【実施例】
【0045】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている材料等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0046】
(実施例1)
本実施例においては、飲料用又は液状食品用チューブの材料に用いることが可能な硫黄含有ニトリルゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製、型番:1A、硫黄含有量がニトリルゴムの全質量に対し5質量%以下)を用いて、飲料水ディスペンサ内で増殖可能な細菌を培養し、当該細菌の増殖の程度を調べた。
【0047】
先ず、前記硫黄含有ニトリルゴムからなり、かつ、厚み2mm、大きさ1cm×3cmのゴム板を、70%エタノール(和光純薬工業(株)純度99.5%エタノールを超純水にて70wt%に調整)に10分間浸漬し、殺菌した。
【0048】
次に、一般細菌を数十cfu(colony forming unit)/ml、従属栄養細菌を数百cfu/ml含む飲料水(菌液)を準備し、培養前の菌液中の一般細菌の菌数を、ペトリフィルムACプレート(住友スリーエム(株)製、一般細菌検出用)を用いて計測した。すなわち、菌液1mlを前記ペトリフィルムACプレート上に載せ、当該培養液を広げた。さらに、温度37℃で48時間培養した後の菌数を計測した。このときの一般細菌の状態を下記表1に示す。また、培養前の一般細菌の菌数を下記表2に示す。
【0049】
尚、一般細菌とは、標準寒天培地を用いて36±1℃で24±2時間で培養したときに、当該培地に集落を形成する細菌を意味する。また、従属栄養細菌とは、有機栄養物を比較的低濃度に含む培地を用いて低温(25℃)で長時間培養したときに、当該培地に集落を形成するすべての細菌を意味する。
【0050】
また、前記培養前の菌液中の従属栄養細菌の菌数については、ペトリフィルムAQHCプレート(住友スリーエム(株)製)を用い、25℃で1週間を培養した後に計測した。このときの従属栄養細菌の状態を下記表3に示す。また、培養前の従属栄養細菌の菌数を下記表4に示す。
【0051】
一方、前記菌液40mlを、クリーンベンチ内にて、50mlコニカルチューブ容器(日本ベクトン・ディッキンソン(株))に入れた。さらに、クリーンベンチ内にて、殺菌済みの前記ゴム板を前記菌液で洗浄し、その後、コニカルチューブ容器に入れて蓋をした。続いて、コニカルチューブ容器において、従属栄養細菌が最も増殖し易い温度である25℃で1週間培養を行った。
【0052】
1週間の培養後、クリーンベンチ内にて、コニカルチューブをよく攪拌し、培養液中の一般細菌の増殖の程度を、ペトリフィルムACプレートを用いて確認した。すなわち、よく撹拌した培養液1mlをペトリフィルムACプレート上に載せ、当該培養液を広げた。次いで、25℃で48時間培養した後、培養後の一般細菌の菌数を計測した。培養後の菌液中における一般細菌の状態を下記表1に示す。また、培養後の一般細菌の菌数を下記表2に示す。
【0053】
また、1週間培養後の従属栄養細菌の増殖の程度については、ペトリフィルムAQHCプレートを用い、25℃で1週間を培養した後に計測した。このときの従属栄養細菌の状態を下記表3に示す。また、培養後の従属栄養細菌の菌数を下記表4に示す。
【0054】
(実施例2)
本実施例においては、コニカルチューブ容器内で菌液40mlを1週間培養する際の培養温度を、一般細菌が最も増殖し易い温度である37℃に変更した。それ以外は、前記実施例1と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0055】
(比較例1)
本比較例においては、ゴム板として、シリコーンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製、型番:4C(硫黄を含まないもの))を用いた。それ以外は、前記実施例1と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0056】
(比較例2)
本比較例においては、コニカルチューブ容器内で菌液40mlを1週間培養する際の培養温度を、一般細菌が最も増殖し易い温度である37℃に変更した。それ以外は、前記比較例1と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0057】
(実施例3)
本実施例においては、ゴム板として、硫黄含有エチレンプロピレンジエンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製、型番:E7−465、硫黄含有量がエチレンプロピレンジエンゴムの全質量に対し5質量%以下)を用いた。それ以外は、前記実施例1と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0058】
(実施例4)
本実施例においては、コニカルチューブ容器内で菌液40mlを1週間培養する際の培養温度を、一般細菌が最も増殖し易い温度である37℃に変更した。それ以外は、前記実施例3と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0059】
(比較例3)
本比較例においては、ゴム板として、エチレンプロピレンジエンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製、型番:E7−512)(硫黄を含まないもの))を用いた。それ以外は、前記実施例1と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0060】
(比較例4)
本比較例においては、コニカルチューブ容器内で菌液40mlを1週間培養する際の培養温度を、一般細菌が最も増殖し易い温度である37℃に変更した。それ以外は、前記比較例3と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0061】
(参考例1)
本参考例においては、コニカルチューブ容器内にて菌液を培養する際に、ゴム板を投入しなかった。それ以外は、前記実施例1と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0062】
(参考例2)
本参考例においては、コニカルチューブ容器内で菌液40mlを1週間培養する際の培養温度を、一般細菌が最も増殖し易い温度である37℃に変更した。それ以外は、前記参考例1と同様にした。結果を下記表1及び表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
(実施例5)
本実施例においては、飲料用又は液状食品用部材に適用可能な硫黄含有ニトリルゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製、硫黄含有量がニトリルゴムの全質量に対し1質量%)を用いて、飲料水ディスペンサ内で増殖可能な細菌を培養し、当該細菌の増殖の程度を調べた。
【0068】
先ず、前記硫黄含有ニトリルゴムからなり、かつ、厚み2mm、大きさ1cm×3cmのゴム板を、70%エタノール(和光純薬工業(株)純度99.5%エタノールを超純水にて70wt%に調整)に10分間浸漬し、殺菌した。
【0069】
次に、一般細菌が812cfu/ml、従属栄養細菌が864cfu/ml含む飲料水(菌液)を準備した。当該飲料水は、飲料水ディスペンサ(天然水、AW・ウォーター株式会社製)から採取した冷水であって、25℃で1週間培養後の水である。尚、菌液中の一般細菌の菌数はペトリフィルムACプレート(住友スリーエム(株)製、一般細菌検出用)を用いて計測した。また、前記培養前の菌液中の従属栄養細菌の菌数については、ペトリフィルムAQHCプレート(住友スリーエム(株)製)を用いて計測した。
【0070】
次に、前記菌液40mlを、クリーンベンチ内にて、50mlコニカルチューブ容器(日本ベクトン・ディッキンソン(株))に入れた。さらに、クリーンベンチ内にて、殺菌済みの前記ゴム板を前記菌液で洗浄し、その後、コニカルチューブ容器に入れて蓋をした。続いて、コニカルチューブ容器において、温度25℃で1週間培養を行った。
【0071】
1週間の培養後、クリーンベンチ内にて、コニカルチューブをよく攪拌し、培養液中の一般細菌の増殖の程度を、ペトリフィルムACプレートを用いて確認した。すなわち、よく撹拌した培養液1mlをペトリフィルムACプレート上に載せ、当該培養液を広げた。次いで、37℃で48時間培養した後、培養後の一般細菌の菌数を計測した。培養後の菌液中における一般細菌の菌数を下記表5に示す。
【0072】
また、1週間培養後の従属栄養細菌の増殖の程度については、ペトリフィルムAQHCプレートを用い、25℃で1週間培養した後に計測した。このときの従属栄養細菌の菌数を下記表5に示す。
【0073】
(実施例6)
本実施例においては、ゴム板として、硫黄の含有量がゴム組成物の全質量に対し2.5質量%の硫黄含有ニトリルゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製)を用いた。それ以外は、前記実施例5と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0074】
(実施例7)
本実施例においては、ゴム板として、硫黄の含有量がゴム組成物の全質量に対し5質量%の硫黄含有ニトリルゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製)を用いた。それ以外は、前記実施例5と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0075】
(比較例5)
本比較例においては、ゴム板として、シリコーンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製、型番:4C(硫黄を含まないもの))を用いた。それ以外は、前記実施例5と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0076】
(実施例8)
本実施例においては、ゴム板として、硫黄の含有量がゴム組成物の全質量に対し1質量%の硫黄含有エチレンプロピレンジエンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製)を用いた。それ以外は、前記実施例5と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0077】
(実施例9)
本実施例においては、ゴム板として、硫黄の含有量がゴム組成物の全質量に対し2.5質量%の硫黄含有エチレンプロピレンジエンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製)を用いた。それ以外は、前記実施例11と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0078】
(実施例10)
本実施例においては、ゴム板として、硫黄の含有量がゴム組成物の全質量に対し5質量%の硫黄含有エチレンプロピレンジエンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製)を用いた。それ以外は、前記実施例11と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0079】
(比較例6)
本比較例においては、ゴム板として、エチレンプロピレンジエンゴム(エア・ウォーター・マッハ(株)製、型番:E7−512)(硫黄を含まないもの))を用いた。それ以外は、前記実施例11と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0080】
(参考例3)
本参考例においては、コニカルチューブ容器内にて菌液を培養する際に、ゴム板を投入しなかった。それ以外は、前記実施例5と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0081】
(参考例4)
本参考例においては、コニカルチューブ容器内で菌液40mlを1週間培養する際の培養温度を、一般細菌が最も増殖し易い温度である37℃に変更した。それ以外は、前記参考例3と同様にした。結果を下記表5に示す。
【0082】
【表5】
【0083】
(結果)
表1、表2及び表5から分かる通り、硫黄含有ニトリルゴム及び硫黄含有エチレンプロピレンジエンゴムを用いた実施例1〜10においては、一般細菌の数が減少しており、殺菌されている可能性が示された。また、実施例1〜7においては、比較例1〜6と比較して、従属栄養細菌の増殖を抑制できていることが確認された。
【0084】
一方、シリコーンゴム(硫黄を含まないもの)又はエチレンプロピレンジエンゴム(硫黄を含まないもの)を用いた比較例1〜6においては、一般細菌が増殖していることが確認された。また、従属栄養細菌についても、表3〜表5から分かる通り、比較例1〜5においては、増殖していることが確認された。
【0085】
以上の結果から、ゴムの材質によって細菌の増殖傾向に差は出るものの、硫黄を含むゴム組成物を用いた場合には、硫黄を含まないシリコーンゴムや硫黄を含まないエチレンプロピレンジエンゴムと比較して、細菌の増殖を抑制できることが示された。