(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、可視光を撮像するカメラは、撮像画像の高画素化が進んでおり、温度検出用赤外線カメラで得られる熱画像についても、画素数の増加が要求されている。熱画像の画素数が増えると、それだけ監視対象の熱分布をそれだけ高い精度で検出できるようになる。例えば、画素数の増加で、従来は見逃していたような僅かな温度変化も検出できる可能性がある。
【0007】
しかしながら、温度検出用赤外線カメラが出力する熱画像を受信して解析を行う受信端末側では、熱画像の画素数が増えると、それだけ熱画像を解析処理する演算処理量が増えてしまう。例えば、熱画像をQVGA規格(水平320画素×垂直240画素)からVGA規格(水平640画素×垂直480画素)に変更したとき、1フレームの熱画像の画素数は4倍になり、演算処理量が4倍に増加してしまう。このように演算処理量が増えると、演算処理を行う受信端末(コンピュータ)として、情報処理量の大きな高性能なものが要求され、従来の端末では能力が十分でないケースが想定される。
【0008】
また、赤外線カメラから受信端末に熱画像信号を伝送する伝送路についても、QVGA規格からVGA規格への変更で、4倍の情報量の伝送に対応する必要がある。したがって、赤外線カメラの高画質化は、伝送路についても転送レートを高くする対処が必要になる。
【0009】
伝送路の転送レートが十分でない場合には、例えば赤外線カメラが熱画像データを圧縮して受信端末に伝送することが考えられる。しかしながら、データを受信側で元通りに復元可能な可逆圧縮方式の場合には、圧縮率がそれほど高くなく、あまり効果がない。また、受信側での復元性が低い非可逆圧縮方式を適用する場合には、高い圧縮率が得られるが、受信側で復元したデータは誤差を含むため、受信端末で誤った温度が検出されて、誤警報の出力や警報漏れの可能性が生じてしまう。さらには、赤外線カメラに熱画像データ圧縮機能を、受信端末に熱画像データ復元機能を搭載する必要があり、機器コスト増、演算負荷増、処理遅延増の観点から不利になる。
【0010】
また、伝送路の転送レートが十分でない場合の別の対処として、温度検出用赤外線カメラで熱画像の一部の範囲のみを伝送する、あるいは、熱画像のフレームレートを下げる等の対処も考えられるが、いずれの場合にも、温度検出用赤外線カメラが持つ能力を生かしていないことになり、好ましくない。
【0011】
本発明は、高解像度の熱画像が得られると共に、その高解像度の熱画像を取得して処理する端末での負担や伝送時の負担を軽減することができる温度検出用赤外線カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の温度検出用赤外線カメラは、第1の画素数の熱画像を撮像する赤外センサと、その赤外センサが撮像した熱画像について、所定の画素数のブロック単位で
最大値及び最小値を代表値として算出する代表値算出部と、代表値算出部が画素数を減じた第2の画素数の熱画像を出力する出力部とを備える。
ここで、代表値算出部が処理する
第1のブロックは、ブロック内の最大値
を代表値とし、代表値算出部が処理する第2のブロックは、ブロック内の最小値を代表値とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、赤外センサが撮像する熱画像の解像度の高さを生かした上で、画素数を減じた熱画像が出力されるようになる。したがって、熱画像を解析処理する端末や伝送路の負担を軽減した上で、解像度の高い熱画像による監視が可能なシステムを構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。
【0016】
[1.温度検出用赤外線カメラの構成]
図1は、本例の温度検出用赤外線カメラ10の構成例を示す。
本例の温度検出用赤外線カメラ10は、赤外センサ11、赤外補正処理部12、代表値算出部13、出力部14、及び制御部15を備える。
【0017】
赤外センサ11は、VGA規格の画素配列(水平640画素×垂直480画素)で熱画像を取得する赤外用イメージセンサである。赤外センサ11で取得された熱画像データは、赤外補正処理部12に供給される。ここで、赤外センサ11で取得する熱画像データのそれぞれの画素は、例えば16ビットのデータとし、赤外センサ11は毎秒30フレームの熱画像データを得る。
赤外補正処理部12は、赤外センサ11から供給される熱画像データを、適正な温度情報が得られる熱画像データとするための補正処理を行う。赤外補正処理部12で補正処理された熱画像データは、代表値算出部13に供給される。
【0018】
代表値算出部13は、VGA規格の画素配列の熱画像データの画素数を減じて、QVGA規格の画素配列(水平320画素×垂直240画素)の熱画像データに変換する。代表値算出部13での代表値算出処理の詳細は後述する。代表値算出部13で画素数を減じたQVGA規格の熱画像データは、出力部13に供給される。
【0019】
出力部13は、温度検出用赤外線カメラ10の外部にQVGA規格の熱画像データを出力する。
図1の例では、出力部13と受信端末20とをケーブルで接続し、出力部13から受信端末20にQVGA規格の熱画像データを伝送する。赤外センサ11が毎秒30フレームの熱画像データを得る場合、出力部13も、毎秒30フレームの熱画像データを出力(伝送)する。
【0020】
なお、出力部13と受信端末20との間を、LAN(Local Area Network)などのネットワークで接続した場合には、出力部13はそのネットワークに適合した通信インターフェースになる。1画素が16ビットで構成されたQVGA規格の熱画像データを、毎秒30フレームで受信端末20に伝送する場合、320×240×16ビット×30=約37Mbpsの転送レートになる。これは、例えばLANの場合、100BASEと称される最大100Mbpsの転送が可能な規格の機器を使って伝送可能である。VGA規格の熱画像をそのまま転送する場合には、4倍の147Mbpsの転送レートが必要であり、100BASEの規格のLANでは転送することができない。
【0021】
赤外補正処理部12での補正処理と、代表値算出部13での代表値算出処理と、出力部14での出力処理は、制御部15による制御で実行される。例えば、代表値算出部13での代表値算出処理として、複数の処理モードを有し、制御部15からの指令で、代表値算出部13がいずれのモードで代表値算出処理を行うのかを確定する。
【0022】
受信端末20は、温度検出用赤外線カメラ10から伝送された熱画像データを受信し、熱画像の解析や監視を行う。
【0023】
[2.代表値算出処理の例]
次に、代表値算出部13が行う代表値算出処理の詳細を説明する。
図2Aは、代表値算出処理前の画素配列を示し、
図2Bは、代表値算出処理後の画素配列を示す。
図2A,Bは、横軸が水平方向の座標であるX座標を示し、縦軸が垂直方向の座標であるY座標を示す。各マス目の中の数字が、画素番号を示す。画素番号は、[.]の左側の数字がX座標を示し、[.]の右側の数字がY座標を示す。
【0024】
赤外センサ11で取得する画素配列である代表値算出処理前の画素配列としては、
図2Aに示すように、第1水平ライン(一番上の水平ライン)が、[1.1]の画素、[2.1]の画素、[3.1]の画素、・・・と構成され、次の水平ライン(2番目の水平ライン)が、[1.2]の画素、[2.2]の画素、[3.2]の画素、・・・と構成され、以下同様に各水平ラインの画素のデータが配置される。
【0025】
ここで、本例においては、隣接する4の画素を1つのブロックとして扱い、その1ブロックごとに代表値となる1つの画素データを算出する処理を行う。すなわち、
図2Aに各画素を太い線で囲って示すように、(X方向の2画素)×(Y方向の2画素)の4画素で1つのブロックを形成し、代表値算出部13は、1つのブロックごとに1つの画素データのみを出力するように代表値算出処理を行う。
例えば
図2Bに示すように、代表値算出部13が代表値算出処理した熱画像データの[1.1]の画素は、
図2Aに示す4つの画素[1.1]、[2.1]、[1.2]、[2.2]から代表値として1つの画素データを出力するようにしたものである。
このようなブロック単位での代表値算出処理を行って、VGA規格の熱画像データをQVGA規格の熱画像データに変換する。
【0026】
次に、各ブロックで代表値算出処理を行う際に、代表値算出後に出力される画素のデータの生成処理について説明する。
図3のフローチャートは、第1の処理モードとしたときの処理例を示す。
まず、代表値算出部13は、1ブロックの4画素のデータを取得する(ステップS11)。そして、代表値算出部13は、取得した4画素のデータの中で、画素値(温度)が最大となる画素の判定を行う(ステップS12)。
ステップS12で最大値を判定すると、代表値算出部13は、代表値算出後のブロックの画素の出力値を、判定した最大値とする(ステップS13)。1ブロックの出力画素値がステップS13で確定すると、代表値算出部13は、ステップS11の処理に戻り、次のブロックの処理に移る。
【0027】
このように第1の処理モードとしたとき、代表値算出部13は、ブロックごとに最大値(最大温度)となる画素のデータを選択して、その選択した画素データを出力する。
なお、
図3の例では、1ブロックごとに最大値を判定して出力するようにしたが、1ブロックごとに最小値を判定して、その最小値(最小温度)となる画素のデータを出力するようにしてもよい。
【0028】
この第1の処理モードとしたとき、温度検出用赤外線カメラ10は、赤外センサ11で取得される熱画像の高解像度を生かした上で、出力される熱画像の画素数を効果的に減らすことができる。すなわち、熱画像の解像度は赤外センサ11の画素数で決まるため、VGA規格の熱画像が得られるようにすることで、解像度の高い熱画像が得られる。例えば、非常に小さな1つの範囲の温度だけが非常に高温になったとき、その高温を正確に熱画像で検知できる。
【0029】
そして、代表値算出部13が代表値算出処理を行う際には、ブロックごとに最大値の画素を選ぶようにしたので、赤外センサ11が検出した高温をそのまま出力することになる。低解像度の熱画像の1画素は、高解像度の熱画像の複数画素を平均化したものと考えることができる。したがって、ブロックごとの最大値を代表値として採用したときには、高解像度の熱画像を用いた場合と同様に、微小な高温部分が平均化されることなく出力される。したがって、受信端末20では、QVGA規格の熱画像を使って監視を行うことになるが、監視場所の温度監視を、VGA規格の熱画像で監視した場合と同様の解像度の高い最大温度の監視ができる。
【0030】
このように第1の処理モードとすることで、熱画像データを伝送する伝送路や受信端末20として従来の能力のものをそのまま使って、解像度の高い温度監視ができるようになる。例えば伝送路としては、上述したように1画素が16ビットで構成されたQVGA規格の熱画像データを、毎秒30フレームで受信端末20に伝送する場合、約37Mbpsの転送レートになり、一般的に使用される伝送システムである、100BASEの規格のLANのネットワークで転送が可能になる。また、受信端末20についても、QVGA規格の熱画像を監視する能力で、実質的にVGA規格の熱画像を監視する能力を有することになり、熱画像を監視する能力の向上を図ることができる。
なお、温度検出用赤外線カメラ10で温度を監視する場所が、低温となることを監視する場合には、第2の処理モードとして、代表値算出部13が代表値算出処理を行う際には、ブロックごとに最小値の画素を選ぶようにすればよい。
【0031】
次に、
図4のフローチャートに示す第3の処理モードとしたときの処理例について説明する。
まず、代表値算出部13は、1ブロックの4画素のデータを取得する(ステップS21)。そして、代表値算出部13は、取得した4画素のデータの中で、画素値(温度)が最大となる画素と、画素値(温度)が最小となる画素の判定を行う(ステップS22)。
次に、代表値算出部13は、ステップS22で判定した最大値と最小値との差を算出する(ステップS23)。そして、代表値算出部13は、代表値算出処理後のブロックの画素の出力値を、ステップS23で算出した差の値とする(ステップS24)。1ブロックの出力画素値がステップS24で確定すると、代表値算出部13は、ステップS21の処理に戻り、次のブロックの処理に移る。
【0032】
このように第3の処理モードとしたとき、代表値算出部13は、ブロックごとに最大値と最小値の差のデータを選択し、その選択した差の値の画素データを出力する。
【0033】
この第3の処理モードとしたときには、温度検出用赤外線カメラ10が出力する熱画像データは、各ブロックの最大の温度差を示すようになるので、受信端末20では、ブロックごと(出力画素ごと)の温度差の監視が高い解像度で良好にできるようになる。
図5は、第3の処理モードを適用した場合の、監視状態の一例を示す。ここでは、熱画像P1の中に、高温箇所Hが存在し、受信端末20では、高温箇所Hのエッジ部分(輪郭)を正確に検出して、どの座標位置までが高温箇所Hであるかを監視するものである。
【0034】
このような用途で監視を行う際に、第3の処理モードとすることで、
図5に示すように、例えばブロックb1の代表値画素、ブロックb2の代表値画素、・・・と、順に画素が得られるとき、高温箇所Hのエッジ部分の熱を検知したブロックb3が、最大の温度差になる。
したがって、画素数を減じた熱画像データを受信する受信端末20では、高温箇所Hのエッジ部分が、温度検出用赤外線カメラ10で得られる元の熱画像の解像度で検知できるようになる。
【0035】
[3.変形例]
なお、上述した実施の形態例では、温度検出用赤外線カメラ10で得る熱画像をVGA規格の画素数とし、代表値算出処理して出力する熱画像をQVGA規格の画素数とするのは一例であり、その他の画素数の熱画像を温度検出用赤外線カメラ10が得るようにしてもよい。画素数を1/4に減ずるようにする点についても、一例であり、その他の画素数に減ずるようにしてもよい。
【0036】
1ブロックの画素数についても変化してもよい。上述した実施の形態例では、代表値算出処理を行う際の1ブロックの画素数として、4画素(水平2画素×垂直2画素)とした。この2画素を1ブロックとするのは一例であり、その他の画素数で1ブロックを構成して、より大きなブロックに対して代表値算出処理を行うようにしてもよい。
具体的には、代表値算出処理の単位のブロックとして、N画素×M画素(N、Mは任意の整数)で構成されるブロックとして一般化することができる。なお、1ブロックをN画素×M画素で構成したとき、そのブロックで割り切れない画素については切り捨てることなく、独立の微小領域とすればよい。
【0037】
また、上述した実施の形態例で示した毎秒30フレームのフレームレートについても一例であり、その他のレートで熱画像を得る場合に適用が可能である。
さらに、上述した実施の形態例では、すべてのブロックに対して同一の代表値算出処理を行うものとしたが、ブロックごとに異なる代表値算出処理を行っても良い。すなわち、例えば、ある熱画像のあるブロックでは最大値を選択し、別のブロックでは最小値を選択し、さらに別のブロックでは最大値と最小値の差を選択することを可能としても良い。
また、画像内の一部領域(少なくとも一つのブロックを含む領域)について最大値、又は最小値、又は最大値と最小値の差を代表値とする代表値算出処理を行っていれば、その領域以外の部分では他の代表値算出処理を適用してもかまわない。他の代表値算出処理としては、ブロック内の固定位置の画素値や、平均値、中央値などがありうる。すなわち、例えば、ある熱画像のあるブロックでは最大値を選択し、別のブロックでは最小値を選択し、さらに別のブロックでは最大値、最小値、最大値と最小値の差とは異なる代表値を選択することを可能としても良い。
各ブロックでの代表値算出処理の選択を制御部15に設定することによって変更できるように構築しても良い。