(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有人航空機の重心は、前記ロータよりも垂直方向の下方に位置するとともに、4以上の前記ロータの中心位置よりも水平方向の前方に位置していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の有人航空機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ドローン型の有人航空機として運用するためには、航空法に規定される「航空の用に供するもの」でなければならない。航空法では、航空機としての要件の中に、飛行中に動力を失った場合に於ける操縦の確保、搭乗した人の安全確保を規定しており、その要件を満たすためには、オートローテーション降下を実施可能である必要がある。
【0006】
前述した特許文献1に開示された技術では、3枚の羽は固定ピッチであり、また、翼面積も小さいことから、オートローテーション降下を実施することができないという問題点がある。
【0007】
本発明は、オートローテーション降下が可能な有人航空機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ピッチ調整機構を有する4以上のロータを有する有人航空機において、回転力を出力する原動機と、前記原動機から出力される前記回転力を分岐し、4以上の前記ロータのそれぞれに前記回転力を伝達する分岐部と、前記原動機と前記分岐部の間に配置され、前記原動機から前記回転力が供給されない場合には前記
分岐部を前記原動機から切り離すとともに4以上の前記ロータを同じ角速度で回転させる切り離し機構と、操縦者からの指示に応じて前記ピッチ調整機構を制御することで飛行姿勢を制御する制御部と、
前記分岐部に接続されており、前記原動機から前記回転力が供給されない場合に、前記ロータに前記回転力を一定期間供給するモータとを有し、前記制御部は、動力系に故障が生じた場合には、前記ロータの前記ピッチ調整機構を制御することでオートローテーション降下を実行させるとともに、
前記分岐部が前記原動機から切り離された後、自動的に前記モータを起動して前記モータによって前記ロータを加速し、前記オートローテーション降下を実行することを特徴とする。
このような構成によれば、オートローテーション降下が可能な有人航空機を提供することができる。
また、このような構成によれば、原動機の停止直後にロータの回転数が低下し、オートローテーション降下ができなくなることを防止できる。
【0009】
また、本発明は、
前記制御部が、前記ロータのピッチ角がマイナスにされた場合に自動的に前記モータを起動して前記モータによって前記ロータを加速し、前記オートローテーション降下を実行することを特徴とする
。
【0010】
また、本発明は、前記ロータは、少なくとも2枚のブレードを有し、前記ピッチ調整機構は、前記ロータを回転させる駆動軸と、前記駆動軸に対して前記ブレードが直交するとともに、回動自在に取り付けるハブと、前記駆動軸の軸方向に移動することで前記ブレードのピッチを調整するヨーク部と、を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、ロータが有するブレードのピッチ角を調整することが可能になる。
【0011】
また、本発明は、前記ロータは、3枚以上のブレードを有するとともに、各ブレードはピニオンギアを有し、前記ピッチ調整機構は、前記ロータを回転させる駆動軸と、前記駆動軸に対して前記ブレードが直交するとともに、回動自在に取り付けるハブと、前記駆動軸の周方向に回転し、回転することで前記ブレードの前記ピニオンギアを回動させて前記ブレードのピッチを調整するラックギアと、を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、ブレードの枚数が多い場合でも、ロータが有するブレードのピッチ角を容易に調整することが可能になる。
【0012】
また、本発明は、前記ロータは、3枚以上のブレードを有するとともに、各ブレードはピニオンギアを有し、前記ピッチ調整機構は、前記ロータを回転させる駆動軸と、前記駆動軸に対して前記ブレードが直交するとともに、回動自在に取り付けるハブと、前記駆動軸の周方向に回転し、回転することで前記ブレードのヒンジを回動させて前記ブレードのピッチを調整するヘッドと、を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、ブレードの枚数が多い場合でも、ロータが有するブレードのピッチ角を容易に調整することが可能になる。
【0013】
また、本発明は、
前記モータが、前記オートローテーション降下の開始時に一時的に動作することを特徴とする
。
【0015】
また、本発明は、4つの前記ロータを有し、前記分岐部は、等速傘歯車が4個対向して配置され、前記原動機からの回転力を4つ前記ロータに対して分岐して伝達する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、4つのロータに対して動力を確実に伝達することができる。
【0016】
また、本発明は、4つの前記ロータを有し、前記分岐部は、4個の平歯車が隣接されてそれぞれ逆回転方向になるように配置され、前記原動機からの回転力を少なくとも1個の前記平歯車に伝達し、4個の前記平歯車の回転力を4つ前記ロータに対して分岐して伝達する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、4つのロータに対して動力を確実に伝達することができる。
【0017】
また、本発明は、前記ロータの数は、4以上の偶数であることを特徴とする。
このような構成によれば、反トルクを相殺するとともに、ピッチを制御することで機体制御を行うことができる。
【0018】
また、本発明は、前記有人航空機の重心は、前記ロータよりも垂直方向の下方に位置するとともに、4以上の前記ロータの中心位置よりも水平方向の前方に位置していることを特徴とする。
このような構成によれば、オートローテーション降下時に、機体の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、オートローテーション降下が可能な有人航空機を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
(A)本発明の実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るドローン型の有人航空機の外観の構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る有人航空機10は、人が搭乗可能な本体部1、4つのロータ31〜34、着陸脚部3、および、タイヤ4を有している。
【0023】
ここで、本体部1は、前方には人が搭乗可能なスペースが形成され、後方には後述する原動機および制御部等が収容可能な機構格納部が形成されている。
【0024】
本体部1の上部には、4つのロータ31〜34が配置されている。ロータ31は左前方、ロータ32は左後方、ロータ33(
図1では不図示)は右後方、ロータ34は右前方に配置されている。ロータ31〜34のそれぞれは、後述するように16枚のブレードを有しており、これらのブレードはピッチ角を調整可能とされている。また、有人航空機10を前方から眺めたとき、ロータ31のブレードとロータ34のブレードは、ハの字形状または逆ハの字形状となるように傾きを有するように配置されている。同様に、ロータ32のブレードとロータ33のブレードは、有人航空機10を前方から眺めたとき、ハの字形状または逆ハの字形状となるように傾きを有するように配置されている。
【0025】
着陸脚部(スキッド)3は、地面に接地し、有人航空機10が傾かないように支える機能を有する。また、タイヤ4は、前方に1つおよび後方に2つ設けられている。タイヤ4は、例えば、有人航空機10が前進速度を有する状態でオートローテーション降下して着陸する場合に、回転することで機体を滑走させ、急停止による衝撃を抑制する。
【0026】
なお、
図1では明示されていないが、有人航空機10の重心は、ロータ31〜34の回転中心よりも垂直方向の下方に位置し、ロータ31〜34の中心位置よりも水平方向の前方に位置している。このような重心配置により、オートローテーション降下時の安定性を高めることができる。
【0027】
図2は、
図1に示す有人航空機10の動力系統および制御系統の一例を説明するための図である。
図2に示すように、有人航空機10は、原動機11、切り離し部12、モータ13、分岐部14、制御部15、ピッチ調整機構21〜24、および、ロータ31〜34を有している。
【0028】
ここで、原動機11は、例えば、レシプロエンジン、ガスタービン、または、モータによって構成される。原動機11は、制御部15の制御に応じた回転数で回転し、回転力を発生して出力する。
【0029】
切り離し部12は、制御部15によって制御され、原動機11から出力される回転力を分岐部14に伝達するとともに、オートローテーション実行時には、原動機11と分岐部14との接続を切り離し、ロータ31〜34が自由に回転するようにする。なお、切り離し部12は、例えば、かみ合いクラッチ、摩擦クラッチ、遠心クラッチ等によって構成することができる。
【0030】
モータ13は、制御部15によって制御され、オートローテーション降下の開始時に一時的に動作し、分岐部14に回転力を伝えることで、ロータ31〜34の回転数を上昇させる。なお、モータ13には、図示しない蓄電池から電力が供給される。
【0031】
分岐部14は、切り離し部12から出力される回転力を4分岐し、ピッチ調整機構21〜24に供給する。
【0032】
ピッチ調整機構21〜24は、制御部15によって制御され、ロータ31〜34のそれぞれのピッチを調整することで、所望の方向に移動、回転等することが可能となる。
【0033】
ロータ31〜34は、後述するように16枚のブレードによって構成され、分岐部14から供給される回転力によって回転されるとともに、ピッチ調整機構21〜24によってブレードのピッチ角を調整可能とされている。なお、上方向から眺めた場合、ロータ31,33は時計回りに回転し、ロータ32,34は反時計方向に回転する。もちろん、このような回転方向は一例であって、これ以外の方向に回転するようにしてもよい。
【0034】
図3は、
図2に示す分岐部14の構成例を示す図である。
図3に示すように、分岐部14は、紙面の奥行き方向に平行な4つの入力軸140と、紙面に平行に配置される4つの出力軸143とを有している。すなわち、
図3の例では、紙面の奥側に存在する入力軸140から回転力が入力され、紙面の手前側に放射状に配置される出力軸143に回転力が出力される。なお、機体の構成によっては、入力軸140を出力軸とし、出力軸143を入力軸に設定するようにしてもよい。4つの入力軸140のうちの1つの入力軸は、切り離し部12に接続され、残りの3つの入力軸の少なくとも1つはモータ13に接続される。入力軸140には傘型のギア141が接続され、また、出力軸143にも傘型のギア142が接続されている。ギア141とギア142のギア比は1:1とされている。入力軸140のいずれかが回転されると、ギア142が
図3に矢印で示す方向にそれぞれ回転する。
【0035】
4つの出力軸143は、ピッチ調整機構21〜24を介してロータ31〜34に接続される。このような分岐部14によって回転力を分岐してロータ31〜34に供給することで、
図1に示すロータ31〜34が同じ回転数で回転するとともに、ロータ31〜34のうち、対角線上に配置される1組のロータが同じ方向に回転する。
【0036】
図4および
図5は、ピッチ調整機構21〜24の構成例を示す図である。なお、ピッチ調整機構21〜24は同様の構成とされるので、以下では、これらをピッチ調整機構20として説明する。
【0037】
図4に示すように、ピッチ調整機構20は、回転軸201、ギア202,203、L型リンク204、ピッチコントロール軸205、軸端部206,207、ロータ軸208、ベアリング209,210、ロータヘッド211、ギア212、ギア220、および、ブレード軸221を有している。
【0038】
ここで、回転軸201は、
図3の4つの出力軸143のいずれかに接続される。ギア202は、回転軸201から伝達される回転力をギア203に伝達する。ギア203は、ギア202からの回転力をロータ軸208に伝達する。ベアリング209,210は、ロータ軸208を回転可能に支持する。ロータ軸208は上側の端部がロータヘッド211に接続されているので、ロータ軸208が回転されると、ロータヘッド211が回転される。
【0039】
ロータヘッド211には、
図5に示すように、16本のブレード軸221が放射状に等間隔で配置されている。ブレード軸221は、ロータヘッド211に合わせて回転する。ブレード軸221の先端にはブレード(不図示)が取り付けられており、ロータヘッド211が回転するとブレードが回転される。ブレード軸221の先端に付けられたギア220は、円環形状のギア212に当接しておりそれぞれが独立して回転するので、ギア212が回転されると、ギア220がそれぞれ回転される。
【0040】
L型リンク204は、図示しないサーボから伝達される左右方向(矢印の方向)の力を上下方向の力に変換し、軸端部206に伝達する。この結果、ピッチコントロール軸205が上下方向に移動する。なお、ピッチコントロール軸205は、ロータ軸208内に配置され、ロータ軸208と一緒に回転する。
【0041】
ピッチコントロール軸205が上下方向に移動すると、軸端部207に形成されたピニオンと、ギア212の軸端部207が当接する部分に形成された斜歯ラックとによって、上下運動が回転運動に変換され、ギア212が回転される。ギア212が回転されると、ギア212に当接されている16個のギア220に回転力がそれぞれ伝達され、これにより16枚のブレードのピッチ角(コレクティブピッチ角)が調整される。すなわち、本実施形態では、ラックピニオン式の調整機構によって、ブレードのコレクティブピッチ角が調整される。なお、一例として、ロータの直径は2.5mとされ、ロータヘッド211の直径は50cmとされ、ブレードの長さは1mとされる。もちろん、これ以外の寸法に設定してもよい。
【0042】
(B)本発明の実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作について説明する。以下では、通常の飛行動作について説明した後、オートローテーション動作について説明する。
【0043】
まず、通常の飛行動作について説明する。操縦者が本体部1に搭乗し、原動機11を始動する操作を行うと、原動機11が回転を開始する。なお、このとき、切り離し部12は、切り離した状態としておく。
【0044】
操縦者が切り離し部12の切り離しを解除すると、原動機11の回転力が分岐部14に供給される。切り離し部12の出力軸は、分岐部14を構成する4つの入力軸140のいずれかに接続されているので、切り離し部12から供給される回転力はギア141を介して4つのギア142に伝達され、4つの出力軸143は、
図3に矢印で示す方向に同じ回転数でそれぞれ回転する。
【0045】
4つの出力軸143の回転力は、ピッチ調整機構21〜24のそれぞれを構成する回転軸201に伝達される。回転軸201の回転力はギア202,203を介してロータ軸208に伝達される。ロータ軸208の回転力は、ロータヘッド211に伝達される。この結果、ロータヘッド211が回転されるので、ロータヘッド211に固定された16本のブレード軸221が回転され、ブレードが回転される。
【0046】
このとき、操縦者が操縦桿を操作して、有人航空機10が浮上しないようにしている場合、操縦桿の動きはL型リンク204を介して伝達され、ピッチコントロール軸205が上下方向に移動される。ピッチコントロール軸205の上下方向の動きは、ギア212の回転運動に変換される。ギア212の回転運動はギア220を介してブレード軸221に伝達される。この結果、ブレードのピッチ角が、例えば、0度以下に設定されることから、ロータ31〜34による揚力は発生しない。なお、原動機11の回転が安定してくると、回転軸201は、例えば、600[rpm]以下の所定の回転数で定速回転する。なお、600[rpm]は、単なる一例であって、本願発明がこのような回転数に限定されるものではない。
【0047】
つぎに、操縦者が操縦桿に対して、上昇するための操作を行うと、操縦桿の操作は制御部15に伝達される。制御部15は、操縦桿の操作に基づいて、ロータ31〜34のピッチ角の制御量を算出し、図示しないサーボを駆動することで、L型リンク204を左右方向に駆動する。この結果、ピッチコントロール軸205が上下に移動し、この上下方向の動きがギア212の回転運動に変換され、ギア220が回転される。これにより、ブレードのピッチ角が増加されるので、ロータ31〜34が揚力を生じ、生じる揚力が操縦者を含む機体の重量を超えた時点で離陸する。なお、前述したように、ロータ31,33およびロータ32,34は同じ方向に回転し、ロータ31,32およびロータ33,34は逆方向に回転することから、ピッチ角が同じであれば、反動トルクが相殺され、機体のヨー軸方向の回転は生じないで静止した状態となる。
【0048】
このとき、制御部15は、図示しないジャイロセンサからの出力を参照し、機体がヨー軸、ピッチ軸、ロール軸を中心として回転しないように制御する。なお、制御方法については、後述する。
【0049】
操縦者が、操縦桿に対して、上昇する操作を行った場合には、ロータ31〜34の全てのコレクティブピッチ角を増加させることで揚力を増し、機体を上昇させる。
【0050】
また、機体を前進させる場合には制御部15はロータ32,33のピッチ角がロータ31,34のピッチ角よりも大きくなるように制御する。機体を後退させる場合には制御部15はロータ31,34のピッチ角がロータ32,33のピッチ角よりも大きくなるように制御する。機体を左に移動させる場合には制御部15はロータ33,34のピッチ角がロータ31,32のピッチ角よりも大きくなるように制御する。機体を右に移動させる場合には制御部15はロータ31,32のピッチ角がロータ33,34のピッチ角よりも大きくなるように制御する。機体を時計回りに旋回させる場合には制御部15は反時計回りに回転するロータ32,34のピッチ角がロータ31,33のピッチ角よりも大きくなるように制御する。機体を反時計回りに旋回させる場合には制御部15は時計回りに回転するロータ31,33のピッチ角がロータ32,34のピッチ角よりも大きくなるように制御する。
【0051】
以上のような制御により、操縦者による操縦桿に対する操作に応じて、制御部15がピッチ調整機構21〜24を制御してロータ31〜34のそれぞれのピッチ角を調整することで所望の方向に移動したり、旋回したりすることができる。
【0052】
このような状態において、例えば、原動機11等に不具合が生じたとする。その場合、ロータ31〜34を回転駆動できなくなるので、飛行を継続することができなくなる。そのような場合、操縦者は、以下のような手続きによりオートローテーション降下を実行する。
【0053】
すなわち、操縦者は、切り離し部12を制御することで、原動機11と分岐部14との接続を切り離す。これにより、ロータ31〜34が原動機11から切り離されるので、自由に回転することができるようになる。なお、切り離し部12による切り離し後であっても、ロータ31〜34は、同じ回転数で回転するので、ピッチ調整により機体の制御が可能となる。
【0054】
つぎに、操縦者は、操縦桿を操作することで、ロータ31〜34のピッチ角をマイナスにする。また、モータ13の起動ボタン(不図示)を操作する。この結果、制御部15は、図示しない蓄電池からモータ13に電力を供給し、モータ13を回転させる。モータ13の回転軸は、分岐部14の4つの入力軸140のいずれかに接続されているので、モータ13の回転力はピッチ調整機構21〜24を介してロータ31〜34に伝達される。この結果、ロータ31〜34の回転数が増加し、オートローテーションを実行する際の所望の回転数に到達させることができる。なお、モータ13を起動ボタンによって起動するのではなく、制御部15が自動的に起動するようにしてもよい。すなわち、原動機11に不具合が生じ、切り離し部12による切り離しがされた後、または、マイナスピッチにされた場合に自動的に起動するようにしてもよい。
【0055】
ロータ31〜34の回転数が所定の回転数に達すると、操縦者は、回転数が増減しないように、ロータ31〜34のピッチ角をコントロールする。より詳細には、回転数が増加した場合にはピッチ角を増やして抵抗を与え、回転数が減少した場合にはピッチ角を減らして抵抗を減らす。また、目的となる地点に向けて降下するように、操縦桿を操作する。このとき、最小沈下速度または最大滑空距離が得られる速度で降下させることが望ましい。
【0056】
そして、着陸地点に接近した場合には、操縦者は、持っている速度を機首上げ操作
によって急減速し
、前進速度と降下速度を同時に減少するとともに、ピッチ角を増加させ、その回転エネルギーを瞬時に使い切ることで沈下を止めるコレクティブフレアを実行し、速度を十分に低下させてから着陸する。
【0057】
なお、本実施形態のようなドローン型の有人航空機10は、ヘリコプタのように翼面積を有しないでオートローテーションでは進入角が浅く、速度も落とす事ができない。このため、フレアー後も着陸脚部3のみによる着地が困難と考えられることから、本実施形態では、着陸脚部3の後端に2本、前方に1本のタイヤ4を備えている。これらのタイヤ4を備えることで、着陸後に急停止して操縦者が衝撃を受けることを軽減できる。
【0058】
本実施形態では、操縦者と乗客の復座を想定し、燃料または電池を40kg積載する場合の機体乾燥重量は約120kgを超えるものと思われる。このため、機体の乾燥重量に対して操縦者および同乗者ならびに燃料または電池の重量を合計すると総重量約300kgとなる。
【0059】
ここで、本実施形態では、4つのロータ31〜34は、それぞれ16枚のブレードを有している。このため、1枚のブレードには、約4.7kg(=300kg/16/4)の荷重がかかる計算となる。このため、1枚のブレードにかかる翼面荷重が最適な値(例えば、10kg/m
2)となるようにブレードの長さと面積とを設定する。これにより、安全な速度で降下することができる。
【0060】
以上に説明したように、本発明の実施形態では、ロータ31〜34を、進行方向に直交する位置に配置される1対のロータ31,34およびロータ32,33は、進行方向から見た場合に水平面に対してハの字または逆ハの字の形状となるように回転軸が傾きを有して配置するようにしたので、機体の意図しない左右方向への滑りを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ブレードの枚数を16枚とした。これにより、気流に対して抗力が大きくなり、エアスピードが低速でも揚力を得ることができることから、ロータ31〜34の回転数を低くすることができる。また、このような構成によれば、ロータ径を小型化することができる。さらに、オートローテーション降下の際に、機体のエアスピードを低く抑えることができるので、安全な降下が可能になる。
【0062】
また、本実施形態では、オートローテーション降下の開始時にモータ13によってロータ31〜34の回転数を上昇させるようにしたので、ロータ31〜34の回転数が低下し、オートローテーション降下が不能となることを防止できる。
【0063】
また、本実施形態では、
図4に示す構成によって、ブレードのピッチ角を調整するようにしたので、ブレードの枚数が多い場合であっても、構成が複雑化することを防止できるとともに、メンテナンスを容易化することができる。
【0064】
また、分岐部14としては、
図3に示す構成を用いるようにしたので、入力軸140から出力軸143に動力を確実に伝達することができる。
【0065】
(C)本発明の他の実施形態の構成の説明
図6および
図7は、ヒンジ操作型可変ピッチ機構の構成例を示す。
図6に示すように、ヒンジ操作型可変ピッチ機構20を有する。詳細に、ヒンジ操作型可変ピッチ機構20は、出力軸143、回転軸201、ギア202,203、L型リンク204、ピッチコントロール軸205、ロータ軸208、ベアリング209,210、ロータヘッド211、ブレード420、ブレード軸421、ベアリング422,423、ヘッド430、ナット431、および、ヒンジ432を有する。
【0066】
ここで、回転軸201は、
図3の4つの出力軸143のいずれかに接続される。ギア202は、回転軸201から伝達される回転力をギア203に伝達する。ギア203は、ギア202からの回転力をロータ軸208に伝達する。ベアリング209,210は、ロータ軸208を回転可能に支持する。ロータ軸208は上側の端部がロータヘッド211に接続されているので、ロータ軸208が回転されると、ロータヘッド211が回転される。
【0067】
図7に示すように、ブレード420が放射状に等間隔で配置されている。ブレード軸421は、ロータヘッド211に合わせて回転する。ブレード軸421の先端にはブレード420が取り付けられており、ロータヘッド211が回転するとブレードが回転される。
【0068】
図6に示すように、L型リンク204は、図示しないサーボから伝達される上下方向(
図4と同様の矢印の方向)の力を左右方向の力に変換し、ピッチコントロール軸205が左右方向に移動する。なお、ピッチコントロール軸205は、ロータ軸208内に配置され、ロータ軸208と一緒に回転する。
【0069】
ヘッド430は、L型リンク204によって伝達され、左右方向に移動される。ヘッド430が左右方向に移動されると、ヒンジ432を介して、ブレード420が捩られる。ブレード軸421は、ベアリング422,423を介して、回転される。すなわち、L型リンク204によって伝達されると、ブレード420のピッチ角(コレクティブピッチ角)が変換される。
【0070】
ピッチ角を有する16個のブレード420は回転力がそれぞれ伝達され、これにより16枚のブレードのピッチ角(コレクティブピッチ角)が調整される。すなわち、本実施形態では、ラックピニオン式の調整機構によって、ブレードのコレクティブピッチ角が調整される。なお、一例として、ロータ径は3,000mmとされ、ヘッド径は600mmとされ、ブレード幅は250mmとされ、また、ブレード長は1,000mmとされている。もちろん、これ以外の寸法に設定してもよい。
【0071】
(D)本発明の更に他の実施形態の構成の説明
図8および
図9は、
図2に示す分岐部14の他の構成例を示す図である。
図8に示すように、分岐部14Aは、紙面の奥行き方向に平行な4つの入力軸140と、紙面に平行に配置される4つの出力軸143とを有している。すなわち、
図8の例では、紙面の奥側に存在する入力軸140から回転力が入力され、紙面の手前側に放射状に配置される出力軸143に回転力が出力される。なお、機体の構成によっては、入力軸140を出力軸とし、出力軸143を入力軸に設定するようにしてもよい。
【0072】
図8および
図9に示すように、4個の平型のギア(平歯車)145が隣接されて配置される。4つの入力軸140のうちの1つの入力軸は、切り離し部12に接続され、残りの3つの入力軸の少なくとも1つはモータ13に接続される。これにより、4個の平型のギア145がそれぞれ逆回転方向に回転される。
【0073】
4個のギア145が回転されると、それぞれの回転力が同じ傘型のギア146が伝達される。4個のギア145およびギア146に示す
図8の矢印と同じ方向に回転される。
【0074】
4個の傘型のギア147は、ギア146と同じ形状を有する。4個の傘型のギア147は、
図8の紙面の平行に放射状に配置され、それぞれのギア146はギア147に伝達される。これにより、ギア146とギア147のギア比は1:1とされている。入力軸140のいずれかが回転されると、ギア147が
図3に矢印で示す方向にそれぞれ回転する。
【0075】
(E)変形実施形態の説明
以上の各実施形態は一例であって、本発明が上述した場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、4つのロータ31〜34を有するようにしたが、4以外の数のロータを有するようにしてもよい。なお、制御の観点からは、4以上の偶数とすることが望ましい。
【0076】
また、以上の実施形態では、ブレードの枚数は16枚としたが、16枚以外の枚数としてもよい。例えば、17枚以上としたり、15枚以下としたりしてもよい。前述したように、ブレードにかかる翼面荷重によって枚数を調整することができる。
【0077】
また、ピッチ調整機構21〜24としては、
図4に示すラックピニオン式の調整機構を用いるようにしたが、例えば、ロータ31〜34を回転させる駆動軸と、駆動軸に対してブレードが直交するとともに、回動自在に取り付けるハブと、駆動軸の軸方向に移動することでブレードのピッチを調整するヨーク部とを有するスワッシュプレート式の調整機構としてもよい。
【0078】
また、以上の実施形態では、3つのタイヤ4を有するようにしたが、2つ以下または4つ以上のタイヤを有するようにしてもよい。
【0079】
また、以上の実施形態では、モータ13を備えるようにしたが、オートローテーション降下時に十分なロータの回転が得られる場合には、モータ13は構成から除外するようにしてもよい。また、モータ13が発電機の機能を備えるようにし、分岐部14から供給される回転力によってモータ13によって発電させて蓄電池を充電し、オートローテーション降下時に蓄電池に蓄電された電力を使用するようにしてもよい。
【0080】
また、以上の実施形態では、操縦者がオートローテーション降下を実行するようにしたが、例えば、操縦が難しいオートローテーション降下を制御部15がアシストしたり、あるいは、制御部15が自動で実行したりするようにしてもよい。アシストする場合には、ロータ31〜34の回転数が所望の回転数を維持するようにブレードのピッチ角や進入角を自動的に調整するようにすることができる。また、完全自動でオートローテーションを実行する場合には、制御部15はGPS(Global Positioning System)に機体の現在位置を検出するともに、現在位置を中心とする着陸可能地点を地図情報から特定する。そして、着陸可能地点に向けて降下するとともに、ロータ31〜34の回転数が所望の回転数を維持するようにブレードのピッチ角や進入角を自動的に調整するようにする。そして、着陸の直前には、
フレア操作により前進速度と降下速度を同時に減少するとともに、ピッチ角を増加させ、回転エネルギーを瞬時に使い切ることで沈下を止めるコレクティブフレアを実行し、安全に着陸するようにしてもよい。