【実施例】
【0020】
図面を参照して、本発明によるバリ取りホルダを詳しく説明する。
図1〜
図11に示す実施例は、1本のメイン押しばねと2本のサブ押しばねを使用し、4段階の荷重を設定できるバリ取りホルダである。
【0021】
図1は、本発明によるバリ取りホルダ100の全体構成図である。
図1(a)はA−A’断面図で、A−A’は
図1(b)に示す。
図1(b)はB−B’断面図で、B−B’
図1(a)に示す。
図1(c)はステップカバーの上部側面の外観図である。バリ取りホルダ100は、本体2の下端に設けられるテーパコレット20とナット19によってバリ取り工具21が装着される。バリ取り工具がワークから受ける上方向の荷重は、テーパコレット20の把握力と本体2により第1押ばね9に伝達される。アジャストスクリュー18は、刃先の位置調整に使われ、シャンク部が長い場合は使用しないこともある。メイン押しばね9は、上側がシャンクキャップ8で押さえられているので、上方向への荷重を受けて縮み、荷重がなくなると伸びる。バリ取り工具21からの荷重は本体2で受け止められる。本体2は、荷重により上方向に押し上げられ、メイン押しばね9が縮み、メイン押しばねが押し戻されるなら下方向に押し下げられる可動部材である。
【0022】
本実施例では、メイン押しばね9の他に第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11が設けられる。ばね定数は、メイン押しばね9がk1、第1サブ押しばね10がk2、第2サブ押しばね11がk3とする。そして第1サブ押しばね10が内側、第2サブ押しばね11が外側となるように重ねてシャンクキャップ8の軸に組付けられる。第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11は、コイルの巻き方が互いに逆向きに挿入され、絡みつきのジャムが起きないようにしている。メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11は、シャンク1で覆われる形となる。
【0023】
第1サブ押しばね10は、ばね受け内筒6で受け止められる。第2サブ押しばね11は、ばね受け外筒7で受け止められる。ばね受け内筒6とばね受け外筒7は、まとめてばね受け筒と呼ぶ。ばね受け内筒6の下部には、2本の長いピン15が筒の両側に突出する。ばね受け外筒7の下部には、2本の短いピン15が筒の両側に突出する。ばね受け内筒6及びばね受け外筒7の下側には、ばね切り換えのステップカバー3が設けられる。ステップカバー3はステップばね12で上方向に付勢されている。そのため、手動でステップカバー3を押し下げることができる。ステップカバー3を押し下げることで、ステップカバー3とばね受け内筒6及びばね受け外筒7の係脱ができる。カバー4はステップばね12の下側に設けられる。防塵カバー5は、下部が本体2を覆うように設けられる。防塵カバー5には防塵フィルター13が設けられる。鋼球14はシャンク1に設けられる。
【0024】
図1(b)は、
図1(a)のB−B’断面図である。
図1(b)は、ステップカバー3の断面を示しており、ステップカバー3の外側面には、ステップ番号23を示す[1]〜[4]が刻印されている。ステップ番号は、四角で囲った数字で、反時計回りに[1]、[2]、[4]、[3]、[1]、[2]、[4]、[3]の順(底面視)に刻印されている。ステップカバー3の内周面には刻印に対応して半円形の溝が45°の間隔で8つ設けられている。半円形の溝には、浅い溝と深い溝がある。浅い溝に長いピン15が係合すると、ばね受け内筒6はステップカバー3の内部を下降できず、第1サブ押しばね10の動作が遮断される。深い溝に長いピン15が係合すると、ばね受け内筒6は、ステップカバー3の内部を下降して本体2の上端と接触して、第1サブ押しばね10が伸縮動作できる。同様に、浅い溝に短いピン16が係合する場合は、押しばね11の動作が遮断される。深い溝に短いピン16が係合する場合は、第1サブ押しばね11が伸縮動作できる。
【0025】
図1(c)はステップカバー3の上部側面の外観図である。シャンク1の上部外側には、三角マーク22が刻印されており、ステップカバー3のステップ番号23を示す刻印[1]を三角マーク22に合わせてある。この場合、
図1(b)に示すように、長いピン15、15が、ステップカバー3の内周面の刻印[1]、[1]に対応した溝に係合し、短いピン16、16が、ステップカバー3の内周面の刻印[3]、[3]に対応した溝に係合する。
【0026】
図2は、
図1のばね受け内筒6と、ばね受け外筒7を示す図である。(a)は、組み立て前のそれぞれの外観図である。(b)は、組み立て後のばね受け内筒6が、ばね受け外筒7に挿入された状態を示す図である。ばね受け外筒7には長いピン15のためのスリットがあるので、長いピン15があるばね受け内筒6をばね受け外筒7に挿入できる。ばね受け内筒6がばね受け外筒7に挿入された状態では、長いピン15、15の2つがばね受け外筒7の両側から突出し、短いピン16、16の2つが、長いピン15、15から45°離れたばね受け外筒7の両側に突出した状態になる。
【0027】
図3は、
図1でステップカバー3を外した状態のシャンク1を示す図である。シャンク1には、4カ所に長い溝があって、長いピン15、15と短いピン16、16が付き出せる。4カ所に長い溝に沿って、長いピン15、15と短いピン16、16が移動できる。バリ取り加工中の荷重を示すため、シャンク1には三角マーク22が刻印されている。
図3では三角マーク22の位置に長いピン15が突出し、45°離れた位置に短いピン16が突出する。三角マーク22と、長いピン15と、短いピン16との位置関係は、組み立てた後は変化しない。
【0028】
図4は、ばね受け内筒6がばね受け外筒7に挿入された状態の図と、ステップカバー3の外観図と、ステップカバー3の上部側面の図である。ステップカバー3の外面に、ステップ番号23が時計回りに[1]、[2]、[4]、[3]、[1]、[2]、[4]、[3]の順(上面視)に刻印されている。刻印[1]と[3]が浅い溝で、刻印[2]と[4]が深い溝である。組み立て状態では、ステップカバー3のステップ番号23の刻印[1]を三角マーク22に合わせている。そのため長いピン15、15が浅い溝に係合し、短いピン16、16が浅い溝に係合している。
【0029】
ステップカバー3を、ステップばね12の付勢力に抗して下方向に引っ張りながら45°ずつ回動させることで、ステップカバー3のステップ番号23の刻印[1]〜[4]をシャンク1の三角マーク22に合わせる。これにより、表1に示す4段階の荷重に切り換えることができる。以下では、4段階の切り換えを説明する。
【0030】
【表1】
【0031】
図5は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9だけで動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[1]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が小(弱い)の設定である。メイン押しばね9は、ばね定数k1が小さいばねとする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[1]を三角マーク22に合わせた場合、B−B’断面図に示すように、長いピン15、15が、刻印[1]と[1]に設けられた浅い溝に入り、短いピン16、16が刻印[3]と[3]に設けられた浅い溝に入る。このため、長いピン15と短いピン16がそれぞれ浅い溝に入ると、ばね受け内筒6とばね受け外筒7が共に、本体2の上下方向に移動できる範囲外に押し留められる。そのためメイン押しばね9だけがバリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図5のA−A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9だけが縮み、本体2も上昇するが、ばね受け内筒6とばね受け外筒7が、ステップカバー3の浅い溝でブロックされ、本体2とは係合しないので、第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11は働かない。
【0032】
図6は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10で動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[1]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が中(普通)の設定である。メイン押しばね9のばね定数がk1で、第1サブ押しばね10のばね定数がk2で、k2はk1より値が大きい(k1<k2)とする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[2]を三角マーク22に合わせた場合、B−B’断面図に示すように、長いピン15、15が、刻印[2]、[2]に設けられた深い溝に入り、短いピン16、16が、刻印[1]、[1]に設けられた浅い溝に入る。深い溝に短いピン15が入ると、ばね受け内筒6が本体2の頂部に当接するまで下降する。浅い溝に短いピン16が入ると、ばね受け外筒7は、本体2の上下方向に移動できる範囲外に押し留められる。そのため、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10が並列に配置されて、バリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図6のA−A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10が縮む。本体2が上昇してもばね受け外筒7とは係合せず、第2サブ押しばね11は働かない。
【0033】
図7は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11で動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[3]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が大(強い)の設定である。メイン押しばね9のばね定数がk1で、第1サブ押しばね10のばね定数がk2で、第2サブ押しばね11のばね定数がk3で、k3はk2より値が大きい(k2<k3)とする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[3]を三角マーク22に合わせた場合、B−B’断面図に示すように長いピン15、15が、刻印[3]、[3]に設けられた浅い溝に入り、短いピン16、16が、刻印[4]、[4]に設けられた深い溝に入る。浅い溝に長いピン15が入ると、ばね受け内筒6が本体2の上下方向に移動できる範囲外に押し留められる。深い溝に長いピン16が入ると、ばね受け外筒7が本体2の頂部に当接するまで下降する。そのため、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11が並列に配置されて、バリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図7のA−A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11が縮む。本体2が上昇してもばね受け内筒6とは係合しないので、第1サブ押しばね10は働かない。
【0034】
図8は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11で動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[4]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が最大(強い)の設定である。メイン押しばね9のばね定数がk1で、第1サブ押しばね10のばね定数がk2で、第2サブ押しばね11のばね定数がk3で、k3はk2より値が大きい(k2<k3)とする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[4]を三角マーク22に合わせた場合、B−B’断面図に示すように長いピン15、15が、刻印[4]、[4]に設けられた深い溝に入り、短いピン16、16が刻印[2]、[2]に設けられた深い溝に入る。深い溝に長いピン15が入ると、ばね受け内筒6が本体2の頂部に当接するまで下降する。深い溝に短いピン16が入ると、ばね受け外筒7も本体2の頂部に当接するまで下降する。そのため、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11が並列に配置されてバリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図8のA−A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11が縮む。
【0035】
図9は、本発明によるバリ取りホルダ100の荷重(N)と縮み量(mm)との関係を示すグラフである。a’、b’、c’、d’は、表1の三角マークでの刻印[1]、[2]、[3]、[4]に対応する。a’は、メイン押しばね9のばね定数k1が小さいので、傾きが小さく、よって、ΔW
kが小さい。b’は、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10を並列に使用するので、傾きはa’よりも大きい。c’は、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11を並列に使用するので、傾きはb’よりも大きくなる。d’は、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11を並列に使用するので、傾きはc’よりも大きくなる。a’、b’、c’、d’には予荷重をかけているが、
図1のアジャストスクリュー18を回すことで、第1押しばね9の予荷重を調節できる。
【0036】
図10は、本発明によるメイン押しばね9と、第1サブ押しばね10と、第2サブ押しばね11の切り換え状態を示す説明図である。a’、b’、c’、d’は、表1の三角マークでの刻印[1]、[2]、[3]、[4]に対応する。メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11の各ばね定数をk1、k2、k3とすると、ばねを並列に配置して使用するので、a’ではk1、b’ではk1+k2、c’ではk1+k3、d’ではk1+k2+k3となる。k2<k3とするので、このようにばね各段階で定数を次第に大きくできる。
【0037】
図11は、本発明による防塵カバー5の取付け状況を示す図である。(a)は、防塵カバー5に防塵フィルター13を使用した場合で、
図1のバリ取りホルダ100の下側部分を切り出した図である。(b)は、防塵カバー5にジャバラを使用した場合を示す。本体2の下部の側面は、シャンク1が下方向に伸びて、本体2を覆っている。本体2はバリ取り工具21からの荷重を受けて伸縮する可動部材で、シャンク1の下端と本体2のわずかな隙間にバリ取りの鉄粉等が入り込むことがあった。
図11(a)に示すように、本体2の下部外側に防塵フィルター13付きの防塵カバー5を設けた。これにより鉄粉が防塵フィルター13で捕捉され、シャンク1の下端と本体2の間の隙間に入り込まないようにできる。
図11(b)に示すように、ジャバラからなる防塵カバー5を取付け、防塵カバー5の下端を本体2に固定した。
図11(b)の防塵カバー5はジャバラなので、本体2の上下動に合わせて伸縮できる。そのため、防塵カバー5の下端を本体2に固定しても、固定した箇所に負荷がかからず、鉄粉等の浸入をブロックできる。
【0038】
本実施例(
図1〜
図11)では、バリ取りホルダ100にメイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11の3つを使用したが、これに限らず、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10の2つで構成することもできる。その場合、バリ取りホルダ100は、2段階の切り換えとなる。ばね受け筒は単筒となる。メイン押しばね9とサブ押しばねを3つで構成することもできる。その場合、バリ取りホルダ100は、8段階の切り換えとなる。ばね受け筒は内筒と、中筒と、外筒の3つからなる。