特許第6989254号(P6989254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989254
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】光学モジュールおよび光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20211220BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20211220BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20211220BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
   G03B30/00
   H04N5/225 400
   H04N5/225 700
   H04N5/232 290
   H04N5/232 480
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-219847(P2016-219847)
(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-77390(P2018-77390A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−082072(JP,A)
【文献】 特開2013−134385(JP,A)
【文献】 特開2012−242563(JP,A)
【文献】 特開平07−103394(JP,A)
【文献】 特開平05−252430(JP,A)
【文献】 特開2016−138928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G03B 30/00
H04N 5/225
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子と、前記光学素子を保持する鏡筒部と、支持体と、前記鏡筒部に固定され前記鏡筒部を前記支持体に対して前記光学素子の光軸回りに回転可能に支持するローリング用支持機構と、前記鏡筒部を前記光軸回りに回転させるローリング用磁気駆動機構と、を有し、
前記ローリング用磁気駆動機構は磁石およびコイルを備え、前記磁石と前記コイルの一方は前記鏡筒部に固定され、他方は前記支持体に固定され
前記ローリング用支持機構は、前記鏡筒部の被写体側の端部、および、前記鏡筒部の像側の端部の2箇所に設けられた回転軸受部であることを特徴とする光学モジュール。
【請求項2】
前記回転軸受部はボールベアリングであり、
前記ボールベアリングの内輪は前記鏡筒部に固定され、前記ボールベアリングの外輪は前記支持体に固定されることを特徴とする請求項に記載の光学モジュール。
【請求項3】
前記鏡筒部は、前記磁石が固定される磁石保持部を備え、
前記コイルは前記支持体に固定されることを特徴とする請求項1または2の何れか一項に記載の光学モジュール。
【請求項4】
前記磁石の着磁分極線と対向する位置に配置される磁気センサを有し、
前記ローリング用磁気駆動機構は、前記磁気センサの出力に基づいて検出される原点位置に基づいて制御されることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の光学モジュール。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載の光学モジュールと、
前記光学モジュールの前記光軸と交差する軸回りの振れを補正する振れ補正部と、を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項6】
前記振れ補正部は、前記光学モジュールを前記光軸と交差する第1方向回りおよび第2方向回りに揺動させる揺動用磁気駆動機構であり、
前記光学モジュールは、前記第1方向と前記第2方向の間の角度位置に配置される揺動支持部と、前記揺動支持部によって支持される可動枠と、を備えるジンバル機構によって
支持されることを特徴とする請求項に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記振れ補正部は、前記光学モジュールによる撮影画像に対して、前記光学モジュールの前記光軸と交差する軸回りの振れに対応する補正処理を行う電子補正部であることを特徴とする請求項に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を光軸回りに回転させるローリング補正を行う光学ユニット、および、ローリング補正を行う光学ユニットに用いられる光学モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や移動体に搭載される光学ユニットには、携帯端末や移動体の移動時の撮影画像の乱れを抑制するために、光学素子を揺動あるいは回転させて振れを補正する機構を備えるものがある。例えば、特許文献1の光学ユニットは、ピッチング(縦揺れ/チルティング)およびヨーイング(横揺れ/パンニング)の2方向の傾きに対応して、光学素子を備える光学モジュールをピッチング方向およびヨーイング方向に揺動させる揺動機構を備える。また、光学素子の光軸回りの回転に対応して、光学モジュールおよび揺動機構を備えた可動体を光軸回りに回転させるローリング補正機構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−082072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光学ユニットにおいて、光学モジュールを光軸回りに回転可能に支持する支持機構およびローリング補正機構は、光学モジュールおよび揺動機構を備えた可動体の外側に構成されている。このように、光学モジュールの外側にローリング用の支持機構およびローリング補正機構を設ける場合、光学ユニットが大型化するという問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1の光学ユニットは、光学モジュールの光軸方向の一方側(像側)にボールベアリングなどの回転軸受が配置され、ローリング補正機構は回転軸受の像側あるいは回転軸受の外周側に配置される。このような構成では、光学モジュールの像側にローリング補正機構の設置スペースを設ける必要があり、光学ユニットの光軸方向の寸法が大型化する。あるいは、ローリング補正機構は可動体の外周側に設けることもできるが、この場合には光学ユニットを光軸方向から見た場合の外形が大型化する。
【0006】
また、メカ的な補正(すなわち、光学モジュールを揺動機構によって揺動させる補正)を行う代わりに、光学素子による撮影画像に対する電子補正によりローリング補正を行うこともできるが、ローリング補正は補正角度が大きいことが多く、補正角度が大きい場合には電子補正によって有効画像領域が小さくなってしまう。従って、画質の低下が問題となる。また、電子補正を行うことによる消費電流のアップも問題となる。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、光学モジュールを光軸回りに回転させるローリング補正機構を設けたことによる光学ユニットの大型化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、光学素子と、前記光学素子を保持する鏡筒部と、支持体と、前記鏡筒部を前記支持体に対して前記光学素子の光軸回りに回転可能に支持するローリング用支持機構と、前記鏡筒部に固定され前記鏡筒部を前記光軸回りに回転させるローリング用磁気駆動機構と、を有し、前記ローリング用磁気駆動機構は磁石およびコイルを備え、前記磁石と前記コイルの一方は前記鏡筒部に固定され、他方は前記支持体に固定され、前記ローリング用支持機構は、前記鏡筒部の被写体側の端部、および、前記鏡筒部の像側の端部の2箇所に設けられた回転軸受部であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、光学素子を保持する鏡筒部を光軸回りに回転させてローリング補正を行う。従って、光学モジュール全体を回転させる従来の構成と比較して、回転する部分が小型で軽量であるため、小さな力で回転させることができる。よって、ローリング用磁気駆動機構を小型化できる。このため、ローリング補正を行う光学モジュールを小型でき、光学モジュール1の外側にローリング補正機構を設ける必要がない。従って、ローリング補正を行う光学ユニットの大型化を抑制できる。また、回転する部分が小型で軽量であるため、ローリング用磁気駆動機構から加えられる駆動力に対するレスポンスが良い。また、光軸方向に離れた2箇所で鏡筒部を支持できるので、がたつきなく鏡筒部を支持することができ、鏡筒部の傾きを抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記回転軸受部はボールベアリングであり、前記ボールベアリングの内輪は前記鏡筒部に固定され、前記ボールベアリングの外輪は前記支持体に固定される構成を採用できる。ボールベアリングを用いることにより、摩擦等による回転負荷の増大を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記鏡筒部は、前記磁石が固定される磁石保持部を備え、前記コイルは前記支持体に固定されることが望ましい。このようにすると、鏡筒部側にコイルへの給電用の部品を設ける必要がないので、配線を簡略化できる。
【0014】
本発明において、前記磁石の着磁分極線と対向する位置に配置される磁気センサを有し、前記ローリング用磁気駆動機構は、前記磁気センサの出力に基づいて検出される原点位置に基づいて制御されることが望ましい。このようにすると、原点位置に復帰させるためのばねを設ける必要がないので、原点位置に復帰する際の揺れ戻りをなくすことができる。また、ばねを設けるスペースを確保する必要がないので、小型化に有利である。
【0015】
次に、本発明の光学ユニットは、上記の光学モジュールと、前記光学モジュールの前記光軸と交差する軸回りの振れを補正する振れ補正部と、を有する。上記の光学モジュールはローリング用磁気駆動機構を備えているため、光学ユニットに光学モジュールを搭載するだけでローリング補正機能を追加できる。また、上記の光学モジュールは、ローリング用磁気駆動機構を小型化できる。従って、ローリング補正機構を備えた光学ユニットの大型化を抑制できる。
【0016】
本発明において、前記振れ補正部として、前記光学モジュールを前記光軸と交差する第1方向回りおよび第2方向回りに揺動させる揺動用磁気駆動機構を用いる場合は、前記光学モジュールは、前記第1方向と前記第2方向の間の角度位置に配置される揺動支持部と、前記揺動支持部によって支持される可動枠と、を備えるジンバル機構によって支持されることが望ましい。このようにすると、揺動用磁気駆動機構が配置される角度位置(第1方向および第2方向)の間のスペースを利用してジンバル機構の揺動支持部を配置できる。従って、光学ユニットを小型化できる。
【0017】
あるいは、本発明において、前記振れ補正部は、前記光学モジュールによる撮影画像に対して、前記光学モジュールの前記光軸と交差する軸回りの振れに対応する補正処理を行う画像処理部であってもよい。このようにすれば、ピッチング補正およびヨーイング補正を行うための揺動機構を設ける必要がないので、光学ユニットをさらに小型化できる。光軸と直交する軸回りの振れ補正(ピッチング補正およびヨーイング補正)は、一般的にローリング補正よりも補正角度が小さい。従って、電子補正を行ったとしても有効画像領域の減少や消費電流の増大が問題となるおそれは少ない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光学モジュールにローリング用磁気駆動機構(ローリング補正機構)が搭載されるため、光軸回りの回転補正を行う場合に、光学モジュールの外側にローリング補正機構を設ける必要がない。従って、ローリング補正機構を備えた光学ユニットの大
型化を抑制できる。また、本発明では、光学モジュールにローリング用磁気駆動機構を組み込むにあたって、光学素子を保持する鏡筒部を光軸回りに回転させるように構成する。従って、回転する部分が小型で軽量であるため、小さな力で回転させることができる。よって、ローリング用磁気駆動機構を小型化できるので、光学モジュールを小型できる。また、回転する部分が小型で軽量であるため、ローリング用磁気駆動機構から加えられる駆動力に対するレスポンスが良い。また、光軸方向に離れた2箇所で鏡筒部を支持できるので、がたつきなく鏡筒部を支持することができ、鏡筒部の傾きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1参考形態の光学モジュールを被写体側から見た斜視図である。
図2図1の光学モジュールの断面図である。
図3図1の光学モジュールの分解斜視図である。
図4図1の光学モジュールを搭載した光学ユニットの斜視図である。
図5図4の光学ユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、光学モジュールおよび光学モジュールが搭載される光学ユニットの参考形態および本発明を適用した実施の形態を説明する。本明細書において、XYZの3軸は互いに直交する方向であり、X軸方向の一方側を+X、他方側を−Xで示し、Y軸方向の一方側を+Y、他方側を−Yで示し、Z軸方向の一方側を+Z、他方側を−Zで示す。Z軸方向は、光学モジュールの光軸方向Lと一致する。−Z方向は光軸方向Lの像側、+Z方向は光軸方向Lの被写体側である。
【0021】
図1参考形態の光学モジュール1を被写体側から見た斜視図であり、図2図1の光学モジュール1の断面図(図1のA−A断面図)であり、図3図1の光学モジュール1の分解斜視図である。また、図4図1の光学モジュール1を搭載した光学ユニット100を被写体側から見た斜視図である。光学モジュール1は光学素子2を備えており、光学ユニット100に搭載される。光学ユニット100(図4参照)は、例えばカメラ付き携帯電話機、ドライブレコーダー等の光学機器や、ヘルメット、自転車、ラジコンヘリコプター等に搭載されるアクションカメラやウエアラブルカメラ等の光学機器に用いられる。このような光学機器では、撮影時に振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。光学ユニット100は、撮影画像が傾くことを回避するため、光学素子2の傾きを補正する。
【0022】
(光学モジュール)
図1図3に示すように、光学モジュール1は、光学素子2を備えるカメラモジュール10と、カメラモジュール10を収容するケースである支持体20と、カメラモジュール10を支持体20に対して光軸回りに回転可能に支持するローリング用支持機構30と、カメラモジュール10を支持体20に対して光軸回りに回転させるローリング用磁気駆動
機構40を備える。カメラモジュール10は、レンズなどの光学素子2と、光学素子2を保持する鏡筒部50と、イメージセンサや信号処理回路が搭載された基板60を備える。
【0023】
図2図3に示すように、鏡筒部50は、光学素子2を保持する筒状部51と、筒状部51の像側(−Z方向)の端部に設けられたフランジ部52と、を備え、筒状部51の外周側には、フランジ部52の外周縁から被写体側(+Z方向)に立ち上がる壁状の磁石保持部53が配置される。基板60はフランジ部52に固定される。筒状部51の外周面には、光軸方向Lの略中間の位置に段部54が形成されている。筒状部51は、段部54から被写体側(+Z方向)に延びる円筒部55と、段部54から像側(−Z方向)に延びる大径部56を備える。大径部56はフランジ部52と繋がっている。
【0024】
フランジ部52および磁石保持部53は、光軸方向Lから見た場合の外形が略矩形である。磁石保持部53は、筒状部51およびフランジ部52とは別部材であり、フランジ部52に固定されている。なお、磁石保持部53は、筒状部51およびフランジ部52と一体に形成されていてもよい。磁石保持部53は、X軸方向に対向する壁部531、532と、Y軸方向に対向する壁部533、534を備える。壁部531〜534は、全体として角筒状をなすように繋がっている。なお、壁部531〜534は周方向に繋がっていなくてもよい。また、磁石保持部53はフランジ部52から+Z方向に突出する形状でなくてもよく、筒状部51の外周面から径方向に突出する形状であってもよい。
【0025】
支持体20は、前板部21と、前板部21の外周縁から像側(−Z方向)に立ち上がる胴部22を備える。前板部21は光軸方向Lに対して垂直な矩形の板状であり、その中央には円形開口部23が形成されている。図1に示すように、円形開口部23にはローリング用支持機構30およびカメラモジュール10の被写体側(+Z方向)の端部が配置される。カメラモジュール10の鏡筒部50に保持された光学素子2は、前板部21の円形開口部23から被写体側(+Z方向)に露出する。胴部22は全体として角筒状であり、X軸方向に対向する側板221、222と、Y軸方向に対向する側板223、224を備える。側板221は、鏡筒部50に設けられた壁部531とX軸方向に対向する。また、側板222は、鏡筒部50に設けられた壁部532とX軸方向に対向する。
【0026】
ローリング用支持機構30は、支持体20の円形開口部23に取り付けられている。ローリング用支持機構30はボールベアリングであり、円形開口部23の内周縁に固定される外輪31と、鏡筒部50に固定される内輪32と、外輪31と内輪32との間で転動可能に保持される複数の球体33を備える。内輪は、鏡筒部50の被写体側の端部に設けられた円筒部55の外周面に固定される。球体33は、図示しない保持器などによって互いに接触しないように保持されている。また、内輪32と外輪31の間には、球体33が配置される隙間を覆うシール板34が取り付けられている。シール板34は球体33の+Z方向側および−Z方向側に配置される。
【0027】
ローリング用磁気駆動機構40は、磁石41と、磁石の着磁面に対して垂直な軸回りに巻かれたコイル42を備える。磁石41は鏡筒部50に設けられた磁石保持部53に固定され、コイルは支持体20の胴部22の内側面に固定される。より詳しくは、磁石41は鏡筒部50の壁部531、532の外側面に固定される。また、コイル42は胴部22の側板221、222の内側面に固定される。これにより、図2に示すように、磁石41とコイル42がX軸方向に対向するローリング用磁気駆動機構40が鏡筒部50の+X方向側および−X方向側の2箇所に構成される。
【0028】
ローリング用磁気駆動機構40の磁石41は、光軸回りの周方向(すなわち、Y軸方向)に2分割され、コイル42と対向する面の磁極が分割位置(着磁分極線)を境にして異なるように着磁されている。コイル42は空芯コイルであり、周方向と交差する方向に延
在する辺が有効辺として利用される。2組のローリング用磁気駆動機構40は、通電時に光軸回りの同一方向の磁気駆動力が発生するように配線接続されている。
【0029】
磁石41の着磁分極線と対向する位置には磁気センサ43(図2参照)が配置される。磁気センサ43は、コイル42の中央に配置され、支持体20側板221の内側面に固定される。なお、側板222に固定されたコイル42の中央に磁気センサ43を配置することもできる。光学モジュール1において、光学素子2を保持する鏡筒部50は、ローリング用支持機構30によって光軸回りに回転可能に支持される。ローリング用磁気駆動機構40は、磁気センサ43からの信号に基づいて検出されたローリング方向の原点位置に基づいて制御され、光学素子2を保持する鏡筒部50を光軸回りに回転させてローリング補正を行う。つまり、光学モジュール1は、内部に組み込まれたローリング用磁気駆動機構40によって光学モジュール1単体でローリング補正を行うことができる。
【0030】
(光学ユニット)
図5図4の光学ユニットの分解斜視図である。以下、図4図5を参照して、光学モジュール1が搭載される光学ユニット100の構成を説明する。光学ユニット100は、光学モジュール1と、光学モジュール1を保持するホルダ3と、光学モジュール1およびホルダ3を収容するケースである固定体4と、固定体4に対してホルダ3を揺動可能に支持するジンバル機構5と、ホルダ3を固定体4に対して揺動させる揺動用磁気駆動機構6と、ホルダ3と固定体4とを接続するバネ部材7を備える。
【0031】
ホルダ3は、ジンバル機構5により、光軸方向Lと直交する第1軸線R1回りに揺動可能に支持されているとともに、光軸方向Lおよび第1軸線R1と直交する第2軸線R2回りに揺動可能に支持されている。第1軸線R1および第2軸線R2は、固定体4の対角方向であり、X軸方向およびY軸方向に対して45度傾いている。光学モジュール1はホルダ3に固定されている。従って、光学モジュール1はホルダ3と一体になって揺動する。
【0032】
固定体4は、光軸方向L(Z軸方向)から見た場合に略正方形の外形をした第1ケース410と、第1ケース410に対して−Z方向側から組み付けられる第2ケース420を備える。第1ケース410は、溶接等により第2ケース420と固定される。第1ケース410は、ホルダ3の周りを囲む角筒状の胴部411と、胴部411の+Z方向の端部から内側に張り出した矩形枠状の端板部412を備える。端板部412の中央には窓413が形成されている。胴部411は、X軸方向に対向する一対の側板401、402と、Y軸方向に対向する一対の側板403、404を備える。第2ケース420は、矩形枠状の第1部材421と、第1部材421の+Z方向側に取り付けられる矩形枠状の第2部材422の2部材によって構成される。
【0033】
ホルダ3は、光学モジュール1が固定されるホルダ本体部310と、ホルダ本体部310に固定された光学モジュール1のX軸方向の両側においてY軸方向に延在する一対の壁部301、302と、光学モジュール1のY軸方向の両側においてX軸方向に延在する一対の壁部303、304を備える。ホルダ本体部310は、光軸方向から見た場合に略矩形であり、壁部301〜304はホルダ本体部310の外周縁に設けられている。また、ホルダ本体部310の−Z方向の端部には、固定体4の第2ケース420と当接してホルダ3の揺動範囲を規制するストッパー312が設けられている。
【0034】
ジンバル機構5は、ホルダ3と固定体4との間に構成されている。ジンバル機構5は、ホルダ本体部310の第1軸線R1上の対角位置に設けられた第1揺動支持部501と、固定体4の第2軸線R2上の対角位置に設けられた第2揺動支持部502と、第1揺動支持部501および第2揺動支持部502によって支持される可動枠503を備える。第1軸線R1および第2軸線R2は光軸方向Lと直交し、且つ、X軸方向およびY軸方向に対
して45度傾いた方向であり、第1軸線R1と第2軸線R2は互いに直交する。第2揺動支持部502は、固定体4の第2ケース420を構成する第1部材421に形成されている。可動枠503は、光軸回りの4か所に設けられた支点部504と、光軸回りで隣り合う支点部504を繋ぐ連結部505を備える板状ばねである。
【0035】
可動枠503における各支点部504の内側面には溶接等によって金属製の球体(図示省略)が固定されている。この球体は、ホルダ3に設けられた第1揺動支持部501、および、固定体4に設けられた第2揺動支持部502に保持される接点ばね511と点接触する。接点ばね511は板状ばねであり、第1揺動支持部501に保持される接点ばね511は第1軸線R1方向に弾性変形可能であり、第2揺動支持部502に保持される接点ばね511は第2軸線R2方向に弾性変形可能である。従って、可動枠503は、光軸方向Lと直交する2方向(第1軸線R1方向および第2軸線R2方向)の各方向回りに回転可能な状態で支持される。
【0036】
揺動用磁気駆動機構6は、ホルダ3と固定体4の間に設けられた4組の磁気駆動機構601を備える。各磁気駆動機構601は、磁石602とコイル603を備える。コイル603はホルダ3のX軸方向の両側の壁部301、302、ならびにホルダ3のY軸方向の両側の壁部303、304の外側面に保持される。磁石602は、固定体4の第1ケース410に設けられた側板401、402、403、404の内側面に保持される。第1ケース410は磁性材料から構成されており、磁石602に対するヨークとして機能する。
【0037】
ホルダ3と固定体4との間では、+X方向側、−X方向側、+Y方向側、−Y方向側のいずれにおいても、磁石602とコイル603とが対向する磁気駆動機構601が構成される。磁石602は光軸方向L(すなわち、Z軸方向)に2分割され、内面側の磁極が分割位置(着磁分極線)を境にして異なるように着磁されている。コイル603は空芯コイルであり、+Z方向側および−Z方向側の長辺部分が有効辺として利用される。
【0038】
ホルダ3の+Y方向側および−Y方向側に位置する2組の磁気駆動機構601は、コイル603への通電時にX軸回りの同一方向の磁気駆動力が発生するように配線接続されている。従って、これら2組の磁気駆動機構601のコイル603に通電することにより、X軸回りの振れ補正を行うことができる。また、ホルダ3の+X方向側および−X方向側に位置する2組の磁気駆動機構601は、コイル603への通電時にY軸回りの同一方向の磁気駆動力が発生するように配線接続されている。従って、これら2組の磁気駆動機構601のコイル603に通電することにより、Y軸回りの振れ補正を行うことができる。
【0039】
バネ部材7は、ホルダ本体部310の−Z方向の端部に配置され、ホルダ3と固定体4を接続する。揺動用磁気駆動機構6が駆動されていない静止状態にあるときのホルダ3およびホルダ3に固定された光学モジュール1の姿勢は、バネ部材7によって定まる。バネ部材7は、金属板を加工した矩形枠状の板バネである。バネ部材7は、その外周部に設けられた固定体側連結部701が固定体4の第2ケース420の内周側に固定される。また、バネ部材7の内周部に設けられた可動体側連結部702がホルダ本体部310の外周面に設けられた固定用凸部313に固定され、固定体側連結部701と可動体側連結部702はアーム部703によって繋がっている。
【0040】
(光学ユニットの振れ補正)
光学ユニット100は、上記のように、X軸回りの振れ補正、およびY軸回りの振れ補正を行う振れ補正部である揺動用磁気駆動機構6を備える。従って、X軸方向およびY軸方向が光学モジュール1の光軸方向Lと直交する方向となるように光学モジュール1を組み付けることにより、ピッチング(縦揺れ)方向およびヨーイング(横揺れ)方向の振れ補正を行うことができる。また、光学モジュール1の内部にはローリング用磁気駆動機構
40が組み込まれているのでローリング補正を行うことができる。光学ユニット100は、ジャイロスコープなどの振れ検出センサを備えており、振れ検出センサによって直交する3軸回りの振れを検出して、検出した振れを打ち消すように揺動用磁気駆動機構6およびローリング用磁気駆動機構40を駆動する。あるいは、光学ユニット100が搭載される光学機器本体に搭載される振れ検出センサの信号に基づいて、光学機器本体の制御部が揺動用磁気駆動機構6およびローリング用磁気駆動機構40を駆動してもよい。
【0041】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態の光学モジュール1は、光学素子2を鏡筒部50で保持したカメラモジュール10を光軸回りに回転させる。従って、光学モジュール全体を回転させる従来の構成と比較して、回転する部分が小型で軽量であるため、小さな力で回転させることができる。よって、ローリング用磁気駆動機構40を小型化できる。このため、ローリング補正を行う光学モジュール1を小型でき、光学モジュール1の外側にローリング補正機構を設ける必要がない。従って、ローリング補正を行う光学ユニット100の大型化を抑制できる。また、回転する部分が小型で軽量であるため、ローリング用磁気駆動機構40から加えられる駆動力に対するレスポンスが良い。
【0042】
本形態の光学モジュール1は、鏡筒部50の被写体側の端部をローリング用支持機構30によって回転可能に支持する。カメラモジュール10の重心は、重量のある光学素子2が保持されている鏡筒部50の被写体側の端部に近い位置にある。従って、重心に近い位置で鏡筒部50を支持できるので、カメラモジュール10を安定して支持することができる。また、衝撃時の外力によるダメージを抑制できる。なお、カメラモジュール10の重心と、ローリング用支持機構30の光軸上の位置とが一致するように構成すれば、カメラモジュール10をより安定して支持することができる。また、ローリング用支持機構30はボールベアリングであるため、摩擦等による回転負荷の増大を抑制できる。
【0043】
本形態では、ローリング用磁気駆動機構40を構成する磁石41とコイル42のうち、磁石は鏡筒部50に設けられた磁石保持部53に固定され、コイル42は支持体20に固定される。従って、鏡筒部50側にコイル42への給電用の部品を設ける必要がないので、鏡筒部50を備えるカメラモジュール10への配線を簡略化できる。また、磁石41とコイル42は鏡筒部50の外周側に設けられているため、光学モジュール1の光軸方向Lの寸法の増大を抑えることができる。
【0044】
本形態では、磁石41の着磁分極線と対向する位置に磁気センサ43を配置し、磁気センサ43の出力に基づいて原点位置を検出してローリング用磁気駆動機構40を制御する。従って、原点位置に復帰させるためのばねを設ける必要がないので、原点位置に復帰する際の揺れ戻りをなくすことができる。また、ばねを設けるスペースを確保する必要がないので、小型化に有利である。
【0045】
本形態では、光学モジュール1が搭載される光学ユニット100は、光軸方向Lと直交する軸回りの振れを補正する振れ補正部を備える。このように、光学ユニット100が振れ補正部を備えていれば、光学ユニット100に光学モジュール1を搭載するだけでローリング補正機能を追加できる。また、本形態の光学モジュール1は、ローリング用磁気駆動機構40が小型である。従って、ローリング補正機構を備えた光学ユニット100の大型化を抑制できる。
【0046】
本形態の光学ユニット100は、振れ補正部として、光学モジュール1を光軸方向Lと直交する第1方向(X軸方向)回りおよび第2方向(Y軸方向)回りに揺動させる揺動用磁気駆動機構6を用いる。そして、光学モジュール1は、第1方向(X軸方向)と第2方向(Y軸方向)の間の角度位置に配置される揺動支持部501、502と、揺動支持部5
01、502によって支持される可動枠503と、を備えるジンバル機構5によって支持される。従って、揺動用磁気駆動機構6が配置される角度位置(X軸方向およびY軸方向)の間のスペースを利用してジンバル機構5の揺動支持部を配置できる。従って、光学ユニット100を小型化できる。
【0047】
(変形例)
(1)上記形態のローリング用磁気駆動機構40は、鏡筒部50のX軸方向の両側に1組ずつ配置されているが、ローリング用磁気駆動機構40は1組のみであってもよい。また、ローリング用磁気駆動機構40は3組以上であってもよい。例えば、鏡筒部50の+Y方向側と−Y方向側にローリング用磁気駆動機構40を配置することもできる。
【0048】
(2)ローリング用磁気駆動機構40を構成する磁石41とコイル42の配置を逆にしてもよい。
【0049】
(3)上記形態のローリング用支持機構30はボールベアリングであるが、ボールベアリング以外の回転軸受部を用いることもできる。例えば、滑り軸受を用いることができる。滑り軸受は、含有メタル軸受であってもよいし、樹脂製の軸受部材の表面にフッ素コーティングなどを行ったものでもよい。滑り軸受を用いることにより、軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0050】
(4)上記形態のローリング用支持機構30は、鏡筒部50の被写体側(+Z方向)の端部に配置されているが、本発明を適用した光学モジュールの実施の形態では、鏡筒部50の像側(−Z方向)の端部に回転軸受部を追加して2箇所でカメラモジュール10を支持する。このようにすれば、光軸方向Lに離れた2箇所で鏡筒部50を支持できるので、がたつきなくカメラモジュール10を支持することができ、鏡筒部の傾きを抑制することができる。また、この場合には、重心に近い被写体側(+Z方向)の回転軸受部としてボールベアリングを使用し、像側(−Z方向)の回転軸受部として滑り軸受を使用することが望ましい。

【0051】
(5)上記形態では、磁気センサ43によってローリングの原点位置を検出するが、磁気センサ43を用いず、鏡筒部50と支持体20との間に原点位置に復帰させるバネ部材を設けることもできる。
【0052】
(6)光学ユニット100に光学モジュール1を組み込むにあたって、揺動用磁気駆動機構6とローリング用磁気駆動機構40の磁気的な干渉を避けるように構成することが望ましい。例えば、揺動用磁気駆動機構6が設けられた角度位置と異なる位置にローリング用磁気駆動機構40を設けることができる。
【0053】
(他の実施形態)
上記形態の光学ユニット100は、揺動用磁気駆動機構を用いて光学モジュール1を揺動させてピッチング補正およびヨーイング補正を行うが、このようなメカ的な補正を行う代わりに、光学モジュール1による撮影画像に対して補正処理を行う電子補正によって振れ補正を行うこともできる。すなわち、光学モジュール1による撮影画像に対して、光軸と交差する軸回りの振れ(すなわち、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れ)による撮影画像の傾きを打ち消すような画像処理を行う。この処理を行う電子補正部は、光学ユニット100に搭載されていてもよいし、光学ユニット100が搭載される光学機器の制御部が電子補正部を備えていてもよい。
【0054】
このようにすれば、ピッチング補正およびヨーイング補正を行うための揺動機構を設ける必要がないので、光学ユニット100をさらに小型化できる。光軸方向Lと直交する軸回りの振れ補正(ピッチング補正およびヨーイング補正)は、一般的にローリング補正よ
りも補正角度が小さい。従って、電子補正を行ったとしても有効画像領域の減少や消費電流の増大が問題となるおそれは少ない。従って、電子補正の消費電力が比較的小さいピッチング補正およびヨーイング補正は電子補正により行い、電子補正の消費電力が大きいローリング補正をメカ的な補正により行うことで、光学ユニット100の大型化および消費電力の増大を抑制できる。
【符号の説明】
【0055】
1…光学モジュール、2…光学素子、3…ホルダ、4…固定体、5…ジンバル機構、6…揺動用磁気駆動機構、7…バネ部材、10…カメラモジュール、20…支持体、21…前板部、22…胴部、23…円形開口部、30…ローリング用支持機構、31…外輪、32…内輪、33…球体、34…シール板、40…ローリング用磁気駆動機構、41…磁石、42…コイル、43…磁気センサ、50…鏡筒部、51…筒状部、52…フランジ部、53…磁石保持部、54…段部、55…円筒部、56…大径部、60…基板、100…光学ユニット、221、222、223、224…側板、301、302、303、304…壁部、310…ホルダ本体部、312…ストッパー、313…固定用凸部、401、402、403、404…側板、410…第1ケース、411…胴部、412…端板部、413…窓、420…第2ケース、421…第1部材、422…第2部材、501…第1揺動支持部、502…第2揺動支持部、503…可動枠、504…支点部、505…連結部、531、532、533、534…壁部、601…磁気駆動機構、602…磁石、603…コイル、701…固定体側連結部、702…可動体側連結部、703…アーム部、L…光軸方向、R1…第1軸線、R2…第2軸線
図1
図2
図3
図4
図5