(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
いくつかの実施形態において、コンポジット製品であって、押出成型可能な熱可塑性マトリックスと、フォトクロミック着色剤とを含み、前記フォトクロミック着色剤は、コンポジットに対し、可逆性の歪みによって誘発される色変化特性を与える、コンポジット製品が提供される。
【0007】
本明細書で使用される場合、「押出成型可能な」は、例えば、メルトフローインデックス(MFI)押出成型機、またはオリフィスに向かって熱可塑性ポリマー溶融物を通過させる同様の装置によって溶融押出成型が可能な熱可塑性マトリックス材料を指す。オリフィスは円形の形状である必要はなく、四角形、長方形、三角形などの任意の幾何形状を含んでいてもよい。これらの任意の幾何形状は、中空シリンダのような中空形態で得られてもよい。押出成型可能な熱可塑性マトリックス材料は、ポリマー溶融温度が約50℃〜約400℃、または約750℃〜約340℃の範囲であってもよい。
【0008】
本明細書で使用される場合、「熱可塑性マトリックス」は、コンポジット材料のポリマーマトリックス成分を指す。熱可塑性マトリックスは、本明細書に開示されるコンポジットの塊状材料であってもよい。いくつかの実施形態において、コンポジット材料は、1種類より多い熱可塑性マトリックスを合わせてもよい。熱可塑性マトリックスは、特定の曲げ特性を有するように選択されてもよく、例えば、この材料は、曲げ弾性率が2GPa未満、例えば、1GPa未満、または0.5GPa未満であってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、押出成型可能な熱可塑性マトリックスは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンであってもよい。いくつかの実施形態において、成分であるアクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの比率は、それぞれ、約15〜約35%:約5〜約30%:約40〜約60%であってもよい。他の実施形態において、押出成型可能な熱可塑性マトリックスは、アクリルポリマー、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ナイロン、ポリ乳酸(PLA)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI、例えば、Ultem 9085、Sabic製)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニルスルホン(PPSF、aka Radel R、Solvay製)、ポリカプロラクトンに由来するものであってもよい。上述の任意の押出成型可能な熱可塑性マトリックス材料を組み合わせて使用してもよく、上のもののコポリマーとして使用してもよい。
【0010】
本明細書で使用される場合、「フォトクロミック着色剤」は、一般的に、光を照射すると色が変化し得る顔料および染料を指す。本明細書の実施形態によれば、特定のフォトクロミック着色剤が、光を照射したときだけではなく、物理的な応力を受けたときにも色変化に応答することを発見した。いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、色変化が、光によって誘発される色変化に関して可逆性でもある第1の種類として選択される。フォトクロミック着色剤の例としては、限定されないが、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、フルギド、スピロピラン、ナフトピラン、スピロオキサジン、キノン、ジアリールエテンが挙げられる。いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤の任意の組み合わせを本明細書のコンポジット構造に使用してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤(または染料および他の化合物種)を、限定されないが、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、フルギド、スピロピラン、ナフトピラン、スピロオキサジン、キノン、ジアリールエテンを含む種々の群から選択してもよい。いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、Duerr et al.、「Photochromism、Molecules & Systems」、Elsevier Publishing 2003に開示されるものを含んでいてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、スピロピランまたはスピロオキサジンであってもよい。いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、式Aの構造を有していてもよく、
【0014】
式中、Xは、CHまたはNであり;R
1は、ハロゲンまたはC
1−C
4アルコキシであってもよく;R
2、R
3、R
4およびR
5は、独立して、ニトロ、ハロゲンおよびC
1−C
4アルコキシからなる群から選択されるか;または、R
2、R
3、R
4およびR
5の任意の隣接する対(すなわち、オルトに位置するもの)が合わさり、さらに縮合したフェニル環を形成してもよい。ハロゲンは、例えば、Cl、Br、IおよびFを含んでいてもよい。C
1−C
4アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、iso−ブトキシおよびtert−ブトキシを含んでいてもよい。
【0015】
例えば、フォトクロミック着色剤は、式1の構造であってもよい。
【0017】
式Aの他の化合物は、実施例において、以下に示される。
【0018】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、トリアリールメタン、例えば、置換ロイコシアニドのファミリーであってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、スチルベン、例えば、置換DHP(4a,4b−ジヒドロフェナントレン)であってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、アザスチルベンであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、ニトロン、例えば、ジアリールニトロンであってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、フルギド、例えば、ジフェニルフルギドであってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、スピロピラン、例えば、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン(1)であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、ナフトピラン、例えば、米国特許第5,411,679に開示される3−(2,4−ジメトキシフェニル),3−(4−メトキシフェニル)−(3H)−ベンゾ(b)フロ[2,3−f]−1−ベンゾピランであってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、スピロオキサジン、例えば、1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフタ[2,1−b][1,4]オキサジン]であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、ジアリールエテン、例えば、米国特許第2010/0215599に開示される1,2−ビス(2−メチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(商標名DAE−MP(山田化学工業))であってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、アゾベンゼンであってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、キノン、例えば、1−フェノキシアントラキノンであってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、ハロゲン塩を含め、無機の銀塩または亜鉛塩に由来する。例としては、限定されないが、塩化銀、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化亜鉛(II)、塩化コバルト(II)、硝酸銅(II)、塩化水銀(II)、塩化スズ(II)が挙げられる。有機金属塩、例えば、ナフテン酸バリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛およびナフテン酸アンチモン(III)も使用してもよい。その他としては、米国特許第2004/0259975に開示されるものが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック着色剤は、コンポジットの約0.1重量%〜コンポジットの約5.0重量%、またはコンポジットの約0.2重量%〜約3.0重量%、コンポジットのまたは約0.3〜約1.0重量%の範囲の量で存在していてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、可逆性の歪みによって誘発される色変化特性は、コンポジットに熱を加えることによって可逆性である。本明細書で使用される場合、「歪みによって誘発される色変化」は、コンポジットに、限定されないが、屈曲、折り曲げ、衝突、剪断応力およびこれらの組み合わせを含む物理的な応力が加わった領域で、コンポジット構造の色が変化することを意味する。
【0032】
いくつかの実施形態において、コンポジット製品は、フィラメント、コーティングまたは膜の形態をしていてもよい。いくつかの実施形態において、コンポジット製品は、フィラメントである。いくつかの実施形態において、コンポジット製品は、コーティングである。いくつかの実施形態において、コンポジット製品は、ケーブルとしてのワイヤまたはワイヤの束をコーティングするように設計された中空の管である。このようないくつかの実施形態において、観察者の目に見える色変化は、ケーブル上の物理的な応力の位置を示していてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明のコンポジット製品は、弾性係数が約0.01ギガパスカル〜約4.0ギガパスカルの範囲であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、押出成型可能な熱可塑性ポリマーマトリックスにフォトクロミック着色剤を添加して混合物を作成することと、前記混合物を加熱してコンポジットを作成することとを含み、前記フォトクロミック着色剤は、コンポジットに対し、可逆性の歪みによって誘発される色変化特性を与えるように選択される、方法が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態において、この方法は、前記コンポジットを粉砕してペレットにすることをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、ペレットを溶融押出成型機で押出成型し、コンポジットのフィラメントを与えることをさらに含む。いくつかの実施形態において、フィラメントは、包装のためのスプールに巻き取られ、下流での使用のために運搬されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、フィラメントは、さらなる製造(すなわち、3Dプリンタ)装置で使用するのに適した直径を有するように選択されてもよい。このような実施形態において、方法は、さらに、フィラメントを用い、三次元物体を3D印刷することを含んでいてもよい。得られた三次元物体は、使用するときに応力評価が望ましい部位を含んでいてもよい。例えば、レンチで締めたときに、ナット/ボルトの歪みを色変化によって視覚的に示すことができる印刷されたナット/ボルトアセンブリ。
【0037】
いくつかの実施形態において、上述の方法は、さらに、本明細書に開示されるコンポジットから、ケーブルおよび/またはワイヤの上にコーティングを作成することを含む。コーティングプロセスは、ペレットまたはフィラメントから開始してもよく、またはペーストから開始してもよい。このようなペーストは、例えば、ケーブルの周囲の型によって、または浸漬コーティングによってケーブルに塗布されてもよい。いくつかの実施形態において、ペレットまたは他の形態のコンポジット製品に、さらに、押出成型の代わりとして成型技術を行ってもよい。コンポジット製品の当業者は、他の技術を使用し、本明細書に開示されるコンポジット製品を細工してもよいことを理解するだろう。
【0038】
いくつかの実施形態において、式1の構造を有するフォトクロミック着色剤を含め、上述の任意のフォトクロミック着色剤を本明細書の方法で使用してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、フォトクロミック着色剤をコンポジットの約0.1重量%〜コンポジットの約5.0重量%の範囲の量で使用してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、コンポジット製品を作成する本明細書の方法は、当該技術分野で使用される任意のさらなるコンポジット製造技術を含んでいてもよい。コンポジット材料のさらなる細工の非限定的な例としては、射出成型、吹き込み成型、圧縮成型、気体注入成型、熱成型および押出成型が挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、ワイヤ中の機械応力の視覚による検出を可能にするケーブルコーティングであって、このケーブルコーティングは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンマトリックスと、フォトクロミック着色剤とを含むコンポジットを含み、前記フォトクロミック着色剤は、コンポジットに対し、可逆性の歪みによって誘発される色変化特性を与える、ケーブルコーティングが提供される。いくつかの実施形態において、ケーブルコーティングで使用されるコンポジットは、光によって誘発される色変化に関して可逆性であるフォトクロミック着色剤を含んでいてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、ケーブルコーティングコンポジットで使用されるフォトクロミック着色剤は、式1の構造を有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、ケーブルコーティングのコンポジットは、コンポジットの約0.1重量%〜コンポジットの約5.0重量%の範囲の量で存在するフォトクロミック着色剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ケーブルコーティングは、ケーブルコーティングに熱を加えることによって、可逆性の歪みによって誘発される色変化を与えてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、ワイヤのためのケーブルコーティングを含め、本明細書に開示されるコンポジット製品から作られる任意の物体は、最終的な形態でさらに1回コーティングされてもよい。このようなさらなるコーティングは、環境に露出したときに光酸化および他の腐敗を減らすように設計されていてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、ケーブルコーティングのコンポジットは、厚みが約0.1mm〜約5mmの範囲になるように設計される。一例として、直径が約1.74mmのフィラメントのコーティングを目標とするには、約2mmのオリフィスが適している。
【0048】
例示的な実施形態において、フォトクロミック分子とブレンドしたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)を含むコンポジット材料が提供される。コンポジットは、溶融混合の後、メルトフローインデックス機による押出成型によって調製され、フィラメントに仕上げられてもよい。フィラメントは、曲げられ、歪みの領域で変色する能力を有する。この変色は、膜の中で持続してもよく、コンポジットを軟化温度より高い温度まで加熱したときに再び色が戻ってもよい。この種のコンポジットは、例えば、電線のためのケーブルコーティングに有用であろう。
【0049】
特定の実施形態において、着色剤/ポリマーコンポジットは、約0.5wt%のスピロピラン1(1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン)をアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)に加えることによって調製されてもよい。
【0051】
混合した後、コンポジットを粉砕し、MFI(メルトフローインデックス)押出成形機を介して供給し、約2〜3フィートのフィラメントに仕上げてもよいが、長さはこの長さに限定されない。
【0052】
以下の実施例は、本開示の実施形態を示すために提出される。これらの例は、単なる説明であることを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。また、部および百分率は、特に指示のない限り、重量基準である。本明細書で使用する場合、「室温」は、約20℃〜約25℃の温度を指す。
【実施例】
【0053】
実施例1
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物1を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0054】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給した。0.25gのフォトクロミック化合物1(1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリル、TCI Chemical、製品番号T0423)をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合した。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出した(43.91gを回収した)。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にした。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型した。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げた。鮮やかなマゼンタ色の4.48g分のフィラメントを作成した。このフィラメントは、長さが1.07mであり、直径は2.12〜2.25mmの範囲であった。
【0055】
実施例2
この実施例は、PCL(ポリカプロラクトン)中に約0.5%のフォトクロミック化合物1を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0056】
49.75gのPCLポリマー(InstaMorph、Happy Wire Dog,LLC、スコッツデール、AZ)を、62℃に加熱したHaakeミキサーに供給した。0.25gのフォトクロミック化合物1(1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリル(T0423)TCI Chemical、ポートランド、OR)をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合した。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出した(43.87gを回収した)。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、90℃で6分間かけて平衡状態にした。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型した。9.18分間押出成型した後、半透明のマゼンタ色をした5.55g分のフィラメントを作成した。このフィラメントは、長さが1.48mであり、直径は1.67〜2.02mmの範囲であった。
【0057】
実施例3
この実施例は、PLA(ポリ乳酸)中に約0.5%のフォトクロミック化合物1を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0058】
49.75gのPLAポリマー(Ingeo Biopolymer 4043D、NatureWorks LLC、ミネトンカ、ミネソタ)を、170℃に加熱したHaakeミキサーに供給した。0.25gのフォトクロミック化合物1(1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリル(T0423)TCI Chemical、ポートランド、OR)をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合した。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出した(44.69を回収した)。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、170℃で6分間かけて平衡状態にした。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型した。4.83分間押出成型した後、不透明のマゼンタ色の7.24g分のフィラメントを作成した。このフィラメントは、長さが1.91mであり、直径は1.36〜2.04mmの範囲であった。
【0059】
以下の実施例4〜13は、実施例1と同様にABSポリマーマトリックスを用いた予想例であり、Sigma Aldrichから入手可能な種々のフォトクロミック染料(スピロピランおよびスピロオキサジン)は、実質的に同じ様式で機能を発揮すると予想される。
【0060】
実施例4
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物2(1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0061】
【化6】
【0062】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物2をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0063】
実施例5
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物3(1’,3’−ジヒドロ−8−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0064】
【化7】
【0065】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物3をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0066】
実施例6
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物4(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b][1,4]オキサジンを含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0067】
【化8】
【0068】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物4をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0069】
実施例7
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物5(6,8−ジブロモ−1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0070】
【化9】
【0071】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物5をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0072】
実施例8
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物6(5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’[3H]フェナントロ[9.10−b][1,4]オキサジンを含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0073】
【化10】
【0074】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物6をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0075】
実施例9
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物7(6−ブロモ−1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−8−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0076】
【化11】
【0077】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物7をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0078】
実施例10
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物8(5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’[3H]ナフト[2,1−b][1,4]オキサジンを含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0079】
【化12】
【0080】
49.75gのABS ポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物8をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0081】
実施例11
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物9(1’,3’−ジヒドロ−5’−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0082】
【化13】
【0083】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物9をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0084】
実施例12
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物10(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]フェナントロ[9,10−b][1,3]オキサジンを含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0085】
【化14】
【0086】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物10をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0087】
実施例13
この実施例は、ABS中に約0.5%のフォトクロミック化合物11(5−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]ピラン]を含む、本明細書の実施形態の例示的なコンポジットを製造するためのプロセスを記載する。
【0088】
【化15】
【0089】
49.75gのABSポリマー(ABS MG94、Open Source 3D Printing LLC、プレザントグローブ、UT)を、190℃に加熱したHaakeミキサーに供給する。次いで、0.25gのフォトクロミック化合物11をホッパに徐々に供給し、混合物を30RPMで30分間混合する。30分後、Haakeミキサーの電源を切り、混合物をミキサーから取り出す。冷却した後、この材料を粉砕して微細なペレットにし、メルトフローインデックス(MFI)装置に供給し、190℃で6分間かけて平衡状態にする。次いで、直径2mmのダイを介し、16.96kgのおもりを用い、ペレットを押出成型する。流動性を上げるため、温度を200℃まで上げる。鮮やかな色のフィラメント片を作成する。
【0090】
実施例14
歪みゲージ特性の実証
実施例1からのフィラメント片を手で手動によって約60度折り曲げた。折り曲げた試験片は、折れ曲がり領域ですぐに変色した。この材料をまっすぐにした後も、変色は残った。折れ曲がったフィラメントをヒートガンで約140℃まで加熱した後、折れ曲がったフィラメントは、元のマゼンタ色に戻った。
【0091】
本明細書の実施形態は、歪みを目で視覚化することができるコンポジットを与えるが、この歪みを、曲げていない領域と曲げた領域の光学密度差に基づいて測定することもできる。
【0092】
曲げ荷重を用いた状態でのフォトクロミックフィラメントの光学密度の測定
フィラメントの高解像度画像を、Keyenceデジタルマイクロスコープを用いて撮影し、印刷した。それぞれの画像の斜線で示す領域において、GretagMacBeth分光濃度計を用い、印刷した画像についてL*光学密度を測定した。フィラメントの湾曲および小さな断面積に起因して、その部分の密度を直接測定することはできなかった。L*a*b*値、密度の概要を以下の表1に示す。
【0093】
【表1】