【実施例1】
【0013】
図1(a)は、実施例1に係る波長選択素子10の上面を模式的に示す図である。
図1(b)は、波長選択素子10の断面図である。
図1(b)は、
図1(a)におけるV−V線に沿った断面図である。また、
図1(c)は、
図1(b)の破線で囲まれた部分を拡大して示す部分拡大断面図である。
図1(a)〜(c)を用いて波長選択素子10の構成について説明する。なお、波長選択素子10は、例えば、光学フィルタである。
【0014】
波長選択素子10は、互いに対向する透光性の一対の基板(以下、基板対と称する場合がある)11を有する。基板対11は、例えば、石英、ホウケイ酸ガラス、シリコンなどからなる。また、
図1(b)に示すように、基板対11は、平板形状の第1の基板11A及び第2の基板11Bが互いに対向して配置された構造を有する。なお、本明細書において、透光性とは、光(可視光)を含む電磁波のうち、少なくとも一部の電磁波を透過する特性をいう。
【0015】
また、
図1(b)に示すように、基板対11は、各々が間隙GPをおいて互いに対向する一対の主表面(以下、主表面対と称する場合がある)PPを有する。主表面対PPは、第1の基板11Aに設けられた第1の主表面PL1と、第2の基板11Bに設けられた第2の主表面PL2とからなる。換言すれば、波長選択素子10は、間隙GPをおいて対向する第1及び第2の主表面PL1及びPL2をそれぞれ有する第1及び第2の基板11A及び11Bを有する。
【0016】
本実施例においては、第1の主表面PL1は、第1の基板11Aの一方の主面(第1の主面)MS1の中央部分からなる。また、本実施例においては、
図1(b)及び(c)に示すように、第2の基板11Bにおける主表面PL1(主面MS1)に対向する主面(第2の主面)MS2には凹部が設けられており、当該凹部の底面が第2の主表面PL2である。
【0017】
本実施例においては、
図1(a)に示すように、第1及び第2の基板11A及び11Bは矩形の外形を有する。また、
図1(b)に示すように、本実施例においては、第1及び第2の主表面PL1及びPL2は、互いに平行に配置されている。また、第2の主表面PL2は、円形状を有する。
【0018】
波長選択素子10は、電磁波を選択的に透過する特性を有する一対の反射膜(以下、反射膜対と称する場合がある)12を有する。反射膜対12は、例えば、ファブリペローエタロンを構成する。反射膜対12の各々は、例えばAg及びAgを含む合金からなる薄膜であり、透過性を有する反射膜(反射性の膜)である。本実施例においては、反射膜対12は、反射膜対12に垂直な方向から見たとき、円形の形状を有する。
【0019】
図1(b)に示すように、反射膜対12は、基板対11の主表面PL1及びPL2上に形成され、光学距離DTをおいて互いに対向して配置されている。より具体的には、反射膜対12は、第1の基板11Aの第1の主表面PL1上に設けられた第1の反射膜12Aと、第2の基板11Bの第2の主表面PL2上に設けられた第2の反射膜12Bとからなる。本実施例においては、第1及び第2の反射膜12A及び12Bは、その互いに対向する表面が互いに平行に配置されている。
【0020】
また、波長選択素子10は、第1及び第2の基板11A及び11Bを互いに接合する接合部13を有する。
図1(a)に示すように、本実施例においては、接合部13は、基板対11に平行な方向に点在する複数の接合片13Aからなる。以下においては、接合部13と称した場合、接合部13及び接合片13Aの両方を意味するものとする。
【0021】
なお、反射膜対12は基板対11の中央部に設けられ、接合部13は基板対11の周辺領域に形成されている。また、
図1(b)に示すように、本実施例においては、接合部13は、本実施例においては、第1及び第2の基板11A及び11Bに挟まれている。すなわち、基板対11は、第1及び第2の基板11A及び11B間において互いに接合されている。
【0022】
また、
図1(b)に示すように、第1及び第2の基板11A及び11Bは、互いに直接に突き当たって間隙GPを画定(定義)する突当り部14を有する。第1及び第2の基板11A及び11Bは、突当り部14によって、直接に突き当てられている(接触している)。間隙GPの高さ、すなわち第1及び第2の主表面PL1及びPL2間の対向距離は、突当り部14によって確定される。従って、反射膜12A及び12B間の光学距離DT、すなわち共振器間隔は、突当り部14によって確定される。
【0023】
本実施例においては、突当り部14は、反射膜対12の外周を取り囲むように設けられている。具体的には、例えば、突当り部14は、第1の主表面PL1に平行な面内において第1の反射膜12Aの外周を取り囲むように環状に形成されている。また、接合部13は、突当り部14の外側に形成されている。すなわち、本実施例においては、突当り部14は、反射膜対12に垂直な方向から見たとき、接合部13と反射膜対12との間に設けられている。
【0024】
また、本実施例においては、
図1(b)に示すように、突当り部14は、基板対11の一方の基板(本実施例においては第2の基板11B)の主表面(第2の主表面PL2)から突出する平坦な頂面の突起PJと、基板対11の他方の基板(本実施例においては第1の基板11A)の主面MS1(第1の主表面PL1)とが互いに突き当たる部分である。突起PJは、その頂面において第1の基板11Aに突き当り、間隙GPを画定(形成)する。
【0025】
ここで、
図1(c)を用いて、突起PJ及び突当り部14について説明する。なお、
図1(c)においては、第1の基板11Aの図示を省略している。本実施例においては、突起PJは、第2の基板11Bにおける接合部13の配置面(接合用表面)及び第2の主表面PL2とから突出した部分である。具体的には、本実施例においては、突起PJは、第2の基板11Bの主面MS2に凹部を形成することによって残存した主面MS2の部分である。
【0026】
突当り部14は、第1及び第2の基板11A及び11Bの対向方向(第1及び第2の基板11A及び11Bに垂直な方向)における反射膜対12の位置決め部として機能する。一方、接合部13は、基板対11に平行な方向における反射膜対12の位置決め部として機能する。すなわち、基板対11に垂直な方向の反射膜対12の位置は突当り部14によって確定され、基板対11に平行な方向の反射膜対12の位置は接合部13によって確定される。
【0027】
次に、
図2を用いて波長選択素子10の動作について説明する。
図2は、
図1(b)と同様の断面図であるが、ハッチングを省略している。
図2は、入力光ILが波長選択素子10に入射してから選択光SLとして外部に取出されるまでを模式的に示す図である。まず、入力光ILは、第1の基板11Aを介して波長選択素子10に入射する。入力光ILは、第1の基板11Aを透過した後、反射膜対12の第1の反射膜12Aを透過する。
【0028】
入力光ILは、第1及び第2の反射膜12A及び12B間において多重反射を繰り返す。この際、入力光ILのうち、反射膜対12の光学距離DT(光学ギャップ)に対応する波長の光は残存し、他の波長の光は減衰する。この残存した波長の光は、選択光SLとして第2の反射膜12Bを透過する。そして、選択光SLは、第2の反射膜12Bを透過した後、第2の基板11Bから出射する。このようにして、波長選択素子10は、入射された光(電磁波)を選択的に出力(透過)する。
【0029】
図3は、波長選択素子10の製造方法の製造フローを示すフロー図である。
図4(a)〜(d)は、波長選択素子10の製造途中における第1又は第2の基板11A又は11Bを模式的に示す断面図である。
図3及び
図4(a)〜(d)を用いて、波長選択素子10の製造方法について説明する。なお、
図4(b)においては、加工前の第2の基板11Bの形状を破線で示している。
【0030】
[第1の反射膜12Aの形成工程]
まず、第1の基板11Aに第1の反射膜12Aを形成する(
図3、ステップS11)。
図4(a)は、第1の反射膜12Aが形成された第1の基板11Aを示す断面図である。具体的には、まず、両主面に化学機械研磨を行って平坦化された平板形状の第1の基板11Aを準備する。次に、第1の基板11Aの主面の一方(第1の主面)MS1上に第1の反射膜12Aを形成する。本実施例においては、主面MS1の中央部を第1の主表面PL1とし、第1の主表面PL1上に円形のAg膜を形成することで、第1の反射膜12Aを形成した。
【0031】
[突起PJ及び第2の反射膜12Bの形成工程]
次に、第2の基板11Bに突起PJ及び第2の反射膜12Bを形成する(
図3、ステップS12)。
図4(b)は、突起PJ及び第2の反射膜12Bが形成された第2の基板11Bを示す断面図である。
【0032】
具体的には、まず、両主面に化学機械研磨を行って平坦化された平板形状の第2の基板11Bを準備する。次に、第2の基板11Bの主面(第2の主面)MS2の中央部に凹部(第1の凹部)RC1を形成する。また、主面MS2の周辺領域に凹部(第2の凹部)RC2を形成する。凹部RC1及びRC2は、例えば、エッチングなどによって第2の基板11Bの主面MS2を部分的に除去することで形成することができる。
【0033】
なお、第2の基板11Bの主面MS2には、凹部RC1及びRC2が形成されない領域を残す。この残存した主面MS2は、相対的に凹部RC1及びRC2から突出した突起PJとなる。また、凹部RC1の底面は第2の主表面PL2となる。なお、所望の平坦度を得るために凹部RC1の底部に平坦化処理を行ってもよい。このように、第2の基板11Bに突起PJを形成する。
【0034】
[第2の反射膜12Bの形成工程]
次に、凹部RC1の底面である第2の主表面PL2に第2の反射膜12Bを形成する。本実施例においては、第2の主表面PL2上に円形のAg膜を形成することで、第2の反射膜12Bを形成した。なお、本実施例においては、第2の反射膜12Bは、第1の反射膜12Aと同一の形状及びサイズとした。
【0035】
[接合部材BDの塗布工程]
次に、第2の基板11Bに接合部材BDを塗布する(
図3、ステップS13)。
図4(c)は、接合部材BDが塗布された状態の第2の基板11Bを示す断面図である。
【0036】
具体的には、第2の基板11Bの主面MS2における凹部RC1の外側の領域に、接合部材BDを塗布する。本実施例においては、第2の基板11Bの主面MS2に形成した凹部RC2の底面上に接合部材BDを塗布した。また、本実施例においては、接合部材BDとして、紫外線硬化型の樹脂材料からなる硬化型接着剤を用いた。
【0037】
また、接合部材BDは、凹部RC2の底面の複数の個所に塗布した。また、接合部材BDは、
図4(c)に示すように、突起PJ(主面MS2)を超える高さとなるように、その粘度及び塗布量を調整した。なお、この接合部材BDの塗布工程、後述する突き当て工程及び接合工程は、大気中で行った。
【0038】
[第1及び第2の基板11A及び11Bの突き当て工程及び接合工程]
次に、第1及び第2の基板11A及び11B同士を互いに突き当てる(
図3、ステップS14)。また、第1及び第2の基板11A及び11Bを突き当てた状態で、接合部材BDを硬化させ、第1及び第2の基板11A及び11Bを互いに接合する(
図3、ステップS15)。
図4(d)は、接合された第1及び第2の基板11A及び11Bを示す断面図である。
【0039】
具体的には、まず、第1及び第2の反射膜12A及び12Bが互いに対向するように、第1及び第2の基板11A及び11Bを突き当てる。本実施例においては、第1の基板11Aの主面MS1を、第2の基板11Bの突起PJに直接突き当てる(当接させる)。本実施例においては、第1及び第2の基板11A及び11Bに圧力を加え、第1の基板11Aの主面MS1と第2の基板11Bの突起PJの頂面の全面とを接触させた。これによって、突当り部14が形成される。
【0040】
また、この突き当て工程時には、第2の基板11B上の接合部材BDを第1の基板11Aの主面MS1に接触させた。具体的には、
図4(c)に示す状態の第2の基板11Bに第1の基板11Aの主面MS1を突き当てることで、まず接合部材BDが第1の基板11Aに接触させた後、突起PJを第1の基板11Aに突き当てた。
【0041】
突き当て工程によって突当り部14を形成することで、第1及び第2の主表面PL1及びPL2間の間隙GP、並びに第1及び第2の反射膜12A及び12B間の光学距離DTが形成(確定)される。
【0042】
続いて、接合部材BDを硬化させることで、第1及び第2の基板11A及び11Bを接合し、接合部13を形成する。本実施例においては、突当り部14が形成された状態で接合部材BDとしての紫外線硬化樹脂に紫外線を照射した。これによって接合部材BDが硬化して接合部13を形成し、第1及び第2の基板11A及び11Bが接合される。このような工程を経て、波長選択素子10を形成した。
【0043】
ここで、接合部13について説明する。
図5(a)は、本実施例に係る波長選択素子10の模式的な断面図である。接合部13は、硬化後の硬度(柔らかさ)が第1の基板11Aよりも小さな硬化型接着剤からなる。また、接合部13は、硬化後に弾性を有し、この弾性力F1は、接合後の第1の基板11Aに生ずる曲げ応力(曲げ反力)F2よりも小さい。これによって、接合後、すなわち製品となった波長選択素子10における反射膜対12の光学距離DTの均一度が大幅に改善される。
【0044】
具体的には、接合部13となる硬化型接着剤である接合部材BDは、硬化する際には、硬化前に比べて収縮する。従って、接合部13と第1の基板11Aとの接合面(接触面)には、突当り部14を支点とし、第2の基板11Bに向かって第1の基板11Aを撓ませよう(曲げよう)とする力が働く。そして、硬化時に接合部材BD及び第1の基板11A間に作用する収縮力は、硬化後にも弾性力F1として内在する。また、弾性力F1を受けた第1の基板11Aには、弾性力F1に反発する反力(曲げに対する反力)F2が生ずる。
【0045】
しかし、接合部13として比較的低い硬度の(柔らかい)材料を用いることで、第1の基板11Aに生じた反力F2が接合部13の弾性力F1よりも大きくすることができる。従って、接合部材BDの硬化による第1の基板11Aの変形が抑制され、第1の基板11Aの形状が安定する。これによって、第1及び第2の主表面PL1及びPL2の平行度が向上し、間隙GPは高い面内均一性を有することとなる。従って、第1及び第2の反射膜12A及び12B間の光学距離DTの平行度、すなわち面内(膜内)均一性が大幅に向上する。従って、基板同士が確実に所望の間隔で位置決めされて固定される。
【0046】
例えば、接合部13に用いることができる接着剤としては、アクリル系接着剤又はエポキシ系接着剤などが挙げられる。また、接合部13の硬化方式としては、紫外線硬化式又は熱硬化式などが挙げられる。また、接合部13の接着剤は、波長選択素子10(基板対11)が使用される環境温度よりも低いガラス転移点を有する材料からなることが好ましい。例えば樹脂材料によって接合部13を構成する場合、使用環境温度がガラス転移点を下回ると接合部13がガラス化し、上記した弾性力F1を有さなくなるからである。
【0047】
なお、
図5(b)に、比較例として硬化後の硬度が第1の基板11Aよりも大きな接着剤からなる接合部101を有する点を除いては波長選択素子10と同様の構成を有する波長選択素子100の模式的な断面図を示した。比較例に係る波長選択素子100は、接合部101の硬化後の弾性力F3が第1の基板11Aの反力F2よりも大きい。この場合、
図5(b)に示すように、第1の基板11Aが湾曲した状態(反った状態)で第1及び第2の基板11A及び11Bが接合される。
【0048】
従って、接合部101を設けた場合、第1及び第2の主表面PL1及びPL2間の間隙GP0の均一性は低下する。そして、第1及び第2の反射膜12A及び12B間の光学距離DT0の均一性が低下する。従って、波長選択素子100の実際のフィルタリング特性は設計上のフィルタリング特性とは異なり、所望の波長帯域の選択光SLを取り出せない場合がある。
【0049】
翻って、波長選択素子10においては、上記したように、硬化後の硬度が第1の基板11Aよりも小さな硬化型接着剤からなる接合部13によって第1及び第2の基板11A及び11Bが接合されている。従って、確実に所望の間隔で第1及び第2の基板11A及び11Bが固定され、所望の間隔で第1及び第2の反射膜12A及び12Bを配置することができる。
【0050】
また、波長選択素子10は、第1及び第2の反射膜12A及び12Bと接合部13との間に第1及び第2の基板11A及び11Bが直接突き当る突当り部14を有する。従って、第1及び第2の主表面PL1及びPL2間の間隙GP、並びに第1及び第2の反射膜12A及び12Bの光学距離DTが確実に定まる。
【0051】
また、接合部13は、接合領域内(本実施例においては第1及び第2の基板11A及び11B間の領域内)に点在する複数の接合片13Aを有することが好ましい。これによって、製造時における第1及び第2の基板11A及び11B間の接合強度や位置精度のばらつきを抑制することができる。具体的には、例えば、接合部13に異物が混入するおそれが低下する。従って、波長選択特性が安定する。
【0052】
また、突当り部14は、第2の基板11B(一方の基板)における突起PJの平坦な頂面と、第1の基板11A(他方の基板)の主面MS1とが突き当たっている部分であることが好ましい。換言すれば、突当り部14は、面同士が直接に突き当たって形成された部分であることが好ましい。
【0053】
例えば、本実施例においては、突当り部14を形成する第1の基板11Aの主面MS1及び第2の基板11Bの突起PJの頂面は、化学機械研磨などによって平坦化された剛体の表面である。この高度に平坦化された剛体の表面同士を直接突き当てることにより、第1及び第2の主表面PL1及びPL2間の高い平行度、すなわち第1及び第2の反射膜12A及び12B間の高い平行度を得ることができる。
【0054】
また、本実施例においては、上記したように、波長選択素子10の製造方法として、硬化後の硬度が基板対11よりも小さな硬化型接着剤からなる接合部材BDを用いて基板対11を接合する工程S13〜S15を含む。従って、複雑な工程や高価な装置、高度な製造環境を必要とすることなく、基板同士が確実かつ容易に所望の間隔で位置決めされて固定され、高い波長選択特性を有する波長選択素子10を提供することができる。また、突き当て工程S14を行うことで、基板同士の位置決め精度がさらに向上する。
【0055】
なお、本実施例においては、突当り部14が基板対11の互いに直接に突き当たる部分である場合について説明した。しかし、例えば、突当り部14、すなわち第1及び第2の基板11A及び11Bのいずれかの突き当たる部分(接触部)には、メッキなどの表面処理(表面加工)が施されていても良い。すなわち、第1及び第2の基板11A及び11Bにおける剛体部分同士が突き当たっていればよい。
【0056】
また、本実施例においては、突当り部14が第2の基板11Bの突起PJの平坦な頂面と第1の基板11Aの主面MS1とによって面接触を形成する場合について説明したが、突当り部14の構成はこれに限定されない。例えば、突起PJの頂面は曲面形状を有し、点接触によって突当り部14が形成されていてもよい。
【0057】
また、本実施例においては、突当り部14が反射膜対12の外周に環状に形成されている場合について説明したが、突当り部14の構成はこれに限定されない。例えば、突当り部14は、反射膜対12の外周において断続的に形成されていてもよい。また、突当り部14は、反射膜対12の外側に設けられた複数の突当り片(図示せず)から構成されていてもよい。すなわち、第1及び第2の基板11A及び11Bは、互いに離間した複数の領域において互いに突き当たっていてもよい。
【0058】
また、本実施例においては、反射膜対12が円形の平面形状を有する場合について説明したが、反射膜対12の平面形状はこれに限定されない。例えば反射膜対12は、矩形の平面形状を有していてもよい。また、基板対11が矩形の平面形状を有する場合について説明及び図示したが、基板対11の平面形状はこれに限定されない。
【0059】
また、第2の基板11Bの主面MS2に突起PJが形成される場合について説明したが、第1の基板11Aに突起PJが形成されていてもよい。また、第1及び第2の基板11A及び11Bの両方に突起PJが形成され、突起PJ同士が互いに突き当てられて突当り部14を形成していてもよい。
【0060】
本実施例においては、波長選択素子10は、透光性を有し、間隙GPをおいて互いに対向する主表面PL1及びPL2を有する一対の基板11と、対向する主表面PL1及びPL2上に形成され、光学距離DTをおいて互いに対向する一対の反射膜12と、一対の基板11を互いに接合し、一対の基板11よりも硬化後の硬度が小さな硬化型接着剤からなる接合部13と、一対の基板11が直接突き当って間隙GPを画定する突当り部14と、を有する。従って、基板同士が確実に所望の間隔で位置決めされて固定された波長選択素子を提供することができる。
【実施例3】
【0070】
図7(a)は、実施例3に係る波長選択素子30の上面を模式的に示す図である。
図7(b)は、波長選択素子30の断面図である。
図7(b)は、
図7(a)のX−X線に沿った断面図である。波長選択素子30は、基板対31、可動部32、支持部33及び駆動電極34の構成を除いては、波長選択素子10と同様の構成を有している。基板対31は、基板対11と同様の材料からなる。
【0071】
波長選択素子30は、第1の基板31Aにおける突当り部14の内側の領域に設けられ、第1の反射膜12Aを第1の反射膜12Aの膜厚方向に変位させる可動部32と、可動部32を移動自在に支持する支持部33とを有する。また、波長選択素子30は、第1及び第2の電極34A及び34Bからなり、可動部32を移動させる静電気力を生成する駆動電極34を有する。
【0072】
より具体的には、
図7(b)に示すように、本実施例においては、支持部33は、第1の基板31Aにおける第1の反射膜12Aの外周部に設けられた薄膜部からなる。可動部32は、支持部33としての薄膜部の内側の第1の基板31Aの部分である。なお、可動部32の底面は第1の主表面PL1を構成し、第1の反射膜12Aは可動部32の当該底面上に形成されている。
【0073】
また、本実施例においては、可動部32と反射膜対12との間には、基板対31の互いに対向する主表面PL1及びPL2上に形成され、間隙をおいて互いに対向する第1及び第2の電極34A及び34Bが設けられている。駆動電極34は、可動部32を移動させ、第1の反射膜12Aを変位させる静電気力を生成する。なお、図示していないが、波長選択素子30は、駆動電極34に接続された駆動回路を有する。
【0074】
駆動電極34に電圧が印加されると、第1及び第2の電極34A及び34B間に静電気力(例えば静電引力)が生ずる。支持部33は、当該静電気力によって、弾性変形を起こす。これによって、可動部32は、第1の反射膜12A及び第1の電極34Aと共に、例えば第2の基板31B側に移動(変位)する。このようにして、波長選択素子30は、第1及び第2の反射膜12A及び12B間の光学距離DTを変化させ、取出す電磁波(選択光SL)の波長を調節する機能を有する。すなわち、波長選択素子30は、波長可変型の光学フィルタである。
【0075】
図8(a)は、駆動時、すなわち可動部32が移動して第1の反射膜12Aが変位した場合の波長選択素子30の模式的な断面図である。
図8(a)は、光学距離DT1が光学距離DTよりも小さくなるように第1の反射膜12Aを変位させた場合の波長選択素子30の状態を示す。
【0076】
接合部13は、波長選択素子10と同様に、基板対31よりも硬化後の硬度が小さい硬化型接着剤からなる。従って、
図5(a)を用いて説明したように、接合部13の硬化後の弾性力F1は、基板対11の曲げ反力F2よりも小さい。従って、接合部13は、接合力を保持しつつも、硬化後に第1の基板31Aに生じた曲げ応力によって伸縮する(図は伸張する例である)。
【0077】
このように、接合部13は、例えば駆動電極34によって第1の基板31Aに変形力(可動力)を与えて変形させた場合でも、この第1の基板31Aには不要な変形が生じない。従って、接合部13及び突当り部14によって、間隙GP1が理想的な距離となるように可動部32を移動させることができ、光学距離DT1を正確に変化させることができる。
【0078】
図8(b)は、比較例として、接合部13に代えて接合部101によって接合された波長選択素子110の駆動時の状態を模式的に示す断面図である。まず、接合部101を用いた場合、接合部101の硬化後は、接合部101の硬化収縮によって第1の基板31Aが不要な変形を起こす。この状態で波長選択素子110を駆動した場合、基板対31の間隙GP2が不均一となるだけでなく、設計上の変位量とは異なる変位量で可動部32が移動する可能性が高い。従って、反射膜対12の光学距離DT2が設計上の均一度及び距離から外れ、所望のフィルタリング特性を得ることができなくなる場合がある。
【0079】
翻って、波長選択素子30は、接合部13が硬化後も柔軟であるため、正確に光学距離DTを設計上の光学距離DT1に調節することができ、またその均一度も高いものとなる。
【0080】
このように、本実施例においては、波長選択素子30は、基板対31の一方(本実施例においては第1の基板31A)において突当り部14の内側に設けられ、反射膜対12の光学距離DTを変位させる可動部32を有する。従って、例えば第1の反射膜12Aを変位させて波長選択特性を変化させる場合においても、接合部13及び突当り部14を有することによって、基板同士が確実に所望の間隔で位置決めされた波長可変型の波長選択素子30を提供することができる。
【0081】
なお、上記した実施例は互いに組み合わせることができる。例えば、実施例3に係る波長選択素子30は、接合部13及び突当り部14に代えて、実施例2に係る波長選択素子20の接合部22及び突当り部23を有していてもよい。