特許第6989225号(P6989225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989225
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】強化ガラス破壊具
(51)【国際特許分類】
   B25D 1/00 20060101AFI20211220BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20211220BHJP
   A45B 3/00 20060101ALI20211220BHJP
   A62B 99/00 20090101ALI20211220BHJP
【FI】
   B25D1/00
   B60R21/00 310N
   B60R21/00 330
   A45B3/00 Z
   A62B99/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-214327(P2019-214327)
(22)【出願日】2019年11月27日
(65)【公開番号】特開2021-84166(P2021-84166A)
(43)【公開日】2021年6月3日
【審査請求日】2019年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】519423552
【氏名又は名称】大塚 弘之
(73)【特許権者】
【識別番号】391026999
【氏名又は名称】鷲見 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】大塚 弘之
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 隆
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−060777(JP,U)
【文献】 特公平07−053350(JP,B2)
【文献】 特許第5383922(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 1/00
B60R 21/00
A45B 3/00
A62B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状の頭部を備える円柱形状を有する基部と、
前記基部の前記頭部に一端が固定され、他端に硬度の高いテーパ状の尖端部を備えるピンと、
前記尖端部が挿通する貫通孔を有し、前記尖端部と同軸的に前記ピンを覆うように前記基部に固定された、前記頭部との間に間隙が形成されるドーム状の部材である、弾性変形体よりなるカバーと、
からなり、
前記基部を介して前記ピンの前記尖端部を強化ガラスの表面に押しつけることにより前記強化ガラスを破壊する強化ガラス破壊具。
【請求項2】
前記基部は、傘の端部に固定されて使用される請求項1に記載の強化ガラス破壊具。
【請求項3】
前記基部は、前記ピンと背向する側の他端に吸着盤が固定されている請求項1に記載の強化ガラス破壊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラスを破壊するためのピンを備えた強化ガラス破壊具に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急時、例えば、水没した車両内や故障車両内などから脱出するために車両の窓等を構成する強化ガラスを破壊する必要がある。強化ガラスを破壊する器具としては、強化ガラスに押しつけるテーパ状(円すい形状)の尖端部を備えたピンと当該ピンを固定する基部とを備えた特許文献1〜3に開示されているような強化ガラス破壊具がある。
【0003】
ところで、特許文献1〜3の何れも強化ガラスを破壊するピンを覆うカバーを備えており、強化ガラスを破壊するために使用する前はカバーによりピン、特に尖端部への接触を回避する構成である。特許文献1の緊急脱出用ハンマーはピン(ハンマー体15)を覆い、使用時には取り外すカバー(キャップ16)を備えている。特許文献2の簡易窓ガラス割り具はピン(第2テーパ部13及び先端部14)を覆い、使用時に取り外す保護カバー15を備えている。特許文献3の殴打具はピン(殴打ピン23)を覆い、使用時に取り外すキャップ27を備えている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3の何れもピンを覆うカバーを使用時に外し、使用後はカバーを取り付けなければならない。もしカバーを紛失すれば、ピンの尖端部がむき出しの状態となる。そして、特許文献1〜3はカバーを外さずに使用可能であることが記載されているが、何れもカバーが破損するため、使用後はピンの尖端部を覆うカバーはなく、尖端部はむき出しの状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3045780号公報
【特許文献2】特開平11−11241号公報
【特許文献3】特開2000−246669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題(状況)に鑑みてなされたもので、強化ガラスを破壊する際にピンを覆うカバーを取り外したり破損したりすることのない強化ガラス破壊具を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ピンを覆うカバーが取り外し可能でありながら、使用の際に取り外さずに強化ガラスにピン部分を押しつけた場合、カバーが破損し、また数度打ち付けなければ強化ガラスが破損しないことに着目した。つまり、カバーに覆われているピンを強化ガラスに押しつけるためには、取り付けられているカバーを破損する手間が必要となる。そこで、強化ガラスを破壊する際には、ピンの少なくとも尖端部が挿通する孔を有するカバーでピンを覆うことで、カバーを取り外す手間がなく且つカバーを紛失しにくいし、カバーを破損するための動作も必要ないことに思い至り本発明を創出したものである。
【0008】
すなわち本発明の強化ガラス破壊具は、基部とピンとカバーとを有する。基部は、ドーム状の頭部を備える円柱形状を有する。基部はピンを固定する部材であり、ピンを強化ガラスに押しつけた際にピンが大きくブレたり、ズレたりしないように、ピンをしっかりと固定し、保持できる強度を備える材料を用いる。
【0009】
ピンは一端が基部の頭部に固定され、他端にテーパ状の尖端部を備える金属製の鉛筆状部材である。尖端部は、強化ガラスよりも硬度が高い、いわゆる超硬合金が望ましい。なお、超硬合金は一般的に炭化タングステンを主要成分とし、鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄系金属で焼結した複合材料であり、ダイヤモンドに匹敵する非常に高い硬度を有する。
【0010】
カバーはピンの尖端部が挿通する貫通孔を有し、尖端部と同軸的にピンを覆うように基部に固定された、頭部との間に間隙が形成されるドーム状の部材である、弾性変形体であり、合成樹脂製を作用することができる。貫通孔は尖端部がピンの軸線方向で挿通可能に、開口形成されている。また、カバーは外力、特にピンの軸線方向に加えられる外力により、少なくとも貫通孔近傍が弾性変形可能ある。
【0011】
本発明の強化ガラス破壊具は、基部が様々な部材に接合して使用することができる。例えば、基部を傘の持ち手いわゆる手元に固定したり、傘の石突きに固定したり、特許文献3のような警棒の一端に固定したり、ぬいぐるみやマスコット人形の鼻や手などに固定したりすることができる。また、基部を警棒や傘などの別用途部材に接合するのではなく、基部に吸着盤やストラップの紐など、どこかに保持する部材に強化ガラス破壊具を取り付けることもできる。例えば、ピンの尖端部に背向する基部に吸着盤を取り付けた場合、ピンを強化ガラスに押しつける際は吸着盤側を掌に固定することで強化ガラスを破壊することができる。また、ストラップの紐などを取り付ける場合は、基部を手でしっかりと握り力を加えられる形状とすることで、強化ガラスを破壊することができる。基部に吸着盤を取り付けた場合は、使用しない間は見つけやすい場所つまり使用される場所である強化ガラスに邪魔にならないように吸着保持させておくことができる。また、ストラップの紐を取り付けた場合は、ストラップとして普段持ち歩く鞄や携帯電話などにぶら下げておける。
【発明の効果】
【0012】
本発明の強化ガラス破壊具は、強化ガラスを破壊可能なピンを覆うカバーがピンの尖端部が挿通可能な貫通孔を有し弾性変形可能なため、強化ガラスを破壊する際にカバーを取り外す必要がなく、またカバーを破損させる必要がない。つまり、使用後にカバーの紛失や破損によりピンの尖端部がむき出し状態になることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の強化ガラス破壊具11の断面図である。
図2】強化ガラス破壊具が取り付けられた折り畳み傘の一例を示す説明図である。
図3】強化ガラス破壊具によって車両の窓を破損した瞬間の説明図である。
図4】実施形態2の強化ガラス破壊具12の断面図である。
図5】実施形態2の強化ガラス破壊具12に吸着体8が取り付けられた吸着可能強化ガラス破壊具13の断面図である。
図6】実施形態3の強化ガラス破壊具14の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の代表的な実施形態を図1図6を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態1の強化ガラス破壊具11は、図1に示すように、基部2とピン3とカバー4とを有し、ピン3とカバー4とが同軸的に基部2固定される。
【0016】
ピン3は、円柱状の軸部30と軸部30に一体的に結合した端部がテーパ状の尖端部31とを備える金属製の鉛筆状部材である。尖端部31は、強化ガラスよりも硬度が高い、いわゆる超硬合金が望ましい。なお、超硬合金は一般的に炭化タングステンを主要成分とし、鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄系金属で焼結した複合材料であり、ダイヤモンドに匹敵する非常に高い硬度を有する。軸部30は尖端部31のように超硬合金ほどの硬度を要しないが尖端部31と同様の素材を用い、尖端部31と一体成形したピン3を採用することもできる。ピン3は軸線方向Yで尖端部31が位置するのとは逆の軸部30の端部(一端)32が後述する基部2に固定される。また、ピン3は軸部30の直径よりも尖端部31側の円柱形状部分の直径が小さく、尖端部31と軸部30との間に階段状の段差部33を有する。
【0017】
基部2は、ドーム状の頭部26を備える略円柱状であり、底面側に大きく開口した円柱状空間を区画する玉留25を有し、頭部26と玉留25との間の中央部分にリム状の第3固定部23が形成されている。さらに基部2は、ピン3の一端32を固定する第1固定部21及び第2固定部22を有する。第1固定部21は、頭部26の中心に開口し、少なくとも尖端部31を除いたピン3の大部分が挿入され、ピン3と同軸的な略円柱状の空間を形成する。第2固定部22は、ピン3の一端32側の底面34に当接する。本実施形態1の強化ガラス破壊具11の基部2は合成樹脂製であるが、尖端部31を強化ガラスに押しつけた際にピン3が大きくブレたり、ズレたりしないように、尖端部31が形成される側とは反対側の一端32をしっかりと固定できる強度があれば合成樹脂製に限定されず、例えば金属製も採用できる。
【0018】
カバー4は頭頂部分に貫通孔40を備える内部が空洞のドーム状部材である。カバー4は端部41が基部2の第3固定部23に接合され、ピン3の尖端部31と同軸的に、ピン3と基部2の一部を覆うように基部2に固定される。貫通孔40は、ピン3の尖端部31が軸線方向Yで挿通可能に、頭頂部分に開口形成されている。端部41は、基部2の第3固定部23に構造的に結合して固定されるか、あるいは接着剤などにより固着される。また、カバー4は貫通孔40から端部41までの間で且つ貫通孔40側の内側、つまり基部2の頭部26との間に、間隙10が形成される形状である。カバー4は貫通孔40近傍に外力、特に軸線方向Yに外力が加えられることで、間隙10が消失するように弾性変形可能である。なお、貫通孔40近傍のカバー4の厚み及び貫通孔40近傍の間隙10の軸線方向Yの間隔としては、カバー4が弾性変形した際に、ピン3の少なくとも尖端部31の先端311が軸線方向Yでカバー4よりも外側に突出し、外力が加わらない場合には尖端部31を軸線方向Yで隠せるよう、貫通孔40近傍のカバー4の厚み<貫通孔40近傍の間隙10の軸線方向Yの間隔となる。
【0019】
本実施形態1の強化ガラス破壊具11は、図2に示すように、折り畳み傘9の端部に取り付けることができる。強化ガラス破壊具11を折り畳み傘9に結合できるように、基部2は第4固定部24を有する。第4固定部24は、玉留25側に開口し第1固定部21と同軸の略円柱状の空間を形成する。第1固定部21と第4固定部24との間に第2固定部22が位置し、第4固定部24に折り畳み傘9の中棒91の端部が挿入され、固定される。そして、玉留25は折り畳み傘9のつゆ先92が収納される空間であり、図2では折り畳み傘9が軸線方向Yで縮小しきっていない状態が図示されており、縮小しきった場合につゆ先92が玉留25に収納される。本実施形態1の強化ガラス破壊具11は、折り畳み傘9の構成要素の一つ、折り畳み傘9の手元として折り畳み傘9に取り付けられている。
【0020】
本実施形態1の強化ガラス破壊具11は、強化ガラス(図示略)を破壊しようとする場合、折り畳み傘9をしっかりと握り、ピン3の尖端部31を強化ガラスに押しつける、又は強化ガラスに打ちつける。押しつけた力は、折り畳み傘9を握っている部分から中棒91を介して、強化ガラス破壊具11の基部2に、基部2を介してピン3の尖端部31へと伝達され、強化ガラスは図3に示すように破損する。図3は、車両内にいる人90が強化ガラス製の窓100を強化ガラス破壊具11によって破壊した瞬間である。
【0021】
本実施形態1の強化ガラス破壊具11によれば、強化ガラスを破壊可能なピン3を覆うカバー4がピン3の尖端部31が挿通可能な貫通孔40を有し弾性変形可能なため、強化ガラスを破壊する際にカバー4を取り外す必要がない。また、カバー4を基部2に取り付けたままの状態でもカバー4が破損することがない。つまり、使用後もピン3はカバー4に覆われているため使用後にピン3の尖端部31がむき出し状態にならない。強化ガラス破壊具11は折り畳み傘9に固定されているため、これまで通り折り畳み傘9として持ち運び、また使用してもピン3の尖端部31への接触を回避できる。
【0022】
さらに、本実施形態1の強化ガラス破壊具11は、強化ガラスを破壊しようとする際も基部2に固定され、破損しない弾性変形体であるカバー4を備えているため、強化ガラスの破片の多くが押しつけた方向又は打ちつけた方向の延長方向側に飛び散る。つまり、強化ガラスが破壊された際に飛び散る強化ガラス片が強化ガラスを破壊した人側に飛び散りにくい。まず、強化ガラスは表面の圧縮応力層と内部の引っ張り応力層とのバランスが崩れると一瞬で全体が粉々になり、飛び散った場合は外力が加わった部分を中心に全方向に飛散するという特徴を有する。本実施形態1の強化ガラス破壊具11の場合、ピン3の尖端部31を強化ガラスに押しつけた際にはカバー4も強化ガラスに押しつけられている。そして、カバー4が接触する部分は尖端部31が接触する部分に近く、強化ガラスが破壊した際の飛散の中心部分がカバー4で押しつけた方向又は打ちつけた方向に押圧されている。そのため、破壊と同時にカバー4の弾性力の働く方向、つまり戻ろうとする方向が押しつけた方向と同じため、強化ガラス破壊具11を押しつけたのは逆側に多く飛散すると考えられる。なお、飛散の方向や量は重力方向に対する強化ガラス面の角度にも影響するため、一概に押しつけた人側に飛散しないあるいはしにくいとは限らない。
【0023】
(実施形態2)
本実施形態2の強化ガラス破壊具12は、図4に示すように、基部2とピン3とカバー4とを有し、ピン3とカバー4とが同軸的に基部2固定される。
【0024】
ピン3は、円柱状の軸部30と軸部30に一体的に結合した端部がテーパ状の尖端部31とを備える金属製の鉛筆状部材である。尖端部31は、強化ガラスよりも硬度が高い、いわゆる超硬合金が望ましい。なお、超硬合金は一般的に炭化タングステンを主要成分とし、鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄系金属で焼結した複合材料であり、ダイヤモンドに匹敵する非常に高い硬度を有する。軸部30は尖端部31のように超硬合金ほどの硬度を要しないが尖端部31と同様の素材を用い、尖端部31と一体成形したピン3を採用することもできる。ピン3は軸線方向Yで尖端部31が位置するのとは逆の軸部30の端部(一端)32が後述する基部2に固定される。また、ピン3は軸部30の直径よりも尖端部31側の円柱形状部分の直径が小さく、尖端部31と軸部30との間に階段状の段差部33を有する。
【0025】
基部2は、ドーム状の頭部26を備える略円柱状であり、底面側に開口した略円柱状空間を区画する挿入部27を有し、中央部分にリム状の第3固定部23が形成されている。さらに基部2は、ピン3の一端32を固定する第1固定部21及び第2固定部22を有する。第1固定部21は、頭部26の中心に開口し、少なくとも尖端部31を除いたピン3の大部分が挿入され、ピン3と同軸の略円柱状の空間を形成する。第2固定部22は、ピン3の一端32側の底面34に当接する。本実施形態2の強化ガラス破壊具12の基部2は金属製であるが、尖端部31を強化ガラスに押しつけた際にピン3が大きくブレたり、ズレたりしないように、尖端部31が形成される側とは反対側の一端32をしっかりと固定できる強度があれば金属製に限定されず、例えば合成樹脂製も採用できる。
【0026】
カバー4は頭頂部分に貫通孔40を備える内部が空洞のドーム状部材である。カバー4は端部41が基部2の第3固定部23に接合され、ピン3の尖端部31と同軸的に、ピン3と基部2の一部を覆うように基部2に固定される。貫通孔40は、ピン3の尖端部31が軸線方向Yで挿通可能に、頭頂部分に開口形成されている。端部41は、基部2の第3固定部23に構造的に結合して固定されるか、あるいは接着剤などにより固着される。また、カバー4は貫通孔40から端部41までの間で且つ貫通孔40側の内側、つまり基部2の頭部26との間に、間隙10が形成される形状である。カバー4は貫通孔40近傍に外力、特に軸線方向Yに外力が加えられることで、間隙10が消失するように弾性変形可能である。なお、貫通孔40近傍のカバー4の厚み及び貫通孔40近傍の間隙10の軸線方向Yの間隔としては、カバー4が弾性変形した際に、ピン3の少なくとも尖端部31の先端311が軸線方向Yでカバー4よりも外側に突出し、外力が加わらない場合には尖端部31を軸線方向Yで隠せるよう、貫通孔40近傍のカバー4の厚み<貫通孔40近傍の間隙10の軸線方向Yの間隔となる。
【0027】
本実施形態2の強化ガラス破壊具12は、図5に示すように、基部2に吸着体8が固定された吸着可能強化ガラス破壊具13となる。吸着体8は固定部81と吸着盤82とからなる。固定部81は吸着盤82の吸着面80とは逆側に突出し周方向に溝811が形成された略円柱形状である。
【0028】
基部2の挿入部27は、軸線方向Yの中央が全周にわたって中心に突出した係合部271を有し、吸着体8の固定部81が挿入されると溝811と係合部271とが係合し、吸着体8が基部2に固定される。
【0029】
吸着可能強化ガラス破壊具13は、吸着盤82によって強化ガラスなどの窓に吸着し、保持することができるため、緊急時以外はあまり目立たず邪魔にならない窓の片隅に取り付けておくことができる。そして、緊急時は見つけやすいというメリットがある。
【0030】
吸着可能強化ガラス破壊具13は、強化ガラス(図示略)を破壊しようとする場合、吸着盤82の吸着面80を掌にあて、ピン3の尖端部31を強化ガラスに押しつける、又は強化ガラスに打ちつける。押しつけた力は、吸着体8の固定部81から基部2を介してピン3の尖端部31へと伝達され、強化ガラスが破損する。
【0031】
本実施形態2の強化ガラス破壊具12によれば、強化ガラスを破壊可能なピン3を覆うカバー4がピン3の尖端部31が挿通可能な貫通孔40を有し弾性変形可能なため、強化ガラスを破壊する際にカバー4を取り外す必要がない。また、カバー4を基部2に取り付けたままの状態でもカバー4が破損することがない。つまり、使用後もピン3はカバー4に覆われているため使用後にピン3の尖端部31がむき出し状態にならない。
【0032】
さらに、本実施形態2の強化ガラス破壊具12は、強化ガラスを破壊しようとする際も基部2に固定され、破損しない弾性変形体であるカバー4を備えているため、強化ガラスの破片の多くが押しつけた方向又は打ちつけた方向の延長方向側に飛び散る。つまり、強化ガラスが破壊された際に飛び散る強化ガラス片が強化ガラスを破壊した人側に飛び散りにくい。まず、強化ガラスは表面の圧縮応力層と内部の引っ張り応力層とのバランスが崩れると一瞬で全体が粉々になり、飛び散った場合は外力が加わった部分を中心に全方向に飛散するという特徴を有する。本実施形態2の強化ガラス破壊具12の場合、ピン3の尖端部31を強化ガラスに押しつけた際にはカバー4も強化ガラスに押しつけられている。そして、カバー4が接触する部分は尖端部31が接触する部分に近く、強化ガラスが破壊した際の飛散の中心部分がカバー4で押しつけた方向又は打ちつけた方向に押圧されている。そのため、破壊と同時にカバー4の弾性力の働く方向、つまり戻ろうとする方向が押しつけた方向と同じため、強化ガラス破壊具12を押しつけたのは逆側に多く飛散すると考えられる。なお、飛散の方向や量は重力方向に対する強化ガラス面の角度にも影響するため、一概に押しつけた人側に飛散しないあるいはしにくいとは限らない。
【0033】
(実施形態3)
本実施形態3の強化ガラス破壊具14は、図6に示すように、基部2とピン3とカバー4とを有し、ピン3とカバー4とが同軸的に基部2固定される。
【0034】
ピン3は、円柱状の軸部30と軸部30に一体的に結合した端部がテーパ状の尖端部31とを備える金属製の鉛筆状部材である。尖端部31は、強化ガラスよりも硬度が高い、いわゆる超硬合金が望ましい。なお、超硬合金は一般的に炭化タングステンを主要成分とし、鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄系金属で焼結した複合材料であり、ダイヤモンドに匹敵する非常に高い硬度を有する。軸部30は尖端部31のように超硬合金ほどの硬度を要しないが尖端部31と同様の素材を用い、尖端部31と一体成形したピン3を採用することもできる。ピン3は軸線方向Yで尖端部31が位置するのとは逆の軸部30の端部(一端)32が後述する基部2に固定される。また、ピン3は軸部30の直径よりも尖端部31側の円柱形状部分の直径が小さい。
【0035】
基部2は、棒状体で、軸線方向Yの一端側にピン3が嵌挿され、他端側にクリップ体5が固定される。基部2の一端側には、開口し、ピン3と同軸的な略円柱状の空間を形成する第1固定部21が区画されており、第1固定部21に少なくとも尖端部31を除いたピン3の大部分が挿入される。そして、基部2はピン3の一端32側の底面34に当接する第2固定部22を備える。さらに基部2は、軸線方向Yの中心から他端側にかけて等間隔に設けられた拡径方向に突出した6つの滑り止め28を備える。基部2の素材は、合成樹脂あるいは金属を採用することができるが、基部2の他端側から中央までに設けられるグリップ28は合成樹脂が望ましい。また、滑り止め28の数は6つに限定されず、少なくとも1つ設けられているのが望ましい。
【0036】
カバー4は頭頂部分に貫通孔40を備える内部が空洞のドーム状部材である。カバー4は端部41が基部2の一端側に接合され、ピン3の尖端部31と同軸的に、ピン3と基部2の一部を覆うように基部2に固定される。貫通孔40は、ピン3の尖端部31が軸線方向Yで挿通可能に、頭頂部分に開口形成されている。端部41は、基部2の一端に嵌合されるか、あるいは接着剤などにより固着される。また、カバー4は貫通孔40から端部41までの間で且つ貫通孔40側の内側、つまり基部2の一端との間に、間隙20が形成される形状である。カバー4は貫通孔40近傍に外力、特に軸線方向Yに外力が加えられることで、間隙20が狭まるように弾性変形可能である。なお、貫通孔40近傍のカバー4の厚み及び貫通孔40近傍の間隙10の軸線方向Yの間隔としては、カバー4が弾性変形した際に、ピン3の少なくとも尖端部31の先端311が軸線方向Yでカバー4よりも外側に突出し、外力が加わらない場合には尖端部31を軸線方向Yで隠せるよう、貫通孔40近傍のカバー4の厚み<貫通孔40近傍の間隙20の軸線方向Yの間隔となる。
【0037】
クリップ体5は、基部2の他端に固定される固定端51と、固定端51から基部2の一端に向かって形成され、基部2の外周と若干の距離を隔てて最端部が外側に向かうように円弧状に形成された自由端52とを備えるクリップである。本実施形態3の強化ガラス破壊具14は自由端52と基部2とで挟み込むことで、自身を所定箇所に保持することができる。
【0038】
本実施形態3の強化ガラス破壊具14は、強化ガラス(図示略)を破壊しようとする場合、基部2、特に滑り止め28のある部分をしっかりと握り、ピン3の尖端部31を強化ガラスに押しつける、又は強化ガラスに打ちつける。押しつけた力は、基部2からピン3の尖端部31へと伝達され、強化ガラスが破損する。
【0039】
本実施形態3の強化ガラス破壊具14によれば、強化ガラスを破壊可能なピン3を覆うカバー4がピン3の尖端部31が挿通可能な貫通孔40を有し弾性変形可能なため、強化ガラスを破壊する際にカバー4を取り外す必要がない。また、カバー4を基部2に取り付けたままの状態でもカバー4が破損することがない。つまり、使用後もピン3はカバー4に覆われているため使用後にピン3の尖端部31がむき出し状態にならない。
【0040】
そして、本実施形態3の強化ガラス破壊具14は、ボールペンやタッチペンのようなペンタイプであり、基部2に滑り止め28が設けられていることで、強化ガラスを破損させる際には基部2を握りやすく、且つ滑りにくい。また、クリップ体5を備えるため、どこかに挟み込んで保持することができる。例えば、車内のサンバイザーや持ち歩く鞄の縁、あるいは服のポケットなど、見つけやすくて取り出しやすい場所に容易に保持することができる。
【0041】
さらに、本実施形態3の強化ガラス破壊具14は、強化ガラスを破壊しようとする際も基部2に固定され、破損しない弾性変形体であるカバー4を備えているため、強化ガラスの破片の多くが押しつけた方向又は打ちつけた方向の延長方向側に飛び散る。つまり、強化ガラスが破壊された際に飛び散る強化ガラス片が強化ガラスを破壊した人側に飛び散りにくい。まず、強化ガラスは表面の圧縮応力層と内部の引っ張り応力層とのバランスが崩れると一瞬で全体が粉々になり、飛び散った場合は外力が加わった部分を中心に全方向に飛散するという特徴を有する。本実施形態3の強化ガラス破壊具14の場合、ピン3の尖端部31を強化ガラスに押しつけた際にはカバー4も強化ガラスに押しつけられている。そして、カバー4が接触する部分は尖端部31が接触する部分に近く、強化ガラスが破壊した際の飛散の中心部分がカバー4で押しつけた方向又は打ちつけた方向に押圧されている。そのため、破壊と同時にカバー4の弾性力の働く方向、つまり戻ろうとする方向が押しつけた方向と同じため、強化ガラス破壊具11を押しつけたのは逆側に多く飛散すると考えられる。なお、飛散の方向や量は重力方向に対する強化ガラス面の角度にも影響するため、一概に押しつけた人側に飛散しないあるいはしにくいとは限らない。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ピン3は一端31側と尖端部32側との間にある階段状の段差部33が必ずしも必須でなく、基部2の第1固定部21の尖端部32側の開口形状を狭めることで、尖端部32側への抜け防止とする形状を採用することができる。
【0043】
その他に、基部2に固定される強化ガラス破壊具とは別の部材としては、折り畳み傘9や吸着体8に限定されず、洋傘、ぬいぐるみ、人形、警棒など様々なものが考えられる。折り畳み傘9のように普段持ち歩くことが多いものや強化ガラスの近くに置いても邪魔にならず、普段は飾りとして楽しめるものが考えられる。
【0044】
また、折り畳み傘9の手元側ではなく、石突き93側に本発明の強化ガラス破壊具を取り付けることもできる(図2参照)。なお、折り畳まないいわゆる長傘の場合、普段、石突きが地面に当接することが多いため、石突きに強化ガラス破壊具を取り付ける場合は折り畳み傘が好ましい。
【符号の説明】
【0045】
10:間隙、 11,12、14:強化ガラス破壊具、
13:吸着可能強化ガラス破壊具、
2:基部、 20:間隙、 21:第1固定部、 22:第2固定部、
23:第3固定部、 24:第4固定部、25:玉留、 26:頭部、
27:挿入部、 271:係合部、
3:ピン、 30:軸部、 31:尖端部、 311:先端、 32:一端、
33:段差部、 34:底面、
4:カバー、 40:貫通孔、 41:端部、
8:吸着体、 80:吸着面、 81:固定部、 82:吸着盤、
9:折り畳み傘、 91:中棒、 92:つゆ先、 93:石突き。
図1
図2
図3
図4
図5
図6