特許第6989208号(P6989208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989208
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】自動車のドアハンドル
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/06 20140101AFI20211220BHJP
   E05B 85/16 20140101ALI20211220BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20211220BHJP
   E05B 81/90 20140101ALI20211220BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   E05B79/06 C
   E05B85/16 Z
   E05B79/20
   E05B81/90
   B60J5/04 H
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-512954(P2018-512954)
(86)(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公表番号】特表2018-532912(P2018-532912A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】DE2016100414
(87)【国際公開番号】WO2017041790
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】102015115221.5
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】イナン, オメル
(72)【発明者】
【氏名】フックス, カーステン
(72)【発明者】
【氏名】レッドマン, ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】メンケ, ヨハネス セオドール
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−094436(JP,A)
【文献】 特開2010−127058(JP,A)
【文献】 特表2002−511543(JP,A)
【文献】 実開昭64−018268(JP,U)
【文献】 特表2012−512974(JP,A)
【文献】 特表2013−527345(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102005049027(DE,A1)
【文献】 国際公開第2005/038176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側にて移動可能なように構成されたハンドル部分(2)と、前記ハンドル部分(2)の移動を検知するための手段(5)と、前記ハンドル部分(2)の移動を制限するための手段(3)と、ラッチ(13)を機械的に開放する機械的接続手段(6)とを有する、自動車(8)のドア又はフラップの開放装置(1)であって、
前記ハンドル部分(2)の移動を制限するための前記手段(3)が、前記ハンドル部分(2)の前記移動可能な側にある係合領域から外れた位置に移動することができ、
前記ハンドル部分(2)は、前記ラッチ(13)に接続され、前記係合領域内で一定のストローク(H1,H2)で直線移動可能な延長部(10)を有し、前記延長部(10)は、一部が拡大された形成部を有し、
前記延長部(10)が一定のストローク(H1)を移動するとき、前記形成部で前記移動を制限するための手段(3)に達して押し当たり、前記ハンドル部分(2)のストロークが前記移動を制限するための手段(3)により制限され、
前記検知するための手段(5)は、前記延長部(10)のストロークが前記移動を制限するための手段(3)により制限されるとき、前記ラッチ(13)を用いてロック機構を開放し、
前記移動を制限するための手段(3)が前記ハンドル部分(2)の係合領域から外れた位置に移動するとき、前記延長部(10)は前記一定のストローク(H1)より大きいストローク(H2)を達成し、前記機械的接続手段(6)によって前記ラッチ(13)を開放する、開放装置(1)。
【請求項2】
前記ハンドル部分(2)の移動を制限するための前記手段(3)は、前記ハンドル部分(2)と直接相互作用する、請求項1に記載の開放装置(1)。
【請求項3】
移動を制限するための前記手段(3)は、前記ハンドル部分(2)の係合領域から外れた位置に移動することができる、請求項1又は2の1項に記載の開放装置(1)。
【請求項4】
移動を制限するための前記手段(3)は、直線運動によって、前記ハンドル部分(2)の前記係合領域から外れた位置に移動することができる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項5】
移動を制限するための前記手段(3)は、ピボット動作によって、前記ハンドル部分(2)の前記係合領域から外れた位置に移動することができる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項6】
前記ハンドル部分(2)は、前記機械的接続手段(6)によってラッチ(13)に接続することができる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項7】
前記ハンドル部分(2)の移動を制限するための前記手段(3)を前記ハンドル部分(2)の前記係合領域から外れた位置に移動することができる場合、前記ハンドル部分(2)によってのみ前記ラッチ(13)を作動させることができる、請求項6に記載の開放装置(1)。
【請求項8】
ストローク運動が制限される場合、前記ハンドル部分(2)は、1mm〜5mmのストローク(H1)を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項9】
ストローク運動が制限されない場合、前記ハンドル部分(2)は、10mm〜40mmのストローク(H2)を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項10】
電力供給が低下した場合及び/又は事故の場合、前記ハンドル部分(2)の移動を制限するための前記手段(3)を前記ハンドル部分(2)の前記係合領域から外れた位置に移動することができる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のドアハンドルのような自動車のドア又はフラップを開放するための装置に関し、この装置は、一方の側にて移動可能なように構成されたハンドル部分と、ハンドル部分の移動を検知するための手段と、ハンドル部分の移動を制限するための手段とを有する。
【背景技術】
【0002】
今や自動車は、快適な機能をますます備えるようになってきている。例えば、電気作動式スライディングドア、閉鎖補助(closure aid)、及び/又は電気ラッチを、この関連で挙げることができる。自動車のラッチシステム又はラッチは、ラッチシステムを開放するための電気装置を備えている場合、電気ラッチ、いわゆるeラッチが使用される。ラッチシステムの電気駆動部によって、例えば、キャッチ及び爪部から形成されるロック機構を電気的にロック解除(unlock)することができる。例えば、外部ドアハンドルとラッチシステムとの間に機械的接続を必要としない。このために、ラッチシステムは、ラッチシステムを開放すべきかどうかを検出する電気変換器を有する。ドアハンドルからの開放コマンドがラッチシステムに達した場合、機構は、通常電気的に動作を開始し、それにより、ラッチシステムのロック機構のロック解除がもたらされる。従って、ドア、フラップ、又は摺動ドアを非常に容易かつ便利に開放することができる。
【0003】
電力低下の場合でもドアラッチを開放できるように、開放装置は、通常、電気的に作動されるドアラッチに対して電力供給できないときにも開放を行うことができる機械的手段を備えている。
【0004】
電気的に作動されるドアラッチを開放するためのハンドル部分は、例えば、独国特許第196 42 698(C2)号明細書から周知である。移動可能に構成されたハンドル部分が自動車のシャシにしっかりと接続される手段が、一例として開示されており、そこでは、ハンドル部分はドアラッチを開放することができる圧力スイッチも有する。ハンドル部分は、通常の操作において、すなわちバッテリ電圧が利用可能なとき、自動車の外殻の近傍にてしっかりと取り付けられている。
【0005】
事故の場合に電力低下が生じたとき、電磁石が作動してロックボルトを動かし、その結果、ピボットレバーが解放され、ボーデンケーブル(Bowden cable)が接続される歯車を解放する。歯車に接続されるボーデンケーブルは、ドアラッチに機械的に接続されているので、歯車が移動する際、ボーデンケーブルに引張りが生じ得る。歯車は、ハンドル部分に取り付けられたラック歯車と相互作用する。ここで電力低下が生じた場合、歯車は解放され、操作者は、自動車の外殻からピボット動作させることによって、ハンドル部分を移動させ、それによりラック歯車が歯車に櫛状に噛み合い、ボーデンケーブルを引っ張る。従って、緊急時にラッチの機械的操作が可能である。
【0006】
電気ラッチを開放するための更に別のハンドル装置が、独国特許出願公開第10 2006 029 774(A1)号明細書から周知である。固定されたハンドル部分内に、一方の側にて移動可能なハンドル要素が配置される。信号をラッチに伝送することができるセンサがハンドル要素内に配置されるので、ハンドル要素を把持する際、開放コマンドをラッチに伝送することができる。電気ラッチを作動させるために、ハンドル要素を移動させる必要はない。しかしながら、電力低下が生じた場合、ラッチの機械的動作がもたらされる。移動可能なように配置されたハンドル要素は、機械的接続要素をラッチに対して作動させるために打ち勝つ必要がある力ロック(force locking)ユニットと相互作用する。例えば、力ロックユニットは、圧力ばね又はラチェット接続とすることができる。
【0007】
一方、従来技術から知られているハンドル装置の不利点は、ハンドル部分が恒久的に動かされないことがあることであり、何年も操作されなかった後、非常用機構がこの装置を実際に作動させ得るかどうか、また他方で、この装置が、単に力ロックユニットの存在により作動期間にわたってその完全な機能を保持するかどうかは、いまだに疑問視されている。従って、一方では、操作しないことにより機能不良が生じる恐れがあること、他方では、常に動かす場合、上位信号がラッチに対して発生することがあり、それにより、操作者が電気信号及び機械的信号をドアラッチに伝送することは、問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ドア又はフラップを開放するための改善されたハンドル装置を提供することである。本発明の別の課題は、最大の安全を確保し、停電の場合にラッチの安全な開放を保証することができる、自動車のドア又はフラップを開放するための装置、特にハンドル装置を提供することである。本発明の別の課題は、電気ラッチの作動のために、ドア又はフラップを開放するための構造的に簡単で費用対効果が高い選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、独立請求項1の特徴部によって解決される。本発明の有利な設計は、従属請求項に記載されている。以下に説明される例示的実施形態は、限定的なものではなく、それよりも、説明及び従属請求項に説明される特徴部のいかなる可能な変形も可能であることが示される。
【0010】
請求項1によると、本発明の課題は、一方の側にて移動可能なように構成されたハンドル部分と、ハンドル部分の移動を検知するための手段と、ハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動することができるハンドル部分の移動を制限するための手段とを有するように提供される自動車のドア又はフラップを開放するための装置、特に自動車のためのドアハンドルによって解決される。ここで、本発明による装置又はハンドル装置の形成は、従来技術からの不利点を克服し、改善されたハンドル装置を提供する可能性をもたらす。ハンドル部分は、常に動かすことができる一方で、ハンドル経路の制限を定めることができる。さらに、ハンドル部分が連続的に移動するため、ハンドル部分が何年も固定された後、緊急時にハンドル部分が移動できないというリスクはもはや存在しない。
【0011】
さらに、ハンドル部分の移動を制限するための手段が、ハンドル部分に隣接して位置しているので、ハンドル部分に対するしっかりとした停止部が利用可能である。この停止部は同時に、触覚による利点をもたらし、操作者は、ドアラッチが適切に作動したという明確なフィードバックを感じる。ドアハンドルのためのしっかりとした停止部は同時に、操作者にとって、ドアを一様にかつ力強く開放するのにも役立ち得る。同じく、ハンドル部分のためにばねを収容する場合、操作者に、全く同じ触覚のフィードバックが利用可能でない従来技術の不利点も、本明細書で克服される。ハンドル部分は、ハンドル収容部内でピボット動作することができる。これらの不利点は、本発明による移動可能なハンドル部分のためのしっかりとした停止部により克服される。
【0012】
ハンドル部分の連続的な移動のため、ハンドル部分は移動可能なままであり、ハンドル部分に取り付けられた機械的接続要素は連続的に移動される。従って、ラチェット駆動又は固定を防止することができる。
【0013】
本発明の目的のために、自動車のドア又はフラップを開放するための装置について述べるが、この装置は、主に、ドアハンドル又はフラップハンドル又は摺動ドアハンドルを含む。しかしながら、本発明はこれらの部品に制限されるものではなく、例えばカブリオルーフのためのカバーにも関連し得る。特許請求の範囲による手段は、電気ラッチを備えた自動車部品のための開放装置に関連する。電気信号を生成し得るハンドル部分を使用するので、検知手段によって、ラッチは、電気開放機構を作動させるために、制御信号を受け取ることができる。
【0014】
有利なことに、ハンドル部分は、一方の側にてピボット動作可能なように構成される。このことは、操作者が、開放コマンドをラッチに伝送したというピボット動作による触覚によるフィードバックを感じるので、特に有利である。例えば、ハンドル部分の移動を検知するための手段は、センサ、好ましくは容量センサとすることができる。しかしながら、ハンドル部分の移動を検知するためのセンサとして、機械的スイッチ手段及び/又は光学センサを使用することもできる。例えば、機械的停止部は、ハンドル部分の移動を制限するための手段の役割を果たし得る。経路制限手段のように、機械的停止部は移動可能なように配置されるので、経路制限手段は、ハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動させることができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、ハンドル部分の移動を制限するための手段がハンドル部分と直接相互作用する場合、利点がもたらされる。経路制限手段がハンドル部分に直接係合することにより、構造的に簡単な手段を提供できるという利点が提供される。さらに、直接係合の構造的に簡単な手段は、小さい公差で装置を開放するように構成できるという利点を提供する。例えば、経路制限手段とハンドル部分との間の直接相互作用を、ぴったり適合するように形成することができる。ハンドル部分と経路制限手段との間に、協働する構造形態を形成することができる。
【0016】
経路制限手段をハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動させ得る場合、有利な構成がもたらされる。装置のための経路制限手段の特に簡単な構造配置を、経路制限手段によって得ることができ、この経路制御手段は、前後運動に関して、ハンドル部分内に後退し、停電の場合にはハンドル部分から外れた位置に移動することができる。従って、電圧が印加されると、経路制限手段はハンドル部分の移動領域内にあり、ハンドル部分のストロークを低減させるので、検知手段のみを制御して、ハンドル部分の移動を記録することができる。従って、経路制限手段は、ハンドル部分のストロークを制限し、検知手段によって制御信号を生成することができるが、このストロークは、ラッチシステムの機械的開放を可能にするのに十分なものではない。構造的観点から、外への移動は、実施するのも容易である。
【0017】
一例として、本発明の1つの実施形態において、経路制限手段を、直線移動によりハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動させることができる。例えば直線的に移動する様式で自動車のシャシ内に収容される摺動要素によって、直線移動部がハンドル部分内に後退されることがある。これは、例えば、押し上げシリンダ及び/又はタペットを有する電気駆動部によって達成することができる。構造的観点から、直線移動を達成するための電気的手段は、費用効果が高く、構成が容易である。2つの端部位置のみを有する駆動部は、とりわけ、実行するのに特に費用効果が高い。ここでの2つの端部位置とは、ハンドル内に後退される経路制御手段の位置と、ハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動される経路制限手段の更に別の端部位置とを意味する。
【0018】
ピボット動作により経路制限手段をハンドルの係合領域から外れた位置に移動させ得る場合、実施形態の更に別の例がもたらされる。経路制限手段の回転又はピボット動作により、ほんの僅かなピボット動作の場合でも、経路制限手段とハンドル部分の分離が可能になる。また、ピボット動作を引き起こすのは非常に容易である。従って、例えば、経路制限手段を電動モータの軸上に直接取り付けることができる。次に、経路制限手段上の2つの停止部が、同時に、モータの制御のための端部停止部の役割を果たす。従って、経路制限のための、極めて費用効果の高い手段を達成することができる。さらに、経路制限手段は、直線的及びピボット式にハンドル部分の係合領域から手動で移動させ得ることも考えられる。経路制限手段だけをハンドル部分の係合領域から外れた位置に直接又は間接的に移動させる必要がある。従って、経路制限手段をハンドル部分の係合領域から外に移動させるための多数の手段が利用可能であることが明らかになる。経路制限手段はハンドル部分と相互作用するので、ハンドル部分の上昇移動が可能になることは、本発明にとって重要である。
【0019】
本発明の有利な実施形態においては、機械的接続要素によって、ハンドル部分をラッチに接続することができる。自動車においてハンドル部分とラッチとの間に機械的接続をもたらすために、機械的接続要素、特にボーデンケーブルを、ハンドル部分とラッチとの間に配置することは有利である。ボーデンケーブルは、例えば一方はハンドル部分内に、他方はラッチの作動レバー内に懸架することができる。ハンドル部分が移動した場合、次に、ボーデンケーブルによって、移動をラッチに伝えることができる。電圧が印加された場合、ハンドル部分の上昇が制限される。ハンドル部分が作動されるとき、ボーデンケーブルは、短時間及び短距離しか移動されない。ラッチは、ボーデンケーブルによって作動されるが、ラッチ内のロック機構の開放を可能にするために、それほど遠くには作動されない。開放は、例えば、ハンドル部分の短いストロークの検知によって及び電気駆動部によって行われ、それにより、キャッチの係合領域から爪部が取り外される。
【0020】
有利なことに、ハンドル部分の移動制限手段をハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動させることができる場合、ラッチは、ハンドル部分によってのみ作動させ得る。ハンドル部分とラッチとの間の機械的接続により、電圧が印加されたとき、ハンドル部分を部分的にのみ移動させることできる。例えば、事故又はバッテリ電圧の減少の際に電圧低下が発生した場合、経路制限手段が、ハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動される。従って、経路制限手段がハンドル部分の係合領域の外に移動された場合、ハンドル部分のための経路制御部が持ち上げられ、より大きいストロークによってハンドル部分を移動させることができる。特にストロークが大きいので、機械的接続手段によって、ロック機構のロック解除を行うことができる。
【0021】
好ましい実施形態において、制限される上昇移動の場合、ハンドル部分は、1〜5mm、好ましくは1〜3mmのストロークを有する。制限されない上昇移動の場合、ハンドル部分は、10〜40mm、好ましくは15〜40mm、さらにより好ましくは25〜35mmのストロークを有する。電圧が印加されたときには、短いストロークのみが与えられ、経路制限手段がハンドル部分の係合領域から外れた位置に移動される電力低下の場合、ハンドルに対して、長いストロークが与えられる。どちらの場合も、ハンドル部分は、ピボット動作として移動する。
【0022】
有利なことに、電力低下及び/又は事故の場合、ハンドル部分の経路制限手段を、ハンドル部分の係合領域から外に移動させることができる。例えば、電力低下の場合、経路制限手段は閾値で作動されるので、経路制限手段を作動させ、よってラッチの安全な機械的開放を可能にするのに、依然として十分な電力が使用可能である。
【0023】
本発明は、好ましい例示的実施形態に基づいて添付図面を参照して以下にさらに詳細に述べられる。しかしながら、例示的実施形態は本発明を制限するものではなく、有利な実施形態を構成するのみであるとの原理が適用される。表現される特性は、個々に又は説明の他の特徴と組み合わせて実行することができ、また、特許請求の範囲は、別個に又は組み合わせて特許請求される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】経路制限手段の基本的表現による、自動車を通る断面における、ドアハンドルの形態の自動車のドア又はフラップを開放するための装置である。
図2】電気ラッチを動作させ、経路制限手段に押し当たって停止部に達するようにドアハンドルが移動された、図1による装置である。
図3】ラッチの機械的作動の際及び経路制限手段がドアハンドルの係合領域から外れた位置に移動される際の、ドアハンドルの位置を付加的に示す、図1によるドアハンドルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ドア又はフラップを開放するための装置の断面図が、図1に再現される。装置1は、ハンドル部分2、経路制限手段3、駆動ユニット4、センサ要素5、及び機械的接続手段6を含む。ハンドル部分2は、シャシ部品8内の軸受点7の周りにピボット動作可能なように構成されている。
【0026】
この例示的実施形態において、シャシ部品8は、そこを通って延長部10がハンドル部分2上に達する開口部9を有する。ボーデンケーブル6のための取り付け手段12が、延長部10の端部11上に配置され、シャシ部品8に達する。従って、ハンドル部分と、例えばボーデンケーブルとすることができる機械的接続手段6との間に、機械的接続が存在する。機械的接続手段6はラッチ内の作動レバーに接続され、ラッチを機械的に開放することができる。ラッチ13への機械的接続は、図3に概略的にのみ再現される。
【0027】
ハンドル部分2の延長部10は、取り付け手段12への接続領域において拡大され、停止面14がもたらされる。延長部10の拡大した形成部は、開放装置のシステム化された機能を説明するにすぎず、もちろん、経路制限手段3が、延長部10内に直接係合することも可能である。従って、例えば、延長部10は、縦方向の孔として経路制限手段3と相互作用する穿孔部又は通路開口部を有することができる。しかしながら、図1の経路制限手段の機能の基本的表現は、経路制限手段3とハンドル部分2の可能な停止面14との間の相互作用を明確に示す。センサ要素5及び駆動ユニット4は、電気ケーブル15、16によって、図示されていない制御ユニットに接続されるので、一方では、ハンドル部分の移動の検知を記録することができ、他方では、経路制限手段3の作動が可能になる。
【0028】
次に、図1による開放装置1が、図2に示される。ハンドル部分2のストロークH1も、鎖線L1で示される。ハンドル部分2がストロークH1を移動する際、延長部10もストロークH1を移動し、停止面14で経路制限手段3に達して押し当たる。従って、ハンドル部分2のストロークH1は、経路制限手段3により制限され、例えば2〜3mmの非常に僅かなストロークH1しか可能でない。センサ要素5は、ストロークH1を検知し、電気ケーブルによって制御信号を制御部に伝送し、電気ラッチ13は信号を受け取り、ロック機構を開放することができる。
【0029】
例えば事故の結果として自動車において電力低下が生じた場合、制御ユニットは、電気ケーブル15によって、信号を駆動ユニット4に伝送し、それにより、経路制限手段3がハンドル部分2の係合領域から外れた位置に移動する。この例示的な実施形態において、経路制限手段は矢印の方向に直線移動を行い、駆動手段は、経路制限手段3のインターロックに直接係合する、例えば歯車を有する電気駆動部とすることができる。経路制御手段3がハンドル部分2の係合領域から移動することによって、今やハンドル部分2は、鎖線L2として示される位置にピボット動作することができる。ハンドル部分2は、例えば、25〜30mmのより大きいストロークH2を達成することができる。ストロークH2は、機械的接続手段6によってラッチ13を機械的に開放するのに十分なものである。
【0030】
本発明による開放装置1を形成することによって、このように、安全な機械的開放を保証するために、常に、及び電力低下の場合にも、自動車8においてピボット動作可能なハンドル部分2を配置する可能性がもたらされる。
【符号の説明】
【0031】
1 開放装置
2 ハンドル部分
3 経路制限手段
4 駆動ユニット
5 センサ要素
6 機械的接続手段
7 軸受点
8 シャシ部品
9 開口部
10 延長部
11 延長部の端部
12 取り付け手段
13 ラッチ
14 停止面
15、16 電気ケーブル
L1、L2 鎖線
H1、H2 ストローク
P 矢印
図1
図2
図3