特許第6989329号(P6989329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989329
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】電線の製造方法、及び、電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/32 20060101AFI20211220BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20211220BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20211220BHJP
   H01B 7/282 20060101ALI20211220BHJP
   H01B 13/26 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   H01B13/32
   H01B7/18 C
   H01B7/04
   H01B7/282
   H01B7/18 H
   H01B13/26 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-186831(P2017-186831)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-61897(P2019-61897A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 英訓
(72)【発明者】
【氏名】長澤 憲三
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−103176(JP,A)
【文献】 特開2012−138187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/32
H01B 7/18
H01B 7/04
H01B 7/282
H01B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、前記線心撚体を覆うシースと、を備えた電線の製造方法であって、
前記線心撚体を形成する工程と、
前記線心撚体の外周に、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を螺旋状に隙間が形成されるように、且つ、前記隙間が前記第一保持部材の幅の1/3となるように、螺旋巻きする工程と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側を前記第一保持部材に重ねて前記螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする工程と、
シース材料を、前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆う管形状を有するように押出加工することによって前記シースを形成する工程と、を備える、
電線の製造方法。
【請求項2】
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、前記線心撚体を覆うシースと、を備えた電線の製造方法であって、
前記線心撚体を形成する工程と、
前記線心撚体の外周に、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を螺旋状に隙間が形成されるように螺旋巻きする工程と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側を前記第一保持部材に重ねて前記螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする工程と、
シース材料を、前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆う管形状を有するように押出加工することによって前記シースを形成する工程と、を備え、
前記第一保持部材に対する前記第二保持部材の両側の重ね代を、前記第二保持部材の幅の1/3とする、
電線の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の製造方法において、
前記絶縁線心を介在物とともに交互撚りにて撚り合わせて前記線心撚体を形成する、
電線の製造方法。
【請求項4】
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、
前記線心撚体の外周に、螺旋状の隙間をあけて螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第一保持部材であって、前記隙間が前記第一保持部材の幅の1/3である第一保持部材と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側が前記第一保持部材に重ねられて前記第一保持部材の隙間を覆うように螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第二保持部材と、
前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆うシースと、を有する、
電線。
【請求項5】
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、
前記線心撚体の外周に、螺旋状の隙間をあけて螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第一保持部材と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側が前記第一保持部材に重ねられて前記第一保持部材の隙間を覆うように螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第二保持部材と、
前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆うシースと、を有し、
前記第一保持部材に対する前記第二保持部材の両側の重ね代が、前記第二保持部材の幅の1/3とされている、
電線。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電線において、
前記線心撚体が、前記絶縁線心が介在物とともに交互撚りにて撚り合わされて形成されている、
電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体とその線心撚体を覆うシースとを備えた電線の製造方法、及び、電線、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の絶縁線心を有する電線の製造方法が提案されている。例えば、従来の電線の製造方法の一つは、複数の絶縁線心を撚り合わせて線心撚体を形成する工程と、その線心撚体の外周に密着するように紐やテープからなる押え巻きを巻き付ける工程と、その押え巻きを覆うようにシースを形成する工程と、を備えている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
更に、従来の電線の製造方法の他の一つは、架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの外部半導電層の外周面に、未加硫ゴムが主成分の第1のテープを縦添えする工程と、第1のテープを縦添えした外周面に、未加硫ゴムを含ませた繊維を基布にした第2のテープを1/4〜1/2ラップで巻きつける工程と、第2のテープを巻きつけた外周面に、未加硫ゴムが主成分の第3のテープを縦添えする工程とを、を備えている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−136725号公報
【特許文献2】特開2013−235687号公報
【特許文献3】特開2017−103176号公報
【特許文献4】特開2003−168328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3の製造方法によって製造した電線は、例えば、地中に埋設する場合、止水性を確保するために金属製のコルゲート管や電線管などに挿通させて外装しなければならなかった。このため、電線の重量化、可撓性の低下及びコストアップを招いてしまう。
【0006】
特許文献4の製造方法によって製造した電線は、止水性を備えるものの、螺旋状に巻き付ける第2のテープの内周側と外周側に、第1のテープ及び第3のテープを縦添えして製造するため、可撓性の低下及び製造コストの嵩張りを招いてしまう。
【0007】
しかも、特許文献1〜4の製造方法によって製造した電線は、線心撚体を束ねる紐やテープなどの保持部材を、使用時にシースと一括して切断して一纏めに除去することが困難であるため、シースと保持部材とを別々に切断・除去しなければならず、廃棄物の処理にも手間を要する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストを抑えつつ、良好な可撓性及び止水性が確保され、しかも、使用時の利便性・作業性に優れた電線を製造可能な電線の製造方法、及び、電線、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「電線の製造方法」は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、前記線心撚体を覆うシースと、を備えた電線の製造方法であって、
前記線心撚体を形成する工程と、
前記線心撚体の外周に、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を螺旋状に隙間が形成されるように、且つ、前記隙間が前記第一保持部材の幅の1/3となるように、螺旋巻きする工程と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側を前記第一保持部材に重ねて前記螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする工程と、
シース材料を、前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆う管形状を有するように押出加工することによって前記シースを形成する工程と、を備える、
電線の製造方法であること。
(2)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、前記線心撚体を覆うシースと、を備えた電線の製造方法であって、
前記線心撚体を形成する工程と、
前記線心撚体の外周に、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を螺旋状に隙間が形成されるように螺旋巻きする工程と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側を前記第一保持部材に重ねて前記螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする工程と、
シース材料を、前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆う管形状を有するように押出加工することによって前記シースを形成する工程と、を備え、
前記第一保持部材に対する前記第二保持部材の両側の重ね代を、前記第二保持部材の幅の1/3とする、
電線の製造方法であること。
(3)
上記(1)または上記(2)に記載の製造方法において、
前記絶縁線心を介在物とともに交互撚りにて撚り合わせて前記線心撚体を形成する、
電線の製造方法であること。
【0010】
上記(1)の構成の電線の製造方法によれば、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を線心撚体に螺旋巻きし、さらに、第一保持部材が巻き付けられた線心撚体の外周に、幅方向の両側を第一保持部材に重ねて螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする。これにより、重なり部分で確実に自己融着される第一保持部材と第二保持部材とで、線心撚線の外周側が良好に止水された電線を得ることができる。したがって、止水のためのコルゲート管や電線管を外装させることなく、直接地中に埋設することができる。
【0011】
更に、自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材を巻き付けて線心撚体の絶縁線心の撚りを保持するので、シース形成後には、第一保持部材、第二保持部材及びこれらの第一保持部材及び第二保持部材が自己融着したシースによって線心撚体の撚りが保持されることになる。そのため、電線の使用時(皮剥きを行う際)には、第一保持部材、第二保持部材及びシースを一括して切断して一纏めに除去すればよいことになる。よって、自己融着性のない保持紐やテープを使用することで、電線の使用時に別々に切断・除去しなければならないものと比較し、切断・除去(皮剥き)が容易になり且つ廃棄物の取り扱いも容易になる。
【0012】
更に、螺旋状に巻き付ける第2のテープの内周側と外周側に、第1のテープ及び第3のテープを縦添えして製造して得られる電線と比較し、良好な可撓性が得られ、しかも製造コストを抑えることができる。
【0013】
このように、上記構成の電線の製造方法によれば、コストを抑えつつ良好な可撓性及び止水性が確保され、しかも、使用時の利便性・作業性に優れた電線を容易に製造することができる。
【0014】
更に、上記構成の電線の製造方法は、更に別の効果も有する。具体的には、本製造方法において用いられる第一保持部材及び第二保持部材は帯状の形状を有するため、糸状(ひも状)の形状を有する保持部材(例えば、保持糸)を用いる場合に比べ、シースの表面に保持部材に起因する凹凸が目立ち難い(又は、保持部材が十分に薄ければ、凹凸が生じない)。また、第一保持部材及び第二保持部材が線心撚体に食い込み難く、線心撚体が設計通りの形状を維持し易い。
【0015】
ところで、上記「線心撚体」は、絶縁線心とは別の構造物を含んでもよい。例えば、線心撚体は、絶縁線心の間に設けられる介在物を含んでもよい。更に、上記「線心撚体の外周に第一保持部材及び第二保持部材を巻き付ける工程」では、あらかじめ形成しておいた線心撚体の外周に第一保持部材及び第二保持部材を巻き付けてもよく、線心撚体の形成と、第一保持部材及び第二保持部材の巻き付けとを一括して行ってもよい(例えば、線心撚体を形成しながら、第一保持部材及び第二保持部材を巻き付けてもよい)。即ち、線心撚体の形成と、第一保持部材及び第二保持部材の巻き付けとは、別々の工程として行われてもよく、一つの工程として行われてもよい。
【0016】
上記(2)の構成の電線の製造方法によれば、第一保持部材に対する第二保持部材の両側の重ね代を、第二保持部材の幅の1/3とすることで、第一保持部材と第二保持部材との重ね合わせ部分における確実な止水性を確保できる。
【0017】
上記(3)の構成の電線の製造方法によれば、絶縁線心を介在物とともに交互撚りにて撚り合わせた線心撚体は、撚りの反転部分で絶縁線心の撚りが戻りやすい。しかし、線心撚体の外周に巻き付けた自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材によって、絶縁線心の撚りを確実に保持することができる。
【0018】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係る「電線」は、下記(4)〜(6)を特徴としている。
(4)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、
前記線心撚体の外周に、螺旋状の隙間をあけて螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第一保持部材であって、前記隙間が前記第一保持部材の幅の1/3である第一保持部材と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側が前記第一保持部材に重ねられて前記第一保持部材の隙間を覆うように螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第二保持部材と、
前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆うシースと、を有する、
電線であること。
(5)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、
前記線心撚体の外周に、螺旋状の隙間をあけて螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第一保持部材と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側が前記第一保持部材に重ねられて前記第一保持部材の隙間を覆うように螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第二保持部材と、
前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆うシースと、を有し、
前記第一保持部材に対する前記第二保持部材の両側の重ね代が、前記第二保持部材の幅の1/3とされている、
電線であること。
(6)
上記(4)または上記(5)に記載の電線において、
前記線心撚体が、前記絶縁線心が介在物とともに交互撚りにて撚り合わされて形成されている、
電線であること。
【0019】
上記(4)の構成の電線によれば、自己融着性を有する帯状の第一保持部材が線心撚体に螺旋巻きされ、さらに、第一保持部材が巻き付けられた線心撚体の外周に、幅方向の両側を第一保持部材に重ねて螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材が螺旋巻きされている。これにより、重なり部分で確実に自己融着される第一保持部材と第二保持部材とで、線心撚線の外周側を良好に止水することができる。したがって、止水のためのコルゲート管や電線管を外装させることなく、直接地中に埋設することができる。また、螺旋状に巻き付ける第2のテープの内周側と外周側に、第1のテープ及び第3のテープを縦添えして製造して得られる電線と比較し、良好な可撓性が得られ、しかも製造コストを抑えることができる。
このように、上記構成の電線によれば、コストを抑えつつ良好な可撓性及び止水性を確保することができる。
また、自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材が巻き付けられて線心撚体の絶縁線心の撚りが保持されているので、第一保持部材、第二保持部材及びこれらの第一保持部材及び第二保持部材が自己融着したシースによって線心撚体の撚りが保持されることになる。そのため、電線の使用時(皮剥きを行う際)には、第一保持部材、第二保持部材及びシースを一括して切断して一纏めに除去すればよいことになる。よって、自己融着性のない保持紐やテープを使用することで、電線の使用時に別々に切断・除去しなければならないものと比較し、切断・除去(皮剥き)が容易になり且つ廃棄物の取り扱いも容易になる。
上記(5)の構成の電線によれば、第一保持部材に対する第二保持部材の両側の重ね代が、第二保持部材の幅の1/3とされているので、第一保持部材と第二保持部材との重ね合わせ部分における確実な止水性を確保できる。
上記(6)の構成の電線によれば、絶縁線心を介在物とともに交互撚りにて撚り合わせた線心撚体は、撚りの反転部分で絶縁線心の撚りが戻りやすい。しかし、線心撚体の外周に巻き付けられた自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材によって、絶縁線心の撚りを確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コストを抑えつつ、良好な可撓性及び止水性が確保され、しかも、使用時の利便性・作業性に優れた電線を製造可能な電線の製造方法、及び、電線、を提供できる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係る電線の製造方法を例示する一連の工程図である。図1(a)は線心撚体を形成する工程を示し、図1(b)は線心撚体に第一保持部材を巻き付ける工程を示し、図1(c)は線心撚体に第二保持部材を巻き付ける工程を示し、図1(d)は線心撚体、第一保持部材及び第二保持部材を覆うシースを形成する工程を示している。
図2図2は、図1に示される第一保持部材、第二保持部材の構造を例示する概略図である。図2(a)は第一保持部材を巻き付けた状態を示し、図2(b)は第二保持部材を巻き付けた状態を示している。
図3図3は、図1の製造方法により製造された電線のシースの一部を取り除いた状態を表す概略図である。
図4図4は、図1の製造方法により電線を製造する製造装置の構成を例示する概略図である。
図5図5は、参考例に係る電線の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電線(以下「電線1」という。)の製造方法及び電線について説明する。
【0024】
<電線の製造方法>
本実施形態に係る電線1は、図1(a)、図1(b)、図1(c)及び図1(d)に示す一連の工程により製造される。
【0025】
図1(a)に示す工程は、線心撚体10を形成する工程である。線心撚体10は、複数の絶縁線心20と、介在物30と、を交互撚り(SZ撚り)にて撚り合わせることにより形成される。絶縁線心20は、導体21と、導体21を覆う絶縁体22と、を有している(図3を参照)。線心撚体10に含まれる絶縁線心20の本数は、特に制限されないが、2本〜4本であることが好ましい。なお、本例では、線心撚体10は、導体21のサイズが1.25〜38sqの3本の絶縁線心20を有している。
【0026】
具体的には、線心撚体10は、3本の絶縁線心20と介在物30とを、一方向(S方向)への撚り及び他方向(Z方向)への撚りを交互に繰り返すことによって交互撚りし(SZ撚りを行い)、一つの線心撚体10として束ねられる。これにより、線心撚体10は、長手方向に沿って、S撚り部Ts及びZ撚り部Tzが交互に設けられた状態となっている。なお、線心撚体10を構成する一線心(複数の絶縁線心20のうちの一つの線心)が1回転する際に進む長手方向の距離は、「撚り合わせピッチ長」と称呼される。
【0027】
図1(b)に示す工程は、線心撚体10に第一保持部材41を巻き付ける工程である。本工程において、図1(a)の工程にて形成された線心撚体10の外周には、図2(a)に示すように、帯状の第一保持部材41が直接接触するように螺旋状に巻き付けられる。
【0028】
第一保持部材41は、例えば、ブチルゴム等の合成ゴムをテープ状に形成したもので、自己融着性を有している。図2(a)に示すように、第一保持部材41は、その幅W1が10〜25mm、厚さT1が0.4〜0.6mmとされている。第一保持部材41は、後述する保持部材巻付部64によって線心撚体10に巻き付ける際に張力が付与されて1.5〜2.5倍程度に引き伸ばされて巻き付けられる。第一保持部材41の幅W1は、線心撚体10の外周に第一保持部材41を螺旋状に巻き付けるとき、線心撚体10の軸線方向に対する第一保持部材41の傾き(巻き付け角度)が55〜65°となるように定められることが好ましい。なお、線心撚体10の直径が約7〜23mmである場合、第一保持部材41の幅W1が10〜25mmであれば、上述した巻き付け角度での巻き付けが可能となる。
【0029】
第一保持部材41の螺旋ピッチ長P1(図1(b)を参照)は、例えば、10〜25mmである。第一保持部材41は、線心撚体10の外周に螺旋状に巻き付けた際に、螺旋状の巻き付け方向と直交する方向に、幅W1の約1/3の隙間G1をあけながら線心撚体10の外周に螺旋状に巻き付けられる。
【0030】
図1(c)に示す工程は、線心撚体10に第二保持部材42を巻き付ける工程である。本工程において、図1(b)の工程にて第一保持部材41が巻き付けられた線心撚体10の外周には、帯状の第二保持部材42が第一保持部材41の隙間G1を塞ぐように螺旋状に巻き付けられる。
【0031】
第二保持部材42は、第一保持部材41と同様に、例えば、ブチルゴム等の合成ゴムをテープ状に形成したもので、自己融着性を有している。図2(b)に示すように、第二保持部材42は、その幅W2が10〜25mm、厚さT2が0.4〜0.6mmとされている。第二保持部材42は、後述する保持部材巻付部64によって線心撚体10に巻き付ける際に張力が付与されて1.5〜2.5倍程度に引き伸ばされて巻き付けられる。第二保持部材42の幅W2も、上述した第一保持部材41の幅W1と同様、巻き付け角度が55〜65°となるように定められることが好ましい。
【0032】
第二保持部材42の螺旋ピッチ長P2(図1(c)を参照)は、例えば、10〜25mmである。第二保持部材42は、第一保持部材41が巻き付けられた線心撚体10の外周に螺旋状に巻き付けた際に、螺旋状の巻き付け方向に直交する方向に、幅W2の約1/3の隙間G2をあけながら線心撚体10の外周に螺旋状に巻き付けられる。第二保持部材42は、その両側を第一保持部材41に重ね合わせながら巻き付けられる。第一保持部材41に対する第二保持部材42の両側の重ね代は、第一保持部材41の幅W2の1/3とする。
【0033】
本例では、第一保持部材41及び第二保持部材42として、同一の素材から形成された同一寸法の保持部材を用いている。したがって、第一保持部材41の幅W1及び厚さT1は、第二保持部材42の幅W2及び厚さT2と同一寸法であり、第二保持部材42を巻き付ける際の螺旋ピッチ長P2及び隙間G2を、第一保持部材41を巻き付ける際の螺旋ピッチ長P1及び隙間G1と同一にしている。
【0034】
図1(d)に示す工程は、線心撚体10の外側にシース50を形成する工程である。本工程において、図1(b)及び図1(c)に示す工程にて第一保持部材41及び第二保持部材42が巻かれた線心撚体10の外周がシース50によって覆われる。シース50は、例えば、ポリ塩化ビニル及びポリエチレン等の合成樹脂から形成される。シース50は、外周に第一保持部材41及び第二保持部材42が巻かれた線心撚体10の外周に、加熱溶融されたシース材料を管形状を有するように押出加工することにより形成される。これにより、線心撚体10、第一保持部材41及び第二保持部材42がシース50によって保護される。シース50には、その外周面に防食層が設けられている。防食層は、例えば、シース50の外周面にコーティング等によって設けられる。
【0035】
<製造される電線の構造>
電線1(結果物としての電線1)は、線心撚体10と、第一保持部材41と、第二保持部材42と、シース50と、を備えることになる。線心撚体10は、撚り合わされた複数の絶縁線心20を含む撚体であり、第一保持部材41は、線心撚体10の外周を螺旋状に周回して線心撚体10の外周面に自己融着によって融着している。第二保持部材42は、線心撚体10の外周を螺旋状に周回して線心撚体10の外周面及び第一保持部材41に自己融着によって融着している。第二保持部材42は、第一保持部材41の螺旋に沿って形成された第一保持部材41の隙間G1を塞ぐように、かつ両側が第一保持部材41に重なるように巻き付けられている。第一保持部材41に対する第二保持部材42の両側の重ね代は、第一保持部材41の幅W2の1/3とされている。シース50は、線心撚体10、第一保持部材41及び第二保持部材42を覆うように設けられ、その内周面には、第一保持部材41及び第二保持部材42が自己融着によって融着されている。なお、図3において、シース50の一部を取り除いた領域では、第一保持部材41及び第二保持部材42がシース50の内周面に密着(融着)している様子が見えるように、線心撚体10を取り除いた状態が示されている。
【0036】
<製造装置>
次いで、上記の製造方法により電線1を製造する製造装置について説明する。
【0037】
図4に示すように、電線1を製造する製造装置60は、絶縁線心供給部61及び介在物供給部62を備えている。絶縁線心供給部61は一般的なリール等であり、絶縁線心供給部61から複数の絶縁線心20が繰り出される。介在物供給部62から、介在物30が繰り出される。
【0038】
絶縁線心供給部61及び介在物供給部62の下流側には、SZ撚り部63が設けられている。SZ撚り部63には、絶縁線心供給部61から繰り出される複数の絶縁線心20及び介在物供給部62から繰り出される介在物30が送り込まれる。SZ撚り部63は、一般的なSZ撚り機構を有し、複数の絶縁線心20と介在物30とを交互撚り(SZ撚り)にて撚り合わせ、線心撚体10を形成するようになっている。
【0039】
SZ撚り部63の下流側には、保持部材巻付部64及びシース形成部65が順に設けられている。保持部材巻付部64は、一般的な巻き付け機構を有し、SZ撚り部63から送り込まれる線心撚体10の周りに第一保持部材41及び第二保持部材42を螺旋状に巻き付ける。保持部材巻付部64は、線心撚体10の周りに、隙間G1が形成されるように、第一保持部材41を螺旋状に巻き付けると略同時に、第一保持部材41の隙間G1を塞ぐように、かつ両側が第一保持部材41に重なるように、隙間G2をあけて第二保持部材42を螺旋状に巻き付ける。シース形成部65は、一般的なシース形成機構を有し、第一保持部材41及び第二保持部材42が巻き付けられた線心撚体10の周囲を覆うようにシース50を形成する。
【0040】
ここで、参考例に係る電線について説明する。
図5は、参考例に係る電線の構造を示す概略図である。
【0041】
図5に示すように、参考例に係る電線1Aは、第一保持部材41及び第二保持部材42に代えて、ポリエステル製の保持紐70が螺旋状に巻き付けられている。絶縁線心20と介在物30とを交互撚り(SZ撚り)した線心撚体10は、絶縁線心20及び介在物30が軸方向に沿うために、撚りが戻りやすい撚りの反転部分(約200〜300mm)が形成される。保持紐70は、線心撚体10の反転部分においても撚りを保持することができるが、電線1Aに止水性を持たせることができない。このため、この電線1Aを地中に埋設する場合、金属製のコルゲート管や電線管などに挿通させて外装しなければならず、重量化、可撓性の低下及びコストアップを招いてしまう。しかも、この電線1Aでは、使用時に、保持紐70をシース50と一括して切断して一纏めに除去することができない。このため、シース50と保持紐70とを別々に切断・除去しなければならず、廃棄物の処理にも手間を要する。
【0042】
これに対して、本実施形態によれば、自己融着性を有する帯状の第一保持部材41を線心撚体10に螺旋巻きし、さらに、第一保持部材41が巻き付けられた線心撚体10の外周に、幅方向の両側を第一保持部材41に重ねて螺旋状の隙間G1を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材42を螺旋巻きする。これにより、重なり部分で確実に自己融着される第一保持部材41と第二保持部材42とで、線心撚体10の外周側が良好に止水された電線1を得ることができる。したがって、止水のためのコルゲート管や電線管を外装させることなく、直接地中に埋設することができる。
【0043】
また、自己融着性を有する第一保持部材41及び第二保持部材42を巻き付けて線心撚体10の絶縁線心20の撚りを保持するので、シース形成後には、第一保持部材41、第二保持部材42及びこれらの第一保持部材41及び第二保持部材42が自己融着したシース50によって線心撚体10の撚りが保持されることになる。そのため、電線1の使用時(皮剥きを行う際)には、第一保持部材41、第二保持部材42及びシース50を一括して切断して一纏めに除去すればよいことになる。よって、自己融着性のない保持紐やテープを使用することで、電線の使用時に別々に切断・除去しなければならないものと比較し、切断・除去(皮剥き)が容易になり且つ廃棄物の取り扱いも容易になる。
【0044】
また、螺旋状に巻き付ける第2のテープの内周側と外周側に、第1のテープ及び第3のテープを縦添えして製造して得られる電線と比較し、良好な可撓性が得られ、しかも製造コストを抑えることができる。
【0045】
このように、上記構成の電線の製造方法によれば、コストを抑えつつ良好な可撓性及び止水性が確保され、しかも、使用時の利便性・作業性に優れた電線を容易に製造することができる。
【0046】
また、第一保持部材41に対する第二保持部材42の両側の重ね代を、第二保持部材42の幅W2の1/3とすることで、第一保持部材41と第二保持部材42との重ね合わせ部分における確実な止水性を確保できる。
【0047】
また、上記構成の電線の製造方法は、更に別の効果も有する。具体的には、本製造方法において用いられる第一保持部材41及び第二保持部材42は帯状の形状を有するため、糸状(ひも状)の形状を有する保持部材(例えば、保持糸)を用いる場合に比べ、シース50の表面に保持部材に起因する凹凸が目立ち難い(又は、保持部材が十分に薄ければ、凹凸が生じない)。また、第一保持部材41及び第二保持部材42が線心撚体10に食い込み難く、線心撚体10が設計通りの形状を維持し易い。
【0048】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0049】
例えば、本実施形態(図1)では、線心撚体10がSZ撚りされている。しかし、線心撚体10はS撚りされてもよく、Z撚りされてもよい。更に、本実施形態(図4)では、線心撚体10の形成と、この線心撚体10への第一保持部材41及び第二保持部材42の巻き付けは、別々の工程でもよく、また、3これら工程を一つにまとめ、線心撚体10の形成と第一保持部材41及び第二保持部材42の巻き付けとを一括して行ってもよい。
【0050】
ここで、上述した本発明に係る電線の製造方法、及び、電線の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(6)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
撚り合わされた複数の絶縁線心(20)を含む線心撚体(10)と、前記線心撚体(10)を覆うシース(50)と、を備えた電線(1)の製造方法であって、
前記線心撚体(10)を形成する工程と、
前記線心撚体(10)の外周に、自己融着性を有する帯状の第一保持部材(41)を螺旋状に隙間(G1)が形成されるように螺旋巻きする工程と、
前記第一保持部材(41)が巻き付けられた前記線心撚体(10)の外周に、幅方向の両側を前記第一保持部材(41)に重ねて前記螺旋状の隙間(G1)を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材(42)を螺旋巻きする工程と、
シース材料を、前記第一保持部材(41)及び前記第二保持部材(42)が巻き付けられた前記線心撚体(10)を覆う管形状を有するように押出加工することによって前記シース(50)を形成する工程と、を備える、
電線の製造方法。
(2)
(1)に記載の製造方法において、
前記第一保持部材(41)に対する前記第二保持部材(42)の両側の重ね代を、前記第二保持部材(42)の幅(W2)の1/3とする、
電線の製造方法。
(3)
(1)または(2)に記載の製造方法において、
前記絶縁線心(20)を介在物(30)とともに交互撚りにて撚り合わせて前記線心撚体(10)を形成する、
電線の製造方法。
(4)
撚り合わされた複数の絶縁線心(20)を含む線心撚体(10)と、
前記線心撚体(10)の外周に、螺旋状の隙間(G1)をあけて螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第一保持部材(41)と、
前記第一保持部材(41)が巻き付けられた前記線心撚体(10)の外周に、幅方向の両側が前記第一保持部材(41)に重ねられて前記第一保持部材(41)の隙間(G1)を覆うように螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第二保持部材(42)と、
前記第一保持部材(41)及び前記第二保持部材(42)が巻き付けられた前記線心撚体(10)を覆うシース(50)と、を有する、
電線。
(5)
(4)に記載の電線(1)において、
前記第一保持部材(41)に対する前記第二保持部材(42)の両側の重ね代が、前記第二保持部材(42)の幅(W2)の1/3とされている、
電線。
(6)
(4)または(5)に記載の電線(1)において、
前記線心撚体(10)が、前記絶縁線心(20)が介在物(30)とともに交互撚りにて撚り合わされて形成されている、
電線。
【符号の説明】
【0051】
1 電線
10 線心撚体
20 絶縁線心
30 介在物
41 第一保持部材
42 第二保持部材
50 シース
図1
図2
図3
図4
図5