【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「電線の製造方法」は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、前記線心撚体を覆うシースと、を備えた電線の製造方法であって、
前記線心撚体を形成する工程と、
前記線心撚体の外周に、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を
、螺旋状に隙間が形成されるように
、且つ、前記隙間が前記第一保持部材の幅の1/3となるように、螺旋巻きする工程と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側を前記第一保持部材に重ねて前記螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする工程と、
シース材料を、前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆う管形状を有するように押出加工することによって前記シースを形成する工程と、を備える、
電線の製造方法であること。
(2)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、前記線心撚体を覆うシースと、を備えた電線の製造方法であって、
前記線心撚体を形成する工程と、
前記線心撚体の外周に、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を螺旋状に隙間が形成されるように螺旋巻きする工程と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側を前記第一保持部材に重ねて前記螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする工程と、
シース材料を、前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆う管形状を有するように押出加工することによって前記シースを形成する工程と、を備え、
前記第一保持部材に対する前記第二保持部材の両側の重ね代を、前記第二保持部材の幅の1/3とする、
電線の製造方法であること。
(3)
上記(1)または上記(2)に記載の製造方法において、
前記絶縁線心を介在物とともに交互撚りにて撚り合わせて前記線心撚体を形成する、
電線の製造方法であること。
【0010】
上記(1)の構成の電線の製造方法によれば、自己融着性を有する帯状の第一保持部材を線心撚体に螺旋巻きし、さらに、第一保持部材が巻き付けられた線心撚体の外周に、幅方向の両側を第一保持部材に重ねて螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材を螺旋巻きする。これにより、重なり部分で確実に自己融着される第一保持部材と第二保持部材とで、線心撚線の外周側が良好に止水された電線を得ることができる。したがって、止水のためのコルゲート管や電線管を外装させることなく、直接地中に埋設することができる。
【0011】
更に、自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材を巻き付けて線心撚体の絶縁線心の撚りを保持するので、シース形成後には、第一保持部材、第二保持部材及びこれらの第一保持部材及び第二保持部材が自己融着したシースによって線心撚体の撚りが保持されることになる。そのため、電線の使用時(皮剥きを行う際)には、第一保持部材、第二保持部材及びシースを一括して切断して一纏めに除去すればよいことになる。よって、自己融着性のない保持紐やテープを使用することで、電線の使用時に別々に切断・除去しなければならないものと比較し、切断・除去(皮剥き)が容易になり且つ廃棄物の取り扱いも容易になる。
【0012】
更に、螺旋状に巻き付ける第2のテープの内周側と外周側に、第1のテープ及び第3のテープを縦添えして製造して得られる電線と比較し、良好な可撓性が得られ、しかも製造コストを抑えることができる。
【0013】
このように、上記構成の電線の製造方法によれば、コストを抑えつつ良好な可撓性及び止水性が確保され、しかも、使用時の利便性・作業性に優れた電線を容易に製造することができる。
【0014】
更に、上記構成の電線の製造方法は、更に別の効果も有する。具体的には、本製造方法において用いられる第一保持部材及び第二保持部材は帯状の形状を有するため、糸状(ひも状)の形状を有する保持部材(例えば、保持糸)を用いる場合に比べ、シースの表面に保持部材に起因する凹凸が目立ち難い(又は、保持部材が十分に薄ければ、凹凸が生じない)。また、第一保持部材及び第二保持部材が線心撚体に食い込み難く、線心撚体が設計通りの形状を維持し易い。
【0015】
ところで、上記「線心撚体」は、絶縁線心とは別の構造物を含んでもよい。例えば、線心撚体は、絶縁線心の間に設けられる介在物を含んでもよい。更に、上記「線心撚体の外周に第一保持部材及び第二保持部材を巻き付ける工程」では、あらかじめ形成しておいた線心撚体の外周に第一保持部材及び第二保持部材を巻き付けてもよく、線心撚体の形成と、第一保持部材及び第二保持部材の巻き付けとを一括して行ってもよい(例えば、線心撚体を形成しながら、第一保持部材及び第二保持部材を巻き付けてもよい)。即ち、線心撚体の形成と、第一保持部材及び第二保持部材の巻き付けとは、別々の工程として行われてもよく、一つの工程として行われてもよい。
【0016】
上記(2)の構成の電線の製造方法によれば、第一保持部材に対する第二保持部材の両側の重ね代を、第二保持部材の幅の1/3とすることで、第一保持部材と第二保持部材との重ね合わせ部分における確実な止水性を確保できる。
【0017】
上記(3)の構成の電線の製造方法によれば、絶縁線心を介在物とともに交互撚りにて撚り合わせた線心撚体は、撚りの反転部分で絶縁線心の撚りが戻りやすい。しかし、線心撚体の外周に巻き付けた自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材によって、絶縁線心の撚りを確実に保持することができる。
【0018】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係る「電線」は、下記(4)〜(6)を特徴としている。
(4)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、
前記線心撚体の外周に、螺旋状の隙間をあけて螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第一保持部材
であって、前記隙間が前記第一保持部材の幅の1/3である第一保持部材と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側が前記第一保持部材に重ねられて前記第一保持部材の隙間を覆うように螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第二保持部材と、
前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆うシースと、を有する、
電線であること。
(5)
撚り合わされた複数の絶縁線心を含む線心撚体と、
前記線心撚体の外周に、螺旋状の隙間をあけて螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第一保持部材と、
前記第一保持部材が巻き付けられた前記線心撚体の外周に、幅方向の両側が前記第一保持部材に重ねられて前記第一保持部材の隙間を覆うように螺旋巻きされた自己融着性を有する帯状の第二保持部材と、
前記第一保持部材及び前記第二保持部材が巻き付けられた前記線心撚体を覆うシースと、を有し、
前記第一保持部材に対する前記第二保持部材の両側の重ね代が、前記第二保持部材の幅の1/3とされている、
電線であること。
(6)
上記(4)または上記(5)に記載の電線において、
前記線心撚体が、前記絶縁線心が介在物とともに交互撚りにて撚り合わされて形成されている、
電線であること。
【0019】
上記(4)の構成の電線によれば、自己融着性を有する帯状の第一保持部材が線心撚体に螺旋巻きされ、さらに、第一保持部材が巻き付けられた線心撚体の外周に、幅方向の両側を第一保持部材に重ねて螺旋状の隙間を覆うように、自己融着性を有する帯状の第二保持部材が螺旋巻きされている。これにより、重なり部分で確実に自己融着される第一保持部材と第二保持部材とで、線心撚線の外周側を良好に止水することができる。したがって、止水のためのコルゲート管や電線管を外装させることなく、直接地中に埋設することができる。また、螺旋状に巻き付ける第2のテープの内周側と外周側に、第1のテープ及び第3のテープを縦添えして製造して得られる電線と比較し、良好な可撓性が得られ、しかも製造コストを抑えることができる。
このように、上記構成の電線によれば、コストを抑えつつ良好な可撓性及び止水性を確保することができる。
また、自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材が巻き付けられて線心撚体の絶縁線心の撚りが保持されているので、第一保持部材、第二保持部材及びこれらの第一保持部材及び第二保持部材が自己融着したシースによって線心撚体の撚りが保持されることになる。そのため、電線の使用時(皮剥きを行う際)には、第一保持部材、第二保持部材及びシースを一括して切断して一纏めに除去すればよいことになる。よって、自己融着性のない保持紐やテープを使用することで、電線の使用時に別々に切断・除去しなければならないものと比較し、切断・除去(皮剥き)が容易になり且つ廃棄物の取り扱いも容易になる。
上記(5)の構成の電線によれば、第一保持部材に対する第二保持部材の両側の重ね代が、第二保持部材の幅の1/3とされているので、第一保持部材と第二保持部材との重ね合わせ部分における確実な止水性を確保できる。
上記(6)の構成の電線によれば、絶縁線心を介在物とともに交互撚りにて撚り合わせた線心撚体は、撚りの反転部分で絶縁線心の撚りが戻りやすい。しかし、線心撚体の外周に巻き付けられた自己融着性を有する第一保持部材及び第二保持部材によって、絶縁線心の撚りを確実に保持することができる。