【0039】
(第1変形例)
次に、第1実施の形態の第1変形例に係る耐震引き戸構造10について説明する。なお、第1変形例、並びに後述する第2変形例、第3変形例、第2実施の形態、第3実施の形態のそれぞれにおいて、第1実施の形態に係る耐震引き戸構造10の構成要素と同一構成要素又は実質的に同一構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
図5(A)に示されるように、第1実施の形態の第1変形例に係る耐震引き戸構造10では、2枚の引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18が設けられているが、引き違い引き戸16の摺動を制限する制限装置22だけが設けられている。引き違い引き戸18の摺動を制限する制限装置22は設けられていない。
【0041】
引き違い引き戸18の水平方向の寸法は引き違い引き戸16の同一方向の寸法に対して小さく、引き違い引き戸18の重量は引き違い引き戸16の重量に比して軽い。このため、揺れが発生した場合、施錠器20により引き違い引き戸16の摺動を制限すれば、施錠器20の損傷や破壊を防止することができる。
【0042】
変形例1に係る耐震引き戸構造10では、適切箇所に制限装置22を配設したので、制限装置22の配設個数を減少することができる。
【0043】
(第2変形例)
図5(B)に示されるように、第1実施の形態の第2変形例に係る耐震引き戸構造10では、3枚の引き違い引き戸16、引き違い引き戸18及び引き違い引き戸30が設けられている。隣合う引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18は第1実施の形態における引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18と同一構造である。
引き違い引き戸30は、引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18と同一構造並び同一サイズにより構成され、枠体30Aとガラス30Bとを含んで構成されている。隣合う引き違い引き戸30と引き違い引き戸18との間には、召し合わせ部分24において施錠器20が設けられている。
【0044】
耐震引き戸構造10は、引き違い引き戸16の摺動を制限する制限装置22と、引き違い引き戸18の引き違い引き戸16側の摺動を制限する制限装置22とを備えている。加えて、耐震引き戸構造10は、引き違い引き戸18の引き違い引き戸30側の摺動を制限する制限装置22と、引き違い引き戸30の摺動を制限する制限装置22とを備えている。すなわち、耐震引き戸構造10では、合計4個の制限装置22が配設されている。
【0045】
第2変形例に係る耐震引き戸構造10では、3枚の引き違い引き戸16、引き違い引き戸18及び引き違い引き戸30を備えているが、前述の第1実施の形態に係る耐震引き戸構造10により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
(第3変形例)
図5(C)に示されるように、第1実施の形態の第3変形例に係る耐震引き戸構造10は、前述の第2変形例に係る耐震引き戸構造10と同様に、3枚の引き違い引き戸16、引き違い引き戸18及び引き違い引き戸30を備えている。第3変形例に係る耐震引き戸構造10では、3枚の引き違い引き戸16、引き違い引き戸18及び引き違い引き戸30は、いずれも第1変形例に係る耐震引き戸構造10の引き違い引き戸18の水平方向の寸法と同一寸法に設定されている。
【0047】
このように構成される耐震引き戸構造10は、引き違い引き戸18の引き違い引き戸16側の摺動を制限する制限装置22と、引き違い引き戸18の引き違い引き戸30側の摺動を制限する制限装置22とを備えている。基本的には、軽量であるため、引き違い引き戸16、引き違い引き戸18、引き違い引き戸30の個々の摺動を制限する制限装置22は必要とされない。
施錠器20により連結された2枚の隣合う引き違い引き戸16及び引き違い引き戸18の重量は増加されるので、引き違い引き戸18の引き違い引き戸30側に制限装置22が配設されている。これにより、隣合う引き違い引き戸18及び引き違い引き戸30の召し合わせ部分24に配設された施錠器20が補強されている。
同様に、施錠器20により連結された2枚の隣合う引き違い引き戸18及び引き違い引き戸30の重量は増加されるので、引き違い引き戸18の引き違い引き戸16側に制限装置22が配設されている。これにより、隣合う引き違い引き戸18及び引き違い引き戸16の召し合わせ部分24に配設された施錠器20が補強されている。
【0048】
第3変形例に係る耐震引き戸構造10では、3枚の引き違い引き戸16、引き違い引き戸18及び引き違い引き戸30の寸法が小さいときでも、第1実施の形態に係る耐震引き戸構造10により得られる作用効果と同様に、施錠器20の損傷や破壊を防止することができるという作用効果を得ることができる。
【0049】
[第2実施の形態]
次に、
図6を用いて、本発明の第2実施の形態に係る耐震引き戸構造10について説明する。
図6に示されるように、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、制限装置22が建具枠12及び建具枠12外の下地材26にわたって配設されている。詳しく説明すると、建具枠12の建具上枠12Bのフランジとこの建具上枠12B上に設けられた下地材26とを、上下方向に貫通する取付け孔26Aが形成され、制限装置22は取付け孔26Aに埋め込んで取り付けられている。
この構成以外の構成は、前述の第1実施の形態に係る耐震引き戸構造10の構成と同一である。
【0050】
本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、前述の第1実施の形態に係る耐震引き戸構造10により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
そして、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、
図6に示されるように、制限装置22が建具枠12及び建具枠12外の下地材26にわたって配設されるので、引き違い引き戸16本体並びに引き違い引き戸18本体への制限装置22の取付け作業が不要となる。このため、引き違い引き戸16並びに引き違い引き戸18の構造や形状を問わずに、制限装置22を備えることができる。
また、住宅や建物が完成した後に、建具枠12に制限装置22を取り付けることができる。
さらに、制限装置22が建具枠12から下地材26にわたって配設されるので、制限装置22の取付け強度を向上させることができる。特に、取付け孔26Aの内壁が揺れの発生による水平方向に作用する力を抑えることができるので、制限装置22を建具上枠12Bに単純にねじ止めする場合に比して、制限装置22の水平方向に作用する力に対する取付け強度を向上させることができる。
【0052】
[第3実施の形態]
次に、
図7を用いて、本発明の第3実施の形態に係る耐震引き戸構造10について説明する。
【0053】
図7に示されるように、本実施の形態に係る耐震引き戸構造10は、第1実施の形態に係る耐震引き戸構造10の制限装置22に代えて、電気式(又は電子式)とされた制限装置32を備えている。
【0054】
制限装置32は、簡略化して示される筐体32Aと、突出部材32Cが矢印C方向に突出する電磁ソレノイド32Bと、地震による揺れを感知する揺れ感知センサ32Dと、二次電池32Eとを含んで構成されている。制限装置32では、揺れ感知センサ32Dが揺れを感知すると、二次電池32Eから電磁ソレノイド32Bへ電流が供給され、この電流の供給により電磁ソレノイド32Bの突出部材32Cが突出する構成とされている。
図示を省略するが、揺れ感知センサ32Dは、揺れを感知する加速度センサと、二次電池32Eから電磁ソレノイド32Bへの電流経路を導通させ又遮断するスイッチと、加速センサからの出力に基づいてスイッチの導通又は遮断を制御する制御部とを備えている。電流が供給されているとき、突出部材32Cの突出状態は保持される。
【0055】
本実施の形態に係る耐震引き戸構造10では、制限装置32が電気式とされているが、第1実施の形態に係る耐震引き戸構造10により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
[上記実施の形態の補足説明]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、耐震引き戸構造の制限装置が建具枠の建具上枠に取り付けられているが
、制限装置が建具枠の建具下枠に取り付けられてもよい。
なお、この点は、参考例とする。
また、本発明は、4枚以上の引き違い引き戸を有する耐震引き戸構造としてもよい。
さらに、本発明は、上記第3実施の形態に係る耐震引き戸構造において、制限装置への電流を家庭用電源や商用電源から供給してもよい。この場合、電流の供給制御に、住宅管理システム(HMS(Home Management System))、住宅エネルギ管理システム(HEMS(Home Energy Management System))又は建物エネルギ管理システム(BEMS(Building Energy Management System))を使用することができる。