【文献】
KESSLER J H,THE JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE,米国,ROCKEFELLER UNIVERSITY PRESS,2001年,VOL:193, NR:1,PAGE(S):73 - 88,http://jem.rupress.org/content/jem/193/1/73.full.pdf,IN THE WIDELY EXPRESSED TUMOR ANTIGEN PRAME BY PROTEASOME-MEDIATED DIGESTION ANALYSIS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
場合により少なくとも1つのリンカーをさらに含む、Fc受容体;IgA、IgD、IgG、IgE、及びIgMを含む、Fcドメイン;IL−2又はIL−15を含むサイトカイン;毒素;抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD5抗体、抗CD16抗体、又は抗CD56抗体、又はその抗原結合断片を含む、抗体又はその抗原結合断片;CD247(CD3ζ)、CD28、CD137、CD134ドメイン、又はその組合せから場合により選択された1つ以上の融合成分(群)をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項記載のTCR。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、成熟樹状細胞を使用したプライミングアプローチの概略図を示す。PRAMEを用いてトランスフェクトした成熟樹状細胞を使用して、健康な自己ドナーのレパートリー内においてPRAME特異的CD8T細胞を新規に誘導した。
【
図2】
図2は、ペプチド(PRAME
100〜108「VLDペプチド」又は陰性対照としてのPRAME
300〜309「ALYペプチド」、n.d.=検出されず)の積載されたT2細胞と共培養されたPRAME
100〜108特異的T細胞クローンT4.8−1−29のマルチプレックスサイトカイン(IFNγ、IL−2、TNFα、IL−5、IL−10、IL−6、IL12p70、IL−4、IL−1β)分泌分析を示す。T4.8−1−29は、配列番号1に示されるようなそのTCRα鎖可変領域のCDR3を有することによって、及び/又は、配列番号2に示されるようなそのTCRβ鎖可変領域のCDR3を有することによって特徴付けられる。
【
図3】
図3は、HLA−A
*02:01を発現している様々なヒト腫瘍細胞株と共培養されたPRAME
100〜108特異的T細胞クローンT4.8−1−29からのIFNγ遊離を示し、
図3の説明文に示されているように、腫瘍細胞株のいくつかは、PRAMEを発現している(緑色の棒グラフ)。PRAMEを発現していない腫瘍細胞株は、陰性対照としての役目を果たす(赤色の棒グラフ)。陽性対照:「VLDペプチド」の積載されたT2細胞(黒色の棒グラフ)、刺激を行なわないT細胞のバッググラウンドは、白色の棒グラフによって示される(「n.d.=検出されず」)。
【
図4】
図4は、滴定量のPRAME
100〜108ペプチドの積載されたT2細胞と共培養されたPRAME
100〜108特異的T細胞クローンT4.8−1−29のIFNγ遊離を示す。点線は、試験されたT細胞クローンの機能的結合力の尺度である、最大半量のIFNγ分泌をもたらす10
−9〜10
−10モル/L[M]のペプチド濃度を示す。
【
図5】トランスジェニックTCRの対形成及び機能性を証明するために、PRAME
100〜108(VLD)ペプチドの積載されたT2細胞又は無関係のペプチドの積載されたT2細胞と共培養した、PRAME
100〜108特異的TCR T4.8−1−29のトランスフェクトされたレシピエントCD8
+T(レシピエントT細胞クローン+T4.8−1−29ivtRNA)細胞の特異的IFNγ遊離を、標準的なELISAによって測定した。
【
図6】
図6は、標準的なELISAを使用して測定された、自己ペプチドの積載された(計131個の遍在的な自己ペプチドがHLA−A
*02:01によりコードされる分子に結合している)T2細胞と共培養された、PRAME
100〜108特異的TCR T4.8−1−29を発現するように工学操作されたPRAME
100〜108特異的CD8+の豊富なPBMCからの特異的なIFN−γ遊離を示す。
【
図7】
図7は、PRAME
100〜108特異的TCR T4.8−1−29を発現するように工学操作されたCD8+の豊富なPBMCによる、PRAME
100〜108ペプチド(「VLDペプチド」)又は無関係なペプチドSLLQHLIGL(「SLLペプチド」)のいずれかを積載されたT2細胞の溶解を示す。
【
図8-1】
図8は、PRAME
100〜108特異的TCR T4.8−1−29を発現しているヒトPBMCによる、PRAME
100〜108を発現している標的細胞の溶解を示す。(A)追加的にPRAME
100〜108ペプチド(「VLDペプチド」)の積載された、HLA−A
*02:01のトランスフェクトされた内因性PRAME陽性ヒトK562腫瘍細胞の溶解。(B)陰性対照としてのPRAMEをコードしているivtRNAを用いて追加的にトランスフェクトされたHLA−A
*02陰性で内因性PRAME陽性のヒトK562細胞は溶解されない。(C)は、PRAMEをコードしているivtRNAを用いて追加的にトランスフェクトされた、HLA−A
*02のトランフェクトされた内因性PRAME陽性のヒトK562細胞の溶解を示す。(D)は、HLA−A
*02のトランフェクトされた内因性PRAME陽性のヒトK562の溶解を示す。
【
図8-2】
図8は、PRAME
100〜108特異的TCR T4.8−1−29を発現しているヒトPBMCによる、PRAME
100〜108を発現している標的細胞の溶解を示す。(A)追加的にPRAME
100〜108ペプチド(「VLDペプチド」)の積載された、HLA−A
*02:01のトランスフェクトされた内因性PRAME陽性ヒトK562腫瘍細胞の溶解。(B)陰性対照としてのPRAMEをコードしているivtRNAを用いて追加的にトランスフェクトされたHLA−A
*02陰性で内因性PRAME陽性のヒトK562細胞は溶解されない。(C)は、PRAMEをコードしているivtRNAを用いて追加的にトランスフェクトされた、HLA−A
*02のトランフェクトされた内因性PRAME陽性のヒトK562細胞の溶解を示す。(D)は、HLA−A
*02のトランフェクトされた内因性PRAME陽性のヒトK562の溶解を示す。
【
図9】
図9は、T細胞受容体のα鎖及びβ鎖の有用な例のアミノ酸配列(配列番号11及び12)、並びに、ヒトPRAMEのアミノ酸配列(配列番号33)を示す。α鎖及びβ鎖におけるCDR1配列及びCDR2配列には下線が付され、CDR3配列は灰色かつ大文字であり、可変領域は通常のフォントであり、定常領域はイタリック体である。
【
図10】
図10は、活性化により誘導されるIFNγの遊離によって示されそして標準的なELISAによって測定されるような、TCR T4.8−1−29HLA−A
*02を発現しているCD8+の豊富なPBMCによる、様々なHLA−A
*02及びPRAME陽性腫瘍細胞株の認識を示す。
【
図11】
図11は、健康なドナーの形質導入されていないPBMC、及び、本明細書に記載のTCT T4.8−1−29構築物を含有しているプラスミドを用いて形質導入された健康なドナーの同PBMCを示す。
【
図12】
図12は、T細胞クローンT4.8−1−29(点線の曲線)又はT4.8−1−29を用いて形質導入されたエフェクターPBMC(実線の曲線)のいずれかを、ペプチドの積載されたT2細胞と共培養した後の、IFNγ分泌の検出によって測定されるような、PRAME
100〜108(VLD)ペプチドに対する機能的なT細胞の結合力を示す。
【
図13】
図13は、T4.8−1−29の形質導入されたエフェクターPBMC及び形質導入されていない対照PBMCの抗原特異性の分析を示す。腫瘍細胞株OPM−2及びU937(HLA−A2陰性及びPRAME陰性)を、改変させずに、又はHLA−A2をコードしているivtRNAを用いてトランスフェクトしてのいずれかで試験した。
【
図14】
図14は抗原特異性の分析を示し、T4.8−1−29の形質導入されたエフェクターPBMC及び形質導入されていない対照PBMCを、様々な標的細胞株と共培養した。腫瘍細胞株K562(HLA−A2陰性及びPRAME陽性)、並びに、K562_A2及びMel624.38(HLA−A陽性及びPRAME陽性)及び647−V(HLA−A2陽性及びPRAME陰性)を試験した。
【
図15】
図15は、細胞のライブイメージングを可能とする顕微鏡に基づいたシステムであるIncuCyte ZOOM(登録商標)(生細胞分析システム)(エッセンバイオサイエンス社)を使用した、腫瘍細胞に対するT4.8−1−29の形質導入されたエフェクターの細胞障害活性の分析を示す。
【
図16】
図16は、T4.8−1−29を発現しているPBMCの安全性プロファイルの分析を示す。
【0018】
詳細な説明
本発明者らは、腫瘍関連抗原(TAA)PRAMEを発現している細胞を特異的に認識することができ;そして、サイトカインの産生及び標的細胞の細胞溶解などの有利なエフェクター機能を示す、T細胞クローンを同定した。それ故、該T細胞クローン及びそれらのT細胞受容体は、非常に特異的かつ効果的ながんの処置のための有望なツールである。したがって、同定されたPRAME特異的TCRは、がんの養子T細胞療法に適している。高度に特異的にPRAMEに結合することのできるTCRの同定は、エクスビボにおいてT細胞を「武装化」しドナーにそれらを再導入することを可能とし、そこでそれらはPRAMEを発現しているがん細胞を効果的に認識し特異的に排除することができる。さらに、本明細書において提供される新規なTCRの抗原結合領域を使用して、直接投与のために容易に利用可能であるさらなる機能的な部分(例えば、薬物、標識、又は他の免疫細胞を誘引するさらなる結合ドメイン)を含む可溶性構築物を設計することができる。
【0019】
可変領域
CDR3ドメイン
第一の態様では、したがって、本発明は、(i)CAVHSTAQAGTALIF(配列番号1)の配列を含むか若しくはからなるT細胞受容体α鎖CDR3、及び/又は(ii)CASSTHRGQTNYGYTF(配列番号2)のアミノ酸配列を含むか若しくはからなるT細胞受容体β鎖CDR3を含む、T細胞受容体(TCR)に関する。
【0020】
本明細書においてさらに、配列番号1に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか若しくはからなるCDR3α、及び/又は、配列番号2に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか若しくはからなるCDR3βを含む、TCR配列変異体が考えられ;ただし、TCRは、添付の実施例において評価されたTCRの有益な能力を保持し、すなわち、本明細書に明記された抗原標的に結合することができる。
【0021】
本明細書において使用する「T細胞受容体」すなわち「TCR」という用語は、天然TCR、並びにTCR変異体、断片、及び構築物を含む。したがって、該用語は、場合によりさらなるドメイン及び/又は部分を含む;TCRα鎖及びβ鎖を含むヘテロ二量体、並びに、多量体及び一本鎖構築物を含む。
【0022】
TCRは、その天然形では、T細胞の表面上にいくつかのタンパク質の複合体として存在する。T細胞受容体は、2本の(別々の)タンパク質鎖から構成され、これは独立したT細胞受容体のα及びβ(TCRα及びTCRβ)遺伝子から生成され、アルファ鎖(α鎖)及びベータ鎖(β鎖)と呼ばれる。TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン様(Ig)可変(V)ドメイン/領域、1つのIg定常様(C)ドメイン/領域、形質膜に鎖をアンカーする膜貫通領域/細胞膜横断領域、及びC末端における短い細胞質内尾部を有する。
【0023】
抗原特異性は、α鎖及びβ鎖の可変領域によって付与される。TCRα鎖及びβ鎖の両方の可変ドメインは、フレームワーク(FR)領域によって囲まれた、3つの超可変領域又は相補性決定領域(CDR1α/β、CDR2α/β、及びCDR3α/β)を含む。CDR3は、抗原の認識及び特異性(すなわち、特定の抗原を認識しかつ相互作用する能力)の主な決定基であり、CDR1及びCDR2は主に、抗原性ペプチドを提示しているMHC分子と相互作用する。
【0024】
天然TCRは、抗原提示細胞の表面における主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した(「提示された/示された」)抗原性ペプチドを認識する。MHC分子上に提示された抗原性ペプチドは、本明細書において「ペプチド:MHC複合体」とも呼ばれる。MHC分子には2つの異なるクラス(MHC I及びMHC II)が存在し、これは、異なる細胞区画に由来するペプチドを提示する。MHCクラスI分子は、ヒトの身体全体の全ての有核細胞の表面上に発現され、細胞内区画に由来するペプチド又はタンパク質断片を細胞障害性T細胞に提示する。ヒトでは、MHCはヒト白血球抗原(HLA)とも呼ばれる。MHCクラスIには主に3つの種類が存在する:HLA−A、HLA−B、及びHLA−C。一旦TCRがその特定のペプチド:MHC複合体に結合すると、T細胞は活性化され、生物学的エフェクター機能を発揮する。
【0025】
本明細書において提供されるTCRは有利には、以下に詳細に考察されるように、PRAME、特にそのMHC結合形のPRAME
100〜108を(特異的に)認識することができる。抗原性ペプチドは、それがMHC分子と複合体を形成した場合に(これは、樹状細胞又は腫瘍細胞などの抗原提示細胞の表面上に存在していても、又は、それは例えばビーズ若しくはプレートにコーティングされることによって固定化されていてもよい)、その「MHC結合形」で存在すると言われる。
【0026】
CDR1ドメイン及びCDR2ドメイン
以前に示されているように、本発明のTCRは、MHC分子、特にMHC−I分子、特にHLA−A、好ましくはHLA−A
*02、特に対立遺伝子HLA−A
*02:01によってコードされるHLA−A2分子上に提示されると、それらの抗原標的PRAME
100〜108を認識すると考えられる(T細胞又はTCRは、特定のMHC分子に「拘束」されると言われる)。また、本発明のTCRは、他のHLA−A
*02対立遺伝子上に提示されたそれらの抗原標的を認識すると考えられ得る。以前に記載されているように、TCRα鎖及びβ鎖のCDR1及びCDR2は主にMHCの認識に関与していると考えられる。HLA−A
*02拘束性の抗原認識に関与していることが知られているCDR1配列及びCDR2配列の「プール」は限定され、本発明のCDR3ドメインは原則的に配列番号34〜224に示されるCDR1ドメイン及びCDR2ドメインのいずれとも組み合わせることができると考えられ、ただし、TCRは、その抗原標的、好ましくはそのHLA−A
*02結合形のその抗原標的を認識するその能力を、添付の実施例において評価されたTCRと類似しているか、同じであるか、又はさらにはより高い程度で保持している。CDR1ドメイン及びCDR2ドメインの有用な例としては、配列番号5に示されるようなVSGLRG配列を含むか又はからなるCDR1α、配列番号3に示されるようなLYSAGEE配列を含むか又はからなるCDR2α、配列番号6に示されるようなSGDLS配列を含むか又はからなるCDR1β、及び配列番号4に示されるようなYYNGEE配列を含むか又はからなるCDR2βが挙げられる。該CDR配列は
図9にも示される。
【0027】
前記に従って、本発明はとりわけ、2本のポリペプチド鎖を含むTCRを提供し、その各々はTCRの少なくとも1つの相補性決定領域(すなわち、特にCDR3、好ましくはCDR1及び/又はCDR2)を含むヒト可変領域を含む。特に有益な特性(添付の実施例に示されているような)を有するTCRは、配列番号5のアミノ酸配列を含むか又はからなるCDR1(CDR1α)、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又はからなるCDR2(CDR2α)、及び配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなるCDR3(CDR3α)を含む第一のポリペプチド鎖、並びに、配列番号6のアミノ酸配列を含むか又はからなるCDR1(CDR1β)、配列番号4のアミノ酸配列を含むか又はからなるCDR2(CDR2β)、及び配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなるCDR3(CDR3β)を含む第二のポリペプチド鎖を含む。
【0028】
完全可変領域
本発明はさらに、配列番号15に示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはからなるTCRα鎖可変領域、及び/又は、配列番号16に示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはからなるTCRβ鎖可変領域を含む、TCRを提供する。該α鎖配列及びβ鎖配列は
図9にも示されている(通常のフォント)。
【0029】
配列番号15に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、及び/又は、配列番号16に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか又はからなるTCRβ鎖可変領域を含む、TCR配列変異体も本明細書において考えられ;ただし、TCRは、添付の実施例において評価されているTCRの有益な能力を保持し、すなわち、本明細書に明記されている抗原標的に結合することができる。
【0030】
接触領域
TCRはさらに、そのα鎖及び/又はβ鎖に定常(C)領域を含んでいてもよい。定常領域は、ヒト定常領域であり得るか又は別の種に由来し得、これにより「キメラ」TCRが生じる。例えば、ヒトα鎖及び/又はβ鎖は、TCRα鎖及びβ鎖の選択的な対形成及びCD3共受容体とのより安定な会合を支持することによって、ヒトTCRの表面発現を増強させることが判明しているそれらのマウス対応物によって置換(「マウス化」)されていてもよい。α鎖の適切な定常領域は、例えば、配列番号17(ヒト)、19(最小限にマウス化されている)及び21(マウス)から選択され得る。β鎖の適切な定常領域は、配列番号18(ヒト)、20(最小限にマウス化されている)及び22(マウス)から選択され得る。本明細書の「TCR配列変異体」の章にさらに説明されているように、完全ヒト定常領域をそれらのマウス対応物によって置き換える代わりに、ヒト定常領域内のいくつかのアミノ酸のみを、マウス定常領域の対応するアミノ酸と交換することも可能である(「最小限のマウス化」)。
【0031】
α鎖及びβ鎖
本発明のTCRの有用な例としては、配列番号7、9、11又は13に示されているようなアミノ酸配列を含むか又はからなるα鎖と、配列番号8、10、12又は14に示されているようなアミノ酸配列を含むか又はからなるβ鎖とを含むTCRが挙げられる。したがって、本発明はとりわけ、配列番号7に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるα鎖と、配列番号8に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるβ鎖とを含むか又はからなるTCR;配列番号9に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるα鎖と、配列番号10に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるβ鎖とを含むか又はからなるTCR;配列番号11に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるα鎖と、配列番号12に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるβ鎖とを含むか又はからなるTCR(両方共が
図9にも示されている);及び、配列番号13に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるα鎖と、配列番号14に示されるようなアミノ酸配列を含むか又はからなるβ鎖とを含むか又はからなるTCRを提供する。
【0032】
配列番号7、9、11、若しくは13に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むα鎖、及び/又は、配列番号8、10、12、若しくは14に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか若しくはからなるTCRβ鎖を含むTCR配列変異体も本明細書において考えられ;ただし、TCRは、添付の実施例において評価されているTCRの有益な能力を保持し、すなわち、本明細書に明記されている抗原標的に結合することができる。
【0033】
抗原標的
本明細書において提供されるTCRは有益には、(ヒト)PRAMEに結合することができる。PRAME(腫瘍において優先的に発現されている悪性黒色腫抗原、Uniprotアクセッション番号P78395)は、MAPE(腫瘍において優先的に発現されている悪性黒色腫抗原)及びOIP4(OPA相互作用タンパク質4)とも称されるが、これは機能が不明な精巣癌抗原(CTA)であると報告されている。
【0034】
特に、本発明は、配列番号33(
図9)に太文字で示されているようなPRAMEアミノ酸配列のアミノ酸位置100〜108に対応するアミノ酸配列内に含まれるエピトープに(特異的に)結合することができるTCRを提供する。配列番号32に示されるようなアミノ酸配列からなるPRAMEペプチドは本明細書において、PRAME
100〜108又は「抗原標的」又は「VLDペプチド」とも称される。本明細書の何処かで示されているように、本発明のTCRは好ましくは、MHC、特にHLA−A
*02に結合するとPRAME
100〜108を認識するだろう。
【0035】
開示に従って使用される「位置」という用語は、本明細書に示されるアミノ酸配列内のアミノ酸の位置、又は本明細書に示される核酸配列内のヌクレオチドの位置のいずれかを意味する。本明細書において使用される「対応する」という用語はまた、位置が、前述のヌクレオチド/アミノ酸の番号によってのみ決定されるものではなく、むしろ、該配列の周囲の部分の状況から考えられるものであることを含む。したがって、開示による所与のアミノ酸又はヌクレオチドの位置は、配列内の何処か他の場所のアミノ酸又はヌクレオチドの欠失又は付加に因り変化し得る。したがって、位置が、開示により「対応する位置」と称される場合、ヌクレオチド/アミノ酸は、具体的な番号に関しては異なり得るが、依然として類似した隣接するヌクレオチド/アミノ酸を有し得ることが理解される。所与の配列内のアミノ酸残基(又はヌクレオチド)が、「親」アミノ酸のアミノ酸配列/ヌクレオチド配列における特定の位置に対応するかどうかを決定するために、当業者は、当技術分野において周知の手段及び方法、例えば、手作業による又は例えば本明細書に例示されたコンピュータープログラムの使用による配列アラインメントを使用することができる。
【0036】
「エピトープ」という用語は一般的に、結合ドメインが認識する、抗原上の部位、典型的には(ポリ)ペプチドを指す。その最も広義な意味における「結合ドメイン」という用語は「抗原結合部位」を指し、すなわち、抗原標的上の特定のエピトープと結合/相互作用する分子のドメインを特徴付ける。抗原標的は単一のエピトープを含み得るが、典型的には少なくとも2つのエピトープを含み、抗原のサイズ、コンフォメーション、及び種類に応じて任意の数のエピトープを含み得る。「エピトープ」という用語は一般的に、直鎖エピトープ及び立体構造エピトープを包含する。直鎖エピトープは、アミノ酸の一次配列内に含まれる連続エピトープであり、典型的には少なくとも2つ以上のアミノ酸を含む。立体構造エピトープは、標的抗原、特に標的(ポリ)ペプチドの折り畳みによって並べられた非連続アミノ酸によって形成される。
【0037】
本発明の脈絡において、「結合ドメイン」という用語は特に、TCRα鎖及び/又はβ鎖の可変領域、具体的にはTCRのCDR3α及びCDR3βを指す。
【0038】
本発明者らは、本発明のTCRによって認識される最小のアミノ酸配列はアミノ酸配列X1LX2GLDX3LL(配列番号31)に対応することを発見し、Xは任意のアミノ酸から選択される。具体的には、本発明のTCRは、添付の実施例に示されているようなアミノ酸配列VLDGLDVLL(配列番32)を含むか又はからなるアミノ酸配列を(特異的に)認識することが示された。したがって、本発明のTCRは、アミノ酸配列X1LX2GLDX3LL(配列番号31)を含むか若しくはからなる、好ましくはアミノ酸配列VLDGLDVLL(配列番32)を含むか若しくはからなるアミノ酸配列、又はそのMHC結合形に結合することができる。例えば、認識されたペプチドは、配列番号31、特に配列番号32に示される認識モチーフのC末端及び/又はN末端に位置するさらに他のCアミノ酸を含み得ると考えられる。具体的には、本明細書に記載のTCRは、前記のアミノ酸配列内の少なくとも1つのエピトープを認識すると考えられる。全ての文法形における「に結合している」及び「認識している」という用語は本明細書において互換的に使用される。抗原標的は、MHCクラスI分子、具体的にはHLA−A分子、好ましくはHLA−A
*02分子、特にHLA−A
*02:01分子に結合した場合に、本発明のTCRによって認識されると特に考えられる。該MHC分子、特にHLA−A及びHLA−A
*02分子は、細胞の表面上、例えば腫瘍細胞の表面上、又は(固形)担体上に提示され得る。
【0039】
好ましくは、本発明のTCRは、その抗原標的に特異的に結合する。「特異的に結合している」という用語は一般的に、TCRが、無作為な関連性のない非標的抗原よりも、その目的とする抗原標的に対してより容易にその抗原結合部位を介して結合することを示す。特に「特異的に結合する」という用語は、TCRの結合特異性が、非標的抗原に対するその結合特異性と比べて、その抗原標的に対して少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、さらにより好ましくは50倍、最も好ましくは100倍以上であろうことを示す。
【0040】
本明細書に記載のような天然TCRを発現しているエフェクター宿主細胞は、その抗原標的(すなわち、好ましくは抗原提示細胞によってHLA−A
*02上に提示されるPRAME
100〜108)に高い機能的結合力で結合すると考えられる。「機能的結合力」という用語は、TCR発現細胞(特に、本明細書に記載のような天然TCRを発現しているT細胞)がインビトロにおいて所与の濃度のリガンドに対して応答する能力を指し、これはTCR発現細胞のインビボにおけるエフェクター能に相関すると考えられる。定義によると、高い機能的結合力を有するTCR発現細胞は、インビトロの試験において非常に低い用量の抗原に対して応答する一方、低い機能的結合力を有するこのような細胞は、高い結合力のTCR発現細胞と同じような免疫応答を開始するには、より多量の抗原を必要とする。それ故、機能的結合力は、TCR発現細胞の活性化閾値の量的な決定因子と考えられ得る。それは、インビトロにおいて様々な量の同族抗原に対してこのような細胞を曝露することによって決定される。高い機能的結合力を有するTCR発現細胞は、低い用量の抗原に応答する。例えば、TCR発現細胞は典型的には、約10
−5〜約10
−11Mの範囲(すなわち、約0.05ng/mL〜約5ng/mL、0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、又は5ng/mL)という低い濃度のPRAME
100〜108ペプチド(PRAME
100〜108ペプチドの分子量は956g/molである)の積載された抗原陰性HLA−A
*02発現標的細胞と共培養すると、少なくとも約200pg/mL以上(例えば200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、又は20,000pg/mL以上)のインターフェロンγ(IFN−γ)を分泌する場合に、その抗原標的に対して「高い」機能的結合力で結合すると判断されるだろう。
【0041】
本発明のTCRの特異的結合を決定するための他の方法としては、Gertner-Dardenne et al. J Immunol 188(9): 4701-4708によって記載された
51Cr遊離アッセイ、Leisegang et al., Clin. Cancer Res 2010. 16: 2333-2343によって記載されたCD107a/b動員、及びWilde et al., J Immunol 2012; 189:598-605によって記載されたペプチド:MHC多量体結合分析が挙げられる。
【0042】
変異体
以前に記載されているように、「TCR」という用語は、TCRの配列変異体、断片、及び構築物をはじめとする、TCRの変異体を包含する。全てのTCR変異体は、本発明のTCRの機能的変異体であると考えられる。本明細書において使用する「機能的変異体」という用語は、親のTCR、その可変領域、又はその抗原結合領域に対してかなりの又は有意な配列同一率又は類似率を有する、TCRのポリペプチド又はタンパク質を指し、これはその生物学的活性、すなわち、本発明の親TCRが抗原特異性を示す抗原標的に対して、本明細書に開示されかつ添付の実施例で評価されたTCRと類似しているか、同じであるか、又はさらにはより高い程度で特異的に結合する能力を共有する。
【0043】
配列変異体
「TCR変異体」という用語は、本明細書に開示されたTCRの「配列変異体」、すなわち、上記のような本発明のTCR(「親」TCRとも称される)のアミノ酸配列を実質的に含んでいるが、「親」TCRアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸の改変(すなわち、置換、欠失、又は挿入)を含有している変異体を含み、ただし、該変異体は好ましくは、本発明の「親」TCRの抗原特異性を保持している。本発明のTCR配列変異体は典型的には、適切なヌクレオチド変化を「親」TCRをコードしている核酸に導入することによって、又はペプチド合成によって調製される。一般的には、前記のアミノ酸改変は、TCRの可変領域又は定常領域に導入され得るか又は存在し得、結合強度及び結合特異性、翻訳後プロセシング(例えばグリコシル化)、熱力学的安定性、溶解度、表面発現、又はTCRの構築のような特性を調節する役目を果たし得る。
【0044】
以前に示されているように、アミノ酸の改変は、例えば、親TCRのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は該残基への挿入、及び/又は該残基の置換を含む。本発明のTCRの例示的な挿入変異体としては、該TCRと、酵素又は別の機能的ポリペプチドとの融合産物が挙げられる。本発明のTCRの例示的な置換変異体は、α鎖及び/若しくはβ鎖の可変領域若しくはCDR、フレームワーク領域、又は定常領域にアミノ酸置換を含んでいるものである。本明細書において特に考えられるのは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当技術分野において公知であり、これは、特定の物理的及び/又は化学的特性を有するあるアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されているアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性における類似性に基づいて作成され得る、酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸(例えばAsp又はGlu)で置換されたもの、非極性側鎖を有するアミノ酸が非極性側鎖を有する別のアミノ酸(例えばAla、Gly、Val、He、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)で置換されたもの、塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸(Lys、Argなど)で置換されたもの、極性側鎖を有するアミノ酸が極性側鎖を有する別のアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)で置換されたものなどであり得る。
【0045】
システインによる改変
定常領域へのジスルフィド結合の付加は、TCRα鎖及びβ鎖の正しい対形成を促進すると報告されている(Kuball J et al. Blood. 2007 Mar 15; 109(6):2331-8)。したがって、定常領域への1つ以上のシステイン結合の付加も本明細書において考えられる。
【0046】
マウス化
以前に記載されているように、TCRのマウス化(すなわち、α鎖及びβ鎖におけるヒト定常領域を、そのマウス対応物と交換すること)は、宿主細胞におけるTCRの細胞表面発現を向上させるために一般的に適用される技術である。特定の理論に拘りたくはないが、マウス化TCRは、CD3共受容体とより効果的に会合し;及び/又は、互いに優先的に対を形成し、所望の抗原特異性を有するTCRを発現するようにエクスビボにおいて工学操作されたヒトT細胞上で混合型TCRを形成する傾向がより少ないが、依然としてそれらの「元来の」TCRを保持及び発現していると考えられる。
【0047】
近年、マウス化TCRの改善された発現の原因となる9個のアミノ酸が同定され(Sommermeyer and Uckert, J Immunol. 2010 Jun 1; 184(11):6223-31)、TCRα鎖及び/又はβ鎖定常領域内のアミノ酸残基の1つ又は全部を、それらのマウス対応物の残基で置換することが考えられる。この技術は「最小限のマウス化」とも称され、細胞表面発現を増強しつつ、同時にアミノ酸配列内の「外来」アミノ酸残基の数を減少させ、これにより免疫原性のリスクを低減させるという利点を与える。
【0048】
一般的に、TCR配列変異体は、本明細書に開示されているようなCDR1、CDR2、CDR3、α鎖可変領域、β鎖可変領域、α鎖及び/又はβ鎖の少なくとも1つを含むか、あるいは、本明細書に開示されたアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はからなると考えられ、ただし、該変異体は添付の実施例において評価されたTCRと比較して同等であるか、同じであるか、又は改善された結合特徴を示す。
【0049】
本明細書において使用する「配列同一率」という用語は、2つの(ヌクレオチド又はアミノ酸)配列が、アラインメント内の同じ位置に同一の残基を有する程度を示し、しばしば比率として表現される。好ましくは、同一率は、比較される配列の全長におよび決定される。したがって、正確に同じである配列の2つのコピーは100%の同一率を有するが、あまり高度に保存されておらずかつ欠失、付加、又は置換を有する配列は、より低い程度の同一率を有する可能性がある。当業者は、配列同一率の決定のために、例えばBlast(Altschul, et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)、Blast2(Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)、Smith−Waterman(Smith, et al. (1981) J. Mol. Biol. 147:195-197)、及びClustalWなどのいくつかのアルゴリズムを標準的なパラメーターを使用して利用可能であることを認識しているだろう。
【0050】
したがって、配列番号1又は2のアミノ酸配列は、例えば、「サブジェクト配列」又は「リファレンス配列」としての役目を果たし得るが、それとは異なるCDR3のアミノ酸配列は、「クエリー配列」としての役目を果たし得る。
【0051】
構築物及び断片
本明細書において使用する「TCR」という用語はTCR構築物をさらに含む。「構築物」という用語は、本発明のTCRの少なくとも1つの抗原結合ドメインを含むタンパク質又はポリペプチドを含むが、必ずしも天然TCRの基本的構造(すなわち、TCRα鎖及びTCRβ鎖に取り込まれた可変ドメインが、ヘテロ二量体を形成している)を共有していない。TCR構築物及び断片は典型的には、慣用的な遺伝子工学操作法によって得られ、追加の機能的タンパク質又はポリペプチドドメインを含むようにしばしば人工的に構築される。前記によると、本発明のTCR構築物及び断片は、本明細書の何処か他の場所で開示されているような少なくとも1つのCDR3α及び/又は少なくとも1つのCDR3βを含むと考えられる。本明細書においてさらに考えられるのは、本明細書において例示されているようなさらに他のタンパク質ドメイン又は部分と場合により組み合わせた、少なくとも1つのCDR1α、CDR2α、CDR1β、CDR2β、α鎖可変領域、β鎖可変領域、α鎖及び/又はβ鎖、あるいはその組合せを含んでいる、構築物及び断片である。本明細書に提供されたTCR構築物及び断片は、上記されそして添付の実施例において評価されている本発明のTCRと同じ抗原標的に特異的に結合することができると考えられる。
【0052】
多量体
「TCR構築物」という用語は、少なくとも1つのTCRα鎖可変領域又はTCRα鎖と少なくとも1つのTCRβ鎖可変領域が互いに共有結合で連結されている、ヘテロ二量体及び多量体を包含する。本発明による多価TCR構築物は、その最も単純な形態では、好ましくはリンカー分子を介して、互いに会合した(例えば共有結合により又は別の方法で連結された)2つ又は3つ又は4つ又はそれ以上のTCRの多量体を含む。
【0053】
適切なリンカー分子としては、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、及びエクストラアビジン(それぞれ、ビオチンに対する4つの結合部位を有する)などの多価付着分子が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、ビオチニル化TCRは、複数のTCR結合部位を有する多量体へと形成され得る。多量体におけるTCRの数は、多量体を作製するために使用されたリンカー分子の量に関連したTCRの量、及びまた任意の他のビオチニル化分子の有無にも依存するだろう。例示的な多量体は、二量体、三量体、四量体、又は五量体、又はそれより高次の多量体TCR構築物である。本発明の多量体はまた、標識又は薬物又は(固形)担体などのさらなる機能的実体も含み得る。
【0054】
「TCR構築物」という用語はまた、適切なリンカーを介して、球状体、好ましくは均一なビーズ、より好ましくはポリスチレンビーズ、最も好ましくは生体適合性ポリスチレンビーズに連結されているTCR分子も包含する。このようなTCR構築物はまた、ビーズに取り込まれた本発明のTCR及び予め規定された蛍光色素を有するビーズを含み得る。
【0055】
融合タンパク質
「TCR構築物」という用語はまた、少なくとも1つのTCRα鎖、TCRα鎖可変領域若しくはCDR3α、及び/又は少なくとも1つのTCRβ鎖、TCRβ鎖可変領域若しくはCDR3β;並びにさらなる1つ以上の融合成分(群)を含む融合タンパク質又はポリペプチドに関する。有用な成分としては、Fc受容体;Fcドメイン(IgA、IgD、IgG、IgE、及びIgMに由来);サイトカイン(例えばIL−2又はIL−15);毒素;抗体若しくはその抗原結合断片(例えば抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD5抗体、抗CD16抗体、若しくは抗CD56抗体、又はその抗原結合断片);CD247(CD3ζ)、CD28、CD137、CD134ドメイン;又はその任意の組合せが挙げられる。
【0056】
融合成分として使用され得る例示的な抗体断片としては、完全長抗体の断片、例えば(s)dAb、Fv、Fd、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は「rIgG」(「ハーフ抗体」);改変された抗体断片、例えばscFv、di−scFv、又はbi(s)−scFv、scFv−Fc、scFv−ジッパー、scFab、Fab2、Fab3、ディアボディーズ、一本鎖ディアボディーズ、タンデム型ディアボディーズ(Tandab’s)、タンデム型di−scFv、タンデム型tri−scFv、ミニボディーズ、マルチボディーズ、例えばトリアボディーズ又はテトラボディーズ、及び単一ドメイン抗体、例えばナノボディーズ、又はたった1つの可変ドメイン(V
HH、V
H、又はV
Lであり得る)を含んでいる単一可変ドメイン抗体が挙げられる。
【0057】
本発明のTCR構築物を、1つ以上の抗体又は抗体断片に融合させ得、その結果、一価、二価、及び多価(polyvalent)/多価(multivalent)構築物が得られ、したがって、たった1つの標的抗原に特異的に結合する単一特異的構築物、並びに、明確に異なる抗原結合部位を通して1つを超える標的抗原、例えば2つ、3つ又はそれ以上の標的抗原に特異的に結合する二重特異的及び多重特異的(polyspecific)/多重特異的(multispecific)構築物が得られる。
【0058】
場合により、リンカーが、本発明のTCR構築物のドメイン又は領域の1つ以上の間に、すなわち、TCRα鎖CDR3、TCRα鎖可変領域、及び/又はTCRα鎖、TCRβ鎖CDR3、TCRβ鎖可変領域、及び/又はTCRβ鎖、及び/又は本明細書に記載の1つ以上の融合成分(群)の間に導入されていてもよい。リンカーは当技術分野において公知であり、とりわけ、Chen et al. Adv Drug Deliv Rev. 2013 Oct 15; 65(10): 1357-1369によって考察されている。一般的に、リンカーとしては、可動性リンカー、切断可能なリンカー、剛直なリンカーが挙げられ、構築物の種類及び目的の使用/適用に応じて選択されるだろう。例えば、治療適用では、ドメイン間のある程度の可動性又は相互作用を確保しつつ、有害な免疫反応のリスクを低減させるために、非免疫原性で可動性のリンカーがしばしば好ましい。このようなリンカーは一般的に、小型の非極性(例えばGly)又は極性(例えばSer又はThr)アミノ酸から構成され、Gly及びSer残基鎖からなる「GS」リンカーを含む。これもまた本発明のTCR構築物に使用することを目的とした最も広く使用されている可動性リンカーの一例は、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)
n(配列番号225)の配列を有する。他の適切なリンカーは例えば、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号226)及びEGKSSGSGSESKST(配列番号227)及びGSAGSAAGSGEF(配列番号228)を含む。
【0059】
本発明により考えられる特に有用なTCR構築物は、場合により互いに連結されかつ、場合によりリンカーを介して、リンパ球の表面上の抗原又はエピトープに対して指向される少なくとも1つの抗体又は抗体断片(例えば一本鎖抗体断片(scFv))に融合している、本明細書において定義されているような少なくとも1つのTCRα鎖、TCRα鎖可変領域、又はCDR3α、本明細書において定義されているような少なくとも1つのTCRβ鎖、TCRβ鎖可変領域、又はCDR3βを含んでいるTCR構築物である。抗体又は抗体断片(例えばscFv)によって認識される有用な抗原標的としては、CD3、CD28、CD5、CD16及びCD56が挙げられる。該構築物は一般的には、「TCR部分」(すなわちTCRα鎖及びβ鎖又はその可変領域又はそのCDR3)が本明細書に定義された抗原標的を認識するその能力を保持する限り任意の構造を有し得、「抗体部分」は所望の表面抗原又はエピトープに結合し、これにより、それぞれのリンパ球を標的細胞へと動員及び標的化する。このような構築物は有利には、抗原標的を提示している抗原提示細胞(例えば腫瘍細胞)と、リンパ球(例えば細胞障害性T細胞又はNK細胞)を互いに接続する「アダプター」としての役目を果たし得る。このような融合タンパク質の一例は、約55キロダルトン(kD)の1本のペプチド鎖上における異なる抗体の2つの一本鎖可変断片(scFv)からなる二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))の原則に従って工学操作された構築物である。したがって、本発明のTCR構築物は、所望の結合特異性(例えばCD3又はCD56に対する)を有するscFv(又は他の結合ドメイン)に連結された、本明細書に記載のような少なくとも1つのTCR抗原結合ドメイン(例えば互いに融合したTCR可変α鎖及び可変β鎖)を含み得る。scFv(又は他の結合ドメイン)は、例えばCD3受容体を介してT細胞に又はNK細胞活性化のためにCD56に結合し、その他は、腫瘍細胞上に特異的に発現された抗原標的を介して腫瘍細胞に結合する。また、本明細書では、本明細書に記載のような少なくとも1つのTCR抗原結合ドメイン、scFv(又は他の結合ドメイン)、及び、例えば体内の作用部位に該構築物を標的化させるためのさらに他のドメイン(例えばFcドメイン)を含む、トリボディーズも考えられる。
【0060】
単離形
本発明のTCRは、「単離された」又は「実質的に純粋な」形態で提供され得る。本明細書において使用される場合の「単離された」又は「実質的に純粋な」は、TCRが、その産生環境の成分から同定、分離、及び/又は回収され、これにより「単離された」TCRは、その治療使用又は診断使用を妨害する可能性のあるその産生環境からの他の混入成分を含まないか又は実質的に含まないことを意味する。混入成分としては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が挙げられ得る。したがって、「単離された」TCRは、これらの混入成分を除去するか又は実質的に除去する少なくとも1回の精製工程によって調製されるだろう。前記の定義は、必要な変更を加えて、「単離された」ポリヌクレオチド/核酸に対して同等に適用可能である。
【0061】
可溶化形
本発明のTCRは、可溶化形で提供され得る。可溶性TCRは、可溶性TCRによって認識される抗原標的を発現している例えばがん細胞に対して、標的治療剤又はエフェクター細胞を特異的に標的化させる、診断ツール、及び担体又は「アダプター」として有用である。可溶性TCR(sTCR)は典型的には、TCRα鎖及び/若しくはβ鎖、又はその可変領域若しくはCDRを含み、場合によりジスルフィド結合を介して安定化されているか、又は例えば本発明のTCR構築物の内容で上記されているような適切なリンカー分子を介して共有結合で連結されている断片又は構築物であろう。それらは典型的には、例えば膜貫通領域を含まないだろう。いくつかの環境では、分子の溶解度、並びに/又はα鎖及びβ鎖の正しい折り畳み及び対形成(所望であれば)(特に前記の特色を提供しない組換え宿主において産生される場合)を増強させるために、ポリペプチド配列内にアミノ酸改変を導入してもよい。例えば、産生宿主細胞としてE.coliを使用する場合、TCRα鎖及びβ鎖の折り畳み及び対形成は典型的にはインビトロで成し遂げられる。それ故、本発明によるTCRは、例えば、本明細書の何処か他の場所で記載されているような追加のシステイン残基を含み得る。
【0062】
追加のシステイン橋の他に、他の有用な改変としては、例えば、TCRα鎖及び/又はβ鎖の折り畳み、発現、並びに/又は対形成を増加させるための、Walseng et al. (2015), PLoS ONE 10(4): e0119559に記載のような、例えばピコルナウイルス由来の配列2Aのような、ロイシンジッパー及び/又はリボソームスキッピング配列の付加が挙げられる。
【0063】
改変
本発明のTCRはさらに、以下に記載のような1つ以上の改変を含み得る。以下に記載の改変は典型的には共有結合による改変であり、当技術分野において公知である標準的な技術を使用して成し遂げられ得る。いくつかの環境では、TCR内のアミノ酸の改変が、該改変の導入を促進するために必要とされ得る。
【0064】
標識
本発明のTCR、特に(可溶性)TCRは標識されていてもよい。有用な標識は当技術分野において公知であり、場合により様々な長さのリンカーを介して慣用的な方法を使用してTCR又はTCR変異体に結合させることができる。「標識」又は「標識基」という用語は、任意の検出可能な標識を指す。一般的に、標識は、それらを検出しようとするアッセイに応じて、様々なクラスに分類される。以下の例には、同位体標識(これは放射性又は重同位体、例えば放射性同位体又は放射性核種(例えば
3H、
14C、
15N、
35S、
89Zr、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131Iであり得る);磁気標識(例えば磁気粒子);酸化還元活性部分;光学色素(発色団、リン光体、及びフルオロフォアを含むがこれらに限定されない)、例えば蛍光基(例えばFITC、ローダミン、ランタニド、リン光体)、化学発光基、及びフルオロフォア(これは「低分子」フルオロフォア又はタンパク質性フルオロフォアのいずれかであり得る);酵素基(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);ビオチニル化基;又は二次リポーターによって認識される予め決定されたポリペプチドエピトープ(例えばロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)が含まれるがこれらに限定されない。TCR、TCR変異体、又は特に可溶性のTCR構築物(例えば、本明細書に記載のような少なくとも1つのTCRα鎖及び/又はTCRβ鎖を含むもの)を診断使用のために意図する場合には、標識が特に考えられる。
【0065】
機能的部分
本発明のTCR、特に可溶性TCRは、例えば、免疫原性を低下させるために、流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)、溶解度及び/又は安定性(例えば、タンパク質分解に対する増強された保護による)を増加させるために、並びに/あるいは、血清中半減期を延長させるために、さらに他の機能的部分を付着させることによって改変され得る。
【0066】
本発明に従って使用するための例示的な機能的部分としては、ヒト体内の他のタンパク質(例えば、血清アルブミン、免疫グロブリンFc領域又は新生児Fc受容体(FcRn))、様々な長さのポリペプチド鎖(例えばXTEN技術又はPASylation(登録商標))、非タンパク質性ポリマー(様々なポリオール、例えばポリエチレングリコール(PEG化)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマー、又は糖質、例えばヒドロキシエチルデンプン(例えばHESylation(登録商標))若しくはポリシアル酸(例えばPolyXen(登録商標)技術)のコポリマーを含むがこれらに限定されない)に結合しているペプチド又はタンパク質ドメインが挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
他の有用な機能的部分としては、患者の身体において本発明のTCRを有するエフェクター宿主細胞を遮断するために使用され得る「自殺」又は「安全性スイッチ」が挙げられる。一例は、Gargett and Brown Front Pharmacol. 2014; 5: 235によって記載された誘導性カスパーゼ(iCasp9)「安全性スイッチ」である。簡潔に言えば、エフェクター宿主細胞は、周知の方法によって、カスパーゼ9ドメインを発現するように改変され、その二量体化は、AP1903/CIPなどの低分子二量体化薬物に依存し、それにより改変されたエフェクター細胞のアポトーシスが迅速に誘導される。システムは例えば、欧州特許第2173869(A2)号に記載されている。他の「自殺」「安全性スイッチ」の例は当技術分野において公知であり、例えば単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)、CD20の発現、及びその後の抗CD20抗体を使用した除去、又はmycタグ(Kieback et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Jan 15;105(2):623-8)である。
【0068】
グリコシル化
改変されたグリコシル化パターンを有するTCRも本明細書において考えられる。当技術分野において公知であるように、グリコシル化パターンは、アミノ酸配列(例えば、以下に考察されている、特定のグリコシル化アミノ酸残基の有無)及び/又はタンパク質が産生される宿主細胞若しくは生物に依存し得る。ポリペプチドのグリコシル化は典型的には、N結合又はO結合のいずれかである。N結合は、アスパラギン残基の側鎖への糖質部分の付着である。結合分子に対するN結合グリコシル化部位の付加は簡便には、アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−トレオニン(Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)から選択された1つ以上のトリペプチド配列を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって成し遂げられる。O結合グルコシル化部位は、出発配列への1つ以上のセリン残基又はトレオニン残基による付加又は置換によって導入され得る。
【0069】
TCRの別のグルコシル化手段は、タンパク質に対するグリコシドの化学的又は酵素的結合による。使用される結合様式に応じて、糖(群)を、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えばシステイン基、(d)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン基、トレオニン基、又はヒドロキシプロリン基、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン残基、チロシン残基、又はトリプトファン残基、あるいは(f)グルタミンのアミド基に付着させ得る。
【0070】
同様に、脱グリコシル化(すなわち、結合分子上に存在する糖質部分の除去)は、例えばTCRをトリフルオロメタンスルホン酸に曝すことによって化学的に、又はエンドグルコシダーゼ及びエキソグルコシダーゼを使用することによって酵素的に成し遂げられ得る。
【0071】
薬物抱合体
本発明のTCR、特に可溶性TCRに、低分子化合物などの薬物を付加することも考えられ得る。連結は、共有結合を介して、又は正電気力を通してなどの非共有結合的な相互作用を介して成し遂げられ得る。当技術分野において公知である様々なリンカーを、薬物抱合体を形成するために使用することができる。
【0072】
タグ
本発明のTCR、特に可溶性TCRは、それぞれの分子(タグ)の同定、追跡、精製、及び/又は単離を補助する追加ドメインを導入するために改変されていてもよい。このようなタグの非制限的な例としては、Myc−タグ、HAT−タグ、HA−タグ、TAP−タグ、GST−タグ、キチン結合ドメイン(CBD−タグ)、マルトース結合タンパク質(MBP−タグ)、Flag−タグ、Strep−タグ、及びその変種(例えば、Strep II−タグ)、His−タグ、CD20、Her2/neuタグ、myc−タグ、FLAG−タグ、T7−タグ、HA(ヘマグルチニン)−タグ、又はGFP−タグとして知られるペプチドモチーフを含む。
【0073】
エピトープタグは、本発明のTCRに取り込まれることのできる有用なタグの例である。エピトープタグは、特異的な抗体の結合を可能とし、それ故、患者の身体又は培養(宿主)細胞内における可溶性TCR又は宿主細胞の結合及び移動の同定及び追跡を可能とする、短鎖アミノ酸である。エピトープタグの検出、したがってタグ化TCRの検出は、多くの異なる技術を使用して達成され得る。このような技術の例としては、免疫組織化学法、免疫沈降法、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、ELISA、イムノブロット(「ウェスタン」)、及びアフィニティクロマトグラフィーが挙げられる。エピトープタグは、例えば、6〜15アミノ酸長、特に9〜11アミノ酸長を有し得る。また、本発明のTCRに1つを超えるエピトープタグを含めることも可能である。
【0074】
タグはさらに、該タグに特異的な結合分子(抗体)の存在下で細胞を培養することによって本発明のTCRを有する宿主細胞を刺激及び増殖させるために使用され得る。
【0075】
本発明はさらに、本明細書に記載のTCRをコードしている核酸を提供する。具体的には、TCRα鎖又はβ鎖、TCRα鎖又はβ鎖の可変領域、及びTCRのCDR3α及びCDR3β、並びに、本発明のTCRの変異体、構築物、及び断片をコードしているポリヌクレオチドが本明細書において提供される。
【0076】
本明細書において使用する「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、ポリリボヌクレオチド配列及びポリデオキシリボヌクレオチド配列、例えば、各々一本鎖及び/又は二本鎖形で鎖状若しくは環状の改変された又は改変されていないRNA又はDNA、又はその混合物(ハイブリッド分子を含む)を含む。したがって、本発明による核酸は、DNA(例えばdsDNA、ssDNA、cDNA)、RNA(例えばdsRNA、ssRNA、mRNA、ivtRNA)、その組合せ又はその誘導体(例えばPNA)を含む。
【0077】
ポリヌクレオチドは、慣用的なホスホジエステル結合又は非慣用的な結合(例えばアミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるような)を含み得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、1つ以上の改変された塩基、例えばトリチル化塩基及び異常な塩基、例えばイノシンも含有し得る。本発明の結合分子がポリヌクレオチドから発現され得る限り、他の改変(化学的改変、酵素的改変、又は代謝的改変を含む)も考えられ得る。ポリヌクレオチドは、本明細書の何処か他の場所で定義されているような単離形で提供されてもよい。ポリヌクレオチドは、調節配列、例えば転写制御配列(プロモーター、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルを含む)、リボソーム結合部位、イントロンなどを含み得る。
【0078】
特に、本発明は、配列番号23、24、25、26、27、28、29、又は30からなる群より選択された参照ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は100%同一である核酸を含むか又はからなるポリヌクレオチドを提供する。
【0079】
上記のポリヌクレオチドは、例えば改変されたアミノ酸残基をコードしている追加の又は改変されたヌクレオチド配列、コードされているTCRの分泌を指令するためのシグナルペプチド、定常領域、又は本明細書に記載のような他の異種ポリペプチドを含んでいても含んでいなくてもよい。したがって、このようなポリヌクレオチドは、本明細書に記載の結合分子の融合ポリペプチド、断片、変異体、及び他の誘導体をコードし得る。
【0080】
また、本発明は、上記の1つ以上のポリヌクレオチドを含む組成物も含む。また、本明細書には、第一のポリヌクレオチドと第二のポリヌクレオチドとを含む組成物も提供され、前記の第一のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のようなTCRα鎖可変領域をコードし、前記の第二のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のようなTCRβ鎖可変領域をコードしている。
【0081】
本発明の核酸配列は、所望の宿主細胞(例えばヒト白血球)における最適な発現のために;又は、本発明の可溶性TCRの発現のために特に考えられた細菌細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞における発現のためにコドンが最適化されていてもよい。コドン最適化は、関心対象の配列における、所与の種の高度に発現されている遺伝子において一般的に稀であるコドンを、このような種の高度に発現されている遺伝子において一般的に頻繁であるコドンと交換することを指し、このようなコドンは、交換されるコドンと同じアミノ酸をコードしている。したがって、最適なコドンの選択は、宿主ゲノムのコドン使用頻度、並びにいくつかの所望の配列モチーフ及び所望ではない配列モチーフの存在に依存する。
【0082】
ベクター
本明細書においてさらに、本明細書に記載のような1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。「ベクター」は、(外来)遺伝子材料を宿主細胞に導入するためのビヒクルとして使用される核酸分子であり、その宿主細胞で例えば、複製及び/又は発現させることができる。
【0083】
「ベクター」という用語は、プラスミド、ウイルスベクター(レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、及びアデノウイルス随伴ベクター(AAV)を含む)、ファージ、ファージミド、コスミド、及び人工染色体(BAC及びYACを含む)を包含するがこれらに限定されない。ベクターそれ自体は一般的に、挿入断片(導入遺伝子)及びベクターの「骨格」としての役目を果たすより長い配列を含む、ヌクレオチド配列、一般的にはDNA配列である。工学操作されたベクターは典型的には、宿主細胞における自己複製起点(ポリヌクレオチドの安定な発現が所望である場合)、選択マーカー、及び制限酵素切断部位(例えばマルチクローニングサイト、MCS)を含む。ベクターはさらに、プロモーター、遺伝子マーカー、レポーター遺伝子、標的化配列、及び/又はタンパク質精製タグを含み得る。当業者には公知であるように、多くの適切なベクターが当業者には公知であり、多くが市販されている。適切なベクターの例は、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th edition), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York(2012)に提供されている。
【0084】
標的化ベクター
標的化ベクターを使用して、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th edition), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York(2012)によって記載のような当技術分野において公知の方法によって、ポリヌクレオチドを宿主細胞の染色体に組み込むことができる。簡潔に言えば、適切な手段としては、相同的組換え、すなわち組込み部位の配列に特異的に標的化するハイブリッドリコンビナーゼの使用が挙げられる。標的化ベクターは典型的には、相同的組換えに使用される前は環状及び鎖状である。代替選択肢として、外来ポリヌクレオチドは、融合PCRによって接続されたDNA断片又は合成により構築されたDNA断片であり得、これは次いで、宿主細胞に組み込まれる。また、無作為組込み又は非標的化組込みがもたらされる異種組換えを使用することも可能である。
【0085】
本発明はまた、本明細書に記載の核酸を含むベクターも提供する。
【0086】
発現ベクター
本発明のベクターは発現ベクターであってもよい。「発現ベクター」又は「発現構築物」は、適切な宿主細胞における、異種ポリヌクレオチド配列、例えば本発明のTCRをコードしている配列の転写、及びそれらのmRNAの翻訳のために使用され得る。このプロセスはまた、本明細書において本発明のTCRの「発現」とも称される。
【0087】
複製起点、選択マーカー、及び制限酵素切断部位の他に、発現ベクターは典型的には、発現させようとする異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含む。
【0088】
「調節配列」という用語は、特定の宿主生物又は宿主細胞における(異種)ポリヌクレオチドの作動可能に連結されたコード配列の発現に必要である核酸配列を指し、したがって、転写調節配列及び翻訳調節配列を含む。典型的には、原核細胞における異種ポリヌクレオチド配列の発現に必要とされる調節配列としては、プロモーター(群)、場合によりオペレーター配列(群)、及びリボソーム結合部位(群)が挙げられる。真核細胞では、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、エンハンサー、及び場合によりスプライスシグナルも典型的には必要とされる。さらに、培養培地中への関心対象のポリペプチドの分泌を可能とするために、特定の開始シグナル及び分泌シグナルもベクターに導入してもよい。
【0089】
核酸は、それが特に同じポリヌクレオチド分子上の別の核酸配列と機能的な関係になるように配置された場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターは、それがコード配列の発現を発揮することができる場合に異種遺伝子のコード配列と作動可能に連結されている。プロモーターは典型的には、関心対象のポリペプチドをコードしている遺伝子の上流に配置され、該遺伝子の発現を調節している。
【0090】
哺乳動物宿主細胞の発現のための例示的な調節配列としては、哺乳動物細胞において高いレベルのタンパク質の発現を指令するウイルス配列、例えばサイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター及び/又はエンハンサー(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、サルウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマが挙げられる。以前に示されているように、発現ベクターはまた、複製起点及び選択マーカーも含み得る。
【0091】
以前に記載されているように、本発明のベクターはさらに、1つ以上の選択マーカーを含み得る。真核宿主細胞に使用するに適した選択マーカーとしては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hgprt)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(aprt)遺伝子が挙げられるがこれらに限定されない。他の遺伝子としては、dhfr(メトトレキサート抵抗性)、gpt(ミコフェノール酸抵抗性)、neo(G−418抵抗性)、及びhygro(ハイグロマイシン抵抗性)が挙げられる。ベクターの増幅を使用して発現レベルを増加させることができる。一般的に、選択マーカー遺伝子は、発現させようとするポリヌクレオチド配列に対して直接連結されていても、又は同時形質転換によって同じ宿主細胞に導入されていてもよい。
【0092】
上記を鑑みて、したがって、本発明はさらに、ベクターに挿入された(すなわち含まれる)本明細書に記載の1つ以上のヌクレオチド配列を提供する。具体的には、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明のTCR、又はそのα鎖若しくはβ鎖、又はα鎖若しくはβ鎖可変ドメイン、又はCDR3α若しくはCDR3βをコードしているヌクレオチド配列を含む(複製可能な)ベクターを提供する。
【0093】
当業者は、例えば、TCR発現を目的とした宿主細胞に基づいて、適切な発現ベクターを容易に選択することができるだろう。適切な発現ベクターの例は、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、例えばMP71ベクター、又はレトロウイルスSINベクター;及びレンチウイルスベクター又はレンチウイルスSINベクターである。本発明のTCRをコードしているポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、例えば、リンパ球に感染することができ、これは続いて、異種TCRを発現すると考えられる。適切な発現ベクターの別の例は、眠れる森の美女(SB)トランスポゾントランスポザーゼDNAプラスミド系、すなわちSB DNAプラスミドである。本発明の核酸及び/又は特に発現構築物はまた、一過性RNAトランスフェクションによって細胞に導入されてもよい。
【0094】
天然TCR発現のために現在使用されているウイルスベクターは典型的には、1つのベクター内でTCRα鎖遺伝子及びTCRβ鎖遺伝子を、ブタテッショウウイルス由来の内部リボソーム進入部位(IRES)配列又は2Aペプチド配列のいずれかと連結させ、その結果、形質導入された細胞内のウイルスプロモーターの制御下で単一のメッセンジャーRNA(mRNA)分子が発現される。
【0095】
宿主細胞
本発明はさらに、本明細書に記載のTCR、核酸、又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0096】
様々な宿主細胞を、本発明に従って使用することができる。本明細書において使用する「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載のポリヌクレオチド若しくはベクターのレシピエントとなり得るか又は該レシピエントであった、及び/又は、本発明のTCRを発現する(及び場合により分泌している)細胞を包含する。「細胞」及び「細胞培養液」という用語は互換的に使用され、そうではないと明記されない限り、TCRの発生源を示す。「宿主細胞」という用語はまた、「宿主細胞株」も含む。
【0097】
一般的に、「宿主細胞」という用語は原核細胞又は真核細胞を含み、これには、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞、例えば昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えばマウス細胞、ラット細胞、マカク細胞、又はヒト細胞などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0098】
上記に鑑みて、したがって、本発明は、とりわけ、本明細書に記載のようなTCR又はTCR構築物をコードしているヌクレオチド配列を含んでいる、ポリヌクレオチド又はベクター、例えば発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0099】
本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターは、当技術分野において公知の慣用的な方法を使用して、例えばトランスフェクション、形質転換などによって宿主細胞に導入することができる。
【0100】
「トランスフェクション」は、核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)を標的細胞に計画的に導入するプロセスである。一例は、RNAトランスフェクション、すなわち、RNA(例えばインビトロで転写されるRNA、すなわちivtRNA)を宿主細胞に導入するプロセスである。該用語は主に、真核細胞におけるウイルスを用いない方法のために使用される。「形質導入」という用語は、ウイルスにより媒介される核酸分子又はポリヌクレオチドの導入を説明するために使用される。動物細胞のトランスフェクションは典型的には、材料の取り込みを可能とするために、細胞膜に一過性の孔又は「穴」を開けることを含む。トランスフェクションは、リン酸カルシウム法を使用して、電気穿孔法によって、細胞のスクイージング(squeezing)によって、又は陽イオン性脂質を材料と混合してリポソームを生成し、これを細胞膜と融合させ、その積荷を内側に蓄積させることによって行なわれ得る。真核宿主細胞をトランスフェクトするための例示的な技術としては、脂質小胞により媒介される取り込み、熱ショックにより媒介される取り込み、リン酸カルシウムにより媒介されるトランスフェクション(リン酸カルシウム/DNAの共沈降)、マイクロインジェクション、及び電気穿孔法が挙げられる。
【0101】
「形質転換」という用語は、細菌細胞への、及びまた動物以外の真核細胞(植物細胞を含む)への、核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)のウイルスを用いてない導入を説明するために使用される。したがって、形質転換は、細胞膜(群)を通したその周囲からの直接的な取り込み及びその後の外来性遺伝子材料(核酸分子)の取り込みから生じる、細菌細胞又は動物以外の真核細胞の遺伝子改変である。形質転換は、人工的な手段によって行なわれ得る。形質転換が起こるためには、細胞又は細菌は、形質転換受容性状態になければならず、これは飢餓及び細胞密度などの環境条件に対する期間限定の応答として起こり得る。原核細胞の形質転換のための技術としては、熱ショックにより媒介される取り込み、インタクトな細胞と細菌プロトプラストの融合、マイクロインジェクション、及び電気穿孔法が挙げられ得る。植物形質転換のための技術としては、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)によるアグロバクテリウムにより媒介される導入、急速に噴射されるタングステン又は金ミクロ射出粒子、電気穿孔法、マイクロインジェクション、及びポリエチレングリコールにより媒介される取り込みが挙げられる。
【0102】
上記を鑑みて、したがって、本発明はさらに、本明細書に記載のような少なくとも1つのポリヌクレオチド配列及び/又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0103】
本発明のTCRの発現のために、挿入されたポリヌクレオチド配列の発現を調節し、並びに/又は所望のように遺伝子産物(すなわちRNA及び/又はタンパク質)を修飾及びプロセシングする宿主細胞が選択され得る。遺伝子産物のこのような修飾(例えばグリコシル化)及びプロセシング(例えば切断)は、TCRの機能にとって重要であり得る。様々な宿主細胞が、遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的かつ特異的な機序を有する。産物の正しい修飾及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。この目的のために、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機序を有する真核宿主細胞を使用し得る。
【0104】
本明細書において、(a)特に可溶形の本発明のTCRを発現及び得るための宿主細胞(「産生宿主細胞」)、及び(b)本発明のTCRを発現しかつエフェクター機能を有する宿主細胞(「エフェクター宿主細胞」)を提供することが考えられる。このような「フェクター宿主細胞」は治療適用に特に有用であり、それを必要とする被験者への投与のために考えられる。好ましい「エフェクター宿主細胞」としては、リンパ球、例えば細胞障害性Tリンパ球(CTL)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γ/δT細胞が挙げられる。
【0105】
「産生宿主細胞」
細胞
本発明の可溶性TCRの発現のために使用される「産生宿主細胞」は好ましくは、多量の組換えタンパク質を発現することができる。
【0106】
「産生宿主細胞」として使用され得る例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばDHFRマイナスCHO細胞、例えばDG44及びDUXBI 1細胞、NSO細胞、COS細胞(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、HEK293細胞(ヒト腎臓細胞)、及びSP2細胞(マウス骨髄腫細胞)が挙げられる。他の例示的な宿主細胞株としては、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(マウス腎臓株)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、293、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−IcIBPT(ウシ内皮細胞)、及びRAJI(ヒト白血球)が挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞株は典型的には、業者、アメリカン・ティッシュ−・カルチャー・コレクション(ATCC)又は公開されている文献から入手可能である。
【0107】
細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞などの哺乳動物以外の細胞も容易に入手可能であり、これもまた、上記のような「産生宿主細胞」として使用することができる。例示的な細菌宿主細胞としては、腸内細菌科、例えば大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ;バチルス科、例えば枯草菌(Bacillus subtilis);肺炎球菌;連鎖球菌;及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenza)が挙げられる。他の宿主細胞としては、酵母細胞、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。昆虫細胞としては、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞が挙げられるがこれに限定されない。
【0108】
前記によると、考えられる発現系(すなわち、上記のような発現ベクターを含む宿主細胞)としては、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌(例えばE.coli、枯草菌)などの微生物;組換え酵母発現ベクターを用いて形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス、ピキア);組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させたか又は組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)を用いて形質転換された植物細胞系が挙げられる。哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)主要最初期プロモーター(MIEP)プロモーター)を含有している組換え発現構築物を有する哺乳動物発現系がしばしば好ましい。適切な哺乳動物宿主細胞は、公知の細胞株(例えばCOS細胞、CHO細胞、BLK細胞、293細胞、3T3細胞)から選択され得るが、細胞障害性Tリンパ球(CTL)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γ/δT細胞などのリンパ球を使用することも考えられる。
【0109】
前記によると、本発明はまた、(i)本明細書に記載のようなTCRの発現を引き起こす条件下で宿主細胞(すなわち産生宿主細胞)をインキュベートする工程、及び(ii)該TCRを精製する工程を含む、該TCRを生成及び得るための方法を提供する。
【0110】
培養
発現ベクターを有する宿主細胞を、本明細書に提供されているTCR、特に本明細書の何処か他の場所で記載されているようなα鎖及び/又はβ鎖の生成に適した条件下で増殖させ、α鎖及び/又はβ鎖のタンパク質合成についてアッセイする。二本鎖TCRの発現のために、α鎖及びβ鎖の両方をコードしているベクターを、完全分子の発現のために宿主細胞において共発現させ得る。
【0111】
精製
本発明のTCRが一旦発現すると、それは、当技術分野において公知である任意の精製法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えばイオン交換クロマトグラフィー(例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、アフィニティクロマトグラフィー、特にプロテインA、プロテインG、若しくはレクチンアフィニティクロマトグラフィー、サイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって精製され得る。当業者は、回収しようとするTCRの個々の特徴に基づいて適切な精製法を容易に選択することができるだろう。
【0112】
「エフェクター宿主細胞」
以前に記載されているように、本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列、ベクター、又はTCRを含む「エフェクター宿主細胞」を提供する。該エフェクター宿主細胞は、慣用的な方法を使用して、本発明のTCRをコードしている核酸配列を含むように改変され、本明細書に記載のTCRを特に細胞表面上に発現すると考えられる。本発明の目的のために、「本発明のTCRを発現している改変された宿主細胞」は一般的に、例えば添付の実施例に記載のようなRNAトランスフェクションによって、本発明によるTCRを発現するように処理又は改変された(エフェクター又は産生)宿主細胞を指す。本明細書の何処か他の場所で記載されているような、他の改変法又はトランスフェクション法又は形質導入法も考えられる。したがって、「改変された宿主細胞」という用語は、本発明のTCRを好ましくは発現している「トランスフェクトされた」、「形質導入された」及び「遺伝子工学操作された」宿主細胞を含む。
【0113】
好ましくは、このような「(改変された)エフェクター宿主細胞」(特に「(改変された)エフェクターリンパ球」)は、TCRがその特異的な抗原標的に結合すると、細胞内シグナル伝達を通してエフェクター機能を媒介することができる。このようなエフェクター機能としては、例えば、パーフォリン(標的細胞膜に穴を作る)、グランザイム(細胞内で作用してアポトーシスをトリガーするプロテアーゼである)の遊離、Fasリガンド(Fasを有する標的細胞においてアポトーシスを活性化する)の発現、並びにサイトカイン、好ましくはTh1/Tc1サイトカイン、例えばIFN−γ、IL−2、及びTNF−αの遊離が挙げられる。したがって、処置される予定の被験者におけるその抗原標的を認識し結合することができる本発明のTCRを発現するように工学操作されたエフェクター宿主細胞は、上記のエフェクター機能を実施し、これにより、標的(例えばがん)細胞を死滅させると考えられる。標的細胞の細胞溶解は、例えば、TCRのトランスフェクトされたレシピエントT細胞との共培養中の蛍光標識された標的細胞の消失を検出するCTL蛍光死滅アッセイ(CTL、米国)を用いて評価され得る。
【0114】
上記に鑑みて、エフェクター宿主細胞は好ましくは、機能的TCR(すなわち、これは典型的には本明細書に記載のTCRα鎖及びβ鎖を含む);並びにまた、シグナル伝達サブユニットCD3γ、δ、ε、及びζ(CD3複合体)を発現している。さらに、共受容体のCD4又はCD8の発現も望ましくあり得る。一般的に、抗原の結合、受容体の活性化、及び下流シグナル伝達に関与する必要とされる遺伝子(例えばLck、FYN、CD45、及び/又はZap70)を有するリンパ球、すなわちT細胞は、エフェクター宿主細胞として特に適している。しかしながら、「結合ドメイン」として本発明のTCRを発現しているが、CD3シグナル伝達サブユニット及び/又は前記の下流シグナル伝達分子を含まない(すなわち、本明細書に記載の抗原標的を認識することはできるが、CD3及び/又は前記の下流シグナル伝達分子によって媒介されるエフェクター機能は有さない)エフェクター宿主細胞も本明細書において考えられる。このようなエフェクター細胞は、本明細書に記載の抗原標的を認識することができ、かつ場合によりCD3シグナル伝達及び/又は前記の下流シグナル伝達分子のシグナル伝達に関連していない他の機能を奏功することができると考えられる。例としては、本願発明のTCRを発現し、そして例えば、抗原標的の標識の際に細胞障害性顆粒を放出することができるNK又はNKT細胞が挙げられる。
【0115】
したがって、細胞障害性Tリンパ球(CTL)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラル―キラー(NT)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γ/δT細胞は、有用なリンパ球エフェクター宿主細胞であると考えられる。本発明の組換えTCRを発現しているこのようなリンパ球はまた、本明細書において「改変されたエフェクターリンパ球」とも呼ばれる。しかしながら、当業者は、一般的に所望のエフェクター機能をもたらすTCRシグナル伝達経路の任意の成分を、当技術分野において公知である組換え遺伝子工学操作法によって適切な宿主細胞に導入することができることを容易に認めるだろう。
【0116】
エフェクター宿主細胞、特にリンパ球、例えばT細胞は、処置される予定の被験者から得られ、本発明のTCRを発現するように形質転換又は形質導入された自己宿主細胞であり得る。典型的には、TCRの組換え発現は、添付の実施例に記載のようなウイルスベクターを使用することによって達成されるだろう。患者から細胞を入手及び単離するための技術は、当技術分野において公知である。
【0117】
以前に記載されているように、本明細書において提供されるエフェクター宿主細胞は、治療適用のために特に考えられる。治療効力を高めるためには、宿主細胞のさらなる遺伝子改変が望ましくあり得る。例えば、「エフェクター宿主細胞」として自己CD8+T細胞を使用する場合、適切な追加の改変としては、内因性TCR、CTLA−4、及び/又はPD−1の発現のダウンレギュレーション;並びに/又は、CD28、CD134、CD137などの共刺激分子の増幅が挙げられる。前記の遺伝子改変を達成するための手段及び方法は、当技術分野において記載されている。
【0118】
宿主細胞の標的化ゲノム遺伝子工学操作法は当技術分野において公知であり、これには、siRNAを用いた遺伝子ノックダウンの他に、いわゆる「プログラム可能なヌクレアーゼ」、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びとりわけKim & Kim Nature Reviews Genetics 15, 321-334(2014)に論評されている細菌のクラスター化され規則的に間隔があいた短い回文構造の繰返し(CRISPR)−Cas(CRISPR関連)システムから誘導されるRNA誘導工学操作ヌクレアーゼ(RGEN)が挙げられる。例えば、TALENなどのプログラム可能なヌクレアーゼを使用して、PD−1、CTLA−4、又は内因性TCRなどの「所望ではない」タンパク質をコードするDNA領域を切断し、これにより、それらの発現を減少させることができる。T細胞を(エフェクター)宿主細胞として使用する場合、内因性TCRのダウンレギュレーションは、内因性及び外因性TCRα鎖/β鎖の所望ではない「誤対合」を減少させる利点を有する。
【0119】
医薬組成物/診断
本発明はさらに、1つ以上の活性薬剤として、本明細書に記載のようなTCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞、並びに場合により1つ以上の薬学的賦形剤(群)を含む医薬組成物を提供する。したがって、医薬組成物又は医薬品の製造のための該TCR、核酸、ベクター、及び宿主細胞の使用も本明細書において考えられる。
【0120】
「医薬組成物」という用語は特に、ヒトへの投与に適した組成物を指す。しかしながら、ヒト以外の動物への投与に適した組成物も一般的に該用語によって包含される。
【0121】
医薬組成物及びその成分(すなわち活性薬剤及び場合により賦形剤)は好ましくは、薬学的に許容可能であり、すなわち、レシピエントにおいて望ましくない局所作用又は全身作用を全く引き起こすことなく、所望の治療効果を惹起することができる。本発明の薬学的に許容される組成物は、例えば、無菌であり得る。具体的には、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より特定するとヒトにおける使用のために、規制当局又は他の一般的に認められている薬局方によって承認されていることを意味し得る。
【0122】
前記に記載の活性薬剤(例えば、宿主細胞又はTCR)は好ましくは、医薬組成物中に治療有効量で存在する。「治療有効量」によって、所望の治療効果を惹起する活性薬剤の量を意味する。治療効力及び毒性は、標準的な手順によって、例えば細胞培養液又は試験動物において、例えばED
50(個体群の50%に治療効果がある用量)及びLD
50(個体群の50%に致死的である用量)で決定され得る。治療効果と毒性作用との間の用量比は治療指数であり、これはED
50/LD
50比として表現され得る。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。
【0123】
用量
TCRポリヌクレオチド、ベクター、又は宿主細胞の正確な用量は、公知の技術を使用して当業者によって確認可能であろう。適切な用量は、十分な量の本発明の活性薬剤を提供し、好ましくは治療に有効であり、すなわち、所望の治療効果を惹起する。
【0124】
当技術分野において公知であるように、処置の目的(例えば寛解維持、対、疾患の急性増悪)、投与経路、投与時刻及び投与頻度、製剤、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、疾患状態の重症度、薬物の組合せ(群)、反応過敏性、及び治療法に対する耐容性/応答性のための調整が必要であり得る。例えば本明細書に記載のような可溶性TCRの適切な用量範囲は、細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを使用して決定され得、これにはED
50が含まれ得る。典型的には、用量は、投与経路に応じて、0.1〜100000μgで変化し得、総用量は最大約2gであり得る。本発明の活性薬剤の例示的な用量は、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約1mg/kg、又は約0.1mg/kg〜約1mg/kgの範囲内である。特定の用量及び送達法に関する指針は、文献に提供されている。処置は、本発明の活性薬剤の治療有効量の1回投与又は本発明の活性薬剤の治療有効量の複数回の投与を必要とし得ることが認められている。例えば、いくつかの医薬組成物は、特定の組成物の製剤、半減期、及びクリアランス速度に応じて、3〜4日間毎に1回、週1回、又は2週間毎に1回、又は1か月以内に1回投与され得る。
【0125】
以前に示されているように、医薬組成物は場合により、1つ以上の賦形剤及び/又は追加の活性薬剤を含み得る。
【0126】
賦形剤
「賦形剤」という用語は、充填剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、吸着剤、接着防止剤、潤滑剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤、キレート剤、粘度付与剤、表面活性剤、希釈剤、湿潤剤、担体、希釈剤、保存剤、乳化剤、安定化剤、及び等張化剤を含む。所望の本発明の医薬組成物を調製するために適した賦形剤を選択することは当業者の知識範囲内である。本発明の医薬組成物に使用するための例示的な担体としては、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、及び水が挙げられる。典型的には、適切な賦形剤の選択はとりわけ、使用される活性薬剤、処置される予定の疾患、及び医薬組成物の所望の製剤に依存するだろう。
【0127】
追加の活性薬剤
本発明はさらに、上記に明記された1つ以上の本発明の活性薬剤(例えば、宿主細胞又はTCR構築物)と、処置される予定の疾患の治療及び/又は予防に適した1つ以上の追加の活性薬剤とを含む、医薬組成物を提供する。組合せに適した活性成分の好ましい例としては、公知の抗がん薬、例えばシスプラチン、マイタンシン誘導体、ラケルマイシン、カリケアマイシン、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、メルファラン、ミトキサントロン、ポルフィマーナトリウム(sorfimer sodium)、フォトフリンII、テモゾロミド、トポテカン、グルクロン酸トリメトレキサート、アウリスタチンE、ビンクリスチン、及びドキソルビシン;並びに、ペプチド細胞毒素、例えばリシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNAアーゼ及びRNAアーゼ;放射性核種、例えばヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イットリウム90、ビスマス210及び213、アクチニウム225、及びアスタチン213;プロドラッグ、例えば抗体に指向する酵素プロドラッグ;免疫刺激剤、例えばIL−2、ケモカイン、例えばIL−8、血小板因子4、悪性黒色腫増殖刺激タンパク質など、抗体又はその断片、例えば抗CD3抗体又はその断片、補体活性化因子、異種タンパク質ドメイン、同種タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌タンパク質ドメイン、及びウイルス/細菌ペプチドが挙げられる。
【0128】
投与
様々な経路が、本発明による医薬組成物の投与のために適用可能である。典型的には、投与は非経口的に達成されるだろう。非経口送達法としては、局所、動脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、子宮内、膣内、舌下、又は鼻腔内投与が挙げられる。
【0129】
製剤
本発明の医薬組成物は、とりわけ、使用される活性薬剤(例えば可溶性TCR)に応じて様々な剤形で、例えば固形剤、液剤、気体剤形、若しくは凍結乾燥剤形で製剤化され得、とりわけ、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ゲル、散剤、錠剤、液剤、エアゾール、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳化剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、若しくは液体エキス剤の剤形で、又は、所望の投与法に特に適した剤形で製剤化され得る。医薬品を製造するためのそれ自体公知のプロセスは、Remington's Pharmaceutical Sciences(Ed. Maack Publishing Co, Easton, Pa., 2012)第22版に示され、これは、例えば、慣用的な混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和(levigating)、乳化、カプセル化、封鎖(entrapping)又は凍結乾燥プロセスを含み得る。例えば、本明細書に記載のような宿主細胞又は可溶性TCRを含む医薬組成物は典型的には、液体剤形で提供され、好ましくは薬学的に許容される緩衝液を含む。
【0130】
本発明の医薬組成物が調製された後、それらを適切な容器に入れ、示された容態の処置のためにラベルを貼ることができる。このようなラベルは、例えば、投与量、投与頻度、及び投与法を含むだろう。
【0131】
処置
前記を鑑みて、したがって、本発明は、医薬品としての使用のための本明細書に記載のようなTCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞を提供する。
【0132】
TCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞は一般的に、疾患又は障害の処置、検出、診断、予後予測、予防及び/又は治療のために使用され得る。その全ての文法形の「処置」という用語は、それを必要とする被験者の治療的又は予防的処置を含む。「治療的処置又は予防的処置」は、臨床徴候及び/又は病的徴候の完全予防を目指した予防的処置、あるいは、臨床徴候及び/又は病的徴候の回復又は寛解を目指した治療的処置を含む。したがって、「処置」という用語はまた、疾患の回復又は予防も含む。
【0133】
「被験者」又は「個体」又は「動物」又は「患者」という用語は本明細書において、療法が望まれる任意の被験者、特に哺乳動物被験者を指すために互換的に使用される。哺乳動物被験者としては一般的に、ヒト、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシなどが挙げられる。しかしながら、本明細書において提供されるTCR、核酸、ベクター、宿主細胞、及び医薬組成物は、ヒト被験者、特にHLA−A2陽性のヒト被験者の処置のために特に考えられることが容易に理解されるだろう。
【0134】
直接投与
療法のために、本発明のTCR、特に本発明の可溶性TCR、核酸、ベクター(例えばウイルスベクター)、又は宿主細胞を、それを必要とする被験者に直接投与することができる。したがって、本発明は、がんの検出、診断、予後予測、予防及び/又は治療の方法に使用するための、TCR、核酸、ベクター、又は宿主細胞を提供する。該方法は、(a)本発明の(i)TCR、(ii)核酸、(iii)ベクター、(iv)宿主細胞、及び/又は(v)医薬組成物のうち1つ以上を準備する工程;並びに(b)(i)〜(v)のうち1つ以上をそれを必要とする被験者に投与する工程を含み得る。場合により、該方法は、がん療法のさらに他の工程、例えば放射線療法、又は1つ以上の抗がん剤の投与を含み得る。
【0135】
エクスビボでの処置
本発明による処置はまた、(a)被験者の試料を準備する工程(該試料はリンパ球を含む);(b)本発明のTCR、核酸、ベクター、宿主細胞、及び/又は医薬組成物のうち1つ以上を準備する工程、(c)工程(b)の(i)〜(v)のうち1つ以上を工程(a)のリンパ球に導入し、これにより、改変されたリンパ球を得る工程、(d)工程(c)の改変されたリンパ球をそれを必要とする被験者又は患者に投与する工程を含み得る。
【0136】
工程(a)において提供されるリンパ球は、前記に記載のような「エフェクター宿主細胞」であると特に考えられ、有利にはT細胞、NK細胞、及び/又はNKT細胞、特にCD8
+T細胞から選択され;以前の工程(a')において被験者の試料(特に血液試料)から当技術分野において公知な慣用的な方法によって得ることができる。しかしながら、本発明のTCRを好ましくは発現することができ、本明細書に記載のような所望の生物学的エフェクター機能を発揮する他のリンパ球を使用することも考えられる。さらに、該リンパ球は典型的には、被験者の免疫系との適合性のために選択され、すなわち、該リンパ球は好ましくは免疫応答を惹起しないだろう。例えば、「遍在的レシピエント細胞」、すなわちインビトロで成長及び増殖させることのできる所望の生物学的エフェクター機能を発揮する遍在的な適合性のリンパ球を使用することが考えられる。したがって、このような細胞の使用は、工程(a)における被験者自身のリンパ球を入手及び準備する必要性がないだろう。
【0137】
エクスビボでの工程(c)の導入は、本明細書に記載の核酸又はベクターを電気穿孔法を介してリンパ球に導入することによって、又は、エフェクター宿主細胞の内容で以前に記載されているようなレンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターでリンパ球を感染させることによって実施され得る。他の考えられる方法としては、リポソームなどのトランスフェクション試薬の使用、すなわち一過性RNAトランスフェクションが挙げられる。例えば(レトロ)ウイルスベクター又は一過性RNAトランスフェクションによる(初代)T細胞への抗原特異的TCR遺伝子の導入は、腫瘍関連抗原特異的T細胞を作製し、続いてそれをドナーに再導入し、そこでそれらは該抗原を発現している腫瘍細胞を特異的に標的化及び破壊するための有望なツールを示す。本発明では、該腫瘍関連抗原は、PRAME
100〜108、特にそのHLA−A
*02結合形である。
【0138】
上記に鑑みて、したがって、本発明のさらなる態様は、改変されたリンパ球の作製のための、本明細書の何処か他の場所に記載されているようなTCR、核酸配列、ベクター、及び/又は宿主細胞の使用である。例えば核酸及びベクターをリンパ球に導入するための手段及び方法は、本明細書の何処か他の場所に記載されている。
【0139】
診断用組成物
本発明はまた、1つ以上の診断剤(群)として、本明細書に記載のようなTCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞を含む、診断用組成物を提供する。典型的には、該診断剤は、その抗原標的への結合を検出するための手段、例えば本発明のTCR構築物の内容で記載されているような標識を含むだろう。宿主細胞に関しては、例えば、抗原を認識すると遊離する色素又は造影剤を(細胞性顆粒の代わりに)含む、改変された宿主細胞を使用することが考えられる。
【0140】
使用
本発明は、インビボ又はインビトロで成し遂げられ得る、被験者におけるがんを検出、診断、及び/又は予後予測するための前記に記載の診断剤の使用を考える。
【0141】
したがって、本発明は、インビボで被験者におけるがんを検出、診断、及び/又は予後予測するのに使用するための診断用組成物を提供し、該組成物は、診断剤として、本発明のTCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞を含む。該方法は典型的には、(a)該診断剤を被験者に投与する工程、及び(b)該診断剤のその抗原標的への結合を検出する工程を含む。
【0142】
さらに、本発明は、インビトロで被験者におけるがんを検出、診断、及び/又は予後予測する方法を提供する。したがって、本発明はまた、(a)被験者の試料を準備する工程(該試料は1つ以上の細胞を含む);(b)該試料を、本発明のTCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞と接触させ;これにより、複合体を形成する工程、並びに(c)該複合体を検出する工程を含む、被験者におけるがんの存在を検出する方法を提供する。該複合体は、診断剤のその抗原標的への結合を示し、該抗原標的を発現している(がん)細胞の存在を示すと考えられる。
【0143】
どちらの方法でも、診断剤のその抗原標的への結合は、当技術分野において公知である慣用的な方法を使用して検出可能であり、とりわけ、使用される具体的な診断剤に依存する。本発明の診断剤に結合させることのできる適切な標識は、標識されたTCR構築物に関する章に例示されている。改変されたリンパ球を作製するための使用。
【0144】
本明細書において使用する「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という単数形は、内容から明らかにそうではないと示されない限り複数の対象物も含むことが注記されなければならない。したがって、例えば、「試薬」への言及は、1つ以上のこのような異なる試薬を含み、「方法」への言及は、本明細書に記載の方法について改変又は置き換えられ得る当業者には公知な等価な工程及び方法への言及も含む。
【0145】
特記しない限り、一連の要素の前にある「少なくとも」という用語は、シリーズの中の全ての要素を指すと理解されたい。当業者は、単に慣用的な実験を使用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施態様に対する多くの均等物を認識するか、又は確認することができるだろう。このような均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0146】
「及び/又は」という用語は本明細書において使用される場合にはいつでも、「及び」、「又は」及び「該用語によって接続される要素の全ての組合せ又は任意の他の組合せ」の意味を含む。
【0147】
本明細書において使用する「約」又は「およそ」という用語は、所与の数値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。しかしながら、それはまた具体数も含み、例えば「約20」は20を含む。
【0148】
「より少ない」又は「より多い」という用語は具体数を含む。例えば、20より少ないは、20未満か又はそれに等しいことを意味する。同様に、平均より大きいか又はより高いは、それぞれ、それより大きいか若しくは等しいか、又はより高いか若しくは等しいことを意味する。
【0149】
本明細書及びそれに続くクレームの全体を通して、内容から別様であることが必要とされない限り、「含む(comprise)」という単語及び「含む(comprises)」及び「含んでいる」などの変化形は、記載の整数若しくは工程、又は整数群若しくは工程群を包含するが、任意の他の整数若しくは工程、又は整数群若しくは工程群を排除するものではないと理解されるだろう。本明細書において使用する「含んでいる(comprising)」という用語は、「含有している」若しくは「含んでいる(including)」という用語、又は本明細書において使用する場合には時には「有している」という用語と置き換えることができる。
【0150】
本明細書において使用する「からなる」は、クレームの構成要件に明記されていないあらゆる要素、工程、又は成分を排除する。本明細書において使用する「実質的にからなる」は、クレームの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を排除しない。
【0151】
本明細書における各々の場合において、「を含んでいる」、「実質的にからなる」及び「からなる」という用語のいずれかを、他の2つの用語のいずれかと交換することができる。
【0152】
本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコール、材料、試薬、及び物質に限定されず、したがって変更され得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の範囲はクレームのみによって定義される。
【0153】
本明細書の文書全体に引用されている全ての刊行物及び特許(全ての特許、特許出願、科学文献、製造業者の仕様書、説明書などを含む)(上記又は下記)はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。この中のいずれも、本発明が先行発明を理由としてこのような開示に先んじる権利がないことの承認であると捉えられるものではない。参照により組み込まれた材料が本明細書と相反するか又は矛盾する範囲で、明細書はあらゆるこのような材料を取り替えるだろう。
【0154】
本発明及びその利点のより良い理解は、説明のためだけに提供されている以下の実施例から得られるだろう。実施例は、いずれにしても本発明の範囲を限定するものではない。
【0155】
本発明は以下によっても特徴付けられる。
1.(i)CAVHSTAQAGTALIF(配列番号1)のアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか又はからなるTCRα鎖可変領域のCDR3、及び/あるいは
(ii)CASSTHRGQTNYGYTF(配列番号2)のアミノ酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか又はからなるTCRβ鎖可変領域のCDR3
を含む、T細胞受容体(TCR)。
2. 前記TCRは、X1LX2GLDX3LL(配列番号31)のアミノ酸配列内に含まれるエピトープ又はそのMHC結合形、好ましくはVLDGLDVLL(配列番号32)のアミノ酸配列内に含まれるエピトープ又はそのMHC結合形に結合することができる、項目1記載のTCR。
3.(i)配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなるTCRα鎖可変領域、及び/又は
(ii)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなるTCRβ鎖可変領域
を含む、項目1又は2のいずれかに記載のTCR。
4.(i)TCRα鎖定常領域、及び/又は
(ii)TCRβ鎖定常領域
をさらに含む、項目1〜3のいずれかに記載のTCR。
5.(i)配列番号7、配列番号9、配列番号11、若しくは配列番号13から選択されたアミノ酸配列、又は、配列番号7、11、9、若しくは13に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか若しくはからなるTCRα鎖;及び/又は
(ii)配列番号8、配列番号10、配列番号12、若しくは配列番号14から選択されたアミノ酸配列、又は、配列番号8、10、12、若しくは14に対して少なくとも80%の同一率、より好ましくは少なくとも85%の同一率、より好ましくは90%若しくは95%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか若しくはからなるTCRβ鎖
を含む、項目1〜4のいずれかに記載のTCR。
6. 前記TCRが、天然TCR、TCR変異体、TCR断片、又はTCR構築物から選択される、項目1〜5のいずれかに記載のTCR。
7. TCRヘテロ二量体又は多量体を形成するように互いに共有結合で連結された少なくとも1本のTCRα鎖(群)及び少なくとも1本のTCRβ鎖(群)を含む、項目6記載のTCR構築物。
8. 場合により少なくとも1つのリンカーをさらに含む、Fc受容体;IgA、IgD、IgG、IgE、及びIgMをはじめとする、Fcドメイン;IL−2又はIL−15をはじめとするサイトカイン;毒素;抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD5抗体、抗CD16抗体、又は抗CD56抗体、又はその抗原結合断片をはじめとする、抗体又はその抗原結合断片;CD247(CD3ζ)、CD28、CD137、CD134ドメイン、又はその組合せから場合により選択された1つ以上の融合成分(群)をさらに含む、項目1〜7のいずれかに記載のTCR。
9.(i)項目1〜4のいずれかに定義されているような少なくとも1本のTCRα鎖;及び
(ii)項目1〜4のいずれかに定義されているような少なくとも1本のTCRβ鎖、
(iii)リンパ球の表面上の抗原又はエピトープに対して指向された、抗体又は一本鎖抗体断片(scFv)
を含み、
TCRα鎖(群)及びTCRβ鎖(群)は互いに連結され、場合によりリンカーを介して該抗体又はscFvに融合している、項目1〜8のいずれかに記載のTCR。
10. 前記抗原が、CD3、CD28、CD5、CD16、又はCD56から選択される、項目9記載のTCR。
11. 少なくとも1つの標識をさらに含む、項目1〜10のいずれかに記載のTCR。
12. 可溶性である項目1〜11のいずれかに記載のTCR。
13. 項目1〜12のいずれかに記載のTCRをコードしている核酸。
14. 配列番号23、24、25、26、27、28、29、又は30の核酸配列を含む、項目13記載の核酸。
15. 項目13又は14のいずれかに記載の核酸を含むベクター。
16. 項目1〜12のいずれかに記載のTCR、項目12又は13記載の核酸配列、又は項目14記載のベクターを含む、宿主細胞。
17. 細胞障害性Tリンパ球(CTL)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γ/δT細胞を含むがこれらに限定されないリンパ球から選択される、項目16記載の宿主細胞。
18.(i)前記TCRの発現を引き起こす条件下で項目17記載の宿主細胞をインキュベートする工程、
(ii)該TCRを精製する工程
を含む、項目1〜12のいずれかに記載のTCRを得るための方法。
19.(i)項目1〜12のいずれかに記載のTCR;
(ii)項目13〜14のいずれかに記載の核酸、
(iii)項目15記載のベクター;及び/又は
(iv)項目16若しくは17のいずれかに記載の宿主細胞、
のうち1つ以上、及び場合により薬学的賦形剤(群)
を含む、医薬組成物又は診断用組成物。
20. 医薬品としての使用のための、項目1〜12のいずれかに記載のTCR、項目13若しくは14記載の核酸、項目15記載のベクター、及び/又は項目16若しくは17記載の宿主細胞。
21. がんの検出、診断、予後予測、予防及び/又は治療に使用するための、項目1〜12のいずれかに記載のTCR、項目13若しくは14記載の核酸、項目15記載のベクター、及び/又は項目16若しくは17記載の宿主細胞。
22. がんの予防及び/又は治療が、
(a)(i)項目1〜12のいずれかに記載のTCR;
(ii)項目13若しくは14のいずれかに記載の核酸、
(iii)項目15記載のベクター;及び/又は
(iv)項目16若しくは17のいずれかに記載の宿主細胞、
(v)項目19記載の医薬組成物
のうち1つ以上を準備する工程;並びに
(b)(i)〜(v)の少なくとも1つをそれを必要とする被験者に投与する工程
を含む、項目21の使用のためのTCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞。
23. がんの予防及び/又は治療が、
(a)被験者の試料を準備する工程(該試料はリンパ球を含む);
(b)(i)項目1〜12のいずれかに記載のTCR;
(ii)項目13若しくは14のいずれかに記載の核酸、
(iii)項目15記載のベクター;及び/又は
(iv)項目16若しくは17のいずれかに記載の宿主細胞、
(v)項目19記載の医薬組成物
のうち1つ以上を準備する工程;
(c)工程(b)の(i)〜(v)の1つ以上を工程(a)のリンパ球に導入し、これにより改変されたリンパ球を得る工程、
(d)工程(c)の改変されたリンパ球を、それを必要とする被験者又は患者に投与する工程
を含む、項目21の使用のためのTCR、核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞。
24.(a)被験者の試料を準備する工程(該試料は1つ以上の細胞を含む);
(b)該試料を、
(i)項目1〜12のいずれかに記載のTCR;
(ii)項目13若しくは14のいずれかに記載の核酸、
(iii)項目15記載のベクター;及び/又は
(iv)項目16若しくは17のいずれかに記載の宿主細胞、
(v)項目19記載の医薬組成物
と接触させることにより複合体を形成する工程、並びに
(c)該複合体を検出する工程(該複合体の検出は、被験者におけるがんの存在の指標である)
を含む、インビトロにおいて被験者におけるがんの存在を検出する方法。
25. 改変されたリンパ球を生成するための、項目1〜12のいずれかに記載のTCR、項目13若しくは14記載の核酸、及び/又は項目15記載のベクターの使用。
【0156】
実施例
略称及び記号
【表1】
【0157】
実施例1:PRAME特異的T細胞クローンの単離
本発明者らは、任意の所望のMHC拘束性及び抗原特異性を有するT細胞クローンを単離するためのインビトロにおけるプライミングアプローチを使用した。プライミングシステムは、抗原提示細胞として成熟樹状細胞(mDC)及び応答細胞として自己CD8
+の豊富なT細胞を使用する。配列番号33に参照されているような完全長ヒトPRAMEアミノ酸配列をコードしているインビトロで転写されるRNA(ivtRNA)は、特異的な抗原の発生源としての役割を果たす。ivtRNAは、mDCに電気穿孔された後、完全長タンパク質に翻訳され、これは続いてプロセシングされmDCのMHC分子によってペプチドとして提示される。同じドナーに由来するivtRNAのトランスフェクトされたmDCとT細胞のインビトロにおける共培養により、対応するTCRの発生源としての役目を果たす抗原特異的T細胞が新規に誘導される。抗原特異的T細胞は様々な方法によって強化され得、これは限界希釈法又はFACSに基づいた単一細胞播種によってクローニングされる。
【0158】
実施例1.1:成熟樹状細胞を使用したプライミングアプローチ
樹状細胞による高親和性TCRを有するT細胞のプライミングは、以下のプロトコールに従って自己MHC分子によるペプチド提示を使用して成し遂げられた(
図1):
・HLA−A
*02:01/PRAMEプライミング
・DC用の適切な成熟カクテルを使用して産生された8日目のmDC。
・APCの積載:ivtRNA。
・HLA−A
*02:01RPAME
100〜108多量体を介した強化
・FACS技術を使用した単一細胞選別
【0159】
実施例2:機能/特異性の分析
所望のPRAMEエピトープ(RPAME
100〜108)を認識する候補T細胞クローン(T細胞クローンT4.8−1−29)の同定後、機能及び特異性に関する完全な特徴付けが実施された。分析は、様々なヒト腫瘍細胞株との共培養液中の単離されたT細胞クローン(T細胞クローンT4.8−1−29)のサイトカイン分泌パターン、クローンが様々な標的細胞を特異的に認識する能力、クローンの機能的結合力、並びにT2及び腫瘍細胞に対する細胞障害性を含んでいた。
【0160】
実施例2.1:元来のT細胞クローンT4.8−1−29の分析
実施例2.1.1:ポリサイトカイン分析
実験の設計図:ペプチドの積載されたT2細胞による刺激
【0161】
サイトカイン遊離は、以下のプロトコールに従って測定された:
・IFN−γ、IL−2、TNF−α、IL−5、IL−10、IL−6、IL12p70、IL−4、及びIL−1βを検出する、マルチプレックス(登録商標)サイトカイン分析が実施された。
・細胞の刺激:飽和量(10
−5M)のPRAME
100〜108ペプチド(「VLDペプチド」)又は無関係のPRAME
300〜309、すなわちALYVDSLFFLペプチド(「ALYペプチド」、配列番号230)の積載されたT2細胞(HLA−A
*02
陽性)。
・関係のあるペプチド又は無関係のペプチドの積載されたT2細胞とT細胞の共培養液の上清を24時間後に収集し、続いて、マルチプレックス(登録商標)サイトカイン分析を使用して測定した。
【0162】
結果
・候補クローンは、バックグラウンドレベルを上回るIFN−γ、IL−2、及びTNF−α(Th1/Tc1サイトカイン)を分泌した。サイトカイン発現パターンは、良好な抗腫瘍エフェクター機能に関連したTh1表現型を反映する(
図2)。
・IL−5及びIL−13(Th2/Tc2サイトカイン)分泌は検出されなかった(n.d.)。
【0163】
実施例2.2:腫瘍細胞の認識
実験の設計図:腫瘍細胞株による刺激
・IFN−γELISAを使用して、一連のヒト腫瘍細胞株を用いての刺激後のサイトカイン分泌を評価した(PRAMEの発現状態を、NanoString nCounter(登録商標)分析によって検出した)。
・T細胞クローンT4.8−1−29と、K562−A2、Mel−624.38、Colo−678、647−V及びSuDHL−6(全てHLA−A
*02
陽性)との共培養から最大24時間後に上清を収集した。特異的なIFN−γ分泌を、標準的なELISAを使用して評価した。
・標的細胞:
○K562−A2(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陽性)
○Mel−624.38(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陽性)
○Colo−678(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)
○647−V(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)
○SuDHL−6(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)
【0164】
結果
・T細胞クローンT4.8−1−29は、PRAME
陽性、HLA−A
*02
陽性腫瘍細胞株K562−A2、及びMel−624.38(陽性対照:ペプチドでパルスされたT2細胞)との共培養液中において高いIFN−γ分泌を示した。
・PRAME
陰性、HLA−A
*02
陽性腫瘍細胞株は全く、T細胞クローンT4.8(陰性対照;n.d.、検出されず)によって認識されなかった。
・HLA−A
*02及びPRAMEを発現している腫瘍細胞株のみが、自己拘束性T細胞クローンT4.8−1−29によって認識され、これにより抗原特異性が示された(
図3)。
【0165】
実施例2.3:機能的結合力
実験の設計図:ペプチドでパルスされたT2細胞を用いての刺激
・PRAME
100〜108(VLD)ペプチドの認識のための機能的なT細胞の結合力を、ペプチドの積載されたT2細胞とクローンT4.8−1−29の共培養後のIFN−γ分泌の検出によって測定した。
・標的細胞:滴定量の外因性PRAME
100〜108(VLD)ペプチド(10
−5M〜10
−12M)の積載されたT2細胞(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)。
・エフェクター:標的の比(E:T)は1:1。
・相対的なIFN−γ遊離は、最大遊離に対する比率で示される。機能的結合力を規定する最大半量のIFN−γ分泌は、点線によって示される。
・培養上清を、共培養から約24時間後に収集し、標準的なELISAによって評価した。
【0166】
結果
・クローンT4.8−1−29は、約1×10
−9〜1×10
−10モル/L[M]濃度のPRAME
100〜108ペプチドで最大半量のIFN−γ分泌を示し(2回の独立した実験の平均値)、これはウイルス特異的T細胞の生理学的範囲内にあり、効率的な抗腫瘍効力にとって望ましい機能的結合力を示すと報告されている(Aleksic, M et al. Eur. J. Immunol.;42 (12):3174-3179)。
・→TCR T4.8−1−29:約1×10
−9モル/L[M](
図4)。
【0167】
実施例2.3:トランスジェニックT細胞受容体:TCR T4.8−1−29の分析
PRAME
100〜108特異的T細胞クローンT4.8−1−29が同定されたので、次の工程は、対応するTCR鎖をコードしているDNA配列情報の単離、クローニングされたTCRを適切なレシピエントT細胞に導入、続いて、TCRの工学操作されたT細胞の機能的分析を含んでいた。
【0168】
実施例2.3.1:T細胞受容体配列の分析
元来のクローンT4.8−1−29のTCRα鎖及びβ鎖のDNA配列を、社内で次世代型シークエンス(NGS−TCRseq)によって分析した。対応するTCRα及びβのDNA配列をDNA遺伝子合成(GeneArt、レーゲンスブルク)によって再構築し、ivtRNA産生のためにpGEMベクター骨格に並びに安定な形質導入のためにレトロウイルスベクターにクローニングした。
【0169】
実施例2.3.2:トランスジェニックTCRの機能的検証
T細胞クローンT4.8−1−29のTCR配列をレシピエント細胞に導入
元来のT細胞クローンT4.8−1−29のTCR DNA配列を、電気穿孔法によるレシピエントエフェクター細胞の一過性トランスフェクションのために、完全なT4.8−1−29TCR配列をコードしているRNAにインビトロで転写したか、又は、これもまた完全なTCR T4.8−1−29配列をコードしているレトロウイルスベクター構築物を使用することによるエフェクター細胞の安定な形質導入のために使用した。
【0170】
実験の設計図:ペプチドでパルスされたT2細胞による刺激
・PRAME
100〜108(VLD)ペプチドでパルスされたT2細胞との共培養液中の、TCR T4.8−1−29のトランスフェクトされたレシピエントT細胞(CD8
陽性レシピエントT細胞クローン+T4.8−1−29ivtRNA)の特異的なIFN−γ分泌を、標準的なELISAを使用して測定した。
・標的細胞:10
−5MのVLD(関連性のある)ペプチド又は「ELAペプチド」(無関係の)ペプチド(ELAGIGILTV、MelanA、配列番号231)を用いてパルスされたT2細胞(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)。
【0171】
結果
・TCR T4.8−1−29のトランスフェクトされたレシピエントT細胞は、関連性のあるペプチドの積載されたT2細胞に対する良好な認識を示したが、T2細胞に無関係のペプチドを積載した場合には全く認識しなかった。
・T4.8−1−29のTCRα鎖及びβ鎖のDNA配列は正しく再構築され、導入遺伝子として良好な機能を示した(
図5)。
【0172】
実施例2.4:自己ペプチドの認識の分析
実験の設計図:ペプチドの積載されたT2細胞との共培養時におけるTCR T4.8−1−29を発現しているCD8
+の豊富なPBMCのIFN−γ分泌
10
−5MのPRAME
100〜108VLDペプチド又はHLA−A
*02から溶出した遍在的な自己ペプチド(131個の自己ペプチド)の積載された、T2標的細胞(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)と共培養されたクローンT4.8−1−29のT細胞受容体を発現しているCD8
+の豊富なPBMCのIFN−γ分泌を、ELISAアッセイを使用して決定した。
【0173】
結果
・クローンT4.8−1−29のT細胞受容体を発現しているCD8
+の豊富なPBMCは、遍在的な自己ペプチド(陽性対照:PRAME100〜108の積載されたT2細胞)の積載されたT2細胞(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)と共培養された場合にはIFN−γの分泌を全く示さず、これによりTCR4.8−1−29の高い特異性が反映される(
図6)。
【0174】
実施例2.5:細胞障害性分析
実験の設計図:ペプチドでパルスされたT2細胞の溶解
・PRAME
100〜108(VLD)ペプチドでパルスされたT2細胞の溶解を、T4.8−1−29TCRを発現しているCD8の豊富なPBMCとの共培養中の蛍光標識された標的細胞の消失を決定する、TVA(商標)蛍光死滅アッセイ(CTL、セルラー・テクノロジー有限会社、米国)を使用することによって測定した。
・標的細胞:TCR T4.8−1−29を発現しているPBMCと共培養された10
−5MのPRAME
100〜108(VLD)(関連性のある)ペプチド又はSLL(SLLQHLIGL(配列番号229)、PRAME、無関係)ペプチドを用いて段階的なE:T比でパルスされたT2細胞(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陰性)。
【0175】
結果
・T4.8−1−29を発現しているPBMCは、低いE:T比でさえ、関連性のある(VLD)ペプチドの積載されたT2細胞の効率的な溶解を示す。
・関連性のないSLLペプチド(PRAME)の積載されたT2細胞は、どのE:T比でも溶解されなかった(陰性対照)(
図7)。
【0176】
実験の設計図:腫瘍細胞の溶解
・腫瘍細胞に対する細胞障害活性を、T細胞クローンT4.8−1−29のトランスジェニックTCRを発現しているPBMCとの共培養中の蛍光標識された標的細胞の消失を検出する、TVA(商標)蛍光死滅アッセイ(CTL、セルラー・テクノロジー有限会社、米国)を使用して分析した。
・標的細胞:ヒト腫瘍細胞株K562を実験に使用した。K562細胞を、ヒトHLA−A
*02:01をコードしているivtRNA及び/又はヒトPRAMEをコードしているivtRNAを使用してトランスフェクトした。ヒトK562は、内因性PRAME発現を示す(ナノストリングによって決定されそして文献に報告されているような)。さらに、PRAME発現は、ヒトPRAMEをコードしているivtRNAを用いてのK562細胞のトランスフェクションによって、又はPRAME
100〜108VLDペプチドの外来的積載によって増加した。
○HLA−A
*02:01をコードしているivtRNAを用いてトランスフェクトされ、PRAME
100〜108(VLD)ペプチドの積載されたK562:K562−(PRAME
+/A2
−)+A2−ivtRNA+VLDペプチド(
図8A)。
○PRAMEをコードしているivtRNAを用いて形質導入されたK562:K562−(PRAME
+/A2
−)+PRAME−ivtRNA(
図8B)。
○PRAMEをコードしているivtRNA及びHLA−A
*02をコードしているivtRNAを用いてトランスフェクトされたK562:K562−(PRAME
+/A2
−)+A2−ivtRNA(
図8C)。
○HLA−A
*02をコードしているivtRNAを用いてトランスフェクトされたK562:K562−(PRAME
+/A2
−)+A2−ivtRNA+PRAMEivtRNA(
図8D)。
・腫瘍細胞を、TCR T4.8−1−29を発現しているPBMCと段階的なE:T比で共培養した。
【0177】
結果
・PRAME ivtRNAを用いてのトランスフェクション、並びに、HLA−A
*02:01を発現しているK562細胞へのVLDペプチドの積載は、トランスジェニックTCR T4.8−1−29を発現しているPBMCによる比溶解を増加させた(
図8A〜D)。
【0178】
実施例2.5:TCR T4.8−1−29を発現しているCD8+の豊富なPBMCによる、腫瘍細胞の認識
実験の設計図:腫瘍細胞株による刺激
・IFN−γELISAを使用して、一連のヒト腫瘍細胞株を用いての刺激後のサイトカイン分泌を評価した(PRAMEの発現状態を、NanoString nCounter(登録商標)分析によって検出した)。
・T細胞受容体T4.8−1−29を発現しているCD8
+の豊富なPBMCと、K562−B35、K562−A2、Mel−624.38、Colo−678、及びSKMEL23との共培養から最大24時間後に上清を収集した。特異的なIFN−γ分泌を、標準的なELISAを使用して評価した。
・標的細胞:
○K562−B35 (HLA−A
*02
陰性、PRAME
陽性)
○K562−A2 (HLA−A
*02
陽性、PRAME
陽性)
○K562−A2 VLDペプチドが積載された(HLA−A
*02
陽性、PRAME
陽性)
○Mel−624.38 (HLA−A
*02
陽性、PRAME
陽性)
○SkMEL23 (HLA−A
*02
陽性、PRAME
陽性)
【0179】
結果
・T細胞受容体T4.8−1−29を発現しているCD8
+の豊富なPBMCは、PRAME
陽性、HLA−A
*02
陽性腫瘍細胞株K562−A2、さらにVLDペプチドの積載されたK562−A2との共培養液中では高いIFN−γ分泌を示し、PRAME
陽性、HLA−A
*02
陽性、Mel−624.38、及びSkMEL23との共培養時には中程度のIFN−γ分泌を示した。
・HLA−B
*35の発現を有するPRAME
陽性K562はIFN−γ分泌を誘導せず、これにより、TCR T4.8−1−29のHLA−A
*02拘束性が確認された。
【0180】
実施例2.6:TCR T4.8−1−29を用いてのPBMCの形質導入
・健康なドナーのCD8の豊富なPBMCを、TCR T4.8−1−29構築物を含有しているプラスミドを用いて形質導入した。TCRの形質導入効率を分析するために、形質導入されていない及びTCR T4.8−1−29の形質導入されたPBMCの表面染色後にFACS分析を実施した。細胞を、CD8、及びTCRβ鎖のTCR可変領域(TRBV9)に対して特異的な抗体を用いて染色した。対照エフェクター細胞個体群において、内因的にTRBV9を発現しているT細胞は8%存在するが、形質導入後にはT細胞の60%がTRBV9を発現した。このことは、50%を超える形質導入効率を示す(
図11)。
【0181】
実施例2.7:T細胞クローンT4.8−1−29及びTCR T4.8−1−29を用いて形質導入されたPBMCによる、PRAME100〜108(VLD)ペプチドに対する機能的T細胞の結合力
・PRAME
100〜108(VLD)ペプチドの認識についての機能的T細胞の結合力を、T細胞クローンT4.8−1−29(実線の曲線)又はT4.8−1−29を用いて形質導入されたエフェクターPBMC(点線の曲線)のいずれかを、ペプチドの積載されたT2細胞と共培養した後のIFN−γ分泌の検出によって測定した。T2細胞に、10
−5M〜10
−12Mの濃度範囲の滴定量のペプチドを積載した。共培養上清を、共培養から約24時間後に収集し、標準的なELISAによって評価し、相対的なIFN−γ遊離は最大遊離に対する比率で示される。機能的結合力を規定する最大半量のIFN−γ分泌(EC50)は点線によって示される。元来のT細胞クローン及びトランスジェニックTCRの機能的結合力は非常に類似している(
図12)。
【0182】
実施例2.8:異なる標的細胞(OPM−2及びU937)を用いた、TCR T4.8−1−29の形質導入されたPBMC及び形質導入されていない対照PBMCの抗原特異性の分析
・抗原特異性を分析するために、T4.8−1−29の形質導入されたエフェクターPBMC及び形質導入されていない対照PBMCを、異なる標的細胞と共培養した。腫瘍細胞株OPM−2及びU937(HLA−A2陰性及びPRAME陰性)を、改変せずに、又はHLA−A2をコードしているivtRNAを用いてトランスフェクトさせて試験した。さらに、該細胞はまた、HLA−A2とPRAMEをコードしているivtRNA、又はHLA−A2と無関係の抗原をコードしているivtRNAの組合せを用いてトランスフェクトした後に試験した。対照として、エフェクターもまた、PRAME
VLDペプチド(10
−5M)又は無関係のPRAME
SLLペプチド(10
−5M)の積載されたT2細胞と共に培養した。24時間共培養した後、上清を収集し、IFN−γの分泌量を、標準的なELISAによって測定した。VLDの積載されたT2細胞との共培養液中のTCRの形質導入されたPBMCについて、多量のIFN−γが測定された。また、HLA−A2及び抗原PRAMEを用いてトランスフェクトされた両方の腫瘍細胞株が、TCRの形質導入されたPBMCによるIFN−γ分泌を誘導した。抗原PRAMEと組み合わせた、必要とされるMHC拘束性成分としてHLA−A2を発現している腫瘍細胞のみが認識され、これによりT4.8−1−29を発現しているPBMCが活性化された(
図13)。
【0183】
実施例2.9:様々な標的細胞(K562、K562_A2及びMel624.38)を用いての、TCR T4.8−1−29の形質導入されたPBMC及び形質導入されていない対照PBMCの抗原特異性の分析
・抗原特異性を分析するために、T4.8−1−29の形質導入されたエフェクターPBMC及び形質導入されていない対照PBMCを、様々な標的細胞株と共培養した。腫瘍細胞株K562(HLA−A2陰性及びPRAME陽性)並びにK562_A2及びMel624.38(HLA−A陽性及びPRAME陽性)及び647−V(HLA−A2陽性及びPRAME陰性)を試験した。対照として、エフェクターも、PRAME
VLDペプチド(10
−5M)又は無関係のPRAME
SLLペプチド(10
−5M)の積載されたT2細胞と共培養した。24時間共培養した後、上清を収集し、IFN−γの分泌量を標準的なELISAによって測定した。VLDの積載されたT2細胞との共培養中のTCRの形質導入されたPMBCにおいて多量のIFN−γが測定された。
【0184】
測定されたIFN−γ値は、VLDペプチドの積載されたT2細胞並びに腫瘍細胞株K562_A2及びMel624.38による、TCR T4.8−1−29の形質導入されたPBMCの活性化を示した。よって、HLA−A2陽性で内因的にPRAMEを発現している腫瘍細胞株のみが、形質導入されたPBMCによって認識され、一方、HLA−A2又は抗原のいずれかが存在しなければ、活性化は妨げられた(
図14)。
【0185】
実施例2.10:腫瘍細胞に対するT4.8−1−29の形質導入されたエフェクターの細胞障害活性の分析
・腫瘍細胞に対するT4.8−1−29の形質導入されたエフェクターの細胞障害活性を、細胞のライブイメージングを可能とする顕微鏡に基づいたシステムであるIncuCyte ZOOM(登録商標)(生細胞分析システム(エッセンバイオサイエンス社))を使用して分析した。
【0186】
TCR T4.8−1−29の形質導入されたPBMC及び形質導入されていないエフェクターPBMCを、HLA−A2陽性PRAME陽性の悪性黒色腫細胞株Mel624.38と共培養した。悪性黒色腫細胞を96ウェルプレートに播種し、約60%のコンフルエント状態に達するとエフェクター細胞を加えた。細胞死を可視化するために、赤色のアネキシンV色素を同様に加え、1日1回4日間画像を撮影した。形質導入されていないエフェクターと共培養中の悪性黒色腫細胞株Mel624.38は経時的に増殖し(上の列)、死滅細胞の事象はほんの稀にしか見られなかったが、TCRの形質導入されたエフェクターは腫瘍細胞の増殖を妨げ、これにより多量の死滅細胞を含む細胞クラスターが形成された。このことは、T4.8−1−29を発現しているエフェクター細胞は、PRAMEを発現している腫瘍細胞を効率的に溶解し、数日間におよび腫瘍細胞の増殖を妨げることができることを示す。
【0187】
実施例2.11:T4.8−1−29を発現しているPBMCの安全性プロファイルの分析
・T4.8−1−29を発現しているPBMCの安全性プロファイルを分析するために、健康なヒト組織の認識を排除しなければならない。それ故、2人の異なるドナーに由来するT4.8−1−29の形質導入されたPBMCを、HLA−A2陽性ドナーの健康な組織から得られた細胞と共培養した。一例として、形質導入されたPBMC並びに形質導入されていないPBMCを、ヒト腎臓毛細血管上皮細胞(HRCEpC)と共培養した。対照としてHRCEp細胞にさらに、VLDペプチド(10
−5M)を積載した。24時間共培養した後、上清を収集し、IFN−γの分泌量を標準的なELISAによって測定した。TCRの形質導入されたPBMCは、ペプチドの積載された標的細胞との共培養時にのみ活性化されたが、改変されていないHRCEp細胞は全く認識されなかった。