(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989106
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ファイル
(51)【国際特許分類】
B42F 21/06 20060101AFI20211220BHJP
【FI】
B42F21/06 R
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-132402(P2017-132402)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-14122(P2019-14122A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】301032735
【氏名又は名称】プラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】特許業務法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】戸坂 妃那
【審査官】
金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−070577(JP,U)
【文献】
特開平11−192794(JP,A)
【文献】
特開2017−100373(JP,A)
【文献】
特開2010−111108(JP,A)
【文献】
特許第4018451(JP,B2)
【文献】
登録実用新案第3012188(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0141810(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00 −15/00
15/04−19/00
B42F 1/00 −23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表紙面を備える表紙部と、
裏表紙面を備える裏表紙部と、
背表紙面を備える背表紙部と、
シート材からなり、上下方向を長手方向とする略長方形状であり、前記表紙面若しくは前記裏表紙面の何れかから前記背表紙面に亘って設けられ、又は、前記背表紙面を介して前記表紙面から前記裏表紙面に亘って設けられ、又は、前記背表紙面に設けられ、前記表紙部と前記裏表紙部が開いた状態における小口側に開口部が設けられるポケット部と、
を有し、
前記開口部の縁部は、前記小口よりも前記背表紙面寄りの位置に設けられることを特徴とするファイル。
【請求項2】
前記開口部の外面側の縁部は、外方向にせり上がるガイド部を備えることを特徴とする請求項1に記載のファイル。
【請求項3】
前記ガイド部は、小口側最端部に設けられることを特徴とする請求項2に記載のファイル。
【請求項4】
前記開口部の外面側の縁部近傍には、前記ポケット部の外面側から打ち付けられるプレス加工により形成される線状溝を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか記載のファイル。
【請求項5】
前記開口部の外面側の縁部には、切欠部が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか記載のファイル。
【請求項6】
前記開口部の外面側の縁部は、曲線状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか記載のファイル。
【請求項7】
前記ポケット部は、小口側が緩やかな凸円弧状に形成される一対の前記シート材の先端側の一部を重ねて前記表紙面及び前記裏表紙面に溶着して形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか記載のファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類等を収容するファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファイルの内容等を表示する台紙を挿抜可能なポケット部を背表紙面に備えるファイルが開示されている。例えば、特許文献1に開示されるファイルには、シート材からなるポケット部が背表紙面に設けられる。このポケット部は、ファイルの上方から台紙を挿抜できるように、ポケット部の上部に開口部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4018451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポケット部に挿抜される台紙は、一般的には、特許文献1に示されるように、横方向の長さよりも上下方向の長さが数倍程度長い。そして、この台紙は、一般的な厚みの紙で形成される。すると、ポケット部に台紙を挿入する際、台紙が折れる場合があり、使用者は台紙の挿入時に慎重に作業をする必要があった。
【0005】
本発明は、ファイルの内容等を背表紙面に表示する台紙を挿抜可能なポケット部に対して台紙の挿入がし易いファイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るファイルは、表紙面を備える表紙部と、裏表紙面を備える裏表紙部と、背表紙面を備える背表紙部と、シート材からなり、前記表紙面若しくは前記裏表紙面の何れかから前記背表紙面に亘って設けられ、又は、前記背表紙面を介して前記表紙面から前記裏表紙面に亘って設けられ、又は、前記背表紙面に設けられ、前記表紙部と前記裏表紙部が開いた状態における小口側に開口部が設けられるポケット部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ファイルの内容等を背表紙面に表示する台紙を挿抜可能なポケット部に対して、台紙を容易に挿入することができるファイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るファイルを示す表紙面側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るファイルを示す裏表紙面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るファイルのポケット部を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るファイルのポケット部を示す
図3のIV−IV断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るファイルのポケット部の変形例を示す図であり、(a)は変形例1を示す正面図であり、(b)は変形例2を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るファイルのポケット部の変形例を示す図であり、(a)は変形例3を示す正面図であり、(b)は変形例4を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1及び
図2に示すファイル1は、内部に透明な樹脂製の薄いシートを重ねて袋状に形成した収納シート3を複数備える、いわゆるクリアファイルである。収納シート3を内部に納めるファイル1のファイル本体5は、長矩形状の1枚の樹脂製板材から形成される。ファイル本体5は、長矩形状の樹脂製板材の略中央部における短辺に平行な方向に、内側に所定の間隔で施した2本の溝が折り曲げられて折り曲げ部5a,5bを形成する。
【0010】
折り曲げ部5a,5bで折り曲げられたファイル本体5は、背表紙部6と、表紙部7及び裏表紙部8が形成される。ここで、以下の説明においては、背表紙部6側を背D1とし、その反対側を小口D2として説明する。そして、本実施形態で示すファイル1は、収納シート3にA4サイズの書類を縦向きに収納できる左開きのファイルであり、背表紙部6の幅は約10mm程度である。
【0011】
背表紙部6、表紙部7及び裏表紙部8は、それぞれの表面が背表紙面6a、表紙面7a、裏表紙面8aとされる。そして、ファイル本体5には、上下方向を長手方向とする略長矩形状のポケット部10が設けられる。ポケット部10は、ポケット部10の短辺方向が表紙面7aから背表紙面6aに亘って設けられる。ポケット部10は、透明な樹脂製のシート材からなる一対の第1シート11と第2シート12の2枚がファイル本体5に熱溶着されて形成される。第1シート11と第2シート12は、それぞれファイル本体5の折り曲げ部5a,5bにて折り曲げられる。そして、ポケット部10には、小口D2側に開口部13が形成される。
【0012】
ポケット部10は、開口部13から、二点鎖線で示す紙製の台紙20を挿抜可能とされている。台紙20は、例えば紙材料により形成して表面にファイル1の収納シート3に収納する書類の種別等を記載しておくことができる。台紙20の挿抜は、ファイル本体5を開いた状態で行う。
【0013】
ポケット部10の第1シート11と第2シート12は、対称に形成される。
図1、
図2及び
図3にも示すように、第1シート11及び第2シート12は、それぞれ、小口D2側が緩やかな凸円弧状の曲線部11a,12aとされて、その反対側は直線状の直線部11b,12bとされ、直線状の基辺部11c,12cから先端に掛けて幅狭化するよう形成される。ファイル本体5への取付けは、第2シート12が第1シート11の上側となるように第1シート11と第2シート12の先端側の一部が重ねられ、基辺部11c,12cにおける小口D2側端部の一部が表紙面7aに熱溶着され、直線部11b,12bは裏表紙面8aに熱溶着される。従って、基辺部11c,12cの熱溶着部(小矩形が直線状に複数表されている部分)と直線部11b,12bとの間は熱溶着されずに表紙面7aと第1シート11、第2シート12が離間可能な部位が形成される。これにより、ファイル1が閉じたときには第1シート11及び第2シート12が適度に張った状態となり、ファイル1が開くときには表紙面7aと第1シート11、第2シート12が離間して、第1シート11及び第2シート12に過度に力が加わって熱溶着部が剥がれる等の不具合が低減される。
【0014】
さらに、基辺部11c,12cと曲線部11a,12aとの接続部近傍における曲線部11a,12aには、切欠部11a1,12a1が設けられる。この切欠部11a1,12a1により、曲線部11a,12a側から第1シート11及び第2シート12をそれぞれ外方向に持ち上げた際に、熱溶着部に引っ張られて基辺部11c,12c付近の曲線部11a,12aが破損してしまうことが低減される。そして、切欠部11a1,12a1から先端方向に向けて、開口部13の外面側の縁部近傍には線状溝11d,12dが形成される。線状溝11d,12dは、曲線部11a,12aと略同一の曲率の凸円弧状に形成される。
【0015】
線状溝11d,12dは、ポケット部10の第1シート11、第2シート12の外面側から、例えばプレス加工により線状のダイを押し付けるようにして形成される。すると、
図4に示すように、線状溝12dよりも小口D2側は、表紙面7aから外方向(
図4では上方向)にせり上がるガイド部12eが形成される。このように、開口部13において、表紙面7aと第2シート12の下面との間に隙間が形成される。従って、台紙20をポケット部10に挿入する際に、台紙20をスムーズに挿入することができる。なお、
図4は第2シート12についての断面図であるが、第1シート11も同様である。
【0016】
なお、線状溝11d,12dは、ガイド部11e,12eを形成することが出来ればよく、例えば、多数の針を点状に打ち付けて縁部をせり上がらせて形成したり、シートの成形時に金型により形成したりすることもできる。しかしながら、プレス加工により線状溝11d,12dを形成すれば、第1シート11及び第2シート12をシート材から打ち抜いて製作するときに同時に線状溝11d,12dを形成する加工を施すことができ、製作に掛かる時間を短縮することができる。線状溝11d,12dの縦断面における形状は、
図4に示す凹状の円弧状の他、U字状やV字状等種々の形状とすることができる。
【0017】
すなわち、第1シート11及び第2シート12と表紙部7の表紙面7aとで形成されるポケット部10の小口D2側に形成される開口部13における外面側である第1シート11及び第2シート12の最端部の縁部を外方向にせり上がるようにしてガイド部11e,12eを形成した。換言すると、
図3に示すように、開口部13のうち、上下方向を長手方向とする長矩形状の台紙20を挿入する際に最初に挿入される部位にガイド部11e,12eを形成した。これにより、第1シート11及び第2シート12と表紙面7aとの間に十分な隙間が形成されて、台紙20の挿入側端部はこの隙間に最初にガイドされて挿入されるので、以後は第1シート11及び第2シート12の間にスムーズに挿入されることとなる。
【0018】
さらに、ポケット部10は、小口D2側に開口部13が形成されているので、台紙20を横方向から挿入することとなる。従って、台紙20の挿入時において台紙20が折れてしまう等の不具合を低減することができる。
【0019】
また、本実施形態に係るポケット部10は、第1シート11と第2シート12を一部重ねると共に、ポケット部10の小口D2側を緩やかな凸円弧状とした。これにより、第2シート12に紙を仮挿ししておくことができると共に、曲線部11a,12aを備えることで意匠性の高いポケット部を備えたファイル1とすることができる。
【0020】
次に、ポケット部10の変形例を、図に基づいて説明する。
(変形例1)
図5(a)に示すポケット部10Aは、1枚の樹脂製のシート材から形成される。ポケット部10Aは、長手方向をファイル1の上下方向とした略長矩形状とされるシート11Aの両側の短辺部11Acの一部と、図示しない長手方向の背D1側の長辺部が、それぞれ表紙面7a及び裏表紙面8aと溶着されている。そして、開口部13Aの外面側の縁部は、直線部11Aaとされている。直線部11Aaの両端には切欠部11Aa1が形成されて、この切欠部11Aa1を接続するように線状溝11Adが設けられる。線状溝11Adが形成されることで、外方向にせり上がるガイド部11Aeが形成される。ガイド部11Aeは、開口部13Aの小口側(
図5(a)における右側)縁部の最端部に形成される。
【0021】
(変形例2)
図5(b)に示すポケット部10Bは、上述の変形例1の開口部13Aの外面側の縁部が直線状であるのに対して、開口部13Bの外面側の縁部を対称な凸円弧状の曲線部11Baとした。そして、シート11Bの短辺部11Bcと曲線部11Baの接続部近傍における曲線部11Baの両端に形成される切欠部11Ba1からは、所定長さの線状溝11Bdが設けられる。これにより、開口部13Bには、小口側(
図5(b)における右側)縁部の最端部にガイド部11Beが形成される。
【0022】
(変形例3)
図6(a)に示すポケット部10Cは、開口部13Cの縁部を凹円弧状の曲線部11Caとした。本変形例においても、シート11Cの短辺部11Ccと曲線部11Caの接続部近傍における曲線部11Caの両端に形成される切欠部11Ca1から線状溝11Cdが所定長さ設けられ、小口側(
図6(a)における右側)縁部の最端部にガイド部11Ceが形成される。
【0023】
(変形例4)
図6(b)に示すポケット部10Dは、開口部13Dの縁部を凸円弧状の曲線部11Daとした。本変形例においても、シート11Dの短辺部11Dcと曲線部11Daの接続部近傍における曲線部11Daの両端には切欠部11Da1が形成されるが、線状溝11Ddは、曲線部11Daの頂部近傍に所定長さ設けられて、これにより小口側(
図6(b)における右側)縁部の最端部にガイド部11Deが形成される。
【0024】
図5(a),(b)、
図6(a),(b)で示すように、ポケット部の開口部の形状は、種々の形態を採用することができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態によって限定されることは無く、種々の形態で実施することができる。例えば、本実施形態においては、1枚又は2枚のシート材をファイル本体5に固定してポケット部10,10A〜10Dを形成したが、これに限られず、例えば2枚のシート材を貼り合わせて袋状に形成したものをファイル本体5に熱溶着等で固定することでポケット部を形成することができる。また、本実施形態のポケット部10,10A〜10Dは、表紙面7aから背表紙面6aに亘って形成したが、背表紙面6aを介して表紙面7aから裏表紙面8aに亘って台紙20が挿入されるよう形成することができるし、背表紙面6aのみに形成することもできる。ポケット部が何れの箇所に形成された場合でも、ポケット部の開口部は、表紙部と裏表紙部が開いた状態における小口側に形成される。この場合、ポケット部の両側2箇所に開口部を設けても良いし、一方側のみ開口部を設けることができる。さらに、本実施形態ではA4サイズのクリアファイルについて説明したが、様々な大きさのファイルに適用することができるし、リングファイルやバインダー等の各種ファイルにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ファイル 3 収納シート
5 ファイル本体 5a 折り曲げ部
5b 折り曲げ部 6 背表紙部
6a 背表紙面 7 表紙部
7a 表紙面 8 裏表紙部
8a 裏表紙面
10,10A,10B,10C,10D ポケット部
11 第1シート
11A,11B,11C,11D シート
11Aa 直線部
11Ba,11Ca,11Da 曲線部
11Aa1,11Ba1,11Ca1,11Da1 切欠部
11Ac,11Bc,11Cc,11Dc 短辺部
11Ad,11Bd,11Cd,11Dd 線状溝
11Ae,11Be,11Ce,11De ガイド部
11a 曲線部 11a1 切欠部
11b 直線部 11c 基辺部
11d 線状溝 11e ガイド部
12 第2シート 12a 曲線部
12a1 切欠部 12b 直線部
12c 基辺部 12d 線状溝
12e ガイド部
13,13A,13B,13C,13D 開口部
20 台紙 D1 背
D2 小口