(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の抵抗素子を配線パターンによって並列に接続して、複数の抵抗素子の合成抵抗に基づいて電流を検出する電流検出部を回路基板上に設ける場合、各抵抗素子に電流が流れる経路のインピーダンスに差があると、高精度な電流検出を行うことができない。例えば、配線パターン上に設けられた電位検出用の端子と各抵抗素子との配置によっては、電位検出用の端子から各抵抗素子を経由して電流が流れる経路のインピーダンスに差がある場合があり、このような場合には、高精度な電流検出を行うことができない。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、複数の抵抗素子を並列に接続した電流検出部による検出精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、基板本体と、前記基板本体に形成された配線パターンを流れる被検出電流を検出する電流検出部と、を有する回路基板であって、前記電流検出部は、第1電位検出部が設けられた第1配線領域、および、第2電位検出部が設けられた第2配線領域を備えた電流検出用配線パターンと、前記第1配線領域と前記第2配線領域を介して並列に接続された複数の抵抗素子と、を備え、
前記複数の抵抗素子は、最も第1方向の一方側に配置される第1抵抗素子と、最も前記第1方向の他方側に配置される第2抵抗素子を含み、前記第1電位検出部と前記第2電位検出部との間を前記被検出電流が流れる経路として、
前記第1抵抗素子を経由する第1経路、および、前記第2抵抗素子を経由する第2経路を備え、
前記第1経路は、前記第1電位検出部から前記第1抵抗素子までの第1経路第1部分と、前記第1抵抗素子から前記第2電位検出部までの第1経路
第2部分を備え、前記第2経路は、前記第1電位検出部から前記第2抵抗素子までの第2経路第1部分と、前記第2抵抗素子から前記第2電位検出部までの第2経路第2部分を備え、前記第1経路第1部分と前記第2経路第1部分との経路長の大小関係が、前記第1経路第2部分と前記第2経路第2部分との経路長の大小関係と逆になっていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1電位検出部と第2電位検出部との間の電位差と、複数の抵抗素子の合成抵抗から被検出電流を求めることができる。また、
第1抵抗素子および第2抵抗素子に対して第1電位検出部側の経路部分の経路長の大小関係と、第1抵抗素子および第2抵抗素子に対して第2電位検出部側の経路部分の経路長の大小関係とが逆転する。これにより、第1電位検出部側の経路部分の経路長の差と、第2電位検出部側の経路部分の経路長の差が、両経路部分を合計したときに相殺されるので、複数の経路のインピーダンスの違いに起因して、複数の経路を流れる電流に差が生じ、その結果生じる電流値の検出誤差を少なくすることができる。従って、精度良く電流を検出することができる。また、複数の経路のインピーダンスの違いに起因する検出誤差が、抵抗素子の部品特性に起因する検出誤差を上回らないため、抵抗素子の部品特性を無駄にすることがない。従って、高精度な抵抗素子を用いた場合には、その部品性能を有効に使用して精度良く電流を検出することができる。
【0008】
本発明において、
前記第1配線領域と前記第2配線領域は、前記第1方向と直交する第2方向に対向し、前記第1抵抗素子および前記第2抵抗素子のそれぞれは、前記第1配線領域と前記第2配線領域の間を架け渡すように配置される構成を採用することができる。また、本発明において、前記第1電位検出部は、前記第1配線領域上において、前記第2抵抗素子よりも前記第1抵抗素子に近い位置に設けられ、前記第2電位検出部は、前記第2配線領域上において、前記第1抵抗素子よりも前記第2抵抗素子に近い位置に設けられていることが望ましい。このような配置を採用すると、第1抵抗素子および第2抵抗素子に対して第1電位検出部側の経路部分の経路長の大小関係と、第1抵抗素子および第2抵抗素子に対して第2電位検出部側の経路部分の経路長の大小関係とが逆転する。これにより、第1電位検出部側の経路部分の経路長の差と、第2電位検出部側の経路部分の経路長の差が、両経路部分を合計したときに相殺される。従って、第1抵抗素子を経由する電流の経路と第2抵抗素子を経由する電流の経路のインピーダンスの差を小さくすることができる。よって、精度良く電流を検出することができる。
【0009】
また、このような位置に第1電位検出部および第2電位検出部を配置した場合には、第1配線領域は第1抵抗素子側の領域のみを広くすればよく、第2配線領域は第2抵抗素子側の領域のみを広くすればよい。従って、不要な領域には配線パターンを形成しないようにすることができるので、電流検出用配線パターンの面積を小さくすることができる。よって、電流検出部の基板専有面積を小さくすることができ、回路基板を小型化することができる。また、回路基板上における回路配置の自由度を大きくすることができる。よって、回路基板の設計の自由度が増大する。
【0010】
本発明において、上記のような配置を実現できる構成を、以下のように規定することができる。すなわち
、前記第1電位検出部と前記第2電位検出部は、前記第1抵抗素子の前
記第1方向の一方側の角部のうち、前記第1方向と直交する第2方向の一方側に位置する第1角部と、前記第2抵抗素子の前記第1方向の他方側の角部のうち、前記第2方向の他方側に位置する第2角部とを結ぶ対角線の中点を基準として、前記中点より前記第1方向の一方側で、且つ、前記中点より前記第2方向の一方側の第1対角領域に前記第1電位検出部が配置され、前記中点より前記第1方向の他方側で、且つ、前記中点より前記第2方向の他方側の第2対角領域に前記第2電位検出部が配置されている構成を採用することができる。
【0011】
この配置では、複数の抵抗素子の配置領域の対角線の中点を基準として、対角方向の一方側と他方側に第1電位検出部と第2電位検出部が配置されるようになっている。このような配置では、第1電位検出部側と第2電位検出部側で、第1抵抗素子を通る経路と第2抵抗素子を通る経路の経路長の大小関係が逆転する。従って、2つの経路のインピーダンスの差を小さくすることができ、精度良く電流を検出することができる。更に、このような配置では、対角方向の一方側と他方側の領域のみを広くすればよい。従って、電流検出用配線パターンの面積を小さくすることができる、よって、電流検出部の基板専有面積を小さくすることができ、回路基板を小型化することができる。
【0012】
この場合に、前記第1電位検出部と前記第2電位検出部は、前記中点を基準として点対称な位置に設けられていることが望ましい。このようにすると、第1抵抗素子を通る経路と第2抵抗素子を通る経路のインピーダンスを同一もしくはほぼ同一にすることができる。従って、精度良く電流を検出することができる。
【0013】
本発明において、前記第1電位検出部と前記第2電位検出部の少なくとも一方には、前記基板本体を貫通するスルーホールが形成されていることが望ましい。このようにすると、電位検出用の端子を接続するスルーホールの位置を変更することによって電流が流れる
経路の経路長を調節して、インピーダンスを調節することができる。従って、予め複数のスルーホールを形成しておけば、配線パターンを変更することなく、電流が流れる経路のインピーダンスを調節することができる。また、基板本体の一方の面と他方の面に形成した配線パターンをスルーホールによって導通させることができるため、回路基板の両面に抵抗素子を配置して、電流検出部を構成することができる。更に、基板本体を多層基板とした場合には、基板表面以外の層にも配線パターンを形成してスルーホールを介して導通させることができる。従って、配線パターンの形成面積を広くすることができる。
【0014】
本発明において、前記基板本体の一方の面および他方の面に前記抵抗素子が配置されていることが望ましい。このようにすると、基板本体の片面に全ての抵抗素子を配置する場合と比較して、電流検出部の基板専有面積を小さくすることができる。
【0015】
この場合に、前記一方の面と前記他方の面に前記抵抗素子が同一数ずつ配置されていることが望ましい。このようにすると、表裏で抵抗素子の数が異なる場合と比較して、各抵抗素子を経由する経路のインピーダンスの差を小さくすることができる。また、前記一方の面と前記他方の面における前記抵抗素子の配置が同一であることが望ましい。このようにすると、簡単な配置で、各抵抗素子を経由する経路のインピーダンスの差を小さくすることができる。従って、簡単に検出精度を向上させることができる。
【0016】
本発明において、前記複数の抵抗素子は、公称抵抗値が同一であることが望ましい。このようにすると、公称抵抗値が異なる複数の抵抗素子を使用して電流検出部を構成する場合と比較して、より簡単に被検出電流を求めることができる。
【0017】
次に、本発明のモータ制御装置は、上記の回路基板と、3相の交流電流を供給するインバータ回路と、前記回路基板上の配線パターンを介して前記インバータ回路と接続され、前記インバータ回路から供給される3相の電流をサーボモータのコイルへ供給する出力端子と、を有し、前記電流検出部は、前記インバータ回路と前記出力端子との間に直列に接続され、前記3相のうちの少なくとも2相の電流を検出することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、インバータ回路からサーボモータへ供給される電流を検出する電流検出部を備えているため、サーボモータへ供給される電流値を監視することができる。また、電流検出部は精度良く電流を検出できる。従って、検出した電流値に基づいてフィードバック制御を行うことができ、精度良くサーボモータを制御することができる。また、サーボモータを駆動するための3相の電流の合計値は0になるため、3相のうちの2相の電流を検出すれば、残りの1相の電流値は検出した2相の電流値から求めることができる。従って、3相の電流をそれぞれ電流検出部によって検出する場合と比較して、電流検出部の数が少なくて済む。よって、部品点数および組立工数を削減でき、コスト削減および小型化に有利である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1電位検出部と第2電位検出部との間の電位差と、複数の抵抗素子の合成抵抗から被検出電流を求めることができる。また、
第1抵抗素子および第2抵抗素子に対して第1電位検出部側の経路部分の経路長の大小関係と、第1抵抗素子および第2抵抗素子に対して第2電位検出部側の経路部分の経路長の大小関係とが逆転する。これにより、第1電位検出部側の経路部分の経路長の差と、第2電位検出部側の経路部分の経路長の差が、両経路部分を合計したときに相殺されるので、複数の経路のインピーダンスの違いに起因して、複数の経路を流れる電流に差が生じ、その結果生じる電流値の検出誤差が、抵抗素子の抵抗値許容差を上回ることを回避することができる。従って、抵抗素子の部品特性に起因する検出誤差を上回る検出誤差が発生するおそれが少ないので、精度良く電流を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した回路基板およびモータ制御装置の実施形態を説明する。本形態のモータ制御装置は、サーボモータを制御するために用いられるサーボアンプである。
【0022】
図1は本発明を適用したモータ制御装置1を前面側(斜め右上方)から見た斜視図である。
図1の説における「右」は、モータ制御装置1を前面側から見た場合の「右」である。本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向であり、X方向はモータ制御装置1の幅方向(左右方向)であり、Y方向はモータ制御装置1の上下方向であり、Z方向はモータ制御装置1の前後方向である。また、X方向の一方側(右側)を+X、他方側(左側)を−Xで示し、Y方向の一方側(上側)を+Y、他方側(下側)を−Yで示し、Z方向の一方側(前側)を+Z、他方側(後側)を−Zで示す。
【0023】
(モータ制御装置)
図1に示すように、モータ制御装置1は全体として直方体状である。モータ制御装置1は、幅方向Xの略中央に配置されるフレーム10と、フレーム10に固定されるカバー部材20を備える。カバー部材20は、フレーム10に対して幅方向Xの一方側(+X方向)に配置される第1カバー部材21と、フレーム10に対して幅方向Xの他方側(−X方向)に配置される第2カバー部材22と、第1カバー部材21の前方(+Z方向)に配置される第3カバー部材23を備える。モータ制御装置1の前面の+X方向側(右側)の部分にはコネクタ部24が設けられている。また、モータ制御装置1の前面の−X方向側(左側)の部分には開閉蓋25が設けられている。開閉蓋25の内側には、出力用の端子部(
図3参照)が設けられている。
【0024】
フレーム10は、モータ制御装置1の幅方向Xの中央に配置されるフレーム本体11と、フレーム本体11の後端(−Z方向の端部)に設けられた矩形の背面板12を備える。フレーム本体11にはフック13が形成され、第1カバー部材21および第2カバー部材22は、フック13に対応する位置に形成された係合穴27を備える。第1カバー部材21および第2カバー部材22は、フック13と係合穴27からなるフック機構によってフレーム10に固定される。また、第3カバー部材23は、第1カバー部材21に形成された係合穴28と係合されるフック231を備えており、係合穴28とフック231からなるフック機構によって第1カバー部材21に対して第3カバー部材23が固定される。なお、フレーム10とカバー部材20との固定構造はフック機構以外の構造であってもよい。
【0025】
図2は第1カバー部材21の側から見たモータ制御装置1の分解斜視図である。
図2に示すように、第1カバー部材21の内側には、フレーム本体11と一体に形成された放熱フィン30および第1基板40が配置されている。第1基板40は、放熱フィン30と第3カバー部材23との間に配置され、フレーム本体11から+X方向に突出するボス部15にねじ止めされている。また、第2カバー部材22の内側には、第2基板(図示省略)が配置されている。第2基板は、フレーム本体11から−X方向に突出するボス部(図示省略)にねじ止めされている。
【0026】
フレーム本体11の−X方向を向く面には、発熱電子部品が固定されている。本形態で
は、発熱電子部品として、後述する整流回路61を構成するダイオードブリッジ43、および、インバータ回路63を構成するIGBTトランジスタ42を備えている。放熱フィン30は、フレーム本体11から発熱電子部品が固定される側とは反対側に突出する。
図2に示すように、放熱フィン30の−Y方向側には冷却用のファン32が配置されている。ファン32からの冷却風は+Y方向に送風され、放熱フィン30を経由してモータ制御装置1の天面から排出される。
【0027】
(制御系)
図3はモータ制御装置1およびサーボモータ2のブロック図である。モータ制御装置1は、開閉蓋25の内側に設けられた端子部を介して、サーボモータ2にU相、V相、W相の3相の電流を供給する。サーボモータ2は出力軸の回転位置を検出するエンコーダ3を備えており、エンコーダ信号は、コネクタ部24を介してモータ制御装置1へ入力される。
【0028】
第1基板40は制御基板である。第1基板40には、制御素子であるMCU51およびゲートドライブIC52を備える制御回路が設けられている。MCU51には、サーボモータ2のエンコーダ3からエンコーダ信号が入力されるとともに、サーボモータ2に供給される3相の電流のうちの2相の電流を検出する電流検出部70からの電流検出信号が入力される。後述するように、電流検出部70は抵抗素子の両端側の2箇所の電位を検出するように構成されている。電流検出部70からの電流検出信号は、A/D変換器80を経由してMCU51に入力される。また、MCU51には、外部からの制御命令がコネクタ部24を介して入力される。
【0029】
第2基板(図示省略)はドライバ基板である。第2基板には、商用交流電源60に接続される整流回路61と、整流回路61に接続される平滑コンデンサ62と、平滑コンデンサ62に対して直列に接続されるインバータ回路63と、インバータ回路63からサーボモータ2へ供給される電流を検出する電流検出部70が設けられている。整流回路61は、上述したダイオードブリッジ43により構成されており、商用交流電源60から共有される電源電流を整流して平滑コンデンサ62にチャージする。インバータ回路63は、6個のIGBTトランジスタ42と、各IGBTトランジスタ42に並列接続される環流ダイオード46を備える。
【0030】
第1基板40上に設けられたMCU51は、エンコーダ信号および電流検出信号に基づき、ゲートドライブIC52へPWM信号を供給する。ゲートドライブIC52は、PWM信号に基づき、ゲート駆動信号をインバータ回路63へ供給する。これにより、IGBTトランジスタ42のスイッチング動作が行われ、U相、V相、W相のモータ駆動電流が生成される。なお、サーボモータ制御回路を構成するにあたって、インバータ回路63をモジュール化したIPM(インテリジェントパワーモジュール)を用いることもできる。
【0031】
(電流検出部)
モータ制御装置1の端子部には、サーボモータ2のコイルと接続される出力端子29U、29V、29W(
図3参照)が設けられている。また、第2基板(図示省略)は、基板本体と、基板本体の表面に形成された配線パターンを備えており、出力端子29U、29V、29Wは、第2基板上の配線パターンを介してインバータ回路63と接続され、インバータ回路63からサーボモータ2のコイルに対してU相、V相、W相のモータ駆動電流が供給される。第2基板には、出力端子29U、29V、29Wとインバータ回路63との間に直列に挿入されてモータ駆動電流を検出する電流検出部70が設けられている。すなわち、第2基板は、本発明を適用した回路基板である。電流検出部70は、第2基板上の2箇所に設けられ、3相のモータ駆動電流のうちの2相の電流値を検出する。本形態では、U相とV相の電流を検出するが、検出する2相は、U相とV相でなくてもよい。3相
のモータ駆動電流の総和は0であるため、MCU51は、2相の電流値から残りの1相の電流値を算出する。
【0032】
モータ制御装置1は、電流検出部70として、U相のモータ駆動電流を検出する電流検出部70Uと、V相のモータ駆動電流を検出する電流検出部70Vを備える。電流検出部70U、70Vは、いずれも、第2基板上に形成された電流検出用配線パターンおよび複数の抵抗素子を備えている。複数の抵抗素子は抵抗値が同一もしくは同等程度であり、電流検出用配線パターンによって並列に接続されている。
【0033】
図4は電流検出部70を模式的に示す説明図であり、
図4(a)〜
図4(c)はそれぞれ、電流検出部70の形態の例である。電流検出部70は、
図4(a)〜
図4(c)のいずれの形態であってもよい。また、
図4(a)〜
図4(c)に示す形態は、抵抗素子の数が2であるが、抵抗素子の数は3以上であってもよい。更に、電流検出部は、回路基板の一方の面と他方の面に設けられていてもよい。例えば、回路基板の一方の面と他方の面にそれぞれ電流検出用配線パターンおよび抵抗素子を設けて、回路基板を貫通するスルーホールを介して複数の抵抗素子を並列に接続した形態であってもよい。
【0034】
図4(a)〜
図4(c)に示す電流検出部70は、第1方向RXに配列される2個の抵抗素子(第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2)と、第1方向RXと直交する第2方向RYに対向する第1配線領域71および第2配線領域72を備える。第1配線領域71および第2配線領域72は電流検出用配線パターンを構成している。第1配線領域71には、第1電位検出部73が設けられている。また、第2配線領域72には、第2電位検出部74が設けられている。第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2は、第1配線領域71および第2配線領域72によって並列に接続されている。
【0035】
電流検出部70は、第1電位検出部73と第2電位検出部74との間を電流が流れるように回路基板上の配線パターンに接続される。電流検出部70は、第1電位検出部73と第2電位検出部74との間を電流が流れる経路として、第1抵抗素子R1を経由する第1経路C1、および、第2抵抗素子R2を経由する第2経路C2を備えている。電流検出部70は、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2の抵抗値に応じた所定の合成抵抗を持つため、第1電位検出部73と第2電位検出部74の電位差と合成抵抗とに基づいて電流値を計測することができる。電流検出部70は、並列に接続される複数の抵抗素子の抵抗値が同一の場合には、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2による電流損失(発熱)が均等になるため、素子選定が容易であり、検出精度の計算も容易である。このため、電流値の計測が最も容易である。従って、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2として、抵抗値が同一のものを用いることが望ましい。
【0036】
電流検出部70は、第1抵抗素子R1を経由する第1経路C1のインピーダンスと、第2抵抗素子R2を経由する第2経路C2のインピーダンスが等しい場合に、2つの経路に均等に電流を流すことができる。均等に電流が流れると、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2を並列に接続した場合の合成抵抗に基づいて、最も精度良く電流値を計測することができる。そのため、電流検出部70は、第1経路C1のインピーダンスと、第2経路C2のインピーダンスとの差を小さくするために、第1経路C1の経路長と、第2経路C2の経路長との差が小さい構成を採用している。例えば、第1経路C1のインピーダンスと、第2経路C2のインピーダンスとの差が、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2の公称抵抗値に対する抵抗値許容差の範囲内となるように構成されている。本形態の電流検出部70は、第1経路C1のインピーダンスと、第2経路C2のインピーダンスとの差に起因する電流値の計測誤差が、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2の抵抗値許容差に起因する計測誤差以下である。
【0037】
図4(a)の例では、第1経路C1は、第1電位検出部73から第1抵抗素子R1までの第1経路部分C11と、第1抵抗素子R1から第2電位検出部74までの第2経路部分C12を備える。また、第2経路C2は、第1電位検出部73から第2抵抗素子R2までの第1経路部分C21と、第2抵抗素子R2から第2電位検出部74までの第2経路部分C22を備える。また、第1電位検出部73は、第1配線領域71上において、第2抵抗素子R2よりも第1抵抗素子R1に近い位置に配置されている。一方、第2電位検出部74は、第2配線領域72上において、第1抵抗素子R1よりも第2抵抗素子R2に近い位置に配置されている。
【0038】
上記の4箇所の経路部分は、第1経路部分C11と第1経路部分C21との経路長の大小関係が、第2経路部分C12と第2経路部分C22との経路長の大小関係と逆になっている。従って、第1経路部分C11と第1経路部分C21とのインピーダンスの大小関係が、第2経路部分C12と第2経路部分C22とのインピーダンスの大小関係と逆になっている。このように、第1経路C1と第2経路C2において、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2に対して第1電位検出部73側と第2電位検出部74側で経路長の大小関係が逆になっていれば、第1電位検出部73側と第2電位検出部74側の経路部分のインピーダンスを合計した際に、インピーダンスの差の少なくとも一部が相殺される。従って、第1経路C1全体のインピーダンスと、第2経路C2全体のインピーダンスとの差が小さいので、第1経路C1と第2経路C2のインピーダンスの差に起因する電流値の計測誤差が小さい。
【0039】
図4(a)の例では、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2に対して第1電位検出部73側と第2電位検出部74側で経路長の大小関係を逆転させるために、第1電位検出部73と第2電位検出部74は、以下のように配置される。すなわち、第1抵抗素子R1と第1抵抗素子R1の配置領域は全体として矩形であり、その対角位置の角部(第1角部E1と第2角部E2)の中点Dを基準として、対角方向に位置する第1対角領域F1と第2対角領域F2の一方に第1電位検出部73が配置され、他方に第2電位検出部74が配置されている。
【0040】
言い換えると、第1抵抗素子R1の第1方向RXの一方側RX1の縁に設けられた2箇所の角部のうちで第2方向RYの一方側RY1に位置する第1角部E1と、第2抵抗素子R2の第1方向RXの他方側RX2の縁に設けられた2箇所の角部のうちで第2方向RYの他方側RY2に位置する第2角部E2とを結ぶ対角線の中点Dを基準として、この中点Dより第1方向RXの一方側RX1で、且つ、中点Dより第2方向RYの一方側RY1の第1対角領域F1に第1電位検出部73が配置されている。また、中点Dより第1方向RXの他方側RX2で、且つ、中点Dより第2方向RYの他方側RY2の第2対角領域F2に第2電位検出部74が配置されている。
【0041】
このように、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2が配置される矩形領域の対角線の中点Dを基準として対角方向に位置する領域に第1電位検出部73と第2電位検出部74を配置すれば、第1経路C1の経路長と、第2経路C2の経路長の差を小さくすることができる。従って、第1経路C1と第2経路C2のインピーダンスの差を小さくすることができる。
【0042】
図4(b)の例は、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2が第2方向RYにずれた位置に配置されている。このような配置であっても、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2が配置される領域の対角位置(第1角部E1と第2角部E2)の中点Dを基準として、対角方向に位置する第1対角領域F1と第2対角領域F2の一方に第1電位検出部73を配置し、他方に第2電位検出部74を配置することができる。従って、
図4(a)の例と同様に、第1経路C1と第2経路C2の経路長の差を小さくすることができ、第1経路C1と
第2経路C2のインピーダンスの差を小さくすることができる。
【0043】
図4(a)、
図4(b)の形態では、第1配線領域71と第2配線領域72は、第1電位検出部73を配置した第1対角領域F1、および、第2電位検出部74を配置した第2対角領域F2に拡がっているが、第1電位検出部73および第2電位検出部74を配置していない側の対角領域(第3対角領域G1および第4対角領域G2)では、電位検出部を設けるために配線パターンを設ける必要がない。従って、第1配線領域71と第2配線領域72は、第3対角領域G1と第4対角領域G2には拡がっておらず、第3対角領域G1と第4対角領域G2では、抵抗素子の側に凹んだ形状となっている。従って、電流検出部70の第2基板上における専有面積が小さい。
【0044】
図4(c)に示す電流検出部70は、第1電位検出部73および第2電位検出部74に、基板本体を貫通する複数のスルーホール75が形成されている。このように、予め複数のスルーホール75を形成しておけば、配線パターンを変更することなく、電位差の検出位置を調節することができる。従って、電流検出部70の形成後に第1経路C1と第2経路C2のインピーダンスを調節することができる。また、スルーホール75によって回路基板の一方の面と他方の面に設けられた配線パターンを導通させることができる。従って、複数の抵抗素子を回路基板の一方の面と他方の面に配置して、これらを並列に接続した電流検出部70を構成することができる。更に、回路基板として多層基板を用いた場合には、回路基板の表面に設けられた配線パターンや抵抗素子を、内部の層に設けられた配線パターンと導通させることができる。従って、回路基板を小型化できる。なお、スルーホール75は、第1電位検出部73と第2電位検出部74の一方のみに設けられていてもよい。
【0045】
図4(a)〜
図4(c)の形態では、中点Dを基準として点対称な位置に第1電位検出部73と第2電位検出部74が配置されている。このような配置では、第1経路C1と第2経路C2の経路長が同一もしくはほぼ同一である。従って、第1経路C1と第2経路C2のインピーダンスの差に起因する計測誤差を小さくすることができる。
【0046】
図5は電流検出誤差を示すグラフである。
図5において、実線で示すグラフH1は、比較例の電流検出部(図示省略)の電流検出誤差を示す。比較例の電流検出部は、
図4(c)の例で示した第2電位検出部74が第2対角領域F2に設けられているものの、第1電位検出部73は、第1対角領域F1ではなく、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2からほぼ等しい距離の位置に設けられたものである。また、破線で示すグラフH2は、
図4(c)に示す電流検出部70の電流検出誤差を示す。
図5のデータから、第1電位検出部73を対角領域に移動させたことによって、電流検出誤差が非常に小さくなることがわかる。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上のように、本形態のモータ制御装置1の第2基板は、被検出電流が流れる回路パターン(例えば、モータ駆動電流が流れる回路パターン)と、被検出電流を検出する電流検出部70を備えており、電流検出部70は、第1配線領域71と第2配線領域72を介して並列に接続された複数の抵抗素子(例えば、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2)を備えている。従って、第1配線領域71に設けられた第1電位検出部73と、第2配線領域72に設けられた第2電位検出部74との間の電位差と、複数の抵抗素子の合成抵抗から被検出電流を求めることができる。また、電流検出部70を構成する複数の抵抗素子の抵抗値(公称抵抗値)が同一であれば、抵抗値が異なる複数の抵抗素子を使用して電流検出部70を構成する場合と比較して、より簡単に被検出電流を求めることができる。
【0048】
また、本形態の電流検出部70は、複数の抵抗素子を経由して電流が流れる複数の経路
(例えば、第1経路C1と第2経路C2)を備えており、これら複数の経路のインピーダンスの差が、電流検出部70を構成する抵抗素子の公称抵抗値に対する抵抗値許容差の範囲内となっている。従って、複数の経路のインピーダンスの違いに起因して、複数の経路を流れる電流に差が生じることによる電流値の検出誤差を少なくすることができる。また、複数の経路のインピーダンスの違いに起因する検出誤差が、抵抗素子の部品特性に起因する検出誤差を上回らないため、抵抗素子の部品特性を無駄にすることがない。従って、高精度な抵抗素子を用いた場合には、その部品性能を有効に使用して精度良く電流を検出することができる。
【0049】
具体的には、本形態では、第1電位検出部73は、第1配線領域71上において、第2抵抗素子R2よりも第1抵抗素子R1に近い位置に設けられ、第2電位検出部74は、第2配線領域72上において、第1抵抗素子R1よりも第2抵抗素子R2に近い位置に設けられている。これにより、第1経路C1と第2経路C2は、第1電位検出部73側の経路部分の経路長の差と、第2電位検出部74側の経路部分の経路長の差が、両経路部分を合計したときに少なくとも一部が相殺される。従って、第1経路C1と第2経路C2のインピーダンスの差を小さくすることができる。
【0050】
また、この配置は、以下のように規定することもできる。すなわち、電流検出部70は、最も第1方向RXの一方側RX1に配置される第1抵抗素子R1と、最も第1方向RXの他方側RX2に配置される第2抵抗素子R2を含み、第1電位検出部73と第2電位検出部74は、第1抵抗素子R1の第1方向RXの一方側RX1の角部のうち、第1方向RXと直交する第2方向RYの一方側RY1に位置する第1角部E1と、第2抵抗素子R2の第1方向RXの他方側RX2の角部のうち、第2方向RYの他方側RY2に位置する第2角部E2とを結ぶ対角線の中点Dを基準として、この中点Dより第1方向RXの一方側RX1で、且つ、中点Dより第2方向RYの一方側RY1の第1対角領域F1に第1電位検出部73が配置され、中点Dより第1方向RXの他方側RX2で、且つ、中点Dより第2方向RYの他方側RY2の第2対角領域F2に第2電位検出部74が配置されている。このように、複数の抵抗素子の配置領域の対角線の中点Dを基準として、対角方向の一方側と他方側に第1電位検出部73と第2電位検出部74を配置することにより、第1経路C1と第2経路C2の経路長の差を小さくすることができ、第1経路C1と第2経路C2のインピーダンスの差を小さくすることができる。
【0051】
特に、第1電位検出部73と第2電位検出部74が、中点Dを基準として点対称な位置に設けられていれば、第1抵抗素子R1を通る第1経路C1と第2抵抗素子R2を通る第2経路C2のインピーダンスを同一にすることができる。この場合には、第1経路C1と第2経路C2の経路長の差に起因する検出誤差が発生しない。
【0052】
また、本形態のように、第1抵抗素子R1寄りに第1電位検出部73を配置し、第2抵抗素子寄りに第2電位検出部74を配置する場合、第1配線領域71は第1抵抗素子R1側の領域のみを広くすればよく、第2配線領域72は第2抵抗素子R2側の領域のみを広くすればよい。従って、配線パターンが不要な領域に配線パターンを形成しないようにすることにより、電流検出用配線パターンの面積を小さくすることができる。よって、電流検出部70の基板専有面積を小さくすることができ、回路基板を小型化することができる。あるいは、回路基板上における回路配置の自由度を大きくすることができ、回路基板の設計の自由度を増大させることができる。
【0053】
また、電流検出部70は、第1電位検出部73と第2電位検出部74に、基板本体を貫通するスルーホール75が形成されている形態を採用することができる。電位を検出する位置に予め複数のスルーホール75を形成しておけば、配線パターンを変更することなく、電流が流れる経路のインピーダンスを調節することができる。更に、基板本体を多層基
板とした場合には、基板表面以外の層にも配線パターンを形成してスルーホール75を介して導通させることができるので、配線パターンの形成面積を広くすることができる。
【0054】
また、基板本体にスルーホール75を形成する場合には、基板本体の両面に抵抗素子を配置してスルーホール75を介して並列に接続して電流検出部70を構成することができ、この場合には、基板本体の片面に全ての抵抗素子を配置する場合と比較して、電流検出部の基板専有面積を小さくすることができる。また、基板本体の両面に抵抗素子を同一数ずつ配置した場合には、簡単な配置で、各抵抗素子を経由する経路のインピーダンスの差を小さくすることができる。従って、簡単に検出精度を向上させることができる。
【0055】
本形態のモータ制御装置1の第2基板には、3相のモータ駆動電流を供給するインバータ回路63が搭載されており、電流検出部70として、インバータ回路63と、3相のうちの2相のモータ駆動電流を出力する出力端子29U、29Vとの間に直列に接続される電流検出部70U、70Vが設けられている。従って、サーボモータ2へ供給される電流値を精度良く検出できるため、精度良くサーボモータを制御することができる。また、3相のうちの2相の電流のみを検出して残りの1相の電流値は検出した2相の電流値から求めるため、3相の電流をそれぞれ電流検出部70によって検出する場合と比較して、電流検出部70の数が少なくて済む。よって、部品点数および組立工数を削減でき、コスト削減および小型化に有利である。
【0056】
(他の実施形態)
上記形態は、モータ駆動電流を検出する電流検出部70を備えた回路基板に本発明を適用したものであるが、電流検出部70は、モータ駆動電流以外の電流を検出するために用いることもできる。