(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための第1の形態(以下、「第1実施形態」と称する。)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。なお、特に説明のない限り、ウェブの幅方向を正面とする。
【0010】
図1は、塗布装置100の全体図である。
図2は、第1実施形態に係る塗布量調整装置20の正面視における断面図である。
【0011】
塗布装置100は、ウェブ200等の被塗布体に対して、比較的粘度の低い塗布液Lを塗布するのに好適な装置であり、例えば、ハードコート層、反射防止層、防眩層、プライマー層、印刷層等を形成するために適用される。
【0012】
図1に示すように、塗布装置100は、ウェブ200に塗布液Lを供給して塗布する塗布液供給装置10と、ウェブ200に塗布された塗布液Lの塗布量を整える塗布量調整装置20と、ウェブ200の搬送路に沿って設けられ位置調節可能なガイドローラ30と、を備える。
【0013】
塗布液供給装置10は、ウェブ200の搬送方向Wにおいて、塗布量調整装置20より上流側に設置される。
塗布液供給装置10は、塗布液Lを貯める液パン11と、液パン11に貯められた塗布液Lをウェブ200に塗布するピックアップロール12とを備える。
【0014】
液パン11は、塗布液Lを所定の液位まで貯めることができ、ピックアップロール12の最下部における長手方向の全域を覆う大きさの有底の容器である。液パン11に貯められた塗布液Lの液位は、ピックアップロール12の最下部が塗布液Lに浸されるようにするため、ピックアップロール12の最下部よりも高い位置となっている。
【0015】
ピックアップロール12は、ウェブ200の幅と同等かそれより大きな軸長を有する円筒状体であり、図示しない軸支部によって回転自在に支持される。ピックアップロール12の回転軸は、ウェブ200の幅方向、すなわち、ウェブ200の搬送方向Wと直交する方向に配置される。そして、ピックアップロール12は、図示しない駆動源によって回転されるか、又は、駆動源によることなく、ウェブ200の搬送に伴って従動的に回転される。
【0016】
そして、塗布液供給装置10は、ガイドローラ30によって案内されて所定の速度で搬送されるウェブ200の下面に対して、液パン11に貯められた塗布液Lを、ウェブ200の搬送に応じて回転するピックアップロール12によって連続的に塗布する。これにより、塗布液供給装置10よりも下流にある塗布量調整装置20によって調整される塗布量よりも過剰な塗布量の塗布液Lがウェブ200に塗布される。なお、ピックアップロール12の回転方向は、
図1に示すように、搬送方向Wと同方向(反時計回り)であってもよいが、搬送方向Wとは逆方向(時計回り)であってもよい。
【0017】
塗布量調整装置20は、ウェブ200の搬送方向Wにおいて、塗布液供給装置10より下流側に設置される。
塗布量調整装置20は、バー22と、バー22を支持するバーホルダ21とを備える。
【0018】
バー22は、ウェブ200に塗布された過剰な塗布液Lを取り除くものである。
バー22は、ウェブ200の幅と同等かそれより大きな軸長を有する円筒状体であり、図示しない軸支部によって回転自在に支持される。
バー22は、例えば、直径10mmの芯棒に、線径1mmのワイヤが巻回された棒状体である。
バー22は、バーホルダ21のくぼみGの表面に当接した状態となっている。なお、バー22は、図示しない軸支部によって回転自在に支持されるとともに、バーホルダ21に載置されてもよい。
バー22は、図示しない駆動源によって回転されるか、又は、駆動源によることなく、ウェブ200の搬送に伴って従動的に回転される。なお、バーホルダ21の回転方向は、搬送方向Wと同方向(反時計回り)であってもよいが、搬送方向Wとは逆方向(時計回り)であってもよい。
そして、バー22に対するガイドローラ30の位置を微調節してウェブ200の搬送路を微調節することにより、バー22の最上端が、ウェブ200には直接接することなく、ウェブ200に塗布された塗布液Lの層に食い込むような位置になっている。よって、この状態で、ウェブ200を搬送方向Wに沿って搬送することにより、上流においてウェブ200の下面に過剰に塗布された塗布液Lは、バー22によって掻き取られるようにして取り除かれるので、塗布液Lの層厚(塗布量)をウェブ200の搬送に応じて連続して調節でき、ウェブ200の長手方向に亘って均一になるように制御できる。
【0019】
バーホルダ21は、バー22を回転自在に支持するものである。バーホルダ21は、バー22と同様に、ウェブ200の幅方向、すなわち、バー22の長手方向と同方向に延びる棒状体である。バーホルダ21は、バー22を、互いに離間する長手方向に延びる二つの面(
図2において示される二点)で支持している。
【0020】
バーホルダ21は、バー22の下方に、くぼみGを有する。言い換えると、くぼみGは、バー22とバーホルダ21との間に設けられた空隙である。これにより、過剰な塗布液Lを取り除く際に塗布液Lに空気が取り込まれて気泡が発生しても、気泡はくぼみGの内側の空間に移動することが可能になる。
【0021】
くぼみGは、バー22の長手方向に沿って形成された溝である。これにより、バー22の長手方向に亘って、すなわち、ウェブ200の幅方向に亘って、いずれの箇所で気泡が発生しても、気泡はくぼみGの内側に移動することができる。
【0022】
また、くぼみGは、底部に、一端がくぼみGに連通し、他端が開放された通路Sを有する。すなわち、通路Sは、バーホルダ21を貫通している。これにより、過剰な塗布液Lを取り除く際に塗布液Lに空気が取り込まれて気泡が発生しても、気泡はくぼみGの底部に連通する通路Sを伝ってバーホルダ21を通り抜けるので、バー22の付近に滞留しない。よって、このようなバーホルダ21を備える塗布装置100によれば、気泡による塗布筋の発生をより効果的に抑制できる。
なお、くぼみGの隙間と通路Sの隙間とは、距離dを有する同じ隙間であってよい。すなわち、くぼみGが通路Sの一部であり、通路Sの一端がバー22を支持しているバーホルダ21の支持面に開放していてもよい。
なお、通路Sの開放された他端は、吸引装置(不図示)に連通してもよい。この場合、吸引装置によって通路Sの圧力を大気圧より低く制御できるので、くぼみGに滞留する気泡を、通路Sを通じて積極的に吸引できる。よって、気泡による塗布筋の発生をより効果的に抑制できる。
【0023】
さらに、通路Sは、バー22の長手方向に沿ってスリット状に形成されている。これにより、ウェブ200の幅方向に亘って、気泡による塗布筋の発生を効果的に抑制できる。
なお、通路Sは、
図2に示すような断面がアルファベットのL字状のものに限らず、断面がアルファベットのI字状、すなわち、上下方向に真っ直ぐなものであってもよい。
【0024】
ところで、バーホルダ21は、
図2に示すように、第1ホルダ部21Aと、第2ホルダ部21Bと、を備える。第1ホルダ部21A及び第2ホルダ部21Bは、別個の部材であり、それぞれ、長手方向に亘って断面が一様、すなわち、
図2に示す断面のとおりである。第1ホルダ部21Aは断面がアルファベットのL字状であり、第2ホルダ部21Bは断面がアルファベットのI字状であり、第2ホルダ部21Bは第1ホルダ部21Aの凹部に嵌るように配置される。
そして、第1ホルダ部21Aと第2ホルダ部21Bとは、ウェブ200の搬送方向W(
図2において左右方向)に距離dを空けて隙間が生じた状態で、ボルト等(不図示)によって互いに組み合わされている。そして、この隙間が通路Sとなっている。このようにして、距離dの隙間を有する通路Sが設けられたバーホルダ21を簡単に製造できる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、添付図面を参照して、本発明を実施するための第2の形態(以下、「第2実施形態」と称する。)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。なお、第2実施形態は第1実施形態に比べて、バーホルダ21の構造が異なるので、以下では、主にバーホルダ21について説明し、共通する部分は省略する場合がある。
【0026】
図3は、第2実施形態に係る塗布量調整装置40の正面視における断面図である。
第2実施形態に係る塗布量調整装置20は、第1実施形態に係る塗布量調整装置20と同様に、バー42と、バー42を支持するバーホルダ41とを備える。
【0027】
バーホルダ41は、バー42の下方に、くぼみG1を有する。言い換えると、くぼみG1は、バー42とバーホルダ41との間に設けられた空隙である。これにより、過剰な塗布液Lを取り除く際に塗布液Lに空気が取り込まれて気泡が発生しても、気泡はバー42の付近に滞留せず、くぼみGの内側の空間に移動することが可能になる。
【0028】
くぼみG1は、バー42の長手方向に沿って形成された溝である。これにより、バー42の長手方向に亘って、すなわち、ウェブ200の幅方向に亘って、いずれの箇所で気泡が発生しても、気泡はくぼみGの内側に移動することができる。
【0029】
また、くぼみG1は、底部に、一端がくぼみG1に連通し、他端が開放された通路S1を有する。すなわち、通路S1は、バーホルダ41を貫通している。これにより、過剰な塗布液Lを取り除く際に塗布液Lに空気が取り込まれて気泡が発生しても、気泡はバー42の付近に滞留せず、くぼみG1の底部に連通する通路S1を伝ってバーホルダ41を通り抜ける。よって、このようなバーホルダ41を備える塗布装置100によれば、気泡による塗布筋の発生をより効果的に抑制できる。
【0030】
ここで、第2実施形態に係るバーホルダ41は、くぼみG1に加えて、くぼみG2及びくぼみG3を有する。すなわち、バーホルダ41は、バー42の下方に有するくぼみG1の他に、バー42より上流側(
図3において右側)又はバー42より下流側(
図3において左側)に、それぞれ1以上のくぼみ(G2、G3、・・・)を有してよい。これにより、気泡による塗布筋の発生をより効果的に抑制できる。
【0031】
また、くぼみG1、くぼみG2及びくぼみG3は、それぞれの底部に、一端がくぼみG1、くぼみG2及びくぼみG3に連通し、他端が開放された通路S1、通路S2及び通路S3を有する。すなわち、通路S1、通路S2及び通路S3は、バーホルダ41を貫通している。なお、通路S1、通路S2及び通路S3は、
図3に示すように、途中で合流してそれぞれの他端が共通の場所で開放していてもよい。これにより、過剰な塗布液Lを取り除く際に塗布液Lに空気が取り込まれて気泡が発生しても、気泡はくぼみG1、くぼみG2及びくぼみG3の内側の空間から、くぼみG1、くぼみG2及びくぼみG3の底部に連通する通路S1、通路S2及び通路S3を伝ってバーホルダ41を通り抜けるので、バー42付近に滞留しない。よって、このようなバーホルダ41を備える塗布装置100によれば、気泡による塗布筋の発生をより効果的に抑制できる。
【0032】
さらに、通路S1、通路S2及び通路S3は、バー42の長手方向に沿ってスリット状に形成されている。これにより、ウェブ200の幅方向に亘って、気泡による塗布筋の発生を効果的に抑制できる。
なお、通路S1、通路S2及び通路S3は、一端がくぼみG1、くぼみG2及びくぼみG3に連通し、他端がバーホルダ41から開放されているものであれば、
図3に示すような断面のものに限らない。
【0033】
ところで、バーホルダ41は、
図3に示すように、第1ホルダ部41Aと、第2ホルダ部41Bと、を備える。第1ホルダ部41A及び第2ホルダ部41Bは、別個の部材であり、それぞれ、長手方向に亘って断面が一様、すなわち、
図3に示す断面のとおりである。第1ホルダ部41AはアルファベットのL字状の断面を有し、第2ホルダ部41BはアルファベットのI字状の断面であって、くぼみG1、くぼみG3、通路S1及び通路S3を有する。第2ホルダ部41Bは第1ホルダ部41Aの凹部に嵌るように配置される。
そして、第1ホルダ部41Aと第2ホルダ部41Bとは、ウェブ200の搬送方向W(
図2において左右方向)に距離d2およびd3を空けて隙間が生じた状態で、ボルト等(不図示)によって互いに組み合わされている。そして、この隙間が通路S2およびS3となっている。
このようにして、距離d2の隙間を有する通路S2、および距離d3の隙間を有する通路S3が設けられたバーホルダ41を簡単に製造できる。
【0034】
通路S1、通路S2及び通路S3のそれぞれの隙間の距離d1、距離d2及び距離d3は、それぞれ同じでもよいが、距離d2及び距離d3を、距離d1に比べて小さくしてもよい。これにより、発生する気泡を他端に効果的に誘導できる。
【0035】
(実施例1)
図2で示されるバーホルダ21を備える塗布装置100を用いて、試験を行った。
具体的には、直径10mmの芯棒に線径1mmワイヤが巻回されたバー22を、隙間の距離dが1mmの通路Sを有するバーホルダ21で支持し、ウェブ200として厚さ100μmのウレタンフィルムをライン速度15mm/分で搬送しながら、塗布液Lを塗布した。
塗布液Lは、トルエンを溶剤とし、フッ素系樹脂を含む粘度10mPa・s、表面張力25mN/mのコート剤とした。なお、粘度は、粘弾性測定装置(アントンパール・ジャパン株式会社製「MCR302」)の回転モードを用いて、0.1(1/s)の定常流測定で得られたせん断粘度より算出した。表面張力は、板状部材として白金プレート(協和界面科学株式会社製)を用い、垂直板法(Wilhelmy法)により測定した。なお、塗布液Lの白金プレートとの接触角はいずれも0°であった。
垂直板法(Wilhelmy法)の具体的な測定方法は以下の通りである。容器に試料液体(塗布液)を入れ、その中に板状部材の先端を垂直に浸漬し、板状部材に上方に張力Pをかける。板状部材の重量をM、板状部材の浸漬深さをh、板状部材の水平断面の面積をs、板状部材の水平断面の周囲の長さをL、液体の密度をρ、表面張力をγとすると、上向きの力(張力+浮力)と下向きの力(重力+表面張力)が次の式(1)のように均衡する。
P+shρg=Mg+Lγ ・・・(1)
この式(1)を変形した式(2)より、試料液体の表面張力γ(mN/m)が求められる。
γ=(P+shρg−Mg)/L ・・・(2)
また、バー22の回転数は、90rpm(逆転)とした。
塗布膜の厚さは約50μm(乾燥前)とし、塗布長さは、1000mとした。
結果、得られた塗布膜を目視で観察したところ、気泡起因の塗布筋の発生はみられなかった。
【0036】
(実施例2)
ライン速度を20m/分とした以外は、実施例1と同様にして塗布液Lを塗布した。
結果、得られた塗布膜を目視で観察したところ、気泡起因の塗布筋の発生はみられなかった。
【0037】
(実施例3)
トルエンを溶剤とし、アクリル樹脂を含む粘度30mPa・s、表面張力25mN/mのコート剤を塗布液として用いた以外は実施例1と同様にして塗布液Lを塗布した。
結果、得られた塗布膜を目視で観察したところ、気泡起因の塗布筋の発生はみられなかった。
【0038】
(実施例4)
実施例1のバーホルダ21の通路Sにおける隙間の距離dを0.5mmに変えた以外は、実施例1と同様にして塗布液Lを塗布した。
結果、得られた塗布膜を目視で観察したところ、気泡起因の塗布筋の発生はみられなかった。
【0039】
(比較例1)
通路Sを有さないバーホルダ21を用いた以外は、実施例1と同様にして塗布液Lを塗布した。
結果、塗布開始直後に気泡起因の塗布筋が発生した。
【0040】
(比較例2)
通路Sを有さないバーホルダ21を用いた以外は、実施例3と同様にして塗布液Lを塗布した。
結果、塗布開始直後に気泡起因の塗布筋が発生した。
【0041】
このように、実施例1〜4及び比較例1〜2の結果により、通路Sにおける隙間の距離dが1mm又は0.5mmである場合において、気泡に起因する塗布筋の発生を抑制する効果が明らかに得られた。
【0042】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0043】
本発明の塗布装置100によれば、ウェブ200に塗布液Lを塗布する塗布装置100において、ウェブ200に塗布された過剰な塗布液Lを取り除くバー22と、バー22を回転自在に支持するバーホルダ21と、を備え、バーホルダ21は、バー22の下方に、くぼみGを有するので、気泡による塗布筋の発生を抑制でき、ウェブ200への塗布液Lの塗布欠陥を低減できる。