特許第6989212号(P6989212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989212
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】車両用視認装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20211220BHJP
   B60R 1/00 20220101ALI20211220BHJP
   B60R 1/12 20060101ALI20211220BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20211220BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20211220BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   H04N7/18 J
   B60R1/00 A
   B60R1/12 Z
   B60R11/02 C
   H04N7/18 U
   G09G5/00 550C
   G09G5/36 520P
   G09G5/36 520D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-227158(P2017-227158)
(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公開番号】特開2019-97127(P2019-97127A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
【審査官】 佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−507449(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105502(WO,A1)
【文献】 特開2012−073399(JP,A)
【文献】 特開2012−063589(JP,A)
【文献】 特開平08−197981(JP,A)
【文献】 特表2009−542505(JP,A)
【文献】 特開平09−018894(JP,A)
【文献】 特開2013−104976(JP,A)
【文献】 特開2015−143970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 1/00
B60R 11/00
B60R 21/00
B60K 35/00
G09G 5/00
H04N 13/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の撮影画像を表示する表示部と、
前記撮影画像の一部の予め定めた領域または当該領域以外の領域に対して画像処理を施すことにより乗員が視認性を確保できる予め定めた位置に仮想的に目の焦点を変更して前記表示部に表示する表示制御を行う制御部と、
を備え
前記制御部が、予め定めた車速以上、かつ前記撮影画像中に予め定めた距離以内に車両が検出された場合に、前記予め定めた距離以内の車両に対応する領域を前記予め定めた領域として、前記表示制御を行う車両用視認装置。
【請求項2】
前記制御部は、予め定めた車速未満の場合、または前記撮影画像中に予め定めた距離以内に車両が検出されない場合に、仮想的な前記焦点の調整を禁止して前記撮影画像を前記表示部に表示する無矯正表示制御、または前記表示部の全面に対応する前記撮影画像に対して仮想的に前記焦点を変更して前記表示部に表示する全面矯正表示制御を更に行う請求項1に記載の車両用視認装置。
【請求項3】
前記制御部は、車両の後退が検出された場合に、前記表示部の全面に対応する前記撮影画像に対して仮想的に前記焦点を変更して前記表示部に表示する後退表示制御を更に行う請求項1又は請求項2に記載の車両用視認装置。
【請求項4】
前記制御部は、仮想的に前記焦点を変更する際に、乗員によって予め設定された焦点位置に変更する請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺を視認するために車両周辺を撮影して撮影画像を表示する車両用視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にカメラ等の撮影部及びモニタ等の表示部を搭載して、車両周辺を撮影部で撮影した撮影画像を表示部に表示する車両用視認装置が知られている。
【0003】
このような車両用視認装置では、運転者が運転中の場合には遠方を見て運転しており、車室内の表示部に視点を切替えた場合に、近くに目の焦点を合わせ直す必要があった。また、老眼や遠視の人は、そもそも近い場所に焦点が合わない人もおり、車室内の表示部に焦点が合わないことがある。
【0004】
そこで、車両用視認装置に焦点や視度を調整する構成を持たせることが考えられる。例えば、視度を調整する技術として、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1では、画像処理により表示画像を変換して観者の網膜上の焦点外れを補正して、眼鏡やコンタクトレンズのように、視度を補正する視度補正装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5607473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術を用いて、画像処理により乗員の視度を調整する技術を用いる場合、表示部に表示される撮影画像の全域に対して、画像処理を行ったのでは、処理負荷が高くなってしまう。また、処理負荷が高くなると、表示の遅延が発生し、車両周辺の視認性に影響があるため、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、仮想的な焦点調整の処理負荷を低減しつつ、車両周辺の視認性を確保可能な車両用視認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の態様は、車両周辺の撮影画像を表示する表示部と、前記撮影画像の一部の予め定めた領域または当該領域以外の領域に対して画像処理を施すことにより乗員が視認性を確保できる予め定めた位置に仮想的に目の焦点を変更して前記表示部に表示する表示制御を行う制御部と、を備え、前記制御部が、予め定めた車速以上、かつ前記撮影画像中に予め定めた距離以内に車両が検出された場合に、前記予め定めた距離以内の車両に対応する領域を前記予め定めた領域として、前記表示制御を行う
【0009】
第1の態様によれば、表示部には、車両周辺の撮影画像が表示されるので、表示部を確認することによって車両周辺を視認できる。
【0010】
制御部では、撮影画像の一部の予め定めた領域または当該領域以外の領域に対して画像処理を施すことにより乗員が視認性を確保できる予め定めた位置に仮想的に目の焦点を変更して表示部に表示する表示制御が行われる。このよう制御することで、表示部の全面に対して仮想的な焦点調整を行うことなく、一部に対して画像処理を行うので、処理負荷を低減できる。また、何かの拍子に焦点が切り替わってもぼけずに見える部分を確保することで視認性を確保できる。
【0011】
また、制御部は、予め定めた車速以上、かつ撮影画像中に予め定めた距離以内に車両が検出された場合に、予め定めた距離以内の車両に対応する領域を予め定めた領域として、表示制御を行
【0012】
また、制御部は、予め定めた車速未満の場合、または撮影画像中に予め定めた距離以内に車両が検出されない場合に、仮想的な前記焦点の調整を禁止して撮影画像を表示部に表示する無矯正表示制御、または表示部の全面に対応する撮影画像に対して仮想的に焦点を変更して表示部に表示する全面矯正表示制御を更に行ってもよい。
【0013】
また、制御部は、車両の後退が検出された場合に、表示部の全面に対応する撮影画像に対して仮想的に焦点を変更して表示部に表示する後退表示制御を更に行ってもよい。
【0014】
さらに、制御部は、仮想的に焦点を変更する際に、乗員によって予め設定された焦点位置に変更してもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、仮想的な焦点調整の処理負荷を低減しつつ、車両周辺の視認性を確保可能な車両用視認装置を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る車両用視認装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る車両用視認装置の制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
図3】運転者が乗車している様子を示す図である。
図4】画像処理による仮想的な矯正を説明するための図である。
図5】仮想的な矯正を行う領域の一例を示す図である。
図6】本実施形態に係る車両用視認装置の制御装置で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る車両用視認装置の制御装置で行われる後退時の割込処理(後退表示制御)の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る車両用視認装置の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
車両用視認装置10には、後方カメラ18、及びドアカメラ16(16L、16R)が設けられている。後方カメラ18は、車両後部かつ車幅方向中央部(例えば、トランクまたはリアバンパの車幅方向中央部)に配置され、車両の後方を所定の画角(撮影領域)で撮影可能とされている。また、ドアカメラ16Lは、車両の車幅左側のドアミラーに設けられ、ドアカメラ16Rは、車両の車幅右側のドアミラーに設けられている。ドアカメラ16L、16Rは、車体側方から車両後方を所定の画角(撮影領域)で撮影可能とされている。なお、以下では、ドアカメラ16L、16Rは、左右を区別しない場合には、ドアカメラ16として説明する。
【0019】
後方カメラ18及びドアカメラ16は、車両周辺としての車両後方を撮影する。詳細には、後方カメラ18の撮影領域の一部は、ドアカメラ16の撮影領域の一部と重複し、後方カメラ18、及びドアカメラ16により、車両後方を車体の右斜め後方から左斜め後方の範囲に渡って撮影可能とされている。これにより、車両の後方側が広角に撮影される。
【0020】
車両の車室内には、インナーミラー22(図3参照)が設けられており、インナーミラー22は、車室内天井面の車両前側かつ車幅方向中央部に取付けられている。インナーミラー22には、表示部としての長尺矩形状とされたモニタ12が設けられており、モニタ12は、長手方向が車幅方向とされ、かつ表示面が車両後方に向けられている。これにより、モニタ12は、車両前側のフロントウインドシールドガラスの上部付近に配置されて、表示面が車室内の乗員に視認可能にされている。
【0021】
モニタ12の表示面には、ハーフミラー(ワイドミラー)が設けられており、モニタ12が非表示の場合に、ハーフミラーには、車室内と共にリアウインドガラス及びドアガラスを通した後方視界が写される。
【0022】
また、インナーミラー22の近傍には、インナーカメラ14が設けられており、撮影方向が車両後方に向けられて、インナーカメラ14が車室内を撮影する。
【0023】
また、車両用視認装置10には、制御部としての制御装置20が設けられており、制御装置20にモニタ12、インナーカメラ14、ドアカメラ16、後方カメラ18、車速センサ36、及び後方監視部38が接続されている。制御装置20には、CPU20A、ROM20B、RAM20C、不揮発性記憶媒体(例えば、EPROM)20D、及びI/O(入出力インタフェース)20Eがそれぞれバス20Fに接続されたマイクロコンピュータが含まれている。ROM20B等には、車両用視認表示制御プログラム等の各種のプログラムが記憶されており、CPU20AがROM20B等に記憶されるプログラムを読み出して実行することで、制御装置20がモニタ12に乗員の視認を補助する画像を表示する。
【0024】
車速センサ36は、車両の速度(以下、車速と称す。)を検出し、検出結果を制御装置20に出力する。
【0025】
後方監視部38は、後方の障害物や車両等を監視し、監視結果を制御装置20に出力する。後方監視部24は、例えば、超音波レーダ、レーザレーダ等の各種レーダを適用してもよいし、ステレオカメラ等の距離測定が可能なカメラを適用してもよい。
【0026】
また、制御装置20は、後方カメラ18、及びドアカメラ16の各々により撮影された車両周辺の車外撮影画像を重ねて視認用画像を生成し、モニタ12に表示する制御を行う。本実施形態では、詳細は後述するが、制御装置20が、視認用画像に画像処理を施すことにより、仮想的に乗員の焦点を調整してモニタ12に表示する制御を行う。なお、モニタ12は、運転席より車両前側に設けられており、撮影画像に対してモニタ12に表示される画像が左右反転される。また、視認用画像を生成する際には、インナーカメラ14の撮影画像を透過して重ねてもよい。
【0027】
次に、制御装置20のROM20Bに記憶されたプログラムを実行することにより実現される制御装置20の機能について説明する。図2は、本実施形態に係る車両用視認装置10の制御装置20の機能を示す機能ブロック図である。
【0028】
制御装置20は、図2に示すように、視認用画像生成部30、処理部32、特徴点抽出部40、及び制御部としての仮想矯正画像処理部34の機能を備えている。
【0029】
視認用画像生成部30は、後方カメラ18及びドアカメラ16の撮影画像をそれぞれ取得して、それぞれの撮影画像を合成して視認用画像を生成する。
【0030】
処理部32は、視認用画像生成部30によって生成された視認用画像に対して、画像情報以外の入力等に基づいて、各種補正などの処理を行う。また、処理部32に、鍵や指紋などによって個人認証情報等を入力可能としてもよい。個人認証情報が処理部32に入力された場合には、個人認証結果、または、個人認証結果に対応する焦点距離の情報を仮想矯正画像処理部34に出力する。
【0031】
特徴点抽出部40は、後方車両を検出するための特徴点を視認用画像から抽出し、抽出した特徴点から後方の車両を検出する。そして、後方の車両の検出結果を仮想矯正画像処理部34に出力する。
【0032】
仮想矯正画像処理部34は、処理部32により処理された視認用画像に対して、仮想的に矯正する画像処理を施すことで、仮想的に目の焦点を変更する処理を行い、モニタ12に視認用画像を表示する。本実施形態では、視認用画像の予め定めた領域または当該領域以外の領域に対して仮想的に目の焦点を変更する。
【0033】
具体的には、仮想矯正画像処理部34は、予め定めた条件が成立した場合に、予め定めた領域または当該領域以外の領域に対して仮想的に焦点調整を行う。予め定めた条件の一例としては、車速センサ36によって予め定めた車速以上が検出され、かつ特徴点抽出部40の後方車両の検出結果と後方監視部38の監視結果に基づいて後方の予め定めた距離以内に後方車両が存在することが検出された場合を適用する。また、仮想的に焦点調整を行う際の焦点位置の一例としては、乗員毎に予め登録された焦点位置や、乗員によって予め設定された焦点位置に調整する。例えば、仮想矯正画像処理部34は、処理部32から個人認証結果を受信した場合に、視認用画像に対する仮想的な焦点を、個人毎に予め登録された焦点距離に変更してもよい。或いは、仮想矯正画像処理部34は、処理部32から個人認証結果に対応する焦点距離の情報を受信した場合に、受信した焦点距離の情報に合わせて、仮想的に焦点を調整してもよい。或いは、スイッチ操作等による乗員の指示に従って焦点を調整してもよい。
【0034】
また、仮想矯正画像処理部34が、モニタ12に視認用画像を表示する際には、鏡像変換処理を行って左右を反転して表示するが、鏡像変換処理は、視認用画像生成部30、処理部32、及び仮想矯正画像処理部34の何れで行ってもよい。以下の説明では、説明を簡略化するために鏡像変換については省略して説明する場合がある。
【0035】
なお、仮想矯正画像処理部34は、例えば、特許文献1として挙げた特許第5607473号公報に記載の視度補正の技術を用いて、画像処理により仮想的な焦点調整を行うことができる。或いは、Fu-Chung Huang、他3名、”Eyeglasses-free Display”、[online]、[平成29年11月13日検索]、インターネット(URL: http://web.media.mit.edu/~gordonw/VisionCorrectingDisplay/)に記載の技術を用いてもよい。
【0036】
ここで、仮想矯正画像処理部34によって行われる画像処理による仮想的な矯正の一例について説明する。図3は、運転者が乗車している様子を示す図であり、図4は、画像処理による仮想的な矯正を説明するための図である。
【0037】
図3に示すように、運転者が前方方向を見ている場合には、前方の距離d1に焦点があるように運転している。一方、光学式のインナーミラー22を使った場合は、後方の距離d2に目の焦点があるように運転している。ここで、d1、d2は、5m以上の距離であり、運転状況によっては100m以上になり、運転者とインナーミラー22との距離d3に比べて遠方の距離である。
【0038】
インナーミラー22は、物理的には、距離d3に位置する。光学式のインナーミラー22を用いた場合は反射した像に焦点を合わせるため、距離d3に意識することなく、焦点距離D=d2で距離d2離れた点の後方を見る。一方、モニタ12を見る場合、モニタ12に映る後方画像を見る必要があるため、目の焦点距離を距離d3に合わせて後方視界を見ることになる。
【0039】
図4(A)に示すように、距離d3のモニタ12に焦点距離Dを合わせて見ている場合、ぼけることなく正常に見える。一方、図4(B)に示すように、目の焦点距離Dが距離d1に合っている状態では、距離d3のモニタ12はぼけて見えてしまうが、仮想矯正画像処理部34によって仮想的な矯正を画像処理で行うことにより、距離d3に位置するモニタ12上の画像に対する仮想的な焦点距離Dを距離d1にすることではっきり見えるようになる。つまり、焦点距離Dを距離d1から距離d3に戻すことなく、モニタ12の画像(後方視界)を見ることができる。なお、距離d1を前方の5m以上の距離としたが、距離d1(但し、d1>d3)を老眼(遠視)の人が見えることができる最も近い距離とした場合は、目の能力として見えない部分である距離d3にあるモニタ12の画像も見ることができる。
【0040】
ところで、仮想矯正画像処理部34は、乗員がモニタ12に表示された画像を見易くするために、画像処理により仮想的に焦点を調整可能とされているが、モニタ12の画面全域に対して仮想的に焦点調整を行ったのでは、処理負荷が高くなってしまう。また、何かの拍子に焦点が距離d3等に替わってしまうと、逆にぼけたように見えて、視認性が悪化することが考えられる。
【0041】
そこで、本実施形態では、仮想矯正画像処理部34が、上述したように、予め定めた領域または当該領域以外の領域に対して画像処理を行って仮想的に焦点調整を行ってモニタ12に表示する表示制御を行うようになっている。なお、以下では、予め定めた領域に対して仮想的に焦点調整する例を説明する。
【0042】
具体的には、予め定めた条件が成立した場合(本実施形態では、予め定めた車速以上の走行時に予め定めた距離以内に後方車両が存在する場合)に、図5(A)の点線で示す領域のように、後方の近い場所の車両のみに対して、仮想的に見え方を矯正する。このようすることで、仮に焦点が距離d3となってもぼけずに見える部分を確保することで視認性を確保できる。また、ぼけずに見える領域を注意対象となる後方の車両の領域にすることで必要な部分を見易くすることができる。さらに、モニタ12の全面に対して仮想的な焦点調整を行うことなく、一部に対して画像処理を行うので、処理負荷を低減できる。
【0043】
ここで、仮想的に矯正する条件を後方の近い位置の車両が存在する場合に限定したのは、後方に注意対象となる要素(車両)がなければ、多少ぼけても安全性に問題がないからである。また、仮想的に矯正する条件を予め定めた車速以上の走行時に限定したのは、車庫入れ等のゆっくりと後退する場合などでは、画像の一部に処理することなく、全面を仮想的に矯正する方が、混乱を招き難いためである。
【0044】
なお、仮想矯正画像処理部34は、予め定めた条件が未成立の場合(本実施形態では、予め定めた車速未満または予め定めた距離以内に後方車両が存在しない場合)に、無矯正表示制御または全面矯正表示制御を行うようになっている。無矯正表示制御は、仮想的な焦点の調整を禁止してモニタ12に視認用画像を表示する制御である。一方、全面矯正表示制御は、モニタ12の全面に対応する視認用画像に対して仮想的に焦点を変更してモニタ12に表示する制御である。
【0045】
また、図5(A)の点線で示す領域は、図5(B)の点線で示す領域のように、後方の近い場所の車両を含む、図5(A)よりも広い領域としてもよい。
【0046】
また、仮想矯正画像処理部34による仮想的な焦点調整は、例えば、車両の始動操作が行われている間、仮想的に目の焦点の変更を開始し、車両の始動操作が終了したところで、焦点の変更を終了してもよい。すなわち、車両の始動操作が行われている間は、モニタ12に表示される画像に対して仮想的に焦点の変更を続け、車両の始動操作が終了したところで、焦点を確定する。これにより、乗員の目の焦点が合ったところで、車両の始動操作を終了することで、乗員の焦点を容易に設定することができる。
【0047】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る車両用視認装置10の制御装置20で行われる具体的な処理について説明する。図6は、本実施形態に係る車両用視認装置10の制御装置20で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図7の処理は、図示しないイグニッションスイッチ(IG)がオンされた場合に開始する。或いは、モニタ12の電源をオンする指示が行われた場合に開始してもよい。
【0048】
ステップ100では、CPU20Aが、カメラの撮影画像を取得開始してステップ102へ移行する。すなわち、視認用画像生成部30が、後方カメラ18、及びドアカメラ16のそれぞれによって撮影された撮影画像を取得して、それぞれの撮影画像を合成して視認用画像を生成する。
【0049】
ステップ102では、CPU20Aが、後方視認用画像をモニタ12に表示してステップ104へ移行する。すなわち、視認用画像生成部30によって生成され、処理部32によって各種補正が行われた視認用画像が仮想矯正画像処理部34を介してモニタ12に表示される。このとき、仮想矯正画像処理部34は、視認用画像に対して画像処理を施して仮想的に焦点を調整してモニタ12に表示するが、焦点の位置は、乗員によって予め定められた位置に調整される。例えば、上述のように、車両の始動操作が行われている間に、
【0050】
仮想的に焦点を調整する場合は、乗員が車両に乗車して、車両始動時にスイッチ操作等により調整した調整値に調整する。或いは、鍵や指紋などによって処理部32が個人認証結果を受信した場合には、予め登録された乗員の調整値に調整してもよい。
【0051】
ステップ104では、CPU20Aが、車速を検出してステップ106へ移行する。すなわち、車速センサ36の検出結果を取得する。
【0052】
ステップ106では、CPU20Aが、予め定めた車速以上であるか否かを判定する。該判定は、仮想矯正画像処理部34が、車速センサ36の検出結果から予め定めた車速以上の車速が検出されたか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ108へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0053】
ステップ108では、CPU20Aが、撮影画像から特徴点を抽出してステップ110へ移行する。すなわち、特徴点抽出部40が、後方車両を検出するために、視認用画像中の特徴点を抽出して、抽出した特徴点から後方の車両を検出し、検出結果を仮想矯正画像処理部34に出力する。
【0054】
ステップ110では、CPU20Aが、予め定めた距離以内に車両があるか否かを判定する。該判定は、仮想矯正画像処理部34が、特徴点抽出部40の後方車両の検出結果と後方監視部38の監視結果に基づいて後方の予め定めた距離以内に車両が存在するか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ112へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0055】
ステップ112では、CPU20Aが、後方視認用画像中の一部を矯正してモニタ12に表示してステップ114へ移行する。すなわち、仮想矯正画像処理部34が、後方視認用画像中の一部として予め定めた距離以内の後方の近い場所の車両(例えば、図5(A)、(B)の点線領域)の領域に対して仮想的に見え方を矯正する。このようすることで、仮に焦点が距離d3となってもぼけずに見える部分を確保することで視認性を確保できる。また、ぼけずに見える領域を注意対象となる後方の車両の領域にすることで必要な部分を見易くすることができる。さらに、モニタ12の全面に対して画像処理を行うことなく、一部に対して画像処理を行うので、処理負荷を低減できる。
【0056】
一方、ステップ116では、CPU20Aが、後方視認用画像の一部を矯正中であるか否かを判定する。該判定は、仮想矯正画像処理部34が、ステップ112を既に実行して、視認用画像の一部に対して仮想的に矯正を行っている状態であるか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ118へ移行し、否定された場合にはステップ114へ移行する。
【0057】
ステップ118では、CPU20Aが、後方視認用画像中の一部の矯正を停止してステップ114へ移行する。すなわち、仮想矯正画像処理部34が、後方視認用画像中の一部に対して行われている仮想的な矯正を停止してステップ114へ移行する。なお、後方視認用画像中の一部の矯正を停止した場合には、無矯正表示制御により仮想的な矯正を禁止して矯正していない視認用画像をモニタ12に表示してもよい。或いは、全面矯正表示制御により一部の矯正を停止してモニタ12の全面に対して矯正した視認用画像をモニタ12に表示してもよい。
【0058】
ステップ114では、CPU20Aが、イグニッションスイッチ(IG)がオフされたか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ104に戻って上述の処理を繰り返し、判定が肯定された場合には一連の処理を終了する。なお、ステップ114の処理は、モニタ12の電源をオフする指示が行われたか否かを判定してもよい。
【0059】
このように、仮想矯正画像処理部34が、上述したように、予め定めた領域に対して画像処理を行って予め定めた領域に対して仮想的に焦点調整を行うことで、乗員の焦点が切り替わることがあってもぼけずに見える部分を確保して視認性を確保できる。また、モニタ12の全面に対して画像処理を行うことなく、一部に対して画像処理を行うので、処理負荷を低減できる。
【0060】
なお、図6の処理を実行中に、シフトセンサ等によって後退が検出された場合には、モニタ12の全面に対して矯正した視認用画像を表示する後退表示制御に移行してもよい。例えば、後退が検出された場合に割込処理として図7の後退表示制御の処理を行う。図7は、本実施形態に係る車両用視認装置10の制御装置20で行われる後退時の割込処理(後退表示制御)の流れの一例を示すフローチャートである。また、図7の処理は、シフトセンサ等によって後退が検出された場合に開始するものとする。
【0061】
ステップ200では、CPU20Aが、後方視認用画像の全面を矯正してモニタ12に表示ステップ202へ移行する。すなわち、仮想矯正画像処理部34が、後方視認用画像の全面に対して仮想的に見え方を矯正する。これにより、車庫入れ等のゆっくりと後退する場合に、視認用画像の全面が見易くなり、混乱を招き難くなる。
【0062】
ステップ202では、CPU20Aが、後退が終了であるか否かを判定する。該判定は、シフトセンサ等によって後退以外が検出されたか否かを判定する。該判定が肯定されるまで待機してステップ204へ移行する。
【0063】
ステップ208では、CPU20Aが、後方視認用画像の全面を矯正する前の状態に戻して割込処理を終了して割込処理前の処理にリターンする。
【0064】
このように、割込処理を行うことにより、後退に連動して、視認用画像の全面に仮想的な矯正を施すことができ、後退時に視認用画像の全面を見易くすることができる。
【0065】
なお、上記の実施形態では、特徴点抽出部40によって検出した後方の車両の領域または当該領域以外の領域に対して、仮想的に焦点調整を行う例を説明したが、これに限るものではない。例えば、特徴点抽出部40を設けずに、視認用画像の中心部分等の予め定めた領域または当該領域以外の領域に対して、仮想的に焦点調整を行ってもよい。また、仮想的に焦点調整を行う領域は、乗員が領域を指定するようにしてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、複数のカメラ(後方カメラ18及びドアカメラ16)の各々の撮影画像を合成してモニタ12に表示する例を説明するが、これに限るものではない。単一のカメラ(例えば、後方カメラ18)の撮影画像をモニタ12に表示する形態としてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態における制御装置20で行われる処理は、ソフトウエアの処理として説明したが、これに限るものではない。例えば、ハードウエアで行う処理としてもよいし、ハードウエアとソフトウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態における制御装置20で行われる処理は、プログラムとして記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0069】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10 車両用視認装置
12 モニタ
16 ドアカメラ
18 後方カメラ
20 制御装置
30 視認用画像生成部
34 仮想矯正画像処理部
36 車速センサ
38 後方監視部
40 特徴点抽出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7