特許第6989256号(P6989256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 現代自動車株式会社の特許一覧 ▶ 起亞自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000002
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000003
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000004
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000005
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000006
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000007
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000008
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000009
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000010
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000011
  • 特許6989256-燃料電池用加湿器 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989256
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】燃料電池用加湿器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20211220BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20211220BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20211220BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   F24F6/00 Z
   !H01M8/10
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-240333(P2016-240333)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-37387(P2018-37387A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年9月13日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0112136
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 賢 裕
(72)【発明者】
【氏名】李 昌 夏
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−337539(JP,A)
【文献】 特開2002−184440(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0036073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿膜を内部に収容する膜モジュール部と、
前記膜モジュール部の一側に結合され、前記膜モジュール部に空気を供給する第1キャップ部と、
前記膜モジュール部の他側に結合され、前記膜モジュール部から流入した加湿空気を排出する第2キャップ部と、
前記第2キャップ部の内壁面に一体に備えられ、前記第2キャップ部と前記膜モジュール部をバイパス連結するバイパス管路と、
を含み、
前記バイパス管路は、
前記膜モジュール部に対応する前記第2キャップ部の内壁面に一体射出成形され、
下端に入口を形成し、前記第2キャップ部の内壁面に上下垂直方向に配置され、前記第2キャップ部の内壁面に一体に連結される第1管路と、
前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記第1管路の上端から前記膜モジュール部側に配置される第2管路と、
を含むことを特徴とする燃料電池用加湿器。
【請求項2】
前記バイパス管路は、
前記膜モジュール部から第2キャップ部に流入した水分を前記膜モジュール部と第2キャップ部の圧力差によって前記膜モジュール部にバイパスすることを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項3】
前記バイパス管路は、
前記第1管路から水平方向に分岐され、その分岐方向から上下垂直方向に延長され、下端に他の入口を形成し、前記第2キャップ部の内壁面に一体に連結される少なくとも一つの第3管路を含むことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項4】
前記バイパス管路は、
前記膜モジュール部に対応する前記第2キャップ部の内壁面にインサート射出された金属配管を含むことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項5】
前記金属配管は、
前記第2キャップ部の内壁面に一体に成形された固定部材に固定され、
下端に入口を形成し、前記固定部材に上下垂直方向に固定される第1管路と、
前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記固定部材に前記膜モジュール部側に固定される第2管路と、
を含むことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項6】
前記金属配管は、
前記第1管路から水平方向に分岐され、その分岐方向から上下垂直方向に延長するように前記固定部材に固定され、下端に他の入口を形成する少なくとも一つの第3管路を含むことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項7】
前記バイパス管路は、
前記第1管路の入口の断面積が前記第2管路の出口の断面積より相対的に大きいことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項8】
前記バイパス管路は、
前記第1管路の入口は、前記第1管路の中心線に対して傾斜した断面を有し、傾斜断面は前記膜モジュール部の方向に向いて形成されることを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項9】
前記第2キャップ部は前記膜モジュール部から流入した加湿空気をスタックに排出する空気排出口を形成し、
前記空気排出口は前記第2管路に対向して前記第2キャップ部の上面に形成されることを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項10】
前記第2キャップ部は前記膜モジュール部から流入した加湿空気をスタックに排出する空気排出口を形成し、
前記空気排出口は前記第2管路に対向して前記第2キャップ部の側面に形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項11】
前記バイパス管路は、
前記第2キャップ部の側面側で内壁面に一体に備えられることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項12】
前記第1管路の入口は、
前記第2キャップ部の内部での空気流動方向と異なる方向に配置されることを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項13】
前記バイパス管路は、
前記第2キャップ部の内壁面に上下垂直方向から水平方向に延長するように配置され、前記第2キャップ部の内部での空気流動方向と異なる方向に入口を形成し、前記第2キャップ部の内壁面に一体に連結される第1管路と、
前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記第1管路の上端で前記膜モジュール部側に配置される第2管路と、
を含むことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項14】
前記第2キャップ部は、
前記膜モジュール部に対応する内壁面に一体に形成され、下端側に複数の入口を形成し、上側方向に行くほど幅が徐々に小さくなり、前記バイパス管路と連結されるダクト部を含むことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項15】
前記バイパス管路は、
前記第2キャップ部の内壁面に上下垂直方向に配置され、前記ダクト部の上部と連結され、前記第2キャップ部の内壁面に一体に形成される第1管路と、
前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記第1管路の上端で前記膜モジュール部側に配置される第2管路と、
を含むことを特徴とする請求項14に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項16】
前記膜モジュール部は、前記加湿膜の両端を支持する支持部材を含み、
前記バイパス管路は、前記膜モジュール部に対する前記第2キャップ部の組み立て時、前記支持部材を介して前記第2キャップ部の内部と前記膜モジュール部の内部をバイパス連結することを特徴とする請求項に記載の燃料電池用加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用加湿器に係り、より詳しくは、燃料電池に供給される反応気体を加湿するための燃料電池用加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池システムは燃料電池による水素と酸素(空気中の酸素)の電気化学的な反応により電気エネルギを発生させる一種の発電システムである。例えば、燃料電池システムは燃料電池車両に採用され電気モータを作動させて車両を駆動させる。
燃料電池システムは空気極と燃料極からなる単位燃料電池の電気発生集合体であるスタックと、燃料電池の空気極に空気を供給するための空気供給装置と、燃料電池の燃料極に水素を供給するための水素供給装置を備えている。
一方、高分子燃料電池の場合、膜−電極接合体(MEA)のイオン交換膜が円滑な役割を果たすためには適当な水分が必要であり、燃料電池システムの空気供給装置は燃料電池に供給される空気を加湿するための加湿器を備えている。
加湿器は燃料電池の空気極から排出される高温多湿な空気中の水分を利用して空気供給装置の空気圧縮器を介して供給される乾燥した空気を加湿し、その加湿された空気を燃料電池の空気極に供給する。
【0003】
燃料電池車両の場合はパッケージ面において制限があるため相対的に体積が小さい膜加湿方式が適用されている。このような膜加湿方式の加湿器はパッケージの側面からだけでなく、特別な動力を必要としないという利点を有している。
膜加湿方式の加湿器は燃料電池の空気極から排出される高温多湿な排出ガスと、空気圧縮器を介して供給される乾燥空気のガスツーガス(gas to gas)水分交換方式により膜加湿が成される。
一方、スタックで生成された水はそのスタックでの空気流路(スタックマニホールド、セル入出口、セルの各チャンネルなど)の一部または全体を塞ぎ、反応気体の供給を妨害してスタックの性能を低下させたりスタックの耐久性に問題を起こす。
これに燃料電池システムのレイアウト上の加湿器は通常スタックの下端に位置している。この場合、スタックで凝縮された水の大部分は重力によってそのスタックと隣接している加湿器側に流れる。
【0004】
また、加湿器で加湿された空気がスタックに供給されるとき、外気との温度差によって水蒸気が凝縮され、その凝縮水は空気の流速が低い場合、重力によって加湿器に流入し、シャットダウン後に、水蒸気が凝縮され、その凝縮水はスタックや配管から加湿器に流入する。
しかし、燃料電池車両のアイドル状態で急出力時または高出力時、加湿器からスタックに供給される空気の流速が速くなるため、加湿器に溜まっている凝縮水はスタックに流入し、そのスタック内の流路を塞ぐことによってスタックでのセル抜け現象を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−191866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、簡単な構成で凝縮水の溜まりおよびスタックへの凝縮水の流入を防止できるようにした燃料電池用加湿器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料電池用加湿器は、i)加湿膜を内部に収容する膜モジュール部と、ii)前記膜モジュール部の一側に結合され、前記膜モジュール部に空気を供給する第1キャップ部と、iii)前記膜モジュール部の他側に結合され、前記膜モジュール部から流入した加湿空気を排出する第2キャップ部と、iv)前記第2キャップ部に備えられ、前記第2キャップ部の内部に流入した凝縮水を前記膜モジュール部にバイパスさせるバイパス管路を含むことを特徴とする。
【0008】
前記膜モジュール部は前記加湿膜の両端を支持するポッティング部としての支持部材を含み、前記バイパス管路は前記第2キャップ部の内部に備えられ、前記支持部材を介して前記第2キャップ部の内部と前記膜モジュール部の内部をバイパス連結することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、i)加湿膜を内部に収容する膜モジュール部と、ii)前記膜モジュール部の一側に結合され、前記膜モジュール部に空気を供給する第1キャップ部と、iii)前記膜モジュール部の他側に結合され、前記膜モジュール部から流入した加湿空気を排出する第2キャップ部と、iv)前記第2キャップ部の内壁面に一体に備えられ、前記第2キャップ部と前記膜モジュール部をバイパス連結するバイパス管路を含むことを特徴とする。
【0010】
前記バイパス管路は前記膜モジュール部から第2キャップ部に流入した水分を前記膜モジュール部と第2キャップ部の圧力差によって前記膜モジュール部にバイパスすることを特徴とする。
【0011】
前記バイパス管路は前記膜モジュール部に対応する前記第2キャップ部の内壁面に一体射出成形されることを特徴とする。
【0012】
前記バイパス管路は下端に入口を形成し、前記第2キャップ部の内壁面に上下垂直方向に配置され、前記第2キャップ部の内壁面に一体に連結される第1管路と、前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記第1管路の上端で前記膜モジュール部側に配置される第2管路を含むことを特徴とする。
【0013】
前記バイパス管路は前記第1管路から水平方向に分岐され、その分岐方向から上下垂直方向に延長され、下端に他の入口を形成し、前記第2キャップ部の内壁面に一体に連結される少なくとも一つの第3管路を含むことを特徴とする。
【0014】
前記バイパス管路は前記膜モジュール部に対応する前記第2キャップ部の内壁面にインサート射出された金属配管を含むことを特徴とする。
【0015】
前記金属配管は前記第2キャップ部の内壁面に一体に成形された固定部材に固定され下端に入口を形成し、前記固定部材に上下垂直方向に固定される第1管路と、前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記固定部材に前記膜モジュール部側に固定される第2管路を含むことを特徴とする。
【0016】
前記金属配管は前記第1管路から水平方向に分岐され、その分岐方向で上下垂直方向に延長するように前記固定部材に固定され、下端に他の入口を形成する少なくとも一つの第3管路を含むことを特徴とする。
【0017】
、前記バイパス管路は前記第1管路の入口の断面積が前記第2管路の出口の断面積より相対的に大きいことを特徴とする。
【0018】
、前記バイパス管路の入口は、前記第1管路の中心線に対して傾斜した断面を有し、傾斜断面は前記膜モジュール部の方向に向いて形成されることを特徴とする。
【0019】
、前記第2キャップ部は前記膜モジュール部から流入した加湿空気をスタックに排出する空気排出口を形成し、
、前記空気排出口は前記第2管路に対応して前記第2キャップ部の上面に形成されることを特徴とする。
【0020】
、前記空気排出口は前記第2管路に対応して前記第2キャップ部の側面に形成されることを特徴とする。
【0021】
、前記バイパス管路は前記第2キャップ部の他側面側で内壁面に一体に備えられることを特徴とする。
【0022】
、前記第1管路の入口は前記第2キャップ部の内部での空気流動方向と異なる方向に配置されることを特徴とする。
【0023】
、前記バイパス管路は前記第2キャップ部の内壁面に上下垂直方向から水平方向に延長するように配置され、前記第2キャップ部の内部での空気流動方向と異なる方向に入口を形成し、前記第2キャップ部の内壁面に一体に連結される第1管路と、前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記第1管路の上端で前記膜モジュール部側に配置される第2管路を含むことを特徴とする。
【0024】
、前記第2キャップ部は前記膜モジュール部に対応する内壁面に一体に形成され、下端側に複数の入口を形成し、上側方向に行くほど幅が徐々に小さくなり、前記バイパス管路と連結されるダクト部を含むことを特徴とする。
【0025】
、前記バイパス管路は前記第2キャップ部の内壁面に上下垂直方向に配置され、前記ダクト部の上部と連結され、前記第2キャップ部の内壁面に一体に形成される第1管路と、前記第1管路の上端に一体に連結され、前記膜モジュール部と連結される出口を有し、前記第1管路の上端で前記膜モジュール部側に配置される第2管路を含むことを特徴とする。
【0026】

前記膜モジュール部は、前記加湿膜の両端を支持する支持部材を含み、前記バイパス管路は、前記膜モジュール部に対する前記第2キャップ部の組み立て時、前記支持部材を介して前記第2キャップ部の内部と前記膜モジュール部の内部をバイパス連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第2キャップ部の内壁面にバイパス管路を一体に構成することにより第2キャップ部に流入した凝縮水をバイパス管路を介して膜モジュール部にバイパスさせ、加湿器内凝縮水が溜まるのと燃料電池スタックへの凝縮水の流入を防止することができる。
したがって、燃料電池スタックの凝縮水の流入によるセル抜けを防止することができ、これによって燃料電池システムの運転の安定性を改善することができる。
さらに、バイパス管路を射出整形により第2キャップ部の内壁面に一体に構成することにより、膜モジュール部と第2キャップ部の締結だけでバイパス管路を介して膜モジュール部の第2キャップ部をバイパス連結できるので、加湿器の組み立て時の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器を概略的に示した図である。
図2】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路を示した図である。
図3】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第1変形例を示した図である。
図4】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第2変形例を示した図である。
図5】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第3変形例を示した図である。
図6】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第4変形例を示した図である。
図7】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第4変形例を示した図である。
図8】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第5変形例を示した図である。
図9】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第6変形例を示した図である。
図10】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第6変形例を示した図である。
図11】本発明の実施形態による燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路の第7変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態による燃料電池用加湿器を概略的に示した図である。
図1に示す通り、本発明の実施形態による燃料電池用加湿器100は水素燃料と酸化剤である空気の電気化学的な反応によって電気エネルギを発生させる燃料電池システムに適用される。例えば、前記燃料電池システムは燃料電池車両に採用されて電気モータを作動させて車両を駆動させる。
本発明の実施形態による燃料電池用加湿器100は燃料電池スタックから排出される排出空気と空気圧縮器から供給される空気の膜加湿が行われ、その加湿された空気(以下、便宜上「加湿空気」という)を燃料電池スタックに供給する。このような燃料電池用加湿器100は基本的に、膜モジュール部10、第1キャップ部30および第2キャップ部50を含んでいる。
膜モジュール部10は当業界では「シェル−イン(shell−in)」ともいい、複数の束の中空糸膜である加湿膜11が内部に密集されたものであって、円筒形状のハウジングの内部に加湿膜11が内蔵されている。膜モジュール部10は加湿膜11の両端を支持する支持部材13(当業界では「ポッティング部」ともいう)を含んでいる。例えば支持部材13は高分子素材からなり、ハウジングの両端に固定された状態で加湿膜11の両端部を支持する。
【0030】
ここで、膜モジュール部10には燃料電池スタックから排出される排出空気をハウジングの内部に注入するための排出空気流入部15と、水分が除去された排出空気を排気系統に排出するための排出空気排出部17が形成されている。
第1キャップ部30は当業界で「キャップ−イン(cap−in)」ともいい、空気圧縮器を介して供給される供給空気を膜モジュール部10の内部に注入するためのものである。第1キャップ部30は膜モジュール部10の一側端部に結合される。第1キャップ部30は空気を膜モジュール部10に供給するための供給空気注入口31を形成している。
また、第2キャップ部50は当業界で「キャップ−アウト(cap−out)」ともいい、膜モジュール部10から流入された加湿空気を燃料電池スタックに排出するためのものである。第2キャップ部50は膜モジュール部10の他側端部に結合され、その加湿空気を燃料電池スタックに排出するための空気排出口51を形成している。
一方、前記のように構成される燃料電池用加湿器100は第2キャップ部50の内部に凝縮水が流入するが、その凝縮水は加湿空気と共に燃料電池スタックに流入する。
【0031】
例えば、車両のアイドル状態(低流量時)で急出力時または高出力時、加湿膜11の内部の水分が含まれている加湿空気が第2キャップ部50に多量吐出され、第2キャップ部50の内部で凝縮された凝縮水が空気排出口51を介して燃料電池スタックに供給されることによって、燃料電池スタックでは凝縮水の流入によるセル抜けが発生する。
燃料電池用加湿器100は、膜モジュール部10から第2キャップ部50に流入した水分を含む空気の一部を膜モジュール部10にバイパスさせ、第2キャップ部50に溜まっている凝縮水を膜モジュール部10の排出空気排出部17を介して排出できる構造となっている。
つまり、第2キャップ部50に流入した凝縮水を膜モジュール部10にバイパスさせ、凝縮水の溜まることを防止することができ、燃料電池スタックへの凝縮水の流入を防止できる燃料電池用加湿器100を提供する。
このために燃料電池用加湿器100は第2キャップ部50に流入した凝縮水を膜モジュール部10にバイパスさせるためのバイパス管路60を含んでいる。
【0032】
バイパス管路60は第2キャップ部50の内部と膜モジュール部10の内部をバイパス連結することによって第2キャップ部50に備えられる。さらに、バイパス管路60は第2キャップ部50の内部に備えられ、前述した支持部材13を介して第2キャップ部50の内部と膜モジュール部10の内部をバイパス連結する。
さらに、バイパス管路60は本発明の例示的な実施形態で第2キャップ部50の内壁面に一体に備えられ、膜モジュール部10に対する第2キャップ部50の組み立て時、支持部材13を介して第2キャップ部50の内部と膜モジュール部10の内部をバイパス連結する。
ここで、バイパス管路60は膜モジュール部10から第2キャップ部50に流入した水分を含む空気の一部を膜モジュール部10と第2キャップ部50の圧力差によって膜モジュール部10にバイパスさせ、第2キャップ部50に溜まっている凝縮水を膜モジュール部10の排出空気排出部17を介して排出させる。
【0033】
図2は燃料電池用加湿器に適用されるバイパス管路を示した図である。
図1および図2に示す通り、バイパス管路60は膜モジュール部10に対応する第2キャップ部50の内壁面に一体射出成形されるよう構成される。このようなバイパス管路60は第1管路61と第2管路62を含む。
第1管路61は下端に入口63を形成し、第2キャップ部50の内壁面に上下垂直方向に配置され、第2キャップ部50の内壁面に一体に連結される。第1管路61の入口63は第2キャップ部50の内側で下面と離隔するように配置される。
また、第2管路62は第1管路61の上端に一体に連結され、膜モジュール部10と連結される出口64を有し、第1管路61の上端で膜モジュール部10側に配置される。第2管路62は膜モジュール部10に対する第2キャップ部50の結合時、前述した支持部材13を貫通し、膜モジュール部10の内部と出口64を連結する。
ここで、第2キャップ部50の空気排出口51はバイパス管路60の第2管路62に対応して第2キャップ部50の上面に形成される。
【0034】
したがって、本発明の燃料電池用加湿器100によれば、第2キャップ部50の内壁面にバイパス管路60を一体に構成することによって、膜モジュール部10に対する第2キャップ部50の結合時、バイパス管路60の第2管路62を支持部材13を介して膜モジュール部10の内部と連結できる。
これによって、バイパス管路60を介して第2キャップ部50の内部と膜モジュール部10の内部をバイパス連結することによって、膜モジュール部10から第2キャップ部50に流入した水分を含む空気の一部を膜モジュール部10と第2キャップ部50の圧力差によって膜モジュール部10にバイパスできる。
ここで、第2キャップ部50の内部に溜まっている凝縮水を膜モジュール部10と第2キャップ部50内の圧力差によってバイパス管路60を介して膜モジュール部10にバイパス排出する。
つまり、第2キャップ部50での圧力が通常膜モジュール部10での圧力より大きいため、第2キャップ部50に捕集された凝縮水はその膜モジュール部10と第2キャップ部50の圧力差によってバイパス管路60を介して膜モジュール部10にバイパス排出される。
【0035】
具体的には、第2キャップ部50内に溜まっている凝縮水は第1管路61の入口63を介して流入し、第2管路62の出口64を介して膜モジュール部10内にバイパス排出され、膜モジュール部10の排出空気排出部17を介して排出される。
上述したように第2キャップ部50に流入した凝縮水をバイパス管路60を介して膜モジュール部10にバイパスさせ、加湿器内に凝縮水の溜まることと、燃料電池スタックへの凝縮水の流入を防止することができる。
したがって、本発明では燃料電池スタックの凝縮水流入によるセル抜けを防止することができ、これによって燃料電池システムの運転の安定性を向上させることができる。
さらに、バイパス管路60を射出整形により第2キャップ部50の内壁面に一体に構成することにより、膜モジュール部10に対する第2キャップ部50の組み立て時、これら膜モジュール部10と第2キャップ部50の締結だけでバイパス管路60を介して膜モジュール部10の第2キャップ部50をバイパス連結できるので、加湿器の組み立て時、利便性の向上を計ることができる。
一方、バイパス管路60は第1変形例として図3のように、第1管路61の入口63の断面積が第2管路62の出口64の断面積より相対的に大きいものが備えられる。これは冬季に凝縮水が凍って第1管路61の入口63が詰まることを防止するためである。
【0036】
また、バイパス管路60は第2変形例として図4のように、
第1管路の入口が、第1管路の中心線に対して傾斜した断面を有し、傾斜断面は膜モジュール部の方向に向いて形成されている。これは第1管路61の入口63を介した凝縮水の流入量を増大させるためである。
また、バイパス管路60は第3変形例として図5のように、第1管路61の入口63が第2キャップ部50の内部での空気流動方向と異なる方向に配置された構造からなる。
ここで、第2キャップ部50の内部での空気流動方向は膜モジュール部10(図1参照)から第2キャップ部50の内壁面へ向かう方向と定義できる。また、空気流動方向と異なる方向は第2キャップ部50の内壁面から一側面へ向かう方向と定義できる。
このために第3変形例によるバイパス管路60の第1管路61は第2キャップ部50の内壁面に上下垂直方向から水平方向に延長するように配置され、第2キャップ部50の内壁面に一体に連結される。
ここで、第1管路61の入口63は第2キャップ部50内の下側で空気流動方向と異なる方向に配置されるため、第2キャップ部50の内壁面で一側面に向かって配置される。
【0037】
また、バイパス管路60の第2管路62は第1管路61の上端に一体に連結され、膜モジュール部10(図1参照)と連結される出口64を有し、第1管路61の上端で膜モジュール部10(図1参照)側に配置される。
前記のように第1管路61の入口63の方向を空気流動方向と異なる方向に設定した理由は、バイパス管路60を介して空気のバイパス量を最少化しかつ凝縮水を第2キャップ部50から膜モジュール部10(図1参照)にバイパス排出するためである。
また、バイパス管路60は第4変形例として図6および図7のように、第2キャップ部50の空気排出口51から遠い位置の内壁面に一体に構成される。
第2キャップ部50の空気排出口51はバイパス管路60の第2管路62に対応して第2キャップ部50の一側面に形成される。例えば、バイパス管路60は第2キャップ部50の他側面側で内壁面に一体に備えられる(図7参照)。
このようにバイパス管路60の位置を第2キャップ部50の空気排出口51から遠い位置に設定した理由は、バイパス管路60を介した空気のバイパス量を最少化しかつ凝縮水を第2キャップ部50から膜モジュール部10(図1参照)にバイパス排出するためである。
【0038】
また、本発明のバイパス管路60は第5変形例として図8のように、図1および図2と同様の第1および第2管路61、62を基本的に備え、少なくとも一つの第3管路71をさらに含んでいる。
第3管路71は第1管路61から水平方向に分岐され、その分岐方向から上下垂直方向に延長され、下端に他の入口73を形成し、第2キャップ部50の内壁面に一体に連結される。
この場合、第3管路71は第1管路61から水平方向に沿って両側に分岐され、その分岐方向から上下垂直方向に延長するように配置される。これに本変形例では第1管路61の入口63および第3管路71の入口73を介して第2キャップ部50内の凝縮水を流入させることができるため、これら入口(63、73)を介した凝縮水の流入量を増大させることができる。
また、本発明のバイパス管路160は第6変形例として図9および図10のように、膜モジュール部10(図1参照)に対応する第2キャップ部50の内壁面にインサート射出された金属配管180を含む。
このように第2キャップ部50の内壁面に金属配管180をインサート射出した理由は、第2キャップ部50に対するバイパス管路160の耐久性を増大させるためである。ここで、金属配管180は第2キャップ部50の内壁面に一体成形された固定部材55に固定される。
【0039】
具体的には、金属配管180は図9のように、第1管路181と第2管路182を含む。第1管路181は下端に入口183を形成し、固定部材55に上下垂直方向に固定される。また第2管路182は第1管路181の上端に一体に連結され、膜モジュール部10(図1参照)と連結される出口184を有し、固定部材55に膜モジュール部10(図1参照)側で固定される。
さらに、金属配管180は図10のように、図9のような第1および第2管路181、182を基本的に備え、少なくとも一つの第3管路191をさらに含んでいる。
第3管路191は第1管路181から水平方向に分岐され、その分岐方向から上下垂直方向に延長され、固定部材55に固定され、下端には他の入口193が形成されている。この場合、第3管路191は第1管路181から水平方向に沿って両側に分岐され、その分岐方向から上下垂直方向に延長するように配置される。
また、本発明のるバイパス管路260は第7変形例として図11のように、膜モジュール部10(図1参照)に対応する第2キャップ部50の内壁面に一体に形成されたダクト部91に連結されるように構成されている。
【0040】
ここで、ダクト部91は下端側に複数個の入口93を形成し、上側方向に行くほど幅が徐々に小さくなる形状のダクト流路として備えられる。
本変形例において、バイパス管路260はダクト部91と連結される第1管路261と、第1管路261と連結される第2管路262を含んでいる。第1管路261は第2キャップ部50の内壁面に上下垂直方向に配置され、ダクト部91の上部と連結され、第2キャップ部50の内壁面に一体に形成される。また、第2管路262は第1管路261の上端に一体に連結され、膜モジュール部10(図1参照)と連結される出口264を有し、第1管路261の上端で膜モジュール部10(図1参照)側に配置される。
したがって、本変形例では第2キャップ部50内に溜まっている凝縮水をダクト部91を介して流入させ、バイパス管路260を介して膜モジュール部10(図1参照)にバイパスさせ得る。
このように本変形例では第2キャップ部50のダクト部91にバイパス管路260を連結することによって、そのダクト部91の入口93を介した凝縮水の流入量をもっと増大させることができる。
【0041】
以上、本発明に係る好ましい実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10 膜モジュール部
11 加湿膜
13 支持部材
15 排出空気流入部
17 排出空気排出部
30 第1キャップ部
31 供給空気注入口
50 第2キャップ部
51 空気排出口
55 固定部材
60、160、260 バイパス管路
61、181、261 第1管路
62、182、262 第2管路
63、73、93、183、193 入口
64、184、264 出口
71、191 第3管路
91 ダクト部
180 金属配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11