(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態の建築板の施工構造について説明する。
【0010】
図1に示す本実施形態の建築板の施工構造は、構造物下地と、複数の建築板と、複数の支持部材3と、複数の断熱材5と、複数の固着具6,7とを備えている。本実施形態の建築板は、屋根板2であって、構造物下地は野地板で構成された屋根下地1である。複数の屋根板2は、階段状に重ねられて屋根下地1に施工されている。また、本実施形態の建築板の施工構造では、複数の屋根板2が階段方向と直交する方向に突付け施工されている。ここで、「階段方向」とは、階段状に重ねられた複数の屋根板2が並ぶ方向であり、本実施形態では後述する軒棟方向である。
【0011】
(建築板)
本実施形態の屋根板2は、平板状のスレート瓦であって、セメント系成形材料を成形し、養生硬化することで製造される。
【0012】
複数の屋根板2は、
図2に示すように、屋根下地1上に、軒棟方向と軒方向との両方向に並んだ状態で設置されている。ここで、軒棟方向とは屋根の勾配方向であり、軒方向とは軒棟方向と直交する水平方向である。
【0013】
図1に示すように、複数の屋根板2は、軒棟方向に隣接する屋根板2のうち、軒側の屋根板2(以下、軒側屋根板2aという)の棟側部分が、棟側の屋根板2(以下、棟側屋根板2bという)に表側から覆われるように、屋根下地1上に設置されている。すなわち、軒棟方向に隣接する屋根板2にあっては、一方の屋根板2(軒側屋根板2a)の隣接方向他方側(棟側)の部分が、他方の屋根板2(棟側屋根板2b)に表側から覆われるように施工されている。なお、
図1及び
図2では、便宜上、複数の屋根板2のうち、軒側から数えて2段目の屋根板2を軒側屋根板2aとし、軒側から数えて3段目の屋根板2を棟側屋根板2bとしている。
【0014】
本実施形態では、
図2に示すように軒方向に隣接する屋根板2が、端面同士を突合せて軒方向に突付けた状態で施工されている。以下、軒方向に隣接する屋根板2の突付けた部分を突付け部分25という。
【0015】
また、本実施形態の複数の屋根板2は、千鳥状に配置されており、軒棟方向に隣接する屋根板2のうち、軒側屋根板2
aは、棟側
屋根板2
bと、軒方向においてずれた状態で配置されている。
【0016】
図1に示すように屋根板2は、軒棟方向と軒方向との両者に直交する方向に見て、棟側に隣接した屋根板2と重なって表面が露出しない重なり部20と、棟側に隣接した屋根板2とは重ならない非重なり部21とを備えている。
【0017】
(支持部材)
各屋根板2の軒側端部22の裏側には、支持部材3が設けられている。本実施形態の建築板の施工構造は、支持部材3として、複数の屋根板2のうち最も軒側に位置する屋根板2(以下、軒端屋根板2cという)の裏側に設けられた第1支持部材3aと、複数の屋根板2のうち軒端屋根板2cを除く他の屋根板2の裏側に設けられた第2支持部材3bとを備えている。
【0018】
軒端屋根板2cの軒側端部22は、この裏側の施工面を構成する屋根下地1の表面に第1支持部材3aを介して施工されている。本実施形態の第1支持部材3aは、軒方向に複数設けられている。
【0019】
軒端屋根板2c以外の屋根板2における軒側端部(下段の屋根板2に重ねられる端部)22は、この裏側の施工面を構成する屋根板2の表面に第2支持部材3bを介して施工されている。本実施形態の第2支持部材3bは、軒方向に複数設けられている。
【0020】
(第1支持部材)
第1支持部材3aは、軒方向に延びており、その長手方向は軒方向と一致している。
図4A〜
図4Dに示す本実施形態の第1支持部材3aは金属製であって、金属板を曲げ加工して形成されている。
【0021】
図3Aに示すように、本実施形態の第1支持部材3aは、軒端屋根板2cの軒側端部22を裏側から持ち上げて支持する支持部33と、軒端屋根板2cの軒側端部22と対向するように支持部33から立ち上がる立ち上がり部34とを備えている。支持部33により軒端屋根板2cの軒側端部22が持ち上げられることで、軒端屋根板2cは外観上厚く見える。また、立ち上がり部34は軒端屋根板2cの軒側への移動を規制する。
【0022】
本実施形態の第1支持部材3aは、
図2に示すように、軒端屋根板2cと軒方向の幅が同じである。
【0023】
なお、第1支持部材3aは、軒端屋根板2cよりも軒方向の幅が長く、軒端屋根板2cから、軒端屋根板2cの軒方向に隣接した軒端屋根板2c(隣接建築板)まで延びていてもよい。また、第1支持部材3aは、軒端屋根板2cよりも軒方向の幅が短くてもよい。
【0024】
図3Aに示すように、本実施形態の支持部33は、軒方向と直交する断面の形状がハット状であり、一対の設置片部35,36と、一対の立上片部37,38と、支持片部39とを備えている。
【0025】
一対の設置片部35,36は軒棟方向に離間して配置されている。設置片部35,36は屋根下地1の表面に沿った板状に形成されている。
【0026】
一対の設置片部35,36のうち、棟側の設置片部36は、屋根下地1に固着される固着部を構成している。設置片部36には、軒方向に並んだ複数の挿通孔40が形成されている。
【0027】
挿通孔40には、釘又はねじからなる固着具6が挿通されており、固着具6は屋根下地1に打入されている。これにより、設置片部36は屋根下地1に固着され、第1支持部材3aは屋根下地1に対して固定されている。
【0028】
一対の立上片部37,38は、軒側の設置片部35の棟側端及び棟側の設置片部36の軒側端からそれぞれ表側(上側)に向かって延出している。立上片部37,38は設置片部35,36に対して垂直な板状に形成されている。
【0029】
支持片部39は一対の立上片部37,38の上端(屋根下地1側とは反対側の端)同士を繋いでおり、軒端屋根板2cの軒側端部22の裏面に沿った板状に形成されている。
【0030】
軒端屋根板2cの軒側端部22は、支持片部39に載置されることで、屋根下地1の表面から上方に離れた位置で支持されている。軒端屋根板2cは、
図1に示すように、軒側端に近い部分ほど屋根下地1の表面から離れるように軒棟方向に対して傾斜している。
【0031】
図3Aに示すように、第1支持部材3aが備えた立ち上がり部34は、支持部33の軒側端に繋がっている。本実施形態の立ち上がり部34は、軒端屋根板2cの軒側端部22及びこの裏側に形成された隙間8(軒端屋根板2cの軒側端部22と屋根下地1との間)を軒側からカバーする。
【0032】
本実施形態の立ち上がり部34は、軒方向と直交する断面の形状が、逆L字状に形成されており、軒側の設置片部35の軒側端から表側(上側)に向かって延出した立ち上がり片部41と、立ち上がり片部41の上端から棟側に向かって延出した押え片部42とを備えている。
【0033】
立ち上がり片部41は、軒側の立上片部37と略平行な板状に形成されている。立ち上がり部41は、軒端屋根板2c及び隙間8の軒側に位置し、軒端屋根板2cの軒側端面と立上片部37とに対向している。軒端屋根板2cの軒側端部22及び隙間8は、立ち上がり部41により、軒側からカバーされている。
【0034】
押え片部42は支持片部39と略平行な板状に形成されており、支持片部39よりも上方に位置している。
【0035】
第1支持部材3aには、押え片部42と支持片部39とで、棟側に向かって開口した差込溝43が構成されている。差込溝43は第1支持部材3aの長手方向の全長に亘って形成されている。差込溝43には軒端屋根板2cの軒側端部22が差し込まれている。
【0036】
押え片部42は軒端屋根板2cの軒側端部22の表面に沿った板状に形成されており、軒端屋根板2cの軒側端部22を表側から押える。なお、押え片部42は軒端屋根板2cの軒側端部22に接することで屋根下地1から離れる方向に移動することを規制する機能を備えていればよく、施工状態においては、軒側端部22に対して屋根下地1に近づく方向に力を加えるものであってもよいし、加えないものであってもよい。
【0037】
(断熱材)
図1に示すように、各屋根板2の裏側には、断熱材5が設けられている。本実施形態の断熱材5は、発泡プラスチックからなる発泡断熱材であって、ポリスチレン樹脂から形成されている。なお、断熱材5は、ウレタン樹脂又はポリエチレン樹脂等のポリスチレン以外の樹脂から形成されてもよい。
【0038】
本実施形態の建築板の施工構造は、断熱材5として、軒端屋根板2cの裏側に設けられた第1断熱材5aと、他の屋根板2の裏側に設けられた第2断熱材5bとを備えている。各断熱材5a,5bは、ルーフィング9を介して屋根下地1上に設置されている。
【0039】
(第1断熱材)
軒端屋根板2cは第1断熱材5aを介して屋根下地1上に施工されており、これにより屋根において軒端屋根板2cが施工された部分の断熱性が高くなっている。また、第1断熱材5aはクッション性を有するため、屋根板2の施工時や改修時において作業者によって軒端屋根板2cが踏まれる等して、軒端屋根板2cが割れることが抑制される。
【0040】
第1断熱材5aは、軒方向に延びた長尺状に形成されている。第1断熱材5aの軒方向の幅は、軒端屋根板2cの軒方向の幅と比較して、長くてもよいし、短くてもよい。また、第1断熱材5aの軒方向の幅は、軒端屋根板2cの軒方向の幅と同じであってもよい。
【0041】
第1断熱材5aの軒方向と直交する断面の形状は、直角三角形状である。第1断熱材5aの裏面は、屋根下地1の表面と第1支持部材3aの設置片部36の表面に沿っている。第1断熱材5aの軒側端面は、第1支持部材3aの棟側の立上片部38の棟側面に沿っている。第1断熱材5aの表面は、軒端屋根板2cの裏面に沿っている。第1断熱材5aは、軒方向に見て、屋根下地1、支持部材3、軒端屋根板2cで囲まれた領域の全体に亘っている。
【0042】
(第2支持部材)
軒端屋根板2c以外の屋根板2の軒側端部22の裏側に設けられた第2支持部材3bは、第1支持部材3aと略同じ構成を有している。このため、以下では第2支持部材3bにおいて第1支持部材3aと共通する構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図3Bに示すように、第2支持部材3bは、軒側屋根板2aと棟側屋根板2bの軒側端部22との間に位置している。第2支持部材3bの支持部33は、棟側屋根板2bの軒側端部22を裏側から持ち上げて支持している。これにより、棟側屋根板2bは外観上厚く見える。本実施形態の第2支持部材3bの立ち上がり部34は、棟側屋根板2bの軒側端部22及びこの裏側に形成された隙間8(軒側屋根板2aと棟側屋根板2bの間)を軒側からカバーする。これにより、棟側屋根板2bはより一層厚く見える。
【0044】
図2に示すように、第2支持部材3bの軒方向の幅は、軒側屋根板2aの軒方向の幅、及び棟側屋根板2bの軒方向の幅と同じである。
【0045】
複数の第2支持部材3bの中には、軒方向に並んだ複数の軒側屋根板2aに亘る第2支持部材3bと、軒方向に並んだ複数の棟側屋根板2bに亘る第2支持部材3bとがある。すなわち、複数の第2支持部材3bの中には、軒側屋根板2aからこの軒側屋根板2aに軒方向において隣接した軒側屋根板2a(隣接建築板)まで延びた第2支持部材3bと、棟側屋根板2b及びこの棟側屋根板2bに軒方向において隣接した棟側屋根板2bまで延びた第2支持部材3bとがある。
【0046】
図3Bに示すように、第2支持部材3bの一対の設置片部35,36は、軒側屋根板2aの表面に沿っている。本実施形態の第2支持部材3bは、
図1に示すように、支持部33の高さ(設置片部35から支持片部39までの距離)が、第1支持部材3aの支持部33の高さよりも短くなっており、これにより、棟側屋根板2bの軒側端部22の屋根下地1からの高さは、軒端屋根板2cの軒側端部22の屋根下地1からの高さと略同じになっている。
【0047】
図3Bに示すように、第2支持部材3bの棟側の設置片部36に形成された複数の挿通孔40の各々には、釘又はねじからなる固着具7が挿通されている。固着具7は、軒側屋根板2aの重なり部20に予め形成された固着具用孔24と、軒側屋根板2aの裏側に配置された断熱材5とを通して屋根下地1に打入されている。これにより、第2支持部材3b及び軒側屋根板2aは、屋根下地1に対して固定されている。
【0048】
第2支持部材3bの挿通孔40は、軒側屋根板2aの固着具用孔24よりも軒方向の寸法が長い孔であることが好ましい。例えば軒側屋根板2aの固着具用孔24は、固着具7の軸部と略同じ径の円孔であり、第2支持部材3bの挿通孔40は、軒方向に延びた長孔である。この場合、作業者が固着具7を用いて第2支持部材3bを屋根下地1に固定するにあたって、軒側屋根板2aの固着具用孔24と、軒側屋根板2aに載置された第2支持部材3bの挿通孔40との位置合わせを行う場合に、挿通孔40よりも大きな固着具用孔24を通して挿通孔40を視認し易くなる。このため、作業者は前述の位置合わせを容易に行うことができる。
【0049】
第2支持部材3bの支持片部39は、棟側屋根板2bの裏面に沿っている。棟側屋根板2bの軒側端部22は、第2支持部材3bの支持片部39に載置されることで、軒側屋根板2aの表面から離れた位置で支持されている。
【0050】
本実施形態の第2支持部材3bは、
図1に示すように、棟側屋根板2bを軒端屋根板2cと平行になるように支持している。
【0051】
図3Bに示すように、第2支持部材3bの立ち上がり
片部41は、棟側屋根板2b及び隙間8の軒側に位置し、棟側屋根板2bの軒側端部22及び隙間8を軒側からカバーしている。第2支持部材3bに形成された差込溝43には、棟側屋根板2bの軒側端部22が差し込まれている。
【0052】
第2支持部材3bの押え片部42は、棟側屋根板2bの軒側端部22の表面に沿い、棟側屋根板2bの軒側端部22を表側から押える。
【0053】
(第2断熱材)
図1に示すように、棟側屋根板2b(軒端屋根板2cを除く屋根板2)は、第2断熱材5bを介して軒側屋根板2a上に設置されており、これにより屋根における棟側屋根板2bが設置された部分の断熱性が高くなっている。また、第2断熱材5bはクッション性を有するため、屋根板2の施工時や改修時において作業者により棟側屋根板2bが踏まれる等して、棟側屋根板2bや軒側屋根板2aが割れることが抑制される。
【0054】
第2断熱材5bは、軒方向に延びた長尺状に形成されている。第2断熱材5bの軒方向の幅は、棟側屋根板2bの軒方向の幅と同じであってもよい。また、第2断熱材5bの軒方向の幅は、棟側屋根板2bの軒方向の幅と比較して、長くてもよいし、短くてもよい。
【0055】
図1に示すように、本実施形態の第2断熱材5bは、軒棟方向に隣り合う軒側屋根板2aと棟側屋根板2bとの重なり部分に挟まれた第1部分51と、第1部分51とは別に第1部分51に隣接して配置され、第1部分51の表側の建築板(棟側屋根板2b)と屋根下地1との間に配置される第2部分52とを備えている。
【0056】
第1部分51は、軒方向と直交する断面の形状が、軒側屋根板2aの表面に沿って延びた矩形状である。第1部分51の裏面は、軒側屋根板2aの表面に沿い、第1部分51の表面は、棟側屋根板2bの裏面に沿っている。第1部分51の軒側端面は、第2支持部材3bの立上片部38に沿っている。第1部分51の棟側端は、軒側屋根板2aの棟側端と軒棟方向において同位置にあり、第1部分51の棟側端面は、軒側屋根板2aの棟側端面と面一になるように配置されている。
【0057】
第1部分とは別部材である第2部分52は、軒方向と直交する断面の形状が、直角三角形状である。第2部分52の裏面は、屋根下地1の表面に沿っている。第2部分52の軒側端面は、軒側屋根板2aの棟側端面及び第1部分51の棟側端面に沿っている。第2部分52の表面は、棟側屋根板2bの裏面に沿っている。
【0058】
第1部分51の棟側端面と第2部分52の軒側端面とは接しており、軒方向に見て、第1部分51及び第2部分52は、軒側屋根板2a、支持部材3、棟側屋根板2b及び屋根下地1で囲まれた領域の全体に亘っている。
【0059】
本実施形態では、第1部分51と第2部分52とが別部材であるので、第1部分51及び第2部分52のそれぞれをシンプルな形状にすることができる。
【0060】
また、本実施形態の第2断熱材5bにあっては、棟側屋根板2bの軒棟方向幅が異なる場合、第2部分52として軒棟方向幅が同じ共通の第2部分52を用い、かつ第1部分51として棟側屋根板2bの軒棟方向幅に応じたサイズの第1部分51を用いることで、棟側屋根板2bの裏側の略全体を断熱することができる。
【0061】
(排水構造)
ところで、本実施形態の建築板の施工構造においては、雨水が、屋根板2の軒側端部22と、当該屋根板2を支持する支持部材3の押え片部42との間から、当該支持部材3の立ち上がり部34と支持部33との間に入り込む可能性がある。このため、本実施形態の各支持部材3には、
図4Cに示すように、軒側の設置片部36から立ち上がる立ち上がり片部41の下端部に、立ち上がり部34と支持部33との間に入り込んだ雨水を排出するための水抜き孔45が形成されている。
【0062】
本実施形態では、
図4Aに示すように、立ち上がり片部41の下端部において軒方向の両端部を除いた部分に、棟側に凹んだ凹部46が形成されている。凹部46の奥部47は、
図4Dに示すように、下端に近い部分ほど棟側に位置するように傾斜した板状に形成されている。本実施形態では、奥部47に、軒方向に並んだ複数の水抜き孔45が形成されている。
【0063】
立ち上がり部34と支持部33との間に入り込んだ雨水は、水抜き孔45から立ち上がり部34の軒側に排出される。ここで、第2支持部材3bが支持する棟側屋根板2bの軒側には、
図2A及び
図2Bに示すように、下段の複数の軒側屋根板2aが軒方向に突付けて施工されているが、第2支持部材3bには、水抜き孔45が軒方向において突付け部分25からずれた位置に形成されている。このため、水抜き孔45から排出された雨水は、突付け部分25に至り難い。従って、水抜き孔45から排出された雨水が、突付け部分25から断熱材5や屋根下地1に浸入するといった事態が生じ難い。
【0064】
また、立ち上がり部34と支持部33との間に入り込んだ、軒側の設置片部35上の雨水は、水抜き孔45から吹き込んだ風により棟側に流れる可能性があるが、本実施形態の支持部材3は、
図3A及び
図3Bに示すように、立ち上がり部34の棟側に、支持部33の軒側の立上片部37が位置するので、前記吹き込みにより軒側の設置片部35上の雨水が棟側に向かって流れたとしても、この雨水は立上片部37で堰き止められる。このため、設置片部35上の雨水が、棟側の設置片部3
6の挿通孔40に至り、当該挿通孔40及び屋根板2の固着具用孔24を通って断熱材5や屋根下地1に浸入するといった事態が生じ難い。
【0065】
(施工)
複数の屋根板2の施工は、例えば以下のように行われる。まず、作業者は、複数の第1支持部材3aを施工する。この際、作業者は、第1支持部材3aを屋根下地1上に載置し、この後、複数の固着具6を第1支持部材3aの設置片部36の表側から複数の挿通孔40を通して屋根下地1に打入する。これにより、第1支持部材3aは屋根下地1に固定される。
【0066】
次に作業者は、複数の第1断熱材5aを施工する。この際、作業者は、第1断熱材5aの軒側端面を第1支持部材3aの棟側の立上片部38に沿わせて、第1断熱材5aを屋根下地1に載置する。
【0067】
次に作業者は、複数の軒端屋根板2cを施工する。この際、作業者は、軒端屋根板2cの軒側端部22を第1支持部材3aの差込溝43に棟側から差し込み、軒端屋根板2cを第1支持部材3aの支持片部39及び第1断熱材5aに載置する。
【0068】
次に作業者は、複数の第2支持部材3bを施工する。この際、作業者は、軒端屋根板2cの重なり部20に第2支持部材3bを載置し、この後、複数の固着具7を、当該第2支持部材3bの設置片部36の表側から、複数の挿通孔40、複数の固着具用孔24及び第1断熱材5aを通して屋根下地1に打入する。これにより、第2支持部材3b及び軒側屋根板2aは、屋根下地1に固定される。
【0069】
次に作業者は、複数の第2断熱材5bを施工する。この際、作業者は、
図1に示す第2断熱材5bの第1部分51の軒側端面を第2支持部材3bの棟側の立上片部38に沿わせて、第1部分51を軒端屋根板2cの重なり部20に載置すると共に、第2部分52の軒側端面を第1部分51の棟側端面に沿わせて、第2部分52を屋根下地1に載置する。
【0070】
次に作業者は、軒端屋根板2cの一段棟側の複数の屋根板2を施工する。この際、作業者は、
図3Bに示すように軒端屋根板2cの棟側に隣接する屋根板2の軒側端部22を第2支持部材3bの差込溝43に棟側から差し込み、この屋根板2を第2支持部材3bの支持片部39、第2断熱材5bの第1部分51及び第2部分52に載置する。
【0071】
そして、以後、作業者は、上述と同様に、第2支持部材3bの施工、第2断熱材5bの施工及び屋根板2の施工を順に繰り返し行い、これにより屋根板2を軒先から棟に亘るまで葺設する。
【0072】
(補足)
以上説明した実施形態は、適宜設計変更可能である。例えば、屋根板2及び支持部材3の各々の材質は、適宜変更可能である。また、支持部材3は軒方向に短尺のピース材であってもよい。また、支持部材3の押え片部42や水抜き孔45は省略可能である。
【0073】
また、本実施形態の支持部材3は屋根板2を持ち上げて支持する支持部33を備えているが、支持部材3は支持部33を備えていなくてもよく、また、支持部材3は省略してもよい。この場合、屋根板2は支持具等の他の支持具によって支持される。
【0074】
また、第2断熱材5bは第1部分51と第2部分52とが一体に形成されてもよい。また、第1断熱材5aは複数の断熱材5で構成されてもよい。
【0075】
また、本実施形態の建築板は、屋根板2であるが、これに限定されず、例えば建物の外壁を構成する壁板であってもよい。また、建築板は外装材に限られず、建物の内壁を構成する壁板等であってもよい。
【0076】
(効果)
以上説明した実施形態の建築板の施工構造は、複数の建築板が階段状に重ねられて構造物下地に施工された建築板の施工構造であって、以下に示す特徴を有する。建築板の施工構造は、建築板の裏側に配置された断熱材5を備える。以下、この特徴を有する建築板の施工構造を第1の態様の建築板の施工構造という。
【0077】
第1の態様の建築板の施工構造にあっては、前記建築板の裏側に配置された断熱材5により、断熱性が高まる。また、断熱材5のクッション性によって、建築板の施工時や改修時において作業者により建築板が踏まれる等しても、建築板が割れ難くなる。
【0078】
また、前記実施形態の建築板の施工構造は、第1の態様の建築板の施工構造が有する特徴に加えて、以下に示す付加的な特徴を有する。断熱材5は、階段方向に隣り合う建築板の重なり部分に挟まれた第1部分51と、第1部分51とは別に第1部分51に隣接して配置され、第1部分51の表側の建築板と構造物下地との間に配置される第2部分52と、を有する。以下、この建築板の施工構造を第2の態様の建築板の施工構造という。
【0079】
第2の態様の建築板の施工構造にあっては、第1部分51により、階段方向に隣り合う建築板の重なり部分の間を断熱すると共に、第2部分により、第1部分51の表側の建築板と構造物下地との間を断熱することができる。また、断熱材5の第1部分51と第2部分52とを別部材とすることで、第1部分51と第2部分52とのそれぞれをシンプルな形状にして容易に製造することができる。また、第1部分51として利用される断熱材の階段方向における長さを、第1部分51の表側の建築板において第1部分51の裏側の建築板を覆う部分の長さに応じて変更することで、第2部分52として利用される断熱材として共通のものを利用できる。
【0080】
また、前記実施形態の建築板の施工構造は、第1又は第2の態様の建築板の施工構造が有する特徴に加えて、以下に示す付加的な特徴を有する。支持部材3は、断熱材5の裏側に配置された建築板上に設置されて断熱材5の表側の建築板において断熱材5の裏側に配置された建築板と重なる端部22を裏側から持ち上げて支持する支持部33と、断熱材5及び断熱材5の表側に配置された建築板の端部22と対向するように支持部33から立ち上がる立ち上がり部34とを備える。以下、この建築板の施工構造を第3の態様の建築板の施工構造という。
【0081】
第3の態様の建築板の施工構造にあっては、支持部材3の支持部33により断熱材5の表側の建築板の端部22が持ち上げられて支持される。このため、薄く軽量な建築板を用いながら、建築板を厚く見せて、重厚感を得ることができる。また、立ち上がり部34によって断熱材5の表側の建築板の移動を規制することができる。
【0082】
また、前記実施形態の建築板の施工構造は、第3の態様の建築板の施工構造が有する特徴に加えて、以下に示す付加的な特徴を有する。立ち上がり部34に、水抜き孔45が形成される。以下、この建築板の施工構造を第4の態様の建築板の施工構造という。
【0083】
第4の態様の建築板の施工構造にあっては、断熱材5の表側の建築板と立ち上がり部34との間から、立ち上がり部34と支持部33との間に入り込んだ雨水を水抜き孔45から排出できる。また、立ち上がり部34と支持部33との間に入り込んだ雨水が、水抜き孔45から吹き込んだ風により断熱材5側に流れることを支持部33により抑制することができる。
【0084】
また、前記実施形態の建築板の施工構造は、第3又は第4の態様の建築板の施工構造が有する特徴に加えて、以下に示す付加的な特徴を有する。立ち上がり部34と支持部33との間に端部22が差込まれている。以下、この特徴を有する建築板の施工構造を第5の態様の建築板の施工構造という。
【0085】
第5の態様の建築板の施工構造にあっては、立ち上がり部34と支持部33との間に建築板の端部22を差し込むことで、建築板を施工することができる。
【0086】
また、前記実施形態の建築板の施工構造は、第3〜第5のいずれかの態様の建築板の施工構造が有する特徴に加えて、以下に示す付加的な特徴を有する。支持部材3は、階段方向と直交する方向に長尺状に延びる。立ち上がり部34は、前記直交する方向に並ぶ複数の建築板の各端部22を表側から押さえる。以下、この建築板の施工構造を第6の態様の建築板の施工構造という。
【0087】
第6の態様の建築板の施工構造にあっては、支持部材3により、前記直交する方向に並ぶ複数の建築板における下段の建築板と重なる端部22を表側から押えて固定することができる。