(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態のフォークリフトについて説明する。
図1は、実施の形態のフォークリフトに係る荷役用油圧回路の一例を示す油圧回路図である。
図1に示すように、フォークリフトは、操作レバー10と、コントロールバルブ装置100と、制御装置30と、インバータ31と、電動モータ40と、油圧ポンプ50と、作動油が貯留される作動油タンク60と、アンロード弁65と、リフトシリンダ70とを備えている。操作レバー10は、リフトシリンダ70を作動させてフォークリフトのフォークを上下方向に昇降させるための操作部材である。なお、実際には、フォークリフトは、リフトシリンダ70以外の油圧シリンダ(フォークを前後方向に傾動させるためのティルトシリンダなど)も備えているが、
図1においてはリフトシリンダ70のみを図示している。
【0009】
制御装置30は、CPUやFPGAなどのプロセッサ、ROMやRAMなどのメモリ、その他の周辺回路などから構成され、制御プログラムに基づいてフォークリフトの各部を制御する。制御装置30は、車両全体を制御するビークルコントロールモジュール(以下、VCMと称する)30である。VCM30は、電動モータ40に接続されるインバータ31に、電動モータ40を制御するための駆動信号を出力する。VCM30は、インバータ31に駆動信号を出力することで、電動モータ40の回転数(回転速度)を制御する。VCM30は、電動モータ40の回転数を制御することによって、油圧ポンプ50から吐出される油の流量を制御する。
【0010】
インバータ31は、複数のスイッチング素子などにより構成され、VCM30から入力される駆動信号に基づいてスイッチング素子をオンオフ制御する。インバータ31は、スイッチング素子をオンオフ制御することで、電動モータ40に交流電力を供給し、電動モータ40の回転数を制御する。電動モータ40は、インバータ31と電気的に接続され、油圧ポンプ50と機械的に接続される。電動モータ40は、VCM30によってその回転数が制御され、油圧ポンプ50を駆動する。
【0011】
油圧ポンプ50は、第1ポート51aおよび第2ポート51bを有し、電動モータ40によって駆動されて回転する。油圧ポンプ50の第1ポート51aは、油の吐出しポートであり、第1管路61を介してコントロールバルブ装置100に接続される。油圧ポンプ50の第2ポート51bは、油の吸い込みポートであり、作動油タンク60に接続される。油圧ポンプ50は、電動モータ40によって回転駆動されて、第1ポート51aから第1管路61に油を吐出する。油圧ポンプ50から吐出される油の量は、電動モータ40の回転数の増減に伴って増減する。油圧ポンプ50から吐出された油は、コントロールバルブ装置100を介してリフトシリンダ70に供給される。
【0012】
リフトシリンダ70は、荷役用の油圧シリンダであり、フォークの昇降動作を調節する。リフトシリンダ70は、シリンダチューブ71と、ピストン72と、ピストン72に接続されるピストンロッド73とを有する。シリンダチューブ71内には、ピストン72で仕切られた第1油室74および第2油室75が設けられる。フォークを昇降する場合には、油圧ポンプ50による油圧が第1油室74および第2油室75に供給されることで、ピストン72が油圧を受けてピストンロッド73を図中の左右方向(ピストンロッド73の軸方向)に移動させる。リフトシリンダ70のピストンロッド73が伸縮されることによって、リフトシリンダ70に接続されたフォークリフトのマスト(不図示)が昇降して、フォークが昇降される。
【0013】
コントロールバルブ装置100は、第1管路61を介して油圧ポンプ50に接続され、第2管路62を介して作動油タンク60に接続される。また、コントロールバルブ装置100は、第3管路63を介してリフトシリンダ70の第1油室74に接続され、第4管路64を介してリフトシリンダ70の第2油室75に接続される。なお、実際には、コントロールバルブ装置100は複数の方向制御弁を含んで構成されるが、
図1においては、油圧ポンプ50からリフトシリンダ70への油を制御する方向制御弁のみを図示している。
【0014】
コントロールバルブ装置100のスプール20は、操作レバー10と不図示の操作部材、例えばロッドなどと機械的に接続され、操作レバー10の操作量(操作位置)に対応して移動する。
図1において、スプール20は、操作レバー10の操作によって左右方向に移動する。コントロールバルブ装置100は、操作レバー10の操作によってスプール20の位置が変更されることで、油圧ポンプ50からの油の流れや流量を制御する。また、操作レバー10の操作量がゼロであり、操作レバー10からフォークの上昇および下降を指示しない場合には、スプール20は中立位置に位置する。すなわち、中立位置は、フォークの上昇および下降を行わない場合の位置である。
【0015】
スプール20が中立位置に位置する場合には、コントロールバルブ装置100は、第1管路61、第2管路62、第3管路63、および第4管路64を互いに遮断する。これにより、リフトシリンダ70の第1油室74および第2油室75の油圧が保持され、リフトシリンダ70の位置が所定の位置に保持される。アンロード弁65は、スプール20が中立位置に位置する場合、すなわちコントロールバルブ装置100において油圧ポンプ50からリフトシリンダ70への流路が閉じている場合に、開状態となって油圧ポンプ50からの余分な油を作動油タンク60へと戻す。
【0016】
操作レバー10の操作によってスプール20が中立位置より右方向に移動した場合は、コントロールバルブ装置100は、第1管路61と第3管路63とを接続すると共に、第2管路62と第4管路64とを接続する。これにより、リフトシリンダ70の第1油室74が、第3管路63および第1管路61を介して油圧ポンプ50に接続され、リフトシリンダ70の第2油室75が、第4管路64および第2管路62を介して作動油タンク60に接続される。
【0017】
スプール20が中立位置より右方向に移動した状態において、油圧ポンプ50の第1ポート51aから油が吐出されると、第1管路61および第3管路63を通ってリフトシリンダ70の第1油室74に油が供給される。第1油室74の油圧が上昇すると、ピストン72が第2油室75に向かって移動する。この結果、ピストンロッド73が右方向に移動する、すなわちリフトシリンダ70が右方向に伸びる。また、ピストン72が第2油室75側に移動することにより、第2油室75から油が排出される。第2油室75から排出された油は、第4管路64および第2管路62を通って作動油タンク60に排出される。こうして、ピストンロッド73が右方向に移動するのに伴って、フォークリフトのフォークが上昇する。
【0018】
操作レバー10の操作によってスプール20が中立位置より左方向に移動した場合は、コントロールバルブ装置100は、第1管路61と第4管路64とを接続すると共に、第2管路62と第3管路63とを接続する。これにより、リフトシリンダ70の第2油室75が、第4管路64および第1管路61を介して油圧ポンプ50に接続され、リフトシリンダ70の第1油室74が、第3管路63および第2管路62を介して作動油タンク60に接続される。
【0019】
スプール20が中立位置より左方向に移動した状態において、油圧ポンプ50の第1ポート51aから油が吐出されると、第1管路61および第4管路64を通ってリフトシリンダ70の第2油室75に油が供給される。第2油室75の油圧が上昇すると、ピストン72が第1油室74に向かって移動する。この結果、ピストンロッド73が左方向に移動する、すなわちリフトシリンダ70が左方向に縮む。また、ピストン72が第1油室74側に移動することにより、第1油室74から油が排出される。第1油室74から排出された油は、第3管路63および第2管路62を通って作動油タンク60に排出される。こうして、ピストンロッド73が左方向に移動するのに伴って、フォークリフトのフォークが下降する。
【0020】
このように、操作レバー10の操作によりリフトシリンダ70の伸縮動作が行われ、フォークが昇降される。フォークの昇降速度は、リフトシリンダ70に供給される油の流量に応じて変化する。操作レバー10の操作が行われた際に、油圧ポンプ50からの油の吐出量を制御せずに、すなわち電動モータ40を一定数で回転させるとともにコントロールバルブ装置100のスプール移動量を制御してリフトシリンダ70に供給される油量を調節すると、電費(電力消費率)の低下や操作性の低下が生じる。例えば、フォークを低速で動かしたい場合に、油の流量が少なくてよいにもかかわらずコントロールバルブ装置100に大流量の油が供給され、これを操作レバー10によるコントロールバルブの開度変更で調整する必要が生じる。このとき、余剰油はアンロード弁65から作動油タンク60に排出される。油圧ポンプ50を一定の回転数で駆動するということは電動モータ40を一定の回転数で回転することを意味するから、操作レバー10の操作量に関わらず電動モータ40は高回転数で駆動され、消費電力が大きくなる。
【0021】
特許文献1に記載のコントロールバルブ装置では、フォークを上げる際にのみリフトレバー操作量が検出され、検出結果に基づいて電動モータの回転数を制御することができる。しかし、特許文献1に記載のコントロールバルブ装置では、フォークを下げる際にリフトレバー操作量が検出されないので、検出結果に基づいて電動モータの回転数を制御することができない。すなわち、特許文献1のコントロールバルブ装置は、リフト下げ時は載荷物などの自重でリフトシリンダを収縮させるフォークリフトに適用することを目的としている。
実施の形態によるフォークリフトは、リフト上げ動作も下げ動作もともに油圧力を用いるものである。上述したように実施の形態のフォークリフトは電動モータで油圧ポンプを回転駆動し、リフトレバーの上げ操作量と下げ操作量に応じてスプール移動量を機械的に調節するのみならず、レバー操作量に基づいて電動モータの回転数を制御することにより、電費の改善を図るものである。
【0022】
そこで、実施の形態によるフォークリフトは、操作レバー10の操作量に対応したスプール20の移動量(または位置)を検出するためのセンサ(スプールセンサ)21を有し、スプール20の移動量に基づいて油圧ポンプ50を制御して油の流量を制御する。以下に、より詳しく説明する。
【0023】
コントロールバルブ装置100を構成するセンサユニットは、相対移動する二つの部材を備え、一方の部材にスプールセンサ21が取り付けられ、他方の部材にマグネット(磁石)22(
図2参照)が取り付けられる。マグネット22は、操作レバー10の操作によるスプール20の移動に伴って移動する。スプールセンサ21およびマグネット22は、スプール20の移動量を検出するセンサユニットを構成する。
【0024】
スプールセンサ21は、例えばホール素子を用いた非接触式のセンサであり、スプール20と一体に移動するカバーに内蔵のマグネット22からの磁束に応じた信号を生成する。スプールセンサ21内部の磁束密度は、スプール20に固定されたマグネット22の位置、言い換えるとマグネット22とスプールセンサ21との移動方向の距離、すなわち相対位置関係に対応した値となる。スプールセンサ21は、スプール20の移動によってマグネット22からの磁束が変化することを利用して、スプール20の移動量を検出する。この磁束に応じた信号は、スプール20の移動量に応じた信号(移動量信号)となる。スプールセンサ21は、生成した移動量信号をVCM30に出力する。
【0025】
VCM30は、スプールセンサ21からの移動量信号を用いて、スプール20の位置、言い換えるとスプール20の移動量を算出する。スプール20の移動量は、例えば中立位置からの移動量(変位量)となる。VCM30は、算出したスプール20の移動量に基づいて、電動モータ40の回転数(回転速度)を決定する。VCM30は、回転数に応じた駆動信号を生成してインバータ31に出力する。VCM30は、インバータ31に駆動信号を出力することで、電動モータ40の回転数を制御し、油圧ポンプ50から吐出される油の流量を制御する。VCM30によって油圧ポンプ50からの吐出油の流量が調整され、またスプール20が機械的に移動することによりリフトシリンダ70の伸縮速度が調整され、フォークの昇降速度が調整される。
【0026】
このように、実施の形態では、VCM30は、スプールセンサ21からの信号を用いてスプール20の移動量を常時検出し、スプール20の移動量に応じて油圧ポンプ50の回転数を制御する。例えば、VCM30は、スプール20の移動量が小さい場合に油圧ポンプ50の回転数を小さくして、油圧ポンプ50からの油の吐出量を少なくする。また、VCM30は、スプール20の移動量が大きい場合には、油圧ポンプ50の吐出量を多くする。これにより、フォークリフトの電費を向上させることができる。またフォークを適正な速度で駆動することが可能となるため、フォークリフトの操作性を向上させることができる。
【0027】
さらに、実施の形態によるフォークリフトでは、スプールセンサ21がスプール20の移動に伴う磁束の変化を検出するため、スプール20が一方の方向に動く場合と他方の方向に動く場合のいずれの方向に動く場合にも、スプール20の移動量を検出することができる。このため、フォークの上昇および下降の両方向の制御を行うことができる。
【0028】
図2は、実施の形態に係るセンサユニットの搭載例を説明するための図である。
図2に示すカバー82は、内部にマグネット22を備え、スプール20に取り付けられる。また、ケース81は、内部にスプールセンサ21を備え、コントロールバルブ装置100のハウジング101(
図3参照)に取り付けられる。スプール20は、カバー82およびケース81の内部を貫通するように配置される。ケース81は、スプール20の端部を囲むように配置され、カバー82は、ケース81を囲むように配置される。ケース81は、内側カバーとして機能するとともに、カバー82が摺動して直進移動するように保持する機能を有する。カバー82は、外側カバーとして機能する。すなわち、ケース81は、カバー82がスプール20とともに直進運動する際のガイド部、例えば摺動部としても機能する。
【0029】
カバー82に内蔵されるマグネット22は、スプール20に対して固定して配置され、ケース81に内蔵されるスプールセンサ21は、コントロールバルブ装置100のハウジング101に対して固定して配置されることになる。また、カバー82とコントロールバルブ装置100との間には、スプール20を中立位置に付勢するための圧縮ばね(不図示)が備えられる。
図2は、スプール20が中立位置に配された状態を示している。
【0030】
カバー82は、スプール20の上下方向(図中の矢印の方向)の移動に伴って移動する。操作レバー10が操作されてスプール20が上方向に移動する場合は、カバー82も上方向に移動し、操作レバー10が操作されてスプール20が下方向に移動する場合には、カバー82も下方向に移動する。このため、カバー82に固定して設けられるマグネット22は、スプール20が上下方向に移動するのに伴って上下方向に移動する。一方、スプールセンサ21は、コントロールバルブ装置100に対して固定して設けられる。このため、操作レバー10によるスプール20の移動によって、マグネット22とスプールセンサ21との相対位置関係が変化する。スプールセンサ21は、上述したように、マグネット22による磁束に基づき、スプール20の移動量に関する移動量信号を生成する。スプールセンサ21により生成された移動量信号は、図のワイヤ85を介してVCM30に伝送される。
【0031】
図3は、実施の形態に係るセンサユニットの構成例を示す図であり、
図2に示した構成の断面構造を模式的に示している。マグネット22は、カバー82に内蔵されてスプール20に取り付けられる。カバー82は、コントロールバルブ装置100のハウジング101から突出するスプール20を囲繞するように設けられ、例えば、
図3に示すピン86によってスプール20に連結され、スプール20の図中の上下方向の移動に伴って移動する。ピン86は操作レバー10により駆動する操作部材91、例えばロッドやプッシュプルケーブルなどをスプール20に連結するためのものでもある。
【0032】
スプールセンサ21は、ケース81に内蔵され、ハウジング101に取り付けられる。ケース81は、ハウジング101から突出するスプール20を囲繞するように取り付けられる。また、カバー82は、ケース81を囲むように配置される。
【0033】
図4は、実施の形態に係るセンサユニットの構成例を示すブロック図である。スプールセンサ21は、回路基板(例えば半導体基板)を用いて構成される。スプールセンサ21は、信号生成部21aと、アンプ部21bと、アナログ/デジタル変換部(AD変換部)21cとを有する。信号生成部21a、アンプ部21b、およびAD変換部21cには、それぞれ配線を介して電圧(例えば5V)が供給(印加)される。
【0034】
信号生成部21aは、ホール素子等により構成され、マグネット22による磁束密度に応じた電気信号(電圧信号)を生成する。アンプ部21bは、増幅回路を含んで構成され、信号生成部21aから入力される電気信号を所定のゲイン(増幅率)で増幅してAD変換部21cに出力する。AD変換部21cは、アンプ部21bから入力される信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をVCM30に出力する。
【0035】
図5は、実施の形態に係るスプール20の移動量とスプールセンサ21により生成される信号との関係の一例を示す図である。横軸は、スプール20の移動量(単位はmm)を示し、縦軸は、スプールセンサ21から出力される移動量信号(単位はV)を示す。なお、
図5において、スプール20が中立位置に配された場合の移動量を0mmとしている。
【0036】
スプール20が中立位置に配された場合は、スプールセンサ21は、移動量がゼロであることを示す移動量信号、例えば
図5に示すように2.5Vの電圧信号を、VCM30に出力する。スプール20が中立位置よりも押し込まれた場合には、マグネット22とスプールセンサ21との距離が短くなり、スプールセンサ21内の磁束密度が高くなる。この場合、スプールセンサ21は、例えば中立位置の場合の電圧よりも高い電圧信号を生成する。具体的には、マグネット22とスプールセンサ21との距離が最も短い最短時においては、スプールセンサ21は、例えば4.5Vの電圧信号をVCM30に出力する。
【0037】
スプール20が中立位置よりも引き出された場合には、マグネット22とスプールセンサ21との距離が長くなり、スプールセンサ21内の磁束密度が小さくなる。この場合、スプールセンサ21は、例えば中立位置の場合の電圧よりも低い電圧信号を生成する。具体的には、マグネット22とスプールセンサ21との距離が最も長い、言い換えるとスプール20が最も伸びた最伸時においては、スプールセンサ21は、例えば0.5Vの電圧信号をVCM30に出力する。
【0038】
このように、操作レバー10の前傾、中立、および後傾の操作に対応してスプール20が移動すると、スプールセンサ21は、スプール20に取り付けられたマグネット22の移動に伴う磁束の変化を検出し、スプール20の移動量に応じた移動量信号を生成する。VCM30は、スプールセンサ21から入力される移動量信号に基づいて、スプール20の移動量を演算する。例えば、スプールセンサ21から出力される移動量信号の信号レベル(電圧値)とスプール20の位置との対応関係が、予め実験などにより求められ、データテーブルや計算式としてVCM30の内部のメモリに記憶(記録)される。フォークリフトの実際の使用時には、VCM30は、内部のメモリに記憶されたこの対応関係を参照し、スプールセンサ21から出力される移動量信号からスプール20の移動量(または位置)を算出する。そして、VCM30は、スプール20の移動量に基づいて、電動モータ40の回転数を調節して油圧ポンプ50の回転数を制御する。また、移動量信号は、例えば
図5に示すように、スプールの移動量に応じて線形的に変化するため、VCM30は、移動量信号を用いてリフトの昇降速度を細かく調整することが可能となる。
【0039】
図6は、実施の形態に係るセンサユニットの動作例を説明するための図である。
図6(a)は、スプール20が一方向、例えばフォーク下げ方向にフルストローク操作された
図1の位置P1にある状態を示し、
図6(b)は、スプール20が
図1の中立位置P0にある状態を示し、
図6(c)は、スプール20が他方向、例えばフォーク上げ方向にフルストローク操作された
図1の位置P2にある状態を示す。コントロールバルブ装置100のハウジング101には、図示しないが、スプール20の位置に応じて、リフトシリンダ70に油を供給するための第3管路63および第4管路64が接続される通路や、油圧ポンプ50と作動油タンク60にそれぞれ接続された第1管路61および第2管路62が接続される通路が設けられている。ハウジング101には、スプールセンサ21が内蔵されたケース81が取り付けられる。
【0040】
操作レバー10が前傾方向に操作され、スプール20が中央位置よりも押し込まれた場合は、
図6(a)に示すフォーク下げ方向のフルストローク位置に向かう方向にカバー82も押し込まれた状態となる。これにより、
図6(b)の中立位置の場合よりも、カバー82内のマグネット22がケース81内のスプールセンサ21に近づく。一方、操作レバー10が後傾方向に操作され、スプール20が中央位置よりも引き出された場合は、
図6(c)に示すフォーク上げ方向の伸長方向のフルストローク位置に向かう方向にカバー82も引き出された状態となる。これにより、
図6(b)の中立位置の場合よりも、カバー82内のマグネット22がケース81内のスプールセンサ21から遠ざかる。なお、操作レバー10による操作が行われない場合には、スプール20は、上述した圧縮ばねによって付勢され、
図6(b)に示すように中立位置に保持される。
【0041】
図6(a)〜
図6(c)に示したように、スプール20が軸方向に移動すると、マグネット22とスプールセンサ21との相対位置が変化し、スプールセンサ21内の磁束密度が変化する。マグネット22とスプールセンサ21との距離が短い場合は、スプールセンサ21内の磁束密度が大きくなり、マグネット22とスプールセンサ21との距離が長い場合は、スプールセンサ21内の磁束密度が小さくなる。これにより、スプールセンサ21から出力される移動量信号は、スプール20の移動量(または位置)を反映した信号となる。
【0042】
実施の形態によるコントロールバルブ装置100では、マグネット22を有するカバー82をハウジング101から突出するスプール20の端部を取り囲むように取り付け、スプールセンサ21を有するケース81をハウジング101に取り付けて、スプール20の移動量の計測を行う。このため、コントロールバルブ装置100自体の設計を変更することなく、スプール20の上下方向の移動量を検出することができる。
また、コントロールバルブ装置100に対して簡素なセンサユニットを追加するだけであり、部品点数を低減し、コントロールバルブ装置100の全体としてのサイズを抑えることができる。例えば、スプール20は操作レバー10の操作によってハウジング101に対して摺動運動するように構成される。そのため、ハウジング101の端面からスプール20が所定量突出している。実施の形態のセンサユニットのスプール移動方向の全長はスプール20の突出量よりも小さい寸法として設計することができる。そのため、センサユニット21を装着したコントロールバルブ装置100の全長はセンサユニット未装着時と同一である。
さらに、スプールセンサ21およびマグネット22は、それぞれカバー82とケース81に内蔵して設けられるため、輸送時等にこれらが破損することを防止することができる。
【0043】
図7は、実施の形態に係るフォークリフトの動作例を説明するフローチャートである。
ステップS100において、作業者等により操作レバー10が操作されると、コントロールバルブ装置100のスプール20が移動する。また、スプール20の移動に伴って、スプール20に取り付けられたカバー82およびマグネット22が移動し、マグネット22とコントロールバルブ装置100に取り付けられたスプールセンサ21との距離が変化する。
【0044】
ステップS110において、マグネット22とスプールセンサ21との距離が変化することで、スプールセンサ21内を通過する磁束が変化する。スプールセンサ21は、磁束密度に応じた移動量信号を生成する。スプールセンサ21は、生成した移動量信号をVCM30に出力する。
ステップS120において、VCM30は、スプールセンサ21からの移動量信号を用いて、スプール20の移動量を算出する。VCM30は、算出したスプール20の移動量に基づいて、電動モータ40の回転数を決定する。
【0045】
ステップS130において、VCM30は、決定した回転数に応じた駆動信号をインバータ31に出力し、電動モータ40を制御する。電動モータ40は、VCM30によってその回転数が制御されて、油圧ポンプ50を駆動する。油圧ポンプ50はスプール20の移動量に応じた回転数で駆動され、油圧ポンプ50から吐出される油の流量が調整される。
【0046】
ステップS140において、リフトシリンダ70は、油圧ポンプ50から油が供給されて伸縮する。この結果、リフトシリンダ70に接続されたフォークリフトのフォークが昇降される。油圧ポンプ50からリフトシリンダ70に供給される油の流量は、スプール20の移動量に基づいて調整されるため、スプール20の移動量に応じてフォークの昇降速度が適正な速度に調整される。
【0047】
上述した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)実施の形態のセンサユニットは、ハウジング101内を摺動して油の流れを制御するスプール20の移動量を検出するためのセンサユニットである。ハウジング101の端面から突出するスプール20の外周を取り囲み、スプール20と連結されるカバー82と、カバー82が移動する際のガイド部として摺動面を有し、ハウジング101に固定されるケース81と、カバー82およびケース81のうちの一方に内蔵される磁石(マグネット)22と、カバー82およびケース81のうちの他方に内蔵され、磁石22によって生じる磁束に応じた信号を生成するセンサ21と、を備える。実施の形態に係るセンサユニットは、スプール20の周囲を取り囲むようにハウジング101に装着される。このため、スプールセンサ付きのコントロールバルブの全長を短くすることができる。また、操作レバー10がフォーク上げ方向に操作されるとき、およびフォーク下げ方向に操作されるとき、マグネット22とスプールセンサ21との相対位置関係に対応した移動量信号が得られる。このため、異なる方向に操作されるスプールの移動量をそれぞれ検出することができる。
【0048】
(2)コントロールバルブ装置100は、スプール20を内蔵し、スプール20の位置に基づいて油の流れを制御するように内部通路、入口ポート、出口ポートが形成されたハウジング101と、ハウジング101の端面から突出するスプール20の外周を取り囲み、スプール20と連結されるカバー82と、カバー82が移動する際のガイド部を有し、ハウジング101に固定されるケース81と、カバー82およびケース81のうちの一方に内蔵される磁石22と、カバー82およびケース81のうちの他方に内蔵され、磁石22によって生じる磁束に応じた信号を生成するセンサ21と、を備える。実施の形態に係るコントロールバルブ装置100では、センサユニットがスプール20の周囲を取り囲むようにハウジング101に装着される。このため、コントロールバルブ装置100の全長を短くすることができる。また、スプールセンサ21からの移動量信号を用いて、スプール20が移動する両方向の移動量を検出することができる。
(3)センサユニットは、ハウジング101から突出するスプール20を囲繞するように取り付けられる。このため、コントロールバルブ装置100自体の設計を変更することなく、スプール20の上下方向の移動量を検出することができる。また、コントロールバルブ装置100に対して簡素なセンサユニットを追加するだけであり、部品点数を低減し、コントロールバルブ装置100の全体としてのサイズを抑えることができる。
【0049】
(4)フォークリフトは、コントロールバルブ装置100と、電動モータ40で駆動され、油圧シリンダ70に油を供給する油圧ポンプ50と、を備え、センサ21から出力される信号に基づいて電動モータ40の回転数を制御し、スプール20の操作量が大きいほど油圧ポンプ50の回転数が大きくなるようにする。実施の形態に係るフォークリフトは、スプールセンサ21から入力される移動量信号を用いてスプール20の移動量を算出し、スプール20の移動量に基づいて油圧ポンプ50を制御する。このため、スプール20の移動量に基づいて、フォークの昇降速度を調節することができる。また、スプール20の移動量に応じて油圧ポンプ50の回転数が制御されるため、フォークリフトの電費を向上させることができる。さらに、フォークを適正な速度で駆動することが可能となるため、フォークリフトの操作性を向上させることができる。
【0050】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
上述した実施の形態では、フォークリフトのフォークを昇降させるためのリフト用スプール20に本発明のセンサ(スプールセンサ21)を用いる例について説明した。しかし、フォークリフトのフォークを前後傾させるためのティルト用スプールに本発明のセンサを用いてもよい。この場合、VCM30は、ティルト用スプールに対して設けられたセンサからの移動量信号を受信し、この移動量信号を用いて油圧ポンプを制御する。これにより、フォークのティルト動作が適正な速度で行われる。
なお、リフト昇降動作とティルト動作を同時に行う場合もあり、この場合、例えば、リフト用コントロールバルブとティルト用コントロールバルブのスプール移動量に基づき、VCM30が電動モータ40の回転数を調整する。
【0051】
スプールおよびセンサの数は限定されず、油圧シリンダの数に対応してそれぞれ1つ、2つ、または3つ以上であってもよい。スプール移動量を検出するセンサからの信号は、スプールが中立位置の場合に出力される信号を基準信号として両方向に電圧信号が変化するものに限らず、基準信号となる位置がスプールの一方のエンド(移動端)であってもよい。
【0052】
(変形例2)
上述した実施の形態では、マグネット22をスプール20に対して固定して配置し、スプールセンサ21をコントロールバルブ装置100のハウジング101に対して固定して配置する例について説明した。しかし、マグネット22をハウジング101に対して固定して配置し、スプールセンサ21をスプール20に対して固定して配置してもよい。例えば、スプールセンサ21をカバー82に内蔵して設けて、マグネット22をケース81に内蔵して設けるようにしてもよい。
【0053】
(変形例3)
上述した実施の形態では、スプールの移動量を検出するためのスプールセンサとして、ホール素子を用いたセンサについて説明した。しかし、磁気抵抗素子など他のセンサを用いてもよい。
【0054】
(変形例4)
上述した実施の形態では、スプールの全ストロークの位置を検出するセンサを用いたが、ハウジングの端部から突出するスプールの周囲を取り囲むように構成したセンサユニットであれば、中立位置から一方向の移動量のみを検出するように用いるセンサも本発明によるセンサユニットに含まれる。また、このセンサユニットを有するコントロールバルブ製品およびフォークリフトも本発明に含まれる。この場合のフォークリフトでは、例えば、上げ方向のみポンプの回転数制御が行われる。
【0055】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。