特許第6989304号(P6989304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989304
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】結束バンドおよび結束バンドの使用方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/10 20060101AFI20211220BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20211220BHJP
   F16L 3/137 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   B65D63/10 B
   F16B2/08 Z
   F16L3/137
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-125346(P2017-125346)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-6484(P2019-6484A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100096806
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】菊地 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】北田 奈緒子
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−093181(JP,U)
【文献】 実公昭41−004139(JP,Y1)
【文献】 特開2010−006426(JP,A)
【文献】 実公昭45−009901(JP,Y1)
【文献】 実開昭53−039298(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/10
F16B 2/08
F16L 3/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って所定の間隔で互いに離れて設けられ、伸ばしたり縮めたりできる複数の孔を有し、可撓性を有する弾性体により形成された帯状のバンド本体と、
前記バンド本体に設けられ、前記バンド本体の一方の面から外側に向かって突出した第1爪部と前記一方の面とは反対側の他方の面から前記第1爪部とは反対側に向かって突出した第2爪部とが互いに結合された一体物として形成され、前記孔と嵌まり合う係止部と、
を備えたことを特徴とする結束バンド。
【請求項2】
前記係止部は、前記バンド本体の前記長手方向における中央部に設けられたことを特徴とする請求項に記載の結束バンド。
【請求項3】
前記バンド本体は、
前記第1爪部が設けられた面から前記第1爪部と同じ側に向かって前記第1爪部よりも低い位置に突出し、前記長手方向に交差する方向において前記第1爪部を挟むように設けられた第1突起部と、
前記第2爪部が設けられた面から前記第2爪部と同じ側に向かって前記第2爪部よりも低い位置に突出し、前記長手方向に交差する方向において前記第2爪部を挟むように設けられた第2突起部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の結束バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束対象物を結束するための結束バンドおよび結束バンドの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブやハーネスやホースなどの結束対象物を束ね、締め付けて結束する結束バンドが、一般的に知られている。例えば、特許文献1には、結束本体部と、一方の結束帯部と、他方の結束帯部と、を具備した結束具が開示されている。特許文献1に記載された結束本体部は、互いに交差する方向に穿設された一方の結束孔および他方の結束孔を有する。一方の結束帯部には、一方の結束孔挿入されることで一方の結束孔に逆止係合される係合突起が成形されている。他方の結束帯部には、他方の結束孔挿入されることで他方の結束孔に逆止係合される係合突起が成形されている。また、他方の結束帯部は、一方の結束帯部とは結束本体部を介して反対側であって一方の結束帯部の延長上に沿って、かつ一方の結束帯部に対し角度を有する捩じり状態で結束本体部に一体成形されている。
【0003】
これに対して、特許文献1に記載されたような結束具とは異なり、可撓性を有する例えば合成樹脂等の弾性体により形成された帯状のバンド本体を互いに熱で溶かし合わせ、輪を形成した結束バンドがある。すなわち、製造現場において、例えば合成樹脂等の弾性体により形成された帯状のバンド本体を互いに融着させ、輪を形成する。続いて、形成された輪の中にチューブ等の結束対象物を通し、結束対象物の所定位置にバンド本体を移動させ配置させる。結束バンドを使用する使用現場には、バンド本体が結束対象物の所定位置に予め配置された状態で、製品(結束対象物がバンドの輪の中に通された物)が着荷する。このように、帯状のバンド本体を互いに融着させることで輪が形成された結束バンドによれば、結束バンドの構造や製造工程を簡易化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−6426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、製造現場において、バンド本体の輪の中にチューブ等の結束対象物を通し、結束対象物の所定位置にバンド本体を移動させ配置させるときに、バンド本体と結束対象物とが互いに密着することがある。そうすると、結束対象物の所定位置にバンド本体を移動させ配置させることは困難である。あるいは、例えば患者の手術や治療などが行われる臨床現場(使用現場)において、術式や、患者と器械との干渉状況などに応じて、予め配置されたバンド本体の位置を変更する必要性が生ずることがある。このような場合に、結束対象物とバンド本体との間の隙間が狭かったり、バンド本体と結束対象物とが互いに密着したりすると、結束対象物に対するバンド本体の位置を臨床現場において自由に変更したり、臨機応変に変更したりすることは困難である。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、結束対象物に対するバンド本体の位置を自由に変更したり、臨機応変に変更したりすることができる結束バンドおよび結束バンドの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、長手方向に沿って所定の間隔で互いに離れて設けられ、伸ばしたり縮めたりできる複数の孔を有し、可撓性を有する弾性体により形成された帯状のバンド本体と、前記バンド本体に設けられ、前記バンド本体の一方の面から外側に向かって突出した第1爪部と前記一方の面とは反対側の他方の面から前記第1爪部とは反対側に向かって突出した第2爪部とが互いに結合された一体物として形成され、前記孔と嵌まり合う係止部と、を備えたことを特徴とする結束バンドにより解決される。
【0008】
前記構成によれば、結束バンドは、帯状のバンド本体と、係止部と、を備える。帯状のバンド本体は、長手方向に沿って所定の間隔で互いに離れて設けられ、伸ばしたり縮めたりできる複数の孔を有する。係止部は、バンド本体に設けられている。係止部では、バンド本体の一方の面から外側に向かって突出した第1爪部と、一方の面とは反対側の他方の面から第1爪部とは反対側に向かって突出した第2爪部と、が互いに結合された一体物として形成されている。そして、係止部は、バンド本体の孔と嵌まり合う。そのため、使用者は、使用現場において、係止部をバンド本体の複数の孔のいずれかに嵌めることにより、結束対象物に対するバンド本体の位置を自由に変更したり、臨機応変に変更したりすることができる。例えば、使用現場が患者の手術や治療などが行われる臨床現場である場合には、使用者は、術式や、患者と器械との干渉状況などに応じて、結束対象物に対する帯状のバンド本体の位置を臨床現場において適宜設定することができる。また、使用者は、複数の孔のうちで使用する孔を適宜選択することにより、結束対象物と帯状のバンド本体との間の隙間を適宜設定することができる。

【0016】
好ましくは、前記係止部は、前記バンド本体の前記長手方向における中央部に設けられたことを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、係止部は、バンド本体の長手方向における中央部に設けられているため、第1爪部と第2爪部とが互いに別体物としてではなく、第1爪部と第2爪部とが互いに結合された一体物として形成可能とされる。これにより、結束バンドの構造を簡易化することができるとともに、結束バンドの部品点数を削減することができる。
【0018】
好ましくは、前記バンド本体は、前記第1爪部が設けられた面から前記第1爪部と同じ側に向かって前記第1爪部よりも低い位置に突出し、前記長手方向に交差する方向において前記第1爪部を挟むように設けられた第1突起部と、前記第2爪部が設けられた面から前記第2爪部と同じ側に向かって前記第2爪部よりも低い位置に突出し、前記長手方向に交差する方向において前記第2爪部を挟むように設けられた第2突起部と、を有することを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、バンド本体は、第1突起部と、第2突起部と、を有する。第1突起部は、バンド本体の第1爪部が設けられた面から第1爪部と同じ側に向かって第1爪部よりも低い位置に突出している。つまり、第1突起部の高さは、第1爪部の高さよりも低い。また、第1突起部は、バンド本体の長手方向に交差する方向において第1爪部を挟むように設けられている。第2突起部は、バンド本体の第2爪部が設けられた面から第2爪部と同じ側に向かって第2爪部よりも低い位置に突出している。つまり、第2突起部の高さは、第2爪部の高さよりも低い。また、第2突起部は、バンド本体の長手方向に交差する方向において第2爪部を挟むように設けられている。このような第1突起部および第2突起部がバンド本体の表面に設けられているため、第1突起部および第2突起部が設けられていない場合と比較すると、バンド本体と結束対象物とが互いに接触する面積を低減することができる。そのため、バンド本体と結束対象物とが互いに密着することを抑えることができる。これにより、使用者は、第1爪部および第2爪部の少なくともいずれかをバンド本体の複数の孔のいずれかに嵌めたままの状態で、結束対象物に対する帯状のバンド本体の位置を使用現場において容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、結束対象物に対するバンド本体の位置を自由に変更したり、臨機応変に変更したりすることができる結束バンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る結束バンドを表す斜視図である。
図2図1に表した切断面A1−A1における断面図である。
図3】本実施形態に係る結束バンドの第1使用例を表す平面図である。
図4】本実施形態に係る結束バンドの第2使用例を表す平面図である。
図5図1に表した切断面A2−A2における断面図である。
図6】本実施形態の第1変形例に係る結束バンドを表す斜視図である。
図7】本変形例に係る結束バンドの使用例を表す平面図である。
図8】本実施形態の第2変形例に係る結束バンドを表す斜視図である。
図9】本変形例に係る結束バンドの使用例を表す平面図である。
図10】本発明の実施形態に係る結束バンドの使用方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る結束バンドを表す斜視図である。
図2は、図1に表した切断面A1−A1における断面図である。
本実施形態に係る結束バンド2は、チューブやハーネスやホースなどの結束対象物の周囲に巻かれて結束対象物を結束したり、複数の結束対象物を束ね締め付けて結束したりする。結束バンド2が使用される現場(使用現場)は、特には限定されない。結束バンド2の使用現場としては、例えば患者の手術や治療などが行われる臨床現場などが挙げられる。臨床現場では、結束バンド2は、例えば人工心肺装置や体外循環装置などのような血液等を循環させる血液回路システムにおいて、術野側から器械側に向かう複数のチューブを束ねるために使用される。あるいは、結束バンド2は、チューブの落下を防止するために、チューブを結束した状態でドレープと一緒に鉗子に噛まれたり、フックに掛けられたりする。以下の説明では、結束バンド2の使用現場が臨床現場である場合を例に挙げる。すなわち、以下の説明では、結束バンド2が医療用の結束バンドである場合を例に挙げる。
【0028】
図1および図2に表したように、本実施形態に係る結束バンド2は、バンド本体3と、係止部4と、を備える。バンド本体3は、帯状を呈する。言い換えれば、バンド本体3は、所定の幅および所定の厚さを有するシート状の部材が任意の方向(長手方向)に延びた構造を有する。バンド本体3は、長手方向に沿って所定の間隔で互いに離れて設けられた複数の孔33を有する。孔33は、バンド本体3を貫通している。つまり、孔33は、バンド本体3の第1面31(一方の面)と、第1面31とは反対側のバンド本体3の第2面32(他方の面)と、にわたって形成されている。第1面31および第2面32は、帯状のバンド本体3のいわゆる側面ではなく主面である。本実施形態の第1面31は、本発明の「一方の面」に相当する。本実施形態の第2面32は、本発明の「他方の面」に相当する。
【0029】
バンド本体3は、可撓性を有する弾性体により形成されている。バンド本体3の材料としては、可撓性を有する合成樹脂等が挙げられ、より好ましくは塩化ビニル樹脂などが挙げられる。バンド本体3の第1面31には、第1突起部36が設けられている。バンド本体3の第2面32には、第2突起部37が設けられている。第1突起部36および第2突起部37の詳細については、後述する。
【0030】
係止部4は、バンド本体3に固定されており、バンド本体3の孔33と嵌まり合う。具体的には、係止部4は、第1爪部41と、第2爪部42と、を有する。第1爪部41は、バンド本体3の第1面31から外側に向かって突出している。第2爪部42は、バンド本体3の第2面32から第1爪部41とは反対側に向かって突出している。つまり、第1爪部41および第2爪部42は、バンド本体3からみて両側に向かって突出している。なお、係止部4は、バンド本体3に固定されていることには限定されず、バンド本体3に対して脱着可能に設けられていてもよい。この場合には、例えば、係止部4は、バンド本体3とは別に形成された後、バンド本体3の孔33に対して脱着するように形成される。また、係止部4は、必ずしも第1爪部41および第2爪部42を有していなくともよく、1つの爪部を有していてもよい。以下の説明では、係止部4が第1爪部41および第2爪部42を有する場合を例に挙げる。
【0031】
図2に表したように、第1爪部41は、第1基部411と、第1先端部412と、第1溝部413と、を有する。第1溝部413は、第1基部411と第1先端部412との間において窪んだ部分として設けられている。第1溝部413の径のうち最小の径D2は、バンド本体3の孔33の径D1よりも小さい。一方で、第1先端部412の径のうち最大の径D3は、バンド本体3の孔33の径D1以上である。第2爪部42は、第2基部421と、第2先端部422と、第2溝部423と、を有する。第2溝部423は、第2基部421と第2先端部422との間において窪んだ部分として設けられている。第2溝部423の径のうち最小の径D4は、バンド本体3の孔33の径D1よりも小さい。一方で、第2先端部422の径のうち最大の径D5は、バンド本体3の孔33の径D1以上である。
【0032】
前述したように、バンド本体3は、可撓性を有する弾性体により形成されている。そのため、使用者は、バンド本体3の孔33の部分を伸ばしたり縮めたりすることにより、第1爪部41の第1先端部412をバンド本体3の孔33に通し、第1爪部41の第1溝部413をバンド本体3の孔33に嵌めることができる。一方で、使用者は、バンド本体3の孔33の部分を伸ばしたり縮めたりすることにより、バンド本体3の孔33に嵌まっている第1爪部41をバンド本体3の孔33から外すことができる。また、使用者は、バンド本体3の孔33の部分を伸ばしたり縮めたりすることにより、第2爪部42の第2先端部422をバンド本体3の孔33に通し、第2爪部42の第2溝部423をバンド本体3の孔33に嵌めることができる。一方で、使用者は、バンド本体3の孔33の部分を伸ばしたり縮めたりすることにより、バンド本体3の孔33に嵌まっている第2爪部42をバンド本体3の孔33から外すことができる。すなわち、係止部4(第1爪部41および第2爪部42)は、バンド本体3の孔33に対して着脱可能に嵌まり合う。
【0033】
第2爪部42は、バンド本体3の長手方向において第1爪部41の設置位置と同じ位置に設けられている。図1および図2に表した例では、第1爪部41および第2爪部42は、バンド本体3の長手方向における中央部に設けられている。また、図2に表した例では、第2爪部42は、バンド本体3に設けられた貫通孔38を通して第1爪部41と直接的に接続されている。但し、第1爪部41および第2爪部42の設置形態は、これだけには限定されない。第2爪部42は、バンド本体3を介して第1爪部41と間接的に接続され、バンド本体3の長手方向において第1爪部41の設置位置と同じ位置に設けられていてもよい。あるいは、第2爪部42は、バンド本体3の長手方向において第1爪部41とは離れて設けられていてもよい。第2爪部42が第1爪部41と離れて設けられた例については、後述する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る結束バンドの第1使用例を表す平面図である。
図4は、本実施形態に係る結束バンドの第2使用例を表す平面図である。
【0035】
例えば、結束バンドの製造現場において、合成樹脂等の弾性体により形成された帯状のバンド本体を互いに融着させ、輪を形成する場合を例に挙げて、比較例にかかる結束バンドを説明する。このような比較例に係る結束バンドでは、製造現場において、作業者が、結束対象物を結束バンドの輪に通し、結束対象物の所定位置にバンド本体を移動させ配置させるときに、バンド本体とチューブ等の結束対象物とが互いに密着することがある。そうすると、結束対象物の所定位置にバンド本体を移動させ配置させることは困難である。また、術式や、患者と器械との干渉状況などに応じて、予め配置されたバンド本体の位置を変更する必要性が生ずることがある。このような場合に、結束対象物とバンド本体との間の隙間が狭かったり、バンド本体と結束対象物とが互いに密着したりすると、結束対象物に対するバンド本体の位置を臨床現場において自由に変更したり、臨機応変に変更したりすることは困難である。
【0036】
これに対して、本実施形態にかかる結束バンド2によれば、図1および図2に関して前述したように、使用者は、第1爪部41をバンド本体3の孔33に嵌めることができる。また、使用者は、第2爪部42をバンド本体3の孔33に嵌めることができる。図3に表した例では、バンド本体3の第1本体部34に設けられた孔33に第1爪部41が嵌められているとともに、バンド本体3の第2本体部35に設けられた孔33に第2爪部42が嵌められている。図4に表した例では、バンド本体3の第1本体部34に設けられた孔33に第1爪部41が嵌められている一方で、第2爪部42はバンド本体3の孔33には嵌められていない。図1に表したように、第1本体部34は、バンド本体3の一部であって、バンド本体3の長手方向における一方の端部341と中央部(本実施形態では第1爪部41が設けられた部分)との間の部分である。第2本体部35は、バンド本体3の一部であって、バンド本体3の長手方向における他方の端部351と中央部(本実施形態では第2爪部42が設けられた部分)との間の部分である。
【0037】
本実施形態に係る結束バンド2によれば、使用者は、使用現場において、第1爪部41および第2爪部42の少なくともいずれかをバンド本体3の複数の孔33のいずれかに嵌めることにより、結束対象物71、72に対するバンド本体3の位置を自由に変更したり、臨機応変に変更したりすることができる。具体的には、使用者は、術式や、患者と器械との干渉状況などに応じて、結束対象物71、72に対するバンド本体3の位置を臨床現場において適宜設定することができる。また、使用者は、複数の孔33のうちで使用する孔33を適宜選択することにより、結束対象物71、72とバンド本体3との間の隙間を適宜設定することができる。
【0038】
また、第1爪部41および第2爪部42は、バンド本体3からみて互いに反対側へ突出している。そのため、図3に表したように、使用者は、第1本体部34に設けられた複数の孔33のいずれかに第1爪部41を嵌め、第2本体部35に設けられた複数の孔33のいずれかに第2爪部42を嵌めることにより、1つのバンド本体3において2つの輪をバンド本体3に対して互いに反対側に形成することができる。このとき、第1爪部41および第2爪部42がバンド本体3からみて互いに反対側へ突出しているため、一方の輪(第1の輪:第1本体部34により形成された輪)から第1爪部41を介して延びた第1余剰部342と、他方の輪(第2の輪:第2本体部35により形成された輪)から第2爪部42を介して延びた第2余剰部352と、が互いに干渉することは抑えられる。これにより、使用者は、1つのバンド本体3において2つの輪を容易に形成することができる。そのため、使用者は、互いに異なる種類の結束対象物71、72を1つのバンド本体3で結束させることができる。あるいは、使用者は、単数あるいは複数の結束対象物71を一方の輪(第1の輪:第1本体部34により形成された輪)で結束させ、他方の輪(第2の輪:第2本体部35により形成された輪)では結束対象物を結束させなくともよい。この場合には、結束対象物71を一方の輪で結束させた状態で、他方の輪の部分をドレープと一緒に鉗子に噛ませたり、フックに掛けたりすることができる。
【0039】
また、複数の孔33が互いに所定の間隔で設けられているため、使用者は、第1爪部41および第2爪部42に対する孔33の嵌め位置を調整することにより、一方の輪(第1の輪:第1本体部34により形成された輪)と他方の輪(第2の輪:第2本体部35により形成された輪)とによって保持される結束対象物間の距離間隔を再現性良く且つ自由に調整することができる。
【0040】
あるいは、図4に表したように、使用者は、第1本体部34に設けられた複数の孔33のいずれかに第1爪部41を嵌め、第2本体部35に設けられた複数の孔33のいずれにも第2爪部42を嵌めずに、1つのバンド本体3において1つの輪を形成することができる。この場合には、使用者は、単数あるいは複数の結束対象物71を輪(第1の輪:第1本体部34により形成された輪)で結束させ、第2本体部35をドレープと一緒に鉗子に噛ませたり、第2本体部35に設けられた複数の孔33のいずれかをフックに掛けたりすることができる。
【0041】
また、図1および図2に関して前述したように、係止部4(第1爪部41および第2爪部42)は、バンド本体3の孔33に対して着脱可能に嵌まり合う。そのため、使用者は、係止部4をバンド本体3の複数の孔33のいずれかに嵌めた後であっても、バンド本体3の孔33に嵌めた係止部4をバンド本体3の孔33から一旦外すことにより、結束対象物71、72に対するバンド本体3の位置を使用現場において容易に変更することができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る結束バンド2では、第2爪部42は、バンド本体3の長手方向において第1爪部41の設置位置と同じ位置に設けられている。つまり、第1爪部41および第2爪部42は、バンド本体3の長手方向における中央部に設けられている。そのため、係止部4は、第1爪部41と第2爪部42とが互いに別体物としてではなく、第1爪部41と第2爪部42とが互いに結合された一体物として形成可能とされる。これにより、結束バンド2の構造を簡易化することができるとともに、結束バンド2の部品点数を削減することができる。
【0043】
図5は、図1に表した切断面A2−A2における断面図である。
図5(a)は、本実施形態の第1突起部および第2突起部を表す断面図である。図5(b)は、第1変形例の第1突起部および第2突起部を表す断面図である。図5(c)は、第2変形例の第1突起部および第2突起部を表す断面図である。
【0044】
図5(a)に表したように、第1爪部41が設けられた面(本実施形態ではバンド本体3の第1面31)には、第1突起部36が設けられている。第1突起部36は、バンド本体3の第1面31から外側(第1爪部41と同じ側)に向かって第1爪部41よりも低い位置に突出している。つまり、バンド本体3の第1面31と第1突起部36の先端部との間の距離(第1突起部36の高さ)D6は、バンド本体3の第1面31と第1爪部41の先端部との間の距離(第1爪部41の高さ)D8よりも短い(低い)。第2爪部42が設けられた面(本実施形態ではバンド本体3の第2面32)には、第2突起部37が設けられている。第2突起部37は、バンド本体3の第2面32から外側(第2爪部42と同じ側)に向かって第2爪部42よりも低い位置に突出している。つまり、バンド本体3の第2面32と第2突起部37の先端部との間の距離(第2突起部37の高さ)D7は、バンド本体3の第2面32と第2爪部42の先端部との間の距離(第2爪部42の高さ)D9よりも短い(低い)。
【0045】
バンド本体3の長手方向に交差する切断面おいて、第1突起部36および第2突起部37のそれぞれの断面形状は、三角形である。これによれば、第1突起部36および第2突起部37が設けられていない場合と比較すると、バンド本体3と結束対象物71、72とが互いに接触する面積を低減することができる。そのため、バンド本体3と結束対象物71、72とが互いに密着することを抑えることができる。これにより、使用者は、第1爪部41および第2爪部42の少なくともいずれかをバンド本体3の複数の孔33のいずれかに嵌めたままの状態で、結束対象物71、72に対するバンド本体3の位置を使用現場において容易に変更することができる。
【0046】
図5(b)に表した第1変形例では、バンド本体3Aの第1面31には、第1突起部36Aが設けられている。第1突起部36Aは、バンド本体3Aの第1面31から外側(第1爪部41と同じ側)に向かって第1爪部41よりも低い位置に突出している。つまり、バンド本体3Aの第1面31と第1突起部36Aの先端部との間の距離(第1突起部36Aの高さ)D10は、バンド本体3Aの第1面31と第1爪部41の先端部との間の距離(第1爪部41の高さ)D8よりも短い(低い)。バンド本体3Aの第2面32には、第2突起部37Aが設けられている。第2突起部37Aは、バンド本体3Aの第2面32から外側(第2爪部42と同じ側)に向かって第2爪部42よりも低い位置に突出している。つまり、バンド本体3Aの第2面32と第2突起部37Aの先端部との間の距離(第2突起部37Aの高さ)D11は、バンド本体3Aの第2面32と第2爪部42の先端部との間の距離(第2爪部42の高さ)D9よりも短い(低い)。
【0047】
バンド本体3Aの長手方向に交差する切断面おいて、第1突起部36Aおよび第2突起部37Aのそれぞれの断面形状は、矩形である。これによれば、第1突起部36Aおよび第2突起部37Aのそれぞれの先端部の摩耗を抑えつつ、バンド本体3Aと結束対象物71、72とが互いに接触する面積を低減することができる。これにより、第1突起部36Aおよび第2突起部37Aのそれぞれの先端部の摩耗を抑えつつ、図5(a)に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0048】
図5(b)に表した第2変形例では、バンド本体3Bの第1面31には、第1突起部36Bが設けられている。第1突起部36Bは、バンド本体3Bの第1面31から外側(第1爪部41と同じ側)に向かって第1爪部41よりも低い位置に突出している。つまり、バンド本体3Bの第1面31と第1突起部36Bの先端部との間の距離(第1突起部36Bの高さ)D12は、バンド本体3Bの第1面31と第1爪部41の先端部との間の距離(第1爪部41の高さ)D8よりも短い(低い)。バンド本体3Bの第2面32には、第2突起部37Bが設けられている。第2突起部37Bは、バンド本体3Bの第2面32から外側(第2爪部42と同じ側)に向かって第2爪部42よりも低い位置に突出している。つまり、バンド本体3Bの第2面32と第2突起部37Bの先端部との間の距離(第2突起部37Bの高さ)D13は、バンド本体3Bの第2面32と第2爪部42の先端部との間の距離(第2爪部42の高さ)D9よりも短い(低い)。
【0049】
バンド本体3Bの長手方向に交差する切断面おいて、第1突起部36Bおよび第2突起部37Bのそれぞれの断面形状は、半円状である。これによれば、第1突起部36Bおよび第2突起部37Bのそれぞれの先端部と結束対象物71、72との間の摩擦を抑え、第1突起部36Bおよび第2突起部37Bのそれぞれに対する結束対象物71、72の滑りを向上させつつ、バンド本体3Bと結束対象物71、72とが互いに接触する面積を低減することができる。これにより、第1突起部36Bおよび第2突起部37Bのそれぞれの先端部と結束対象物71、72との間の摩擦を抑え、第1突起部36Bおよび第2突起部37Bのそれぞれに対する結束対象物71、72の滑りを向上させつつ、図5(a)に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0050】
なお、第1突起部36、36A、36Bおよび第2突起部37、37A、37Bのそれぞれの延在方向は、図1図5(a)、図5(b)および図5(c)に表した方向(バンド本体3、3A、3Bの長手方向)には限定されない。第1突起部36、36A、36Bおよび第2突起部37、37A、37Bのそれぞれの延在方向は、バンド本体3、3A、3Bの長手方向に交差する方向であってもよい。
【0051】
次に、本実施形態の変形例に係る結束バンドについて説明する。
なお、本実施形態の変形例に係る結束バンドの構成要素が、図1図5に関して前述した本実施形態に係る結束バンド2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0052】
図6は、本実施形態の第1変形例に係る結束バンドを表す斜視図である。
図7は、本変形例に係る結束バンドの使用例を表す平面図である。
【0053】
本変形例に係る結束バンド2Aでは、第1爪部41は、バンド本体3の長手方向における一方の端部341に設けられ、バンド本体3の第1面31から外側に向かって突出している。第2爪部42は、バンド本体3の長手方向における他方の端部351に設けられ、バンド本体3の第2面32から外側に向かって突出している。すなわち、第2爪部42は、バンド本体3の第2面32から第1爪部41とは反対側に向かって突出している。このように、第1爪部41および第2爪部42は、互いにバンド本体3の長手方向における両端部に設けられ、バンド本体3からみて両側に向かって突出している。この点において、本変形例に係る結束バンド2Aは、図1図5に関して前述した本実施形態に係る結束バンド2とは異なる。
【0054】
本変形例に係る結束バンド2Aでは、使用者は、一方の端部341に設けられた第1爪部41をバンド本体3の孔33に嵌めることができ、他方の端部351に設けられた第2爪部42をバンド本体3の孔33に嵌めることができる。図7に表した例では、バンド本体3の第1本体部34に設けられた孔33に第1爪部41が第1面31の側から嵌められているとともに、バンド本体3の第2本体部35に設けられた孔33に第2爪部42が第2面32の側から嵌められている。
【0055】
本変形例に係る結束バンド2Aによれば、第1爪部41および第2爪部42が互いにバンド本体3の両端部に設けられているため、複数の孔33のうちで第1爪部41および第2爪部42のそれぞれを嵌める孔33を選択する幅が広がる。また、図1図5に関して前述した本実施形態に係る結束バンド2の効果と同様の効果が得られる。
【0056】
図8は、本実施形態の第2変形例に係る結束バンドを表す斜視図である。
図9は、本変形例に係る結束バンドの使用例を表す平面図である。
【0057】
本変形例に係る結束バンド2Bでは、第1爪部41は、バンド本体3の長手方向における一方の端部341に設けられ、バンド本体3の第1面31から外側に向かって突出している。第2爪部42は、バンド本体3の長手方向における他方の端部351に設けられ、バンド本体3の第1面31から外側に向かって突出している。すなわち、第2爪部42は、バンド本体3の第1面31から第1爪部41と同じ側に向かって突出している。このように、第1爪部41および第2爪部42は、互いにバンド本体3の長手方向における両端部に設けられ、互いに同じ側に向かって突出している。この点において、本変形例に係る結束バンド2Bは、図1図5に関して前述した本実施形態に係る結束バンド2とは異なる。
【0058】
本変形例に係る結束バンド2Bでは、使用者は、一方の端部341に設けられた第1爪部41をバンド本体3の孔33に嵌めることができ、他方の端部351に設けられた第2爪部42をバンド本体3の孔33に嵌めることができる。図9に表した例では、バンド本体3の第1本体部34に設けられた孔33に第1爪部41が第1面31の側から嵌められているとともに、バンド本体3の第2本体部35に設けられた孔33に第2爪部42が第1面31の側から嵌められている。
【0059】
本変形例に係る結束バンド2Bによれば、第2爪部42が第1爪部41と同じ側に向かって突出しているため、第1爪部41と孔33との嵌め合いにより形成される輪(第1の輪)と、第2爪部42と孔33との嵌め合いにより形成される輪(第2の輪)と、をバンド本体3に対して互いに同じ側に形成することができる。すなわち、使用者は、例えば、バンド本体3の第1本体部34に設けられた複数の孔33のいずれかに第1爪部41を嵌め、バンド本体3の第2本体部35に設けられた複数の孔33のいずれかに第2爪部42を嵌めることにより、1つのバンド本体3において2つの輪をバンド本体3に対して互いに同じ側に形成することができる。
【0060】
図10は、本発明の実施形態に係る結束バンドの使用方法を表すフローチャートである。
本実施形態に係る結束バンドの使用方法は、図1図9に関して前述した結束バンド2、2A、2Bの使用方法である。
【0061】
まず、ステップS11において、バンド本体3の第1本体部34に設けられた複数の孔33のいずれかに第1爪部41を嵌めることにより第1の輪を形成する。続いて、ステップS12において、バンド本体3の第2本体部35に設けられた複数の孔33のいずれかに第2爪部42を嵌めることにより第2の輪を形成する。続いて、ステップS13において、第1爪部41を嵌める孔33を適宜選択する。また、ステップS14において、第2爪部42を嵌める孔33を適宜選択する。すなわち、ステップS13およびステップS14において、第1爪部41および第2爪部42に対する孔33の嵌め位置を調整する。続いて、ステップS15において、第1の輪により保持される結束対象物71と、第2の輪により保持される結束対象物72と、の互いの距離間隔を設定する。すなわち、ステップS13およびステップS14において、第1爪部41および第2爪部42に対する孔33の嵌め位置を調整することにより、ステップS15において、第1の輪により保持される結束対象物71と、第2の輪により保持される結束対象物72と、の互いの距離間隔を設定する。
【0062】
本実施形態に係る結束バンドの使用方法によれば、使用者は、結束対象物71、72に対するバンド本体3の位置や、第1の輪および第2の輪により保持される結束対象物71、72の互いの距離間隔を自由に変更したり、臨機応変に変更したりすることができる。例えば、使用現場が患者の手術や治療などが行われる臨床現場である場合には、使用者は、術式や、患者と器械との干渉状況などに応じて、結束対象物71、72に対する帯状のバンド本体3の位置や、第1の輪および第2の輪により保持される結束対象物71、72の互いの距離間隔を臨床現場において適宜設定することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0064】
2・・・結束バンド、 3、3A、3B・・・バンド本体、 4・・・係止部、 31・・・第1面、 32・・・第2面、 33・・・孔、 34・・・第1本体部、 35・・・第2本体部、 36、36A、36B・・・第1突起部、 37、37A、37B・・・第2突起部、 38・・・貫通孔、 41・・・第1爪部、 42・・・第2爪部、 71、72・・・結束対象物、 341・・・端部、 342・・・第1余剰部、 351・・・端部、 352・・・第2余剰部、 411・・・第1基部、 412・・・第1先端部、 413・・・第1溝部、 421・・・第2基部、 422・・・第2先端部、 423・・・第2溝部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10